特許第6532105号(P6532105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6532105タッチパネル、信号処理装置及びグランドカップリング方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6532105
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】タッチパネル、信号処理装置及びグランドカップリング方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20190610BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20190610BHJP
   G06F 3/044 20060101ALN20190610BHJP
【FI】
   G06F3/03 400F
   G06F3/03 400B
   G06F3/041 400
   !G06F3/044 A
【請求項の数】20
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-246746(P2015-246746)
(22)【出願日】2015年12月17日
(65)【公開番号】特開2017-111687(P2017-111687A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(72)【発明者】
【氏名】原 英之
(72)【発明者】
【氏名】山本 定雄
(72)【発明者】
【氏名】山田 進
【審査官】 星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0300672(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/174960(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/057887(WO,A1)
【文献】 特開平11−249813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置検出領域に対応して配置された複数の導体を有し、使用者が把持するアクティブスタイラスが指示する位置と、前記アクティブスタイラスを把持する前記使用者の手によるタッチが検出可能なタッチパネルであって、
前記タッチパネルとの間での静電結合を介して前記タッチパネルから送信される信号が受信可能に構成された前記アクティブスタイラスに対し、前記静電結合を介して信号を送信する信号送信回路と、
前記アクティブスタイラスとの間での静電結合を介して前記アクティブスタイラスが指示する位置を検出するアクティブスタイラス指示位置検出回路と、
前記使用者の手がタッチされたことを検出するタッチ検出回路と、
前記タッチ検出回路によるタッチ検出結果に対応して、前記タッチパネルに配置された導体であって前記タッチ検出回路でタッチが検出された前記使用者の手と静電結合している導体を前記タッチパネルのグランドへカップリングさせるカップリング制御を行うカップリング制御回路と
を備えていることを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
前記信号送信回路は、静電結合を介して前記アクティブスタイラスに対して信号送信を行うに際しては、前記タッチ検出回路によるタッチ検出結果に対応して前記カップリング制御が行われるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記位置検出領域に対応して配置された前記複数の導体は、少なくとも第1の方向に配置されており、前記タッチ検出回路によって前記使用者の手によるタッチが検出された際には、前記複数の導体の内の、前記使用者の手によるタッチが検出された領域に配置された少なくとも1本の導体が選択的に前記カップリング制御回路によって前記タッチパネルのグランドにカップリングされることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記第1の方向に配置された前記複数の導体には、前記カップリング制御回路によって前記タッチパネルのグランドに選択的にカップリングされる少なくとも1本の導体を除いて、少なくとも信号送信に供されるように構成されていることと特徴とする請求項3に記載のタッチパネル。
【請求項5】
前記第1の方向に配置された前記複数の導体は、前記信号送信と信号受信に供されるとともに前記信号送信と前記信号受信は時分割的に切り替えられることと特徴とする請求項4に記載のタッチパネル。
【請求項6】
前記第1の方向に配置された前記複数の導体には、異なる複数種の送信信号が供給されることを特徴とする請求項4に記載のタッチパネル。
【請求項7】
前記異なる複数種の送信信号の一つの信号は、前記アクティブスタイラスへの信号送信に供せられるとともに、前記異なる複数種の送信信号の他の一つの信号は、前記使用者の手のタッチ検出に供せられることを特徴とする請求項6に記載のタッチパネル。
【請求項8】
前記異なる複数種の送信信号とは、互いの周波数の異なる信号であることを特徴とする請求項6に記載のタッチパネル。
【請求項9】
前記タッチパネルに配置された前記複数の導体は、第1の方向と前記第1の方向とは異なる第2の方向に配置されており、
