特許第6531464号(P6531464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6531464
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/049 20140101AFI20190610BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20190610BHJP
   C08G 18/63 20060101ALI20190610BHJP
   C08F 255/00 20060101ALI20190610BHJP
【FI】
   H01L31/04 562
   B32B27/32 101
   C08G18/63
   C08F255/00
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-71460(P2015-71460)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-190941(P2016-190941A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2018年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩史
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−302709(JP,A)
【文献】 特開2004−269872(JP,A)
【文献】 特開2004−051808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/18
B32B 27/00−27/42
C08G 18/00−18/87
C08F 255/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル基材と、樹脂組成物から形成してなる樹脂層とを備えた、太陽電池用裏面保護シートであって、
前記樹脂層が、
樹脂成分とイソシアネート硬化剤を含み、
前記樹脂成分がポリマー(A)またはポリマー(B)であり、
前記ポリマー(A)は、水酸基を含有する(メタ)アクリル変性ポリオレフィンを含み、
前記ポリマー(B)は、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂、および(メタ)アクリル変性ポリオレフィンを含み、
前記樹脂成分の水酸基価が2〜30mgKOH/gである、樹脂組成物から形成してなる樹脂層である、
太陽電池用裏面保護シート。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンを(メタ)アクリル系モノマーでグラフト変性してなるポリマーであり、
前記(メタ)アクリル系モノマーは、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上である、請求項1記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項3】
(メタ)アクリル系モノマーに基づくグラフト部位を、前記(メタ)アクリル変性ポリオレフィン100重量%中に30〜90重量%含む、請求項2記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系モノマーが環状構造を含む、請求項2または3記載太陽電池用裏面保護シート。
【請求項5】
表面保護部材、発電セル、封止剤および請求項1〜4いずれか1項に記載の太陽電池用裏面保護シートを備えた、太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂は、安価で成型性、耐薬品性、耐熱性、耐水性、絶縁性など多くの優れた性質を有するため、工業材料として広範囲に使用される樹脂材料である。しかしながら、ポリオレフィン系樹脂は非極性であるため、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂のような極性樹脂との接着性に劣るという欠点がある。
【0003】
そのため、非極性であるポリオレフィン系樹脂と極性を有する樹脂を密着させるためには、極性樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着を仲立ちする樹脂組成物を介して密着性を向上させる方法が一般的に知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリオレフィン又はその変性体(A)とアクリル樹脂(B)とのグラフトポリマー(C)(水酸基価34)を含む樹脂組成物、およびそれから形成した樹脂層上にイソアネート硬化剤を含有する樹脂層を形成したポリオレフィンシートが開示されている。
また、特許文献2には、ポリエステル基材のポリビニルアセトアセタール樹脂含有樹脂層と、ポリオレフィン系封止材とを接着させた部材を含む太陽電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−51808号公報
【特許文献2】特開2014−60390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリオレフィンは極性が低いため他の部材(塗工樹脂層、ポリオレフィン以外のフィルム等)を塗工ないし積層する場合、両部材間の密着が低いため樹脂層(または接着剤層)を介して密着性を確保することが多い。しかし、特許文献1の樹脂組成物は、グラフトポリマー(C)の水酸基価が過剰であるため樹脂層の架橋密度が過剰になるため、高温高湿環境下で使用された場合、樹脂層とポリオレフィンとの密着性が低下する問題があった。
