(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の望ましい形態を以下に例示する
。
【0014】
本発明は、電源導電路の短絡状態を検出する短絡状態検出部と、第1導電路に設けられるとともに第1導電路の導通を遮断するオフ状態とその遮断を解除するオン状態とに切り替わる第3スイッチング素子と、短絡状態検出部によって電源導電路の短絡状態が検出された場合に第3スイッチング素子をオフ状態に切り替える短絡保護制御部とを有していてもよい。
【0015】
この構成によれば、電源導電路が短絡状態となった場合に電源導電路の通電を遮断して回路を保護することができる。しかも、電源導電路の通電を遮断するための第3スイッチング素子が、電源導電路において相対的に電流量が少なくなる高圧側(第1導電路)に設けられているため、導通損失及び発熱量をより抑えた形で短絡保護が図られる。更にこの構成では、第3スイッチング素子が高圧側の第1導電路に配置され、第2スイッチング素子が基準導電路に近い第3導電路に配置されることになる。つまり、各スイッチング素子での発熱量を抑制できることに加え、発熱源となる各スイッチング素子を分散させることができるため、局所的な温度上昇をより一層抑えやすくなる。
【0016】
本発明において、第2導電路は、電源部に導通する経路であってもよい。そして、本発明は、第3導電路に設けられるとともに第3導電路の導通を遮断するオフ状態とその遮断を解除するオン状態とに切り替わる第4スイッチング素子を備え、電源部が正規の接続状態である場合に第4スイッチング素子がオン状態になり、逆接続状態である場合に第4スイッチング素子がオフ状態となる逆接続保護回路部を有していてもよい。
【0017】
この構成によれば、出力側の導電路(第2導電路)に導通する電源部が逆接続状態となった場合に、電圧変換部と基準導電路との間に配置される第3導電路の通電を遮断することができる。よって、このような逆接続時に基準導電路側から第2導電路を経由して逆接続された電源部側に電流が流れ込むことを防ぐことができる。しかも、第4スイッチング素子が設けられる第3導電路は、第2導電路よりも電流量が小さくなる経路であるため、同様のスイッチング素子を第2導電路に配置して逆接続保護を図る構成と比べて導通損失をより抑えることができ、発熱量も抑えることができる。
【0018】
本発明は、一次側電源部と電圧変換部との間の第1導電路に第3スイッチング素子が介在していてもよい。そして、第3スイッチング素子と電圧変換部との間の導電路に一方の電極が接続され、第3導電路に他方の電極が接続される構成で、セラミックコンデンサ等のコンデンサが設けられていてもよい。
【0019】
このようにコンデンサを配置した場合、コンデンサによる効果を享受しつつ、コンデンサのショート故障時に対応できる構成となる。例えば、電圧変換部と基準導電路との間の経路に過電流が生じているか否かを判定し、過電流状態が生じている場合に第3スイッチング素子を遮断する構成とすれば、コンデンサがショート故障した場合に、一次側電源部とコンデンサとの間を非導通状態に切り替えることができ、コンデンサのショート故障時に、一次側電源部からコンデンサを経由して基準導電路側へと流れる過電流を遮断することができる。
【0020】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1について説明する。
図1で示すDCDCコンバータ1は、例えば、車載用の降圧型DCDCコンバータとして構成されており、入力側の導電路(第1導電路15)に印加された直流電圧を降圧して出力側の導電路(第2導電路16)に出力する構成をなすものである。
【0021】
DCDCコンバータ1には、第1導電路15及び第2導電路16を備えるとともに電源ラインとして機能する電源導電路14と、電源導電路14の電位よりも低い一定の基準電位(グラウンド電位)に保たれる基準導電路17とが設けられている。電源導電路14は、第1導電路15と第2導電路16とに分けられ、入力側の第1導電路15は外部の高圧側導電路65に接続され、出力側の第2導電路16は、外部の低圧側導電路66に接続されている。高圧側導電路65は、後述する一次側電源部41の正極側の端子に接続されている。低圧側導電路66は、後述する二次側電源部42の正極側の端子に接続されている。そして、第1導電路15と第2導電路16との間には、第1導電路15に印加された入力電圧を降圧して第2導電路16に印加する出力電圧を生成する電圧変換部19が設けられている。
【0022】
第1導電路15は、相対的に高い電圧が印加される一次側(高圧側)の電源ラインとして構成されている。この第1導電路15は、高圧側導電路65を介して一次側電源部41の高電位側の端子に導通するとともに、電気的に接続された一次側電源部41から所定の直流電圧が印加される構成をなす。なお、
