特許第6532061号(P6532061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6532061-光計測装置、光計測方法及び回転機械 図000003
  • 特許6532061-光計測装置、光計測方法及び回転機械 図000004
  • 特許6532061-光計測装置、光計測方法及び回転機械 図000005
  • 特許6532061-光計測装置、光計測方法及び回転機械 図000006
  • 特許6532061-光計測装置、光計測方法及び回転機械 図000007
  • 特許6532061-光計測装置、光計測方法及び回転機械 図000008
  • 特許6532061-光計測装置、光計測方法及び回転機械 図000009
  • 特許6532061-光計測装置、光計測方法及び回転機械 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6532061
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】光計測装置、光計測方法及び回転機械
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/14 20060101AFI20190610BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20190610BHJP
   F01D 11/14 20060101ALI20190610BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20190610BHJP
   F02C 7/28 20060101ALI20190610BHJP
【FI】
   G01B11/14 Z
   F01D25/00 V
   F01D25/00 W
   F01D25/00 B
   F01D11/14
   F02C7/00 A
   F02C7/28 A
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-54851(P2016-54851)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-167079(P2017-167079A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】大西 智之
(72)【発明者】
【氏名】宮本 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】近藤 明生
【審査官】 齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−191374(JP,A)
【文献】 特開2015−1414(JP,A)
【文献】 特開昭59−142408(JP,A)
【文献】 米国特許第4766323(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/14
F01D 11/14
F01D 25/00
F02C 7/00
F02C 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光センサにおいて、先端が所定間隔で配置された1対の第1の発光ファイバと1対の第1の受光ファイバとを有し、対同士が三角測量における三角形の二辺を形成するように傾斜して配置された1対の第1のファイバ群と、
前記光センサにおいて、先端が前記所定間隔で配置された1対の第2の発光ファイバと1対の第2の受光ファイバとを有し、対同士が平行に配置された1対の第2のファイバ群と、
前記1対の第1の発光ファイバ及び前記1対の第2の発光ファイバに光を出力して、前記1対の第1の発光ファイバから2本の斜め光線を出射させ、前記1対の第2の発光ファイバから2本の平行光線を出射させる光源と、
回転体の外周面に設けられ、前記2本の斜め光線を前記1対の第1の受光ファイバへ各々反射し、前記2本の平行光線を前記1対の第2の受光ファイバへ各々反射するターゲットと、
前記1対の第1の受光ファイバと各々接続され、各々で受光した前記光の強度を検出する1対の第1の受光素子と、
前記1対の第2の受光ファイバと各々接続され、各々で受光した前記光の強度を検出する1対の第2の受光素子と、
