特許第6531790号(P6531790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6531790
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】ロータリーピストンエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02B 53/04 20060101AFI20190610BHJP
   F02B 53/00 20060101ALI20190610BHJP
【FI】
   F02B53/04 F
   F02B53/00 J
   F02B53/04 W
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-134681(P2017-134681)
(22)【出願日】2017年7月10日
(65)【公開番号】特開2019-15264(P2019-15264A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2018年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】野本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大久保 昌紀
(72)【発明者】
【氏名】日高 弘順
【審査官】 西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−280600(JP,A)
【文献】 特開平06−280602(JP,A)
【文献】 特開平03−264733(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0025566(US,A1)
【文献】 特開2016−089720(JP,A)
【文献】 特開昭61−232330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 53/00、53/04
F02B 55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキセントリックシャフトと、共通の当該エキセントリックシャフトの回りを回転する複数のロータと、当該ロータを個別に収容する複数のロータ収容室が内側に形成されたハウジングとを有するロータリーピストンエンジンであって、
前記ハウジングは、前記ロータ収容室から排気を導出する複数のサイド排気ポートと、前記ロータ収容室に吸気を導入する複数の吸気ポートとを備え、
前記複数の吸気ポートは、いずれも、前記ロータ収容室における前記エキセントリックシャフトの回転軸方向の一方側の面にのみ開口するように設けられ、
前記複数のサイド排気ポートは、いずれも、前記ロータ収容室における前記エキセントリックシャフトの回転軸方向の他方側の面にのみ開口するように設けられていることを特徴とするロータリーピストンエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載のロータリーピストンエンジンであって、
前記ロータ収容室は、前記ロータの外周を囲むロータ面を有し、
前記ハウジングは、前記ロータ収容室の前記ロータ面に開口して前記ロータ収容室から排気を導出するペリ排気ポートを備えることを特徴とするロータリーピストンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキセントリックシャフトと、当該エキセントリックシャフトの回りを回転するロータと、当該ロータを収容するロータ収容室が内側に形成されたハウジングとを有するロータリーピストンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリーピストンエンジンの一例として、下記特許文献1のものが知られている。特許文献1に開示されているように、ロータリーピストンエンジンでは、ロータの外周を囲むロータハウジングと、ロータの回転軸方向の側部に設けられたサイドハウジングとによって、ロータを収容するロータ収容室が区画されている。
【0003】
特許文献1のロータリーピストンエンジンでは、ロータ収容室に吸気を導入するための吸気ポートとロータ収容室から排気を導出するための排気ポートとがともに同じサイドハウジングに形成されて、ロータ収容室のロータの回転軸方向の一方側の面に吸気ポートと排気ポートとがともに開口している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−89720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のロータリーピストンエンジンでは、前記のように、ロータ収容室のロータの回転軸方向の一方側の面に吸気ポートと排気ポートとがともに開口していることで、エンジン性能を十分に高くできないおそれがある。具体的には、これら吸気ポートおよび排気ポートが開口しているロータ収容室の一側面とこれに対向するロータの側面との間の隙間を通って排気ポート内の排気が吸気ポートに回り込んで吸気効率が悪化するおそれがある。また、吸気ポートを流通する吸気に燃料が含まれる場合には、前記隙間を通って未燃の燃料が吸気ポートから排気ポートに回り込んで排気性能が悪化するおそれがある。これらの問題は、前記隙間を塞ぐようにシール部材を設けることである程度回避できるが、この場合には、ロータの摺動抵抗が増大してしまう。
【0006】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、ロータの摺動抵抗を増大させることなくエンジン性能を高くすることのできるロータリーピストンエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためのものとして、本発明は、エキセントリックシャフトと、共通の当該エキセントリックシャフトの回りを回転する複数のロータと、当該ロータを個別に収容する複数のロータ収容室が内側に形成されたハウジングとを有するロータリーピストンエンジンであって、前記ハウジングは、前記ロータ収容室から排気を導出する複数のサイド排気ポートと、前記ロータ収容室に吸気を導入する複数の吸気ポートとを備え、前記複数の吸気ポートは、いずれも、前記ロータ収容室における前記エキセントリックシャフトの回転軸方向の一方側の面にのみ開口するように設けられ、前記複数のサイド排気ポートは、いずれも、前記ロータ収容室における前記エキセントリックシャフトの回転軸方向の他方側の面にのみ開口するように設けられていることを特徴とするものである(請求項1)。