図1の例では、一次側電源部41の高電位側の端子と第1導電路15の間に、外部の高圧側導電路65が設けられているが、第1導電路15がこの部分まで配置されていてもよい。
【0023】
一次側電源部41は、例えば、リチウムイオン電池、或いは電気二重層キャパシタ等の蓄電手段によって構成され、第1の所定電圧を発生させるものである。例えば、一次側電源部41の高電位側の端子は48Vに保たれ、低電位側の端子はグラウンド電位(0V)に保たれている。なお、
図1の例では、第1導電路15に導通する端子51が一次側電源部41の正極側の端子に接続される状態が、一次側電源部41の正規の接続状態である。
【0024】
第2導電路16は、相対的に低い電圧が印加される二次側(低圧側)の電源ラインとして構成されている。この第2導電路16は、例えば、低圧側導電路66を介して二次側電源部42の高電位側の端子に導通するとともに、電気的に接続された二次側電源部42から一次側電源部41の出力電圧よりも小さい直流電圧が印加される構成をなす。なお、
図1の例では、二次側電源部42の高電位側の端子と第2導電路16の間に、外部の低圧側導電路66が設けられているが、第2導電路16がこの部分まで配置されていてもよい。
【0025】
二次側電源部42は、電源部の一例に相当し、例えば、鉛蓄電池、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ等の蓄電手段によって構成されている。この二次側電源部42は、一次側電源部41で発生する第1の所定電圧よりも低い第2の所定電圧を発生させるものであり、例えば、二次側電源部42の高電位側の端子は12Vに保たれ、低電位側の端子はグラウンド電位(0V)に保たれている。なお、
図1の例では、第2導電路16に導通する端子52が二次側電源部42の正極側の端子に接続される状態が、二次側電源部42の正規の接続状態である。
【0026】
基準導電路17は、グラウンドとして構成され、一定のグラウンド電位(0V)に保たれている。この基準導電路17には、一次側電源部41の低電位側の端子と二次側電源部42の低電位側の端子とが導通し、更に、後述するスイッチング素子22のドレインが接続されている。
【0027】
電圧変換部19は、第1導電路15と第2導電路16との間に設けられ、MOSFETとして構成されるハイサイド側のスイッチング素子4と、同じくMOSFETとして構成されるローサイド側のスイッチング素子6とを備えている。更に、入力側コンデンサ8と、出力側コンデンサ10と、コイル12とを備えている。ハイサイド側のスイッチング素子4は、第1導電路15からの直流電圧の入力をオンオフするスイッチング素子であり、第1スイッチング素子に相当するものである。
【0028】
電圧変換部19において、ハイサイド側のスイッチング素子4のドレインには、電源導電路14の一部をなす第1導電路15が接続されている。このスイッチング素子4のドレインは、入力側コンデンサ8の一方側の電極に導通し、第1導電路15に介在するスイッチング素子20がオン状態のときには一次側電源部41の高電位側端子にも導通する。また、スイッチング素子4のソースには、ローサイド側のスイッチング素子6のドレイン及びコイル12の一端が接続されている。そして、スイッチング素子4のゲートには、マイクロコンピュータや駆動回路を備えてなる制御部2からの駆動信号及び非駆動信号が入力されるようになっており、制御部2からの信号に応じてスイッチング素子4がオン状態とオフ状態とに切り替わるようになっている。
【0029】
ローサイド側のスイッチング素子6のソースには、入力側コンデンサ8及び出力側コンデンサ10のそれぞれの他方側の電極が接続されている。そして、スイッチング素子6のソースと、入力側コンデンサ8及び出力側コンデンサ10の他方側の各電極とが互いに導通しており、これらは、第3導電路18に接続されている。なお、ローサイド側のスイッチング素子6のゲートにも、制御部2からの駆動信号及び非駆動信号が入力されるようになっており、制御部2からの信号に応じてスイッチング素子6がオン状態とオフ状態とに切り替わるようになっている。
【0030】
電圧変換部19において、コイル12の他端は、出力側の電源ラインとなる第2導電路16に接続されており、出力側コンデンサ10の一方の電極に導通している。
【0031】
このように構成される電圧変換部19は、同期整流方式の降圧型コンバータとして機能し、スイッチング素子4のオンオフ動作を、それぞれスイッチング素子6のオフ動作及びオン動作と同期させて行う。制御部2の制御により、スイッチング素子4をオン状態とし、スイッチング素子6をオフ状態とした第1状態と、スイッチング素子4をオフ状態とし、スイッチング素子6をオン状態とした第2状態とが交互に切り替えられると、第1導電路15に印加された直流電圧が降圧され、第2導電路16に出力される。なお、第2導電路16の出力電圧は、スイッチング素子4のゲートに与えるPWM信号のデューティ比に応じて定まる。また、通常動作時には、スイッチング素子20、スイッチング素子22、スイッチング素子24はいずれもオン状態で維持される。