また、特許文献2の樹脂組成物は、太陽電池裏面保護シートと封止材との接着剤層、換言するとポリエステルと、ポリオレフィンという異種素材を接着している。しかし、ポリエステルは極性があるため接着は比較的容易であるが、ポリオレフィンは、低極性であるため接着(密着)を確保しにくい。そのためダンプヒート試験では、密着性が得られていたものの、さらに過酷な高温高湿環境下で使用されると、樹脂層とポリオレフィンとの界面の密着性が低下し、水分が侵入して界面剥離が生じるため長期信頼性が得難い問題がある。また同樹脂層は、樹脂層を形成したプラスチックシートを長期間倉庫で保管した場合、プラスチックシート同士がブロッキングする問題もあった。
【0007】
本発明は、プラスチックシート同士のブロッキングを抑制し、過酷な高温高湿環境下で長期間使用されたとき密着性の低下が生じ難く、長期信頼性が得られる樹脂層を形成できる樹脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分とイソシアネート硬化剤を含み、前記樹脂成分がポリマー(A)またはポリマー(B)であり、前記ポリマー(A)は、水酸基を含有する(メタ)アクリル変性ポリオレフィンを含み、前記ポリマー(B)は、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂、および(メタ)アクリル変性ポリオレフィンを含み、前記樹脂成分の水酸基価が2〜30mgKOH/gである。
【発明の効果】
【0009】
上記の本発明によれば、特定範囲の水酸基価を有する樹脂成分と、イソシアネート硬化剤とを含む樹脂組成物から形成した樹脂層は、硬過ぎない適度の柔軟性を有しているため、高温高湿度雰囲気下で放置された後、ポリオレフィンとの密着性の低下を抑制できたことに加え、ブロッキングが生じ難い予想外の効果が得られた。
【0010】
本発明によりプラスチックシート同士のブロッキングを抑制し、過酷な高温高湿環境下で長期間使用されたとき密着性の低下が生じ難く、長期信頼性が得られる樹脂層を形成できる樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で使用する用語を定義する。「シート」、「フィルム」および「テープ」は同義語である。「(メタ)アクリル樹脂」は、「アクリル樹脂」、「メタクリル樹脂」、「アクリル・メタクリル共重合樹脂」を含む。「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」、「メタクリロイル」を包む。「(メタ)アクリル」は、「アクリル」「メタクリル」を包む。「モノマー」は、「エチレン性不飽和結合含有単量体」である。「基材」は、「シート」および「シート以外の形状」の部材を含み、広く樹脂層形成可能な相手方をいう。
【0012】
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分とイソシアネート硬化剤を含む。この樹脂組成物は、ポリオレフィン製の部材・シートと、他の部材(塗工樹脂層、ポリオレフィン以外のフィルム等)との密着性を向上させるために使用する。本発明の樹脂組成物は、接着剤、またはアンカーコート剤として使用することが好ましい。そのため樹脂組成物から形成した樹脂層は、使用態様により接着剤層、アンカーコート層または樹脂層ということがある。そのため本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン接着用樹脂組成物ともいえる。
【0013】
本発明において樹脂成分は、その水酸基価が2〜30mgKOH/gである必要がある。水酸基価が所定の範囲にあることで樹脂層は、硬過ぎない適度の柔軟性を有する架橋構造が得られるため、ポリオレフィンとの間の良好な密着性により長期信頼性が得られる上、ブロッキングが生じ難い性質も得られる。この樹脂成分は、ポリマー(A)を必須とする場合、またはポリマー(B)を必須とする場合が好ましい。
【0014】
ポリマー(A)は、水酸基を含有する(メタ)アクリル変性ポリオレフィンであり、その水酸基価は2〜30mgKOH/gである。ポリマー(A)は、ポリオレフィンを主鎖とするポリマーの側鎖に(メタ)アクリル系モノマーをグラフト重合した、水酸基を含有する(メタ)アクリル変性ポリオレフィンである。ポリマー(A)は、ポリオレフィンなので、ポリオレフィンとの親和性が高く、密着性を向上できる。
【0015】
水酸基を含有する(メタ)アクリル変性ポリオレフィンを作製する方法は、公知の合成手法を使用できるところ、ポリオレフィンポリマーの側鎖に(メタ)アクリル系モノマーをグラフト重合する方法が好ましい。例えば酸変性ポリオレフィンに対して、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような水酸基および不飽和二重結合を有するモノマーの水酸基部分を反応させることで、ポリオレフィンポリマーの側鎖に不飽和二重結合を導入し、これを起点として(メタ)アクリル系モノマーを重合させる反応が挙げられる。
【0016】
酸変性ポリオレフィンの合成に使用するオレフィンモノマーは、例えばエチレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。酸変性部位に使用するモノマーは、例えばマレイン酸、イタコン酸、およびシトラコン酸等、ならびにこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも酸無水物が好ましく、無水マレイン酸、無水イタコン酸がより好ましい。
【0017】
ポリオレフィンポリマーにグラフト重合して水酸基を付与する水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーは、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記グラフト重合は、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー以外に他の(メタ)アクリル系モノマー、およびビニルモノマーを使用できる。他の(メタ)アクリル系モノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有モノマー、およびグリシジル基含有モノマー等公知のモノマーが使用できる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
