特許第6532052号(P6532052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6532052
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】インクジェット装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20190610BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20190610BHJP
   B05B 12/00 20180101ALN20190610BHJP
   B25J 11/00 20060101ALN20190610BHJP
【FI】
   B05C11/10
   B05C5/00 101
   !B05B12/00 A
   !B25J11/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-7106(P2015-7106)
(22)【出願日】2015年1月16日
(65)【公開番号】特開2016-131914(P2016-131914A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】泉 小波
(72)【発明者】
【氏名】時任 静士
(72)【発明者】
【氏名】吉田 泰則
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−214040(JP,A)
【文献】 特表2012−506305(JP,A)
【文献】 特開平09−226120(JP,A)
【文献】 特開2010−192733(JP,A)
【文献】 特開2011−177922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00−21/00
B05B 12/00−13/06
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プッシュ式インクジェットヘッド、インクタンク、圧力制御部を備えるインク吐出ユニットが、多軸型ロボットの先端部に取り付けられ、
前記多軸型ロボットは、前記インクジェットヘッドの高さ、水平面内位置、および傾斜をそれぞれ独立して制御できる機能を有し、
前記インクタンクは、前記インクジェットヘッドにインクを供給し、
前記圧力制御部は、前記多軸型ロボットの動作状態に従って前記インクタンクに加えられる圧力を制御する機能を有する、インクジェット装置であって、
前記インクタンクがシリンジであり、
かつ、前記圧力制御部が、前記シリンジのピストンのハンドル部分をつかんで動かす機構であり、前記多軸型ロボットの動作状態に従って、前記インクタンクの容積を変化させることを特徴とするインクジェット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット装置に関し、詳しくは、エレクトロニクスデバイス製造に用いられるインクジェット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷型エレクトロニクス(プリンテッドエレクトロニクス、プリンタブルエレクトロニクスとも呼ばれる)は、従来のシリコンを用いたエレクトロニクスと比較して、低コストかつ低環境負荷な新しいエレクトロニクス分野として発展が期待されている。
その中でも、特にインクジェット技術は、非接触であることから被印刷物(「ワーク」と呼ぶ)の材質を選ばず、かつ機能性材料をオンデマンドで無駄なくパターニングできる技術であることから、印刷型エレクトロニクス分野への応用が期待されている。
【0003】
インクジェット技術は、インクを微小な液滴にして打ち出す(この動作を「吐出」と呼ぶ)ことができるインクジェットヘッド(「ヘッド」と呼ぶ)を、ワークに近接させて、ヘッドまたはワークを動かしながらインクの吐出を制御し、パターニングを行う。
ここで、ヘッドとワークを近接させる必要があることから、通常、ワークは平坦なものが用いられるが、ヘッドを多軸型ロボットに取り付けることにより、三次元的な曲面を有するワーク(「三次元ワーク」とよぶ)にも印刷できるようにする技術も公開されている。(特許文献1〜3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−111307号公報
【特許文献2】特表2011−514234号公報