【0032】
以上のような構成が、DCDCコンバータ1の基本構成であり、公知技術の降圧動作である。そして、このDCDCコンバータ1では、異常が発生したときに、スイッチング素子20、スイッチング素子22、スイッチング素子24のうち、異常の種類に対応する素子がオフ状態に切り替えられ、保護が図られる。
【0033】
ここで、逆流保護に関する構成について説明する。
DCDCコンバータ1には、第2導電路16を流れる電流を検出する電流検出部25が設けられている。
図1では、電流検出部25を簡略的に示しているが、電流検出部25は、公知の様々な電流検出回路を用いることができる。例えば、電流検出部25は、第2導電路16に介在するシャント抵抗と、このシャント抵抗の両端電圧を検出する検出回路とを備え、検出回路は、シャント抵抗の両端の各電位又は両端の電位差を示す値(電流値に相当する値)を制御部2に出力する。
【0034】
そして、制御部2は、電流検出部25からの電流値に基づき、第2導電路16を流れる電流の大きさを特定する。更に、制御部2は、第2導電路16を流れる電流の向きが電圧変換部19側から二次側電源部42側に向かう第1の向きであるか、二次側電源部42側から電圧変換部19側へ向かう第2の向きであるかを特定する。電流の向きが第1の向きである状態が、正常状態であり、電流の向きが第2の向きである状態が逆流状態である。電流検出部25及び制御部2は、逆流状態検出部の一例に相当し、第2導電路16での電流の逆流状態を検出するように機能する。
【0035】
第3導電路18にはスイッチング素子24が設けられている。このスイッチング素子24は、第2スイッチング素子の一例に相当し、第3導電路18の導通を遮断するオフ状態とその遮断を解除するオン状態とに切り替わる構成となっている。
【0036】
制御部2は、電圧変換部19の動作中、第2導電路16を流れる電流の向きが上述した「第1の向き」であることを検出している間(即ち、電流の向きが正常状態であることを検出している間)は、スイッチング素子24のゲートに対してオン信号を継続的に出力する。つまり、第2導電路16の電流の向きが正常状態である場合、スイッチング素子24は継続的にオン状態になり、スイッチング素子22がオン状態である限り第3導電路18において電圧変換部19と基準導電路17との間が導通状態になる。一方、制御部2は、第2導電路16を流れる電流の向きが上述した「第2の向き」であることを検出した場合(即ち、電流の向きが逆流状態であることを検出した場合)は、スイッチング素子24のゲートに対してオフ信号を出力する。このように、第2導電路16を流れる電流の向きが逆流状態となった場合には、スイッチング素子24がオフ状態に切り替えられる。これにより、第3導電路18において電圧変換部19と基準導電路17との間が非導通状態になり、この間の通電が遮断される。つまり、二次側電源部42から第3導電路18を介して基準導電路17に流れ込む電流経路(逆流経路)の導通が遮断され、このような電流の流れ込みを防ぐことができる。
【0037】
なお、制御部2は逆流保護制御部の一例に相当し、逆流状態検出部によって逆流状態が検出された場合にスイッチング素子24(第2スイッチング素子)をオフ状態に切り替えるように機能する。
【0038】
次に、短絡保護に関する構成について説明する。
本構成では電流検出部25及び制御部2が短絡状態検出部として機能し、第2導電路16に過電流が生じているか否かを判定することにより、電源導電路14で生じる短絡状態を検出している。具体的には、制御部2は、電流検出部25からの入力値に基づいて第2導電路16を流れる電流値Ioを検出し、検出した第2導電路16の電流値Ioを予め定められた閾値Itと比較する。そして、制御部2は、Io≦Itであれば過電流状態ではないと判断し、Io>Itであれば過電流状態であると判断することで、電源導電路14の短絡状態を検出している。
【0039】
また、制御部2には、第2導電路16の電圧が入力され、第2導電路16に過電圧が生じているか否かを判定することでも、電源導電路14での短絡状態の発生を判断している。具体的には、制御部2が検出した第2導電路16の電圧値Voを予め定められた閾値Vtと比較し、Vo≦Vtであれば過電圧状態ではないと判断し、Vo>Vtであれば過電圧状態であると判断することで、電源導電路14の短絡状態を検出している。
【0040】
一方で、第1導電路15には、MOSFETとして構成される短絡保護用のスイッチング素子20が設けられている。このスイッチング素子20は、第3スイッチング素子の一例に相当し、制御部2の制御により、第1導電路15の導通を遮断するオフ状態とその遮断を解除するオン状態とに切り替わるようになっている。
