(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記揺動体は、前記第2の面を有するとともに前記回転体に対して前記揺動中心の周方向に相対的に揺動可能である第1の部材と、前記第4の面を有するとともに前記回転体に対して前記揺動中心の周方向に相対的に揺動可能である第2の部材と、を有し、
前記制動体は、
前記第1の面と前記第2の面との間に介在し、前記弾性体の弾性力によって前記回転中心の径方向の内側に向かって押されることで前記第1の面と前記第2の面とのうち一面に押し付けられ、前記回転体が前記所定の回転速度より速く回転した状態で遠心力により前記弾性体を圧縮することで前記第1の面と前記第2の面とのうち一面から離間する第1の制動部材と、
前記第3の面と前記第4の面との間に介在し、前記弾性体の弾性力によって前記回転中心の径方向の内側に向かって押されることで前記第3の面と前記第4の面とのうち一面に押し付けられ、前記回転体が前記所定の回転速度より早く回転した状態で遠心力により前記弾性体を圧縮することで前記第3の面と前記第4の面とのうち一面から離間する第2の制動部材と、
を有する請求項3のダンパ装置。
前記制動体は、前記第1の制動部材と前記第2の制動部材とを接続することで前記第1の制動部材に対し前記第2の制動部材が前記回転中心の軸方向に移動することを制限する接続部材を有する、請求項4のダンパ装置。
前記制限部は、前記揺動体に支持され、前記弾性体の弾性力により前記第1の面と前記第3の面とに押し付けられることによって前記回転体に対する前記揺動体の相対的な揺動を制限するとともに、前記回転体が前記所定の回転速度より速く回転した状態で遠心力により前記第1の面から離間する、請求項7のダンパ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、制動部材が揺動部材(振り子)の動きを制限するよう構成すると、制動部材を支持するスプリングには制動部材と揺動部材の遠心荷重が作用するためスプリングが大きくなり、大きなスペースを必要とする。したがって、スペース確保のため、揺動する部材の大きさが制限されることがある。揺動する部材の質量が増えるに従って、ダンパ装置は回転変動をより減衰させることができる。このため、揺動する部材の大きさが制限されることで、ダンパ装置の回転変動の減衰性能が制限され得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のダンパ装置は、回転中心回りに回転可能であって、
少なくとも一部において前記回転中心の軸に直交する第1の面を有する回転体と、前記第1の面に向く第2の面を有し、前記回転体に取り付けられるとともに、前記回転体に対して、前記回転中心から前記回転中心の径方向に離れた揺動中心の周方向に、相対的に揺動可能な揺動体と、前記回転体と前記揺動体との間に介在する制限部と、前記回転体又は前記揺動体に支持される少なくとも一つの弾性体と、を備え、前記回転体は、
少なくとも一部において前記回転中心の軸に直交するとともに前記第1の面と互いに前記回転中心の軸方向に間隔を介して
隣り合う第3の面を有し、前記揺動体は、前記第3の面に向く第4の面を有し、前記制限部は、前記弾性体の弾性力により、前記第1の面と前記第2の面との
うち一面と、前記第3の面と前記第4の面との
うち一面と、に押し付けられることによって前記回転体に対する前記揺動体の相対的な揺動を制限するとともに、前記回転体が所定の回転速度より速く回転した状態で遠心力により前記第1の面と前記第2の面との
うち一面と、前記第3の面と前記第4の面との
うち一面と、から離間し、前記第1の面と前記第3の面との間で、前記回転中心の軸方向において一つの前記弾性体が配置される。制限部は楔効果によって弾性力の何倍もの大きな力で押さえることができるため、弾性体及び制動部を小さくできる。よって、例えば制限部が揺動体の径方向外側を押して揺動体の相対的な揺動を制限する場合に比べて、揺動体を大きくすることができる。
【0008】
また、上記ダンパ装置では、前記制限部は、前記回転中心に向かうに従って前記第1の面と前記第2の面との
うち一方に近づくように傾斜する第1の傾斜部と、前記回転中心に向かうに従って前記第3の面と前記第4の面との
うち一方に近づくように傾斜する第2の傾斜部と、を有し、前記制限部に押し付けられる前記第1の面及び前記第2の面の
うち一面は、
一部において前記回転中心の軸に直交する面であるとともに、他の一部において第3の傾斜部を有し、該第3の傾斜部は、前記回転中心に向かうに従って前記第1の面及び前記第2の面の
うち他面に近づくように傾斜
し、前記制限部に押し付けられる前記第3の面及び前記第4の面の
うち一面は、
一部において前記回転中心の軸に直交する面であるとともに、他の一部において第4の傾斜部を有し、該第4の傾斜部は、前記回転中心に向かうに従って前記第3の面及び前記第4の面の
うち他面に近づくように傾斜
し、前記制限部は、前記弾性体の弾性力により、前記第1の傾斜部を前記第3の傾斜部に押し付けるとともに前記第2の傾斜部を前記第4の傾斜部に押し付けることによって前記回転体に対する前記揺動体の相対的な揺動を制限する。また、上記ダンパ装置では、前記制限部は、前記回転中心に向かうに従って前記第3の面と前記第4の面との
うち一方に近づくように傾斜する第1の傾斜部と、前記回転中心に向かうに従って前記第1の面と前記第2の面との
うち一方に近づくように傾斜する第2の傾斜部と、を有し、前記制限部に押し付けられる前記第1の面及び前記第2の面の
うち一面は、
一部において前記回転中心の軸に直交する面であるとともに、他の一部において第3の傾斜部を有し、該第3の傾斜部は、前記回転中心に向かうに従って、前記第1の傾斜部が近づく前記第3の面と前記第4の面との
うち一方に近づくように傾斜
し、前記制限部に押し付けられる前記第3の面及び前記第4の面の
うち一面は、
一部において前記回転中心の軸に直交する面であるとともに、他の一部において第4の傾斜部を有し、該第4の傾斜部は、前記回転中心に向かうに従って、前記第2の傾斜部が近づく前記第1の面と前記第2の面との
うち一方に近づくように傾斜
し、前記制限部は、前記弾性体の弾性力により、前記第1の傾斜部を前記第3の傾斜部に押し付けるとともに前記第2の傾斜部を前記第4の傾斜部に押し付けることによって前記回転体に対する前記揺動体の相対的な揺動を制限しても良い。制限部は楔効果によって弾性力の何倍もの大きな力で押さえることができるため、弾性体及び制動部を小さくできる。よって、例えば制限部が揺動体の径方向外側を押して揺動体の相対的な揺動を制限する場合に比べて、制限部を第1及び第2の面に押し付ける弾性力をより小さくできる。