【特許文献3】特開2009−113033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクジェット印刷における印刷品質は、着弾径、および着弾精度、の2点に主に依存する。
前記着弾径は、インクが吐出されるときの液滴の径に依存し、小さければ小さいほど緻密で高品位な印刷結果が得られる。また、前記着弾精度は、一般的に、インクが吐出されるときの液滴が有する運動エネルギーが大きいほど高い。なぜならば、液滴の運動エネルギーが大きい(質量および速度が大きい)ほど、空気中を真っ直ぐに飛翔する距離が長くなるため、意図した位置にインクを着弾させることができるためである。
ここで、液滴径が小さいと、着弾径は小さくなるが運動エネルギーも小さくなるので、液滴が空気中を真っ直ぐに飛翔する距離が短くなってしまう。これは、ヘッドとワークの間の距離(「ワーキングディスタンス」と呼ぶ)を短くしなければならないということを意味する。一般的な平面ワーク用のインクジェットヘッドは、ワーキングディスタンスは短くても問題ないため、液滴を微小化しやすいドロップオンデマンド(DoD)型が採用され、着弾径を小さくすることで印刷品質を向上させることが基本的な技術思想である。
【0006】
特許文献1および2では、ヘッドを多軸型ロボットに取り付けることで、三次元ワークにもインクジェット印刷できることが示されている。
しかしながら、インクジェットヘッドの方式に関する記載はなく、上記のワーキングディスタンスの問題については全く不明である。仮に、一般的な平面ワーク用のDoD型のインクジェットヘッドを利用することを仮定した場合、市販のヘッドはこのような用途は想定されていないため、ワーキングディスタンスは通常、かなり短い(典型的には1mm以下)。
この場合、曲面では局所的にワーキングディスタンスが長くなってしまう箇所がどうしても存在してしまうため、結果的に着弾位置ずれが発生しやすくなる。印刷型エレクトロニクスの場合、たった一箇所の着弾位置ずれであっても、電気的な短絡または断線となり、その結果、エレクトロニクス素子全体の機能不全を引き起こすため、この問題は深刻である。
【0007】
特許文献3では、多軸型ロボットにコンティニュアス型インクジェット(CIJ)を取り付けた例が開示されている。このCIJ型は、インクに圧力をかけてノズルから高速で飛び出させ、その後液滴に分割した後、高電界で液滴の軌道を曲げて着弾位置を調整する方式であるため、ワーキングディスタンスは原理的に十分確保できる。
しかし、CIJ型は着弾径が一般的に大きく(典型的には1mm程度)、印刷型エレクトロニクスに要求される、精度の高い印刷には不向きである。さらに、CIJ型は、インク液滴を帯電させる必要があること、大気中を常に循環させることによるインクの性質変化に対する対策が必要であること等、使用されるインクに要求される条件がDoD型よりはるかに厳しいため、印刷エレクトロニクスに適したCIJ型インクジェット用インクを開発することは至難であることが実情である。
【0008】
すなわち、従来の技術にあっては、三次元ワークに、印刷エレクトロニクスで要求される高い印刷品質でインクジェット印刷を行うことができないという技術的課題があった。
【0009】
本発明者らは、上記技術的課題を解決するために、次のような技術思想に基づき、鋭意研究を重ねた。
すなわち、着弾径の小ささと、着弾精度の高さを両立するために、液滴を小さくした上で、速度を上げるという技術思想である。
その結果、三次元ワークに、印刷エレクトロニクスで要求される高い印刷品質でインクジェット印刷を行うことができる装置の発明を想到するに至ったものである。
【0010】
本発明は、このような情況のもとでなされた発明であり、印刷エレクトロニクスで要求される高い印刷品質のインクジェット印刷が行えるインクジェット装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかるインクジェット装置は、プッシュ式インクジェットヘッド、インクタンク、圧力制御部を備えるインク吐出ユニットが、多軸型ロボットの先端部に取り付けられ、前記多軸型ロボットは、前記インクジェットヘッドの高さ、水平面内位置、および傾斜をそれぞれ独立して制御できる機能を有し、前記インクタンクは、前記インクジェットヘッドにインクを供給し、前記圧力制御部は、前記多軸型ロボットの動作状態に従って前記インクタンクに加えられる圧力を制御する機能を有する、インクジェット装置であって、前記インクタンクがシリンジであり、かつ、前記圧力制御部が、前記シリンジのピストンのハンドル部分をつかんで動かす機構であり、前記多軸型ロボットの動作状態に従って、前記インクタンクの容積を変化させることを特徴としている。
