(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
太陽電池の受光面側に位置する太陽電池表面保護部材(I)、太陽電池の受光面側に位置する封止剤層(II)、太陽電池セル(III)、太陽電池の非受光面側に位置する封止剤層(IV)、及び前記非受光面側封止剤層(IV)に接してなる請求項4記載の太陽電池裏面保護シートを具備してなる太陽電池モジュールであって、
前記黒色硬化樹脂層(1)が、前記非受光面側封止剤層(IV)とは接しない側に位置することを特徴とする太陽電池モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の黒色硬化性樹脂組成物に用いられるアクリル系共重合体(A)について説明する。アクリル系共重合体(A)の水酸基価は2〜20(mgKOH/g)である。水酸基価が2〜20(mgKOH/g)であるアクリル系共重合体(A)を用いることによって、適度な架橋密度の黒色硬化樹脂層(1)を形成でき、強靭性(耐溶剤性、耐磨耗性)と、プラスチックフィルム(2)に対する十分な密着性をバランスよく満足できる。
【0017】
水酸基価が2(mgKOH/g)以上のアクリル系共重合体(A)を用いることによって、ポリイソシアネート化合物(C)との反応により十分な架橋密度の皮膜を形成できる。その結果、皮膜、即ち黒色硬化樹脂層の表面に汚れが付着した場合に有機溶剤などで汚れを拭き取っても、黒色硬化樹脂層(1)が溶剤に溶けたり、拭き跡が残ったりしない。また、形成される皮膜の架橋密度が十分高いので、耐磨耗性が十分となり、太陽電池モジュールを作成した後、実際に住宅の屋根などに設置された場合、砂塵などにより黒色硬化樹脂層(1)の表面に傷が付きにくい。
一方、水酸基価が20(mgKOH/g)以下のアクリル系共重合体(A)を用いることによって、ポリイソシアネート化合物(C)との反応により適度な架橋密度の黒色硬化樹脂層(1)を形成でき、プラスチックフィルム(2)への密着性を確保できる。
【0018】
アクリル系共重合体(A)の水酸基価は、アクリル系共重合体(A)の形成に供される単量体成分中の水酸基含有単量体成分の割合に依存する。
水酸基含有単量体としては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにε−カプロラクトンが付加した物などが挙げられ、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
水酸基価が2〜20(mgKOH/g)のアクリル系共重合体(A)を得るためには、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを、単量体の合計100質量%中、0.5〜5質量%共重合することが好ましい。
【0019】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびそのε−カプロラクトン付加物の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート; 2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン1モル付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン2モル付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン3モル付加物などの炭素数が1〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水酸基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0020】
本発明において用いられるアクリル系共重合体(A)のアミン価は0.5(mgKOH/g)以上である。アミン価が0.5(mgKOH/g)以上であるアクリル系共重合体(A)を用いることによって、黒色顔料を良好に分散できる。
例えば、アミン価を全く有しないアクリル系共重合体:100質量部に黒色顔料:40質量部を、固形分(不揮発分)35質量%程度で、ガラスビーズを用いてスキャンディックスで分散すると、分散体の流動性が全く無い、分散体とガラスビーズが混ざったままのクリーム状態になる。アミン価を全く有しないアクリル系共重合体に対する黒色顔料の量を減らすと、分散直後には流動性を示すが、1日後には流動性が無くなってしまう。
太陽電池モジュールを非受光面側から見た場合に、受光面側と同程度の暗色〜黒色を呈するためには、アクリル系共重合体:100質量部に対して黒色顔料を2〜40質量部を含有する必要があり、前記黒色顔料を分散するためには、アクリル系共重合体(A)のアミン価は少なくとも0.5(mgKOH/g)必要である。
【0021】
アミン価の上限としては特に制限は無いが、アクリル系共重合体(A)が形成される皮膜においてバインダー樹脂として機能する点を考慮すると、アミン価は100(mgKOH/g)以下が好ましく、50(mgKOH/g)がより好ましく、30(mgKOH/g)以下がさらに好ましい。
アミン価が100(mgKOH/g)以下のアクリル系共重合体(A)を用いることによって、形成される黒色硬化樹脂層(1)を通して水や水蒸気が浸透しにくくなり、太陽電池セルを劣化させる危険性が低下する。
【0022】
アクリル系共重合体(A)にアミン価を付与する方法としては、窒素原子含有基およびエチレン性不飽和二重結合を有する単量体を、他のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(以下「他の単量体」という)と共重合することにより得られる。「他の単量体」は、上記水酸基含有単量体でもなく、窒素原子含有基およびエチレン性不飽和二重結合を有する単量体でもない、という意である。
窒素原子含有基とエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、(メタ)アクリレート類であるアルキルアミノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド類であるアルキル(メタ)アクリルアミド、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド類などが上げられる。
【0023】
アルキルアミノ(メタ)アクリレートモノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−n−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−i−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、ピペリジノエチル(メタ)アクリレート、1−ピロリジノエチル(メタ)アクリレート、N,N−メチル−2−ピロリジルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−メチルフェニルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが上げられる。
