特許第6531355号(P6531355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6531355
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/26 20060101AFI20190610BHJP
   H01F 27/30 20060101ALI20190610BHJP
【FI】
   H01F27/26 130Q
   H01F27/30 101C
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-116918(P2014-116918)
(22)【出願日】2014年6月5日
(65)【公開番号】特開2015-230984(P2015-230984A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 尚樹
【審査官】 井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−123529(JP,A)
【文献】 特開2013−004962(JP,A)
【文献】 特開2013−115379(JP,A)
【文献】 特開平10−223449(JP,A)
【文献】 特開平01−158710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/26
H01F 27/30
H01F 30/10
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状のボビン部、および前記ボビン部に連接されたベース部を有するボビンベースと、
前記ボビン部の周囲に巻回されたコイルと、
前記ボビン部に挿通されるコア芯部を有し前記コイルが形成する磁束の磁路を構成する磁性コアと、を備えるコイル部品であって、
前記磁性コアは、前記コア芯部に交差して形成されたコア端部をそれぞれ有する一対の磁性部材を組み合わせてなり、
前記ベース部は、前記コア芯部を前記ボビン部に挿通した状態で一対の前記コア端部の少なくとも一方と嵌合する嵌合部を有し、
前記嵌合部と嵌合している前記コア端部と前記ベース部とが略面一な接合面を構成しており、
前記ベース部は前記接合面の一部を構成する突出部を有し、前記コア端部は前記突出部を収容する凹形状の係合凹部を有し、
前記突出部は前記コア端部に向かって幅方向の内側にせり出すように延出して形成されており、
互いに嵌合する前記コア端部と前記ベース部とに亘って面状の固定部材が前記突出部と前記係合凹部のそれぞれ少なくとも一部を覆うように前記接合面に接合され、かつ前記固定部材の幅寸法が前記コア端部の幅寸法よりも小さく、前記固定部材が前記コア端部の幅内に接合されて一対の前記磁性部材と前記ボビンベースとが互いに固定されており、
前記固定部材は帯状の粘着テープであって、前記粘着テープが前記ボビンベースを周回して接合されて一対の前記コア端部および前記ベース部の前記突出部に亘って接合されていることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
中空筒状のボビン部、および前記ボビン部に連接されたベース部を有するボビンベースと、
前記ボビン部の周囲に巻回されたコイルと、
前記ボビン部に挿通されるコア芯部を有し前記コイルが形成する磁束の磁路を構成する磁性コアと、を備えるコイル部品であって、
前記磁性コアは、前記コア芯部に交差して形成されたコア端部をそれぞれ有する一対の磁性部材を組み合わせてなり、
前記ベース部は、前記コア芯部を前記ボビン部に挿通した状態で一対の前記コア端部の少なくとも一方と嵌合する嵌合部を有し、
互いに嵌合する前記コア端部と前記ベース部とに亘って面状の固定部材が接合されて一対の前記磁性部材と前記ボビンベースとが互いに固定されており、
前記固定部材の幅寸法が前記コア端部の幅寸法よりも大きく、前記固定部材が前記コア端部の幅方向の両外側に延出しており、
前記固定部材は帯状の粘着テープであって、前記粘着テープが前記ボビンベースを周回して接合されて一対の前記コア端部および前記コア端部の幅方向の両外側の前記ベース部に亘って接合されていることを特徴とするコイル部品。
【請求項3】
前記ベース部は、前記ボビン部の巻軸方向の両端に形成された鍔部と、前記鍔部の外側に形成された前記嵌合部と、を含み、
一対の前記磁性部材は、前記ボビン部の前記巻軸方向の両端にそれぞれ装着されて前記コア端部が前記嵌合部とそれぞれ嵌合している請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記コイルから引き出された巻線リードが接続される端子部が、周回する前記固定部材を挟んで前記ボビンベースの両側にそれぞれ突出して設けられているとともに、前記端子部の実装面が前記固定部材よりも低位に位置している請求項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記ボビンベースが、前記巻線リードを案内する引出溝を有し、
前記固定部材が前記引出溝の少なくとも一部を覆っている請求項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビンベースおよびコイルを備え、たとえばトランスとして用いられるコイル部品、およびコイル部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤを巻回したコイルに対して磁性材料からなるコア(磁性コア)を挿通した各種のコイル部品が提供されている。
【0003】
この種のコイル部品に関し、特許文献1には、外周面に溝部が形成された一対のコア(磁性部材)を突き合わせ、溝部をガイドとしてテープを巻回することによってコア(磁性部材)同士が固定されたコイル部品が記載されている。これにより、一対の磁性部材が互いに位置ずれすることを防止して所望の形状の磁路を安定して形成することができるとされている。