前記1対の第1の受光素子及び前記1対の第2の受光素子で各々検出した前記強度の変化を示す4つの波形に基づいて、熱伸びの影響を受けた前記所定間隔を含む演算を行う演算部とを有する
ことを特徴とする光計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光計測装置において、
前記演算部は、
4つの前記波形における立ち上がりと立ち下がりの2つの時間から第1の時間差を各々求め、4つの前記第1の時間差の中の1つ又は複数の平均を用いて、前記ターゲットの周速を求め、
前記1対の第2の受光素子で検出した2つの前記波形に基づいて、前記2本の平行光線の各々を前記ターゲットが通過する2つの時間から第2の時間差を求め、当該第2の時間差を用いて、熱伸びの影響を受けた前記所定間隔を求め、
前記1対の第1の受光素子で検出した2つの前記波形に基づいて、前記2本の斜め光線の各々を前記ターゲットが通過する2つの時間から第3の時間差を求め、当該第3の時間差を用いて、前記1対の第1の発光ファイバの先端から前記ターゲットまでの距離を求める
ことを特徴とする光計測装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の光計測装置において、
前記光源は、第1の光を前記1対の第1の発光ファイバに出力する第1の光源と、前記第1の光とは異なる波長の第2の光を前記1対の第2の発光ファイバに出力する第2の光源とを有し、
前記1対の第1の受光ファイバと前記1対の第1の受光素子との間に、前記第1の光のみを透過する第1のフィルタを設け、
前記1対の第2の受光ファイバと前記1対の第2の受光素子との間に、前記第2の光のみを透過する第2のフィルタを設けた
ことを特徴とする光計測装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の光計測装置を備えた
ことを特徴とする回転機械。
【請求項5】
先端が所定間隔で配置された1対の第1の発光ファイバと1対の第1の受光ファイバとを有する1対の第1のファイバ群を、対同士が三角測量における三角形の二辺を形成するように傾斜して光センサに配置し、
先端が前記所定間隔で配置された1対の第2の発光ファイバと1対の第2の受光ファイバとを有する1対の第2のファイバ群を、対同士が平行になるように前記光センサに配置し、
光源から前記1対の第1の発光ファイバ及び前記1対の第2の発光ファイバに光を出力して、前記1対の第1の発光ファイバから2本の斜め光線を出射させ、前記1対の第2の発光ファイバから2本の平行光線を出射させ、
回転体の外周面に設けられたターゲットを用いて、前記2本の斜め光線を前記1対の第1の受光ファイバへ各々反射し、前記2本の平行光線を前記1対の第2の受光ファイバへ各々反射し、
前記1対の第1の受光ファイバと各々接続された1対の第1の受光素子を用いて、各々で受光した前記光の強度を検出し、
前記1対の第2の受光ファイバと各々接続された1対の第2の受光素子を用いて、各々で受光した前記光の強度を検出し、
前記1対の第1の受光素子及び前記1対の第2の受光素子で各々検出した前記強度の変化を示す4つの波形に基づいて、熱伸びの影響を受けた前記所定間隔を含む演算を行う
ことを特徴とする光計測方法。
【請求項6】
請求項5に記載の光計測方法において、
4つの前記波形における立ち上がりと立ち下がりの2つの時間から第1の時間差を各々求め、4つの前記第1の時間差の中の1つ又は複数の平均を用いて、前記ターゲットの周速を求め、
前記1対の第2の受光素子で検出した2つの前記波形に基づいて、前記2本の平行光線の各々を前記ターゲットが通過する2つの時間から第2の時間差を求め、当該第2の時間差を用いて、熱伸びの影響を受けた前記所定間隔を求め、
前記1対の第1の受光素子で検出した2つの前記波形に基づいて、前記2本の斜め光線の各々を前記ターゲットが通過する2つの時間から第3の時間差を求め、当該第3の時間差を用いて、前記1対の第1の発光ファイバの先端から前記ターゲットまでの距離を求める
ことを特徴とする光計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光計測装置、光計測方法及び回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