【0024】
アルキル(メタ)アクリルアミドモノマーとしては、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、ジ−i−ブチル(メタ)アクリルアミド、モルホリノ(メタ)アクリルアミド、ピペリジノ(メタ)アクリルアミド、N−メチル−2−ピロリジル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチルフェニル(メタ)アクリルアミドなどが上げられる。
【0025】
アミノアルキル(メタ)アクリルアミドモノマーの例としては、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリルアミド、6−(N,N−ジエチルアミノ)ヘキシル(メタ)アクリルアミドなどが上げられる。
【0026】
窒素原子含有基およびエチレン性不飽和二重結合を有する単量体として、いわゆるHALSと呼び称される紫外線安定性基とエチレン性不飽和二重結合を有する単量体なども好適に用いられる。紫外線安定性基とエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の例としては、
4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2 ,6 ,6−ペンタメチルピペリジン、4− (メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6 ,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ− 2 ,2 ,6 ,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2 ,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4− (メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどがあげられる。
また、紫外線吸収剤モノマーとして知られている、3−(2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェネチル=メタクリラートなども用いることが出来る。
【0027】
本発明では、窒素原子含有基およびエチレン性不飽和二重結合を有する単量体として、三級アミノ基を有する(メタ)アクリロイル系モノマーが好ましい。三級アミノ基とは、アンモニアの水素原子を炭化水素残基で置換したもので、3個の水素原子がすべて炭化水素残基に置換したものをいう。例えば、アルキルアミノ(メタ)アクリレートモノマーのうち、ジアルキルアミノ(メタ)アクリレートモノマーや、ピペリジニル基を有する前述のHALSなどを挙げることができる。
本発明の黒色硬化性樹脂組成物はアクリル系共重合体(A)とポリイソシアネート化合物(C)を含有する。一級アミノ基、二級アミノ基は水酸基よりも、イソシアネート基との反応性に富む。従って、一級アミノ基や二級アミノ基を有するアクリル系共重合体(A)を用いた場合、黒色硬化樹脂層(1)を形成する際、水酸基よりも優先的に一級アミノ基や二級アミノ基がポリイソシアネート化合物(C)と反応してしまい、水酸基が残ってしまう可能性がある。黒色硬化樹脂層(1)中に水酸基が多量に残ると、耐湿熱性を低下させるおそれがある。また、水酸基が残らないようにポリイソシアネート化合物(C)の量を増やすと、黒色硬化樹脂層(1)の架橋密度が過剰に大きくなり、耐湿熱性を低下させるおそれがある。そこで、本発明では、窒素原子含有基およびエチレン性不飽和二重結合を有する単量体として、三級アミノ基を有する(メタ)アクリロイル系モノマーを用いることが好ましい。
【0028】
本発明におけるアクリル系共重合体(A)の形成に用いられる「他の単量体」としては、例えばアルキル(メタ)アクリレート、脂環式炭化水素基を有する単量体、エポキシ基を有する単量体、水酸基を有する単量体、酸性基含有単量体などがあげられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0029】
(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル( メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、tert−ブチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどが上げられる。
【0030】
脂環式炭化水素基を有するモノマーとしては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、 ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどが上げられる。
【0031】
エポキシ基を有するモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジルアクリレート、α−メチルグリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートなどが上げられる。
【0032】
酸性基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−コハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−ヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−フタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドフォスフェートなどが上げられる。
【0033】
アクリル系共重合体(A)は、前記単量体を共重合させることにより、容易に調製することができる。
単量体を重合させる方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが上げられるが、本発明は、かかる重合方法によって限定されるものではない。これらの重合方法のなかでは、得られる反応混合物をそのまま使用することができることから、溶液重合法が好ましい。
【0034】
以下に、単量体を溶液重合させることによってアクリル系共重合体を調製する場合の一実施態様について説明するが、本発明は、その実施態様のみに限定されるものではない。
【0035】
単量体を溶液重合させる際に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;n−ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、エチルセロソルブなどのアルコール系溶媒; 酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミドなどが上げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。溶媒の量は、単体混合物の濃度、目的とするアクリル系重合体の分子量などに応じて適宜決定することが好ましい。
