特許第6531328号(P6531328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6531328
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】熱交換器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20190610BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20190610BHJP
   F28F 3/00 20060101ALI20190610BHJP
   F28D 1/03 20060101ALI20190610BHJP
【FI】
   F28F9/02 301J
   F28F3/08 311
   F28F3/00 311
   F28D1/03
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-200766(P2015-200766)
(22)【出願日】2015年10月9日
(65)【公開番号】特開2017-72331(P2017-72331A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】502112854
【氏名又は名称】有限会社和氣製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和氣 庸人
(72)【発明者】
【氏名】大西 人司
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0003916(US,A1)
【文献】 実開平02−021481(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3199792(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3192719(JP,U)
【文献】 特開平02−259391(JP,A)
【文献】 特開平11−014278(JP,A)
【文献】 特開2014−020672(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0230797(US,A1)
【文献】 特表2014−521913(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0091253(US,A1)
【文献】 特開2016−205755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
F28D 1/03
F28F 3/00−3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料を用いて向かい合わせに接合することにより熱交換媒体の2つの流出入口と該2つの流出入口を連通する連通流路とを有する扁平な熱交換用チューブを構成するよう形成されたチューブ部材を隣接する熱交換用チューブの前記2つの流出入口が整合するように複数積層して構成され、前記熱交換用チューブ内に流れる前記熱交換媒体と隣接する熱交換用チューブの間に流れる被熱交換媒体とで熱交換する熱交換器であって、
前記チューブ部材は、前記2つの流出入口が前記被熱交換媒体の流れの方向に直列に並ぶように形成されており、且つ、前記連通流路が前記2つの流出入口の一方から他方にU字形状で鏡像対称な2つの流路として形成されており、
前記チューブ部材は、外形が矩形形状に形成されており、
前記2つの流出入口は、前記チューブ部材の長手方向の中央に短手方向に直列に並ぶように形成されており、
前記連通流路は、前記2つの流出入口の一方から前記チューブ部材の長手方向の端部に至る第1流路部と前記端部から前記2つの流出入口の他方に至る第2流路部と前記端部で前記第1流路部と前記第2流路部とを接続するように折り返す折り返し流路部とからなる2つの流路として形成されており、
前記第1流路部は、前記チューブ部材の縁に沿って形成されており、
前記第2流路部は、前記チューブ部材の中央に沿って形成されており、
前記第1流路部と前記第2流路部との間は、前記第2流路部の幅より広くなるように形成されており、
前記第2流路部と前記チューブ部材の縁までの間は、前記第1流路部の幅より広くなるように形成されている、
熱交換器。
【請求項2】
請求項1記載の熱交換器であって、