尚、プッシュ式インクジェットヘッドは、圧電素子式インクジェットヘッドを意味している。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、三次元ワークに、印刷エレクトロニクスで要求される高い印刷品質でインクジェット印刷を行うことができる。
本発明によって、ワークの材質を選ばないというインクジェット印刷技術の利点がさらに拡張され、様々な形状のワークに、例えば、直接電子回路を印刷することが実現される。
本発明は様々な技術分野に応用が可能であるが、代表的な例を一例挙げれば、ガラスや射出形成樹脂等の曲面を有する車載部品に対して電子回路を直接形成する技術分野が、市場も大きく有望である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明にかかる第1実施形態の外観を説明する図。
図2図1に示したインクジェット吐出ユニットの構成を示す概略構成図。
図3図2に示したプッシュ式インクジェットヘッドの構成を示す概略構成図。
図4】本発明の第2実施形態にかかるインクジェット吐出ユニットの構成を示す概略構成図。
図5】本発明にかかる第3実施形態の外観を説明する図。
図6図5に示すインクジェット吐出ユニットの構成を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、ここで説明される実施の形態は、本発明にかかる技術思想を具体化し説明を容易にするためになされるものであって、形態を限定するものではない。また、本発明にかかる技術思想の範囲内で、これから説明される全ての技術要素は、適宜組み合わせることができる。
(第1実施形態)
【0018】
本実施の形態では、本発明にかかる最も基本的な技術要素群およびそれらの相互の関係性について説明する。
本発明にかかる最も基本的な技術要素は、図1および図2に示すように、多軸型ロボット1と、プッシュ式インクジェットヘッド2と、インクタンク3と、圧力制御部4である。本実施形態の説明においては、本発明にかかる技術思想の一例として、プッシュ式インクジェットヘッド2、インクタンク3、および圧力制御部4をまとめてインクジェット吐出ユニット5を形成し、そのインクジェット吐出ユニット5を多軸型ロボット1の先端部に取り付ける形態を取り上げる。
すなわち、プッシュ式インクジェットヘッド2は、インクジェット吐出ユニット5を介して多軸型ロボット1に接続される形となっているが、本発明は特にこの構成に限定されるものでなく、例えば、多軸型ロボット1に直接、接続されるものであっても良い。
【0019】
更に具体的に、図1を参照して、多軸型ロボット1の各部について説明する。前記多軸型ロボット1は、台座部10、第1の回転軸11、第2の回転軸12、第3の回転軸13、第4の回転軸14、第5の回転軸15、第6の回転軸16、およびインクジェット吐出ユニット5を有している。
なお、本実施形態における装置構成の意図は、インクジェット吐出ユニット5の高さ、水平位置、および傾斜をできるだけ自由に設定できるようにするためのものであるので、軸数をこれより多くすれば、より高い自由度で位置決めを行うことができるので、好ましい。また、回転機構だけではなく、適宜直動機構に置き換えまたは追加することもできる。一方、軸数を少なくすれば、それだけ位置決めが簡単になり、さらに装置のコストを低減することができるので、好ましい。このように、装置構成は、印刷対象や印刷の目的に合わせて、適宜変更することができる。
【0020】
次に、図2を参照して、本実施の形態におけるインクジェット吐出ユニット5の各部について説明する。
前記インクジェット吐出ユニット5は、プッシュ式インクジェットヘッド2、インクタンク3、および圧力制御部4を有する。
前記プッシュ式インクジェットヘッド2は、インクジェット吐出ユニット5の先端に取り付けられ、インクをワークに吐出する機能を持つ。
前記インクタンク3は、プッシュ式インクジェットヘッド2と接続され、プッシュ式インクジェット2にインクを供給する機能を持つ。
前記圧力制御部4は、インクタンク3と接続され、多軸型ロボット1の動作状態に合わせてインクタンク3にかけるガス圧を調整する機能を持つ。
【0021】
本実施の形態におけるインクジェット吐出ユニット5の動作機構は、次のようなものである。
まず、プッシュ式インクジェットヘッド2は、その吐出状態がインクの供給圧力に大きく影響を受けるものであるため、インクの供給圧力は制御されるべきものである。本実施の形態で説明する装置構成は、インク供給圧力の制御手段として、ガス圧を利用した場合の例である。
【0022】
