(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記強度設定部は、装置設置後に測定場所でのバックグラウンドノイズが重畳した前記入力信号に対して前記評価部から出力される評価結果に応じて前記ノイズ強度を最適化することを特徴とする請求項1記載の信号処理装置。
ノイズ強度を設定可能に構成され、設定されたノイズ強度を有するノイズを出力するノイズ生成部と、測定対象の微弱信号を含む入力信号に前記ノイズを加算してノイズ加算信号を生成するノイズ加算部と、前記ノイズ加算信号を閾値処理する閾値処理回路と、を具備した信号処理装置におけるノイズ強度決定方法において、
前記閾値処理回路から出力される出力信号からパルス波形条件を満たすパルス信号成分を抽出して前記ノイズ強度を評価する評価ステップと、
前記評価ステップで評価結果が所望値を示すノイズ強度を前記ノイズ生成部に設定する強度設定ステップと、を具備し、
前記評価ステップは、前記閾値処理回路から出力される出力信号からパルス波形条件に基づいて所定波形のパルス信号成分を抽出するパルス分別ステップと、前記パルス分別ステップで抽出されたパルス信号成分数をカウントするパルスカウントステップと、を有し、
前記強度設定ステップは、既知のパルス波形形状を有する微弱信号が前記ノイズ加算部に入力されている状態で、前記ノイズ生成部に設定するノイズ強度を所定範囲において変化させて、各ノイズ強度に対応したパルス信号成分のカウント数を取得し、所望のSN比に対応したカウント数を示したときのノイズ強度を信号測定用として前記ノイズ生成部に設定することを特徴とするノイズ強度決定方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る信号処理装置の全体構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る信号処理装置は、確率共鳴を利用して微弱信号を検出する各種装置に適用可能である。
【0019】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る信号処理装置1は、測定対象の微弱信号を含む入力信号Vinに対して確率共鳴を発現させる確率共鳴部10と、確率共鳴部10の出力信号を評価する評価部20と、確率共鳴部10において入力信号Vinに印可するノイズのノイズ強度を設定するコントローラ30と、を備える。
【0020】
確率共鳴部10は、ノイズを生成するノイズ生成部11と、入力信号Vinとノイズ生成部11によって生成されたノイズとを加算してノイズ加算信号を出力するノイズ加算部12と、ノイズ加算信号を閾値処理してパルス信号を生成する閾値処理回路13と、閾値処理回路13から出力される出力信号から微弱信号の波形を再生する波形再生部14と、を備える。
図2に、確率共鳴部10の回路構成を示す。
図2に示すように、閾値処理回路13はヒステリシス特性を有するコンパレータで構成されている。本実施の形態においては、コントローラ30はノイズ強度を設定する強度設定部としての機能を有してよい。ノイズ生成部11は、生成ノイズのノイズ強度を設定可能であり、本例ではコントローラ30からノイズ強度が設定される。例えば、ノイズ生成部11が生成するノイズは、少なくとも測定対象信号の周波数よりも広帯域において同じ強度となるノイズであり、ノイズ生成部11が生成するノイズとしてはホワイトノイズ、ガウシアンノイズ(ホワイトガウスノイズ)、1/f揺らぎノイズなどを用いることができる。波形再生部14は、不要な波形成分をカットするローパスフィルタで構成されている。
【0021】
評価部20は、波形再生部14の出力信号から、パルス波形条件に合致するパルス信号を分別するパルス分別部15と、パルス分別部15で分別されたパルス信号数をカウントするパルスカウント部16と、パルスカウント部16でカウントされたパルス数を評価するカウント評価部17と、を備える。パルス分別部15は、測定対象となる微弱信号の波形形状をパルス波形条件としている。パルス波形条件を測定対象の微弱信号に合わせることにより、測定対象の微弱信号に対応するパルス波形成分を抽出できる。チューニングのために測定対象の微弱信号に近似した模擬信号を用いる場合は、パルス波形条件を模擬信号に合わせることができる。パルスカウント部16でカウントするカウント数は、パルス分別部15で分別された測定対象の微弱信号又は模擬信号のパルス数を表している。