カルボキシル基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、p−カルボキシベンジル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フタル酸(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。
グリシジル基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル等が挙げられる。
ビニルモノマーとしては、たとえばスチレン、シクロヘキセン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、n−ヘキセン、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0018】
ポリマー(B)は、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂、および(メタ)アクリル変性ポリオレフィンを含む。水酸基含有(メタ)アクリル樹脂の水酸基価は2〜30mgKOH/gが好ましい。ポリマー(B)を含む樹脂組成物は、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂とイソシアネート硬化剤との反応で形成した架橋構造、および(メタ)アクリル変性ポリオレフィンを含むことによるポリオレフィンとの良好な親和性の組合せにより、ポリマー(A)の場合と同様にポリオレフィンとの良好な密着性が得られることにより長期信頼性が得られる効果、およびブロッキングが生じ難い効果が得られた。
【0019】
水酸基含有(メタ)アクリル樹脂は、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーを必須成分、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー以外の他の(メタ)アクリル系モノマー、およびビニルモノマーを任意成分として共重合して得る。
水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー、他の(メタ)アクリル系モノマー、およびビニルモノマーは、ポリマー(A)で説明したモノマーを使用できる。
【0020】
水酸基含有(メタ)アクリル樹脂を合成する方法は、通常のラジカル重合、例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合などの公知の重合法で行うことができる。また、重合反応に使用する重合開始剤は、過酸化物およびアゾ化合物が好ましい。
過酸化物は、例えばベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。また、アゾ化合物は、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0021】
ポリマー(B)に含まれる(メタ)アクリル変性ポリオレフィンは、水酸基を有しないことが好ましい。しかし、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂の水酸基価が低い場合、水酸基価の合計が樹脂成分の水酸基価2〜30mgKOH/gの範囲内であれば、(メタ)アクリル変性ポリオレフィンは、水酸基を有することができる。この場合、さらに水酸基を有しない(メタ)アクリル変性ポリオレフィンを併用してもよい。
(メタ)アクリル変性ポリオレフィンは、ポリマー(A)で説明した通り、モノマーを使用して合成できる。
【0022】
ポリマー(B)において、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂と(メタ)アクリル変性ポリオレフィンとの配合比率は、(メタ)アクリル変性ポリオレフィン100重量部に対して水酸基含有(メタ)アクリル樹脂を10〜900重量部含むことが好ましい。
【0023】
ポリマー(A)およびポリマー(B)に共通する(メタ)アクリル変性ポリオレフィンを説明する。(メタ)アクリル変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンを(メタ)アクリル系ポリマーでグラフト変性してなるポリマーであり、前記(メタ)アクリル系ポリマーは、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上であることが好ましく、70℃以上がより好ましい。ガラス転移温度が50℃以上になることでより高度なブロッキング耐性が得られる。なお、前記ガラス転移温度の上限は、110℃がより好ましい。前記グラフト変性には、既に説明したように複数の(メタ)アクリル系ポリマーを使用できる。この場合のガラス転移温度の計算方法は下記の通りである。
【0024】
ガラス転移温度の計算方法は下記式から算出される値である。
1/Tg(K)=W1/T1+W2/T2+・・・Wn/Tn
Tg(℃)=Tg(K)−273
式中、W1、W2、・・・Wnは各モノマーの重量%であり、T1、T2・・・Tnは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度Tg(K)である。
なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、「POLYMER HANDBOOK SECOND EDITION」(J.BRANDRUP、E.H.IMMERGUT著、1975年、John Wiley & Sons,Inc.発行、ページ:III−144〜III−148)に記載の値を使用する。