【0008】
本発明では、複数のロータと複数のロータ収容室とを有するロータリーピストンエンジンにおいて、吸気ポートとサイド排気ポートとが、各ロータ収容室におけるエキセントリックシャフトの回転軸方向の一方側と他方側の面に分かれて開口しているので、吸気ポートとサイド排気ポートとが、ロータ収容室の側面とロータの側面との隙間を介して連通しない。従って、シール部材の数を少なく抑えてロータの摺動抵抗を小さく抑えつつ、排気の吸気ポートへの回り込みや吸気ポート内の燃料のサイド排気ポートへの漏えいを抑制してエンジン性能を高くすることができる。しかも、各ロータ収容室において、エキセントリックシャフトの回転軸方向の一方側の面に開口するように吸気ポートが設けられていることで、吸気通路の各吸気ポートから延びる部分をエキセントリックシャフトの回転軸方向の一方側に集めることができる。同様に、各ロータ収容室において、エキセントリックシャフトの回転軸方向の他方側の面に開口するようにサイド排気ポートが設けられていることで、排気通路の各サイド排気ポートから延びる部分をエキセントリックシャフトの回転軸方向の他方側に集めることができる。従って、これら吸気通路と排気通路とをよりコンパクトに配置することができる。また、吸気通路のうち各吸気ポートから延びる部分と、排気通路のうち各サイド排気ポートから延びる部分との、エキセントリックシャフトの回転軸方向の位置をずらすことができ、これら部分のレイアウトが容易になる。
【0009】
前記構成において、前記ロータ収容室は、前記ロータの外周を囲むロータ面を有し、前記ハウジングは、前記ロータ収容室の前記ロータ面に開口して前記ロータ収容室から排気を導出するペリ排気ポートを備えるのが好ましい(請求項2)。
【0010】
この構成によれば、ロータの回転に伴って生じる遠心力によってロータ収容室の外周縁付近に集まった排気をペリ排気ポートから効果的に排出することができ、ロータ収容室内の排気が吸気ポートに流入するのをより確実に抑制してエンジン性能をより一層高くすることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明のロータリーピストンエンジンによれば、ロータの摺動抵抗を増大させることなくエンジン性能を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態にかかるロータリエンジンの概略構成図である。
図2】エンジン本体の概略断面図である。
図3図2のIII−III線断面図である。
図4図3のIV−IV線断面の一部を拡大した図である。
図5】エキセン角とポートの開口面積との関係を示した図である。
図6図3のVI−VI線断面の一部を示した図である。
図7図6に対応する比較例に係る図である。
図8】サイド側独立通路部内の圧力とペリ側独立通路部内の圧力とを比較して示した図である。
図9】サイド側独立通路部内の圧力およびペリ側集合通路部内の圧力を示した図である。
図10】ボルテックスチューブの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るロータリーピストンエンジン(以下、単にロータリエンジンという)100の全体構成を模式的に示した図である。以下では、適宜、図1の右左方向を前後方向という。
【0016】
ロータリエンジン100は、前後方向に並ぶ2つのロータ収容室2(前側に位置する第1ロータ収容室2a、後側に位置する第2ロータ収容室2b)を有するエンジン本体1と、各ロータ収容室2に導入される吸気が流通する吸気通路30と、各ロータ収容室2にから排出される排気が流通する排気通路50と、ターボ過給機70と、EGR装置90とを有している。このエンジン100は、例えば、エンジン本体1を走行用の駆動源とする車両に搭載される。
【0017】
(1)エンジン本体
図2は、エンジン本体1の概略断面図である。図3は、図2のIII−III線断面図である。エンジン本体1は、図2および図3の上側部分が上側となるように車両に搭載されている。
【0018】
エンジン本体1は、各ロータ収容室2を貫通して前後方向に延びる出力軸であるエキセントリックシャフト4を有する。エキセントリックシャフト4は、前後方向に延びる円柱状を有し、その中心軸X1回りに回転する。エンジン本体1の各ロータ収容室2には、それぞれ、ロータ3(前側に位置する第1ロータ3a、後側に位置する第2ロータ3b)が収容されている。
【0019】
各ロータ収容室2の内側面は、ロータ3を挟んでロータ3の前後方向の両側方に配置されたサイド面111、111と、これらサイド面111、111間にわたって前後方向に延びるロータ面110とで構成されている。各サイド面111、111は上下方向およびエンジン本体1の幅方向(図3の左右方向)に延びている。ロータ面110は、前後方向に沿ってみたときに平行トロコイド曲線に沿って延びる形状を有している。以下では、適宜、エンジン本体1の幅方向であって図3の左右方向を単に左右方向という。
【0020】
各ロータ3は、側面視で略三角形状を有している。各ロータ3は、エキセントリックシャフト4に対して遊星回転運動するように支持されており、3つの頂部3rがロータ面110に沿って移動するようにエキセントリックシャフト4の回りを回転する。
【0021】
エンジン本体1は、各ロータ3の外周をそれぞれ囲むロータハウジング5と、各ロータ3のその回転軸方向(前後方向)の両側方に設けられるサイドハウジング6とで構成されるハウジング9を有する。
【0022】