前記チューブ部材を、隣接する熱交換用チューブの一方の前記第2流路部が他方の前記第1流路部と前記第2流路部との間の部位と向き合うように複数積層してなる、
熱交換器。
【請求項3】
熱交換器の製造方法であって、
第1金属による中心材に前記第1金属より融点の低い第2金属が両面に接合され厚みが0.3mm以下としたクラッド板材を用いて、外形が矩形形状で、長手方向の中央で短手方向に直列に並ぶように熱交換媒体の2つの流出入口を有し、前記2つの流出入口の一方から長手方向の端部に至る第1流路部と前記端部から前記2つの流出入口の他方に至る第2流路部と前記端部で前記第1流路部と前記第2流路部とを接続するように折り返す折り返し流路部とからなる鏡像対称のU字形状の2つの連通流路を有するチューブ部材を形成するチューブ部材形成工程と、
前記2つの連通流路および前記2つの流出入口が整合するように2つのチューブ部材を向かい合わせて構成される扁平な熱交換用チューブが複数積層された状態となるように前記チューブ部材を複数積層して積層体を組み付ける組み付け工程と、
前記第1金属の融点より低く前記第2金属の融点より高い温度に調整された炉を用いて前記積層体をロウ付けするロウ付け工程と、
を有し、
前記チューブ部材形成工程は、前記第1流路部が前記チューブ部材の縁に沿うように、前記第2流路部が前記チューブ部材の中央に沿うように、前記第1流路部と前記第2流路部との間が前記第2流路部の幅より広くなるように、前記第2流路部と前記チューブ部材の縁までの間が前記第1流路部の幅より広くなるように前記チューブ部材を形成する工程であり、
前記組み付け工程は、隣接する熱交換用チューブの一方の前記第2流路部が他方の前記第1流路部と前記第2流路部との間の部位と向き合うように前記チューブ部材を複数積層する工程である、
熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関し、詳しくは、扁平に形成された熱交換用チューブを複数積層することにより構成される熱交換器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の熱交換器としては、ステンレスやアルミニウムの薄板に折り曲げ加工や孔開け加工などを施して形成したチューブ部材を向かい合うように配置してロウ付けにより接合することにより構成される熱交換用チューブを複数積層したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この熱交換器の熱交換用チューブは、外形が扁平な長方形状で、その長手方向の両端部に熱交換媒体の流出入口としての2つの貫通孔が形成されている。そして、複数の熱交換用チューブを積層して構成された熱交換器に対して熱交換用チューブの2つの流出入口の一方から熱交換媒体を供給し、他方から熱交換媒体を排出している。この熱交換器では、空気を熱交換用チューブの長手方向とは垂直となる方向に供給し、供給された空気が隣接する熱交換用チューブの間の隙間を通る際に熱交換媒体と熱交換されて加温または冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−020672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした扁平なチューブ部材を積層してなる熱交換器では、熱交換効率を向上させるために、種々の手法が考えられている。例えば熱交換用チューブの表面にV字やW字状に形成された波の凹凸を形成したり、薄板を用いて形成されたチューブ部材の熱交換媒体の流路に流通する熱交換媒体に高圧を作用させたりしている。このように、扁平なチューブ部材を積層してなる熱交換器では、熱交換効率の更なる向上が重要な課題となっている。
【0005】
本発明の熱交換器では、熱交換効率を向上させることを主目的とする。また、本発明の熱交換器の製造方法では、熱交換効率の高い熱交換器をより簡易に製造することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱交換器およびその製造方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の熱交換器は、
金属材料を用いて向かい合わせに接合することにより熱交換媒体の2つの流出入口と該2つの流出入口を連通する連通流路とを有する扁平な熱交換用チューブを構成するよう形成されたチューブ部材を隣接する熱交換用チューブの前記2つの流出入口が整合するように複数積層して構成され、前記熱交換用チューブ内に流れる前記熱交換媒体と隣接する熱交換用チューブの間に流れる被熱交換媒体とで熱交換する熱交換器であって、