【0004】
特許文献2には、磁性材料からなり磁脚をそれぞれ有する第1コアと第2コアを、コイルが巻回されたボビンに挿通した状態で磁脚同士を互いに突き当てて接着し、熱収縮チューブなどの弾性部材によって接着部が内向きに押圧されたコイル部品が記載されている。特許文献2のコイル部品のようにボビンを用いることで、任意形状のボビンおよびコイルを容易に形成できるとともに、ワイヤの巻回工程においてその巻張力によってコアが損傷することが防止される。特許文献2において熱収縮チューブは、一対の外側磁脚の外側およびコイルの外表面を通りボビンの巻軸方向に直交するように巻き付けられている。これにより、一対の第1コアおよび第2コアとコイルとが熱収縮チューブによって摩擦的に接合されている。
【0005】
特許文献1および特許文献2のコイル部品では、一対の磁性部材がコイルに対して巻軸方向の両側から挿入され、互いに組み合わされて一つの磁性コアが構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−28012号公報
【特許文献2】特開2010−165857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コイル部品の主要な特性の一つであるインダクタンスは、コイルと磁性コアの相対位置のずれに伴って変動するため問題となる。特許文献1のコイル部品の場合、一対の磁性部材はE字状を為し、互いに突き合わされてテープで固定されて磁性コアが構成されている。しかしながら、成形加工上、磁性コアの中脚部と空芯コイルの中心孔との間には不可避的に空隙が形成されるため、磁性コアと空芯コイルの相対位置がずれる虞がある。特許文献2のコイル部品も、一対の磁性部材(第1コア、第2コア)とコイルとが熱収縮チューブに押圧されて摩擦的に接合されているにすぎないため、組み立て時に磁性コアとボビンとの間に位置ずれが生じる虞がある。その結果、磁性コアとコイルの相対位置が変化してインダクタンスが変動する虞がある。特許文献1や特許文献2のコイル部品のように、一対の磁性部材およびコアの少なくとも3つの部材の相対位置をずれなく固定することは困難であり、製品ごとにインダクタンスの個体差が生じ、製品特性の安定性に問題が生じる。
【0008】
一方、一対の磁性部材とボビンとを所望の相対位置で固定するためには、これらの部材を専用の治具で保持した状態で接着剤によって接合して一体化するという手法も採ることができる。しかしながら、コイル部品の形状は多種多様であるため、製品ごとに専用の治具を用意する必要がありコスト上のデメリットとなる。また、治具に各部材を取り付け、そして治具から取り外しをする工程が発生するため製造工程数の増大を招来する。
【0009】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、製品特性の安定性と生産性に優れるコイル部品、およびかかるコイル部品の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、中空筒状のボビン部、および前記ボビン部に連接されたベース部を有するボビンベースと、前記ボビン部の周囲に巻回されたコイルと、前記ボビン部に挿通されるコア芯部を有し前記コイルが形成する磁束の磁路を構成する磁性コアと、を備えるコイル部品であって、前記磁性コアは、前記コア芯部に交差して形成されたコア端部をそれぞれ有する一対の磁性部材を組み合わせてなり、前記ベース部は、前記コア芯部を前記ボビン部に挿通した状態で一対の前記コア端部の少なくとも一方と嵌合する嵌合部を有し、前記嵌合部と嵌合している前記コア端部と前記ベース部とが略面一な接合面を構成しており、前記ベース部は前記接合面の一部を構成する突出部を有し、前記コア端部は前記突出部を収容する凹形状の係合凹部を有し、前記突出部は前記コア端部に向かって幅方向の内側にせり出すように延出して形成されており、互いに嵌合する前記コア端部と前記ベース部とに亘って面状の固定部材が前記突出部と前記係合凹部のそれぞれ少なくとも一部を覆うように前記接合面に接合され、かつ前記固定部材の幅寸法が前記コア端部の幅寸法よりも小さく、前記固定部材が前記コア端部の幅内に接合されて一対の前記磁性部材と前記ボビンベースとが互いに固定されており、前記固定部材は帯状の粘着テープであって、前記粘着テープが前記ボビンベースを周回して接合されて一対の前記コア端部および前記ベース部の前記突出部に亘って接合されていることを特徴とするコイル部品が提供される。また本発明によれば、中空筒状のボビン部、および前記ボビン部に連接されたベース部を有するボビンベースと、前記ボビン部の周囲に巻回されたコイルと、前記ボビン部に挿通されるコア芯部を有し前記コイルが形成する磁束の磁路を構成する磁性コアと、を備えるコイル部品であって、前記磁性コアは、前記コア芯部に交差して形成されたコア端部をそれぞれ有する一対の磁性部材を組み合わせてなり、前記ベース部は、前記コア芯部を前記ボビン部に挿通した状態で一対の前記コア端部の少なくとも一方と嵌合する嵌合部を有し、互いに嵌合する前記コア端部と前記ベース部とに亘って面状の固定部材が接合されて一対の前記磁性部材と前記ボビンベースとが互いに固定されており、前記固定部材の幅寸法が前記コア端部の幅寸法よりも大きく、前記固定部材が前記コア端部の幅方向の両外側に延出しており、前記固定部材は帯状の粘着テープであって、前記粘着テープが前記ボビンベースを周回して接合されて一対の前記コア端部および前記コア端部の幅方向の両外側の前記ベース部に亘って接合されていることを特徴とするコイル部品が提供される。
【0012】
