(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6531385
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】熱交換器の細管内面の洗浄装置
(51)【国際特許分類】
F28G 15/04 20060101AFI20190610BHJP
F28G 1/16 20060101ALI20190610BHJP
【FI】
F28G15/04
F28G1/16 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-255329(P2014-255329)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-114330(P2016-114330A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390027188
【氏名又は名称】栗田エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】溝口 将志
(72)【発明者】
【氏名】保田 英司
(72)【発明者】
【氏名】辻丸 幸司
(72)【発明者】
【氏名】加世田 修一
(72)【発明者】
【氏名】北島 徹
(72)【発明者】
【氏名】山根 悟
【審査官】
久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−148798(JP,A)
【文献】
特開平10−030898(JP,A)
【文献】
実開昭59−065294(JP,U)
【文献】
米国特許第05320072(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28G 15/04
F28G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管板に露呈した細管の開口に対し同軸的に配置されるノズルホルダと、
該ノズルホルダ内から該細管内に前進するノズルと、
該ノズルの後端に連なるランスと、
該ランスの後端に連なるフレキホースと、
該フレキホースを進退させるフレキホース駆動装置と
を有する熱交換器の細管内面の洗浄装置であって、
該フレキホースの途中に設けられたストッパと、
該ストッパがストッパ係止部に当たることによって、該フレキホースの進退を停止させる停止機構と
を備え、
前記ノズルホルダは、内管及び該内管を隙間を介して取り巻く外管とを有する二重管構造を有しており、
該内管及び外管には、該内管の内部及び該外管の外側を該隙間に連通する開口が設けられており、
該内管の該開口と該外管の該開口とは非対面状に設けられていることを特徴とする熱交換器の細管内の洗浄装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ランスの外周面に凸部が設けられていると共に、前記ノズルホルダの内周面に該凸部が前記細管側から当接する小径部が設けられており、
前記停止機構は、該凸部が該小径部に当たることによって、前記フレキホースの進退を停止することを特徴とする熱交換器の細管内面の洗浄装置。
【請求項3】
請求項2において、前記ランスの軸心線と垂直な断面における前記凸部の外形は非円形であることを特徴とする熱交換器の細管内面の洗浄装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記ノズルホルダとフレキホース駆動装置との間にノズルホルダと同軸状にガイドチューブが設けられており、該ガイドチューブ内に前記フレキホースが挿通されていることを特徴とする熱交換器の細管内面の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱交換器の細管内面内の洗浄装置に係り、詳しくは細管内にノズルを挿入して洗浄する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器の伝熱管等の細管の内面を洗浄する方法として、管板に露呈する伝熱管開口からノズルを該伝熱管内に挿入し、ノズルの後端に連なるフレキホースから供給される高圧洗浄水を該ノズルから伝熱管内面に向けて噴出させる方法が行われている。
【0003】
従来はこの洗浄作業を洗浄作業者がノズルを持ち、手作業で行っていたため、経験を要する作業である上、体力的にも過酷な作業であった。
この洗浄作業効率を高めると共に、洗浄作業の省力化を図るために、特許文献1には、フレキホースをモーターで移動させることが記載されている。特許文献1では、フレキホースはドラムに巻回されている。ノズルを伝熱管内に挿入した後、高圧洗浄水を噴出させながらノズルを前進させる。ノズルが設定位置まで前進した後、ドラムで巻き取ることによりノズルを後退させる。