前記チューブ部材は、前記2つの流出入口が前記被熱交換媒体の流れの方向に直列に並ぶように形成されており、且つ、前記連通流路が前記2つの流出入口の一方から他方にU字形状で鏡像対称な2つの流路として形成されている、
ことを特徴とする。
【0008】
この本発明の熱交換器では、複数積層された熱交換用チューブ内に流れる熱交換媒体と隣接する熱交換用チューブの間に流れる被熱交換媒体とで熱交換する。熱交換用チューブを構成するチューブ部材には、熱交換媒体の2つの流出入口と、この2つの流出入口を連通する連通流路とが形成されており、特に、2つの流出入口は被熱交換媒体の流れの方向に直列に並ぶように形成されている。このように2つの流出入口を形成することにより、2つの流出入口を被熱交換媒体の流れの方向に対して垂直な方向に直列に並ぶように形成するものに比して、流出入口の1つ分だけ被熱交換媒体の流路幅を広くすることができ、熱交換に有効な流路幅を広くすることができる。この結果、熱交換効率を向上させることができる。また、2つの流出入口は被熱交換媒体の流れの方向に直列に並ぶように形成されているから、2つの流出入口のうち被熱交換媒体の流れの下流側の一方に熱交換媒体を供給し、被熱交換媒体の流れの上流側の他方から熱交換媒体を排出するようにすれば、熱交換媒体の全体としての流れと被熱交換媒体の流れとを対向流とすることができ、熱交換効率を更に向上させることができる。さらに、2つの流出入口を連通する連通流路を、2つの流出入口の一方から他方にU字形状で鏡像対称な2つの流路として形成することにより、2つの流路に略均等に熱交換媒体を供給することができ、2つの流路で略均等に熱交換を行うことができる。これらの結果、熱交換効率を向上させることができる。
【0009】
こうした本発明の熱交換器において、前記チューブ部材は外形が矩形形状に形成されており、前記2つの流出入口は前記チューブ部材の長手方向の中央に短手方向に直列に並ぶように形成されており、前記連通流路は、前記2つの流出入口の一方から前記チューブ部材の長手方向の端部に至る第1流路部と前記端部から前記2つの流出入口の他方に至る第2流路部と前記端部で前記第1流路部と前記第2流路部とを接続するように折り返す折り返し流路部とからなる2つの流路として形成されているものとすることもできる。こうすれば、チューブ部材を長手方向の中央で鏡像対称なものとすることができる。したがって、チューブ部材として、熱交換用チューブの一方側のチューブ部材と他方側のチューブ部材とを形成する必要がなく、単一形状のチューブ部材を形成すればよいことになる。これにより、部品点数を少なくすることができ、組み付け性を向上させることができる。
【0010】
この場合、前記第1流路部は前記チューブ部材の縁に沿って形成されており、前記第2流路部は前記チューブ部材の中央に沿って形成されており、前記第1流路部と前記第2流路部との間は、前記第2流路部の幅より広くなるように形成されており、前記第2流路部と前記チューブ部材の縁までの間は前記第1流路部の幅より広くなるように形成されているものとすることもできる。即ち、チューブ部材の長手方向に沿った中央ラインを考えると、第1流路部は中央ラインで2つに区分けされるチューブ部材の一方側で中央ラインから第2流路部の幅より離れてチューブ部材の縁の近くに形成され、第2流路部は中央ラインで2つに区分けされるチューブ部材の他方側でチューブ部材の縁から第1流路部の幅より離れて中央ラインの近くに形成されることになる。更にこの場合、チューブ部材を、隣接する熱交換用チューブの一方の第2流路部が他方の第1流路部と第2流路部との間の部位と向き合うように複数積層して熱交換器を構成するものとすることができる。即ち、熱交換用チューブの向きを積層する毎に熱交換用チューブの扁平面に垂直な軸を回転軸として180度回転させるようにするのである。こうすれば、第2流路部は隣接する熱交換用チューブの第1流路部と第2流路部との間の流路が形成されていない部位と向き合い、第1流路部は隣接する熱交換用チューブの第2流路部より縁側の流路が形成されていない部位と向き合うことになるから、隣接する熱交換用チューブの間の隙間を略一定に確保することができる。しかも、隣接する熱交換用チューブの間の隙間が被熱交換媒体の流れ方向に蛇行するから、被熱交換媒体の流れに若干の乱れを生じさせ、熱交換効率を向上させることができる。
【0011】
本発明の熱交換器の製造方法は、
熱交換器の製造方法であって、