【0022】
コントローラ30は、パルスカウント部16でカウントされるカウント数(測定パルス数)と所望パルス数とを一致させるように確率共鳴のノイズ強度を調整する機能を備える。信号処理装置1に微弱信号を入力した時、SN比が最適となる場合に計測されるパルス数を所望パルス数として用いている。例えば、入力信号が10パルスで構成される微弱信号の場合、最適ノイズ強度が設定された時に計測されるパルス数は、理想的には10パルスであるから、所望パルス数として「所望値=10」が設定される。
【0023】
ここで、コントローラ30がノイズ強度の設定に用いる所望パルス数について説明する。
図3は、ノイズ強度とSN比(検出感度)との関係を示すSN特性図である。同図には、入力信号に加えるノイズのノイズ強度を最小値から最大値の範囲で変化させたときのSN比の変化が示されている。SN特性図によれば、SN比が最大値となるノイズ強度が存在することがわかる。SN比が最大値となるノイズ強度からさらにノイズ強度を強くすると、ノイズ強度が過度となり、微弱信号以外の信号成分が閾値を超えてパルス信号(ノイズ)となるので、測定対象の微弱信号がノイズに埋もれてしまいSN比が劣化してしまう。そこで、コントローラ30は、評価部20の評価結果に基づいて、SN比が最大値となるノイズ強度に設定する。
【0024】
図4を用いてノイズ強度と所望パルス数(パルス頻度)との関係を説明する。
図4に示すパルス頻度特性曲線C1は、
図1における閾値処理回路13の出力段で測定される出力信号のパルス数をモニタしたものであり、パルス頻度特性曲線C2は、
図1におけるパルスカウント部16でカウントされるパルス数を示している。
図4では、パルス頻度とSN比との関係を示すために
図3に示すSN特性図を重ねて表示している。なお、閾値処理回路13にはヒステリシスを持たせないで測定している。
【0025】
パルス頻度特性曲線C1に示すように、ノイズ強度を最小値から最大値に向けて変化させた場合、ノイズ強度P1に達するまではパルス頻度が増加し、ノイズ強度P1でパルス頻度が最大値(ピーク)となり、ノイズ強度P1以上ではパルス頻度が減少することがわかる。
【0026】
パルス頻度特性曲線C1は、ノイズ強度の増加に伴って閾値を超えるパルス信号の割合が増加するが、SN比が最大となるノイズ強度を超えてもノイズ強度P1までは引き続き閾値を超えるパルス信号の割合が増加している。ノイズ強度P1を超えた後は、閾値を超える区間が連続することで直流成分が増大し、パルス数は急激に減少していると考えられる。
【0027】
一方、パルス頻度特性曲線C2は、SN比が最大値となるノイズ強度P2で閾値を超えるパルス信号数(パルス頻度)が最大値となる。SN比が最大値となるノイズ強度P2の場合、例えば、10パルスで構成される微弱信号S1−S10の入力に対して、パルス波形条件(当該微弱信号のパルス波形と同一波形となるように設定されたパルス波形条件)をクリアするパルス数が10カウント計測される。しかし、SN比が最大値となるノイズ強度P2から離れるにしたがって、パルス波形条件をクリアするパルス数が減少する。このことについて、
図5を参照して具体的に説明する。
図5は、既知のパルス波形形状を有する1パルスで構成される微弱信号の模擬信号を入力した場合の、ノイズ加算信号(ノイズ加算後出力)とノイズ加算信号を閾値処理したパルス信号(閾値処理出力)を示している。
【0028】
図5Aは、SN比が最大値となるノイズ強度P2より小さいノイズ強度を設定した場合のノイズ加算信号(ノイズ加算後出力)とパルス信号(閾値処理出力)を示している。このように、ノイズ強度がSN比最大ポイント(ノイズ強度P2)より小さい場合、ノイズ加算信号に加えられたノイズ強度が小さすぎるため、