【0004】
特許文献1では、フレキホースに目印を付けておき、光学式センサでこの目印を検知してフレキホースの送り出し量を検知し、ノズルの位置を検知するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−019793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の洗浄装置では、石油精製プラント等の熱交換器の細管の内面に付着した汚れを洗浄する場合にフレキホースに設けた目印が光学式センサで検知されにくく、ノズル位置の検知が不正確になるおそれがある。
【0007】
本発明は、ノズルを確実に規定位置で停止させることができる熱交換器の細管内面の洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の熱交換器の細管内面の洗浄装置は、管板に露呈した細管の開口に対し同軸的に配置されるノズルホルダと、該ノズルホルダ内から該細管内に前進するノズルと、該ノズルの後端に連なるランスと、該ランスの後端に連なるフレキホースと、該フレキホースを進退させるフレキホース駆動装置とを有する熱交換器の細管内面の洗浄装置であって、該フレキホースの途中に設けられたストッパと、該ストッパがストッパ係止部に当たることによって、該フレキホースの進退を停止させる停止機構とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様では、前記ランスの外周面に凸部が設けられていると共に、前記ノズルホルダの内周面に該凸部が前記細管側から当接する小径部が設けられており、前記停止機構は、該凸部が該小径部に当たることによって、前記フレキホースの進退を停止する。
【0010】
本発明の一態様では、前記ランスの軸心線と垂直な断面における前記凸部の外形は非円形である。
【0011】
本発明の一態様では、前記ノズルホルダは、内管及び該内管を隙間を介して取り巻く外管とを有する二重管構造を有しており、該内管及び外管には、該内管の内部及び該外管の外側を該隙間に連通する開口が設けられており、該内管の該開口と該外管の該開口とは非対面状に設けられている。
【0012】
本発明の一態様では、前記ノズルホルダとフレキホース駆動装置との間にノズルホルダと同軸状にガイドチューブが設けられており、該ガイドチューブ内に前記フレキホースが挿通されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱交換器の細管内面の洗浄装置では、ノズルホルダを洗浄対象細管の開口に臨ませて配置し、このノズルホルダからノズルを洗浄対象細管に挿入するので、ノズルホルダ内からノズルをスムーズに前進させて洗浄対象細管に差し込むことができ、細管を効率よく洗浄することができる。また、フレキホースが規定長さだけ前進すると、ストッパがストッパ係止部に当接し、モータが停止するので、ノズルを確実に規定距離だけ前進させることができる。
【0014】
ノズルの前進停止後、フレキホースを後退させる。本発明の一態様では、ノズルは、ランスの凸部がノズルホルダの小径部に当接するまで後退するので、この後退停止時の位置も規定位置となる。
【0015】
この凸部の外形を非円形とすると、洗浄により生じた排水や異物が凸部とノズルホルダ内面又は細管内面との間を容易に通過する。
【0016】
このノズルホルダを内管及び外管を有した二重管構造とし、内管及び外管に開口を非対面状にずれた位置関係にて設けることにより、ノズルからの噴出水が外周囲に直に噴出することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態に係る熱交換器の細管内面内の洗浄装置の概略的な説明図である。
【
図3】(a)はランスの側面図、(b)はランスの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1〜4を参照して実施の形態について説明する。
【0019】
図1の通り、熱交換器バンドル1の管板2に多数の伝熱管(細管)3の一端が溶接により固着されている。伝熱管3は管板2を貫通しており、その一端側の開口がバンドル1外に向って開放している。
【0020】
細管洗浄装置は、筒状のノズルホルダ10の先端部を洗浄対象伝熱管3と同軸状となるように管板2に当接させ、該ノズルホルダ10内に配置しておいたノズル5をノズルホルダ10から伝熱管3内に挿入し、フレキホース(フレキシブルホース)6及びランス7を介して供給される高圧水をノズル5の噴出孔から斜め後方に噴出するよう構成されている。フレキホース6の後端は高圧ポンプ(図示略)に接続されている。