タービンなどの回転機械の性能向上のためには、回転部(例えば、ブレード)と静止部(例えば、ケーシング)との間に設けられた隙間(チップクリアランス)を小さくする必要がある。そのクリアランスの計測として、光学式のクリアランス計測があり、光学式のクリアランス計測では、ブレード(翼)や反射ターゲットの通過タイミングを検知し、その時間差情報を三角測量の要領で計算している。
【0003】
光学式のクリアランス計測では、図5(a)に示すような光ファイバ式の光センサ60が使用されている。この光センサ60は、三角測量における三角形の二辺を形成するように傾斜して配置された1対の光ファイバ群61、62を有している(後述の図6参照)。光ファイバ群61は、図5(b)に示すように、光を照射する1つの発光ファイバ61aと、光を受光する複数の受光ファイバ61bとからなり、1つの発光ファイバ61aを中央とし、その周囲に複数の受光ファイバ61bを配置した構成としている(特許文献1)。また、光ファイバ群62も、発光ファイバ62aと受光ファイバ62bとからなり、光ファイバ群61と同等の構成である。
【0004】
上記光センサ60の計測原理について、図6及び図7を参照して説明する。ここでは、反射ターゲットとなるブレード71の先端部分を計測するものとする。計測時においては、光ファイバ群61の発光ファイバ61a及び光ファイバ群62の発光ファイバ62aから各々光を照射している。そして、回転するブレード71が位置Cを通過すると、時間t1において、光ファイバ群61の受光ファイバ61bがブレード71から反射した光を受光することになる。その後、回転するブレード71が位置Dを通過すると、時間t2において、光ファイバ群62の受光ファイバ62bがブレード71から反射した光を受光することになる。
【0005】
このようにして、1対の発光ファイバ61a、62aからの2つの光線の間をブレード71が通過すると、図7のグラフに示すように、時間差Δtずれた2つの波形(反射光の強度の変化)が観測され、これにより、時間差Δtを求めることができる。
【0006】
ここで、図6において、光センサ60の先端からブレード71の先端までの距離、即ち、クリアランスをdとする。また、1対の発光ファイバ61a及び62aから出た2つの光線の成す角度をαとする。また、1対の発光ファイバ61a及び62a同士の先端での間隔、即ち、間隔ABをLとする。そして、ブレード71の周速をv、ブレード71の回転半径をR、ブレード71の回転数をNとすると、間隔CDは、v×Δt=2×R×π×N×Δtであり、クリアランスdは、以下の式1により求めることができる。なお、回転数Nは、別途、パルス計等を用いて取得している。
【0007】
【数1】
【0008】
つまり、「角度α」、「間隔AB」及び「間隔CD」は、三角測量に必要なパラメータであり、図8に示すように、各々、「小さい三角形の角度」、「小さい三角形の底辺」及び「大きい三角形の底辺」に該当する。そして、角度α及び間隔ABは既知のパラメータであるので、2つの波形の時間差Δtにより、間隔CDを求め、その結果、クリアランスdを求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4429705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したクリアランス計測を高温雰囲気で計測を行う場合、以下の(1)及び(2)の誤差要因が課題となる。
(1)光センサ60の熱伸びにより間隔ABが変化し、計測値に誤差が乗る。
(2)回転部の熱伸びや遠心伸びにより半径Rが変化して、計測値に誤差が乗る。
【0011】
上記(1)について、図8を参照して具体的に説明する。例えば、ステンレス製の筐体の光センサ60が600℃に加熱された場合、熱伸び前の間隔ABに対して、600℃での間隔A11は1%増加する。この場合、2つの光線を横切る時間差も1%増加することになる。つまり、熱伸び前の間隔CDに対し、600℃での間隔C11が1%増加していることになる。
【0012】
このような状態において、熱伸び前の三角測量の三角形では、見かけ上、2つの光線(線分OAの延長線と線分OBの延長線)上の位置C2と位置D2をブレード71が通過したことになる。これにより、クリアランスが本来のdではなく、それより大きいd1で算定されてしまう。このように、光センサ60側の熱伸びにより間隔ABが変化すると、計測値に誤差が乗ることになる。
【0013】