具体的には、ロータハウジング5は、前側に位置する第1ロータ3aの外周を囲む第1ロータハウジング5aと、後側に位置する第2ロータ3bの外周を囲む第2ロータハウジング5bとを含む。また、サイドハウジング6は、第1ロータ3aの前方に位置する第1サイドハウジング6aと、第1ロータ3aの後方且つ第2ロータ3bの前方に位置する中央サイドハウジング6cであっていわゆるインターミディエイトハウジング6cと、第2ロータ3bの後方に位置する第2サイドハウジング6bとを含む。
【0023】
第1ロータ収容室2aは、第1ロータハウジング5aと第1ロータハウジンング6aとインターミディエイトハウジング6cとによって区画されており、第1ロータハウジング5aの内周面が第1ロータ収容室3aのロータ面110aを構成し、第1サイドハウジング6aの後側面とインターミディエイトハウジング6cの前側面とがそれぞれ第1ロータ収容室3aの前側のサイド面111a_fと後側のサイド面111a_rとをそれぞれ構成している。
【0024】
第2ロータ収容室2bは、第2ロータハウジング5bと第2サイドハウジンング6bとインターミディエイトハウジング6cとによって区画されており、第2ロータハウジング5bの内周面が第2ロータ収容室2bのロータ面110bを構成し、インターミディエイトハウジング6cの後側面と第2サイドハウジンング6bの前側面とがそれぞれ第2ロータ収容室3bの前側のサイド面111b_fと後側のサイド面111b_rとをそれぞれ構成している。
【0025】
各ロータ3にはロータ収容室2の内側面との間の気密性を保つこと等を目的として多数のシール部材が設けられている。
【0026】
図3に示すように、ロータ3の各頂部3rには、前後方向に延びるアペックスシール101が取り付けられている。そして、アペックスシール101の前後方向の両端部には、アペックスシール101と連結される略円柱状のコーナーシール102が設けられている。
【0027】
図4は、図3のIV−IV線断面の一部を拡大して示した図である。図3および図4に示すように、ロータ3の前後方向の両側面3sには、それぞれ、各コーナーシール102どうしの間をロータ3の外周縁と略平行に延びるサイドシール103と、サイドシール103よりもロータ3の径方向内方に位置してロータ3の中心を中心とする円環状の2本のオイルシール104、104とが設けられている。2本のオイルシール104、104はロータ3の径方向に所定の隙間をあけて並んでいる。これらサイドシール103およびオイルシール104、104は、ロータ3の前後方向の両側面3sに形成された溝にそれぞれ嵌め込まれているとともにこの溝の底部に配置されたばね部材によって対向するサイド面111に押しつけられている。
【0028】
ロータ収容室2内は、ロータ3によって3つの作動室Aに区画されており、ロータ3の回転に伴い3つの作動室Aがエキセントリックシャフト4回りに移動して、各作動室Aにて吸気、圧縮、膨張(燃焼)及び排気の各行程が行われる。各行程は、エキセントリックシャフト4が270度回転する期間実施される。
【0029】
第1ロータ3aと第2ロータ3bとは、エキセントリックシャフト4の回転角度(エキセン角)において互いに180度の位相差で回転しており、第1ロータ収容室2aと第2ロータ収容室2bとでは、エキセントリックシャフト4の回転角度において180度ずれて、吸気、圧縮、膨張(燃焼)および排気の各行程がそれぞれ行われる。従って、2つのロータ収容室2間において各行程は重複する。
【0030】
図3において、各ロータ3は、それぞれ、矢印で示すように反時計回りに回転し、ロータ収容室2のうち、右上側の領域において概ね吸気行程が行われ、左上側の領域において概ね圧縮行程が行われ、左下側の領域において概ね膨張(燃焼)行程が行われ、右下側の領域において概ね排気行程が行われる。
【0031】
各ロータハウジング5には、それぞれロータ3の回転方向に沿って並ぶ2つの点火プラグ21、21が取り付けられている。また、第1サイドハウジング6aと第2サイドハウジング6bとには、各ロータ収容室2内に燃料を供給するためのインジェクタ(不図示)が取り付けられている。このインジェクタは、各サイドハウジング6a、6bに形成された後述するプライマリ吸気ポート11内に燃料を噴射する。
【0032】
(吸気ポートおよび排気ポートの詳細構造)
第1サイドハウジング6aの右上側部分であって第1ロータ収容室2aにおいて吸気行程が実施される作動室Aに対応する部分には、第1ロータ収容室2aに吸気を導入するための2つの吸気ポート11、12が形成されている。第1ロータ収容室2aのこれら吸気ポート11、12は、第1サイドハウジング6aの後側の側面であって第1ロータ収容室2aの前側のサイド面111a_fの右上側部分に開口している。また、第1ロータ収容室2aのこれら吸気ポート11、12は、第1サイドハウジング6a内を略水平方向に貫通して、第1サイドハウジング6aの右側面の上部に開口しており、この開口部分において吸気通路30に接続されている。
【0033】
インターミディエイトハウジング6cの右上側部分であって第2ロータ収容室2bにおいて吸気行程が実施される作動室Aに対応する部分には、第2ロータ収容室2bに吸気を導入するための2つの吸気ポート11、12が形成されている。第2ロータ収容室2bのこれら吸気ポート11、12は、インターミディエイトハウジング6cの後側の側面であって第2ロータ収容室2bの前側のサイド面111b_fの右上側部分に開口している。また、第2ロータ収容室2bのこれら吸気ポート11、12は、インターミディエイトハウジング6c内を略水平方向に貫通して、インターミディエイトハウジング6cの右側面の上部に開口しており、この開口部分において吸気通路30に接続されている。
【0034】
このように、本実施形態では、各吸気ポート11、12は、対応するロータ収容室2(内側を流通する吸気の導入先であるロータ収容室2)のサイド面111、111のうち前側のサイド面111の右上側部分に開口している。
【0035】
ここで、前記のようにロータ3の頂部3rの前後方向の両端部に設けられたコーナーシール102はサイド面111の外周付近を移動する。そのため、吸気ポート11、12のロータ収容室2側の開口がサイド面111の外周縁まで延びていると、吸気ポート11、12にコーナーシール102が脱落するおそれがある。そのため、各吸気ポート11、12は、サイド面111の外周縁からロータ3の径方向の内側に所定量離間するように形成されている。