第1金属による中心材に前記第1金属より融点の低い第2金属が両面に接合され厚みが0.3mm以下としたクラッド板材を用いて、外形が矩形形状で、長手方向の中央で短手方向に直列に並ぶように熱交換媒体の2つの流出入口を有し、前記2つの流出入口の一方から長手方向の端部に至る第1流路部と前記端部から前記2つの流出入口の他方に至る第2流路部と前記端部で前記第1流路部と前記第2流路部とを接続するように折り返す折り返し流路部とからなる鏡像対称のU字形状の2つの連通流路を有するチューブ部材を形成するチューブ部材形成工程と、
前記2つの連通流路および前記2つの流出入口が整合するように2つのチューブ部材を向かい合わせて構成される扁平な熱交換用チューブが複数積層された状態となるように前記チューブ部材を複数積層して積層体を組み付ける組み付け工程と、
前記第1金属の融点より低く前記第2金属の融点より高い温度に調整された炉を用いて前記積層体をロウ付けするロウ付け工程と、
を有することを要旨とする。
【0012】
本発明の熱交換器の製造方法では、向かい合わせることにより扁平な熱交換用チューブを構成するチューブ部材を、第1金属による中心材に前記第1金属より融点の低い第2金属が両面に接合され厚みが0.3mm以下としたクラッド板材を用いて形成する。そして、熱交換用チューブが複数積層された状態となるようにチューブ部材を複数積層して積層体を組み付け、これを第1金属の融点より低く前記第2金属の融点より高い温度に調整された炉を用いて前記積層体をロウ付けする。即ち、クラッド板材に対してプレス加工などを施して複数のチューブ部材を形成し、形成した複数のチューブ部材を熱交換用チューブが複数積層された状態となるように複数積層し、この積層体を炉に入れることにより、熱交換器を完成する。完成した熱交換器は、外形が矩形形状で、長手方向の中央で短手方向に直列に並ぶように熱交換媒体の2つの流出入口を有し、2つの流出入口の一方から長手方向の端部に至る第1流路部とこの端部から2つの流出入口の他方に至る第2流路部と端部で第1流路部と第2流路部とを接続するように折り返す折り返し流路部とからなる鏡像対称のU字形状の2つの連通流路を有するチューブ部材を積層して構成されるから、上述の本発明の熱交換器となる。この結果、熱交換効率の高い熱交換器をより簡易に製造することができる。
【0013】
こうした本発明の熱交換器の製造方法において、前記チューブ部材形成工程は、前記第1流路部が前記チューブ部材の縁に沿うように、前記第2流路部が前記チューブ部材の中央に沿うように、前記第1流路部と前記第2流路部との間が前記第2流路部の幅より広くなるように、前記第2流路部と前記チューブ部材の縁までの間が前記第1流路部の幅より広くなるように前記チューブ部材を形成する工程であり、前記組み付け工程は、隣接する熱交換用チューブの一方の前記第2流路部が他方の前記第1流路部と前記第2流路部との間の部位と向き合うように前記チューブ部材を複数積層する工程であるものとすることもできる。この場合、チューブ部材の長手方向に沿った中央ラインを考えると、第1流路部は中央ラインで2つに区分けされるチューブ部材の一方側で中央ラインから第2流路部の幅より離れてチューブ部材の縁の近くに形成され、第2流路部は中央ラインで2つに区分けされるチューブ部材の他方側でチューブ部材の縁から第1流路部の幅より離れて中央ラインの近くに形成されることになる。したがって、第2流路部は隣接する熱交換用チューブの第1流路部と第2流路部との間の流路が形成されていない部位と向き合い、第1流路部は隣接する熱交換用チューブの第2流路部より縁側の流路が形成されていない部位と向き合うことになるから、隣接する熱交換用チューブの間の隙間を略一定に確保することができる。しかも、隣接する熱交換用チューブの間の隙間が被熱交換媒体の流れ方向に蛇行するから、被熱交換媒体の流れに若干の乱れを生じさせ、熱交換効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例の熱交換器20の構成の概略を示す構成図である。
図2図1におけるA−A断面を模式的に示す断面図である。
図3】熱交換用チューブ30Aの構成の概略を示す構成図である。
図4】熱交換用チューブ30Bの構成の概略を示す構成図である。
図5図1におけるB−B面の断面図である。