【0025】
また、「POLYMER HANDBOOK SECOND EDITION」に記載されていないモノマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーを重合平均分子量が5万程度になるように合成し、不揮発分100%のホモポリマーを示差走査熱量分析(DSC)によって計測したガラス転移温度を採用することができる。方法としては、試料約10mgを秤量したサンプルを入れたアルミニウムパンと、試料を入れていないアルミニウムパンとをDSC装置にセットし、これを窒素気流中で、液体窒素を用いて−100℃まで急冷処理し、その後、20℃/分で300℃まで昇温し、DSC曲線をプロットする。このDSC曲線の低温側のベースライン(試験片に転移および反応を生じない温度領域のDSC曲線部分)を高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点から、補外ガラス転移開始温度(Tig)を求め、これをガラス転移温度として求めることができる。
【0026】
「POLYMER HANDBOOK SECOND EDITION」に記載されている代表的なメタクリレートモノマーのガラス転移温度は以下の通りである。
n−ブチルメタクリレート:20℃
シクロヘキシルメタクリレート:83℃
メチルメタクリレート:105℃
イソボルニルメタクリレート:110℃
tert−ブチルメタクリレート:118℃
アダマンチルメタクリレート:141℃
【0027】
また、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのガラス転移温度については、「POLYMER HANDBOOK SECOND EDITION」に2つの値(55℃、86℃)が記載されているため、上記のDSCを使用する方法で計測すると55℃であった。従って、本発明では2−ヒドロキシエチルメタクリレートのガラス転移温度は55℃の値を採用した。
【0028】
また、ペンタメチルピペリジニルメタクリレートのガラス転移温度については、上記のDSCを使用する方法で計測すると64℃であったため、本発明ではペンタメチルピペリジニルメタクリレートのガラス転移温度は64℃とする。
【0029】
ポリマー(A)およびポリマー(B)の(メタ)アクリル変性ポリオレフィンは、例えば酸変性ポリオレフィンに2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような水酸基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させ、当該化合物の不飽和二重結合部位に対し(メタ)アクリル系モノマーを重合させることによって得ることができるが、この2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートは上述した(メタ)アクリル変性ポリオレフィンの(メタ)アクリル変性部位のガラス転移温度の計算に含めるものとする。
【0030】
また、(メタ)アクリル変性ポリオレフィンについて、(メタ)アクリル変性ポリオレフィン100重量%中に、(メタ)アクリル系モノマーに基づくグラフト部位を30〜90重量%含むことが好ましく、40〜85重量部がより好ましく、50〜80重量部がさらに好ましい。グラフト部位を所定の範囲含むことでポリオレフィンに対する密着性がより向上する。
【0031】
また、(メタ)アクリル変性ポリオレフィンについて、グラフト変性する(メタ)アクリル系モノマーは、環状構造を含むモノマーが好ましい。(メタ)アクリル系モノマーが嵩高い環状構造を含むと高温高湿環境のような厳しい条件においても樹脂層が劣化し難く、より優れた長期信頼性が得られる。
環状構造を含む(メタ)アクリル系モノマーは、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
樹脂組成物の長期信頼性をさらに向上させる場合、(メタ)アクリル変性ポリオレフィンのグラフト変性に使用するモノマーにペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート等のようなヒンダードアミン含有モノマーを使用することが好ましい。ヒンダードアミン部位は光分解により樹脂成分から発生したラジカルを捕捉することができるため、長期信頼性がより向上する。なお、ヒンダードアミン部位に代えて、ベンゾトリアゾール、トリアジン、ベンゾフェノン等の紫外線吸収性のある部位を有するモノマーを使用することでも同様に長期信頼性を向上できる。
【0033】
本発明においてイソシアネート硬化剤は、複数のイソシアネート基を有し、樹脂成分の水酸基と反応することで樹脂層に架橋構造が得られる。これにより長期信頼性が得られ、ポリオレフィンとの密着性が向上する。
イソシアネート硬化剤は、例えば芳香族ポリイソシアネート、鎖式脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が好ましい。イソシアネート硬化剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【0034】
芳香族ポリイソシアネートは、例えば1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
鎖式脂肪族ポリイソシアネートは、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0036】
脂環族ポリイソシアネートは、例えば3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0037】
また、上記ポリイソシアネートとトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、上記ポリイソシアネートのビュレット体やイソシアヌレート体、更には上記ポリイソシアネートと公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体等が挙げられる。