図5Aに例示されるように、模擬信号のパルス部分に対して確率共鳴が発現する確率が低く、閾値処理で閾値を超えるパルス信号の数が減少した結果、模擬信号のパルス波形が再現されなくなる。この結果、パルス波形条件を満たす確率が極端に低下し、パルス波形条件をクリアするパルス数(パルスカウント数)が低下することが考えられる。
【0029】
図5Bは、SN比が最大値となるノイズ強度P2にノイズ強度を設定した場合のノイズ加算信号(ノイズ加算後出力)とパルス信号(閾値処理出力)を示している。ノイズ強度がSN最大ポイントのノイズ強度P2である場合、ノイズ加算信号に加えられたノイズ強度が適切であるため、
図5Bに例示されるように、模擬信号のパルス波形が正確に再現される。この結果、微弱信号のパルス波形は高い確率でパルス波形条件を満たすことになり、微弱信号を構成しているパルス数のほぼ全てがカウントされると考えられる。したがって、微弱信号を構成しているパルス数を所望パルス数として「所望値」に設定する。
【0030】
図5Cは、SN比が最大値となるノイズ強度P2より大きいノイズ強度を設定した場合のノイズ加算信号(ノイズ加算後出力)とパルス信号(閾値処理出力)を示している。ノイズ強度がSN比最大ポイント(ノイズ強度P2)より大きい場合には、ノイズ加算信号に加えられたノイズ強度が大きすぎるため、
図5Cに例示されるように、模擬信号のパルス部分以外においても確率共鳴が発現する可能性が高くなるので、パルス信号の数は多いが、パルス信号が直流成分となるためパルス信号がパルス波形条件を満たす確率が低くなっている。このため、パルス波形条件をクリアするパルス頻度(パルスカウント数)が低下する。
【0031】
このように、SN比が最大値となるノイズ強度P2を設定した場合に、模擬信号を構成する微弱信号(パルス信号)S1−S10に対応した各再生パルス信号がパルス波形条件をクリアする確率が最大になる。したがって、最適のノイズ強度P2を設定することで、カウントされる再生パルス信号数が模擬信号と同じパルス数である確率が高くなる。模擬信号を構成するパルス信号の波形形状をパルス分別部15にパルス波形条件として設定し、コントローラ30に模擬信号を構成するパルス信号数を所望値として設定する。そして、コントローラ30が模擬信号を入力した時のパルス信号数をカウントして、SN比が最大値となるノイズ強度P2に設定することとした。なお、模擬信号の代わりに、測定現場で実際に測定される微弱信号を用いることもできる。測定対象の微弱信号の波形形状と単位時間あたりのパルス数が予測できるのであれば、最適ノイズ強度の設定に模擬信号を用いることなく、測定現場で実際に測定される微弱信号を用いて最適ノイズ強度を設定することができる。
【0032】
次に、本実施の形態に係るノイズ生成部11が生成するノイズ強度を変化させることで、確率共鳴のための最適なノイズ強度を設定するチューニング動作について説明する。以下、ノイズ強度を最小値から最大値に向けて変化させる場合を示すが、ノイズ強度は所定範囲内において任意に変化させてもよい。
【0033】
本実施の形態では、チューニング動作時に信号処理装置1に入力する模擬信号として、パルス数(例えば10個)と波形形状(振幅、パルス幅)が既知の微弱信号を用いる。パルス分別部15には、模擬信号の波形形状に基づくパルス波形条件を設定する。コントローラ30は、カウント評価部17における評価結果の所望値として、模擬信号のパルス数(例えば10個又はその近傍値)を用いる。
【0034】
