(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6531379
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】エッチング方法
(51)【国際特許分類】
C23F 1/00 20060101AFI20190610BHJP
C09J 7/00 20180101ALI20190610BHJP
【FI】
C23F1/00 102
C09J7/00
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-250879(P2014-250879)
(22)【出願日】2014年12月11日
(65)【公開番号】特開2016-113639(P2016-113639A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】倉田 真嗣
【審査官】
萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−239670(JP,A)
【文献】
特開昭62−010284(JP,A)
【文献】
特開2002−129128(JP,A)
【文献】
特開昭56−035791(JP,A)
【文献】
特開平06−041769(JP,A)
【文献】
特開2000−144485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 1/00
C09J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度により接着力が可逆的に変化する接着層を有するテープに所望のパターン状開口部が設けられたマスクテープを前記接着層が接着力を有する温度で被エッチング材に接着させた基材を作製する基材作製工程と、
前記被エッチング材をエッチングするエッチング工程と、
前記基材を洗浄する洗浄工程と、
接着力を有しない温度に変えてマスクテープを剥離する剥離工程と、
前記剥離されたマスクテープを別の基材の基材作製工程に供するために巻き取る巻取工程と、
を有するエッチング方法。
【請求項2】
温度により接着力が可逆的に変化する接着層を有するテープに所望のパターン状開口部を設けてマスクテープとして、マスクテープを用いたエッチング方法において、つぎの工程、
(1)被エッチング材をロールに巻いたものから、被エッチング材を巻きだす工程、
(2)ロール巻きにしたマスクテープを巻き出し、巻き出した被エッチング材に重ね、被エッチング材料とする工程、
(3)被エッチング材料を加熱ロールに通し、接着層が接着力を有する温度で加熱して、接着力を強化する工程、
(4)被エッチング材料を、温度を維持した状態で、エッチングする工程、
(5)エッチングした被エッチング材料を、洗浄し、乾燥して、ロールに巻き取る工程、
(6)ロールに巻き取った被エッチング材料を巻きだし、接着層が接着力を有しない温度に設定した環境下でマスクテープを剥離する工程、
(7)剥離されたマスクテープを別の基材の前記(2)工程に供するためにロールに巻き取る巻取工程と、
を有するエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング製品のエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エッチング製品は、フォトリソプロセスを利用して製造する方法が、広く採用されている。
図5は、従来の金属材料のエッチング方法の一例を断面で示した説明図である。この場合、このエッチング方法では、
(1)まず、金属基材50のような被エッチング材料の上に、フォトレジスト51を設ける。材料の両側、または片側のいずれでも設けてよい。レジスト液を塗布、乾燥し、あるいはドライフィルムレジストを貼り合わせて設ける(
図5(a)参照)。
(2)所望のパターンが形成されたフォトマスク(図示せず)を介してフォトレジストを紫外線52で露光する(
図5(b))。
(3)フォトレジストを現像液で現像し、開口部54を有するレジストパターン55を形成する(
図5(c))。
(4)エッチング液56により、開口部54の金属基材50を除去する(
図5(d))。(5)レジストパターン55を除去する(
図5(e))。