上記発明によれば、コア端部とベース部とに亘って面状の固定部材を接合することによって磁性部材とボビンベースとが固定されるため、インダクタンスなどの製品特性の個体差を低減することができる。このとき、磁性コアのコア端部をベース部の嵌合部と嵌合させた状態で固定部材を接合するため、専用の治具を用いることなく磁性部材とボビンベースとの位置ずれを容易に抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、製品特性の安定性と生産性に優れるコイル部品およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態のコイル部品を示す上方斜視図である。
図2】第一実施形態のコイル部品を示す下方斜視図である。
図3】一対の磁性部材とボビンベースとを分離した状態を示す上方斜視図である。
図4】一対の磁性部材とボビンベースとを分離した状態を示す下方斜視図である。
図5】本発明の第二実施形態のコイル部品を示す上方斜視図である。
図6】第二実施形態のコイル部品を示す下方斜視図である。
図7】本発明の第三実施形態のコイル部品を巻軸方向に沿って切断した縦断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各図面において、対応する構成要素には共通の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0016】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態のコイル部品100を示す上方斜視図である。図2は、第一実施形態のコイル部品100を示す下方斜視図である。図3は、一対の磁性部材51、52とボビンベース10とを分離した状態を示す上方斜視図である。図4は、一対の磁性部材51、52とボビンベース10とを分離した状態を示す下方斜視図である。
【0017】
はじめに、本実施形態の概要について説明する。
【0018】
本実施形態のコイル部品100は、ボビンベース10、コイル40および磁性コア50を備えている。
ボビンベース10は、中空筒状のボビン部12、およびこのボビン部12に連接されたベース部20を有する。コイル40はボビン部12の周囲に巻回されている。磁性コア50は、ボビン部12に挿通されるコア芯部53を有し、コイル40が形成する磁束の磁路を構成している。磁性コア50は、一対の磁性部材51、52を組み合わせてなる。磁性部材51、52は、コア芯部53に交差して形成されたコア端部54a、54bをそれぞれ有している。ベース部20は、コア芯部53をボビン部12に挿通した状態で、一対のコア端部54a、54bの少なくとも一方と嵌合する嵌合部30、31を有している。
本実施形態のコイル部品100は、互いに嵌合するコア端部54a、54bとベース部20とに亘って面状の固定部材70が接合されて、一対の磁性部材51、52とボビンベース10とが互いに固定されていることを特徴とする。
【0019】
次に、本実施形態について詳細に説明する。
【0020】
図1および図2に示すように、便宜上、XYZ直交三軸方向を定義する。図3以下も共通とする。具体的には、端子部14の実装面15が設けられている側を−Z方向と呼称し、その反対側を+Z方向と呼称する。また、複数の端子部14の実装面15によって張られる平面をXY平面とする。本実施形態では、端子部14がボビンベース10から突出する方向を±X方向とし、+Z方向と+X方向に対して共に交差する方向を+Y方向としている。本明細書において、+Z方向を上方と呼称し、−Z方向を下方と呼称する場合があるが、これはコイル部品100における各要素の相対関係を便宜的に説明するための呼称であり、コイル部品100の生産時や使用時における鉛直上下方向とは必ずしも一致しない。同様に、−Z側に位置する面を下面、+Z側に位置する面を上面と呼称する場合があるが、これらの面の相対的な位置関係と鉛直上下方向との関係は任意であり必ずしも一致しない。
【0021】
また、便宜上、平面視とは+Z側から目視した状態、正面視とは+Y側から目視した状態、側面視とは+X側から目視した状態をいう。また、±Z方向をコイル部品100の厚み方向と呼称し、±X方向をコイル部品100の幅方向と呼称する場合がある。
【0022】
コイル部品100はコイル40を備える部品であり、他の部品(図示せず)と組み合わせて種々の製品を構成するために用いられる。コイル部品100はコイル40に電流を流したときインダクタンスを生じるインダクタである。コイル部品100が備えるコイル40は一つでも複数でもよい。コイル部品100の用途としては、トランス(変成器)やチョークコイル等が挙げられる。
【0023】
ボビンベース10は、コイル40が巻回されているボビン部12と、端子部14を保持するベース部20と、を備え、コイル部品100の主要な構造をなす本体部である。
【0024】
ボビン部12は、中空筒状をなしコイル40が巻回されている巻軸部分をいう。ボビン部12には、巻軸方向(Z方向)に延在する通孔13が貫通形成されている。ベース部20は、ボビンベース10のうちのボビン部12(巻軸部分)以外の領域をいう。より具体的には、本実施形態のベース部20は、ボビン部12よりも下方(−Z側)の下側ベース部20aと、上方(+Z側)の上側ベース部20bとを含む。
【0025】
ボビンベース10は一または複数の部材からなる。本実施形態ではボビン部12とベース部20とが分離不可に一体形成されたボビンベース10を例示するが、本発明はこれに限られない。ボビン部12を含む部品と、ベース部20を含む部品とが分離可能な別部品で構成されていてもよい。本実施形態のボビンベース10は全体に絶縁体からなり、具体的にはフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂で形成されている。
【0026】