最初に、コントローラ30は、ノイズ生成部11のノイズ強度を最小値に設定する。ノイズ加算部12は、入力された模擬信号(微弱信号)とノイズ生成部11で生成された最小値のノイズ強度に調整されたノイズとを加算する。閾値処理回路13は、ノイズ加算部12から出力されたノイズ加算信号を閾値処理して模擬信号に対応するパルス信号を生成するが、ノイズ強度が最小値であるため、ノイズ加算信号のうち閾値を超えるパルス信号は、ノイズ強度P2である場合に比べると少ない。波形再生部14は、閾値処理回路13から出力されたパルス信号から模擬信号の波形を再生する。パルス分別部15は、波形再生部14の出力信号から、設定されたパルス波形条件を用いて条件に合致する所定波形のパルス信号成分を抽出するが、ノイズが最小値であるため合致する所定波形のパルス信号成分は少ない。パルスカウント部16は、閾値処理回路13で再生された模擬信号を構成するパルス信号に対応した再生パルス信号のパルス信号数をカウントするが、パルス信号数は、ノイズ強度P2である場合に比べて少なくなる。カウント評価部17は、パルスカウント部16でカウントされたパルス信号数を評価する。コントローラ30は、カウント評価部17の評価結果と模擬信号のパルス数(例えば10個又はその近傍値)とを比較する。ノイズ強度を最小値にした場合、コントローラ30では、本来の模擬信号を構成するパルス信号を構成するパルス数よりも少ないパルス数が計測される。
【0035】
次に、コントローラ30がノイズ生成部11のノイズ強度を最小値から最大値に向けて増加させるが、ノイズ生成部11のノイズ強度をSN比が最大となる最適のノイズ強度P2となるように設定した場合は、以下のようになる。ノイズ加算部12は、入力された模擬信号とノイズ生成部11で生成された最適値P2のノイズ強度のノイズとを加算する。閾値処理回路13は、ノイズ加算部12から出力されたノイズ加算信号を閾値処理して模擬信号に対応するパルス信号を生成する。波形再生部14は、閾値処理回路13から出力されたパルス信号から模擬信号の波形を再生する。パルス分別部15は、波形再生部14から出力された信号から、設定されたパルス波形条件を用いて条件に合致する所定波形のパルス信号成分を抽出するが、ノイズ強度が最適値P2であるため、条件に合致する所定波形のパルス信号成分は最大数になる。パルスカウント部16は、閾値処理回路13で再生された模擬信号を構成するパルス信号に対応した再生パルス信号のパルス信号数をカウントするが、パルス信号数は、ノイズ強度P2であるため最大数になる。カウント評価部17は、パルスカウント部16でカウントされたパルス信号数を評価する。コントローラ30は、カウント評価部17の評価結果と模擬信号のパルス数(例えば10個又はその近傍値)とを比較する。コントローラ30では、ノイズ強度が最適値P2である場合には、評価結果の所望値である模擬信号のパルス数が計測され、ノイズ強度P2を評価結果が所望値を示すノイズ強度であると判断する。
【0036】
次に、コントローラ30がノイズ生成部11のノイズ強度を最適ポイントよりも大きな値(例えば最大値)とした場合を説明する。ノイズ強度が最大値となる場合には、微弱信号に加えるノイズ強度が強すぎるため、閾値処理回路13において閾値処理出力が直流化する可能性が高く、パルス分別部15において、パルス波形条件に合致しないパルス信号が増加する。そのため、パルスカウント部16で計測されるパルス信号数は、模擬信号のパルス数よりも小さい可能性が高い。コントローラ30では評価結果の所望値である模擬信号のパルス数が計測される可能性は低い。したがって、コントローラ30では、ノイズ強度を最大値にした場合、本来の模擬信号を構成するパルス信号を構成するパルス数よりも少ないパルス信号数が計測される。
【0037】
したがって、コントローラ30は、パルスカウント部16でカウントされたパルス信号数が、模擬信号のパルス数と同じカウント数又はその近傍値の「所望値」を示すときのノイズ強度を、ノイズ生成部11における最適なノイズ強度P2に決定し、ノイズ強度を設定する。なお、コントローラ30は、模擬信号のパルス数と同じパルス信号数を検知することで、最適なノイズ強度P2を決定するのではなく、パルス信号数が最大数となったときのノイズ強度を最適なノイズ強度として決定してもよい。この場合の「所望値」は最大パルス数である。
【0038】
以上述べてきたように、本実施の形態によれば、確率共鳴部10の出力信号からパルス波形条件を満たすパルス信号成分を抽出するので、測定対象の微弱信号に対応するパルス波形成分を抽出できる。そして、抽出したパルス波形成分に関する評価結果が所望値を示すノイズ強度をノイズ生成部11に設定するので、最適なSN比を実現するノイズ強度P2をノイズ生成部11に設定できる。なお、第1の実施の形態では、単独の確率共鳴部10を備えた構成例を示したが、