図6図1におけるC−C面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の実施例の熱交換器20の構成の概略を示す構成図である。図2は、図1におけるA−A断面を模式的に示す断面図である。実施例の熱交換器20は、空調装置や冷凍装置などの冷凍サイクルや発熱を伴って作動する機器の冷却装置などに用いられ、図1に示すように、2つのチューブ部材40により構成される熱交換用チューブ30A,30Bを交互に複数積層して構成される積層体22と、積層体22の配列方向(図中上下方向)の両側に配置されるプレート23と、各熱交換用チューブ30A,30Bの長手方向(図中左右方向)の両側に配置されるプレート24と、積層体22およびプレート23に形成される熱交換媒体の流入用流路25および流出用流路26に取り付けられる供給管27および排出管28と、を備える。この熱交換器20は、流入用流路25から各熱交換用チューブ30A,30Bに形成された後述する連通流路46,47に供給されるハイドロフルオロカーボンや水などの熱交換媒体と隣接する熱交換用チューブ30A,30Bの間の隙間に流れる空気などの被熱交換媒体との熱交換により、熱交換媒体を加熱または冷却する又は被熱交換媒体を冷却または加熱する。図2中、供給管27および排出管28の上に記載された白抜き矢印は、熱交換媒体の供給や排出の方向を示しており、熱交換器20の左右に記載された白抜き矢印は、被熱交換媒体の流れる方向を示している。
【0017】
図3は、熱交換用チューブ30Aの構成の概略を示す構成図である。図4は、熱交換用チューブ30Bの構成の概略を示す構成図である。図5は、図1におけるB−B面の断面図であり、図6は、図1におけるC−C面の断面図である。
【0018】
熱交換用チューブ30Bは、図3および図4に示すように、熱交換用チューブ30Aの扁平面を水平にしたときに熱交換用チューブ30Aを鉛直軸回りに180度回転させたものと同一である。即ち、熱交換用チューブ30Bは、熱交換用チューブ30Aを180度回転させただけで、熱交換用チューブ30Aと同一となる。
【0019】
熱交換用チューブ30A,30Bは、アルミニウムの板材の両面にアルミシリコン合金などのロウ材を配置して一体に圧延することによって板材とロウ材とを接合した厚さが0.2mmのいわゆるクラッド板材に対して、プレス加工や穴開け加工などを施したチューブ部材40を向かい合わせに接合することによって構成されている。チューブ部材40には、図3および図4に示すように、長手方向(図中左右方向)の中央に短手方向に直列に並ぶように2つの流出入口用貫通孔42a,42bが形成されており、この2つの流出入口用貫通孔42a,42bを連通するようにU字形状の2つの連通流路46,47が形成されている。また、2つの流出入口用貫通孔42a,42bの周囲のフランジ部44a,44bが形成されており、2つの流出入口用貫通孔42a,42bの間にはスリット49が形成されている。スリット49は、2つの流出入口用貫通孔42a,42bにおける熱交換媒体の伝熱を抑制するために設けられている。
【0020】
フランジ部44a,44bは、熱交換用チューブ30A,30Bを積層したときに隣接するフランジ部44a,44bと接合するように形成されている。これにより、図6に示すように、隣接する熱交換用チューブ30A,30Bの間隔を所定間隔に保持すると共に、熱交換用チューブ30A,30Bの両端部近傍の流出入口用貫通孔42a,42bが積層方向に接続されて熱交換媒体の流入用流路25および流出用流路26を形成する。
【0021】
連通流路46,47は、2つの流出入口用貫通孔42a,42bの中央を通る直線(図3図4における上下方向の線)で鏡像対称となる一定幅の流路として形成されており、チューブ部材40の長手方向に沿った中央ラインを考えたときに、中央ラインで2つに区分けされるチューブ部材の図3における上側(図4における下側)で中央ラインから離れてチューブ部材40の縁近傍に縁に沿って流出入口用貫通孔42aからチューブ部材40の端部に至るように形成された第1流路部46a,47aと、中央ラインで2つに区分けされるチューブ部材の図3における下側(図4における上側)でチューブ部材の縁から離れて中央ライン近傍に中央ラインに沿って端部から流出入口用貫通孔42bに至るように形成された第2流路部46b,47bと、端部で第1流路部46a,47aと第2流路部46b,47bとを接続するように折り返す折り返し流路部46c,47cとにより構成されている。そして、第2流路46b,47bとチューブ部材40の縁(図3における下端、図4における上端)との間の流路が形成されていない端部ヒレ部48aの幅は、第1流路部46a,47aの幅(実施例では単に流路の幅)より広くなるように形成されており、第1流路部46a,47aと第2流路部46b,47bの間の流路が形成されていない中央ヒレ部48bの幅は、第2流路部46b,47bの幅(実施例では単に流路の幅)より広くなるように形成されている。このように連通流路46,47を形成することにより、熱交換用チューブ30A,30Bを交互に積層したときに、図5に示すように、熱交換用チューブ30A,30Bの間の隙間を、幅が略一定となるように且つ蛇行するように形成することができる。