本実施形態のボビン部12の巻軸方向は±Z方向であるが、本発明はこれに限られず、ボビン部12の巻軸方向はXY平面の面内方向を向いていてもよく、またはXYZ方向のいずれとも異なる方向を向いていてもよい。ボビン部12の巻軸方向の一端はベース部20(下側ベース部20a)に連接されており、他端にはボビン部12よりも大径の鍔状部(上側ベース部20b)が形成されている。下側ベース部20aおよび上側ベース部20bは、ともにベース部20を構成する。下側ベース部20aおよび上側ベース部20bは、平面視で略矩形状をなす。下側ベース部20aは、ボビン部12の下端に一体成形されてコイル40の巻き緩みを規制する平板状の鍔部21aを含んでいる。同様に、上側ベース部20bは、ボビン部12の上端に一体成形されてコイル40の巻き緩みを規制する平板状の鍔部21bを含んでいる。鍔部21aおよび鍔部21bを平面視した形状および寸法は互いに等しい。また、鍔部21a、21bのうち、端子部14の形成側にあたる鍔部21aは、他方側(鍔部21b)よりも肉厚に形成されて機械的強度が確保されている。
【0027】
本実施形態のコイル40は複数本の巻線からなり、同一の閉磁路を共有している。これにより、一方の巻線に電流が流れて電磁場が生じると相互誘導によって他方にも電流が流れる。コイル部品100はトランスやチョークコイル等に用いることができる。コイル40を構成する個々の巻線の巻数や線径、材料はコイル部品100の仕様に基づいて選択される。
【0028】
磁性コア50は、通電されたコイル40が形成する磁束の磁路を構成する部材である。本実施形態の磁性コア50は、ボビン部12に挿通されるコア芯部53(中足部)と、このコア芯部53と反対向きに磁束が流れる2本の周辺磁脚55(外足部)を備え、閉磁路構造をなしている。ただし、後述する第三実施形態で説明するように、磁性コア50は開磁路構造をなしてもよい。本実施形態の磁性コア50は、一対の磁性部材51、52を組み合わせてなる。本実施形態の磁性部材51は側面視で横倒しE字状をなし、磁性部材52は側面視で横倒しI字状をなしている。言い換えると、本実施形態の磁性コア50は、いわゆるE−Iコアであり、コア芯部53は磁性部材51のみに設けられている。ただし本実施形態に代えて、磁性コア50は、磁性部材51、52がともにコア芯部53を有してE字状をなすE−Eコアでもよい。また磁性コア50は、第三実施形態で説明するように磁性部材51、52が周辺磁脚55を備えず開磁路構造をなしてもよい。具体的には、磁性部材51、52の両方が、コア芯部53およびコア端部54a、54bからなるT字状をなすTコアであって、磁性コア50がいわゆるT−Tコアであってもよい(図7参照)。また、磁性部材51、52の一方がコア芯部53およびコア端部54a(またはコア端部54b)からなるT字状をなすTコアであり、他方が本実施形態の磁性部材52のようなI字状であって、磁性コア50がいわゆるT−Iコアでもよい。
【0029】
磁性部材51は、コア芯部53、2本の周辺磁脚55、およびこれらを連結するコア端部54aからなる。磁性部材52はコア端部54bのみからなり、平板状をなしている。磁性部材51、52は、互いに同種または異種の磁性材料からなり、具体的にはフェライトなどの強磁性体からなる。
【0030】
上述のように、ベース部20は、ボビン部12の巻軸方向の両端に形成された鍔部21a、21bと、これらの鍔部21a、21bの外側に形成された嵌合部30、31と、を含んで構成されている。一対の磁性部材51、52は、図3および図4に矢印で示すように、ボビン部12の巻軸方向の両端にそれぞれ装着されてコア端部54a、54bが嵌合部30、31とそれぞれ嵌合している。本実施形態の嵌合部30、31は、ベース部20のうち上下両外側に形成された凹部である。
【0031】
図3に示すように、上側ベース部20bには、鍔部21bおよび上側段差部23が形成されている。上側段差部23と鍔部21bとの上面同士の高低差により形成される凹部が嵌合部31にあたる。
【0032】
図4に示すように、下側ベース部20aには、鍔部21a、下側段差部22および側縁部27が形成されている。下側段差部22と鍔部21aとの下面同士の高低差により形成される凹部が嵌合部30にあたる。側縁部27は下側段差部22よりも僅かに下方に突出する肉厚部である。側縁部27の側方(±X方向)にそれぞれ突出するように複数本の端子部14が設けられている。
【0033】
本実施形態のベース部20の厚み寸法(Z方向寸法)は幅寸法(X方向寸法)よりも小さく、ベース部20は全体に薄型をなす。かかるベース部20に対して、この厚み寸法を増大させることなく磁性コア50のコア端部54a、54bが嵌合している。
【0034】
磁性コア50のコア芯部53をボビン部12に挿通した状態で、磁性部材51のコア端部54aは嵌合部30に嵌合し、磁性部材52(コア端部54b)は嵌合部31に嵌合する。この状態で、コア芯部53の上端はコア端部54bに突き当てられて互いに当接してもよく、またはコア芯部53とコア端部54bとの間に僅かなコアギャップ(中足ギャップ)が形成されて互いに近接してもよい。このように中足ギャップを形成することで、コア芯部53とコア端部54bとの擦れを防止してコア芯部53の唸りを抑制することができる。中足ギャップは、樹脂接着剤で埋められていてもよい。これにより、コア芯部53の振動を低減することができる。同様に、周辺磁脚55と磁性部材52との間にも僅かなコアギャップ(外足ギャップ)を形成することで周辺磁脚55の唸りを抑制することができる。そして、かかる外足ギャップを樹脂接着剤で埋めることで周辺磁脚55の振動を低減することができる。
また、コア端部54aが嵌合部30に嵌合することで、磁性部材51とベース部20とがXY平面内で相対移動することが規制される。同様に、コア端部54bが嵌合部31に嵌合することで、磁性部材52とベース部20とがXY平面内で相対移動することが規制される。
【0035】