図6に示すように、信号処理装置40は複数の確率共鳴部10a−10cを並列に設け、各確率共鳴部10a−10cの出力を加算部18で合成するように構成してもよい。
【0039】
なお、本実施の形態において、入力信号に含まれる測定対象の微弱信号に対するノイズ強度の最適化であるチューニングは、信号処理装置1が工場から出荷される前の工場出荷前段階で行うようにしてもよいし、装置設置後に測定現場において入力信号Vinにバックグラウンドノイズが重畳した状態で行うようにしてもよい。工場出荷前段階でチューニングを行う場合は、測定現場のような変動するバックグラウンドノイズの影響を受けないので、全ての装置に対して均一の条件下(又は想定する条件下)でノイズ強度を設定することができ、装置固有の校正データを得ることができる。一方、測定現場においてチューニングを行う場合は、個々の測定現場に応じて変動するバックグラウンドノイズ等の測定条件(環境温度等を含む)まで織り込んでノイズ強度を決定でき、測定現場ごとに最適なノイズ強度を設定可能である。
【0040】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、上述した第1の実施の形態にかかる信号処理装置1を放射線測定装置に適用した例である。
【0041】
図7は、第2の実施の形態に係る放射線測定装置の構成を示すブロック図である。第2の実施の形態では、確率共鳴を利用して放射線の検出精度(SN比)の向上を図る。
【0042】
放射線測定装置200は、入射した放射線に応じた光を発生するシンチレータ202と、シンチレータ202で発生した光を反射させるライトガイド203と、ライトガイド203を介して導かれた光に応じた微弱信号を出力する光検出器204と、第1の実施の形態で示した信号処理装置1とを有する。シンチレータ202は外部から放射線が入射すると、放射線がシンチレータ202に与えたエネルギーに応じたシンチレーション光(蛍光)を発生させる。ライトガイド203は外観がテーパ状であり、面積の広い一端面にシンチレータ202が配置され、面積の狭い他端面には光検出器204が配置される。ライトガイド203に入射したシンチレーション光は、ライトガイド203内で反射を繰り返し、光検出器204に到達する。光検出器204は、光電効果によりシンチレーション光の入射光量に応じた微弱信号を出力し、この微弱信号を含む入力信号Vinを確率共鳴部10に入力する。
【0043】
次に、放射線測定装置200に基準放射線源201を用いて最適なノイズ強度を設定するためのチューニング動作を説明する。基準放射線源201から放射された放射線によって光検出器204から出力される放射線検出信号(測定対象の微弱信号)のパルス波形形状とパルス数(単位時間当たりの放射線量に相当)が既知である。そこで、放射線検出信号のパルス波形をパルス波形条件に設定し、放射線検出信号のパルス数を所望パルス数に設定する。
【0044】
チューニング動作においては、基準放射線源201を、シンチレータ202の上部に設置する。そして、コントローラ30は、第1の実施の形態と同様のチューニング動作を行い、光検出器204から出力される微弱信号を入力信号として取り込み、パルスカウント部16で計測されるパルス信号数が所望パルス数と合致するように、ノイズ生成部11のノイズ強度を設定する。また、コントローラ30は、ノイズ印加量調整信号を用いて、ノイズ生成部11のノイズ強度を設定する。これにより、第2の実施形態に係る放射線測定装置200においても最適なノイズ強度をノイズ生成部11に設定できる。
【0045】
なお、チューニングを行った後は、放射線測定装置200から、基準放射線源201を取り除いて用いて、本測定を行う。
【0046】
このように、第2の実施の形態によれば、確率共鳴によって検出対象の微弱信号(放射線)に対するSN比(測定感度)の向上を図ることができる。本実施の形態では、検出対象の微弱信号に対する測定感度が向上するため、従来に比べて低感度な光検出器204を用いたとしても、十分な感度で放射線の検出を行うことが可能となり、放射線測定装置200の低コスト化が可能となる。