【0036】
1つのサイド面111において、2つの吸気ポート11、12はロータ3の回転方向に並んでおり、吸気行程において下方の吸気ポート11の方が上方の吸気ポート12よりも早期に開口および閉口するようになっている。以下では、下側の吸気ポート11であってより早いタイミングで開口および閉口する吸気ポート11をプライマリ吸気ポート11といい、上側の吸気ポート12であってより遅いタイミングで開口および閉口する吸気ポート12をセカンダリ吸気ポート12という。
【0037】
図5は、エキセントリックシャフト4の回転角度であるエキセン角と各ポートの開口面積との関係を示した図である。図5に示すように、ロータ収容室2において、プライマリ吸気ポート11は、排気上死点付近で開口を開始し、吸気下死点をわずかに超えた時期に閉口する。一方、ロータ収容室2において、セカンダリ吸気ポート12は、プライマリ吸気ポート11と同様に排気上死点付近で開口を開始する一方、吸気下死点よりも比較的長い期間が経過した後に閉口する。例えば、プライマリ吸気ポート11は吸気下死点後30°EA(EA:エキセン角)程度で閉口するのに対して、セカンダリ吸気ポート12はエキセン角で吸気下死点後90°EA程度で閉口する。
【0038】
インターミディエイトハウジング6cの右下側部分であって第1ロータ収容室2aにおいて排気行程が実施される作動室Aに対応する部分には、第1ロータ収容室2aから排気を導出するためのサイド排気ポート(請求項における排気ポート)13が形成されている。第1ロータ収容室2aのサイド排気ポート13は、インターミディエイトハウジング6cの前側の側面であって第1ロータ収容室2aの後側のサイド面111a_rの右下側部分に開口している。また、第1ロータ収容室2aの排気ポート13は、インターミディエイトハウジング6c内を略水平方向に貫通して、インターミディエイトハウジング6cの右側面の下部に開口しており、この開口部分において排気通路50に接続されている。
【0039】
第2サイドハウジング6bの右下側部分であって第2ロータ収容室2bにおいて排気行程が実施される作動室Aに対応する部分には、第2ロータ収容室2bから排気を導出するためのサイド排気ポート(請求項における排気ポート)13が形成されている。第2ロータ収容室2bのサイド排気ポート13は、第2サイドハウジング6bの前側の側面であって第2ロータ収容室2bの後側のサイド面111b_rの右下側部分に開口している。また、第2ロータ収容室2bの排気ポート13は、第2サイドハウジング6b内を略水平方向に貫通して、第2サイドハウジング6bの右側面の下部に開口しており、この開口部分において排気通路50に接続されている。
【0040】
このように、本実施形態では、各サイド排気ポート13は、対応するロータ収容室2(内側を流通する排気の導入元であるロータ収容室2)のサイド面111、111のうち後側のサイド面111の右下側部分に開口しており、各ロータ収容室2において、排気ポート13と吸気ポート11、12とは、互いに反対側のサイド面111に開口している。
【0041】
コーナーシール102の脱落を回避するために、サイド面111に開口するサイド排気ポート13も、サイド面111の外周縁から所定量ロータ3の径方向の内側に所定量離間するように形成されている。
【0042】
本実施形態では、さらに、第1ロータハウジング5aの右下側部分に、第1ロータ収容室2aのロータ面5aの右下側部分と第1ロータハウジング5aの外側面の右下側部分とに開口して、第1ロータ収容室2aから排気を導出するためのペリ排気ポート14が形成されている。また、第2ロータハウジング5bの右下側部分に、第2ロータ収容室2bのロータ面5bの右下側部分と第2ロータハウジング5bの外側面の右下側部分とに開口して、第2ロータ収容室2bから排気を導出するためのペリ排気ポート14が形成されている。これらペリ排気ポート14の各ハウジング5a、5bの外側面側の開口にも排気通路50が接続されている。
【0043】
図6は、図3のVI−VI線断面図の一部を示した図である。図6に示すように、本実施形態では、ペリ排気ポート14は、ロータハウジング5の前後方向中央を挟んで前後方向に延びる略長方形状を有している。ペリ排気ポート14は、アペックスシール101の脱落を回避するべく、ロータ面110前後方向の両縁付近を除く部分に開口している。本実施形態では、例えば、ペリ排気ポート14の前後方向の寸法は、ロータハウジング5の前後方向の寸法の0.8倍程度に設定されている。
【0044】
図5に示すように、本実施形態では、各ロータ収容室2において、サイド排気ポート13は、その閉口時期が排気上死点を超えないように設けられる一方、ペリ排気ポート14は、その閉口時期が排気上死点を超えるように設けられている。これに伴い、吸気行程にある作動室Aにおいて、サイド排気ポート13が開口している期間と、各吸気ポート11、12が開口している期間とは重複しない。一方、吸気行程にある作動室Aにおいて、ペリ排気ポート14が開口している期間と、各吸気ポート11、12が開口している期間とは重複する。つまり、吸気行程にある作動室Aでは、ペリ排気ポート14と各吸気ポート11、12とが所定時間ともに開口することになる。
【0045】
ここで、サイド排気ポート13の開口面積は、サイド排気ポート13のロータ3の径方向についての寸法を大きくすることによって大きくすることができる。これに対して、ペリ排気ポート14の前後方向の寸法はロータ面110およびロータハウジング5の前後方向の寸法によって規定される。そのため、ペリ排気ポート14の開口面積を大きくしようとすると、ロータ3の回転方向についてのペリ排気ポート14の寸法を大きくせねばならない。しかしながら、ペリ排気ポート14のこの回転方向の寸法を大きくすると、ペリ排気ポート14の開口開始時期が早くなる、あるいは、閉口時期が遅くなって、膨張行程中にペリ排気ポート14が開口する、あるいは、吸気行程中にペリ排気ポート14が開口する期間が過剰に長くなり、膨張仕事あるいは吸気効率が低下してしまう。そこで、本実施形態では、ペリ排気ポート14の開口開始時期と閉口時期とを適切な時期とし、サイド排気ポート13の開口面積を大きくすることで、排気ポート13、14全体での開口面積を大きくしている。これに伴い、図5に示すように、サイド排気ポート13の開口面積(最大値)は、ペリ排気ポート14の開口面積(最大値)よりも大きくなっている。