【0036】
重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。重合開始剤の量は単量体混合物100質量部あたり、通常、好ましくは0.01〜30質量部、より好ましくは0.05〜10質量部である。
【0037】
なお、重合の際には、得られるアクリル系共重合体の分子量を調整するために、例えば、n−ドデシルメルカプタンなどの連鎖移動剤を用いてもよい。
【0038】
単量体を重合させる際の重合温度は、通常、好ましくは40〜200℃ 、より好ましくは40〜140℃である。
【0039】
単量体の重合時間は、重合温度、単量体混合物の組成、重合開始剤の種類およびその量などによって異なるので一概には決定することができないため、それらに応じて適宜決定することが好ましい。
【0040】
本発明におけるアクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は、60,000〜600,000であることが好ましく、100,000〜500,000であることがより好ましい。
なお、上記の重量平均分子量は、(メタ)アクリル系共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の値である。例えば、カラム(昭和電工(株)製KF−805LKF−803L、及びKF−802)の温度を40℃として、溶離液としてTHFを用い、流速を0.2ml/minとし、検出をRI、試料濃度を0.02%とし、標準試料としてポリスチレンを用いて行ったものである。本発明の重量平均分子量は、上記の方法により測定した値を記載している。
【0041】
本発明におけるアクリル系共重合体(A)の重量平均分子量が60,000以上であることにより、耐溶剤性および耐磨耗性に優れる十分な強度の黒色硬化樹脂層(1)を得ることができる。
ゲル状物の生成や混入を防止するという点からアクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は600,000以下であることが好ましい。ゲル状物が黒色硬化樹脂層(1)に混入すると、太陽電池モジュールを形成時に不良品発生の原因となる可能性がある。また、アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が600,000以下とすることにより、適度な粘度・適度な固形分の黒色硬化性樹脂組成物を得ることができ、プラスチックフィルム(2)に塗布する際、不具合が生じにくい。
【0042】
本発明におけるアクリル系共重合体(A)のガラス転位温度は20℃以上であることが好ましい。より好ましくは30℃以上であり、70℃以下であることがより好ましい。ガラス転位温度を20℃以上とすることにより、形成される黒色硬化樹脂層(1)の表面にタックが生じ難くなるため、太陽電池裏面保護シートを製造後にロール状にした場合、ブロッキングを起こしにくくなる。
アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度を70℃以下とすることにより、長期間の使用中にヒビ割れが生じない丈夫な黒色硬化樹脂層(1)を形成できる。
【0043】
なお、ここで言うガラス転移温度とは、アクリル系共重合体(A)の溶液を乾燥させて固形分を100%にした樹脂について、示差走査熱量分析(DSC)によって測定したガラス転移温度のことを示す。例えば、ガラス転移温度は、試料約10mgを秤量したサンプルを入れたアルミニウムパンと、試料を入れていないアルミニウムパンとをDSC装置にセットし、これを窒素気流中で、液体窒素を用いて−50℃ まで急冷処理し、その後、10℃/分で150℃まで昇温してDSC曲線をプロットする。このDSC曲線の低温側のベースライン(試験片に転移および反応を生じない温度領域のDSC曲線部分)を高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点から、補外ガラス転移開始温度(Tig)を求め、これをガラス転移温度として求めることができる。本発明のガラス転移温度は、上記の方法により測定した値を記載している。
【0044】
本発明の黒色硬化性樹脂組成物は、アクリル系共重合体(A):100質量部に対し、黒色顔料(B)を2〜40質量部含有する。黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、黒酸化鉄(四三酸化鉄)、黒酸化チタン、銅マンガンブラック、銅クロムブラック、コバルトブラック、シアニンブラック、アニリンブラックなどが上げられるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。これらの黒色顔料はそれぞれ単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。これらの中では、光遮蔽性の観点からカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、例えば、チャネルブラック、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ボーンブラックなどを上げることができる。なお、黒色顔料は、本発明の目的を阻害しない範囲内で、他の顔料や染料などの着色剤を併用しても良い。
【0045】
黒色顔料の量を、アクリル系共重合体(A)100質量部に対し、2質量部以上とすることにより、黒色感に優れる太陽電池裏面保護シートを形成でき、太陽電池モジュールを受光面側から見た場合と同程度の黒色感を得ることが出来る。また、黒色顔料の量を40質量部以下とすることにより、保存中に粘度が急激に高くならず、ゲル化したりしない、分散安定性に優れる黒色硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0046】
次に、ポリイソシアネート化合物(C)について説明する。
ポリイソシアネート化合物(C)は、アクリル系共重合体(A)中の水酸基と反応し、共重合体同士を架橋させ、黒色硬化性樹脂層(1’)を硬化させることにより、強靭な黒色硬化樹脂層(1)をプラスチックフィルム(2)の表面に形成する。
【0047】
本発明の黒色硬化性樹脂組成物は、アクリル系共重合体(A):100質量部に対し、ポリイソシアネート化合物(C)を1〜20質量部含有する。
ポリイソシアネート化合物(C)を、アクリル系共重合体(A):100質量部に対して1質量部以上とすることによって、丈夫な黒色硬化樹脂層(1)を形成できる。即ち、黒色硬化樹脂層(1)がプラスチックフィルム(2)から削り取られたりせず、長期間の使用中に剥がれたりしない。
一方、ポリイソシアネート化合物(C)を、アクリル系共重合体(A):100質量部に対して20質量部以下とすることにより、適度な架橋密度の黒色硬化樹脂層(1)を形成でき、黒色硬化樹脂層(1)がプラスチックフィルム(2)から剥がれたりしない。
【0048】