【0041】
具体的には、第2導電路16の電流値Ioが閾値It以下であること及び第2導電路16の電圧値Voが閾値Vt以下であることを制御部2が検出している間は、制御部2からスイッチング素子20のゲートに対してオン信号が継続的に出力される。このようにスイッチング素子20のゲートにオン信号が継続的に入力され、スイッチング素子20がオン状態で維持されている間(即ち、導通の遮断が解除されている期間)は、一次側電源部41と電圧変換部19との間が導通状態となり、電圧変換部19には、一次側電源部41で発生する直流電圧が入力され続ける。
【0042】
一方、第2導電路16の電流値Ioが閾値Itを超えていること、又は、第2導電路16の電圧値Voが閾値Vtを超えていることを制御部2が検出した場合(即ち、制御部2が電源導電路14の短絡状態を検出した場合)には、制御部2からスイッチング素子20のゲートに対しオフ信号が出力される。このようにスイッチング素子20のゲートにオフ信号が入力され、スイッチング素子20がオフ状態に切り替わると、第1導電路15において一次側電源部41側と電圧変換部19側との導通が遮断される。この場合、電圧変換部19には、一次側電源部41で発生する直流電圧が入力されないことになる。なお、制御部2は短絡保護制御部の一例に相当し、短絡状態検出部によって電源導電路14の短絡状態が検出された場合にスイッチング素子20(第3スイッチング素子)をオフ状態に切り替えるように機能する。このように、
図1の構成では、電源導電路14が短絡状態となった場合にスイッチング素子20がオフ状態に切り替わるため、電源導電路14の通電を遮断して回路を保護することができる。
【0043】
次に、逆接続保護に関する構成について説明する。
図1のDCDCコンバータ1は、逆接続保護回路部30を備えており、二次側電源部42が逆接続された場合に第3導電路18の導通が遮断される構成とし、逆接続時の二次側への電流の流れ込みを防いでいる。この逆接続保護回路部30は、電圧変換部19と基準導電路17との間の導電路(第3導電路18)に配置される逆接続保護用のスイッチング素子22と、スイッチング素子22のゲート電位を第2導電路16の電位に保つ第4導電路23とを備えている。スイッチング素子22は、第4スイッチング素子の一例に相当し、第3導電路18の導通を遮断(具体的には、基準導電路17側から電圧変換部19側への電流の流れ込みを遮断)するオフ状態と、その遮断を解除するオン状態とに切り替わる構成となっている。
【0044】
逆接続保護回路部30では、少なくとも二次側電源部42(低圧側の電源部)の端子が
図1のように正規の接続状態である場合にスイッチング素子22がオン状態になる。この場合、スイッチング素子22のゲート電位が二次側電源部42の正極電位(例えば12V)と略同電位になり、ゲート電位がソース電位よりも高い状態で維持されるため、スイッチング素子22はオン状態で維持される。そして、スイッチング素子24がオン状態である限り、ローサイド側のスイッチング素子6のソース、入力側コンデンサ8、出力側コンデンサ10は、いずれも基準導電路17と導通した状態で維持される。
【0045】
一方、二次側電源部42(低圧側の電源部)の端子が正負を逆にした逆接続状態である場合、スイッチング素子22のゲート電位が二次側電源部42の負極の電位(例えば−12V)と略同電位になり、ゲート電位がソース電位よりも低い状態で維持される。このため、スイッチング素子22はオフ状態で維持される。スイッチング素子22がオフ状態であるときには、スイッチング素子6のソース、入力側コンデンサ8、出力側コンデンサ10は、いずれも基準導電路17と導通しない状態となる。更に、
図1の構成では、二次側電源部42と第2導電路16との間がオープン状態になった場合でも、スイッチング素子22はオフ状態で維持されることになる。このような構成で、逆接続保護が図られている。
【0046】
ここで、本構成の効果を例示する。
本構成によれば、第2導電路16で電流の逆流が生じた場合に、電圧変換部19と基準導電路17との間に配置される第3導電路18の通電を遮断することができる。これにより、第2導電路16側から第3導電路18を経由して基準導電路17に流れ込む電流経路(逆流経路)の導通を遮断することができ、逆流を防ぐことができる。しかも、スイッチング素子24(第2スイッチング素子)が設けられる第3導電路18は、第2導電路16(電源導電路の低圧側)よりも電流量が小さくなる経路であるため、同様のスイッチング素子を第2導電路16に配置して逆流保護を図る構成と比べて導通損失をより抑えることができ、発熱量も抑えることができる。
【0047】