固定部材70は、磁性コア50とボビンベース10とを互いに固定する部材である。本実施形態の固定部材70は帯状の粘着テープであって、ボビンベース10を周回して接合されて一対のコア端部54a、54bおよびベース部20を互いに固定している。なお、固定部材70がボビンベース10を周回しているとは、ボビンベース10の周囲のうち任意の軸周りの少なくとも3面に亘って固定部材70が連続して設けられていることをいう。本実施形態では、ボビンベース10のうち、+Z面(上面)および−Z面(下面)に加えて他の少なくとも1面に沿うように固定部材70が設けられている。より具体的には、+Z面(上面)および−Z面(下面)に加えて、+Y面および−Y面に沿って固定部材70が設けられている。これにより、一対のコア端部54a、54bが固定部材70によって互いに固定されている。固定部材70は、本実施形態のように3面を超えてボビンベース10の周囲に設けられているとよく、更に任意の軸周りの360度(またはそれ以上)に亘ってボビンベース10の周囲に設けられているとよい。これにより、ボビンベース10と磁性コア50とをより強固に固定することができる。
【0036】
固定部材70は、薄地で可撓性を有する帯状の樹脂材料からなる。具体的な樹脂材料は特に限定されないが、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂やポリイミド樹脂など、250℃を超える耐熱性を有する熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0037】
コア端部54a、54bとベース部20とを互いに嵌合させた状態で両者に亘って固定部材70を接合することにより、磁性コア50とベース部20とが相対移動することなく固定される。これにより、ベース部20のボビン部12に巻回されたコイル40とボビン部12に挿通されたコア芯部53との相対位置が変動することが抑制されるため、コイル部品100ごとのインダクタンスの個体差が低減される。そして、磁性コア50とベース部20とを固定部材70で接合するだけで、一対の磁性部材51、磁性部材52およびベース部20の少なくとも3つの部材の相対位置をずれなく固定することができる。このため、専用の治具を用いて互いに接着接合する場合と比較して簡便かつ低コストで作業を行うことができる。
【0038】
図1および図2に示すように、嵌合部30、31(図3参照)と嵌合しているコア端部54a、54bとベース部20とは、略面一な接合面24、25を構成している。固定部材70は、コア端部54a、54bとベース部20とに亘って、接合面24、25に接合されている。ここで、コア端部54a、54bとベース部20とが略面一であるとは、ベース部20に磁性コア50を装着した状態で、コア端部54a、54bの外面とベース部20との高低差がコア端部54a、54bの厚みよりも小さくなっていることをいう。コア端部54aと下側ベース部20aの下側段差部22との下面同士は面一であるかまたは小さな高低差をもって近接しており、あわせて接合面24を構成している。また、コア端部54bと上側ベース部20bの上側段差部23との上面同士は面一であるかまたは小さな高低差をもって近接しており、あわせて接合面25を構成している。本実施形態によれば、固定部材70をコア端部54a、コア端部54bからベース部20に亘って略平坦に接合するだけで、容易かつ正確に磁性コア50とベース部20と固定することができる。また、より具体的には、コア端部54aの下面は下側ベース部20aの下側段差部22の下面よりも僅かに下方に位置している。これにより、下側段差部22からコア端部54aに亘る固定部材70の張力がコア端部54aを+Z側に押し上げるように作用する。また、コア端部54bの上面は上側ベース部20bの上側段差部23よりも僅かに上方に位置している。これにより、上側段差部23からコア端部54bに亘る固定部材70の張力がコア端部54bを−Z側に押し下げるように作用する。このため、ベース部20を周回する固定部材70は、磁性部材51、52は互いに押し付けて磁性コア50を縛りつける。このため、磁性部材51、52は互いにがたつきなくボビンベース10に固定される。
【0039】
接合面24、25は、平面でもよく、または僅かに湾曲していてもよい。たとえばコア端部54bと上側段差部23との上面のうち帯状の固定部材70が跨ぐ隣接縁同士が略同高さであるかぎり、これらの面は互いに略面一である。コア端部54bのうち、上側段差部23との隣接縁から離間した中央部の高さは任意であり、上側段差部23と略同一高さである必要はない。よって、コア端部54bの中央部は+Z側に膨出したり−Z側に凹欠したりして接合面25が全体に湾曲していてもよい。接合面24に関しても同様である。
【0040】
ベース部20(下側ベース部20a)とコア端部54aとは、接合面24の一部を構成する突出部26、またはこの突出部26を収容する凹形状の係合凹部56をそれぞれ有している。具体的には、図2および図4に示すように、ベース部20の下側ベース部20aに突出部26が形成され、磁性部材51のコア端部54aに係合凹部56が形成されている。そして、本実施形態の固定部材70は、突出部26と係合凹部56のそれぞれ少なくとも一部を覆うように接合されている(図2参照)。
【0041】
突出部26は、鍔部21aの下面から下方に突出するように形成されている。突出部26の突出高さは下側段差部22と同高さであり、突出部26と下側段差部22とは境界なく一体形成されている。
【0042】
具体的には、突出部26は、ベース部20(下側ベース部20a)に設けられて磁性コア50のコア端部54aに向かって幅方向の内側にせり出すように延出して形成されている。一方、コア端部54aの幅方向の両側には、突出部26に対応する凹形状をなす係合凹部56がそれぞれ形成されている。突出部26と係合凹部56との嵌合により、磁性部材51と下側ベース部20aとのガタツキが抑制されている。
【0043】
図1および図2に示すように、本実施形態の固定部材70の幅寸法はコア端部54a、54bの幅寸法よりも小さい。そして固定部材70はコア端部54a、54bの幅内に接合されている。
【0044】