前記インクの供給圧力は、インクタンク3が密閉系であっても、インクタンク3内の液面と、プッシュ式インクジェットヘッド2のノズルの高さの差によって、若干の影響を受ける。
この高さの差は、インクジェット吐出ユニット5の傾斜に対して変化するため、圧力制御部4は、多軸型ロボット1の動作状態から割り出したインクジェット吐出ユニット5の傾斜量に対し、最適な値となるようにインクタンク3に供給するガス圧を制御する。
これによって、プッシュ式インクジェットヘッド2は、インクジェット吐出ユニット5の傾斜によらず、安定したインク吐出が可能となる。
【0023】
尚、前記インクタンク3は、インクジェット吐出ユニット5の傾斜によらず、常に水平を保つ機構を有することができる。これにより、インクジェット吐出ユニット5の傾斜が変化しても、プッシュ式インクジェットヘッド2の安定したインク吐出が可能となる。
また、前記圧力制御部4は、インクジェット吐出ユニット5の傾斜に対する制御だけではなく、任意のタイミングで任意の圧力に調整できる機能を持っていても良い。特に、任意のタイミングで加圧することができるようにすれば、プッシュ式インクジェットヘッド2のノズルクリーニングやエア抜き等、装置を実際に使用する上で好ましい機能を実装することができる。
【0024】
次に、本発明にあっては、プッシュ式インクジェットヘッド2が用いられる点に特徴がある。本発明は、前記したように、着弾径の小ささと着弾精度の高さを両立するために、液滴を小さくした上で、速度を上げるという技術思想に基づくものである。
この思想のもとで、三次元ワークに対する最適なインクジェット方式について鋭意研究を行った結果、プッシュ式インクジェットヘッドが最適であるという結論を得たものである。このプッシュ式は、ピストン式とも呼ばれ、DoD型インクジェットの一つに分類されている。プッシュ式インクジェットヘッドの特徴は、液滴を押し出す力を大きくしやすいこと、およびその力を効率的に液滴に乗せることができる点である。
【0025】
前記プッシュ式インクジェットヘッド2の詳細な構成について、図3に基づいて説明する。
図3は、本発明にかかるプッシュ式インクジェットヘッド2の構造を示しており、本発明にかかるプッシュ式インクジェットヘッド2は、オリフィス21と、インク貯留部22と、隔壁23と、圧電素子24とを有する。
【0026】
そして、我々はさらに、第1の特徴である「力の大きさ」について、圧電素子24の形状により得られることを見出した。
即ち、圧電素子24は、電圧を印加したときに、長辺方向が最も大きく変位するように、隔壁23の反対側で固定される構造となっている。
そして、その変位量は、圧電素子24が長いほど大きくなり、圧電素子24の最長辺の長さが最短辺の長さの5倍以上である直方体の形状である場合に、本発明にかかる装置において十分な力を有する。
【0027】
そして、第2の特徴である「力を効率的に液滴に乗せること」については、図2に示すように、圧電素子24と、隔壁23と、インク貯留部22と、オリフィス21が、同じ直線上に配置されることに起因する。
即ち、圧電素子24で得られた力は、隔壁23を通じてインク貯留部22に伝えられ、インク貯留部22内を圧力波として伝播し、オリフィス21を通じて、液滴を飛翔させる運動エネルギーとなる。このとき、圧電素子24と、隔壁23と、インク貯留部22と、オリフィス21が、同じ直線上に配置されることによって、圧電素子24で発生した力が効率よく液滴に伝えられる。
逆に、たとえば、それぞれが同じ直線上になかったとした場合、発生した圧力波はインク貯留部22の内部で反射、減衰を繰り返してオリフィス21に到達することになり、その分、液滴に与える運動エネルギーは小さくなり、好ましくない。
【0028】
このように、圧電素子24で発生した力が効率よく液滴に与えられるようにした上で、オリフィス21の径を小さくすることで、液滴径が小さく、かつ速度を上げることができる。
具体的には、液滴径を小さくできることにより、着弾径は100μmとすることができ、同時に、液滴速度を早くできることにより、かつワーキングディスタンスを30mm以上とすることができる。
ここで、着弾径、およびワーキングディスタンスをそれぞれ独立して従来技術と比較すると、それぞれそれほど優れた値ではないかもしれない。しかし、本発明のように、この2つを両立することができることこそが重要である。
【0029】
なお、図2に示すようなインクジェッットヘッドの構造は、インク貯留部22が存在することにより、同一ヘッドに複数のノズルを並べる場合には、ノズル間距離を短くすることが難しく、微細化の観点から見ると一見不利であるように見えるため、これまであまり省みられなかった構造である。