【0009】
また、上記ダンパ装置では、前記回転体は、前記第1の面に開口する第1の開口部を有し、前記弾性体は、前記第1の開口部に収容され、前記制限部は、前記弾性体の弾性力によって前記回転中心の径方向の内側に向かって押されることで、前記第1の面と前記第2の面との
うち一面と、前記第3の面と前記第4の面との
うち一面と、に押し付けられて前記回転体に対する前記揺動体の相対的な揺動を制限するとともに、前記回転体が前記所定の回転速度より速く回転した状態で遠心力により前記弾性体を圧縮することで、前記第1の面と前記第2の面との
うち一面と、前記第3の面と前記第4の面との
うち一面と、から離間する制動体を有する。弾性体を回転体内に収容しているため、ダンパ装置が回転中心の軸方向に小型化されることが可能となる。
【0010】
また、上記ダンパ装置では、前記揺動体は、前記第2の面を有するとともに前記回転体に対して前記揺動中心の周方向に相対的に揺動可能である第1の部材と、前記第4の面を有するとともに前記回転体に対して前記揺動中心の周方向に相対的に揺動可能である第2の部材と、を有し、前記制動体は、前記第1の面と前記第2の面との間に介在し、前記弾性体の弾性力によって前記回転中心の径方向の内側に向かって押されることで前記第1の面と前記第2の面との
うち一面に押し付けられ、前記回転体が前記所定の回転速度より速く回転した状態で遠心力により前記弾性体を圧縮することで前記第1の面と前記第2の面との
うち一面から離間する第1の制動部材と、前記第3の面と前記第4の面との間に介在し、前記弾性体の弾性力によって前記回転中心の径方向の内側に向かって押されることで前記第3の面と前記第4の面との
うち一面に押し付けられ、前記回転体が前記所定の回転速度より早く回転した状態で遠心力により前記弾性体を圧縮することで前記第3の面と前記第4の面との
うち一面から離間する第2の制動部材と、を有する。よって、制限部の楔効果がより大きくなり、弾性体及び制動部を小さくできる。よって、例えば制限部が揺動体の径方向外側を押して揺動体の相対的な揺動を制限する場合に比べて、制限部を第1乃至第4の面に押し付ける弾性力をより小さくできる。
【0011】
また、上記ダンパ装置では、前記制動体は、前記第1の制動部材と前記第2の制動部材とを接続することで前記第1の制動部材に対し前記第2の制動部材が前記回転中心の軸方向に移動することを制限する接続部材を有する。よって、遠心力により第2の面及び第4の面から離間した第1及び第2の制動部材が、回転中心の軸方向に移動して、揺動中の揺動体の第2の面及び第4の面に接触することが抑制される。
【0012】
また、上記ダンパ装置では
、前記揺動体は、前記第1の面と前記第
3の面との間に配置される。よって、回転中心の軸方向において、揺動可能な揺動体を、回転体が両側から覆う。これにより、揺動体が保護される。
【0013】
また、上記ダンパ装置では、前記制限部は、前記揺動体に支持され、
前記弾性体の弾性力により前記第1の面
と前記第3の面とに押し付けられることによって前記回転体に対する前記揺動体の相対的な揺動を制限するとともに、前記回転体が前記所定の回転速度より速く回転した状態で遠心力により前記第1の面から離間する。よって、揺動体は、制限部の質量が加わった状態で揺動可能となり、回転変動をより減衰できる。
【0014】
また、上記ダンパ装置では、前記揺動体は、前記第2の面に開口する第2の開口部を有し、前記弾性体は、前記第2の開口部に収容され、前記制限部は、前記弾性体の弾性力によって前記回転中心の径方向の内側に向かって押されることで、前記第1の面と前記第2の面との
うち一面と、前記第3の面と前記第4の面との
うち一面と、に押し付けられて前記回転体に対する前記揺動体の相対的な揺動を制限するとともに、前記回転体が前記所定の回転速度より速く回転した状態で遠心力により前記弾性体を圧縮することで、前記第1の面と前記第2の面との
うち一面と、前記第3の面と前記第4の面との
うち一面と、から離間する制動体を有する。弾性体を揺動体内に収容しているため、ダンパ装置が回転中心の軸方向に小型化されることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、第1の実施の形態について、
図1乃至
図6を参照して説明する。なお、実施形態に係る構成要素や、当該要素の説明について、複数の表現を併記することがある。当該構成要素及び説明について、記載されていない他の表現がされることは妨げられない。さらに、複数の表現が記載されない構成要素及び説明について、他の表現がされることは妨げられない。
【0017】
図1は、第1の実施形態に係るダンパ装置1を示す正面図である。
図1に示すように、ダンパ装置1は、振り子保持部材2と、四つの遠心振り子3と、四つの制動部材4とを有する。振り子保持部材2は、回転体の一例である。遠心振り子3は、揺動体の一例である。制動部材4は、制限部の一例である。
【0018】
振り子保持部材2は、
図1に示す回転軸Ax回りに回転可能である。回転軸Axは、回転中心の一例である。以下、回転軸Axに直交する方向を回転軸Axの径方向、回転軸Axに沿う方向を回転軸Axの軸方向、回転軸Ax回りに回転する方向を回転軸Axの周方向とそれぞれ称する。
【0019】
振り子保持部材2は、回転軸Axの径方向に延びる円盤状に形成される。振り子保持部材2は、例えば、エンジンのクランクシャフトに接続されたフライホイールダンパのドリブンプレートである。なお、振り子保持部材2はエンジンに限らず、エンジンとともに使用される物において、モータのような他の駆動源側、又はトランスミッションの入力軸のような他の装置側に接続されても良い。
【0020】
クランクシャフトは、回転軸Axに沿って延びる。エンジンがクランクシャフトを回転させることで、振り子保持部材2がコイルスプリングを介して回転させられる。すなわち、エンジンが生じさせる回転が、振り子保持部材2に伝達される。
【0021】
図2は、ダンパ装置1の一部を拡大して示す正面図である。
図3は、
図2のF3−F3線に沿ってダンパ装置1の一部を示す断面図である。
図1乃至
図3に示すように、振り子保持部材2は、振り子保持部材2の中央部分に位置する接続部21(
図1に示す)と、第1の側面22と、第2の側面23(
