特許第6532030号(P6532030)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許65320303次元膜電極組立体、それを備えた燃料電池、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6532030
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】3次元膜電極組立体、それを備えた燃料電池、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1006 20160101AFI20190610BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20190610BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20190610BHJP
   H01M 8/1023 20160101ALI20190610BHJP
   H01M 8/1039 20160101ALI20190610BHJP
   H01M 8/1016 20160101ALI20190610BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20190610BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20190610BHJP
【FI】
   H01M8/1006
   H01M8/10 101
   H01M4/86 N
   H01M8/1023
   H01M8/1039
   H01M8/1016
   H01M8/02
   H01M4/88 Z
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-195819(P2017-195819)
(22)【出願日】2017年10月6日
(65)【公開番号】特開2018-206751(P2018-206751A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2017年10月6日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0068655
(32)【優先日】2017年6月1日
(33)【優先権主張国】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (公開の事由1)刊行物名:KSME社団法人大韓機械学会2017年度春季学術大会論文集、発行日:平成29年4月6日 (公開の事由2)集会名:KSME社団法人大韓機械学会2017年度春季学術大会、発表日:平成29年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】516315258
【氏名又は名称】全南大学校産学協力団
(74)【代理人】
【識別番号】110000981
【氏名又は名称】アイ・ピー・ディー国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ガン ギジュ
(72)【発明者】
【氏名】ヌエン チュアン ホアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン スンフン
(72)【発明者】
【氏名】ハン スンチョル
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−200664(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101079494(CN,A)
【文献】 特開2010−267618(JP,A)
【文献】 Acta Materialia,2016年,103,p.595-607
【文献】 SCIENTIFIC REPORTS,2017年10月17日,7:13405,p.1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/1006
H01M 4/86
H01M 4/88
H01M 8/02
H01M 8/10
H01M 8/1016
H01M 8/1023
H01M 8/1039
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が界面によって互いにねじれた形態の2つの副空間に分離区画される3次元薄膜構造体からなる燃料電池用3次元膜電極組立体(MEA)であって、
前記界面をMEA薄膜で構成し、
前記2つの副空間のうち第1副空間は燃料の移動通路として提供され、第2副空間は酸化剤の移動通路として提供されることを特徴とする燃料電池用3次元膜電極組立体。
【請求項2】
前記MEA薄膜は、電解質膜の両面に触媒層及び拡散層が順次に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用3次元膜電極組立体。
【請求項3】
前記電解質膜は、金属、ポリマー、セラミックのうちいずれか一つであることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用3次元膜電極組立体。
【請求項4】
前記界面は、3重周期極小曲面(TPMS;Triply Periodic Minimal Surface)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池用3次元膜電極組立体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の3次元膜電極組立体と、
前記3次元膜電極組立体を内部に収容し、前記第1副空間及び第2副空間それぞれに独立して連通して燃料及び酸化剤の入口及び出口が備えられたケーシングと、を含む燃料電池。
【請求項6】
2つの接続端子が別途に提供され、
それぞれの接続端子は、前記第1副空間側及び第2副空間側の表面に独立して電気的に連結されることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記入口または出口が接続端子として機能することを特徴とする請求項5に記載の燃料電池。
【請求項8】
(A)請求項1〜4のいずれか一項に記載の3次元膜電極組立体を形成するステップと、