このようにしてエッチング製品を製造しているが、フォトリソプロセスとして以上のようにレジスト塗布工程、露光工程、現像工程を必要とし、これによりレジストパターンを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−041449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようにして、フォトリソプロセスによるレジストパターン形成には、レジスト塗布、露光、現像の3工程が必要であった。また、同じ製品を製造する場合、再びフォトリソプロセスによりレジストパターンを形成する必要があった。
【0005】
本発明は、フォトリソプロセスによるレジストパターン形成の工程を減少できるエッチング方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエッチング部品製造方法は、このような課題に鑑みなされたもので、請求項1の発明は、
温度により接着力が可逆的に変化する接着層を有するテープに所望のパターン状開口部を設けたマスクテープが、接着層が接着力を有する温度で被エッチング材に接着された基材を用意して、
被エッチング材をエッチングし、
接着層が接着力を有しない温度に変えてマスクテープを剥離する
ことを特徴とするエッチング方法としたものである。
【0007】
本発明の請求項2の発明は、
温度により接着力が可逆的に変化する接着層を有するテープを、接着層が接着力を有する温度で被エッチング材に接着し、テープに所望のパターン状開口部を設けることにより、基材を用意することを特徴とする請求項1に記載のエッチング方法としたものである。
【0008】
本発明の請求項3の発明は、
温度により接着力が可逆的に変化する接着層を有するテープに所望のパターン状開口部を設けてマスクテープとして、マスクテープを用いたエッチング方法において、つぎの工程を有することを特徴とするエッチング方法としたものである。
(1)被エッチング材をロールに巻いたものから、被エッチング材を巻きだす工程。
(2)ロール巻きにしたマスクテープを巻き出し、巻き出した被エッチング材に重ね、エッチング材料とする工程。
(3)被エッチング材料を加熱ロールに通し、接着層が接着力を有する温度で加熱して、接着力を強化する工程。
(4)被エッチング材料を、温度を維持した状態で、エッチングする工程。
(5)エッチングした被エッチング材料を、洗浄し、乾燥して、ロールに巻き取る工程。
(6)ロールに巻き取った被エッチング材料を巻きだし、接着層が接着力を有しない温度に設定した環境下でマスクテープを剥離する工程。
(7)剥離されたマスクテープとエッチングされた被エッチング材を、それぞれロールに巻き取る工程。
【0009】
本発明の請求項4の発明は、
温度により接着力が可逆的に変化する接着層を有するテープに所望のパターン状開口部を設けてマスクテープとして、マスクテープをベルト状に形成・配置し、このベルトに対面するように、バックアップベルトを配置し、マスクテープを用いたエッチング方法において、つぎの工程を有することを特徴とするエッチング方法としたものである。
(1)被エッチング材をロールに巻いたものから、被エッチング材を巻きだす工程。
(2)巻きだされた被エッチング材を両ベルト間に挟むようにして搬送し、マスクテープが被エッチング材に接着する温度に維持し、被エッチング材をエッチングし、洗浄・乾燥する工程。
(3)エッチングされ、ベルトで搬送された被エッチング材から、接着層が接着力を有しない温度に設定した環境でマスクテープを剥離する工程。
(4)エッチングされ、剥離された被エッチング材を巻き取る工程。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエッチング方法は以上のような構成であるので、フォトリソプロセスによるレジストパターン形成の工程を減少できるエッチング方法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のエッチング方法の第1の実施の形態例の工程を断面で示す説明図である。
【
図2】本発明に係るテープの断面の構成と特性との例を示す説明図である。
【
図3】本発明のエッチング方法の第2の実施の形態例の工程を模式的に示した説明図で、(a)は、製造ライン、(b)は、マスクテープの剥離ラインを示した説明図である。
【
図4】本発明のエッチング方法の第4の実施の形態例の製造工程を模式的に示した説明図である。
【