本実施形態のように、下側段差部22から幅方向の内側に向かって突出部26がせり出すように形成されていることで、コア端部54a、54bよりも幅狭の固定部材70を用いても下側ベース部20aとコア端部54aとを接合することができる。すなわち、本実施形態のコイル部品100では、コア端部54aの幅内でコア端部54aから突出部26に亘って固定部材70を接合することで磁性部材51とベース部20とが固定されている。また、本実施形態の固定部材70はX軸を巻軸としてボビンベース10および磁性コア50に周回状に巻き付けられており、磁性部材51と磁性部材52とは固定部材70によって互いに固定されている。これにより、一対の磁性部材51、52およびボビンベース10の3つの部品を固定部材70で互いに固定するとともに、突出部26と係合凹部56との嵌合により磁性コア50とボビンベース10とのガタツキが抑制されている。そして、固定部材70が磁性コア50よりも細幅であり、磁性コア50のコア端部54a、54bの一部が固定部材70から露出する。このため、本実施形態の磁性コア50には、この露出領域に突起(図示せず)等を任意で形成することが可能であり、磁性コア50の設計自由度が高い。
【0045】
なお、本実施形態ではコア端部54aに係合凹部56を形成して下側ベース部20aに突出部26を形成することを例示したが、本発明はこれに限られない。本実施形態に代えて、コア端部54aから幅方向の外側に延出する突出部26を形成し、かかる突出部26に対応する係合凹部56を下側ベース部20aに形成してもよい。
【0046】
ボビンベース10(ベース部20)には、コイル40から引き出された巻線リード42が接続される端子部14が、周回する固定部材70を挟んでボビンベース10の両側にそれぞれ突出して設けられている。端子部14の実装面15は、固定部材70よりも低位に位置している。すなわち、磁性コア50の外周を覆う固定部材70は磁性コア50よりも低位に位置することとなるが、端子部14の実装面15は固定部材70よりも更に低位に位置する。このため、コイル部品100を取り付ける基板(図示せず)に対して固定部材70が干渉することはない。
【0047】
端子部14は、具体的には、絡げ端子14aと実装端子14bとを含んでいる。図2および図4に示すように、絡げ端子14aには、コイル40を構成する複数本の巻線からそれぞれ引き出された巻線リード42が絡げられて固定されている。絡げ端子14aと実装端子14bとは下側ベース部20aの内部で電気的に接続されている。絡げ端子14aは、コイル40から引き出される巻線リード42の数量(たとえば4つ)と同数だけ設けられている。複数本の実装端子14bの一部は、絡げ端子14aとして兼用されてもよい。言い換えると、コイル40の巻線リード42のいずれかは、実装端子14bのうち下側ベース部20aから側方に突出する基端部分に対して絡げて固定してもよい(図示せず)。
【0048】
ボビンベース10は、コイル40の巻線リード42を案内する引出溝28を有している。具体的には、端子部14を保持する下側ベース部20aの下面側に引出溝28が形成されており、コイル40から引き出された巻線リード42は引出溝28を通じて絡げ端子14aまで引き回されている。
【0049】
本発明のコイル部品100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0050】
本実施形態は種々の変形を許容する。たとえば、本実施形態では磁性部材51と磁性部材52とが互いに嵌合せず、コア芯部53とコア端部54bとが突き当てられて当接しているか、またはコア芯部53とコア端部54bとが非接触に近接していることを例示したが、これに限られない。本実施形態に代えて、コア芯部53とコア端部54bとが互いに凹凸係合する凹凸部を有し、磁性部材51と磁性部材52とがXY平面内で相対移動することを規制してもよい。これにより、磁性部材51または磁性部材52のいずれか一方をベース部20に嵌合させるだけで、磁性コア50の全体をベース部20に対して位置決めすることができる。
【0051】
また、上記実施形態ではベース部20に嵌合部30、31を凹状に形成してコア端部54a、54bをそれぞれの内部に嵌合させることを例示したが、本発明はこれに限られない。本実施形態に代えて、コア端部54a、54bに切欠部または凹部(あわせて嵌合凹部)を形成し、一方でベース部20に嵌合部30、31として突起部を形成してもよい。そして、かかる嵌合部(突起部)30、31を、一対のコア端部54a、54bの嵌合凹部にそれぞれ嵌合してもよい。
【0052】
<第二実施形態>
図5は、本発明の第二実施形態のコイル部品100を示す上方斜視図である。図6は、第二実施形態のコイル部品100を示す下方斜視図である。
【0053】
本実施形態のコイル部品100は、固定部材70の幅寸法がコア端部54a、54bの幅寸法よりも大きく、固定部材70がコア端部54a、54bの幅方向の両外側に延出している点で第一実施形態と相違する。
【0054】
以下、本実施形態のコイル部品100について詳細に説明する。第一実施形態と対応する構成要素には共通の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0055】
図5に示すように、本実施形態の固定部材70は、磁性部材52のコア端部54bから幅方向の両外側に延出して上側段差部23の一部を覆っている。これにより、磁性部材52と上側ベース部20bとが固定部材70により固定されている。また、図6に示すように、固定部材70は、磁性部材51のコア端部54aから幅方向の両外側に延出して下側段差部22の一部を覆っている。これにより、磁性部材51と下側ベース部20aとが固定部材70により固定されている。したがって、本実施形態のコイル部品100では、磁性部材51とベース部20のみならず、磁性部材52とベース部20とが固定部材70により互いに固定されて位置ずれが防止されている。さらに、固定部材70は第一実施形態と同様にボビンベース10を周回して接合されており、一対のコア端部54a、54b同士も固定部材70により固定されている。
【0056】