上記(2)についても、図8を参照して具体的に説明する。上述したように、周速v=2×R×π×Nであり、周速vは、パルス計等を用いて取得した回転数Nと半径Rに基づいて求めている。そして、この半径Rが、遠心伸びや熱伸びにより変化するため、誤差の原因となる。例えば、ブレード71の素材の線膨張係数が1.5×10-5である場合、温度が600℃上昇すると、熱伸び(熱ひずみ)は、1.5×10-5×600×100=0.9%となる。これは、同じ回転数Nであっても、熱伸びにより、周速vが0.9%増加することを意味する。つまり、熱伸び前の間隔CDに対し、600℃上昇後の間隔C11が0.9%増加していることになる。
【0014】
このような状態において、熱伸び前の三角測量の三角形では、見かけ上、2つの光線(線分OAの延長線と線分OBの延長線)上の位置C2と位置D2をブレード71が通過したことになる。これにより、クリアランスが本来のdではなく、それより大きいd1で算定されてしまう。このように、回転側の熱伸びや遠心伸びにより半径Rが変化すると、周速vや距離CDが変化し、計測値に誤差が乗ることになる。
【0015】
以上のように、本来のクリアランスdと上述した算定によるd1との差は、計測誤差の要因として影響がある。従って、熱伸びや遠心伸びに起因する誤差を解消することが望まれている。
【0016】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、熱伸びや遠心伸びに起因する誤差を解消することができる光計測装置、光計測方法及び回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決する第1の発明に係る光計測装置は、
光センサにおいて、先端が所定間隔で配置された1対の第1の発光ファイバと1対の第1の受光ファイバとを有し、対同士が三角測量における三角形の二辺を形成するように傾斜して配置された1対の第1のファイバ群と、
前記光センサにおいて、先端が前記所定間隔で配置された1対の第2の発光ファイバと1対の第2の受光ファイバとを有し、対同士が平行に配置された1対の第2のファイバ群と、
前記1対の第1の発光ファイバ及び前記1対の第2の発光ファイバに光を出力して、前記1対の第1の発光ファイバから2本の斜め光線を出射させ、前記1対の第2の発光ファイバから2本の平行光線を出射させる光源と、
回転体の外周面に設けられ、前記2本の斜め光線を前記1対の第1の受光ファイバへ各々反射し、前記2本の平行光線を前記1対の第2の受光ファイバへ各々反射するターゲットと、
前記1対の第1の受光ファイバと各々接続され、各々で受光した前記光の強度を検出する1対の第1の受光素子と、
前記1対の第2の受光ファイバと各々接続され、各々で受光した前記光の強度を検出する1対の第2の受光素子と、
前記1対の第1の受光素子及び前記1対の第2の受光素子で各々検出した前記強度の変化を示す4つの波形に基づいて、熱伸びの影響を受けた前記所定間隔を含む演算を行う演算部とを有する
ことを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決する第2の発明に係る光計測装置は、
上記第1の発明に記載の光計測装置において、
前記演算部は、
4つの前記波形における立ち上がりと立ち下がりの2つの時間から第1の時間差を各々求め、4つの前記第1の時間差の中の1つ又は複数の平均を用いて、前記ターゲットの周速を求め、
前記1対の第2の受光素子で検出した2つの前記波形に基づいて、前記2本の平行光線の各々を前記ターゲットが通過する2つの時間から第2の時間差を求め、当該第2の時間差を用いて、熱伸びの影響を受けた前記所定間隔を求め、
前記1対の第1の受光素子で検出した2つの前記波形に基づいて、前記2本の斜め光線の各々を前記ターゲットが通過する2つの時間から第3の時間差を求め、当該第3の時間差を用いて、前記1対の第1の発光ファイバの先端から前記ターゲットまでの距離を求める
ことを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決する第3の発明に係る光計測装置は、
上記第1又は第2の発明に記載の光計測装置において、
前記光源は、第1の光を前記1対の第1の発光ファイバに出力する第1の光源と、前記第1の光とは異なる波長の第2の光を前記1対の第2の発光ファイバに出力する第2の光源とを有し、
前記1対の第1の受光ファイバと前記1対の第1の受光素子との間に、前記第1の光のみを透過する第1のフィルタを設け、