(B)前記3次元膜電極組立体を内部に収容し、燃料及び酸化剤の入口及び出口が備えられたケーシングを形成するステップと、を含み、
前記ケーシングを形成するステップ(B)は、
(B1)前記3次元膜電極組立体の内部を充填材で詰めるステップと、
(B2)前記3次元膜電極組立体の第1副空間及び第2副空間それぞれに独立して複数の棒材を連結するステップと、
(B3)前記3次元膜電極組立体及び複数の棒材の外部を包むようにケーシング材を形成するステップと、
(B4)前記棒材及び充填材を除去するステップと、を含むことを特徴とする燃料電池の製造方法。
【請求項9】
前記ステップ(B2)は、前記棒材を連結する前に外面をエッチングして前記充填材の一部を除去することで、MEA薄膜の一部を露出させるステップを含むことを特徴とする請求項8に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項10】
前記棒材は充填材と同じ材質であることを特徴とする請求項8または9に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項11】
前記ステップ(B1)の前に、MEA薄膜と接続端子を連結する導線を形成するステップと更に含むことを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項12】
前記棒材は充填材とは異種材質であり、
ステップ(B4)において、前記棒材が除去されたケーシング材の内面に前記MEA薄膜と電気的に連結される伝導性薄膜を形成するステップを更に含むことを特徴とする請求項8または9に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項13】
前記3次元膜電極組立体を形成するステップ(A)は、
(A1)3次元薄膜電極組立体のテンプレートを製造するステップと、
(A2)前記テンプレートの表面に電解質膜を形成した後、前記テンプレートを除去するステップと、
(A3)前記電解質膜の両面に触媒層を形成するステップと、
(A4)前記触媒層の表面に拡散層を形成するステップと、を含むことを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項14】
前記ステップ(A4)は、2種のポリマー混合溶液を触媒層の表面に塗布硬化した後、いずれか一つのポリマーを除去し、めっきを行うことを特徴とする請求項13に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項15】
前記ステップ(A4)は、金属粉末を前記触媒層に吸収させた後、めっきを行うことを特徴とする請求項13に記載の燃料電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料と酸化剤を電気化学的に反応させて電気エネルギーを発生する燃料電池、及びそれに利用される膜電極組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料電池(Fuel Cell)は、燃料と酸化剤を電気化学的に反応させて電気エネルギーを発生する装置である。このような化学反応は、触媒と電解質が成す界面において発生し、燃料が供給される限り持続的な発電が可能である。つまり、一般的な化学電池が閉鎖系で化学的に電気エネルギーを貯蔵し放出することとは異なって、燃料電は外部から燃料と酸化剤とが供給されて電力を生産する。また、一般的な化学電池の電極は充放電状態(state of charge)によって電池の出力が異なるが、燃料電池の電極は正常状態(steady−state)の動作をするため、相対的に安定的に出力を維持することができる。一方、全ての燃料電池は正極、負極及び水素陽イオンを通過させる電解質を有する。燃料電池は電解質の種類に応じて分類されるが、このうち高分子電解質膜燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell;以下、「PEMFC」)は、100℃未満の作動温度において特に家庭用、携帯用、または輸送用動力源として一般的に利用されている。
【0003】
図1は、従来の一般的なPEMFCの概念図を示す。このような燃料電池の基本構造は、燃料極(アノード:anode)、酸素極または空気極(カソード:cathode)、及び両電極の間に提供される電解質膜で形成された膜電極組立体(MEA;membrane electrode assembly、以下、「MEA」)で形成され、両電極は外部回路と連結されて使用される。化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換する燃料電池は、燃料極では水素またはメタノールのような燃料の酸化反応が、酸素極または空気極では酸素の還元反応がおこる。この場合、MEAの電解質膜は一種のイオン交換膜として触媒作用によって燃料極から発生した水素イオンを酸素極まで移動させる役割と、燃料が空気と直接混合されないように隔膜の役割をする。
【0004】
図2は、PEMFCのMEA構成と動作原理を示す。従来の燃料電池は、流動チャネルを介して供給された水素またはアルコールのような燃料と、酸素または空気のような酸化剤が電極の拡散層を介して拡散されて、触媒と高分子電解質の界面に伝達されることで電気化学反応を発生させていた。そのために、流動場を形成する分離板(separator)(図示せず)を利用すべきであった。分離板は、反応物質とは反応しない材質の金属やカーボンを利用して製作する。カーボンの場合、脆性(brittle)のため分離板を薄型にすることが難しく、金属は反応物質によって腐食する恐れがあるだけでなく密度が高いため、燃料電池の重さが重くなる短所があった。それに、高分子からなるイオン交換膜のイオン伝導度を維持するために、電池の温度を100℃以下に維持すべく冷却板を必要とする。これはスタック(stack)の厚さと重さを更に増加させる。このような燃料電池は、多くの長所にもかかわらず、システムの体積が多くスタック自体の重さも重いため、高出力を要する無人航空機やドローンなどに搭載することが容易ではない実情がある。
【0005】
また、従来の燃料電池では触媒層から生産される電子がガス拡散層と分離板を経て集電体に移動する過程において、異種の物質が相接する接点で接触抵抗による電圧の損失が発生する。特に、カーボンペーパーやカーボンフェルトからなるガス拡散層と分離板の界面において、大きな電気的損失が発生する問題がある。これを克服するために、カーボンフェルトと分離板を融着するなどの試みが行われているが、このような融着のためにポリマーの量を増やすしかなく、電気伝導度が落ちるなどの問題点が報告されている。