更に、本発明の黒色硬化性樹脂組成物において、前記ポリイソシアネート化合物(C)中のブロック化ポリイソシアネート化合物(c1)と非ブロック化ポリイソシアネート化合物(c2)との割合は、(c1):(c2)=0〜50未満:50超〜100(質量比)である。非ブロック化ポリイソシアネート化合物(c2)の割合が50超(質量比)であることにより、室温〜70℃程度の低い温度で水酸基との反応が進行する。また、ブロック化ポリイソシアネート化合物(c1)を50未満(質量比)加えることにより、アクリル系共重合体(A)とポリイソシアネート化合物(C)を混合して塗工する際に、粘度の急激な上昇を防止することが出来る。
【0049】
塗料の保存安定性向上の点からブロック化ポリイソシアネート化合物(c1)と非ブロック化ポリイソシアネート化合物(c2)とを併用する場合は、ブロック化ポリイシシアネート化合物(c1)のブロック化剤としては80℃〜100℃程度の比較的低温で乖離するものが好ましい。
【0050】
本発明において用いられる非ブロック化ポリイソシアネート化合物(c2)は、一分子中に2個以上のイソシアネート基を有することが重要であり、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が上げられる。
非ブロック化ポリイソシアネート化合物(c2)は、1種類でも良く、2種類以上の化合物を併用してもよい。
【0051】
芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4',4"−トリフェニルメタントリイソシアネート等を上げることができる
【0052】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を上げることができる。
【0053】
脂環族ポリイソシアネートとしては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を上げることができる
【0054】
また、上記ポリイソシアネートに加え、上記ポリイソシアネートとトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、上記ポリイソシアネートのビュレット体やイソシアヌレート体、更には上記ポリイソシアネートと公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体等が上げられる。
【0055】
これら非ブロック化ポリイソシアネート化合物(c2)の中でも、意匠性の観点から、低黄変型の脂肪族または脂環族のポリイソシアネートが好ましく、耐湿熱性の観点からは、イソシアヌレート体が好ましい。より具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート体、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)のイソシアヌレート体が好ましい。また、これらの混合体も好適に用いられる。
【0056】
ブロック化ポリイシシアネート化合物(c1)としては、上記の非ブロック化ポリイソシアネート化合物(c2)を種々のブロック化剤でブロックしたものが挙げられ、ブロック化剤としては80℃〜100℃程度の比較的低温で乖離するものが好ましい。
【0057】
さらに、本発明の黒色硬化性樹脂組成物には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、前記アクリル系共重合体(A)以外のバインダー用の樹脂や、有機系もしくは無機系の微粒子や、有機溶媒などが含まれていても良い。
前記アクリル系共重合体(A)以外の樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂やウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などを挙げることが出来る。
【0058】
本発明の黒色硬化性樹脂組成物に有機系もしくは無機系の微粒子を含有することにより、黒色硬化樹脂層(1)の表面を凹凸にしてブロッキング防止効果を付与したり、表面の凹凸によるマット感を出したり、皮膜に強度を与えて、傷付き難くしたりすることが出来る。
これら微粒子はアクリル系共重合体(A):100質量部に対して0.01〜30質量部含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜20質量部含有することが好ましい。含有量が0.01質量部以上とすることにより上記効果が期待でき、30質量部以下とすることにより密着性に優れる丈夫な黒色硬化樹脂層(1)を形成できる。
【0059】
有機系微粒子の具体例としては、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ナイロン(登録商標)樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂、メタクリレート樹脂、アクリレート樹脂などのポリマー微粒子、あるいは、セルロースパウダー、ニトロセルロースパウダー、木粉、古紙粉、籾殻粉、澱粉などが上げられる。有機系粒子は1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0060】
無機微粒子の具体例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、ケイ素、アンチモン、チタンなどの金属の酸化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩などを含有する無機系微粒子が上げられる。さらに詳細な具体例としては、シリカゲル、酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、鉛酸化物、珪藻土、ゼオライト、アルミノシリケート、タルク、ホワイトカーボン、マイカ、ガラス繊維、ガラス粉末、ガラスビーズ、クレー、ワラスナイト、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化チタン、リトポン、軽石粉、硫酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、炭酸バリウム、ドロマイト、二硫化モリブデン、砂鉄、カーボンブラックなどを含有する無機系粒子が挙げられる。無機粒子は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0061】
また、本発明における黒色硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、本発明による効果を妨げない範囲で、硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤はアクリル系共重合体(A)の水酸基とポリイソシアネート化合物(C)とのウレタン結合反応を促進する触媒としての役割を果たす。硬化促進剤としては、スズ化合物、金属塩、塩基などが上げられ、具体例としては、オクチル酸スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、塩化スズ、オクチル酸鉄、オクチル酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、トリエチルアミン、トリエチレンジアミンなどが上げられる。これらは、単独または組み合わせて用いることができる。