図3に示す)と、振り子保持部材2の外周付近に位置する複数の第1の開口部24及び複数の第1の溝25とを有する。第1の側面22は、第1の面の一例である。第2の側面23は、第3の面の一例である。
【0022】
第1の側面22は、回転軸Axの軸方向の一方側(
図3の左側)に向く面である。言い換えると、第1の側面22は、回転軸Axに直交する。第1の側面22は、略平坦に形成される。なお、第1の側面22は、凹凸や、回転軸Axの径方向に対して傾斜する部分を有しても良い。
【0023】
図3に示すように、第2の側面23は、回転軸Axの軸方向の他方側(
図3の右側)に向く面である。言い換えると、第2の側面23は、第1の側面22の反対側に位置する。第2の側面23は、略平坦に形成され、回転軸Axに直交する。なお、第2の側面23は、凹凸や、回転軸Axの径方向に対して傾斜する部分を有しても良い。
【0024】
第1の開口部24は、回転軸Axの軸方向に延び、第1の側面22及び第2の側面23に開口する孔である。
図1に示すように、複数の第1の開口部24は、回転軸Axの周方向に、互いに離間して配置される。
【0025】
図3に破線で示すように、第1の溝25は、回転軸Axの軸方向に延び、第1の側面22及び第2の側面23に開口する孔である。
図2に破線で示すように、第1の溝25は、両端から中央部に近付くに従って回転軸Axから離間するような曲線状に延びる。言い換えると、第1の溝25は、回転軸Axの径方向の外側に向かって湾曲するような略U字状に形成される。
【0026】
図1乃至
図3に示すように、遠心振り子3は、
図3の左側の第1の揺動部材31と、
図3の右側の第2の揺動部材32(
図3に示す)と、複数の第1のリベット33と、二つのローラ34とをそれぞれ有する。第1の揺動部材31は、第1の部材の一例である。第2の揺動部材32は、第2の部材の一例である。
【0027】
第1の揺動部材31は、回転軸Axの周方向に延びる板状に形成される。なお、第1の揺動部材31の形状はこれに限らない。
図3に示すように、第1の揺動部材31は、第1の外周端31aと、第1の内面31bとを有する。第1の内面31bは、第2の面の一例である。
【0028】
第1の外周端31aは、第1の揺動部材31の、回転軸Axの径方向の外側に向く面である。第1の内面31bは、振り子保持部材2の第1の側面22に向く面である。すなわち、第1の揺動部材31は、第1の内面31bが第1の側面22と向かい合うように、振り子保持部材2と回転軸Axの軸方向に並んで配置される。
【0029】
第1の内面31bは、第1の受け部31cを有する。第1の受け部31cは、第2の傾斜部の一例である。第1の受け部31cは、回転軸Axに向かうに従って振り子保持部材2の第1の側面22に近づくように傾斜した部分である。第1の受け部31cの、回転軸Axの径方向の外側の端部は、第1の外周端31aに開口する。
【0030】
図4は、ダンパ装置1の一部を示す上面図である。
図4に示すように、第1の受け部31cは、回転軸Axの周方向に延びる。なお、第1の受け部31cはこれに限らず、例えば、複数の第1の受け部31cが回転軸Axの周方向に互いに離間して配置されても良い。
【0031】
図2に示すように、第1の揺動部材31は、第2の溝31dをさらに有する。第2の溝31dは、回転軸Axの軸方向に延び、第1の内面31bに開口する孔である。第2の溝31dは、両端から中央部に近付くに従って回転軸Axに近付くような曲線状に延びる。言い換えると、第2の溝31dは、回転軸Axの径方向の内側に向かって湾曲するような略U字状に形成される。すなわち、第2の溝31dは、振り子保持部材2の第1の溝25の反対方向に湾曲する。
【0032】
図3に示す第2の揺動部材32は、回転軸Axの周方向に延びる板状に形成される。なお、第2の揺動部材32の形状はこれに限らない。第2の揺動部材32は、第2の外周端32aと、第2の内面32bとを有する。第2の内面32bは、第4の面の一例である。
【0033】
第2の外周端32aは、第2の揺動部材32の、回転軸Axの径方向の外側に向く面である。第2の内面32bは、振り子保持部材2の第2の側面23に向く面である。すなわち、第2の揺動部材32は、第2の内面32bが第2の側面23と向かい合うように、振り子保持部材2と回転軸Axの軸方向に並んで配置される。回転軸Axの軸方向において、第1の揺動部材31と第2の揺動部材32との間に、振り子保持部材2が配置される。
【0034】
第2の内面32bは、第2の受け部32cを有する。第2の受け部32cは、回転軸Axに向かうに従って振り子保持部材2の第2の側面23に近づくように傾斜した部分である。第2の受け部32cの、回転軸Axの径方向の外側の端部は、第2の外周端32aに開口する。
【0035】
図4に示すように、第2の受け部32cは、回転軸Axの周方向に延びる。なお、第2の受け部32cはこれに限らず、例えば、複数の第2の受け部32cが回転軸Axの周方向に互いに離間して配置されても良い。
【0036】
図3に示すように、第2の揺動部材32は、第3の溝32dをさらに有する。第3の溝32dは、回転軸Axの軸方向に延び、第2の内面32bに開口する孔である。第3の溝32dは、第2の溝31dと同じく、両端から中央部に近付くに従って回転軸Axに近付くような曲線状に延びる。言い換えると、第3の溝32dは、回転軸Axの径方向の内側に向かって湾曲するような略U字状に形成される。すなわち、第3の溝32dは、振り子保持部材2の第1の溝25の反対方向に湾曲する。
【0037】
図2に示す複数の第1のリベット33は、例えば振り子保持部材2に設けられた孔に挿通され、第1の揺動部材31と第2の揺動部材32とを互いに接続する。第1のリベット33は、第1の揺動部材31と第2の揺動部材32とが相対的に移動することを制限する。第1のリベット33がリベットの軸径よりも大きく設定された振り子保持部材2の孔に挿通されることで、遠心振り子3は、振り子保持部材2に対して相対的に移動可能に、振り子保持部材2に取り付けられる。
【0038】
ローラ34は、振り子保持部材2の第1の溝25と、第1の揺動部材31の第2の溝31dと、第2の揺動部材32の第3の溝32dとに、それぞれ挿通される。ローラ34は、第1乃至第3の溝25,31d,32dに沿って転がることが可能である。
【0039】