前記1対の第2の受光ファイバと前記1対の第2の受光素子との間に、前記第2の光のみを透過する第2のフィルタを設けた
ことを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決する第4の発明に係る回転機械は、
上記第1〜第3のいずれか1つの発明に記載の光計測装置を備えた
ことを特徴とする。
【0021】
上記課題を解決する第5の発明に係る光計測方法は、
先端が所定間隔で配置された1対の第1の発光ファイバと1対の第1の受光ファイバとを有する1対の第1のファイバ群を、対同士が三角測量における三角形の二辺を形成するように傾斜して光センサに配置し、
先端が前記所定間隔で配置された1対の第2の発光ファイバと1対の第2の受光ファイバとを有する1対の第2のファイバ群を、対同士が平行になるように前記光センサに配置し、
光源から前記1対の第1の発光ファイバ及び前記1対の第2の発光ファイバに光を出力して、前記1対の第1の発光ファイバから2本の斜め光線を出射させ、前記1対の第2の発光ファイバから2本の平行光線を出射させ、
回転体の外周面に設けられたターゲットを用いて、前記2本の斜め光線を前記1対の第1の受光ファイバへ各々反射し、前記2本の平行光線を前記1対の第2の受光ファイバへ各々反射し、
前記1対の第1の受光ファイバと各々接続された1対の第1の受光素子を用いて、各々で受光した前記光の強度を検出し、
前記1対の第2の受光ファイバと各々接続された1対の第2の受光素子を用いて、各々で受光した前記光の強度を検出し、
前記1対の第1の受光素子及び前記1対の第2の受光素子で各々検出した前記強度の変化を示す4つの波形に基づいて、熱伸びの影響を受けた前記所定間隔を含む演算を行う
ことを特徴とする。
【0022】
上記課題を解決する第6の発明に係る光計測方法は、
上記第5の発明に記載の光計測方法において、
4つの前記波形における立ち上がりと立ち下がりの2つの時間から第1の時間差を各々求め、4つの前記第1の時間差の中の1つ又は複数の平均を用いて、前記ターゲットの周速を求め、
前記1対の第2の受光素子で検出した2つの前記波形に基づいて、前記2本の平行光線の各々を前記ターゲットが通過する2つの時間から第2の時間差を求め、当該第2の時間差を用いて、熱伸びの影響を受けた前記所定間隔を求め、
前記1対の第1の受光素子で検出した2つの前記波形に基づいて、前記2本の斜め光線の各々を前記ターゲットが通過する2つの時間から第3の時間差を求め、当該第3の時間差を用いて、前記1対の第1の発光ファイバの先端から前記ターゲットまでの距離を求める
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、光センサにおいて、熱伸びの影響を受けた間隔を求めるので、光センサ側の熱伸びに起因する誤差を解消することができる。また、回転側の周速を求めて、回転側の半径を演算に使用しないようにするので、回転側の熱伸びや遠心伸びに起因する誤差を解消することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る光計測装置及び回転機械の実施形態の一例(実施例1)を示す概略図である。
図2図1に示した光計測装置を示す図であり、(a)は装置構成を示す構成図、(b)は光ファイバ群の配置を示す図である。
図3図1に示した光計測装置で計測した反射光量を示すグラフであり、(a)は斜め2光線の反射光量、(b)は平行2光線の反射光量である。
図4】本発明に係る光計測装置の実施形態の他の一例(実施例2)を示す図であり、装置構成を示す構成図である。
図5】従来の光ファイバ式の光センサを示す図であり、(a)は、その先端部の斜視図、(b)は、その光ファイバ群の拡大図である。
図6図5に示した光センサの計測原理を説明する図である。
図7図5に示した光センサで計測した反射光の強度の変化を示すグラフである。
図8図5に示した光センサにおける計測の課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1図4を参照して、本発明に係る光計測装置、光計測方法及び回転機械の実施形態を説明する。なお、ここでは、回転機械の回転体として、ロータを例示しているが、本発明は、回転体として、シャフトやタービンなども使用可能である。
【0026】
[実施例1]