【0046】
また、図5に示すように、本実施形態では、サイド排気ポート13はペリ排気ポート14よりも早期に開口する位置に設けられている。
【0047】
このように、本実施形態では、各ロータ収容室2において、サイド排気ポート13と吸気ポート11、12とが、前後方向について互いに反対側のサイド面111に開口している。そのため、エンジン性能を高めることができる。
【0048】
図6および図7を用いて具体的に説明する。図7は、図6に対応した図であって、サイド排気ポート13と吸気ポート11、12とが同じサイド面111に開口された比較例に係る図である。
【0049】
比較例では、サイド排気ポート13と吸気ポート11、12とが同じサイド面111に開口していることで、サイド面111と、これに対向するロータ3の側面3sとの間の隙間Gを介してサイド排気ポート13と吸気ポート11、12とが連通する状態となる。詳細には、図3および図4に示すように、サイド排気ポート13と吸気ポート11、12とは、ロータ3の側面3sのうちサイドシール103と外周側のオイルシール104との間の隙間Gを介して連通する。
【0050】
そのため、比較例では、サイド排気ポート13内の排気が隙間Gを通って吸気ポート11、12に流入するおそれがある。そして、このように排気が吸気ポート11、12に流入すると、吸気ポート11、12からロータ収容室2内への吸気の流入を排気が阻害して吸気効率が低下する。また、プライマリ吸気ポート11に供給された燃料を含む吸気が、隙間Gを通ってプライマリ吸気ポート11からサイド排気ポート13に流入して、未燃の燃料がそのままエンジンの外部に排出されて排気性能が悪化するおそれがある。
【0051】
また、プライマリ吸気ポート11内の燃料がロータ3の側面3sに付着し、この付着部分がロータ3の回転に伴ってサイド排気ポート13と対向する位置に移動することで、ロータ3の側面3sに付着した燃料が未燃のままサイド排気ポート13およびエンジンの外部に排出されるおそれがある。
【0052】
ここで、ロータ3の側面3sに隙間Gを塞ぐようにシール部材を設ければ、前記の隙間Gを介した排気や燃料の移動は抑制できる。しかし、このようにするとロータ3の摺動抵抗が増大してエンジン出力が低下してしまう。
【0053】
これに対して、本実施形態では、サイド排気ポート13と吸気ポート11、12とが、互いに反対側のサイド面111に開口していることで、サイド排気ポート13と吸気ポート11、12とは隙間Gを介して連通しない。そのため、ロータ3の摺動抵抗を増大させることなく、隙間Gを介した排気や燃料の移動を回避できる。
【0054】
また、プライマリ吸気ポート11内の燃料がロータ3の側面3sに付着しても、この付着部分とサイド排気ポート13とが対向しないため、ロータ3の側面3sに付着した燃料が未燃のままサイド排気ポート13およびエンジンの外部に排出されるのを回避できる。
【0055】
また、ロータ面110に開口するペリ排気ポート14が設けられることで、ロータ収容室2からより多くの排気を排出することができるとともに、煤や凝縮水がロータ収容室2に溜まるのを抑制できる。
【0056】
具体的には、ロータリエンジンでは、ロータ3の回転に伴ってロータ収容室2内の物質に遠心力が作用するため、燃焼後のガスや燃焼に伴って生成された煤および凝縮水はロータ収容室2の外周縁付近に溜まりやすい。そのため、前記のようにロータ収容室2の外周縁から離間するように形成されたサイド排気ポート13しか設けられていない場合には、前記燃焼後のガス等を適切に排出できない。
【0057】
これに対して、本実施形態では、ロータハウジング5にペリ排気ポート14が設けられていることで、ロータ収容室2の外周縁付近に溜まった燃焼後のガスや煤および凝縮水等をペリ排気ポート14から効果的にロータ収容室2外に排出することができる。
【0058】
特に、ロータ収容室2の外周縁に煤が溜まると、この煤がアペックスシール101に付着してアペックスシール101とロータ収容室2の内周面との間の気密性を低下させるおそれがある。また、凝縮水が溜まると、点火プラグ21等に悪影響をおよぼすおそれがある。これに対して、本実施形態では、アペックスシール101をペリ排気ポート14の開口縁に当接させることで、アペックスシール101に付着した煤をペリ排気ポート14の開口縁によってかき落とすことができる。
【0059】
(2)吸気通路
吸気通路30は、1本の上流側吸気通路31と、上流側吸気通路31の下流端に接続される2本の下流側通路32、33とを備える。一方の下流側通路32であるプライマリ吸気通路部32の下流側部分は2つ通路32a、32bに分岐しており、これら通路32a、32bがそれぞれ独立して第1ロータ収容室2aのプライマリ吸気ポート11と第2ロータ収容室2bのプライマリ吸気ポート11とに接続されている。また、他方の下流側通路33であるセカンダリ吸気通路部33の下流側部分は2つの通路33a、33bに分岐しており、これら通路33a、33bがそれぞれ独立して第1ロータ収容室2aのセカンダリ吸気ポート12と第2ロータ収容室2bのセカンダリ吸気ポート12とに接続されている。
【0060】
本実施形態では、セカンダリ吸気ポート12にそれぞれ接続された2本の通路(セカンダリ吸気通路部33の2つの下流側部分)33a、33bには、それぞれこれらの通路ひいてはセカンダリ吸気ポート12、12を開閉する吸気ポート開閉弁18、18が設けられている。
【0061】
例えば、エンジン回転数が低くエンジン負荷が高い領域であって、吸気下死点を過ぎた後も比較的長い時間開口するセカンダリ吸気ポート12が開口していることでロータ収容室2からセカンダリ吸気ポート12へ吸気が吹き返し、これによって吸気量(新気量)を確保できない領域では、吸気ポート開閉弁18は閉弁される。一方、エンジン回転数が低く且つエンジン負荷が低い領域であって、必要な吸気量が少なく前記吸気の吹き返しを生じさせることでポンピングロスを低減できる領域では、吸気ポート開閉弁18は開弁される。また、エンジン回転数が高い領域であって、吸気脈動の作用によって吸気下死点を過ぎた後でもセカンダリ吸気ポート12からロータ収容室2内に吸気を導入できる領域では、吸気ポート開閉弁18は開弁される。