図1に矢印で示すように、遠心振り子3は、振り子保持部材2に対して、揺動中心Cの周方向に相対的に揺動(往復運動)可能である。揺動中心Cは、回転軸Axと平行に延びる、遠心振り子3の揺動の中心軸である。四つの遠心振り子3は、それぞれ揺動中心Cを有する。一つの遠心振り子3の揺動中心Cは、回転軸Axの径方向において、回転軸Axと遠心振り子3の間に位置する。なお、揺動中心Cはこれに限らない。
【0040】
例えば、ローラ34が第1乃至第3の溝25,31d,32dに沿って転がることで、第1及び第2の揺動部材31,32は、振り子保持部材2に対して揺動中心Cの周方向に相対的に揺動する。揺動中心Cの周方向は、回転軸Axの径方向と交差する方向である。
【0041】
第1のリベット33が第1の揺動部材31と第2の揺動部材32とを接続するため、第1及び第2の揺動部材31,32は、一体的に揺動可能である。第1のリベット33が挿通される振り子保持部材2の孔は、揺動する第1及び第2の揺動部材31,32の軌道に沿って延びており、第1及び第2の揺動部材31,32が滑らかに揺動できるようになっている。なお、第1及び第2の揺動部材31,32は、個別に、振り子保持部材2に対して相対的に揺動可能であっても良い。
【0042】
振り子保持部材2が回転軸Ax回りに回転すると、遠心振り子3は、慣性力及び遠心力により、振り子保持部材2に対して相対的に振り子状に揺動する。
図1に示すように、回転軸Axの径方向における、回転軸Axと揺動中心Cとの間の距離をR、揺動中心Cと遠心振り子3の重心Gとの間の距離をLとし、振り子保持部材2の回転速度をωとする。この場合、揺動する遠心振り子3の固有角振動数ω
nは、下記の式(数1)によって表される。
【数1】
【0043】
(数1)式のように、遠心振り子3の固有各振動数ω
nは、振り子保持部材2の回転速度ωによって変わる。このような遠心振り子3が揺動することで、ダンパ装置1は、クランクシャフトに接続された振り子保持部材2の回転速度ωに応じて、エンジンの回転変動を減衰させる。
【0044】
図1乃至
図3に示すように、制動部材4は、
図3の左側の第1の錘41と、
図3の右側の第2の錘42(
図3に示す)と、二つのバネ43と、をそれぞれ有する。第1の錘41と第2の錘42とは、制動体の一例である。バネ43は、弾性体の一例である。
【0045】
第1及び第2の錘41,42は、例えば金属板を曲げることよって形成される。このような第1及び第2の錘41,42は、安価に製造され得る。なお、第1及び第2の錘41,42はこれに限らず、例えば合成樹脂のような他の材料によって作られても良い。このような第1及び第2の錘41,42は、金属によって作られた場合に比べて軽量である。
【0046】
図5は、第1の錘41を示す斜視図である。
図5に示すように、第1の錘41は、第1の板部41aと、二つの第1の支持部41bと、複数の第1の接触部41cとを有する。第1の接触部41cは、第1の傾斜部の一例である。
【0047】
第1の板部41aは、回転軸Axの周方向に延びる板状に形成される。なお、第1の板部41aの形状はこれに限らない。
図3に示すように、第1の板部41aは、回転軸Axの軸方向において、振り子保持部材2の第1の側面22と、第1の揺動部材31の第1の内面31bとの間に介在する。第1の板部41aと、第1の側面22及び第1の内面31bとの間には、第1の板部41aが回転軸Axの径方向に移動可能な隙間が形成される。
【0048】
第1の支持部41bは、第1の板部41aの、回転軸Axの径方向の内側の端部から、回転軸Axの軸方向に延びる部分である。第1の支持部41bは、振り子保持部材2の対応する第1の開口部24の中にそれぞれ配置される。
【0049】
第1の接触部41cは、第1の板部41aに設けられ、第1の揺動部材31の第1の受け部31cに向かって張り出す。第1の接触部41cは、回転軸Axに向かうに従って、振り子保持部材2に近づくように傾斜した部分である。言い換えると、第1の板部41aと第1の接触部41cとにより、回転軸Axに向かうに従って先細る楔状部が形成される。
【0050】
回転軸Axの径方向に対する第1の接触部41cの傾斜角度θ1は、回転軸Axの径方向に対する、第1の揺動部材31の第1の受け部31cの傾斜角度と大よそ等しい。傾斜角度θ1は、例えば、40度よりも小さい。第1の接触部41cの外周面は、第1の受け部31cの外周面よりも回転軸Axの径方向の外側(
図3の上側)に位置しても良い。複数の第1の接触部41cは、回転軸Axの周方向に、互いに離間して配置される。
【0051】
第2の錘42は、第1の錘41と同様の形状を有する。なお、第2の錘42の形状は、第1の錘41の形状と異なっていても良い。第2の錘42は、第2の板部42aと、二つの第2の支持部42bと、複数の第2の接触部42cとを有する。
【0052】
第2の板部42aは、回転軸Axの周方向に延びる板状に形成される。なお、第2の板部42aの形状はこれに限らない。第2の板部42aは、回転軸Axの軸方向において、振り子保持部材2の第2の側面23と、第2の揺動部材32の第2の内面32bとの間に介在する。第2の板部42aと、第2の側面23及び第2の内面32bとの間には、第2の板部42aが回転軸Axの径方向に移動可能な隙間が形成される。
【0053】
第2の支持部42bは、第2の板部42aの、回転軸Axの径方向の内側の端部から、回転軸Axの軸方向に延びる部分である。第2の支持部42bは、振り子保持部材2の対応する第1の開口部24の中にそれぞれ配置される。第1の開口部24において、第2の支持部42bは、第1の錘41の第1の支持部41bに、回転軸Axの径方向と平行に重ねられる。
【0054】
第2の接触部42cは、第2の板部42aに設けられ、第2の揺動部材32の第2の受け部32cに向かって張り出す。第2の接触部42cは、回転軸Axに向かうに従って、振り子保持部材2に近づくように傾斜した部分である。言い換えると、第2の板部42aと第2の受け部42cとにより、回転軸Axに向かうに従って先細る楔状部が形成される。
【0055】
回転軸Axの径方向に対する第2の接触部42cの傾斜角度は、回転軸Axの径方向に対する、第2の揺動部材32の第2の受け部32cの傾斜角度と大よそ等しい。第2の接触部42cの外周面は、第2の受け部32cの外周面よりも回転軸Axの径方向の外側に位置しても良い。複数の第2の接触部42cは、回転軸Axの周方向に、互いに離間して配置される。
【0056】
バネ43は、コイル状の圧縮バネである。なお、バネ43の代わりに、例えば、ゴムのような弾性体が用いられても良い。バネ43は、振り子保持部材2の第1の開口部24にそれぞれ収容される。バネ43の一方の端部43aは、回転軸Axの径方向の外側の、第1の開口部24の内周面24aに支持される。バネ43の他方の端部43bは、互いに重ねられた第1及び第2の錘41,42の第1及び第2の支持部41b,42bに支持される。