本実施例の光計測装置は、図1に示すように、ターゲット13、光センサ20、光信号処理部30、光信号演算部40を有している。また、回転機械10は、静止部であるケーシング11と、ケーシング11の内部に回転可能に支持された、回転部であるロータ12(回転体)とを有している。光センサ20は、ケーシング11に取り付けられ、ロータ12の外周面12aを望むように配置されている。
【0027】
ターゲット13は、光センサ20から入射された光線を反射するように、ロータ12の外周面12a上に配置、固定されている。このターゲット13は、熱伸びが小さい(線膨張係数が小さい)素材、例えば、石英やセラミックの板材からなり、所定の幅wを有している。また、ターゲット13は、光センサ20から入射された光線に対する反射率が高いものが好ましく、例えば、石英やセラミックの板材を反射率が高い色のものにしたり、石英やセラミックの板材の表面に高反射材料をコーティングしたりしても良い。
【0028】
光センサ20は、図2(a)に示すように、1対の斜めファイバ群21及び22(第1のファイバ群)、1対の平行ファイバ群23及び24(第2のファイバ群)を有している。1対の斜めファイバ群21及び22は、三角測量における三角形の二辺を形成するように傾斜して配置されており、1対の平行ファイバ群23及び24は、互いに平行に配置されている。
【0029】
斜めファイバ群21は、図2(b)に示すように、1つの斜め発光ファイバ21a(第1の発光ファイバ)と複数の斜め受光ファイバ21b(第1の受光ファイバ)からなり、1つの斜め発光ファイバ21aを中央とし、その周囲に複数の斜め受光ファイバ21bを配置した構成としている。1つの斜め発光ファイバ22a(第1の発光ファイバ)と複数の斜め受光ファイバ22b(第1の受光ファイバ)からなる斜めファイバ群22も、図2(b)に示すように、斜めファイバ群21と同等の配置である。
【0030】
また、1つの平行発光ファイバ23a(第2の発光ファイバ)と複数の平行受光ファイバ23b(第2の受光ファイバ)からなる平行ファイバ群23、そして、1つの平行発光ファイバ24a(第2の発光ファイバ)と複数の平行受光ファイバ24b(第2の受光ファイバ)からなる平行ファイバ群24も、図2(b)に示すように、斜めファイバ群21と同等の配置である。
【0031】
なお、ここでは、1つの発光ファイバの周囲に、各々、複数の受光ファイバが一重に配置されているが、複数の受光ファイバを二重、三重又はそれ以上にして配置しても良いし、中央の発光ファイバの数を増やしても良い。
【0032】
また、光センサ20の先端における位置(ロータ12の周方向に沿う位置)について、斜め発光ファイバ21aと平行発光ファイバ23aの先端の位置を同じ位置Aとし、斜め発光ファイバ22aと平行発光ファイバ24aの先端の位置を同じ位置Bとしている。つまり、斜め発光ファイバ21aの先端と斜め発光ファイバ22aの先端との間隔ABと、平行発光ファイバ23aの先端と平行発光ファイバ24aの先端との間隔ABは、共に長さLとしている。
【0033】
また、光信号処理部30は、1つの光源31と複数の受光素子32〜35を有している。光源31は、例えば、レーザなどであり、斜め発光ファイバ21a、斜め発光ファイバ22a、平行発光ファイバ23a及び平行発光ファイバ24aの各々に接続されている。光源31から出力された光線は、斜め発光ファイバ21a、斜め発光ファイバ22a、平行発光ファイバ23a及び平行発光ファイバ24aを各々介して、ロータ12の外周面12aに向けて照射されている。なお、光源31は、1つの光源から構成しても良いし、複数の同じ光源から構成しても良い。1つの光源から構成した場合には、1つの光源の光路を4つに分岐し、分岐した各々の光路から、斜め発光ファイバ21a、斜め発光ファイバ22a、平行発光ファイバ23a及び平行発光ファイバ24aに出力すれば良い。複数の光源、例えば、4つの光源から構成した場合には、4つの光源の各々の光路から、斜め発光ファイバ21a、斜め発光ファイバ22a、平行発光ファイバ23a及び平行発光ファイバ24aに出力すれば良い。
【0034】
このとき、斜め発光ファイバ21aからの斜め光線OL1と斜め発光ファイバ22aからの斜め光線OL2は、上述した三角測量の三角形を形成している。つまり、2本の斜め光線OL1及びOL2は、従来と同様に、三角測量用の光線である。また、平行発光ファイバ23aからの平行光線PL1と平行発光ファイバ24aからの平行光線PL2は、長さLの平行光線となっている。これらの2本の平行光線PL1及びPL2は、後述するように、光センサ20の熱伸び計測用の光線となる。なお、斜め光線OL1と平行光線PL1とが成す角度θ1と、斜め光線OL2と平行光線PL2とが成す角度θ2とは同じでなくても良い。