【0038】
イソシアネート硬化剤は、高温高湿環境耐性の観点から、イソシアヌレート体を使用する事が好ましい。また、より過酷な高温高湿環境耐性を求める場合には脂肪族または脂環族のポリイソシアネートを使用したイソシアヌレート体よりが好ましい。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート体、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)のイソシアヌレート体等が好ましい。
【0039】
また、イソシアネート硬化剤は、イソシアネート基をブロック化剤でブロックしたブロック化イソシアネート硬化剤を使用することが好ましい。例えば太陽光パネル(太陽電池モジュールともいう)製造時の接着工程のように、通常140〜150℃、20〜30分程度の熱プレス工程を行う場合には、ブロック化イソシアネート硬化剤が特に好ましい。ブロック化イソシアネート硬化剤を使用することで、ポリオレフィンのみならず、エチレン酢酸ビニル共重合体等の封止材層とも密着性が向上する。
【0040】
ブロック化剤は、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノール等のフェノール類、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、t−ペンタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコールなどのアルコール類、3,5−ジメチルピラゾール、1,2−ピラゾール等のピラゾール類、1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール類、エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノール等のハロゲン置換アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピルラクタム等のラクタム類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、マロン酸メチル、マロン酸エチル等の活性メチレン化合物類が挙げられる。その他、アミン類、イミド類、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール類等も挙げられる。ブロック化剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【0041】
ブロック剤は、これらの中でブロック剤の解離温度が80℃〜150℃の化合物が好ましい。このようなブロック剤は、例えばメチルエチルケトンオキシム(解離温度:140℃、以下同様)、3,5−ジメチルピラゾール(120℃)、ジイソプロピルアミン(120℃)等が挙げられる。
【0042】
イソシアネート硬化剤の配合量は、樹脂成分の水酸基1モルに対して、イソシアネート基が0.1〜10モルの範囲になるような比率で配合すればよい。水酸基とイソシアネート基の比率がこれらの範囲にあることで、高い密着性、長期信頼性を得ることができる。
【0043】
本発明の樹脂組成物は、さらに、フィラーを配合できる。フィラーを含むことでブロッキング耐性がより向上する。フィラーは、有機フィラーおよび無機フィラーが好ましい。
フィラーは、樹脂組成物100重量%中に1〜30重量部含有することができる。
【0044】
有機フィラーは、例えばポリメチルメタアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ナイロン(登録商標)樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、シリコン樹脂、メタクリレート樹脂、アクリレート樹脂等のポリマー粒子;、セルロースパウダー、ニトロセルロースパウダー、木粉、古紙粉、籾殻粉、澱粉等のその他粒子が挙げられる。有機系粒子は、1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0045】
有機フィラーは、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、ソープフリー重合法、シード重合法、マイクロサスペンジョン重合法等、公知の重合法で合成できる。より得ることができる。
【0046】
無機フィラーは、例えばマグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、ケイ素、アンチモン、およびチタン等の金属酸化物、ならびにその水酸化物、ならびにその硫酸塩、ならびにその炭酸塩、ならびにそのケイ酸塩等の粒子が好ましい。無機フィラーの詳細な例は、例えばシリカゲル、酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、鉛酸化物、珪藻土、ゼオライト、アルミノシリケート、タルク、ホワイトカーボン、マイカ、ガラス繊維、ガラス粉末、ガラスビーズ、クレー、ワラスナイト、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化チタン、リトポン、軽石粉、硫酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、炭酸バリウム、ドロマイト、二硫化モリブデン、砂鉄、カーボンブラック等の粒子が挙げられる。
フィラーは、単独または2種類以上を併用できる。
【0047】
フィラーの形状は、例えば粉末状、粒状、顆粒状、平板状、繊維状等が好ましい。
【0048】