【0047】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態は、上述した第1の実施の形態に係る信号処理装置1を光機器に適用した例である。
【0048】
図8は、第3の実施の形態に係る光機器の構成を示すブロック図である。第3の実施の形態では、確率共鳴を利用して空気中に含まれる微粒子の検出精度(SN比)の向上を図る。第3の実施の形態に係る光機器を構成するパーティクルセンサについて、
図9を参照して先に説明する。
【0049】
図9には、第3の実施の形態に係るパーティクルセンサ装置の正面図(
図9A)、側面図(
図9B)が示される。
【0050】
パーティクルセンサ装置300では、ホース状のノズル301に設けられたエア吸引口302を通じてファンモータ303によりパーティクルセンサ装置300外部からパーティクルセンサ装置300内部にエア304が吸引され、エア304の流量は流量センサ305によって計測される。また、半導体レーザ306で発生したレーザ光307は、レンズ308によってパーティクルセンサ装置300内部で、エア304の流路であるノズル301位置付近に集光される。そして、集光されたレーザ光307が、パーティクルセンサ装置300外部からパーティクルセンサ装置300内部に吸引されたエア304に含まれる微粒子に照射される。さらに、パーティクルセンサ装置300内部に設けられた凹鏡309により、レーザ光307の照射で微粒子から発生した散乱光をホトダイオード310に集光する。ホトダイオード310において、受光した散乱光を電気信号に変換することで、エアに含まれる微粒子の測定を行う。レーザ光307が集光されるノズル301位置は、パーティクルセンサ装置300内部に設けられた凹鏡309の略中央である。
【0051】
図8を用いて光機器320の全体構成を説明する。光機器320は、パーティクルセンサ装置300内部に吸引されるエア304が含む微粒子(パーティクル)を発生させる粒子発生装置311を有する。また、ホトダイオード310は受光した散乱光に応じた微弱信号を含む入力を信号処理装置50に入力信号Vinとして入力する。信号処理装置50は、第1の実施の形態の信号処理装置1と、基本機能は同じであるが、さらにコントローラ30がパーティクルセンサ装置300の必要機能を備えている。例えば、コントローラ30は、駆動回路312を介して半導体レーザ306で発生するレーザ光307を制御してよい。信号処理装置50は、確率共鳴部10、評価部20及びコントローラ30を備えて構成される。
【0052】
次に、粒子発生装置311を用いて最適なノイズ強度を設定するためのチューニング動作を説明する。粒子発生装置311から発生する微粒子の大きさは既知である時には、ホトダイオード310から散乱光に対応して出力される測定対象の微弱信号のパルス波形形状とパルス数(
図10に示すパルス信号で構成される微弱信号)が既知である。そこで、散乱光に対応した微弱信号のパルス波形形状をパルス波形条件に設定し、散乱光に対応した微弱信号のパルス数を所望パルス数に設定する。
【0053】
コントローラ30は、第1の実施の形態と同様のチューニング動作を行い、ホトダイオード310から出力される微弱信号に対応するパルスカウント部16で計測されるパルス信号数が所望パルス数と合致するように、ノイズ生成部11のノイズ強度を設定する。また、コントローラ30は、ノイズ印加量調整信号を用いて、ノイズ生成部11のノイズ強度を設定する。これにより、第3の実施形態に係る光機器320においてもチューニング動作が可能である。
【0054】
このように、第3の実施の形態によれば、確率共鳴によって検出対象の微弱信号(散乱光)に対するSN比(測定感度)の向上を図ることができる。本実施の形態では、検出対象の微弱信号に対する測定感度が向上するため、従来観測できない径の小さな微粒子の散乱光であっても、検出することが可能となる。