【0035】
そして、1つの斜め発光ファイバ21aから照射された斜め光線OL1がターゲット13で反射されると、複数の斜め受光ファイバ21bで受光されて、その光信号OS1の強度が受光素子32で検出される。同様に、1つの斜め発光ファイバ22aから照射された斜め光線OL2がターゲット13で反射されると、複数の斜め受光ファイバ22bで受光されて、その光信号OS2の強度が受光素子33で検出される。
【0036】
また、1つの平行発光ファイバ23aから照射された平行光線PL1がターゲット13で反射されると、複数の平行受光ファイバ23bで受光されて、その光信号PS1の強度が受光素子34で検出される。同様に、1つの平行発光ファイバ24aから照射された平行光線PL2がターゲット13で反射されると、複数の平行受光ファイバ24bで受光されて、その光信号PS2の強度が受光素子35で検出される。
【0037】
すると、1対の受光素子32及び33(第1の受光素子)により、図3(a)のグラフに示すような2つの波形が観測され、また、1対の受光素子34及び35(第2の受光素子)により、図3(b)のグラフに示すような2つの波形が観測される。図3(a)にグラフにおいて、各々の波形が光信号OS1及びOS2に該当し、図3(b)にグラフにおいて、各々の波形が光信号PS1及びPS2に該当する。
【0038】
そして、本実施例においては、光信号演算部40が、図3(a)及び(b)のグラフに示された4つの波形に基づいて、以下の手順により、下記(1)〜(3)の演算を行って、クリアランスdを求めている。
【0039】
(1)周速vの算出
図3(a)及び(b)のグラフに示された4つの波形のうちの1つを用いて、波形の立ち上がりと立ち下がりの2つの時間から時間差Δt1(第1の時間差)を求める。次に、ターゲット13の幅wを用いて、v=w/Δt1から周速vを求める。このとき、平行光線PL1、PL2による光信号PS1、PS2の2つ波形のいずれかを用いることが望ましい。
【0040】
なお、4つの波形のうちの2つ以上を用いて、複数の時間差Δt1の平均値を求め、その平均値を最終的な時間差Δt1として用いても良い。このとき、平行光線PL1、PL2による光信号PS1、PS2の2つの波形を用いることが望ましい。
【0041】
(2)間隔ABの算出
図3(b)のグラフに示された2つの波形、つまり、平行光線PL1、PL2による光信号PS1、PS2の2つ波形に基づいて、2本の平行光線PL1、PL2の各々をターゲット13が通過する2つの時間から時間差Δt2(第2の時間差)を求める。次に、算出した周速vを用いて、間隔AB=v×Δt2から間隔ABを求める。
【0042】
従来は、間隔ABとして、作製時の寸法を用いていたが、本実施例では、時間差Δt2を求めることにより、熱伸びの影響を受けた間隔ABを求めており、これにより、熱伸びによる誤差を低減することができる。
【0043】
(3)クリアランスdの算出
図3(a)のグラフに示された2つの波形、つまり、斜め光線OL1、OL2による光信号OS1、OS2の2つ波形に基づいて、2本の斜め光線OL1、OL2の各々をターゲット13が通過する2つの時間から時間差Δt0(第3の時間差)を求める。この時間差Δt0は上述した式1におけるΔtである。従って、算出した周速v及び間隔AB(=L)を用いて、上述した式1からクリアランスdを求めることができる。そして、このとき、間隔CDとして、間隔CD=2×R×π×N×Δtではなく、間隔CD=v×Δtを用いてクリアランスdを求めており、熱伸びや遠心伸びにより変化する半径Rを使用していないので、回転側の熱伸びや遠心伸びによる誤差を低減することができることになる。
【0044】
本実施例は、以上説明した構成及び方法により、光センサ20の熱伸び(間隔ABの熱伸び)を求めているので、光センサ20の熱伸びによる変化(間隔ABの変化)や回転側の熱伸びや遠心伸びによる変化(半径Rの変化)に起因するクリアランスdの計測誤差を解消して、より正確なクリアランスdを求めることができる。
【0045】
[実施例2]
本実施例の光計測装置は、上記実施例1に示した光計測装置を前提としている。そのため、ここでは、図1及び図2に示した実施例1の光計測装置と同等の構成には、同じ符号を付し、重複する構成については、その説明を省略する。
【0046】