【0062】
本発明の黒色硬化性樹脂組成物は有機溶媒を含有しても良い。有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、などの芳香族系溶媒;iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒などが上げられる。
有機溶媒の沸点は50℃〜200℃ のものを用いることが好ましい。沸点が50℃よりも低いと、黒色硬化性樹脂組成物を基材に塗布する際に溶剤が揮発しやすく、固形分が高くなって均一な膜厚で塗布することが難しくなる。沸点が200℃よりも高いと、溶剤を乾燥し難くなる。なお、溶剤は2種以上用いてもよい。
【0063】
本発明の黒色硬化性樹脂組成物は、太陽電池裏面保護シートの非受光面側の最外層の形成に供される。そして、太陽電池裏面保護シートは、太陽電池モジュールの形成に供される。太陽電池モジュールは長期間外部環境に晒されるため、太陽電池モジュールには高度の耐湿熱性や耐候性が求められる。
本発明の黒色硬化性樹脂組成物から形成される黒色硬化樹脂層(1)も長期間外部環境に晒されるため、高度の耐湿熱性や耐候性が求められる。
本発明の黒色硬化性樹脂組成物に耐候性を付与する目的で、紫外線吸収剤や紫外線安定剤などをさらに含むことが出来る。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、インドール系紫外線吸収剤などの有機系紫外線吸収剤や、酸化亜鉛、酸化チタンなどの無機系紫外線吸収剤などの紫外線吸収剤が上げられる。
紫外線安定剤としては、ヒンダードアミン化合物のような紫外線安定剤が好適に用いられる。紫外線吸収剤や紫外線安定剤は、添加剤として黒色硬化性樹脂組成物に添加しても良いし、官能基を有するような紫外線吸収剤や紫外線安定剤を、アクリル系共重合体と反応させて用いても良いし、他の樹脂と反応させて用いても良い。
こられ紫外線吸収剤や紫外線安定剤は、紫外線吸収剤や紫外線安定剤を除く黒色硬化性樹脂組成物の固形分100質量部に対して、0.1〜30質量部、好ましくは1〜20質量部用いることが好ましい。
【0064】
本発明における黒色硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、本発明による効果を妨げない範囲で、充填剤、チクソトロピー付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、硬化剤、増粘剤、顔料分散剤、シランカップリング剤等の各種の添加剤をさらに添加しても良い。
【0065】
本発明では、アクリル系共重合体(A)と黒色顔料(B)との親和性が優れるため、黒色顔料(B)を短時間で分散できる。分散後の黒色硬化性樹脂組成物は、低粘度でニュートニアンな流動性を示し、長期の保存でも粘度が上昇したり、顔料が分離・沈降したりすることがない。
【0066】
次に、図に基づいて本発明の太陽電池裏面保護シートについて説明する。
本発明の太陽電池裏面保護シート(V)は、
図1に示す太陽電池モジュールにおいて非受光面に位置する。
本発明の太陽電池裏面保護シート(V)は、
図2に示すように、黒色硬化樹脂層(1)が一方の面を構成し、接着性フィルム(5)が他方の面を構成する態様とすることができる。接着性フィルム(5)は、太陽電池モジュールを形成する際、
図1に示す非受光面側封止剤(IV)に接するように配置される。
【0067】
あるいは、本発明の太陽電池裏面保護シート(V)は、
図3に示すように、黒色硬化樹脂層(1)が一方の面を構成し、接着性樹脂層(4’)が他方の面を構成する態様とすることができる。接着性樹脂層(4’)は、太陽電池モジュールを形成する際、
図1に示す非受光面側封止剤(IV)に接するように配置され、硬化される。
いずれも形成された太陽電池モジュールにおいて、黒色硬化樹脂層(1)は、非受光面側の最外層となる。黒色硬化樹脂層(1)は、太陽電池裏面保護シート(V)の内側を光や熱、水、湿度、砂塵、などから保護する役割を担う。
【0068】
このような太陽電池裏面保護シートは、以下のような方法で得ることができる。
例えば、本発明の黒色硬化性樹脂組成物を、プラスチックフィルム(2)の一方の面に塗布し、50〜150℃で30秒〜2分間加熱乾燥することにより溶剤を揮発させ、未硬化の黒色硬化性樹脂層(1’)を形成する。黒色硬化性樹脂層(1’)を形成後、プラスチックフィルム(2)の他方の面に、接着剤を塗布・乾燥後、接着性フィルム(5)を重ね、エージングにより接着剤層を硬化させる際に、黒色硬化性樹脂層(1’)も硬化させ、メチルエチルケトンに対する不溶分が60〜100%である黒色硬化樹脂層(1)とすることができる。
エージングの温度は30〜80℃が好ましく、40〜60℃がさらに好ましい。エージングの時間は通常2〜8日である。エージングの温度が低いと、硬化が終了するまでの時間が長期となり、エージングの温度が高いと時間は短くなる。
溶剤を揮発させた後、エージング前に、80〜150℃の温度で30秒〜10分間加熱することにより、硬化を促進する方法も好適である。
【0069】
あるいは、本発明の黒色硬化性樹脂組成物を、プラスチックフィルム(2)の一方の面に塗布し、加熱乾燥硬化し、メチルエチルケトンに対する不溶分が60〜100%である黒色硬化樹脂層(1)を形成する。そして、プラスチックフィルム(2)の他方の面に、接着剤層(3)を介して接着性フィルム(5)を積層することによって得ることができる。
【0070】
あるいは、プラスチックフィルム(2)の一方の面に、接着剤層(3)を介して接着性フィルム(5)を積層した後、プラスチックフィルム(2)の他方の面に本発明の黒色硬化性樹脂組成物を塗布し、同様にしてメチルエチルケトンに対する不溶分が60〜100%である黒色硬化樹脂層(1)を形成することもできる。
【0071】
あるいは、本発明の黒色硬化性樹脂組成物を、プラスチックフィルム(2)の一方の面に塗布し、黒色硬化性樹脂層(1’)を形成後、前記黒色硬化性樹脂層(1’)を硬化し、メチルエチルケトンに対する不溶分が60〜100%である黒色硬化樹脂層(1)を形成する。そして、プラスチックフィルム(2)の他方の面に、接着性樹脂層(4’)用の組成物を塗布し、乾燥して、メチルエチルケトンに対する不溶分が0〜50%程度の接着性樹脂層(4’)を形成することができる。
【0072】
本発明の黒色硬化性樹脂組成物を塗布する対象であるプラスチックフィルム(2)として、種々のものが使用できる。
例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、セロファン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレンやポリフッ化ビニリデン、などのフッ素樹脂、ABS樹脂、ノニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの各種樹脂製のフィルムが挙げられる。