更に、本構成によれば、電源導電路14が短絡状態となった場合に電源導電路14の通電を遮断して回路を保護することができる。しかも、電源導電路14の通電を遮断するためのスイッチング素子20(第3スイッチング素子)が、電源導電路14において相対的に電流量が少なくなる高圧側(第1導電路15)に設けられているため、導通損失及び発熱量をより抑えた形で短絡保護が図られる。更に、スイッチング素子20(第3スイッチング素子)が高圧側の第1導電路15に配置され、スイッチング素子24(第2スイッチング素子)が基準導電路17に近い第3導電路18に配置されることで分散化が図られる。つまり、各スイッチング素子での発熱量を抑制できることに加え、発熱源となる各スイッチング素子を分散させることができるため、局所的な温度上昇をより一層抑えやすくなる。
【0048】
更に、本構成によれば、出力側の導電路(第2導電路16)に接続される二次側電源部42(電源部)が逆接続状態となった場合に、電圧変換部19と基準導電路17との間に配置される第3導電路18の通電を遮断することができる。よって、このような逆接続時に基準導電路17側から第2導電路16を経由して逆接続された二次側電源部42(電源部)側に電流が流れ込むことを防ぐことができる。しかも、スイッチング素子22(第4スイッチング素子)が設けられる第3導電路18は、第2導電路16よりも電流量が小さくなる経路であるため、同様のスイッチング素子を第2導電路16に配置して逆接続保護を図る構成と比べて導通損失をより抑えることができ、発熱量も抑えることができる。
【0049】
更に、本構成は、一次側電源部41と電圧変換部19との間の第1導電路15にスイッチング素子20(第3スイッチング素子)が介在する。そして、このスイッチング素子20と電圧変換部19との間の導電路に一方の電極が接続され、第3導電路18に他方の電極が接続される構成で、セラミックコンデンサ等のコンデンサ8が設けられている。このようにコンデンサ8を配置した場合、コンデンサ8による効果を享受しつつ、コンデンサ8のショート故障時に対応できる構成となる。例えば、電圧変換部19と基準導電路17との間の経路に過電流が生じているか否かを判定し、過電流状態が生じている場合にスイッチング素子20を遮断する構成とすれば、コンデンサ8がショート故障した場合に、一次側電源部41とコンデンサ8との間を非導通状態に切り替えることができ、コンデンサ8のショート故障時に、一次側電源部41からコンデンサ8を経由して基準導電路17側へと流れる過電流を遮断することができる。
【0050】
本構成は、一次側電源部41と電圧変換部19との間の第1導電路15にスイッチング素子20(第3スイッチング素子)が介在する。この構成に加え、図示しない電圧検知機能を付加し、第1導電路15に予め定められた閾値電圧より高い電圧が印加されたことを検知することもできる。そして、第1導電路15に予め定められた閾値電圧より高い電圧が印加された際に、制御部2の制御により、スイッチング素子20(第3スイッチング素子)をオフ状態に切り替えるようにしてもよい。この構成によれば、スイッチング素子20(第3スイッチング素子)より下流に閾値電圧より高い電圧が印加されるのを防ぐことができ、下流の素子の耐電圧を下げることができる。
【0051】
次に、
図1の構成から得られる効果を
図3の比較例と比較して具体的に説明する。
なお、条件を同じにするため、以下の対比説明では、
図1、
図3で示す構成が、いずれも降圧比1/4であるものと仮定して説明する。また、
図1で示すDCDCコンバータ1も、
図3で示す比較例のDCDCコンバータ100も、二次側(低圧側)に流れる電流を200A程度とし、一次側(高圧側)に50A程度の入力電流が流れ、電圧変換部とグランドとの間の経路(
図1における第3導電路18及び
図3における対応する導電路)に150A程度の電流が流れるものとする。また、一次側、二次側、グランド側では素子に要求される耐圧が異なるため、一次側に配置するスイッチング素子は、80V耐圧でオン抵抗が5mΩであるとし、二次側及びグランド側に配置するスイッチング素子は、40V耐圧でオン抵抗が2mΩであるとする。但し、
図3で示す比較例では、ハイサイド側のスイッチング素子104がオン故障した際にスイッチング素子108A,108Bに一次側の電圧が印加されることになるため、スイッチング素子108A,108Bは一次側と同程度の高耐圧が必要となる。このため、スイッチング素子108A,108Bは、80V耐圧でオン抵抗が5mΩとなっている。
【0052】
まず、損失低減効果について説明する。
逆流保護に着目した場合、
図3のDCDCコンバータ100では、逆流保護に用いられるスイッチング素子110のオン抵抗が2mΩであるため、スイッチング素子110での導通損失は80W程度となる。一方、
図1の構成では、逆流保護用のスイッチング素子24のオン抵抗は2mΩであるため、スイッチング素子24での導通損失は45W程度となる。このように、逆流保護に着目した場合、実施例1に係る