【0022】
実施例では、チューブ部材40を図3の熱交換用チューブ30Aと図4の熱交換用チューブ30Bとが交互に積層されるように積層配置して積層体22とし、これにプレート23,24および供給管27,排出管28を組み付け、これをロウ材の融点より高く板材の融点より低い温度(例えば610℃や620℃など)で加熱することによって当接部を接合(ロウ付け)して熱交換器20を完成する。即ち、熱交換用チューブ30A、30Bを構成するチューブ部材40の向かい合わせの接触部を接合すると共に隣接する熱交換用チューブ30A,30Bのフランジ部44a,44bの接触部を接合し、同時にプレート23,24や供給管27,排出管28を接合するのである。
【0023】
こうして構成された熱交換器20では、ハイドロフルオロカーボンや水などの熱交換媒体は、供給管27から2つの流出入口用貫通孔42a,42bにより形成される流入用流路25に供給され、各熱交換用チューブ30A,30Bの連通流路46,47を流れて2つの流出入口用貫通孔42a,42bにより形成される流出用流路26に流出し、排出管28から排出される。一方、空気などの被熱交換媒体は、流出用流路26側から各熱交換用チューブ30A,30Bに供給され、各熱交換用チューブ30A,30Bの間の隙間を蛇行して流れて熱交換媒体と熱交換を行ない、流入用流路25側から排出される。このように、熱交換媒体と被熱交換媒体とを給排することにより、熱交換媒体の全体としての流れと被熱交換媒体の流れとを対向流とすることができる。
【0024】
以上説明した実施例の熱交換器20では、チューブ部材40を、長手方向の中央に短手方向に直列に並ぶように2つの流出入口用貫通孔42a,42bを有するように、且つ、この2つの流出入口用貫通孔42a,42bを連通するU字形状の2つの連通流路46,47を有するように形成して熱交換用チューブ30A,30Bを構成する。これにより、長手方向に対して垂直方向に被熱交換媒体を給排したときに、矩形の熱交換用チューブの長手方向の両端部に2つの流出入口用貫通孔が形成されていると共にこの2つの流出入口用貫通孔を連通する連通流路が形成されているものに比して、流出入口用貫通孔の1つ分だけ被熱交換媒体の流路幅を広くすることができ、熱交換に有効な流路幅を広くすることができる。この結果、熱交換効率を向上させることができる。また、2つの流出入口用貫通孔42a,42bは、被熱交換媒体の流れの方向に直列に並ぶように形成されているから、2つの流出入口用貫通孔42a,42bにより形成される2つの流路22,24のうち被熱交換媒体の流れの下流側を流入用流路25として熱交換媒体を供給し、被熱交換媒体の流れの上流側を流出用流路26として熱交換媒体を排出するようにすれば、熱交換媒体の全体としての流れと被熱交換媒体の流れとを対向流とすることができ、熱交換効率を更に向上させることができる。さらに、連通流路46,47を、2つの流出入口用貫通孔42a,42bの一方から他方にU字形状で鏡像対称な2つの流路として形成することにより、2つの流路46,47に略均等に熱交換媒体を供給することができ、2つの流路46,47で略均等に熱交換を行うことができる。これらの結果、熱交換効率を向上させることができる。このように鏡像対称としてチューブ部材40を形成するから、熱交換用チューブ30A,30Bの一方側のチューブ部材と他方側のチューブ部材とを形成する必要がなく、単一形状のチューブ部材40を形成すればよいことになる。これにより、部品点数を少なくすることができ、組み付け性を向上させることができる。
【0025】
実施例の熱交換器20では、連通流路46,47の第1流路部46a,47aを、チューブ部材40の長手方向に沿った中央ラインを考えたときに、中央ラインで2つに区分けされるチューブ部材40の一方側で中央ラインから離れてチューブ部材40の縁近傍に縁に沿って流出入口用貫通孔42aからチューブ部材40の端部に至るように形成し、第2流路部46b,47bを中央ラインで2つに区分けされるチューブ部材40の他方側でチューブ部材40の縁から離れて中央ライン近傍に中央ラインに沿って端部から流出入口用貫通孔42bに至るように形成し、折り返し流路部46c,47cを第1流路部46a,47aと第2流路部46b,47bとを接続するように形成する。また、チューブ部材40の端部ヒレ部48aの幅を第1流路部46a,47aの幅より広くなるように形成すると共に中央ヒレ部48bの幅を第2流路部46b,47bの幅より広くなるように形成する。そして、熱交換用チューブ30A,30Bを交互に積層して熱交換器20を構成する。このため、熱交換用チューブ30A,30Bの間の隙間を、幅が略一定となるように且つ蛇行するように形成することができる。この結果、被熱交換媒体の圧損を抑制すると共に被熱交換媒体の流れに若干の乱れを生じさせ、熱交換効率を向上させることができる。