【0006】
また、流動チャネルとMEAからなる従来のPEMFC構造では、このような損失を補償し電池の出力を上昇させるために多くの単位セルを直列で積層して電圧を増加させるか、電池の面積を広げて電流を増加させる方法をとっている。しかし、両方法ともに燃料電池スタックの体積と重さが増えるため、携帯用や輸送用に使用するのには無理がある。普通、携帯用や輸送用に使用される燃料電池スタックに許容される重さと体積は制限的であるため、スタックが占める重さと体積を最小にしても、燃料を搭載するための空間を最大に確保すべきである。このように、小さい重さと体積を有しながらも高出力を出すべきであるため、従来の電極構造では反応面積を増やすのに限界があるため、高出力の携帯用・輸送用燃料電池を開発することが非常に難しかった。
【0007】
また、従来のPEMFCの場合、電極内部から発生する水分を円滑に外部に排出しなければ水分が触媒層の反応界面を覆ってしまい、界面現象である電気化学反応が円滑に行われなくなるフラッディング(flooding)現象が発生する。燃料電池が小型化すると流動チャネルの大きさが減り、これは流動抵抗を増加させて、燃料と酸化剤の円滑な供給を阻害する要素となる。つまり、従来の流動構造では燃料電池を小型化するのに限界がある。更に、マイクロ燃料電池の場合、一般的な構造のMEAを使用すれば、電流密度が低すぎて燃料と酸化剤を供給するのに必要なポンプ動力に比べ発電量が少ない問題もある。また、マイクロ燃料電池は内部流動構造のためにMEMS技術でシリコン基板(slicon substrate)を加工して使用していたが、高温型燃料電池の場合、熱変形と熱応力によるシリコン基板の破損などの問題のため、電池の厚さを薄くすることが難しい問題がある(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。
【0008】
一方、1865年、ドイツの数学者H.A.Schwarzは、3次元空間上で自ら交差せず(non−self intersection)周期的に繰り返される曲面構造体として、特に零(zero)の平均曲率(mean curverture)を有するTPMS(Triply Periodic Minimal Surface:3重周期極小曲面)を発表した(非特許文献4)。この場合、前記平均曲率は3次元面の一点における互いに垂直な両方向の最大曲率と最小曲率の平均値を意味し、3次元面の屈曲した程度を示す。1960年代、A.Schoenがこれを整理し、新たないくつかのTPMSを追加した(非特許文献5)。このようなTPMSは多様な形態が存在し、このうち、図3に示したようにP−surface、D−surface、及びG−surfaceが化学及び生物分野において最も代表的に引用されている。自然界でTPMSは水−乳化剤の混合物、細胞薄膜、うにの表皮板、シリケート中間相(meso−phase)などから発見されるが、ほとんど2つの相(phase)を分離する界面の形態に存在し、軽量多孔質構造体の形態としては発見されない。
【0009】
なお、上述した零の平均曲率(zero mean curverture)を有するTPMSは、空間をそれぞれ連続する2つの副空間(subvolume)に分けるが、両副空間の体積比が1:1で同じである。体積比が異なる場合であっても、両副空間を分ける平均極率が均一な(constant)最小表面積(minimal surface)の曲面を定義することができるが、この曲面も同じくTPMSという(非特許文献6)。
【0010】
前記TPMS形態の曲面が空間を分けて定義される2つの副空間はそれぞれ連続しており、互いにねじれた形態に存在する。もしTPMS形態に薄膜構造体を製造するのであれば、薄膜の曲面のいずれからも均一な平均曲率を有し、外部荷重が作用する際、応力がいずれか一部分に集中しないため、前記極低密度の材料から発生する早期局部座屈現象が発生せず、重さに比べ高い強度を有すると知られている(非特許文献7)。また、柔らかな曲面で囲まれた各副空間は広い表面積を有し、内部に流体が流れる際に透過性(permeability)が高い。よって、両副空間の境界に存在する薄膜は、両副空間の間の熱及び物質移動界面(heat and mass transfer interface)としての活用可能性が高い。
【0011】
最近、TPMS形態の薄膜構造体を製造する実用的な工程として、2つの注目すべき方法が開示されている。ハン・スンチョルなどは、特許文献1で提示した光リソグラフィを基に薄膜の多面構造体を製造する方法を応用し、図3に示したP−surfaceと類似した形態に製造することができると報告している(非特許文献8)。また、カン・キジュなどは、特許文献2において、ワイヤ製織構造体を基に、P−surface及びD−surfaceの形態を有する薄膜構造体の製造技術を提示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国特許第1341216号公報
【特許文献2】韓国特許第1699943号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】S.Motokawa, M.Mohamedi,T.Momma、S.Shoji,T.Osaka,MEMS−based design and fabrication of a new concept micro direct methanol fuel cell, Electrochemistry communications, 6,(2004)562−565
【非特許文献2】J.Lee,T.Kim,Micro space power system using MEMS fuel cell for nano−satellites,Acta Astronautica,101,(2014)165−169
【非特許文献3】N.T.Nguyen,S.H.Chan,Micromachined polymer elctrolyte membrane and direct methanol fuel cells−a review,J.Micromech.Microeng.,16,(2006)R1−R2
【非特許文献4】Gesammelte Mathematische Abhandlugen,Springer