図1の構成のほうが、より導通損失を抑えることができ、損失低減効果が大きくなる。
【0053】
また、短絡保護及び逆接続保護に着目した場合、
図3のDCDCコンバータ100は、短絡保護及び逆接続保護に兼用されるスイッチング素子108A,108Bのオン抵抗が5mΩであり、これらスイッチング素子108A,108Bを2並列で使用している。このため、スイッチング素子108A,108Bでの導通損失は100W程度となる。つまり、短絡保護及び逆接続保護のために用いる素子での損失の総和が100W程度となる。一方、
図1の構成では、短絡保護用のスイッチング素子20のオン抵抗は5mΩであるため、スイッチング素子20での導通損失は12.5W程度となる。また、逆接続保護用のスイッチング素子22のオン抵抗は2mΩであるため、スイッチング素子22での導通損失は45W程度となる。つまり、短絡保護及び逆接続保護のために用いる素子での損失の総和が57.5W程度となる。このように、短絡保護及び逆接続保護に着目した場合でも、実施例1に係る
図1の構成のほうが、より導通損失を抑えることができ、損失低減効果が大きくなる。そして、装置全体では、損失低減効果が一層大きくなる。
【0054】
次に、発熱源の分散効果を説明する。
図3のDCDCコンバータ100は、スイッチング素子108A,108Bでの損失が100W、スイッチング素子110での導通損失が80W程度であるため、二次側には合計180W程度の導通損失が発生する。つまり、二次側の電源ラインには180Wに相当する局所的な発熱が発生することになる。一方、
図1のDCDCコンバータ1は、45W程度の導通損失が生じるスイッチング素子24及び45W程度の導通損失が生じるスイッチング素子22が第3導電路18に配置されている。そして、12.5W程度の導通損失が生じるスイッチング素子20は第1導電路15に配置されている。このように、装置全体で発熱が抑えられることに加え、素子の分散化によって局所的な温度上昇が一層抑えられ、放熱機構の簡素化等の付随効果も得られやすくなる。
【0055】
<実施例2>
次に、実施例2について、主に
図2を参照して説明する。
図2のDCDCコンバータ201は、実施例1のDCDCコンバータ1を多相式にした点が回路構成上の主な相違点である。なお、以下の説明では、実施例1のDCDCコンバータ1と同様の部分については
図1のDCDCコンバータ1と同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0056】
図2のDCDCコンバータ201は、入出力電流が流れる経路となる電源導電路214と、電源導電路214の電位よりも低い一定の基準電位(グラウンド電位)に保たれる基準導電路17とが設けられている。そして、電源導電路214を構成する第1導電路215と第2導電路216との間には、第1導電路215に印加された入力電圧を降圧して第2導電路216に印加する出力電圧を生成する複数の電圧変換部219A,219Bが並列に設けられている。
【0057】
第1導電路215は、相対的に高い電圧が印加される一次側(高圧側)の電源ラインとして構成され、一次側電源部41の高電位側の端子に導通するとともに、その一次側電源部41から所定の直流電圧(例えば、48V)が印加される構成をなす。この第1導電路215は、一次側電源部41の高電位側の端子に導通する共通入力路240と、共通入力路240から分岐する複数の個別入力路242A,242Bとを備えている。複数の個別入力路242A,242Bは、複数設けられた電圧変換部219A,219Bの各々に接続されている。
【0058】
第2導電路216は、相対的に低い電圧が印加される二次側(低圧側)の電源ラインとして構成され、二次側電源部42の高電位側の端子に導通するとともに、その二次側電源部42から一次側電源部41の出力電圧よりも小さい直流電圧(例えば、12V)が印加される構成をなす。この第2導電路216は、複数の電圧変換部219A,219Bにそれぞれ接続される複数の個別出力路252A,252Bと、それら複数の個別出力路252A,252Bが共通接続されるとともに二次側電源部42の高電位側の端子に導通する共通出力路250とを備えている。
【0059】
基準導電路17は、グラウンドとして構成され、一定のグラウンド電位(0V)に保たれている。
図2の構成でも、基準導電路17には、一次側電源部41の低電位側の端子と二次側電源部42の低電位側の端子とが導通し、更に、スイッチング素子22のドレインが接続されている。
【0060】
電圧変換部219A,219Bは、同期整流方式の降圧型コンバータとして機能する。電圧変換部219Aは、スイッチング素子204A及びスイッチング素子206Aと、入力側コンデンサ208Aと、出力側コンデンサ210Aと、コイル212Aとを備える。電圧変換部219Bは、スイッチング素子204B及びスイッチング素子206Bと、入力側コンデンサ208Bと、出力側コンデンサ210Bと、コイル212Bとを備える。電圧変換部219A,219Bのハイサイド側のスイッチング素子204A,204Bは、第1導電路215に印加された直流電圧の入力を個別にオンオフするスイッチング素子であり、第1スイッチング素子に相当する。