【0021】
ノズル5はランス7の先端に取り付けられている。
図3に拡大して示される通り、ランス7は円筒状である。ランス7の後部の外周面に凸部7aが周回して設けられている。
図3(b)の通り、凸部7aはランス7の軸心と直交する断面の外形が非真円形(この実施の形態では、4角部が円弧形とされた略四角形)であり、ノズルホルダ10や伝熱管3の内周面と凸部7aとの間に隙間があくように構成されている。
【0022】
ノズルホルダ10は、
図4に示す通り、内管11と、該内管11に外装された外管12とを有した二重管構造を有している。内管11は円筒状であるが、後端近傍の内周面に小径部11aが設けられている。この小径部11aの内径は、凸部7aの最大直径よりも小さい。また、該内管11の該小径部11aよりも後方の最後部内周面には、ガイドチューブ14の接続用のめねじ11bが刻設されている。
【0023】
内管11の後部外周面は大径部11cとなっており、この大径部11cに外管12の後部が嵌着されている。大径部11cよりも前方側にあっては、内管11と外管12との間には、隙間があいている。内管11及び外管12には、この隙間に臨むようにして異物及び洗浄排水排出用の開口11e,12eが設けられている。外管12の先端は、内管11の先端よりも若干後退している。
【0024】
内管11の後端側には、内管11と同軸状のガイドチューブ14の先端側が連結されている。このガイドチューブ14の後端側は、
図1の通り、フレキホース駆動装置20のマシンフレーム21の前面に連結されている。
【0025】
マシンフレーム21の後面部には、フレキホース6が挿通された筒部21eが設けられている。この筒部21eはストッパ係止部として設けられている。筒部21eの内径は、後述のストッパ50の外径よりも小さい。
【0026】
フレキホース駆動装置20は、フレキホース6を挟持する下側ローラ22及び上側ローラ23を2対備えている。下側ローラ22は駆動ローラであり、チェーン24を介してトルクセンサ付きモータ30によって駆動される。前方側の下側ローラ22と後方側の下側ローラ22とはチェーン25によって連動するよう構成されている。
【0027】
図2に示すように、下側ローラ22は軸26に固着されており、軸26は軸受27を介してマシンフレームサイド部21aに支持されている。軸26の両端にそれぞれスプロケットホイール28が固設されている。一方のスプロケットホイール28はチェーン24を介してモータ30によって駆動され、他方のスプロケットホイール28には下側ローラ22同士を連動させるためのチェーン25が懸けられている。
【0028】
上側ローラ23は従動ローラであり、エアシリンダ33によってフレキホース6の上面側に押し付けられるよう構成されている。
図2の通り、エアシリンダ33は、マシンフレームのトップ部21bに取り付けられ、ピストンロッド33aが鉛直下方に向ってストロークするように配置されている。
【0029】
このピストンロッド33aの下端に吊支部材34が連結されている。この吊支部材34は、上側ローラ23のサイド面に沿って垂下する1対の脚部34a,34aを有している。該脚部34a,34a間に軸35が架け渡されている。上側ローラ23の両サイド面にボス盤38がそれぞれ固着されており、該ボス盤38がベアリング(図示略)を介して軸35に回転自在に保持されている。
【0030】
なお、図示は省略するが、軸35の両端側に上下方向の貫通孔が設けられ、マシンフレームトップ部21bから垂設されたガイドロッド(図示略)に該貫通孔が摺動自在に嵌合している。これにより、軸35及びそれに支持された上側ローラ23は、エアシリンダ33のロッド進退によって水平姿勢を保ったままスムーズに上下動すると共に、フレキホース6からフレキホース6の進退方向に反力を受けても該進退方向には不動となっている。
【0031】
フレキホース駆動装置20のモータ30は制御盤40によって制御される。この制御盤40には、モータ30を正転させてフレキホース6を前進させるための送りスイッチ41と、モータ30を逆転させてフレキホース6を後退させるための引抜スイッチ42と、非常停止スイッチ43とが設けられている。また、制御盤40は、これらのスイッチ操作に連動して、エア配管48を介してエアシリンダ33への圧縮空気の給排を行うよう構成されている。
【0032】
フレキホース6にストッパ50が取り付けられている。このストッパ50は、ノズル5が伝熱管3内を前進して末端位置に達したときに該ストッパ50がマシンフレーム後面部の筒部21eの後端面に当たる位置に取り付けられている。ストッパ50は、例えば接着、カシメ、Uボルト等によってフレキホース6に固定される。
【0033】
伝熱管3の洗浄を行うに際しては、