【0026】
実施例の熱交換器20では、2つの流出入口用貫通孔42a,42bの間にスリット49を形成することにより、2つの流出入口用貫通孔42a,42bにおける熱交換媒体の伝熱を抑制することができる。この結果、熱交換効率を向上させることができる。
【0027】
実施例の熱交換器20の製造方法では、向かい合わせることにより扁平な熱交換用チューブ30A,30Bを構成するチューブ部材40をクラッド板材を用いて形成し、熱交換用チューブ30A,30Bを交互に複数積層した状態となるようにチューブ部材40を複数積層して積層体22を組み付け、これをロウ材の融点より高く板材の融点より低い温度の炉に入れて当接部を接合(ロウ付け)して実施例の熱交換器20を完成する。このため、熱交換効率の高い実施例の熱交換器20をより簡易に製造することができる。
【0028】
実施例の熱交換器20では、連通流路46,47の第1流路部46a,47aをチューブ部材40の長手方向の縁近傍に縁に沿って流出入口用貫通孔42aからチューブ部材40の端部に至るように形成し、第2流路部46b,47bをチューブ部材40の長手方向の中央ライン近傍に中央ラインに沿って端部から流出入口用貫通孔42bに至るように形成し、折り返し流路部46c,47cを第1流路部46a,47aと第2流路部46b,47bとを接続するように形成したが、第1流路部および第2流路部をチューブ部材の縁と中央ラインとの中央に形成するものとしても構わない。この場合、チューブ部材を向かい合わせた熱交換用チューブは、長手方向の中央ラインで鏡像対称となるから、実施例の熱交換器20の熱交換用チューブ30A,30Bに相当するものは同一形状となる。
【0029】
実施例の熱交換器20では、2つの流出入口用貫通孔42a,42bの間にスリット49を形成したが、こうしたスリット49を形成しないものとしてもよい。
【0030】
実施例の熱交換器20では、流出入口用貫通孔42a,42bの周囲にフランジ部44a,44bを形成するものとしたが、フランジ部44a,44bに代えてバーリング加工によりバーリング加工部を形成するものとしてもよい。この場合、チューブ部材の2つのバーリング加工部のうちの一方のバーリング加工部が他方のバーリング加工部に嵌合するよう一方のバーリング加工部の径を他方のバーリング加工部の径より若干小さく或いは若干大きく形成するのが好ましい。こうしたバーリング加工部を有するチューブ部材を、実施例の熱交換用チューブ30Aと熱交換用チューブ30Bとが交互に重なるように積層すれば、向かい合うチューブ部材のバーリング加工部が嵌まり合うようにすることができる。
【0031】
実施例の熱交換器20では、アルミニウムの板材の両面にアルミシリコン合金などのロウ材を接合した厚さが0.2mmのクラッド板材を用いてチューブ部材40を形成するものとしたが、0.2mmより薄いアルミニウムとアルミニウム合金によるクラッド板材や0.2mmより厚いアルミニウムとアルミニウム合金によるクラッド板材を用いてチューブ部材40を形成するものとしてもよい。また、ステンレスの板材の両面に銅やニッケルなどのロウ材を接合したクラッド板材やステンレスに板材の両面にメッキを施した板材を用いてチューブ部材を形成するものとしてもよい。さらに、銅の板材の両面にロウ材を接合したりメッキした板材を用いてチューブ部材を形成するものとしてもよい。
【0032】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、熱交換器の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
20 熱交換器、22 積層体、23,24 プレート、25 流入用流路、26 流出用流路、27 供給管、28 排出管、30A,30B 熱交換用チューブ、40 チューブ部材、42a,42b 流出入口用貫通孔、44a,44b フランジ部、46,47 連通流路、46a,47a 第1流路部、46b,47b 第2流路部、46c,47c 折り返し流路部、48a 端部ヒレ部、48b 中央ヒレ部、49 スリット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6