また、これらの樹脂製のフィルムに、金属酸化物や非金属無機酸化物を蒸着した蒸着フィルムなどを用いることもできる。
さらに、接着剤を用いてこれらの樹脂製のフィルムに、銅、アルミニウムなどの金属箔を積層したものを用いることもできる。
なお、本発明の黒色硬化性樹脂組成物を塗布する面が、樹脂製のフィルムであるか、蒸着層であるか、金属箔であるかは問わない。
【0073】
蒸着される金属酸化物もしくは非金属無機酸化物としては、例えば、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、ホウ素、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウムなどの酸化物が使用できる。また、アルカリ金属、アルカリ土類金属のフッ化物なども使用することができ、これらは単独もしくは組み合わせて使用することができる。
これらの金属酸化物もしくは非金属無機酸化物は、従来公知の真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどのPVD方式や、プラズマCVD、マイクロウェーブCVDなどのCVD方式を用いて蒸着することができる
【0074】
本発明の黒色硬化性樹脂組成物を、プラスチックフィルム(2)に塗布する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、コンマコーティング、グラビアコーティング、リバースコーティング、ロールコーティング、リップコーティング、スプレーコーティングなどを上げることができる。
【0075】
本発明の太陽電池裏面保護シート(V)における黒色硬化樹脂層(1)の厚みは、0.1〜 30μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。
【0076】
本発明の太陽電池裏面保護シート(V)の形成に用いられる接着剤としては、熱硬化性の他、ホットメルト型、UV硬化性等、種々のものを用いることができる。
熱硬化性接着剤としては、種々のポリオール成分とイソシアネート成分に代表される硬化剤成分とを配合してなる接着剤が挙げられる。例えば、東洋モートン(株)製の商品名:ダイナグランド、信越ポリマー(株)製の商品名: ポリマーエース、が挙げられる。ホットメルト型接着剤としては、東レ・ダウコーニング(株)製の製品などが挙げられる。
本発明の太陽電池裏面保護シート(V)の形成に用いられる接着剤は、かかる例示のみに限定されるものではない
【0077】
次に太陽電池モジュールについて、前記
図1、2、3を用いて説明する。
太陽電池モジュールは、太陽電池モジュールの受光面側に位置する表面保護部材(I)、受光面側に位置する封止剤層(II)、太陽電池セル(III)、を積層し、さらに、太陽電池モジュールの非受光面側に位置する封止剤層(IV)、および太陽電池裏面保護シート(V)を順番に重ねる。太陽電池裏面保護シート(V)における黒色硬化樹脂層(1)は、前記封止剤層(IV)に接しない側に配する。即ち、
図2に示す太陽電池裏面保護シート(V)を構成している接着性フィルム(5)や、
図3に示す太陽電池裏面保護シート(V)を構成している接着性樹脂層(4’)が、前記封止剤層(IV)に接するように太陽電池裏面保護シート(V)を重ねる。
次いで、真空ラミネーターを用いた加熱圧着により、受光面側及び非受光面側に位置する封止剤層(II)、(IV)を溶融軟化し、各層を接合し、太陽電池モジュールを形成する。
図1に示すように、水や湿度に弱い太陽電池セルを封止剤層(II)、(IV)中に封止し、封止剤層(II)、(IV)をさらに表面保護材と裏面保護シートで挟むことにより、太陽電池セルを水や湿度から保護する。
【0078】
太陽電池モジュールは10年、20年と長期の使用に耐える必要がある。
図2、3に示す黒色硬化樹脂層(1)が劣化すると、太陽電池裏面保護シート(V)を構成しているプラスチックフィルム(2)も劣化し、水や水蒸気が浸透して太陽電池セルを劣化させる。太陽電池セルが劣化すると発電効率が低下したり、故障の原因となったりする。
また、黒色硬化樹脂層(1)そのものが劣化しなくても、熱や湿度に対するプラスチックフィルム(2)と黒色硬化樹脂層(1)との収縮率・膨張率が大きく異なる場合、熱や湿度が繰り返し加えられると、プラスチックフィルム(2)と黒色硬化樹脂層(1)との界面で歪が生じ、部分的に浮きが生じ、最終的には剥離してしまうおそれがある。
本発明の黒色硬化性樹脂組成物は、長期にわたる過酷な条件下でも劣化や剥離を生じない黒色硬化樹脂層(1)を形成することが出来る。
【0079】
真空ラミネーターの温度は、通常、130〜160℃程度であり、150℃が一般的である。真空ラミネーターの中のヒーター上に前述のモジュール材料を重ね合わせた状態で置き、中を真空にして10分〜30分程度ラミネートする。15分間程度、真空ラミネートした後、常圧にて130〜160℃程度のオーブン中でさらに15分程度加熱する場合もある。
【0080】
封止剤層(II)、封止剤層(IV)としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EV
A)が用いられることが多い。
EVA中に過酸化物などをあらかじめ添加しておくと、真空ラミネート時の加熱によりEVAを熱溶融・架橋し、耐熱性を向上させた封止剤層(II)、封止剤層(IV)中に
太陽電池セル(III)を固定することができる。
【0081】
太陽電池表面保護部材(I)としては、特に限定されないが、一般的な例として、ガラス板や、ポリカーボネート板、ポリアクリレート板などのプラスチック板を上げることができる。透明性、耐候性、強靭性などの点からは、ガラス板が好ましい。さらには、ガラス板の中でも透明性の高い白板ガラスが好ましい。
【0082】
太陽電池セル(III)としては、結晶シリコン、アモルファスシリコン、銅インジウムセレナイドに代表される化合物半導体などの光電変換層に電極を設けたもの、さらにはそれらをガラス等の基板上に積層したもの等が例示できる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中、部は質量部を、%は質量%をそれぞれ示す。
【0084】
合成例1「アクリル系共重合体A−1溶液」
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、酢酸エチルを150部仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら77℃まで昇温した。フラスコ内の温度が77℃になったら、メタクリル酸メチル10.00部、メタクリル酸n−ブチル88.74部、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル0.70部、メタクリル酸ジメチルアミノエチル0.56部、アゾビスイソブチロニトリル0.08部を混合したモノマー溶液を2時間掛けて滴下した。
モノマー滴下終了1時間後から1時間毎に、アゾビスイソブチロニトリルを0.01部づつ加えて反応を続け、溶液中の未反応モノマーが1%以下になるまで反応を続けた。未反応モノマーが1%以下になったら冷却して反応を終了し、固形分約40%のアクリル系共重合体A−1溶液を得た。