図5】従来の金属材料のエッチング方法の一例を断面で示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明のエッチング方法の第1の実施の形態例の工程を断面で示す説明図である。
図2は、本発明に係るテープの断面の構成と特性との例を示す説明図である。
【0014】
<第1の実施形態> 本実施形態例では、
(1)まず、温度により接着力が可逆的に変化する接着層を有するテープ10に所望のパターン状開口部7を設けたマスクテープ1を、接着力を有する温度で被エッチング材2に接着した基材8を用意する(
図1(a)、
図2参照)。
(2)つぎに、所定の温度で基材8をエッチングする(
図1(b)、
図2参照)。図では、被エッチング材として金属基材を例示している。
(3)つぎに、接着力を有しない温度に変えてマスクテープ1を剥離する(
図1(c)、
図2参照)。
(4)さらに、このようにして、剥離したマスクテープを新たに金属基材に接着し、エッチングに再利用できる(
図1(d)、
図2参照)。
【0015】
なお温度により接着力が可逆的に変化するとは、温度を低温状態と高温状態とで、温度状態を変化させると、その都度、接着力が強い状態と弱い状態とに、接着状態が変化することを示す。
【0016】
<第2の実施形態> 再利用してエッチングする場合、それに先立って、第2の実施形態としてマスクテープを作成しておくことができる。第2の実施形態では、温度により接着力が変化する接着層を有するテープを、接着力を有する温度で被エッチング材に接着し、テープに所望のパターン状開口部を設けてマスクテープとして、基材を用意し、前記第1の実施形態のように、エッチングした後に剥離することで、マスクテープを作成しておく。
【0017】
本発明のエッチング方法では、このような構成であるので、フォトリソプロセスによるレジストバターン形成のレジスト塗布工程、露光工程、現像工程を必要とせず、工程を減少できるエッチング方法とすることができる。また、基材をエッチングした後にマスクテープを剥離温度にすることで非接着状態にし、被エッチング材とマスクテープを剥離して、マスクテープを再利用することが可能な製造方法であり、さらに工程を減少できる。これにより、本発明のエッチング方法を用いて、エッチング製品を、コストを削減して製造できる。
【0018】
温度により接着力が可逆的に変化する接着層を有するテープ10は、その構成を
図2に例示するように、樹脂材料4に接着層3を設け、さらに剥離紙5で接着層3を保護している構成が、代表的である。ここで、接着層3は、温度により接着力が可逆的に変化するので、テープ10を使用している温度で接着力が無ければ、剥離紙5は不要である。また、例示した接着剤の特性では、温度の低い状態では、接着力が強く、昇温していくとある閾値温度から急激に接着力が減少し、容易に剥離できる。高温から冷却していくと、それよりも低い閾値温度から急激に接着力が増加する。図では、温度の変化は、5℃/minとしている。また、温度の高い状態で接着力が強く、低温度で接着力が減少するものも利用できる。エッチング温度や、保存温度などに応じて選択して利用すればよい。
【0019】
なお、このようなテープはすでに市場にあり、例えばニッタ(株)のインテリマー(登録商標)テープを例示できる。
【0020】
マスクテープは、前記のテープを用い、作成できる。マスクテープの厚みは、50〜200μmと比較的厚いほうが好ましい。これにより金属基材が薄膜(50μm以下)でも切断することなく、基材を搬送可能なエッチング方法とすることができる。
【0021】
また、金属基材が薄い場合、マスクテープの粘着力が強いと剥がす時に変形が発生し、粘着力が弱すぎるとエッチング液が染み込みエッチング不良となる不具合がある。このような場合、マスクテープの粘着力が温度により変化する特性を利用することで対応可能となる。
【0022】
マスクテープへの開口パターン形成方法は特に限定しないが、例えばレーザー加工、プレス加工、等で容易に加工が可能である。
【0023】
<第3の実施形態> 本発明のエッチング方法の第3の実施形態について図を用いて説明する。
本実施形態では、エッチング製品を一括して製造するラインを例示する。
図3は、本実施形態の工程を模式的に示した説明図で、(a)は、製造ライン、(b)は、マスクテープの剥離ラインを示した説明図である。
(1)まず、被エッチング材をロール21に巻いたものから、被エッチング材を巻きだし、搬送する。図では、被エッチング材として金属基材を例示している。