【0057】
第1の開口部24の内周面24aに支持されたバネ43は、第1及び第2の支持部41b,42bを押すことで、第1及び第2の錘41,42を回転軸Axの径方向の内側に向かって押す。これにより、第1の錘41の第1の接触部41cと第1の板部41aとが、それぞれ、第1の揺動部材31の第1の受け部31cと振り子保持部材2の第1の側面22とに弾性力により押し付けられる。さらに、第2の錘42の第2の接触部42cと第2の板部42aとが、それぞれ、第2の揺動部材32の第2の受け部32cと振り子保持部材2の第2の側面23とに弾性力により押し付けられる。
【0058】
図3に示すように、バネ43は、第1の力P1で、第1及び第2の錘41,42を回転軸Axの径方向の内側に向かって押す。第1の力P1は、例えばバネ43の弾性力である。一方、第1及び第2の錘41,42は、第2の力P2で、バネ43を回転軸Axの径方向の外側に向かって押す。第2の力P2は、第1及び第2の錘41,42に作用する、第1の力P1の反対方向の力であり、例えば遠心力である。振り子保持部材2が回転軸Ax回りに回転すると、第1及び第2の錘41,42に第2の力P2としての遠心力が作用する。
【0059】
バネ43が第1及び第2の錘41,42を押すことにより、第1及び第2の錘41,42の第1及び第2の接触部41c,42cは、第1及び第2の揺動部材31,32の第1及び第2の受け部31c,32cに当接する。第1及び第2の接触部41c,42cが第1及び第2の受け部31c,32cに当接した状態において、バネ43は圧縮されている。すなわち、バネ43は静的に予圧縮されている。
【0060】
第1及び第2の錘41,42の第1及び第2の接触部41c,42cは、第1及び第2の揺動部材31,32の第1及び第2の受け部31c,32cに、第3の力P3でそれぞれ押し付けられる。第3の力P3は、第1及び第2の接触部41c,42cが、第1及び第2の受け部31c,32cをそれぞれ回転軸Axの径方向の内側に向かって押す力である。第3の力P3は、例えば、P3=(P1−P2)/2のように表される。
【0061】
第1及び第2の錘41,42の第1及び第2の接触部41c,42cは、第1及び第2の揺動部材31,32の第1及び第2の受け部31c,32cに、第4の力P4を作用させる。第4の力P4は、第1及び第2の接触面41c,42cが、第1及び第2の受け部31c,32cに対して垂直方向に作用させる荷重である。第4の力P4は、例えば、P4=P3/sinθ1のように表される。
【0062】
第4の力P4は、第3の力P3よりも大きい。このような第4の力P4により、第1及び第2の錘41,42の第1及び第2の接触部41c,42cと、第1及び第2の揺動部材31,32の第1及び第2の受け部31c,32cとの間に摩擦力をそれぞれ生じさせる。
【0063】
第1及び第2の錘41,42の第1及び第2の接触部41c,42cは、第3の力P3によって、第1及び第2の揺動部材31,32が回転軸Axの径方向に移動することを制限する。さらに、第1及び第2の接触部41c,42cは、第4の力P4によって生じる摩擦力によって、第1及び第2の揺動部材31,32が揺動中心Cの周方向に移動することを制限する。これにより、第1及び第2の錘41,42は、振り子保持部材2に対する遠心振り子3の相対的な揺動を制限する。
【0064】
図6は、振り子保持部材2が回転する状態におけるダンパ装置1の一部を示す断面図である。
図7は、力P1〜P4の荷重とダンパ装置1の回転数との関係を示すグラフである。
図7は、力P1を太線で、力P2を細線で、力P3を破線で、力P4を二点鎖線で示す。上述のように、振り子保持部材2が回転軸Ax回りに回転すると、第1及び第2の錘41,42に、第2の力P2としての遠心力が作用する。
図7のように、第2の力P2は、振り子保持部材2の回転速度が増加するに従って増大する。
【0065】
第2の力P2が増大すると、第3の力P3及び第4の力P4が減少する。これにより、第1及び第2の錘41,42が振り子保持部材2に対する遠心振り子3の相対的な揺動を制限する力が減少する。
【0066】
振り子保持部材2の回転速度が増加し、振り子保持部材2が
図7の分離回転速度ωdより速く回転すると、第2の力P2である遠心力が第1の力P1の予圧縮荷重より大きくなる。分離回転速度ωdは、所定の回転速度の一例である。
図6のように、遠心力(第2の力P2)によって、第1及び第2の錘41,42が、バネ43を回転軸Axの径方向の外側に向かって圧縮する。これにより、第1及び第2の錘41,42の第1及び第2の接触部41c,42cが、第1及び第2の揺動部材31,32の第1及び第2の受け部31c,32cからそれぞれ離間する。
【0067】
上述の分離回転速度ωdは、例えば、エンジンのアイドル回転時の回転速度よりも僅かに遅い速度に設定される。すなわち、エンジンのアイドル回転時において、第1及び第2の錘41,42の第1及び第2の接触部41c,42cは、第1及び第2の揺動部材31,32の第1及び第2の受け部31c,32cから離間する。なお、分離回転速度ωdはこれに限られない。
【0068】
第1及び第2の錘41,42の第1及び第2の接触部41c,42cが、第1及び第2の揺動部材31,32の第1及び第2の受け部31c,32cから離間することにより、遠心振り子3は、振り子保持部材2に対して揺動中心Cの周方向に揺動可能となる。言い換えると、振り子保持部材2の回転速度が分離回転速度ωdより速くなると、遠心振り子3の揺動を制限していた制動部材4が、遠心振り子3から外れる。これにより、ダンパ装置1がエンジンの回転変動を減衰させる。
【0069】
振り子保持部材2の回転速度が分離回転速度ωdよりも遅くなると、バネ43が第1及び第2の錘41,42を回転軸Axの径方向の内側に向かって押し、第1及び第2の錘41,42の接触部41c,42cが、第1及び第2の揺動部材31,32の受け部31c,32cに押し付けられる。すなわち、振り子保持部材2の回転速度が分離回転速度ωdより遅くなると、制動部材4が遠心振り子3の揺動を再度制限する。
【0070】
第1及び第2の接触部41c、42cと、第1及び第2の受け部31c、32cとは、それぞれ表面処理がされる。このため、第1及び第2の接触部41c、42cは、第1及び第2の錘41c、42cの他の部分よりも耐摩耗性が高い。さらに、第1及び第2の受け部31c、32cは、第1及び第2の揺動部材31,32の他の部分よりも耐摩耗性が高い。