アクリル系共重合体A−1は、アミン価:2.0(mgKOH/g)、酸価:0(mgKOH/g)、水酸基価:3.1(mgKOH/g)、重量平均分子量:225,000だった。
【0085】
合成例2〜16「アクリル系共重合体A−2〜A−16溶液」
表−1、2の組成に従って反応を行い、アクリル系共重合体A−2〜A−16溶液を得た。固形分、アミン価、酸価、水酸基価、重量平均分子量を表−1、2に示す。
なお、固形分、アミン価、酸価、水酸基価、重量平均分子量(Mw)は、下記に記述する方法により測定した。
【0086】
《固形分の測定》
直径55mm、深さ15mmの蓋付きアルミ皿の重量を、小数点以下4桁まで測定する。アルミ皿に樹脂溶液を約1.5g採取し、直ちに蓋をして素早く正確に重量を測定する。蓋を外した状態で、150℃のオーブンに入れて10分間乾燥させる。室温まで冷却してから、アルミ皿と蓋の重量を測定し、下記式で固形分を算出する。
固形分(%)=(乾燥後の重量−アルミ皿の重量)÷(乾燥前の重量−アルミ皿の重量)×100
【0087】
《アミン価の測定》
共栓三角フラスコ中に樹脂溶液を約1.5g精密に量り採り、さらにメチルエチルケトンを50ml加えて溶解する。京都電子社製の電位差滴定装置を用いて、滴定試薬としては0.02mol/L過塩素酸(ジオキサン溶液)を用いて自動滴定を行う。滴定曲線上の最大変曲点を当量点とし、この時の0.02mol/L過塩素酸(ジオキサン溶液)の滴定量を求める。
アミン価は下記の式で求める。アミン価は樹脂の乾燥状態の数値とした。
アミン価(mgKOH/g)=(a×F×56.1×0.02)/S
S:試料の採取量×(試料の固形分/100)(g)
a:0.02mol/L過塩素酸(ジオキサン溶液)の滴定量(ml)
F:0.02mol/L過塩素酸(ジオキサン溶液)の力価
【0088】
《酸価(AV)の測定》
共栓三角フラスコ中に樹脂溶液を約1g精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液50mlを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。
酸価は次式により求めた。酸価は樹脂の乾燥状態の数値とした。
酸価(mgKOH/g)=(a×F×56.1×0.1)/S
S:試料の採取量×(試料の固形分/100)(g)
a:0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液の滴定量(ml)
F:0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0089】
《水酸基価(OHV)の測定》
共栓三角フラスコ中に樹脂溶液を約1g精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液50mlを加えて溶解する。更にアセチル化剤( 無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、100℃に加熱して約1時間攪拌する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.5mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。別途、空試験として、トルエン/エタノール混合液のみにアセチル化剤を加えて、100℃1時間加熱した溶液について、0.5mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。
水酸基価は次式により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした。
水酸基価( mgKOH/g)={(b−a)×F×56.1×0.5}/S+D
S:試料の採取量×(試料の固形分/100)(g)
a:0.5mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液の滴定量(ml)
b:空実験の0.5mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液の滴定量(ml)
F:0.5mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0090】
《重量平均分子量(Mw)》
昭和電工社製 Shodex GPC−104/101システムを用いて測定した。
カラム Shodex KF−805L+KF−803L+KF−802
検出器 示差屈折率計(RI)
カラム温度 40℃
溶離液 テトラヒドロフラン(THF)
流速 1.0ml/min
試料濃度 0.02%
検量線用標準試料 TSK標準ポリスチレン
【0091】
「非ブロック化ポリイソシアネート化合物(c2−1)の製造」
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート体を酢酸エチルで希釈して、固形分50%の樹脂溶液として非ブロック化ポリイソシアネート化合物(c2−1)の溶液を得た。
【0092】
「非ブロック化ポリイソシアネート化合物(c2−2)の製造」
イソホロンジイソシアネート(IPDI)のトリメチロールプロパン(TMP)アダクト体を酢酸エチルで希釈して、固形分50%の樹脂溶液として非ブロック化ポリイソシアネート化合物(c2−2)の溶液を得た。
【0093】
「非ブロック化ポリイソシアネート化合物(c2−3)の製造」
HDIとIPDIとの混合ヌレート体を酢酸エチルで希釈して、固形分50%の樹脂溶液として非ブロック化ポリイソシアネート化合物(c2−3)の溶液を得た。
【0094】
「実施例1」
合成例1で得られたアクリル系共重合体(A−1)100部(固形重量)に、黒色顔料(B)として三菱化学社製カーボンブラックMA−100を4部加え、さらに固形分が35%になるようにトルエンを加えた。この顔料混合液にガラスビーズを加えて、スキャンディックスで3時間分散して分散液を得た。得られた分散液に非ブロック化ポリイシシアネート化合物(c2−1)を5部(固形重量)加え、さらに固形分が35%になるようにトルエンを加えて攪拌し、黒色硬化性樹脂組成物を得た。
この時の黒色硬化性樹脂組成物の顔料分散性、保存安定性を表−3に示す。
【0095】
得られた黒色硬化性樹脂組成物を、バーコーターを用いて基材フィルムに塗布し、100℃のオーブン中で1分間乾燥して溶剤類を揮発させた。基材フィルムは、帝人デュポンフィルム社製のポリエステルフィルム(テトロンS(登録商標)、厚み188μm、両面コロナ処理)を用いた。乾燥後の膜厚が15μmとなるようにバーコーターを選択した。
次いで50℃の恒温室に4日間放置してアクリル系共重合体とポリイソシアネート化合物との反応を熟成させて、ポリエステルフィルム上に黒色硬化樹脂層を形成した。
ポリエステルフィルム上に黒色硬化樹脂層を形成した積層体について、メチルエチルケトンに対する不溶分(%)、耐溶剤性、耐湿熱密着性、耐摩耗性を評価した。その結果を表−3に示す。
【0096】