しかし、この構造こそが、着弾径の小ささと着弾精度の高さを両立することを可能とし、三次元ワークに対する印刷エレクトロニクスを実現する優れたソリューションとなる。
(第2実施形態)
【0030】
この第2の実施形態においては、インク供給圧力に関する別の方法について説明する。
第1実施形態においては、インクタンク3内に充填されたガスの圧力を制御することで、インクの供給圧力を制御する例を示したが、この第2の実施形態では、インクタンク3の容積を変化させることで、インクの供給圧力を制御することに特徴がある。
すなわち、インクの供給圧力を制御するためにガス圧を介さず、直接インクの圧力を制御することが、第2の実施形態における技術思想である。
したがって、これから示す装置構成は、上記技術思想を実現するための具体例の一つに過ぎず、実際に装置を構成する際には、上記技術思想を逸脱しない範囲内で、他の様々な構成をとることができることは明らかである。
【0031】
本実施の形態における技術思想は、インクジェット吐出ユニット5を、例えば図4に示すような構成とすることで具体化される。
すなわち、インクジェット吐出ユニット5は、プッシュ式インクジェットヘッド2と、インクタンク3と、圧力制御部4と、を有し、インクタンク3は、プッシュ式インクジェットヘッド2にインクを供給する機能を有し、圧力制御部4は、多軸型ロボット1の動作状態に従って、インクタンク3の容積を変化させる機能を有する。
さらに具体的には、インクタンク3はシリンジであり、圧力制御部4は、シリンジのピストンのハンドル部分をつかんで動かす機構とすることができる。
【0032】
このような構成とすることで、ガスを介さずに直接インクの圧力を制御することができるので、インク供給圧力を精度よく制御することが可能となる。
さらに、三次元ワークに印刷するために、インクジェット吐出ユニット5が多軸型ロボット1の動きに合わせて動き、かつ様々な傾斜角度となることを鑑みると、インクタンク3の内部が全てインクで満たされることは、多軸型ロボット1の動きによってインクがかき回されることを最小限に抑えることができるため、好ましい。
さらに、複雑な制御機構を用いることなく、直動部品だけで圧力制御部4を構成できる点でも有利である。
(第3実施形態)
【0033】
第3の実施形態においては、インク供給圧力に関するさらに別の方法について説明する。
第3の実施形態では、プッシュ式インクジェットヘッド2と、インクタンク3の高さの差を、多軸型ロボット1の動作状態に従って制御することに特徴がある。すなわち、インクの供給圧力を制御するために、大気圧を利用することが、本実施の形態における技術思想である。
したがって、これから示す装置構成は、上記技術思想を実現するための具体例の一つに過ぎず、実際に装置を構成する際には、上記技術思想を逸脱しない範囲内で、他の様々な構成をとることができることは明らかである。
【0034】
この第3実施形態は、前記インクジェット吐出ユニット5を、例えば図6に示すような構成とし、同時に、多軸型ロボット1を、例えば図5に示すような構成とすることで具体化される。
すなわち、インクジェット吐出ユニット5は、プッシュ式インクジェットヘッド2を有し、インクタンク3は、プッシュ式インクジェットヘッド2にインクを供給する機能を有し、圧力制御部4は、床面または多軸型ロボット1の側面に取り付けられ、多軸型ロボット1の動作状態に従って、インクタンク3を昇降させる機能を有する。
なお、圧力制御部4が取り付けられる位置は、多軸型ロボット1の動きによって高さが変化しない位置であることが好ましい。具体的には、床面、台座部10、第1の回転軸11により回転する部分の側面、等である。これにより、多軸型ロボット1がどのような動作状態であっても、インクタンク3を最適な高さに設定することができる。
【0035】
このような構成とすることで、ガスや液体の圧力を制御する機構を用いずに、簡便に装置を構成することが可能となる。
さらに、インクタンク3がインクジェット吐出ユニット5の外に配置されることで、インク残量の確認やインクの補充等が簡便に行えることが、この構成の大きな利点となる。
【符号の説明】
【0036】
1・・・多軸型ロボット
2・・・プッシュ式インクジェットヘッド
3・・・インクタンク
4・・・圧力制御部
5・・・インクジェット吐出ユニット
10・・・台座部
11・・・第1の回転軸
12・・・第2の回転軸
13・・・第3の回転軸
14・・・第4の回転軸
15・・・第5の回転軸
16・・・第6の回転軸
21・・・オリフィス
22・・・インク貯留部
23・・・隔壁
24・・・圧電素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6