前記タッチ検出回路によって前記使用者の手によるタッチが検出された際には、前記第2の方向に配置された複数の導体の内の、前記使用者の手によるタッチ領域に対応した少なくとも1本の導体が選択的に前記カップリング制御回路によって前記タッチパネルのグランドにカップリングされることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項10】
前記第1の方向に配置された複数の導体は信号送信及び信号受信に供されるとともに、前記第2の方向に配置された複数の導体は信号受信に供されることを特徴とする請求項9に記載のタッチパネル。
【請求項11】
前記第1の方向に配置された複数の導体は、前記アクティブスタイラスに対する信号送信と前記使用者による手のタッチの検出のための信号送信の少なくとも一方の信号送信に供せられることを特徴とする請求項3に記載のタッチパネル。
【請求項12】
前記位置検出領域には、前記アクティブスタイラスへの信号送信及び前記使用者の手によるタッチ検出に供せられる導体とは電気的に独立して配置された導体を備えており、
前記電気的に独立して配置された導体の内の、前記使用者の手によるタッチ領域に対応したした導体が前記タッチパネルのグランドへカップリングされることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項13】
前記タッチパネルに配置された前記複数の導体は、第1の方向と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に配置されており、
前記タッチ検出回路によって前記使用者の手によるタッチが検出された際には、前記第1の方向及び前記第2の方向の少なくとも一方の方向に配置された複数の導体の内の、前記使用者の手によるタッチ領域が対応した少なくとも1本の導体が選択的に前記カップリング制御回路によって前記タッチパネルのグランドにカップリングされることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項14】
前記タッチ検出回路は、前記タッチパネルで検出されたタッチ領域が所定のサイズである場合に使用者の手によるタッチであると判定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項15】
前記カップリング制御回路は、前記使用者の手によるタッチが検出された位置に対応した所定の導体を前記タッチパネルのグランドに結合するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項16】
前記カップリング制御回路は、前記使用者の手によるタッチが検出された位置に対応した所定の導体を前記タッチパネルの駆動電源に結合するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項17】
位置検出領域に対応して配置された複数の導体に接続されて、使用者が把持するアクティブスタイラスが指示する位置と、前記アクティブスタイラスを把持する前記使用者の手によるタッチを検出するタッチパネルが備える信号処理装置であって、
前記タッチパネルとの間での静電結合を介して前記タッチパネルから送信される信号が受信可能に構成された前記アクティブスタイラスに対し、前前記静電結合を介して信号を送信する信号送信回路と、
使用者が把持する前記アクティブスタイラスとの間での静電結合を介して前記アクティブスタイラスが指示する位置を検出するアクティブスタイラス指示位置検出回路と、
前記使用者の手が前記タッチパネルにタッチされたことを検出するタッチ検出回路と、
前記タッチ検出回路によるタッチ検出結果に対応して、前記タッチパネルに配置された導体であって前記タッチ検出回路でタッチが検出された前記使用者の手と静電結合している導体を前記タッチパネルのグランドへカップリングさせるカップリング制御を行うカップリング制御回路と
を備えていることと特徴とする信号処理回路。
【請求項18】
前記信号送信回路は、静電結合を介して前記アクティブスタイラスに対して信号送信を行うに際して、前記タッチ検出回路によるタッチ検出結果に対応して前記カップリング制御が行われるように構成されていることを特徴とする請求項17に記載の信号処理回路。
【請求項19】
手によるタッチが検出可能な信号処理回路を有するタッチパネルの前記信号処理回路のグランドと外部グランドとをカップリングするグランドカップリング方法であって、
前記タッチパネルにはアクティブスタイラスが指示する位置を検出するために、位置検出領域に対応して複数の導体が配置されており、
前記アクティブスタイラスは、前記タッチパネルとの間での静電結合を介して前記タッチパネルから送信される信号が受信可能に構成されており、
使用者の手が前記タッチパネルにタッチされたことを検出し、
前記使用者の手が前記タッチパネルにタッチされたことが検出されたことに対応して、前記タッチパネルに配置された導体であって、前記タッチが検出された前記使用者の手と静電結合している導体を前記タッチパネルのグランドへカップリングさせるカップリング制御を行うようにした
ことを特徴とする回路グランドと外部グランドとのカップリング方法。
【請求項20】
前記信号処理回路は、静電結合を介して前記アクティブスタイラスに対して信号送信を行うに際して、前記使用者の手によるタッチの検出に対応して前記カップリング制御が行われるように構成されていることを特徴とする請求項19に記載の回路グランドと外部グランドとのグランドカップリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アクティブスタイラスに対して静電結合方式によって信号を送信するタッチパネルに関する。また、この発明は、アクティブスタイラスに対して静電結合方式によって信号を送信するタッチパネルに適用して好適な信号処理装置に関する。更に、この発明は、タッチパネルの回路グランドと外部グランドとのカップリング方法に関する。