【非特許文献5】S.Hyde et al.,The Language of Shape,Elsevier,1997,ISBN:978−0−444−81538−5
【非特許文献6】M.Maldovan and E.L.Thomas,Periodic Materials and Interference Lithography.2009 WILEY−VCH Verlag GmbH&CO.KGaA,ISBN:978−3−527−31999−2
【非特許文献7】S.C.Kapfer,S.T.Hyde,K.Mecke,C.H.Arns,G.E.Schroder−Turk,Minimal surface scaffold designs for tissue engineering,Biomaterials Vol.32,pp.6875−6882,2011
【非特許文献8】Seung Chul Han,Jeong Woo Lee,Kiju Kang,A New Type of Low Density Matreial;Shellular,Advanced Materials,pp.5506−5511,2015
【非特許文献9】R.Kuwertz et al.,Influence of acid pretreatmenet on ionic conductivity of Nafion membranes,Journal of Membrane Science 500(2016)225−235
【非特許文献10】J.Chou,E.W.McFarland,H.Meitu,Electro−lithographic Investigations of the Hydrophilic Channenls in Nafion Membranes,J.Phys.Chem.B(2005),109,3252−3256
【非特許文献11】N.R.Nik Roselina,A.Azizan,Ni nanoparticles:Study of particles formation and agglomeration,Procedia Engineering 41(2012)1620−1626
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、出力密度と効率が高く、軽量及び小型製作が可能で、堅固な構造を有する燃料電池及びその製造方法を提供することである。本発明の他の目的は、このような燃料電池に活用し得る3次元膜電極組立体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記課題を解決するために、互いにねじれた形態の2つの副空間に分離区画され、それぞれの副空間が連続した形態の3次元薄膜構造体の幾何学的構造に注目し、該当3次元薄膜構造体の界面をMEA薄膜で構成する一方、2つの副空間それぞれを燃料及び酸化剤の移動通路として活用する方案を見つけ、このような3次元薄膜構造体が特にTPMSからなる場合、重さに比べ高い強度と広い反応面積、各副空間内における燃料及び酸化剤の高い透過性を有する燃料電池を具現し得ることが分かり、本発明に至った。上述した解決課題に関する認識及びそれに基づいた本発明の要旨は以下のようである。
【0016】
(1)内部が界面によって互いにねじれた形態の2つの副空間に分離区画される3次元薄膜構造体からなる燃料電池用3次元膜電極組立体(MEA)であって、
前記界面をMEA薄膜で構成し、
前記2つの副空間のうち第1副空間は燃料の移動通路として提供され、第2副空間は酸化剤の移動通路として提供されることを特徴とする燃料電池用3次元膜電極組立体。
(2)前記MEA薄膜は、電解質膜の両面に触媒層及び拡散層が順次に形成されていることを特徴とする前記(1)に記載の燃料電池用3次元膜電極組立体。
(3)前記電解質膜は、金属、ポリマー、セラミックのうちいずれか一つであることを特徴とする前記(2)に記載の燃料電池用3次元膜電極組立体。
(4)前記界面は、3重周期極小曲面(TPMS)であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の燃料電池用3次元膜電極組立体。
(5)前記(1)〜(4)のうちいずれか一項に記載の3次元膜電極組立体と、
前記3次元膜電極組立体を内部に収容し、前記第1副空間及び第2副空間それぞれに独立して連通して燃料及び酸化剤の入口及び出口が備えられたケーシングと、を含む燃料電池。
(6)2つの接続端子が別途に提供され、
それぞれの接続端子は、前記MEAで分離された第1副空間側及び第2副空間側の表面に独立して電気的に連結されることを特徴とする前記(5)に記載の燃料電池。
(7)前記入口または出口が接続端子として機能することを特徴とする前記(5)に記載の燃料電池。
(8)(A)前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の3次元膜電極組立体を形成するステップと、
(B)前記3次元膜電極組立体を内部に収容し、燃料及び酸化剤の入口及び出口が備えられたケーシングを形成するステップと、を含み、
前記ケーシングを形成するステップ(B)は、
(B1)前記3次元膜電極組立体の内部を充填材で詰めるステップと、
(B2)前記3次元膜電極組立体の第1副空間及び第2副空間それぞれに独立して複数の棒材を連結するステップと、
(B3)前記3次元膜電極組立体及び複数の棒材の外部を包むようにケーシング材を形成するステップと、
(B4)前記棒材及び充填材を除去するステップと、を含むことを特徴とする燃料電池の製造方法。
(9)前記ステップ(B2)は、前記棒材を連結する前に外面をエッチングして前記充填材の一部を除去することで、MEA薄膜の一部を露出させるステップを含むことを特徴とする前記(8)に記載の燃料電池の製造方法。
(10)前記棒材は充填材と同じ材質であることを特徴とする前記(8)または(9)に記載の燃料電池の製造方法。
(11)前記ステップ(B1)の前に、MEA薄膜と接続端子を連結する導線を形成するステップと更に含むことを特徴とする前記(10)に記載の燃料電池の製造方法。
(12)前記棒材は充填材とは異種材質であり、
ステップ(B4)において、前記棒材が除去されたケーシング材の内面に前記MEA薄膜と電気的に連結される伝導性薄膜を形成するステップを更に含むことを特徴とする前記(8)に記載の燃料電池の製造方法。
(13)前記3次元膜電極組立体を形成するステップ(A)は、