図1のように、ノズル5をノズルホルダ10内に配置しておき、このノズルホルダ10を伝熱管3と同軸状となるように管板2に当接させる。この状態で送りスイッチ41を押す。これにより、高圧ポンプが始動し、フレキホース6内に高圧水が送り込まれると共に、モータ30が正転し、フレキホース6が前進を開始する。なお、ノズル5が斜め後方に高圧水を噴出することにより、ノズル5に前進方向の推進力が付与される。
【0034】
ノズル5は高圧水を噴出しながら、ノズルホルダ10から伝熱管3内に移動し、さらに該伝熱管3内を前進する。フレキホース6が所定長さだけ送り出されると、ストッパ50がマシンフレームの筒部21eに当たり、フレキホース6のそれ以上の前進が阻止される。このとき、モータ30のトルクが急激に増加するが、洗浄作業者が送りスイッチ41をOFFとするか、引抜スイッチ42をONに切り換えることにより、モータの過負荷による故障を防止することができる。好ましくは、制御盤40の制御回路がこのトルク増加を検知すると、モータ30を停止させる機構を有しているのが良い。
【0035】
次に、引抜スイッチ42を押すと、モータ30が逆転し、ノズル5及びフレキホース6が後退する。ノズル5は、ランス7の凸部7aがノズルホルダ10の小径部11aに当接するまで後退する。凸部7aが小径部11aに当たると、フレキホース6のそれ以上の後退が阻止される。この場合もモータ30のトルクが急激に増加するが、洗浄作業者が引抜スイッチ42をOFFとすることにより、モータの過負荷状態を解放することができる。好ましくは、制御盤40の制御回路が、このトルク増加を検知すると、モータ30を停止すると共に、高圧ポンプを停止し、フレキホース6への高圧水の供給を停止する機構を有しているのが良い。
【0036】
以上の手順により、1本目の伝熱管3の洗浄が終了するので、ノズルホルダ10を洗浄が終了した伝熱管3の隣の伝熱管3に移し、同様にして当該伝熱管3の洗浄を行う。この工程を次々と行い、すべての伝熱管3の洗浄を行う。
【0037】
この実施の形態によると、ノズルホルダ10を管板2に洗浄対象伝熱管3と同軸状に当接させた状態にてノズル5を前進させるので、ノズル5から高圧水が噴出している状態であってもノズル5を伝熱管3にスムーズに挿入することができる。このため、伝熱管の洗浄作業効率が向上する。また、ノズル5の速度を定速とすることにより、洗浄状態が均一でムラのないものとなる。
【0038】
この実施の形態では、高圧水を噴出しているノズル5をノズルホルダ10から伝熱管3内に移動させ、また高圧水を噴出しているノズル5を伝熱管3内からノズルホルダ10内に引き抜くようにしているので、伝熱管3の末端部も十分に洗浄される。
【0039】
このノズルホルダ10には異物及び水抜き用の開口11e,12eを設けていると共に、ランス7の凸部7aを非円形としているので、伝熱管3内の異物や洗浄排水がスムーズに排出される。そのため、異物がノズルホルダ10の内面に付着してランス7の停止位置が変動することも防止される。また、ノズルホルダ10の内管11及び外管12の開口11e,12eをずらして配置しているので、ノズルホルダ10内でノズル5から高圧水が噴出しても、この水が周囲に飛び散ることはない。そのため、作業環境も良好である。
【0040】
上記実施の形態の好ましい態様として、モータ30のトルクに基づいてノズル5が前進限又は後退限まで移動したことを検知するようにしているが、リミットスイッチ等の検知スイッチや近接センサ、又は電気的な導通を検出する検知手段などを採用してもよい。
【0041】
本発明では、モータ30のトルクが基準値を超えた場合にはモータ30を停止させ、ノズル5が細管3内に過度に強力に押し込まれることを防止することが好ましい。
【0042】
本発明を特に限定するものではないが、ノズルの移動速度は1〜2m/sec程度が好ましい。高圧水の圧力は20〜40MPa程度が好ましい。
【0043】
なお、
図1に示す装置を用い、熱交換器から抜き出したバンドルの細管(細管外径19mm、細管内径13.46mm、長さ6100mm)を順次洗浄したところ、非熟練作業者でも細管1本当り8.4秒で安全且つ容易に洗浄を行うことができた。
【0044】
因みに、ノズルマンが高圧水ノズルを持つ手作業で洗浄を行う従来方法では、熟練作業者でも細管1本あたり9.5秒要しており、作業者の体力的負荷も大きかった。
【符号の説明】
【0045】
1 バンドル
2 管板
3 伝熱管(細管)
5 ノズル
6 フレキホース
7 ランス
7a 凸部
10 ノズルホルダ
11 内管
11a 小径部
11e 開口
12 外管
12e 開口
14 ガイドチューブ
20 フレキホース駆動装置
22,23 ローラ
24,25 チェーン
30 モータ
33 エアシリンダ
40 制御盤
50 ストッパ