(2)温度により接着力が可逆的に変化する接着層を有するテープに、所望のパターン状開口部を設けたマスクテープを同じようにロール巻き22したものから巻きだし、金属基材に重ね、ラミネートライン23へ搬送する。このときの温度は、マスクテープの接着力が弱い状態にしておく。マスクテープに剥離紙がある場合は、剥離紙を剥離してから、重ねる。また、ロールは2つ設け、金属基材を挟み込むようにしたほうが好ましい。それぞれのロールにマスクテープを巻き込み、金属基材の両面に重ねてもよい。
(3)つぎにラミネートライン23で、金属基材を、加熱ロールに通し、加熱して接着層の接着力を強化し、エッチングライン24に搬送する。以降、エッチングが終わるまで、接着力を維持するように、その加熱温度を維持する。
(4)エッチングライン24で温度を維持した状態で、金属基材をエッチングする。その後、洗浄25、乾燥ライン26へ搬送する。
(5)つぎに洗浄25、乾燥ライン26で、搬送された材料を洗浄し、乾燥して、ロール27に巻き取る。
(6)つぎに巻き取ったロール27を剥離ラインに移し、剥離ラインで、移したロール30から巻き取った材料を巻きだし、接着層が接着力を有しない温度(=剥離温度)に設定した環境下31で搬送する。剥離ラインは剥離温度に調整する機能を有する。
(7)つぎに、マスクテープを剥離しロール32に巻き取る。巻き取ったマスクテープ32は、再利用される。このとき、その後の使用状況に応じて剥離紙を挿入してもよい。
(8)マスクテープを剥離した材料をロールに巻き取り、エッチングされた金属基材を製品としてロール33に巻き取る。
【0024】
なお、上記(5)で乾燥させた後に、巻き取るローラを介せず、直接上記(6)の剥離ラインに搬送するようにしてもよい。
【0025】
このような第3の実施形態では、マスクテープと金属基材を加工温度に設定されたラミネートロール等で接着して、加工温度を持続させ接着状態を保持させたまま、エッチングを一括で処理することが可能なエッチング方法である。そして、この方法は、片面処理、両面処理ともに可能なエッチング方法である。
【0026】
<第
4の実施形態> 本発明のエッチング方法の第4の実施形態について図を用いて説明する。
【0027】
前述の第3の実施形態ではマスクテープをライン状態でエッチング製品を製造したが、第4の実施形態では、これをベルトコンベア状態で製造する。
図4は、第4の実施の形態の製造工程を模式的に示した説明図である。
【0028】
図で、マスクテープは、穴開きベルトマスク41としてベルト状に形成・配置し、このベルトに対面するように、ベルト状のバックアップベルトマスク42を配置する。そして、
(1)被エッチング材として金属基材をロール43に巻いたものから、金属基材を巻きだす。
(2)巻きだされた金属基材を両ベルト間に挟むようにして、各ラインを搬送する。すなわち、温度により接着力が可逆的に変化する接着層を有するテープに、所望のパターン状開口部を設けたマスクテープ(ベルトマスク)41が金属基材に接着する温度に維持し、金属基材をエッチングライン44にてエッチングし、洗浄45・乾燥ライン46で洗浄・乾燥し、さらにベルトで剥離ライン47に搬送する。
(3)剥離ライン47で剥離温度に設定した環境でマスクテープ41を剥離する。剥離ライン47は剥離温度に調整する機能を有する。
(4)エッチングされ、剥離された金属基材をロール48に巻き取る。マスクテープは、ベルト状で、周回する。
【0029】
このような製造ラインでは、マスクテープの巻きだし、巻き取りが不要で、また連続してエッチング製品を製造できるので、さらに工程を減少し、安価にエッチング製品を製造できるエッチング方法とすることができる。
【符号の説明】
【0030】
1・・・マスクテープ
2・・・被エッチング材
3・・・接着層
4・・・樹脂材料
5・・・剥離紙
7・・・開口部
8・・・基材
10・・・テープ
21・・・金属基材巻出しロール
22・・・マスクテープ巻出しロール
23・・・ラミネートロール
24・・・エッチングライン
25・・・洗浄ライン
26・・・乾燥ライン
27・・・巻取りロール
30・・・剥離ライン巻き出しロール
31・・・剥離温度環境
32・・・マスクテープ巻取りロール
33・・・製品巻取りロール
41・・・穴開きベルトマスク
42・・・バックアップベルトマスク
43・・・金属基材巻出しロール
44・・・エッチング
45・・・洗浄
46・・・乾燥
47・・・剥離
48・・・製品巻取りロール