【0061】
電圧変換部219Aにおいて、ローサイド側のスイッチング素子206Aのソースには、入力側コンデンサ208A及び出力側コンデンサ210Aの各電極が接続されている。電圧変換部219Bにおいて、ローサイド側のスイッチング素子206Bのソースには、入力側コンデンサ208B及び出力側コンデンサ210Bの各電極が接続されている。そして、スイッチング素子206A,206Bのソース、入力側コンデンサ208A,208Bの各電極、出力側コンデンサ210A,210Bの各電極は互いに導通しており共通導電路218Cに接続されている。
【0062】
スイッチング素子206A、入力側コンデンサ208A、出力側コンデンサ210Aは、第3導電路218の一部をなす導電路218Aに接続されている。スイッチング素子206B、入力側コンデンサ208B、出力側コンデンサ210Bは、第3導電路218の一部をなす導電路218Bに接続されている。そして、それら導電路218A,218Bが、第3導電路218の一部をなす共通導電路218Cに接続されている。そして、この共通導電路218Cに、スイッチング素子24とスイッチング素子22が直列に接続されている。
【0063】
電圧変換部219Aにおけるコイル212Aの他端は、出力側コンデンサ210Aの一方の電極に接続され、個別出力路252Aを介して共通出力路250に接続されている。電圧変換部219Bにおけるコイル212Bの他端は、出力側コンデンサ210Bの一方の電極に接続され、個別出力路252Bを介して共通出力路250に接続されている。
【0064】
以上のような構成が、DCDCコンバータ201の基本構成であり、このDCDCコンバータ201では、両電圧変換部219A,219Bによって降圧動作がなされる。一方の電圧変換部219Aは、制御部202からの信号に応じたスイッチング素子204Aのオン動作及びオフ動作と、これに同期したスイッチング素子206Aのオフ動作及びオン動作とによって第1導電路215に印加された直流電圧を降圧し、第2導電路216に出力する。他方の電圧変換部219Bも同様であり、制御部202からの信号に応じたスイッチング素子204Bのオン動作及びオフ動作と、これに同期したスイッチング素子206Bのオフ動作及びオン動作とによって第1導電路215に印加された直流電圧を降圧し、第2導電路216に出力する。なお、両電圧変換部219A,219Bに与える駆動信号のタイミングは特に限定されず、例えば、電圧変換部219Aの動作と、電圧変換部219Bの動作とを、公知の制御方法によって位相をずらして行えばよい。また、通常の降圧動作時には、スイッチング素子220A,220B、スイッチング素子22、スイッチング素子24はいずれもオン状態で維持される。
【0065】
そして、
図2で示すDCDCコンバータ201も、実施例1と同様の逆流保護機能を有している。具体的には、電流検出部25及び制御部202が、実施例1の逆流状態検出部と同様に機能し、第2導電路216での電流の逆流状態を検出する。そして、制御部202が実施例1の逆流保護制御部と同様に機能し、逆流状態検出部によって逆流状態が検出された場合にスイッチング素子24(第2スイッチング素子)をオフ状態に切り替える。
【0066】
また、
図2で示すDCDCコンバータ201も、実施例1と同様の短絡保護機能を有している。具体的には、電流検出部25及び制御部202が実施例1の短絡状態検出部と同様に機能し、電源導電路214の短絡状態を検出している。そして、制御部202が実施例1の短絡保護制御部と同様に機能し、短絡状態検出部によって電源導電路214の短絡状態が検出された場合にスイッチング素子220A,220B(第3スイッチング素子)をオフ状態に切り替えるように機能する。なお、制御部202が短絡状態を検出した場合、スイッチング素子220A,220Bの全てをオフにしてもよく、複数の電圧変換部219A,219Bの中から短絡状態が発生している電圧変換部を特定し、スイッチング素子220A,220Bのうちの短絡状態となっている経路のスイッチング素子のみをオフにしてもよい。
【0067】
また、
図2で示すDCDCコンバータ201も、実施例1と同様の逆接続保護機能を有している。このDCDCコンバータ201に設けられた逆接続保護回路部30は、
図1で示すDCDCコンバータ1の逆接続保護回路部30と同一の構成となっており、これと同様に機能している。
【0068】
<実施例3>
次に、実施例3について説明する。
実施例1では、