本発明の樹脂組成物は、さらに架橋促進剤を配合できる。架橋促進剤は、樹脂成分とイソシアネート硬化剤の架橋反応を促進する。架橋促進剤は、例えばスズ化合物、金属塩、塩基等が好ましい。また、架橋促進剤は、例えばオクチル酸スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、塩化スズ、オクチル酸鉄、オクチル酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等が挙げられる。架橋促進剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、溶剤を使用できる。溶剤を使用することで、樹脂組成物を塗工に適した粘度に調整できる。
溶剤は、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル等のアルコール;、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル;、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素;、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族;等が挙げられる。溶剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【0050】
本発明の樹脂組成物は、他に任意成分として充填剤、チクソトロピー付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、硬化剤、増粘剤、顔料分散剤、シランカップリング剤等の添加剤を配合できる。
【0051】
本発明の樹脂組成物は、ポリエステル基材に塗工して樹脂層を形成することで、太陽電池封止材との接着性が良好な太陽電池用裏面保護シートを作製することができる。また、発電セルの両面を封止材で保護し、太陽光の受光面に表面保護部材、もう一方の面に当該太陽電池用裏面保護シートを使用することで、太陽電池モジュール(太陽光パネルともいう)を形成することもできる。
【0052】
前記表面保護部材は、ガラス板、ポリカーボネートやポリアクリレートのプラスチック板等が挙げられる。これらの中でも耐久性や難燃性の観点から、ガラス板が好ましい。
【0053】
太陽電池封止材は、従来エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が一般的に多く使用されていたが、近年、高温高湿経時でEVAから発生する酢酸の影響を避けるために、酢酸ビニルを含まないポリオレフィン製封止材が増加している。これらの封止材には、耐候性向上のための紫外線吸収剤、光安定剤や、封止材自身を架橋させるための有機過酸化物等の添加剤を含むことが好ましい。
【0054】
発電セルは、例えば結晶シリコン、アモルファスシリコン、銅インジウムセレナイド等の化合物半導体などの光電変換層に電極を設けたもの、および発電セルをガラス等の基板上に積層した態様が好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中、部は重量部を示し、%は重量%を示す。
ガラス転移温度および水酸基価は、下記の通り求めた。
【0056】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
ガラス転移温度の測定は、前述した示差走査熱量測定(DSC)法により求めた。Tg測定用の試料は、測定する樹脂溶液を150℃で約15分、加熱し、乾固させたものを用いた。なお、Tgの単位は℃である。
【0057】
<水酸基価(OHV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。
水酸基価は次式により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
水酸基価(mgKOH/g)
=[{(b−a)×F×28.05}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0058】
<ポリマーA1溶液の合成>
500mLフラスコに、無水マレイン酸変性部位を2.0部含む無水マレイン酸変性プロピレン−ブテン共重合体100部と、無水マレイン酸部位と当量の2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2.65部)、トルエン50部を加え110℃で5時間撹拌し、無水マレイン酸部位と2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の水酸基を反応させることでグラフト部位を形成した。その後、トルエン250重量部、n−ブチルメタクリレート27部メチルメタクリレート3重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート1部、t−ブチルパーオキシピバレート7.5重量部を加え、80℃で6時間撹拌しグラフト部位を(メタ)アクリル系モノマーで鎖延長した(メタ)アクリル変性ポリオレフィンを得た。その後、トルエンで希釈し不揮発分20%のポリマーA1溶液を得た。
【0059】
<ポリマーA2〜A27溶液の合成>
ポリマーA1の合成で使用した原料を表1に記載した通りに変更し、さらに、(メタ)アクリルモノマーに対するt−ブチルパーオキシピバレートの比率をポリマーA1溶液の合成と同じにした以外は、ポリマーA1と同様に最初HEMAを反応させてグラフト部位を形成し、次いで他のモノマーを反応させてグラフト部位を鎖延長させる反応を行い(メタ)アクリル変性ポリオレフィンを合成することでポリマーA2〜A27溶液をそれぞれ得た。
【0060】
【表1】
【0061】
表1中の略号は下記の通りである。
MMA:メチルメタクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
IBMA:イソボルニルメタクリレート
nBMA:n−ブチルメタクリレート
tBMA:tert−ブチルメタクリレート