【0055】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態では、上述した第1の実施の形態に係る信号処理装置60を距離測定装置へと適用した例である。
【0056】
図11は、第4の実施の形態に係る距離測定装置の全体構成を示すブロック図である。第4の実施形態では、確率共鳴を利用して、距離測定を実行できる距離の増大を図る。
【0057】
距離測定装置400は、発光信号(送信パルス信号)を送信する発光部401と、発光部401から送信された発光信号402を受光する受光部403と、受光部403から出力される微弱信号を含む入力信号Vinが入力される信号処理装置60と、発光部401の発光信号402の送信を制御する駆動回路404とから構成される。信号処理装置60は、第1の実施の形態の信号処理装置1と、基本機能は同じであるが、さらにコントローラ30が距離測定装置の必要機能を備えている。信号処理装置60は、確率共鳴部10、評価部20及びコントローラ30を備えて構成される。
【0058】
先ず、距離測定装置400の距離測定動作を説明する。
図12は、距離の測定原理を説明するタイミングチャートであり、発光部401が送信した発光信号と受光部403が受信した受光信号(受光パルス信号)の波形とが示される。コントローラ30は駆動回路404を制御して発光部401から発光信号を送信させる送信タイミングと、受光部403からの通知により受光信号を受信した受信タイミングとを知ることができる。コントローラ30は、発光信号と受光信号との時間差tに基づいて発光部401と受光部403との間の距離を求めることができる。発光部401から送信された発光信号(光)が大気中を進み、受光部403が受光信号として受信するまでに経過した時間tを計測することで距離を測定している。ここで、大気中の光速度をc[m/s]とすると、発光部401と受光部403との間の距離xは、x[m]=t[s]*cで求めることができる。したがって、コントローラ30は時間tを知ることができるため、この式を用いて、発光部401と受光部403との間の距離xを求めることができる。
【0059】
次に、距離測定装置400において、受光部403から信号処理装置60に入力された微弱信号(受光信号)に対して、確率共鳴を発現させるために最適なノイズ強度を設定するためのチューニング動作を説明する。受光信号(受光パルス信号)のパルス数及びパルス波形形状は既知であるとする。信号処理装置60は、受光信号のパルス波形をパルス波形条件に設定し、受光信号のパルス数を所望パルス数に設定する。
【0060】
コントローラ30は、第1の実施の形態と同様のチューニング動作を行い、受光部403から入力される微弱信号に対応する信号のパルスカウント部16におけるパルス信号数が、所望値(所望パルス数)と一致するように、ノイズ生成部11のノイズ強度を決定してノイズ生成部11に設定する。また、コントローラ30は、ノイズ印加量調整信号を用いて、ノイズ生成部11のノイズ強度を設定する。これにより、第4の実施形態に係る距離測定装置400においても最適なノイズ強度にチューニング可能である。
【0061】
このように、第4の実施の形態によれば、確率共鳴によって検出対象の微弱信号(受光信号)に対するSN比(測定感度)の向上を図ることができる。本実施の形態では、検出対象の微弱信号に対する測定感度が向上するため、測定対象となる発光部401と受光部403の間の長距離化が可能となる。
【0062】
なお、以上の説明では受光部403を測距目標位置に配置する方式について説明したが、反射型の距離測定装置にも適用可能である。例えば、発光部401から送信する発光信号を、測距目標位置に設けられた反射鏡などによって反射することで、発光部401と同じ位置に配置された受光部403が受光する構成にしてもよい。例えば、
図11における受光部403の位置に鏡を配置し、発光部401と同じ位置に受光部403を配置してもよい。
【0063】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。