本実施例の光計測装置は、図4に示すように、更に、2つの光源31a、31b、フィルタ36〜39を有している。光源31a及び31b(第1の光源及び第2の光源)は、互いに異なる波長の光(第1の光及び第2の光)を出力するものである。実施例1においては、1つの光源31が、斜め発光ファイバ21a、斜め発光ファイバ22a、平行発光ファイバ23a及び平行発光ファイバ24aの全てに接続されていたが、ここでは、光源31aが斜め発光ファイバ21a及び斜め発光ファイバ22aに接続され、光源31bが平行発光ファイバ23a及び平行発光ファイバ24aに接続されている。つまり、斜め発光ファイバ21a及び斜め発光ファイバ22aから照射される斜め光線OL1及びOL2と、平行発光ファイバ23a及び平行発光ファイバ24aから照射される平行光線PL1及びPL2とで、照射される光の波長(色)を変えている。
【0047】
また、フィルタ36及び37は(第1のフィルタ)、光源31aから出力された波長の光のみを透過するものであり、フィルタ38及び39(第2のフィルタ)は、光源31bから出力された波長の光のみを透過するものである。そして、光源31aが接続された斜め発光ファイバ21a及び斜め発光ファイバ22aに対応して、斜め受光ファイバ21bと受光素子32との間にフィルタ36を挟んで配置し、斜め受光ファイバ22bと受光素子33との間にフィルタ37を挟んで配置している。同様に、光源31bが接続された平行発光ファイバ23a及び平行発光ファイバ24aに対応して、平行受光ファイバ23bと受光素子34との間にフィルタ38を挟んで配置し、平行受光ファイバ24bと受光素子35との間にフィルタ39を挟んで配置している。
【0048】
以上説明した構成とすることにより、斜め光線OL1及びOL2による反射光と平行光線PL1及びPL2による反射光が混信した場合、外乱となる他方の反射光を排除することができる。
【0049】
例えば、光源31aから出力する第1の光を緑色の波長の光(以降、緑色光線)とし、光源31bから出力する第2の光を赤色の波長の光(赤色光線)とすると、斜め光線OL1及びOL2は緑色光線、平行光線PL1及びPL2は赤色光線となる。この場合、斜め受光ファイバ21b及び、斜め受光ファイバ22bへの反射光は緑色光線であるが、乱反射した赤色光線が混信する可能性がある。その場合でも、フィルタ36、37は、混信した赤色光線を排除し、緑色光線のみを受光素子32、33へ通すので、受光素子32、33は、緑色光線のみの強度を検出することができる。同様に、平行受光ファイバ23b及び平行受光ファイバ24bへの反射光は赤色光線であるが、乱反射した緑色光線が混信する可能性がある。その場合でも、フィルタ38、39は、混信した緑色光線を排除し、赤色光線のみを受光素子34、35へ通すので、受光素子34、35は、赤色光線のみの強度を検出することができる。
【0050】
この場合、受光素子32、33は、緑色光線の波長に対して受光感度が高いものが望ましく、また、受光素子34、35は、赤色光線の波長に対して受光感度が高いものが望ましい。
【0051】
このように、光源として、互いに異なる波長の光を出力する光源31a、31bを用い、斜め光線OL1及びOL2による反射光と平行光線PL1及びPL2による反射光が混信した場合でも、フィルタ36〜39により、外乱となる他方の反射光を排除することができ、その結果、SN比(信号雑音比)の低下を防止して、計測精度の低下を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、回転機械(例えば、タービン、圧縮機などのターボ機械など)の回転体を対象とする計測に好適なものである。例えば、タービンにおいては、内部リーク低減やラビング回避のためのクリアランス計測などに適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 回転機械
12 ロータ
13 ターゲット
20 光センサ
21、22 斜めファイバ群
21a、22a 斜め発光ファイバ
21b、22b 斜め受光ファイバ
23、24 平行ファイバ群
23a、24a 平行発光ファイバ
23b、24b 平行受光ファイバ
30 光信号処理部
31、31a、31b 光源
32、33、34、35 受光素子
36、37、38、39 フィルタ
40 光信号演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8