(A1)3次元薄膜電極組立体のテンプレートを製造するステップと、
(A2)前記テンプレートの表面に電解質膜を形成した後、前記テンプレートを除去するステップと、
(A3)前記電解質膜の両面に触媒層を形成するステップと、
(A4)前記触媒層の表面に拡散層を形成するステップと、を含むことを特徴とする前記(8)〜(12)のいずれか一項に記載の燃料電池の製造方法。
(14)前記ステップ(A4)は、2種のポリマー混合溶液を触媒層の表面に塗布硬化した後、いずれか一つのポリマーを除去し、めっきを行うことを特徴とする前記(13)に記載の燃料電池の製造方法。
(15)前記ステップ(A4)は、金属粉末を前記触媒層に吸収させた後、めっきを行うことを特徴とする前記(13)に記載の燃料電池の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明による燃料電池の場合、膜電極組立体(MEA)が従来の燃料電池に比べ単位体積当たりの表面積が大きいため、界面を介したイオン交換量に比例して電流生産量を増加することができ、2つの副空間を区画する界面が柔らかな曲面を有するため、小型に製作してもそれぞれの副空間に供給される燃料と酸化剤に対する高い透過性を維持することで、燃料電池に対する軽量化、小型化及び高効率を同時に満足することができる。また、前記膜電極組立体(MEA)がTPMS形態を有する場合、平均極率が一定なため外部荷重が作用する際に局部的な応力集中が発生せず、ガス圧力や外部荷重に抵抗する機械的強度が高く、温度変化による熱膨張及び収縮に対する抵抗性が高いため、燃料電池の外部包装や補強に伴う重さの増加を最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来技術による燃料電池の概念図である。
図2】従来技術による燃料電池内の膜電極組立体の構成図である。
図3】TPMS(3重周期極小曲面)の例を示す構造図である。
図4】本発明の実施例による3次元膜電極組立体の構造図である。
図5】本発明の実施例による燃料電池の斜視図である。
図6】本発明の実施例によるMEA薄膜の動作概念図である。
図7】本発明の実施例による燃料電池の製造工程図である。
図8】本発明の実施例による拡散層の電子顕微鏡の写真である。
図9】本発明の他の実施例による拡散層の形成に関する工程図である。
図10図9の工程に伴うポリオール工程に関する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施例を介して本発明を詳細に説明する。その前に、本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語や単語は通常的であるか辞書的な意味に限って解析されてはならず、発明者は自らの発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義し得るとの原則に立脚して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解析すべきである。よって、本明細書に記載された実施例の構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないため、本発明の出願時点において、これらを代替し得る多様な均等物と変形例が存在し得ることを理解すべきである。一方、図面において、同一物または均等物に対しては同じであるかまたは類似した参照番号をつけており、また、明細書全体にわたって、ある部分がある構成要素を含むという際、これは特に反対する記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素を更に含むことを意味する。
【0020】
3次元膜電極組立体、燃料電池の構成及びその動作
図4乃至図6を参照して、本発明の好ましい実施例による3次元膜電極組立体10及び燃料電池1の構成及びその動作内容について説明する。
【0021】
図4は、本発明の実施例による3次元膜電極組立体10の構造図を示す。図4において、(a)は斜視図、(b)は断面図、(c)はMEA薄膜130の断面拡大図を示す。前記3次元膜電極組立体10は、内部が界面によって互いにねじれた形態の2つの副空間110、120に分離区画される3次元薄膜構造体であり、界面はMEA薄膜130からなる。図4の実施例において、3次元膜電極組立体10の幾何学的構造は、図3のTPMSのうち「P−Surface」として例示されている。
【0022】
前記MEA薄膜130は、燃料電池1(図5)として活用する際、第1副空間110及び第2副空間120を区画する。この場合、第1副空間110は水素のような燃料の移動通路として提供され、第2副空間120は酸素または空気のような酸化剤に対する移動通路として提供されるが、酸化剤の移動通路である第2副空間120は、電気化学的反応による生成物である水蒸気または水の移動通路も兼ねている。
【0023】
前記MEA薄膜130は、図4の(b)及び(c)に示したように、電解質膜132の両面に触媒層134(catalyst layer)及び拡散層136(GDL;gas diffusion layer)が順次に形成され、計5枚の層として例示されている。前記触媒層134では、燃料または酸化剤に対する酸化または還元などの電気化学的反応がおこり、前記拡散層136は燃料または酸化剤を触媒層134に伝達し、生成された電気を収集して外部回路に連結される接続端子30の方に伝達する役割をする。また、拡散層136は燃料または酸化剤の濃度をMEA薄膜130の位置に関係なく均一に、拡散層136がなければ流体の流動と位置に応じてMEA薄膜130に吸収される濃度が異なり得る。電解質膜132を介してイオン交換が行われるが、このような電解質膜132はナフィオン(Nafion)のようなフッ素樹脂系のイオン交換膜はもちろん、陽イオンのみを選択的に通過させる金属またはセラミックなどのような他の材質で構成されてもよい。
【0024】
一方、前記3次元膜電極組立体10の幾何学的構造は、柔らかな曲面状の界面によって互いにねじれた形態の2つの副空間110、120に区画され得る全ての構造を含む。実施例において、3次元膜電極組立体10の幾何学的構造は図3の「P−Surface」として例示されたが、他のTPMSであってもよいことはもちろんである。特に、3次元膜電極組立体10の幾何学的構造を実施例のようにTPMSで構成する場合、重さに比べ高い強度と広い反応面積、燃料及び酸化剤の高い透過性を有する燃料電池1を具現するのに有利である。