【0062】
上流側吸気通路31には、上流側から順に、エアクリーナー41、ターボ過給機70のコンプレッサ71、インタークーラ42、スロットルバルブ43が設けられている。スロットルバルブ43は、上流側吸気通路31を開閉するバルブであり、ロータ収容室2に必要な空気の量に応じてその開度が変更される。
【0063】
(3)排気通路
排気通路50は、2つのペリ排気ポート14に接続されるペリ側排気通路部51と、2つのサイド排気ポート13に接続されるサイド側排気通路部54とを備える。ターボ過給機70のタービン72はサイド側排気通路部54に設けられている。ペリ側排気通路部51は、タービン72を迂回してサイド側排気通路部54のタービン72よりも下流側の部分56に接続されている。サイド側排気通路部54のうちペリ排気通路51との接続部分よりも下流側には、排気を浄化するための三元触媒等の浄化装置58が設けられている。
【0064】
サイド側排気通路部54は、サイド側排気通路部54の上流側部分を構成して第1ロータ収容室2aに開口するサイド排気ポート13に接続される第1サイド側独立通路55と、サイド側排気通路部54の上流側部分を構成して第2ロータ収容室2bに開口するサイド排気ポート13に接続される第2ペリ側独立通路55とを備える。
【0065】
タービン72は、ツインスクロール式のタービンである。具体的には、タービン72は、複数の羽根を有しこれら羽根に排気が衝突することで回転するタービン本体74と、これを内側に収容するタービンハウジングとを備える。また、タービンハウジングはタービン本体74の外周を囲む渦巻状のタービンスクロール部を備える。そして、タービンハウジング75の上流端からタービンスクロール部の下流端にわたる部分は、タービン本体74の回転軸方向に2つの空間に区画されており、前記部分には互いに独立した2つの吸入通路81、81が形成されている。そして、一方の吸入通路81に第1サイド側独立通路55が接続されて、他方の吸入通路81に第2サイド側独立通路55が接続されている。
【0066】
タービンハウジングの下流端には、サイド側排気通路部54の下流側部分を構成する1本の通路56(以下、排気集合通路56という)が接続されており、タービン本体74を回転させた後の排気はこの排気集合通路56に導入される。なお、図示は省略したが、各サイド側独立通路部55には、各サイド側独立通路部55の下流端付近と排気集合通路56とを連通して、各サイド側独立通路部55内の排気をタービン72を迂回して排気集合通路56に流すためのバイパス通路と、これを開閉するウエストゲートバルブとが設けられている。
【0067】
このように構成されることで、一方のサイド排気ポート13から排出されて一方のサイド側独立通路部55を通りタービン72に流入した排気は、他方のサイド側独立通路部55に回り込むことなくタービン本体74の各羽根に衝突する。そのため、各サイド排気ポート13から排出された排気は、そのエネルギーが高く維持されたまま各羽根の回転に利用される。
【0068】
特に、本実施形態では、サイド排気ポート13は、ペリ排気ポート14よりも早いタイミング、つまり、作動室A内の圧力がより高いタイミングで開口する。そのため、サイド側独立通路部55には高圧のブローダウンガス(排気ポートの開口とともに排出される高圧の排気)が流入し、サイド側独立通路部55内の圧力(実線)と、後述するペリ側独立通路部52内の圧力(破線)とを比較して示した図8に示されるように、サイド側独立通路部55およびタービン本体74に導入される排気の圧力は高く、より高いエネルギーがタービン本体74に供給される。
【0069】
図1に戻り、ペリ側排気通路部51は、その上流側部分を構成して第1ロータ収容室2aのペリ排気ポート14に接続される第1ペリ側独立通路部52と、ペリ側排気通路部51の上流側部分を構成して第2ロータ収容室2bのペリ排気ポート14に接続される第2ペリ側独立通路部52と、これらペリ側独立通路部52の下流端に共通して接続されるペリ側集合通路部53とからなる。
【0070】
各ペリ側独立通路部52には、それぞれ、各ペリ側独立通路部52ひいては各ペリ排気ポート14を開閉可能な排気ポート開閉弁61が設けられている。
【0071】
前記のように、ロータ収容室2内の煤および凝縮水はペリ排気ポート14によって効果的に除去される。そこで、本実施形態では、ペリ排気ポート開閉弁14を、エンジンの運転領域によらずエンジンを始動してから所定時間が経過するまで開弁させて、エンジンの始動時にロータ収容室2内の溜まった煤および凝縮水を除去する。
【0072】
また、前記のように、本実施形態では、ペリ排気ポート14の開口期間と各吸気ポート11、12の開口期間とが重複しており、吸気行程にある作動室Aにおいてこれらのポート11、12、14がともに開口するようになっている。
【0073】
そこで、本実施形態では、エンジン回転数が低く且つエンジン負荷が低い低速低負荷領域を除く領域では、排気ポート開閉弁61を開弁してペリ排気ポート14を開放し(ペリ排気ポート14を介した排気通路50と作動室Aとの間でのガスの流通を許可し)、吸気ポート11、12から作動室Aに流入した吸気によって作動室A内の排気(燃焼後のガス)をペリ排気ポート14側に押しやって掃気性能を高める。一方、吸気の圧力が低い低速低負荷領域であってペリ排気ポート14を開放しているとペリ排気ポート14内の排気が吸気ポート11、12に逆流するおそれがある領域では、この逆流を回避するべく、ペリ排気ポート14を閉弁してペリ排気ポート14を閉鎖する(ペリ排気ポート14を介した排気通路50と作動室Aとの間でのガスの流通を停止する)。
【0074】
(4)EGR装置
EGR装置90は、排気の一部を吸気に還流するための装置であり、排気通路50と吸気通路30とを連通するEGR通路91と、これを開閉するEGRバルブ92と、EGR通路91を通過するガスであるEGRガスを冷却するEGRクーラ93とを備える。
【0075】