本実施形態によれば、固定部材70がコア端部54a、コア端部54bを超えて下側ベース部20aおよび上側ベース部20bと接合されているため、広い接合面積による高い固着力で磁性コア50をボビンベース10に固定することができる。
【0057】
本実施形態の固定部材70は、下側ベース部20aの下側段差部22に形成された引出溝28の少なくとも一部を覆っている。これにより、巻線リード42が引出溝28から下面側に離脱することが規制され、仮にコイル40に巻き弛みが生じても巻線リード42が実装面15よりも下方に垂れ下がることが防止されている。
【0058】
本実施形態のコイル部品100は、下側段差部22には突出部26が形成され、コア端部54aには係合凹部56が形成されている点で第一実施形態と共通する。ただし、本実施形態の固定部材70はコア端部54aを超えて下側段差部22を覆う幅寸法を有するため、突出部26をコア端部54aの幅内に嵌入させなくとも十分な接合面積でコア端部54aと下側ベース部20aとを固定することができる。このため、本実施形態においては突出部26および係合凹部56を省略してもよい。ただし、本実施形態のように突出部26および係合凹部56を設けることで、下側ベース部20aとコア端部54aとのガタツキが防止されるとともに、固定部材70を接合する工程におけるベース部20と磁性部材51との位置決め精度が向上する。
【0059】
<製造方法>
以下、第一および第二実施形態のコイル部品100の製造方法(以下、本方法という)について説明する。以下の説明において、順番に記載された複数の工程を用いて本方法を説明する場合があるが、その記載の順番は複数の工程を実行する順番やタイミングを限定するものではない。本方法を実施するにあたり、その複数の工程の順番は内容的に支障のない範囲で変更することができ、また複数の工程の実行タイミングの一部または全部が互いに重複していてもよい。
【0060】
はじめに、本方法の概要について説明する。
【0061】
本方法は、中空筒状のボビン部12およびベース部20を有するボビンベース10と、コイル40と、磁性コア50と、を備える本実施形態のコイル部品100の製造方法である。本方法により製造されるコイル部品100において、ベース部20はボビン部12に連接されて端子部14を保持し、コイル40はボビン部12の周囲に巻回されている。また、磁性コア50は一対の磁性部材51、52を組み合わせてなり、ボビン部12に挿通されるコア芯部53およびこのコア芯部53に交差して形成された一対のコア端部54a、54bを有している。
そして本方法は、コイル形成工程、リード接続工程、コア装着工程および接合工程を少なくとも含む。
コイル形成工程では、ボビン部12の周囲にワイヤを巻回してコイル40を形成する。
リード接続工程では、コイル40から引き出された巻線リード42を端子部14(絡げ端子14a)に接続する。
コア装着工程では、ワイヤが巻回されたボビン部12にコア芯部53を挿通し、一対のコア端部54a、54bの少なくとも一方をベース部20に嵌合させて、コイル40が形成する磁束の磁路を構成する。
接合工程では、互いに嵌合するコア端部54a、54bとベース部20とに亘って面状の固定部材70を接合して、一対の磁性部材51、52とボビンベース10とを互いに固定する。
【0062】
つぎに、本方法を詳細に説明する。
コイル形成工程に先立ち、樹脂材料の射出(インサート)成形により、端子部14を有するボビンベース10を作成する。端子部14は成形金型の内部に配置されて樹脂材料が射出される。
【0063】
つぎに、コイル形成工程を行う。コイル形成工程では、ボビン部12の通孔13に巻線機の芯金(マンドレルともいう。図示せず)を挿通した状態でボビン部12の周囲にワイヤを巻回してコイル40を形成する。コイル40は複数本のワイヤからなり、各ワイヤをボビン部12の周囲に多重に巻回するか、またはボビン部12における巻軸方向の異なる領域に巻回する。
【0064】
リード接続工程とコア装着工程とは任意の順番に行われる。リード接続工程は、後述する接合工程の後に行ってもよい。
【0065】
リード接続工程では、コイル形成工程で巻回形成されたコイル40から引き出されている端部である巻線リード42を端子部14の絡げ端子14aに絡げて固定する。任意で、絡げ端子14aを溶融させるか、または半田もしくは導電性接着剤を塗布して巻線リード42を絡げ端子14aに固着してもよい。コア装着工程では、コイル40が巻回されて芯金が抜去されたボビン部12の通孔13に磁性コア50のコア芯部53を挿通する。そして、本方法ではコア端部54aおよびコア端部54bをベース部20の嵌合部30、31にそれぞれ嵌合させる。このとき、下側ベース部20aの突出部26を、コア端部54aの係合凹部56に嵌合させて互いに位置決めする。
【0066】
接合工程では、位置決めされた下側ベース部20aとコア端部54aとに亘って固定部材70を接合する。さらに、任意の軸まわり(本方法ではX軸まわり)に、帯状の固定部材70を周回させる。これにより、磁性部材51と磁性部材52とを位置合わせした状態で固定部材70によって固定する。この結果、磁性部材52と上側ベース部20bとの相対移動が規制される。なお、第二実施形態のコイル部品100のように磁性コア50よりも幅広の固定部材70を用いる場合は、接合工程において磁性部材52のコア端部54bと上側ベース部20bとを固定部材70で互いに固定する。
【0067】
また、接合工程では、固定部材70を接合した後に、補助的に磁性コア50とボビンベース10との間に接着剤を塗布してもよい。これにより、磁性コア50とボビンベース10とがより強固に固定される。ただしこの場合、固定部材70によって磁性コア50とボビンベース10とは既に位置決めされているため、補助的に接着剤を塗布するにあたって専用治具を用いる必要はない。
【0068】
以上により、第一および第二実施形態のコイル部品100は製造される。
【0069】
<第三実施形態>
図7は、本発明の第三実施形態のコイル部品100を巻軸方向に沿って切断した縦断面模式図である。
【0070】