【0025】
詳しくは、前記3次元膜電極組立体10の2つの副空間110、120は互いにねじれた形態であり、それぞれは滑らかに連続した空間を形成するため、第1副空間110及び第2副空間120における気相または液相の流体が移動する際、流動抵抗が著しく減少することで透過性(permeablility)が大きく向上される。また、MEA薄膜130がTPMS形態であれば、水素が通過する第1副空間110には約1.2atmが、酸素が通過する第2副空間120には約1atmがそれぞれ発生するが、このような2つの副空間110、120の間に圧力差や外部荷重が作用しても、それによる3次元膜電極組立体10の早期局部座屈は効果的に抑制される。よって、従来の燃料電池1で両立させにくかった透過性、軽量及び剛性に対する要求条件を同時に満足することができる。
【0026】
また、前記3次元膜電極組立体10は、2つの副空間110、120がMEA薄膜130によって分離された小さい大きさの単位構造(unit structure)が3次元空間上で規則的に繰り返される構造であるため、巨視的な観点でこれを活用した燃料電池1を所望の形状に任意に自由に設計することができる。
図5は、このような3次元膜電極組立体10を利用した燃料電池1の斜視図を示す。前記燃料電池1は、3次元膜電極組立体10とケーシング20を含んで構成される。ケーシング20には、3次元膜電極組立体10の2つの副空間110、120である第1副空間110及び第2副空間120それぞれに独立して連通されて水素のような燃料と酸素または空気のような酸化剤それぞれに対する入口22;22a、22b及び出口24;24a、24bが備えられる。図面において、燃料電池1の内部で3次元膜電極組立体10の収容状態を示すために、ケーシング20は便宜上透明に示している。
【0027】
この場合、燃料の入口22a及び出口24aは第1副空間110に、酸化剤の入口22b及び出口24bは第2副空間120にそれぞれ連通されることで、第1副空間110及び第2副空間120それぞれが独立した移動通路として提供される。酸化剤の出口24bは、電気化学的反応による生成物である水蒸気または水の移動通路も兼ねている。
【0028】
前記ケーシング20は3次元膜電極組立体10を物理的に保護すると共に、入口22;22a、22b、及び出口24a、24bを除いて、3次元膜電極組立体10の2つの副空間110、120の外側開放部を完全に遮蔽する役割をするが、好ましくは樹脂材質で構成される。
【0029】
図5の実施例において、前記ケーシング20の外部には(+)、(−)の接続端子30が別途に提供されるが、それぞれの接続端子30は導線32によって2つの副空間110、120の内部へと対向するMEA薄膜130の拡散層136それぞれに電気的に連結される。MEA薄膜130の拡散層136は電気伝導性を有するため、図面の図示にもかかわらず、導線32の個数は任意に設定してもよい。
【0030】
一方、前記接続端子30はMEA薄膜130から発生した電気を外部回路に連結するための要素であるため、他の形態に具現してもよい。例えば、2つの副空間110、120のMEA薄膜130に連結される入口22;22a、22b及び出口24;24a、24bを伝導性材質で構成することで、このような接続端子30の役割を兼ねることができる(図示せず)。
【0031】
図6は、MEA薄膜130の動作概念図を示す。水素燃料が第1副空間110に供給され、第1副空間110の拡散層136及び触媒層134に到達すると、触媒作用で下記化学式(1)に従って、酸化反応によって水素陽イオン(proton)と電子に分離される。分離された電子は、触媒層134接触されている伝導性の拡散層136を介して外部の(−)、(+)接続端子30を経て第2副空間120の拡散層136及び触媒層134に移動され、水素陽イオンは電解質膜132を通過して第2副空間120の触媒層134に到達する。第2副空間120に供給された酸素酸化剤は、第2副空間120の拡散層136及び触媒層134に到達すると、下記化学式(2)に従って酸素の還元反応が発生し、水素陽イオンは酸素と結合して水を精製する。このような電気化学的酸化還元反応は、下記化学式(3)に従って水素の酸化反応として要約され、分離された電子が移動することで電気が発生する。
【0032】
【化1】
【0033】
【化2】
【0034】
【化3】
【0035】
燃料電池の製造
図7乃至図10を参照して、本発明の好ましい実施例による燃料電池1の製造方法ついて説明する。
【0036】
図7は、本発明の実施例による燃料電池1の製造工程図を示す。実施例による3次元燃料電池1の製造方法は、基本的に、(A)3次元膜電極組立体10を形成するステップと、(B)3次元膜電極組立体10を内部に収容し、燃料及び酸化剤の入口22及び出口24が備えられたケーシング20を形成するステップと、を含む。ちなみに、前記3次元膜電極組立体10は、2つの副空間110、120がMEA薄膜130によって分離区画された構造であり、図面において、3次元膜電極組立体10、その製造のためのテンプレート10’及び燃料電池1の構造は、2次元断面構造に図式化して表現している。
【0037】
前記ステップ(A)は、3次元膜電極組立体10に対応する幾何学的構造を有する3次元薄膜構造体テンプレート10’を製造した後、前記テンプレート10’に基づいて界面をMEA薄膜130で形成する過程であって、(A1)3次元薄膜構造体テンプレート10’を製造するステップと、(A2)前記テンプレート10’の表面に電解質膜132を形成した後(A2−1)、前記テンプレート10’を除去するステップ(A2−2)と、(A3)前記電解質膜132の両面に触媒層134を形成するステップと、(A4)前記触媒層134の表面に拡散層136を形成するステップと、を含む。
【0038】
一方、このようなステップ(A)の一部の単位工程は、上述した本発明者らなどの先行論文を介して開示した光リソグラフィを基にする製造方法を応用して行われるが(非特許文献8)、該当論文の内容は本発明の一部として一体に参照される。本発明は前記先行論文で言及された薄膜を特に電解質層、触媒層134、拡散層136で構成されたMEA薄膜130で具現されるのにその特徴があり、以下ではこの部分に関する細部工程について中心的に説明するが、このようなMEA薄膜130をナフィオン電解質膜132を基に構成することを例に挙げて説明する。但し、本発明は前記先行論文で言及されたP−surfaceと類似したTPMS構造体に限らず、上述したように多様な形態のTPMS構造体を含んでもよく、また、電解質膜132は実施例として例示されたフッ素樹脂系のナフィオン以外にもその用途に応じて金属、セラミック、その他のポリマーなどの材質で構成されてもよいことはもちろんである。