EGR通路91は、ペリ側集合通路部53とプライマリ吸気通路部32とに接続されている。本実施形態では、EGR通路91は、ペリ側集合通路部53の途中部に、後述するボルテックスチューブ69を介して接続されている。また、EGR通路91は、プライマリ吸気通路部32の上流側部分であって各プライマリ吸気ポート11に向かって2つの通路に分岐する部分よりも上流側の部分に接続されている。従って、EGR通路91には、各ペリ排気ポート14から排出された排気のみが導入されるとともに、EGR通路91を流通するEGRガスはセカンダリ吸気ポート12のみからロータ収容室2内に導入される。
【0076】
このように、EGR通路91がペリ側排気通路部51に接続されていることで、本実施形態では、EGRガスをより適切に各ロータ収容室2に導入することができる。
【0077】
図9は、サイド側独立通路部51内の圧力(破線)とペリ側集合通路部53内の圧力(実線)とを比較して示した図である。前記のように、ペリ排気ポート14からはブローダウン(サイド排気ポート13の開口に伴って高圧の排気が排出された)後の比較的低い圧力の排気が導入される。そのため、ペリ排気ポート14と連通するペリ側集合通路部53内の圧力は比較的低くなる。さらに、ペリ側集合通路部53が2つのペリ側排気ポート14と連通していることで、ペリ側集合通路部53内では各ペリ側排気ポート14から排出された排気の圧力脈動が平均化される。従って、ペリ側集合通路部53内の圧力変動幅は小さくなり、ペリ側集合通路部53に接続されたEGR通路99内の圧力変動も小さくなる。従って、各作動室Aおよび各ロータ収容室2に導入されるEGRガス量の変動は小さくなり、各作動室Aおよび各ロータ収容室2内にそれぞれ適切にEGRガスが導入される。なお、前記のように各ペリ排気ポート14からペリ側集合通路部53に導出される排気の圧力が小さいことから、一方のペリ排気ポート14からペリ側集合通路部53へ導出された排気が他方のペリ排気ポート14からペリ側集合通路部53への排気の導出に与える悪影響は小さく抑えられる。
【0078】
また、前記のように、セカンダリ吸気ポート12には、主としてエンジン回転数が低い領域において、ロータ収容室2からの吹き返しが生じる。そのため、セカンダリ吸気ポート12にEGR通路91が接続されていると、セカンダリ吸気通路部33に吹き返された吸気が、EGR通路91からセカンダリ吸気通路部33へのEGRガスの流入を阻害するおそれがある。また、セカンダリ吸気ポート12にEGR通路91が接続されていると、所定の作動室Aからセカンダリ吸気通路部33に吸気とともに吹き返されたEGRガスが、他の作動室Aに流入して各作動室A内のEGRガス量が不適切になるおそれがある。これに対して、本実施形態では、閉口時期が早くロータ収容室2からの吹き返しがほとんどないプライマリ吸気ポート11およびプライマリ吸気通路部32にEGR通路91が接続されていることで、各ロータ収容室2および各作動室Aに適切な量のEGRガスを導入することができる。
【0079】
また、ペリ側排気ポート14からペリ側排気通路部51には、圧力とともに温度の低い排気が導出される。そのため、EGRガスの温度をより低くすること、あるいは、EGRガスの温度を所定の温度に低下させつつEGRクーラ93の性能を低く抑えること(例えば、EGRクーラの容量を小さく抑えること)が可能となる。
【0080】
ここで、前記のようにEGR通路91が接続されるペリ側集合通路部53内の圧力は比較的低い。そのため、エンジンの運転条件によってはEGR通路91の前後差圧が小さくなって十分なEGRガスをロータ収容室2内に導入できないおそれがある。これに対して、本実施形態では、ペリ側集合通路部53のうちEGR通路91の接続部分よりも下流側に、ペリ側集合通路部53を開閉する排気開閉弁63が設けられている。従って、この排気開閉弁63を閉じ側にすることで、前記の運転条件においても、ロータ収容室2内に適切な量のEGRガスを導入することができる。
【0081】
図10は、ボルテックスチューブ69の概略断面図である。ボルテックスチューブ69は、例えば、特開2002−70657に開示されているようなものを使用することができ、ここでは簡単に説明する。
【0082】
図10に示すように、ボルテックスチューブ69は、旋回室64aが内側に区画された略円筒状の旋回流形成部64と、旋回流形成部64の一端に接続された暖気吐出部65と、旋回流形成部64の他端に接続された冷気吐出部66と、旋回流形成部64の周壁に形成されたガス導入部67とを有する。旋回室64aは、図10に示すようにその内側で旋回流Sが形成されるように構成されている。ボルテックスチューブ69では、ガス導入部67から高温高圧のガスが導入されると旋回室64a内でその外周面に沿い暖気吐出部65に向かう旋回流S1と、この旋回流S1の内側を通り暖気吐出部65側から冷気吐出部66に向かう旋回流S2とが生じ、これら旋回流S1、S2間での熱交換により、導入されたガスが高温のガスと低温のガスとに分離される。そして、高温のガスは暖気吐出部65から外部に導出されて、低温のガスは冷気吐出部66から外部に吐出される。
【0083】
本実施形態では、このように構成されたボルテックスチューブ69のガス導入部67と暖気吐出部65にそれぞれペリ側集合通路部53の途中部が接続されて、冷気吐出部66にEGR通路91の上流端が接続されており、ボルテックスチューブ69を介して、ペリ側集合通路部53とEGR通路91とが接続されている。
【0084】
このように構成されることで、ペリ側集合通路部53から排出された高温高圧のガスの一部は冷却されてEGR通路91に導入され、他部は下流側通路部56へと導出される。従って、本実施形態では、EGRガスの温度をより一層低くすること、あるいは、EGRガスの温度を所定の温度に低下させつつEGRクーラ93の性能をより一層低く抑えることができる。
【0085】
ここで、前記の温度分離を実現するためには暖気吐出部65の圧力を十分に高くする必要がある。これに対して、本実施形態では、前記排気開閉弁63がペリ側集合通路部53の下流側部分に設けられており、この排気開閉弁63が閉じ側に制御されることで前記圧力が高く維持される。
【0086】