AdMA:アダマンチルメタクリレート
PMPMA:ペンタメチルピペリジニルメタクリレート
【0062】
<ポリマーC1〜C5溶液の合成>
ポリマーA1の合成で使用した原料を表2に記載した通りに変更し、さらに、(メタ)アクリルモノマーに対するt−ブチルパーオキシピバレートの比率をポリマーA1溶液の合成と同じにした以外は、ポリマーA1と同様に行うことポリマーA2〜A29溶液をそれぞれ得た。
【0063】
【表2】
【0064】
<ポリマーD1溶液の合成>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート10部、n−ブチルメタクリレート90部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温した。次いで、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行った。次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行った。次に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行った。反応終了後、トルエンで希釈を行ない不揮発分20%のポリマーD1溶液を得た。
【0065】
<ポリマーD2〜D5溶液の合成>
ポリマーD1の合成で使用した原料を表3に記載した通りに変更した以外は、ポリマーD1と同様に行うことでポリマーD2〜D5溶液をそれぞれ得た。
【0066】
【表3】
【0067】
<実施例1〜22、比較例1〜5>
<樹脂組成物P1〜P27溶液>
ポリマーA1〜A27溶液に、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体と3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネートのイソシアヌレート体の1:1混合物を、水酸基とイソシアネート基の比率がモル1:2となるようにそれぞれ加え、樹脂組成物P1〜P27溶液を得た。
【0068】
<ブロッキング性評価>
PETフィルム「ルミラーS10(厚み100μm)東レ社製」のコロナ処理面に樹脂組成物P1〜P27溶液をメイヤーバーで乾燥膜厚5μmとなるように塗布し、120℃のオーブンで2分間溶剤乾燥して樹脂層を有する塗布物を得た。得られた塗布物を4cm四方に切り、同様に4cm四方に切った「ルミラーS10(厚み100μm)」と重ね合わせ、3kg/cm2の荷重を加え、50℃で一週間静置した。静置後、重ね合わせたフィルムを剥離し、下記の通り4段階評価した。ブロッキング性評価では、評価〇以上を実用範囲とした。
評価◎+:ブロッキングが全く無かった。
評価◎:フィルム同士は、抵抗無く剥離できるが、僅かに剥離音がある。
評価〇:剥離音があり、かつ剥離時に抵抗がある。
評価×:PETフィルムに樹脂層が転移した。
【0069】
<密着性評価>
「ルミラーS10(厚み100μm)」のコロナ処理面に樹脂組成物P1〜P27溶液をメイヤーバーで乾燥膜厚5μmとなるように塗布し、120℃のオーブンで2分間溶剤乾燥して樹脂層を有する塗布物を得た。得られた塗布物に膜厚50μmのCPPフィルム(無延伸ポリプロピレン、商品名:パイレンフィルム−CT P1128、東洋紡社製)を重ね合わせ、温度140℃、圧力0.2MPa、20秒間のヒートシールを行い積層体を得た。その後、この積層体を60℃下で1週間静置し架橋反応を完了させた。その後、積層体を15mm幅に切り、剥離試験機を用いてPETフィルムとCPPフィルム間の接着力を測定(温度25℃下、剥離速度100mm/min、T字剥離)した。測定結果を以下の5段階で評価した。密着性評価では、評価〇以上を実用範囲とした。
評価◎+:接着力が8N以上
評価◎:接着力が5N以上8N未満
評価〇:接着力が3N以上5N未満
評価△:接着力が1N以上3N未満
評価×:接着力が1N未満
【0070】
<高温高湿経時試験後の密着性評価>
上記密着性評価と同様に作製した積層体を高度加速寿命試験装置EHS−211MD(エスペック(株)製)に投入し、温度105℃、湿度100%RHの条件で50時間、100時間放置した後の接着力を、上記密着性評価と同様に測定し、上記密着性試験での接着力からの低下度合いを以下の5段階で評価した。高温高湿経時試験では、評価〇以上を実用範囲とした。
評価◎+:経時試験前の接着力を90%以上保持
評価◎:経時試験前の接着力の保持率が80%以上90%未満
評価〇:経時試験前の接着力の保持率が70%以上80%未満
評価△:経時試験前の接着力の保持率が50%以上70%未満
評価×:経時試験前の接着力の保持率が50%未満
【0071】
<耐候性評価>
「ルミラーS10(厚み100μm)」のコロナ処理面に樹脂組成物P1〜P27溶液をメイヤーバーで乾燥膜厚5μmとなるように塗布し、120℃のオーブンで2分間溶剤乾燥して樹脂層を有する塗布物を得た。得られた塗布物をスーパーキセノンウェザーメーターSX75(スガ試験社製)に投入し、樹脂層側から照度180W/m2、ブラックパネル温度60℃の条件で光照射を行い、100時間後の樹脂層の色相変化を色彩色差計CR−400(コニカミノルタ社製)を用いてΔb値で評価した。評価結果を以下のように評価した。耐候性評価では評価〇以上を実用範囲とした。
評価◎:照射前後のΔb値が1未満
評価〇:照射前後のΔb値が1以上3未満
評価×:照射前後のΔb値が3以上
【0072】
上記評価結果を表4に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
<実施例23〜27、比較例6〜8>
<樹脂組成物P28溶液>
ポリマーC1溶液およびポリマーD1溶液を1:1で混合し、ポリマー混合溶液を得た。さらにこの混合溶液に、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体と3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネートのイソシアヌレート体の1:1混合物を、水酸基とイソシアネート基のモル比率が1:2となるように加え、樹脂組成物P28溶液を得た。