【0039】
前記ステップ(A1)において、液相のチオレンモノマー(Thiolene monomer)樹脂にマスクを介して4方向の紫外線を照射して陰刻状の固相ポリマーテンプレート10’を得た後、摂氏120のオーブンで2次硬化する。このような方法は、先に先行論文で言及した光リソグラフィを基に行われる。
【0040】
次に、前記ステップ(A2)において、前記テンプレート10’をNafion 5%溶解されたイソプロピルアルコール溶液(Nafion 5% wt.isopropylalchol solution)に浸してから出して硬化することで、テンプレート10’の表面にナフィオン薄膜132をコーティングする。コーティングされたナフィオン薄膜132の一部を研削などの方法で除去し、テンプレート10’の一部を外部に露出させた後、内部のチオレンテンプレート10’を水酸化ナトリウム(NaOH)でエッチングすることでナフィオン電解質薄膜構造体を得る。それによって、該当構造体の内部に電解質薄膜132を界面にして、2つの副空間110、120が形成される。
【0041】
次に、前記ステップ(A3)において、前記ナフィオン電解質薄膜構造体を炭素と白金粉末を含む5%Nafion溶解イソプロピルアルコール溶液(Nafion 5% wt.isopropylalchol solution)に浸してから出して硬化することで、電解質薄膜の両面に触媒層134を形成する。次に、過酸化水素溶液を利用して残留する有機物質を除去し、硫酸溶液を利用してナフィオン薄膜132内に水素陽イオンを予め形成して、蒸留水に保管する(非特許文献9)。
【0042】
最終的に、前記ステップ(A4)において、前記触媒層134の上に拡散層136を形成して、3次元膜電極組立体10を完成する。本発明において、拡散層136は伝導性多孔質レイヤーであって、その形成方法としては以下の2つを例に挙げて説明する。
【0043】
第1方法として、2種のポリマー混合溶液を触媒層134の表面に塗布硬化した後、いずれか一つのポリマーを除去し、無電解めっきを行う。例えば、下記表1のように2種類のポリマー(polymer)AとBを共に溶解する媒質(solvent for both A&B)を使用して製造したAとBの混合溶液に、ナフィオン薄膜132の上に触媒層134が形成された薄膜構造体を浸してから出して硬化した後、ポリマーAをエッチング液(Etchant)で除去して多孔性ポリマーB層を形成した後、該当多孔性ポリマーB層に金属めっき液(coating solution)を無電解めっきして、伝導性が与えられた拡散層136を形成する。図8は、このような方法で形成された拡散層136の電気顕微鏡の写真である。
【0044】
【表1】
【0045】
第2方法として、金属粉末を前記触媒層134に吸収させた後、めっきを行う。例えば、金属化合物としてニッケル化合物を還元して得られたニッケル粉末を触媒層134の表面に吸収させた後、その上に無電解めっきを行うことで伝導性を有する多孔質の拡散層136が得られるが、図9の(a)はこのような拡散層136の形成原理を示す概略図である。白金触媒層134を含んでいる基質であるナフィオン薄膜132は、図9の(b)に示したように疎水性のテフロン(tefron)バックボーン(backborn)構造領域と、親水性のスルホナート(sulfonate)領域で構成された一種の共重合体(copolymer)である。この場合、前記ステップA3における処理によってナフィオン薄膜132が水を吸収すると、親水性のスルホナート領域がイオンが入ることのできる一種の通路の役割をするということを利用して、この領域にニッケル粉末を形成し(図9(a)の(i)、(ii))、これをシード(seed)として活用してニッケル(Ni)無電解めっきを行って(図9(a)の(iii))、伝導性を有する多孔質の拡散層136を得る。
【0046】
第2方法をより詳しく説明すると以下のようである。まず、前記ナフィオン薄膜132の上に、触媒層134が形成された構造体を硫酸ニッケル(NiSO)のようなニッケル化合物水溶液に数乃至24時間の長時間浸し、ニッケルイオンを前記触媒層134のナフィオン親水性領域に吸収させる(図9(a)の(ii))。次に、ニッケル化合物水溶液を適切な方法で還元酸化反応を誘導し、還元されたニッケル粉末を前記親水性領域に形成する(図9(a)の(ii))。例えば、前記硫酸ニッケル水溶液を摂氏60度に加熱した後、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を添加してニッケル粉末を還元させることができるが、これに関する反応式は下記化学式4のようである。
【0047】
【化4】
【0048】
ここで、ニッケルイオンを親水性領域に誘引し還元する技術は、一種の含浸還元(impregnation−reduction)である(非特許文献10)。この際、還元されたニッケル粉末は周辺の多数の水酸基(OH)からの引力を受けて固まらずに分散され、安定化して存在する。このように還元されたニッケルを水酸基の作用で分散し有するようにする技術を、ポリオール工程(polyol process)という(非特許文献11)。図10は、ポリオール工程の一例を示す。このように、触媒層134の表面に形成されたニッケルと共に本来の触媒層134に含有された白金触媒も、図9(a)の(iii)による無電解めっきのシードの役割をするようになる。
【0049】
前記ステップ(B)は、3次元膜電極組立体10をパッケージングして、燃料電池1に必要な機能的要素を形成する過程であって、(B1)前記3次元膜電極組立体10の内部を充填材40で詰めるステップと、(B2)前記3次元膜電極組立体10の第1副空間110及び第2副空間120それぞれに独立して複数の棒材50を連結させるステップと、(B3)前記3次元膜電極組立体10及び複数の棒材50の外部を包むようにケーシング材20’を形成するステップと、(B4)前記棒材50及び充填材40を除去するステップと、を含む。この場合、前記充填材40、棒材50及びケーシング材20’は同種または異種の樹脂で構成されるが、ケーシング材20’は充填材40及び棒材50と異種材質で構成し、充填材40及び棒材50が科学的エッチングなどの方法で選択的に除去されるようにすべきである。