「実施例2
」、「参考例3」、「実施例4〜10」、「参考例11」、実施例12〜14」、「比較例1〜11」
表−3の組成に従って、実施例1と同様にして黒色硬化性樹脂組成物を得、同様に評価した。
表−3中、実施例3、11とあるのは参考例3、11の意である。
【0097】
《顔料分散性》
スキャンディックスで3時間分散した直後の分散液の状態を目視で評価した。
◎:分散液に流動性があり、容器を傾けると分散液は直ちに流動する。
○:分散液に流動性はあるが、容器を傾けて分散液が流動するのに時間が掛かる。
△:分散液に流動性は無いが、スパチュラーで軽く攪拌すると流動する。
×:分散液に流動性が全く無く、容器を傾けても分散液はそのまま止まる。
【0098】
《保存安定性》
スキャンディックスで分散した後、ガラスビーズを分離してから40℃の恒温室で2週 間放置し、2週間後に分散液の状態を目視評価した。
◎:分散液は低粘度で、スキャンディックス分散直後と変わらない。
○:分散液に流動性が無くなっているが、スパチュラーで軽く攪拌すると流動する。
△:分散直後には流動性があったが、2週間後に流動性が全く無くなっている。
×:分散液が樹脂層と顔料層とに分離している。
【0099】
《MEK(メチルエチルケトン)に対する不溶分(%)》
基材フィルムを予め10cm×10cmの大きさにカットし、その重量(X)を求める。次にそのフィルムに各実施例、比較例で得られた黒色硬化性樹脂組成物を、乾燥後の膜厚が15μmとなるようにバーコーターで塗工し、100℃1分間乾燥させてから、50℃の恒温室で4日間熟成させ、試料とする。試料の重量(Y)を測定する。その後、試料を500mlのメチルエチルケトンの入った容器に入れて、25℃で1時間振淘攪拌する。1時間後、メチルエチルケトン中から取り出して、新鮮なメチルエチルケトンで表面を荒い流した後に、室温で試料を乾燥させる。乾燥後に試料の重量(Z)を測定する。溶剤不溶分(%)は下記式より算出する。
メチルエチルケトンに対する不溶分(%)={(Z)−(X)}÷{(Y)−(X)}×100
【0100】
《耐溶剤性》
熟成後の積層体における黒色硬化樹脂層の表面を、メチルエチルケトンを含ませた綿棒で、綿棒が折れ曲がらない最大の荷重を掛けて、約3cmの長さ部分を往復擦る。黒色硬化樹脂層が溶解して最初に基材フルムが現れた時の往復回数で表示する。
◎:往復回数が100回以上。
○:往復回数が70〜100回。
△:往復回数が30〜70回。
×:往復回数が30回未満。
【0101】
《耐湿熱密着性》
熟成後の積層体を、温度85℃、相対湿度8 5%RHの環境条件で2000時間保存し、湿熱処理を行う。2000時間後に取り出し、カッターナイフで黒色硬化樹脂層に基材フィルム表面まで達するように、縦横に11本のクロスカットを施し、セロハンテープ剥離試験を行う。
◎:100枡中、100枡が残る。
○:100枡中、70枡以上残る。
△:100枡中、30〜70枡が残る。
×:100枡中、30枡未満が残る。
【0102】
《耐摩耗性》
テスター産業社製「学振式摩擦堅牢度試験機」AB−301を用いて、JIS K 5701に準じて行う。
熟成後の積層体を、R200mmステンレス板台の上に、黒色硬化樹脂層を上にして置く。20×20mm、R45mmの摩擦子に基材フィルムを貼り付け、200gfの荷重を掛けて、30cpmの速度で10往復させる。その後、黒色硬化樹脂層が積層された基材フィルムを取り出して、表面の傷付き度合いを評価する。
◎:表面に全く傷が付かない。
○:極一部に傷が見られる。
△:全面に傷が見られる。
×:基材フィルムに達する傷が付く。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
表−3の結果から、0.5(mgKOH/g)以上のアミン価を有するアクリル系共重合体(A)を用いてなる本発明の黒色硬化性樹脂組成物は、カーボンブラック顔料の分散性に優れ、かつ、保存安定性も良好である。
それに対して、比較例1と比較例3で用いられたアクリル系共重合体はアミン価が0であり、これを用いた黒色硬化性樹脂組成物は、カーボンブラック顔料の分散性と保存安定性が非常に悪い。
また、比較例6と比較例7は、アミン価を有さないアクリル系共重合体を用い、モノマーであるメタクリル酸ジメチルアミノエチル(DM)や、メタクリル酸=1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジニル(HALS(1))を添加したものである。単なるモノマーでは、カーボンブラック顔料の分散性は有さない。
また、比較例8は、特許文献2、3、4で開示されているように、顔料分散剤を用いたものである。アミン価を有する市販の分散剤としてソルスパーズ24000SC(商品名、日本ルーブリゾール(株)社製、有効成分100質量%、重量平均分子量:5300、水酸基価:106mgKOH/g、アミン価42mgKOH/g)を添加したものである。アミン価を有するのでカーボンブラック顔料の分散性には優れるが、重量平均分子量が小さいので保存安定性は劣る。また、水酸基価が大きすぎるので耐湿熱密着性も劣る。
【0107】
実施例1〜14の結果から、0.5(mgKOH/g)以上のアミン価を有し、特定の水酸基価および重量平均分子量を有するアクリル系共重合体(A)を用いてなる本発明の黒色硬化樹脂層は、優れた耐溶剤性と耐摩耗性を有しながら、かつ、良好な耐湿熱密着性を有している。
【0108】
比較例1と比較例2で用いられたアクリル系共重合体は、水酸基が無いため、ポリイソシアネート化合物を配合しても架橋反応を生じない。そのため、耐溶剤性と耐摩耗性が劣っているのみならず、耐湿熱密着性も劣る。
【0109】
比較例5で用いられたアクリル系共重合体は、水酸基価が41.2(mgKOH/g)と高いため、ポリイソシアネート化合物との架橋反応が進み過ぎ、耐溶剤性と耐摩耗性は非常に優れるものの耐湿熱密着性が劣る。
【0110】
比較例10と比較例11のように用いられるアクリル系共重合体の水酸基価が適正でも、ポリイソシアネート化合物を含まない黒色硬化性樹脂組成物や、ポリイソシアネート化合物を過剰に含む黒色硬化性樹脂組成物から形成される黒色硬化樹脂層の耐溶剤性・耐摩耗性・耐湿熱密着性のバランスが崩れる。比較例9は、カーボンブラック顔料の添加量が多い場合であるが、顔料分散性・保存安定性とともに、耐溶剤性・耐摩耗性・耐湿熱密着性も劣る結果となる。
【0111】
比較例4は、重量平均分子量が31,000のアクリル系共重合体を用いたものである。アクリル系共重合体の重量平均分子量が小さいと、顔料分散液の保存安定性が劣り、顔料が分離しやすくなる。また熟成の終了した黒色硬化樹脂層は、低分子量のため、耐溶剤性が劣る。
【0112】
以上のことから、本発明の黒色硬化性樹脂組成物は、特定のアクリル系共重合体に対し、ポリイソシアネート化合物を特定の割合で用いることにより、いわゆる顔料分散剤などを用いなくても、カーボンブラック顔料を良好に分散し、かつ、保存中にも増粘や分離・沈降などの現象を生じない。また、これらの黒色硬化性樹脂組成物を基材フィルムに塗布して、乾燥・硬化させた黒色硬化樹脂層は、耐溶剤性・耐摩耗性・耐湿熱密着性に優れた皮膜を与える。