【0071】
第1の実施の形態に係るダンパ装置1において、制動部材4の第1及び第2の錘41,42は、回転軸Axの軸方向において振り子保持部材2と遠心振り子3の第1及び第2の揺動部材31,32との間に介在する。制動部材4の第1及び第2の接触部41c,42cは、弾性力を、斜面を使って増幅した荷重により遠心振り子3の第1及び第2の内面31b,32bの第1及び第2の受け部31c,32cに押し付けられることによって、振り子保持部材2に対する遠心振り子3の相対的な揺動を制限する。これにより、例えば制動部材が遠心振り子3の径方向外側から遠心振り子3の相対的な揺動を制限する場合に比べて、遠心振り子3を大きくすることができる。遠心振り子3の重さが大きくなるに従って、ダンパ装置1によるエンジンの回転変動の減衰効果は大きくなる。このため、遠心振り子3を大きくすることにより、遠心振り子3による回転変動の減衰効果をより大きくすることが可能となる。
【0072】
さらに、制動部材4の第1及び第2の接触部41c,42cは、遠心振り子3の第1及び第2の内面31b,32bの第1及び第2の受け部31c,32cに接触する。このため、制動部材が回転軸Axの径方向の外側から遠心振り子3を受ける場合に比べて、遠心振り子3が制動部材4に当接した際に打音が生じることが抑制される。
【0073】
制動部材4は、回転軸Axに向かうに従って振り子保持部材2に近付くように傾斜する第1及び第2の接触部41c,42cを第1及び第2の受け部31c,32cに弾性力により押し付ける。これにより、制動部材4は、第4の力P4によって遠心振り子3との間で生じる摩擦力により、振り子保持部材2に対する遠心振り子3の相対的な揺動を制限する。第4の力P4は、第1及び第2の接触部41c,42cの傾斜角度θ1によって比較的大きく設定できる。これにより、例えば制動部材4が遠心振り子3の径方向外側から遠心振り子3の相対的な揺動を制限する場合に比べて、制動部材4が遠心振り子3を押す力(第1の力P1、バネ43の荷重)をより小さくできる。従って、制動部材4をより小さくすることが可能であるとともに、制動部材4がより確実に遠心振り子3の相対的な揺動を制限することで打音の発生が抑制される。
【0074】
制動部材4のバネ43が、振り子保持部材2の第1の開口部24に収容される。これにより、ダンパ装置1が回転軸Axの軸方向に小型化されることが可能となる。さらに、第1及び第2の錘41,42の第1及び第2の板部41a,41bが第1の開口部24を塞ぐため、バネ43が第1の開口部24から外れることが抑制される。
【0075】
以下に、第2の実施の形態について、
図8を参照して説明する。なお、以下の複数の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
【0076】
図8は、第2の実施の形態に係るダンパ装置1の一部を示す断面図である。
図8に示すように、制動部材4は、複数の第2のリベット44を有する。第2のリベット44は、接続部材の一例である。
【0077】
第2のリベット44の一方の端部44aは、第1の錘41の第1の板部41aに固定される。第2のリベット44の他方の端部44bは、第2の錘42の第2の板部42aに固定される。これにより、第2のリベット44は、第1の錘41と第2の錘42とを接続する。
【0078】
第2のリベット44は、第1及び第2の錘41,42を接続することで、第1の錘41が、第2の錘42に対して移動することを制限する。例えば、第2のリベット44は、第1の錘41が、第2の錘42に対して回転軸Axの軸方向に移動することを制限する。
【0079】
振り子保持部材2に、複数の挿通孔26が設けられる。挿通孔26は、回転軸Axの軸方向に延び、第1の側面22及び第2の側面23に開口する孔である。挿通孔26に、第2のリベット44が挿通される。挿通孔26は、回転軸Axの径方向に平行に延びており、制動部材4が回転軸Axの径方向に滑らかに移動でき、周方向にはわずかなクリアランスを設けて移動を制限するような長孔になっている。
【0080】
第2の実施形態のダンパ装置1において、第2のリベット44は、第1の錘41に対し第2の錘43が回転軸Axの軸方向に移動することを制限する。これにより、遠心力により遠心振り子3の第1及び第2の受け部31c,32から離間した第1及び第2の錘41,42が、回転軸Axの軸方向に移動して、揺動中の遠心振り子3の第1及び第2の受け部31c,32cに接触することが抑制される。したがって、第1及び第2の錘41,42によって遠心振り子3の揺動が妨げられることが抑制され、遠心振り子3がより確実にエンジンの回転変動を減衰できる。
【0081】
以下に、第3の実施の形態について、
図9を参照して説明する。
図9は、第3の実施の形態に係るダンパ装置1の一部を示す上面図である。
図9に示すように、制動部材4の第1の錘41の第1の接触部41cは、径方向にθ1だけ傾斜し、さらに回転軸Axの周方向に対して、傾斜角度θ2だけ傾斜する。同様に、第2の錘42の第2の接触部42cは、径方向にθ1だけ傾斜し、さらに回転軸Axの周方向に対して傾斜角度θ2だけ傾斜する。
【0082】
第1の揺動部材31は、第1の接触部41cに対応する少なくとも一つの第1の受け部31cを有する。制動部材4の第1の接触部41cは、第1の揺動部材31の、対応する第1の受け部31cに押し付けられる。
【0083】
第2の揺動部材32は、第2の接触部42cに対応する少なくとも一つの第2の受け部32cを有する。制動部材4の第2の接触部42cは、第2の揺動部材32の、対応する第2の受け部32cに押し付けられる。
【0084】
第3の実施形態のダンパ装置1において、制動部材4の第1及び第2の接触部41c,42cは、回転軸Axの周方向に対して傾斜する。これにより、制動部材4は、振り子保持部材2に対する遠心振り子3の相対的な揺動を、より確実に制限できる。
【0085】
以下に、第4の実施の形態について、
図10を参照して説明する。
図10は、第4の実施の形態に係るダンパ装置1の一部を示す断面図である。
図10に示すように、第4の実施形態の遠心振り子3は、回転軸Axの軸方向において、複数の部材で構成された振り子保持部材2の内側に配置される。
【0086】
第4の実施形態の遠心振り子3は、揺動部材35を有する。揺動部材35は、
図10の左側の第3の側面35aと、