【0050】
前記ステップ(B1)において、充填材40は工程を行う中、3次元膜電極組立体10の変形を防止し後続工程でケーシング材20’が3次元膜電極組立体10の副空間に流入されることを防止する役割をするが、最終的に後続工程で除去される。このような充填材40の形成は、前記ステップ(A)を介して製造された3次元膜電極組立体10をチオレンのような液相樹脂に浸漬した後、該当液相樹脂をUVで1次硬化して、電気炉で120℃で6乃至12時間加熱する方式で硬化することで行われる。それによって、3次元膜電極組立体10の2つの副空間110、120は硬化された充填材40で詰められる。この場合、充填材40は前記3次元膜電極組立体10を製造するためのテンプレート10’と同じチオレン材質を使用してもよい。
【0051】
一方、図示していないが、接続端子30(図5)を別途の部品要素とする場合、3次元膜電極組立体10のMEA薄膜130と接続端子30を連結する銅線のような金属導線32(図5)を形成するステップを、充填材40を形成する前に選択的に更に含んでもよい。
【0052】
前記ステップ(B2)において、棒材50は燃料電池1において燃料及び酸化剤の入口22及び出口24を形成するためのモールドの役割をし、前記充填材40と同じく最終的に後続工程で除去される。このような棒材50の連結は、予め液相樹脂を棒状に硬化させて製作した後、3次元膜電極組立体102つの副空間110、120のそれぞれの入口22;22a、22b及び出口24;24a、24bの位置に取り付ける方式で行われる。
【0053】
この場合、前記棒材50を連結する前に前記充填材40の一部を除去し、MEA薄膜130の一部を露出させるステップを選択的に更に含んでもよい。詳しくは、ステップ(B1)の後に表面を研削して3次元膜電極組立体10を外面に露出させた後、1M水酸化ナトリウム溶液に5分の短時間で処理することで、外面に存在する硬化されたチオレン充填材40を部分的にエッチング除去し、MEA薄膜130の一部が外面に少し突出されるように露出させる。このように、充填材40の全体の表面を少しエッチングし除去してMEA薄膜130の一部を露出させた状態で、後続工程でケーシング材20’が露出されたMEA薄膜130と互いに堅固に結合されるようにすることで、2つの副空間110、120が互いに完全に隔離されて燃料及び酸化剤の漏洩及び混合が防止される。
【0054】
一方、前記棒材50は充填材40同種または異種材質で構成してもよい。充填材40と同種材質にする場合、棒材50と充填材40の除去を単一工程デで行うことができるが、前記ステップ(B1)の前にMEA薄膜130と接続端子30を連結するための導線32を別途に形成する過程が必要となる可能性がある。充填材40と異種材質にする場合、棒材50が除去された内面にMEA薄膜130と電気的に連結される伝導性薄膜(図示せず)を形成し、これが外部回路と連結される接続端子30の役割を兼ねるようにしてもよい。
【0055】
前記ステップ(B3)において、前記ケーシング材20’は燃料電池1をパッケージングして3次元膜電極組立体10を物理的に保護すると共に、3次元膜電極組立体10の2つの副空間110、120の外側開放部を完全に遮蔽する役割をする。ケーシング材20’の形成は、充填材40及び棒材50とは異なる別途の材質の液相樹脂、例えば、熱硬化性アクリル系ホットマウンティング樹脂(Thermoplastic Acrylic hot mounting resin)で3次元膜電極組立体10及び棒材50を一体に包んだ後、硬化する方式で行われる。
【0056】
最終的に、前記ステップ(B4)において、前記棒材50と充填材40を順次に除去することで燃料の入口22及び出口24が備えられ、3次元膜電極組立体10の副空間の空けられた構造の燃料電池1の製造過程を完了する。棒材50と充填材40の選択的除去は、ステップ(B3)の後にパッケージング材の外面をポリッシングして棒材50の一部を露出させた後、エッチング液を利用して棒材50及びそれに連結された副空間内の充填材40を順次に選択除去する方式で行われる。例えば、充填材40及び棒材50がチオレンの同種材質である場合、3M水酸化ナトリウム溶液を共用のエッチング液として使用してもよい。一方、充填材40及び棒材50が異種材質であれば、それぞれに対して選択性を有する別途のエッチング液を使用してもよく、必要に応じて充填材40を除去する前に棒材50が除去された内面にMEA薄膜130と電気的に連結される伝導性薄膜(図示せず)を形成し、これが外部回路と連結される接続端子30の役割を兼ねるようにしてもよい。
【0057】
上述したように本発明によると、燃料電池1の膜電極組立体10が従来の燃料電池に比べ単位体積当たりの表面積が大きいため、界面を介したイオン交換量に比例して電流生産量を増加することができ、2つの副空間110、120を区画するMEA薄膜130が柔らかな曲面を有するため、小型に製作してもそれぞれの副空間110、120に供給される燃料と酸化剤に対する高い透過性を維持することで、燃料電池1に対する軽量化、小型化及び高効率を同時に満足することができる。また、前記膜電極組立体10がTPMS形態を有する場合、平均極率が一定なため外部荷重が作用する際に局部的な応力集中が発生せず、ガス圧力や外部荷重に抵抗する機械的強度が高く、温度変化による熱膨張及び収縮に対する抵抗性が高いため、燃料電池1の外部包装や補強に伴う重さの増加を最小化することができる。
【0058】
これまでの説明は、本発明の具体的な実施例に関する。本発明による前記実施例は、説明の目的として開示された事項や本発明の範囲を制限するとは理解されず、該当技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質を逸脱せずに多様な変形及び修正が可能であることを理解できるはずである。よって、このような全ての修正と変更は、特許請求の範囲に開示された発明の範囲及びこれらの均等物に当たると理解される。
【符号の説明】
【0059】
1 燃料電池
10 3次元膜電極組立体
110 第1副空間
120 第2副空間
130 MEA薄膜
132 電解質膜
134 触媒層
136 拡散層
20 ケーシング
22、22a、22b 入口
24、24a、24b 出口
30 接続端子
32 導線
10’ テンプレート
20’ ケーシング材
40 充填材
50 棒材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10