図1で示す電流検出部25を用いて電流を検出したが、実施例3は、電流検出部25に代えて、又は電流検出部25と併用する形で、スイッチング素子24を流れる電流を検出する構成が付加されている。なお、実施例3の回路構成は
図1と同様であるため、以下では
図1を参照して説明する。
【0069】
具体的には、スイッチング素子24をシャント抵抗として機能させており、スイッチング素子24の両端電圧を検出する検出回路(図示略)が設けられている。この検出回路は、例えばシャント抵抗の両端位置P11,P12の各電位又は両端位置P11,P12の電位差を示す値を制御部2に出力する構成となっている。この構成では、制御部2が電位差検出部の一例に相当する。
【0070】
このようにすれば、電圧変換部19から第3導電路18へと流れる電流の状態を、スイッチング素子24(第2スイッチング素子)を利用して把握することができる。特に、電流検出用の専用素子を設けることを省略又は一部省略することができるため、専用素子に起因する部品点数の増加及び損失の増加を抑えことができる。
【0071】
制御部2は、上記検出回路から入力された値(両端位置P11,P12の各電位又は両端位置P11,P12の電位差を示す値)を様々な用途に利用することができる。例えば、制御部2は、検出回路から入力された値によってスイッチング素子24を流れる電流値を把握し、スイッチング素子24を流れる電流値が所定の過電流状態である場合に、スイッチング素子20をオフ状態に切り替えるようにしてもよい。例えば、スイッチング素子24の両端の電位差、即ち、スイッチング素子24のドレインソース間の電位差を検出し、スイッチング素子24の両端の電位差が所定の閾値以上である場合に、スイッチング素子24を流れる電流が過電流状態であるとして、スイッチング素子20をオフ状態に切り替える構成としてもよい。或いは、スイッチング素子24の両端の電位差が所定の閾値以上である場合に、スイッチング素子24をオフ状態に切り替えてもよく、スイッチング素子20,24のいずれをもオフ状態に切り替えてもよい。このようにすれば、スイッチング素子4又はスイッチング素子6の短絡故障時にグランド側に過電流が流れ込むことを迅速に遮断することができる。
【0072】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上述した実施例における一次側電源部41や二次側電源部42の具体例はあくまで一例であり、蓄電手段の種類や発生電圧は上述した例に限定されず、様々に変更することができる。
(2)
図1、
図2の例では、第1導電路や第2導電路に接続される発電機や負荷などは省略して示したが、様々な装置や電子部品を第1導電路や第2導電路に接続することができる。
(3)
図2で示す実施例2では、逆流保護用のスイッチング素子24を共通導電路218Cに設けたが、各電圧変換部219A,219Bと共通導電路218Cとを接続する各導電路218A,218Bにそれぞれ逆流保護用のスイッチング素子(第2スイッチング素子)を設けてもよい。この場合、逆流の発生時に全ての第2スイッチング素子をオフ状態にしてもよく、逆流が発生する経路を特定し、その経路の第2スイッチング素子をオフ状態にしてもよい。
(4)
図2で示す実施例2では、短絡保護用のスイッチング素子220A,220Bを複数の個別入力路242A,242Bにそれぞれ設けたが、共通入力路240に1つのみ設けることで素子数の低減を図ってもよい。
(5)
図2で示す実施例2では、2つの電圧変換部219A,219Bが並列に接続された2相構造のDCDCコンバータ201を例示したが、3以上の電圧変換部が並列に接続された3相以上の構造であってもよい。この構成でも、各々の電圧変換部と基準導電路を繋ぐ共通の導電路(第3導電路)を設け、この第3導電路に第2のスイッチング素子を配置すればよい。
(6)実施例3では、スイッチング素子24(第2スイッチング素子)をシャント抵抗とし、スイッチング素子24の両端の電位差を検出する構成を例示したが、第2スイッチング素子を含む複数素子の両端の電位差を検出してもよい。例えば、図示しない検出回路が、スイッチング素子22,24の両端位置P11,P13の各電位又は両端位置P11,P13の電位差を示す値を制御部2に出力する構成であってもよい。制御部2は、両端位置P11,P13の電位差が閾値以上である場合に、第3導電路18を流れる電流が過電流状態であるとして、実施例3と同様の保護動作(スイッチング素子20,24の少なくともいずれかをオフ状態にする保護動作)を行えばよい。
(7)
図2で示す実施例2でも実施例3と同様の構成を付加することができる。例えば、図示しない検出回路が、スイッチング素子24の両端位置P21,P22の各電位又は両端位置P21,P22の電位差を示す値を制御部202に出力する構成であってもよく、スイッチング素子22,24の両端位置P21,P23の各電位又は両端位置P21,P23の電位差を示す値を制御部202に出力する構成であってもよい。