図10の右側の第4の側面35bと、複数の第2の開口部35c、破線で示す第4の溝35dとを有する。第3の側面35aは、第2の面の一例である。
【0087】
第3の側面35aは、回転軸Axの軸方向の一方側(
図10の左側)に向く面である。言い換えると、第3の側面35aは、回転軸Axに対して直交する。第3の側面35aは、略平坦に形成される。なお、第3の側面35aは、凹凸や、回転軸Axの径方向に対して傾斜する部分を有しても良い。
【0088】
第4の側面35bは、回転軸Axの軸方向の他方側(
図10の右側)に向く面である。言い換えると、第4の側面35bは、第3の側面35aの反対側に位置する。第4の側面35bは、略平坦に形成され、回転軸Axに対して直交する。なお、第4の側面35bは、凹凸や、回転軸Axの径方向に対して傾斜する部分を有しても良い。
【0089】
第2の開口部35cは、回転軸Axの軸方向に延び、第3の側面35a及び第4の側面35bに開口する孔である。複数の第2の開口部35cは、回転軸Axの周方向に、互いに離間して配置される。
【0090】
第4の溝35dは、回転軸Axの軸方向に延び、第3の側面35a及び第4の側面35bに開口する孔である。第4の溝35dは、回転軸Axの径方向の内側に向かって湾曲するような略U字状に形成される。
【0091】
第4の実施形態の振り子保持部材2は、
図10の左側の第1のプレート27と、
図10の右側の第2のプレート28とを有する。第1のプレート27及び第2のプレート28は、回転軸Axの径方向に延びる円盤状に形成される。
【0092】
第1のプレート27と第2のプレート28とは、回転軸Axの軸方向に重ねられ、互いに固定される。第1及び第2のプレート27,28は、第1の実施形態と同様の接続部21を形成し、クランクシャフトに接続される。第1及び第2のプレート27,28は、回転軸Ax回りに一体的に回転可能である。
【0093】
第1のプレート27は、第1の内側部271と、第1の傾斜部272と、第1の外側部273と、を有する。第1の内側部271は、回転軸Axの径方向に延びる円盤状の部分である。第1の傾斜部272は、回転軸Axの径方向において第1の内側部271の外側に設けられる。第1の傾斜部272は、回転軸Axから離れるに従って、第2のプレート28から離れるように傾斜する円環状の部分である。第1の外側部273は、回転軸Axの径方向において、第1の傾斜部272の外側に設けられる。第1の外側部273は、回転軸Axの径方向に延びる円環状の部分である。
【0094】
第1の外側部273は、第1の内側面273aを有する。第1の内側面273aは、第1の面の一例である。第1の内側面273aは、回転軸Axの軸方向の他方側に向く面である。第1の内側面273aは、略平坦に形成され、回転軸Axに対して直交する。なお、第1の内側面273aは、凹凸や、回転軸Axの径方向に対して傾斜する部分を有しても良い。
【0095】
第2のプレート28は、第2の内側部281と、第2の傾斜部282と、第2の外側部283と、を有する。第2の内側部281は、回転軸Axの径方向に延びる円盤状の部分である。第2の傾斜部282は、回転軸Axの径方向において第2の内側部281の外側に設けられる。第2の傾斜部282は、回転軸Axから離れるに従って、第1のプレート27から離れるように傾斜する円環状の部分である。第2の外側部283は、回転軸Axの径方向において、第2の傾斜部282の外側に設けられる。第2の外側部283は、回転軸Axの径方向に延びる円環状の部分である。
【0096】
第2の外側部283は、第2の内側面283aを有する。第2の内側面283aは、第5の面の一例である。第2の内側面283aは、回転軸Axの軸方向の一方側に向く面である。第2の内側面283aは、略平坦に形成され、回転軸Axに対して直交する。なお、第2の内側面283aは、凹凸や、回転軸Axの径方向に対して傾斜する部分を有しても良い。
【0097】
第2の内側面283aは、第1のプレート27の第1の内側面273aに向く。第1の内側面273aと第2の内側面283aとの間に隙間が形成される。第1の内側面273aと第2の内側面283aとの間の隙間に、揺動部材35が配置される。第1の内側面273aは、揺動部材35の第3の側面35aに向く。第2の内側面283aは、揺動部材35の第4の側面35bに向く。なお、第1の内側面273aと第2の内側面283aとの間の隙間は、例えば、一つのプレートの外周部分を切削することによって形成されても良い。
【0098】
第1の内側面273aは、第3の受け部273bをさらに有する。第3の受け部273bは、第2の傾斜部の一例である。第3の受け部273bは、回転軸Axに向かうに従って揺動部材35の第3の側面35aに近づくように傾斜した部分である。
【0099】
同様に、第2の内側面283aは、第4の受け部283bをさらに有する。第4の受け部283bは、回転軸Axに向かうに従って揺動部材35の第4の側面35bに近づくように傾斜した部分である。
【0100】
第1の外側部273は、破線で示す第5の溝273cをさらに有する。第5の溝273cは、回転軸Axの軸方向に延び、第1の内側面273aに開口する孔である。第5の溝273cは、回転軸Axの径方向の外側に向かって湾曲するような略U字状に形成される。
【0101】
第2の外側部283も、破線で示す第6の溝283cをさらに有する。第6の溝283cは、回転軸Axの軸方向に延び、第2の内側面283aに開口する孔である。第6の溝283cは、回転軸Axの径方向の外側に向かって湾曲するような略U字状に形成される。
【0102】
ローラ34は、揺動部材35の第4の溝35dと、第1のプレート27の第5の溝273cと、第2のプレート28の第6の溝283cとに、それぞれ挿通される。ローラ34は、第4乃至第6の溝35d、273c,283cに沿って転がることが可能である。ローラ34が第4乃至第6の溝35d,273c,283cに沿って転がることで、揺動部材35は、振り子保持部材2に対して揺動中心Cの周方向に相対的に揺動する。
【0103】
第4の実施形態の制動部材4は、第1の実施形態と同じく、第1の錘41と、第2の錘42と、バネ43とを有する。
【0104】
第4の実施形態において、第1の錘41の第1の板部41aは、第1のプレート27の第1の内側面273aと、揺動部材35の第3の側面35aとの間に介在する。第1の支持部41bは、揺動部材35の第2の開口部35cの中に配置される。第1の接触部41cは、第1のプレート27の第3の受け部273bに押し付けられる。