本実施形態の50は開磁路構造をなしている点で第一および第二実施形態と相違する。具体的には、本実施形態の磁性コア50は周辺磁脚55(図3参照)を備えず、磁性部材51、52がそれぞれコア芯部53を有している点で第一および第二実施形態と相違する。本実施形態の磁性部材51、52は略T字状をなし、互いに同一形状である。コア芯部53の下端にはコア端部54aが設けられ、上端にはコア端部54bが設けられている。磁性部材51、52のコア芯部53(中足部)は、ボビン部12に巻軸方向の両側から挿通されて互いに突き当てられている。ボビン部12の周囲には複数本の巻線からなるコイル40が巻回されている。磁性部材51のコア端部54aは下側ベース部20aに嵌合し、磁性部材52のコア端部54bは上側ベース部20bに嵌合している。
【0071】
本実施形態は、互いに嵌合するコア端部54a、54bとベース部20とに亘って面状の固定部材70が接合されて一対の磁性部材51、52とボビンベース10とが互いに固定されている点で、第一および第二実施形態と共通する。
固定部材70はボビンベース10を周回して接合されて一対のコア端部54a、54bおよびベース部20を互いに固定している。固定部材70は、ボビンベース10のうち、+Z面(上面)および−Z面(下面)に加えて他の少なくとも1面に沿うように設けられている点で第一実施形態と共通する。
【0072】
本実施形態のように、開磁路構造の磁性コア50に関しても、固定部材70を用いてボビンベース10と接合してコア芯部53とコイル40との位置ずれを抑制することで、インダクタンスの個体差を低減することができる。
【0073】
上記各実施形態は、以下の技術思想のいずれかを包含する。
(1)中空筒状のボビン部、および前記ボビン部に連接されたベース部を有するボビンベースと、前記ボビン部の周囲に巻回されたコイルと、前記ボビン部に挿通されるコア芯部を有し前記コイルが形成する磁束の磁路を構成する磁性コアと、を備えるコイル部品であって、前記磁性コアは、前記コア芯部に交差して形成されたコア端部をそれぞれ有する一対の磁性部材を組み合わせてなり、前記ベース部は、前記コア芯部を前記ボビン部に挿通した状態で一対の前記コア端部の少なくとも一方と嵌合する嵌合部を有し、互いに嵌合する前記コア端部と前記ベース部とに亘って面状の固定部材が接合されて一対の前記磁性部材と前記ボビンベースとが互いに固定されていることを特徴とするコイル部品。
(2)前記嵌合部と嵌合している前記コア端部と前記ベース部とが略面一な接合面を構成しており、前記固定部材が前記コア端部と前記ベース部とに亘って前記接合面に接合されている上記(1)に記載のコイル部品。
(3)前記ベース部と前記コア端部とが、前記接合面の一部を構成する突出部または前記突出部を収容する凹形状の係合凹部をそれぞれ有し、前記固定部材が、前記突出部と前記係合凹部のそれぞれ少なくとも一部を覆うように接合されている上記(2)に記載のコイル部品。
(4)前記突出部は、前記ベース部に設けられて前記コア端部に向かって幅方向の内側にせり出すように延出して形成されており、前記固定部材の幅寸法が前記コア端部の幅寸法よりも小さく、前記固定部材が前記コア端部の幅内に接合されている上記(3)に記載のコイル部品。
(5)前記固定部材の幅寸法が前記コア端部の幅寸法よりも大きく、前記固定部材が前記コア端部の幅方向の両外側に延出している上記(1)から(3)のいずれか一項に記載のコイル部品。
(6)前記ベース部は、前記ボビン部の巻軸方向の両端に形成された鍔部と、前記鍔部の外側に形成された前記嵌合部と、を含み、一対の前記磁性部材は、前記ボビン部の前記巻軸方向の両端にそれぞれ装着されて前記コア端部が前記嵌合部とそれぞれ嵌合しており、前記固定部材は帯状の粘着テープであって、前記ボビンベースを周回して接合されて一対の前記コア端部および前記ベース部を互いに固定している上記(1)から(5)のいずれか一項に記載のコイル部品。
(7)前記コイルから引き出された巻線リードが接続される端子部が、周回する前記固定部材を挟んで前記ボビンベースの両側にそれぞれ突出して設けられているとともに、前記端子部の実装面が前記固定部材よりも低位に位置している上記(6)に記載のコイル部品。
(8)前記ボビンベースが、前記巻線リードを案内する引出溝を有し、前記固定部材が前記引出溝の少なくとも一部を覆っている上記(7)に記載のコイル部品。
(9)中空筒状のボビン部および前記ボビン部に連接されて端子部を保持するベース部を有するボビンベースと、前記ボビン部の周囲に巻回されたコイルと、一対の磁性部材を組み合わせてなり前記ボビン部に挿通されるコア芯部および前記コア芯部に交差して形成された一対のコア端部を有する磁性コアと、を備えるコイル部品の製造方法であって、前記ボビン部の周囲にワイヤを巻回して前記コイルを形成する工程と、前記コイルから引き出された巻線リードを前記端子部に接続する工程と、前記ワイヤが巻回された前記ボビン部に前記コア芯部を挿通し、一対の前記コア端部の少なくとも一方を前記ベース部に嵌合させて、前記コイルが形成する磁束の磁路を構成する工程と、互いに嵌合する前記コア端部と前記ベース部とに亘って面状の固定部材を接合して、一対の前記磁性部材と前記ボビンベースとを互いに固定する工程と、を含むコイル部品の製造方法。
【符号の説明】
【0074】
10 ボビンベース
12 ボビン部
13 通孔
14 端子部
14a 絡げ端子
14b 実装端子
15 実装面
20 ベース部
20a 下側ベース部
20b 上側ベース部
21a、21b 鍔部
22 下側段差部
23 上側段差部
24、25 接合面
26 突出部
27 側縁部
28 引出溝
30、31 嵌合部
40 コイル
42 巻線リード
50 磁性コア
51、52 磁性部材
53 コア芯部
54a、54b コア端部
55 周辺磁脚
56 係合凹部
70 固定部材
100 コイル部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7