なお、車両には、エンジンの各部を制御可能なECU(不図示)が設けられており、このECUによって、吸気ポート開閉弁18、排気ポート開閉弁61、排気開閉弁63、EGRバルブ92、スロットルバルブ43等が制御される。
【0087】
(5)作用等
以上のように、本実施形態では、サイド面111にそれぞれ開口するサイド排気ポート13と吸気ポート11、12とが、各ロータ収容室2において、互いに反対側のサイド面111に開口している。そして、これにより、サイド面111とこれに対向するロータ3の側面3sとの間の隙間Gを介してサイド排気ポート13と吸気ポート11、12とが連通するのが回避されている。
【0088】
そのため、前記のように、隙間Gを塞ぐためのシール部材を設けることなく、各シール部材サイド排気ポート13内の排気が前記の隙間Gを通って吸気ポート11、12に逆流するのを回避できるとともに、吸気ポート11、12内の未燃の燃料が隙間Gを通って排気ポート13に流入するのを回避できる。また、吸気ポート11、12内の未燃の燃料がロータ3の側面3sに付着して燃焼することなくサイド排気ポート13に運ばれるのを回避できる。従って、ロータ3の摺動抵抗を小さく抑えてエンジン出力を高く確保しつつ、前記排気の逆流に伴う吸気効率の低下を回避して吸気効率を高くすることができるとともに、排気性能を高めることができる。
【0089】
また、本実施形態では、各ロータハウジング5にペリ排気ポート14が形成されて、各ロータ収容室2のロータ面110にこのペリ排気ポート14が開口している。
【0090】
そのため、前記のように、ロータ3の回転に伴って生じた遠心力を受けてロータ収容室2の外周縁付近に集まった排気をペリ排気ポート14から効果的に排出することができ、ロータ収容室2内の排気が吸気ポート11、12に逆流するのをより確実に抑制でき吸気効率をより確実に高めることができる。また、前記のように、ロータ収容室2内に溜まった煤や凝縮水を効果的にロータ収容室2の外部に排出することができ、この煤や凝縮水が及ぼす悪影響を防止できる。
【0091】
また、本実施形態では、2つのロータ収容室2において、前側のサイド面111に吸気ポート11、12がそれぞれ開口し、後側のサイド面111にサイド排気ポート13がそれぞれ開口するように構成されている。
【0092】
そのため、図1に示すように、吸気通路30のうち各ロータ収容室2の吸気ポート11、12から延びる部分、つまり、プライマリ吸気通路部32の2本の下流側部分32a、32bをともにエンジン本体1の側方の前側部分に集めることができる。従って、吸気通路30の長さを短くしてこれをコンパクトにすることができる。
【0093】
同様に、排気通路50のうち各ロータ収容室2のサイド排気ポート13から延びる部分、つまり、2本のサイド側独立通路部55をともにエンジン本体1の側方の後側部分に集めることができる。従って、排気通路50の長さを短くしてこれをコンパクトにすることができる。
【0094】
また、図1に示すように、エンジン本体1の側方において吸気通路30と排気通路50とが前後方向にずれた位置に配置される。そのため、エンジン本体1の側方におけるこれら通路30、50のレイアウトを容易にすることができる。
【0095】
(6)変形例
前記実施形態では、第1ロータ収容室2aの吸気ポート11、12が第1サイドハウジング6aに設けられ、第2ロータ収容室2bの吸気ポート11、12がインターミディエイトハウジング6cに設けられた場合について説明したが、これに代えて、2つのロータ収容室2a、2bの吸気ポート11、12をともにインターミディエイトハウジング6cに設けてもよい。具体的には、インターミディエイトハウジング6cの前側の側面によって構成される第1ロータ収容室2aの後側のサイド面111と、インターミディエイトハウジング6cの後側の側面によって構成される第2ロータ収容室2aの前側のサイド面111とに、それぞれ、第1ロータ収容室2aの吸気ポート11、12と第2ロータ収容室2bの吸気ポート11、12とを開口させる。そして、第1サイドハウジング6aの後側の側面によって構成される第1ロータ収容室2aの前側のサイド面111と、第2サイドハウジング6bの前側の側面によって構成される第2ロータ収容室2bの後側のサイド面111とに、それぞれ、第1ロータ収容室2aのサイド排気ポート13と第2ロータ収容室2bのサイド排気ポート13とを開口させる。この実施形態においても、各ロータ収容室2aにおいて、吸気ポート11、12とサイド排気ポート13とが、互いに対向するサイド面111、111に開口していることで、前記のようにロータ3の摺動抵抗を大きくすることなくエンジン性能を高めることができる。
【0096】
また、前記実施形態では、ロータ3のサイド面3sに、シール部材として、サイドシール103と2つのオイルシール104、104とを設けた場合について説明したが、高温の排気によってロータ3に熱害が生じるおそれがある場合等には、さらにシール部材を追加してもよい。
【0097】
また、前記実施形態では、エンジン本体1が2つのロータ2を有するエンジンの場合について説明したが、エンジン本体1として1つのロータ2を有するロータリーピストンエンジンを用いてもよい。また、3以上のロータ2を有するロータリーピストンエンジンに適用してもよい。
【0098】
また、前記実施形態では、ペリ側排気通路部51とEGR通路91とをボルテックスチューブ69を介して接続した場合について説明したが、ボルテックスチューブ69は省略可能である。また、セカンダリ吸気ポート12およびセカンダリ吸気通路部33aは省略可能である。また、ペリ排気ポート14は省略可能である。また、前記実施形態では、エンジン本体1が車両の駆動源として用いられる場合について説明したが、これに限らず、例えば、車両の駆動源としてモータを備えたハイブリッド車両に設けられてこのモータに電力を供給するための電力源としてエンジン本体1を利用してもよい。
【符号の説明】
【0099】
2 ロータ収容室
3 ロータ
5 ロータハウジング
6 サイドハウジング
11 プライマリ吸気ポート(吸気ポート)
12 セカンダリ吸気ポート(吸気ポート)
13 サイド排気ポート(排気ポート)
14 ペリ排気ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10