【0075】
<樹脂組成物P29〜P32溶液>
樹脂組成物P28溶液の製法について、ポリマーC1溶液をポリマーC2〜C5溶液に、ポリマーD1溶液をポリマーD2〜D5溶液に置き換えたこと以外は、樹脂組成物P28溶液と同様にして樹脂組成物P29〜P32溶液をそれぞれ作成した。
【0076】
<樹脂組成物P33溶液>
ポリマーD1溶液に、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体と3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネートのイソシアヌレート体の1:1混合物を、水酸基とイソシアネート基のモル比率が1:2となるように加え、樹脂組成物P33溶液とした。
【0077】
<樹脂組成物P34溶液>
ポリマーD3溶液に、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体と3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネートのイソシアヌレート体の1:1混合物を、水酸基とイソシアネート基の比率がモル比率が1:2となるように加え、樹脂組成物P34溶液とした。
【0078】
<樹脂組成物P35溶液>
ユニストールP801(変性ポリオレフィン溶液、不揮発分16%、三井化学社製)に、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体と3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネートのイソシアヌレート体の1:1混合物を、水酸基とイソシアネート基のモル比率が1:2となるように加え、樹脂組成物P35溶液とした。
【0079】
<ブロッキング性評価、密着性評価、湿熱試験(50時間、100時間)後の密着性評価、耐候性評価>
得られた樹脂組成物P28〜P35溶液について、ブロッキング性評価、密着性評価、高温高湿経時試験後の密着性評価、耐候性評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0080】
【表5】
【0081】
表1〜表5の結果から実施例1〜27に示されるように、本発明の樹脂組成物を使用すると、すべての評価試験において合格レベルとなる。一方、比較例1〜5はポリマーの水酸基価が2mgKOH/gより小さいか、または30mgKOH/gより大きいため高温高湿経時後の密着性が低い。また、比較例6、7は樹脂組成物中に(メタ)アクリル変性ポリオレフィンを含有しないためCPPフィルムへの密着性に劣る。比較例8は初期のCPPフィルムへの密着性は合格レベルであるが、ブロッキング性や高温高湿経時後の密着性に劣る。
【0082】
次に、以下の方法で本発明による樹脂組成物の太陽電池用裏面保護シートとしての性能を評価した。
【0083】
<封止材>
直鎖状低密度ポリエチレン(商品名:UF240、日本ポリエチレン社製)100
質量部に対して、酸化防止剤(商品名:ヨシノックスBHT、APIコーポレーション社製)0.5質量部を添加し、バッチ式混練機にて150℃で加熱し、溶融させながら撹拌混合して溶融物を得た。撹拌最後に架橋剤(ジクミルパーオキサイド1.0質量部)及び架橋助剤(トリメチロールプロパントリアクリレート0.5質量部)を投入した。これを120℃に設定した加熱手動プレス機にて0.5mmのスペーサを用いてシート状に成形し厚み0.47mmのオレフィン系封止材を得た。
【0084】
<密着性評価>
PETフィルム「ルミラーS10(厚み100μm)」のコロナ処理面に樹脂組成物P1〜P35溶液をメイヤーバーで乾燥膜厚5μmとなるように塗布し、120℃のオーブンで2分間溶剤乾燥した。得られた塗布物の塗工面上に得られたオレフィン系封止材、シリコンセル、オレフィン系封止材、太陽電池用強化ガラスを積層した。その後、太陽電池用強化ガラスを下面としてこの積層体を真空ラミネーターに入れ、1Torr程度に真空排気した後、プレス圧力0.1MPaで、150℃30分間加熱し、太陽電池モジュールのサンプルを作製した。このサンプルのPETフィルム面をカッターで15mm幅に切り、樹脂組成物とオレフィン系封止材との接着力を測定した。測定には、引っ張り試験機を用い、荷重速度100mm/minで180度剥離試験を行った。得られた測定値に対して、以下のように評価し、評価〇以上を実用範囲とした。
評価◎+:50N/15mm以上
評価◎:30N/15mm以上〜50N/15mm未満
評価〇:10N/15mm以上〜30N/15mm未満
評価×:10N/15mm未満
【0085】
<高温高湿経時試験後の密着性評価>
得られた太陽電池モジュールのサンプルを高度加速寿命試験装置EHS−211MD(エスペック社製)に投入し、温度105℃、湿度100%RHの条件で50時間、100時間放置した後の接着力を、上記密着性評価と同様に測定した。上記密着性試験での接着力からの低下度合いを以下の5段階で評価し、評価〇以上を実用範囲とした。
評価◎+:経時試験前の接着力を90%以上保持
評価◎:経時試験前の接着力の保持率が80%以上90%未満
評価〇:経時試験前の接着力の保持率が70%以上80%未満
評価△:経時試験前の接着力の保持率が50%以上70%未満
評価×:経時試験前の接着力の保持率が50%未満
【0086】
<実施例28〜54、比較例9〜16>
以上の密着性、湿熱試験後の密着性評価の結果について、樹脂組成物溶液P1〜P27を使用した場合の結果を表6に、樹脂組成物溶液P28〜P35を使用した場合の結果を表7示す。
【0087】
【表6】
【0088】
【表7】
【0089】
表6および表7の結果から本発明の樹脂組成物は、太陽電池用裏面保護シートとしても好適に使用することができる。