【0105】
第2の錘42の第2の板部42aは、第2のプレート28の第2の内側面283aと、揺動部材35の第4の側面35bとの間に介在する。第2の支持部42bは、揺動部材35の第2の開口部35cの中に配置される。第2の接触部42cは、第2のプレート28の第4の受け部283bに押し付けられる。
【0106】
バネ43は、揺動部材35の第2の開口部35cに収容される。バネ43の一方の端部43aは、第2の開口部35cの内周面のうち、回転軸Axの径方向の外側に位置して回転軸Axに向く面に支持される。バネ43の他方の端部43bは、第1の実施形態と同じく、第1及び第2の錘41,42の第1及び第2の支持部41b,42bに支持される。すなわち、制動部材4は、バネ43を介して揺動部材35に支持される。
【0107】
上記のような第4の実施形態のダンパ装置1において、第1及び第2の錘41,42の第1及び第2の接触部41c,42cは、第1及び第2のプレート27,28の第3及び第4の受け部27d,28dに、バネ43の弾性力に基づく力(第3の力P3)でそれぞれ押し付けられる。これにより、第1及び第2の錘41,42は、振り子保持部材2に対する遠心振り子3の相対的な揺動を制限する。
【0108】
振り子保持部材2が回転軸Ax回りに回転すると、遠心振り子3と、遠心振り子3の揺動部材35に支持された制動部材4とに、遠心力が作用する。振り子保持部材2が分離回転速度ωdより速く回転すると、遠心力(第2の力P2)がバネ43の予圧縮荷重(第1の力P1)より大きくなる。遠心力によって、第1及び第2の錘41,42が、バネ43を回転軸Axの径方向の外側に向かって圧縮する。これにより、第1及び第2の錘41,42の第1及び第2の接触部41c,42cが、第1及び第2のプレート27,28の第3及び第4の受け部273b,283bからそれぞれ離間する。
【0109】
第4の実施形態のダンパ装置1において、遠心振り子3の揺動部材35が振り子保持部材2の第1の内側面273aと第2の内側面283aとの間に配置される。すなわち、回転軸Axの軸方向において、遠心振り子3を、振り子保持部材2が両側から覆う。これにより、遠心振り子3が振り子保持部材2によって保護される。
【0110】
制動部材4が、バネ43を介して遠心振り子3の揺動部材35に支持される。これにより、遠心振り子3は、制動部材4の質量が加わった状態で揺動可能となり、エンジンの回転変動をより減衰できる。
【0111】
以下に、第5の実施の形態について、
図11及び
図12を参照して説明する。
図11は、第5の実施の形態に係るダンパ装置1の一部を示す正面図である。
図12は、
図11のF12−F12線に沿ってダンパ装置1の一部を示す断面図である。
【0112】
図11に示すように、第5の実施形態の遠心振り子3は、第4の実施形態と同様に、回転軸Axの軸方向において、振り子保持部材2の内側に配置される。なお、
図11は、説明のため、第1のプレート27を省略して振り子保持部材2を示す。遠心振り子3の揺動部材35は、凹部35eを有する。
【0113】
凹部35eは、回転軸Axの径方向における、揺動部材35の内側の端部に設けられる。凹部35eは、揺動部材35の内側の端部から、回転軸Axの径方向の外側に凹んだ部分である。
【0114】
第5の実施形態の制動部材4は、バネ43と、錘45とを有する。バネ43は、その一方の端部43aが揺動部材35の凹部35eに支持され、錘45は回転軸Axの径方向に移動可能にバネ43に支持される。バネ43及び錘45は、回転軸Axの径方向において、振り子保持部材2と遠心振り子3との間に介在する。
【0115】
図12に示すように、第1の傾斜部272は、第1の傾斜面272aを有する。第1の傾斜面272aは、第1の内側面273aの、回転軸Axの径方向の内側の端部に連続する。第1の傾斜面272aは、回転軸Axに近づくに従って第2のプレート28に近づくように、回転軸Axの径方向に対して傾斜する。
【0116】
第2の傾斜部282は、第2の傾斜面282aを有する。第2の傾斜面282aは、第2の内側面283aの、回転軸Axの径方向の内側の端部に連続する。第1及び第2の傾斜面272a,282aは、回転軸Axに向かうに従って、互いに近づくように傾斜する。
【0117】
錘45は、テーパ面45a,45bを有する。テーパ面45a,45bは、回転軸Axに向かって互いに近付くように、回転軸Axの径方向に対して傾斜する。言い換えると、テーパ面45a,45bは、回転軸Axに向かうに従って、第1及び第2のプレート27,28の第1及び第2の内側面273a,283aから遠ざかるように傾斜した部分である。
【0118】
バネ43の他方の端部43bは、錘45に支持される。バネ43は、錘45を回転軸Axの径方向の内側に向かって押す。これにより、錘45のテーパ面45a,45bが、第1及び第2のプレート27,28の第1及び第2の傾斜面272a,282aに押し付けられる。
【0119】
回転軸Axの径方向に対する第1及び第2の傾斜面272a,282aの傾斜角度は、回転軸Axの径方向に対するテーパ面45a,45bの傾斜角度と大よそ等しい。なお、回転軸Axの径方向に対する第1及び第2の傾斜面272a,282aの傾斜角度は、回転軸Axの径方向に対するテーパ面45a,45bの傾斜角度と異なっても良い。
【0120】
上記のような第5の実施形態のダンパ装置1において、錘45のテーパ面45a,45bは、第1及び第2のプレート27,28の第1及び第2の傾斜面272a,282aに、バネ43の弾性力に基づく力(第3の力P3)でそれぞれ押し付けられる。これにより、錘45は、振り子保持部材2に対する遠心振り子3の相対的な揺動を制限する。
【0121】
振り子保持部材2が回転軸Ax回りに回転すると、遠心振り子3と、遠心振り子3の凹部35eに支持された制動部材4とに、遠心力が作用する。振り子保持部材2が分離回転速度ωdより速く回転すると、遠心力(第2の力P2)がバネ43の予圧縮荷重(第1の力P1)より大きくなる。遠心力によって、錘45が、バネ43を回転軸Axの径方向の外側に向かって圧縮する。これにより、錘45のテーパ面45a,45bが、第1及び第2のプレート27,28の第1及び第2の傾斜面272a,282aからそれぞれ離間する。
【0122】
第5の実施形態のダンパ装置1において、制動部材4は、回転軸Axの径方向において、振り子保持部材2と遠心振り子3との間に介在する。これにより、ダンパ装置1が回転軸Axの軸方向に小型化されることが可能となる。