【0002】
なお、この明細書において、アクティブスタイラスとは、タッチパネルとの間で静電結合によりインタラクティブに信号の送受を行う電子ペンを意味するものである。
【背景技術】
【0003】
位置検出装置と電子ペンとからなる位置入力装置は、位置検出装置の位置検出センサと電子ペンとの間での結合方式の違いにより、電磁誘導方式や静電結合方式など、種々の方式のものがある。そして、同じ方式の位置入力装置であっても、位置検出センサと電子ペンとの間でやり取りする位置検出用信号の違いや、筆圧検出手段の有無、サイドスイッチの有無などにより種々の構成がある。
【0004】
しかし、種々の構成に合わせて電子ペンを用意することはコスト的に使用者に負担を負わせることになると共に、構成毎の電子ペンについて、位置検出装置と対応させた管理をしなければならず、面倒であった。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献1(特許第5762659号公報)には、位置検出装置側から電子ペンに信号を送信して、電子ペンを位置検出装置に適合するように構成するようにすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5762659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電子ペンと位置検出装置との間の接続を有線接続とすると接続線の存在が邪魔になるので、通常は、無線接続とされることが多い。この場合に、静電結合方式の電子ペンであるアクティブスタイラスの場合には、位置検出センサからの信号は静電結合によりアクティブスタイラスに伝送される。
【0008】
ところが、この静電結合による位置検出センサからアクティブスタイラスへの送信信号の伝送においては、以下に説明するような2つの理由により、信号強度の低下が生じてしまう問題が生じることが判明した。
【0009】
信号強度の低下が生じてしまう問題が生じる理由の一つは、アクティブスタイラスに静電結合により信号を送信する電子機器の信号処理回路のグランドが安定していないことに起因するものであり、これについて、図18図21を参照しながら説明する。
【0010】
図18及び図20に示すように、位置検出センサを備える電子機器1000の信号処理回路の信号送信回路1000Sから、アクティブスタイラス2000に対して信号が静電結合により送信される。この場合に、電子機器1000の電源として商用交流電源が用いられる場合と、内蔵バッテリーが用いられる場合とがあるが、内蔵バッテリーが用いられる場合には、電子機器の信号処理回路のグランドが安定しないという問題がある。
【0011】
すなわち、電子機器1000の電源として商用交流電源が用いられる場合には、電子機器1000は、図18に示すように、ACアダプター3000に接続される。ACアダプター3000のグランドは、電位が安定している地球電位である外部グランドに接続されている。したがって、この場合には、電子機器1000の信号処理回路のグランド(以下、回路グランドという。)は、電子機器1000がACアダプター3000に接続されているので、外部グランドに結合される。
【0012】
このため、電子機器1000の信号送信回路1000Sの回路グランド(電子機器内のグランド電極に対応。以下同じ)側の点SAの電位は、外部グランドに結合されているので、図19(A)に示すように、安定している。このため、信号送信回路1000Sの出力端側の点SBの信号レベルは、図19(B)に示すように低下することはなく、位置検出センサからの送信信号の信号強度は低下することなくアクティブスタイラス2000に伝送される。
【0013】
一方、図20に示すように、電子機器1000がACアダプター3000に接続されるのではなく、電子機器1000の電源として内蔵バッテリーが用いられる場合には、電子機器1000の信号処理回路の回路グランドは、外部グランドとは非結合となるので、浮いている状態となる。このため、外部グランドと電子機器1000の信号処理回路の回路グランドとの結合の大きさによっては、信号送信回路1000Sの回路グランド側の点SAの電位は、図21(A)に示すように、信号に応じて大きく振れてしまう。その結果、信号送信回路1000Sの出力端側の点SBの信号レベルは、図21(B)に示すように、ACアダプター3000に接続されている場合(図19(B)の場合)に比較して低下されてしまう。つまり、電子機器1000の位置検出センサからアクティブスタイラス2000に送信される信号の強度(振幅)が低下してしまう。
【0014】
信号レベルの低下が生じてしまう理由の他の一つは、電子機器1000からの信号がアクティブスタイラス2000の使用者の人体を通じて回り込むことに起因するものであり、これについて、図22及び図23を参照しながら説明する。
【0015】
アクティブスタイラス2000は、図22に示すように、電子機器1000の位置検出センサからの信号を、この例では、導体からなるアンテナ(図22の例では芯体)2001で受信し、その受信信号を例えばオペアンプ(演算増幅器)2002を通じ、また、周波数制限用のフィルタ2003を通じてコントローラ2004に供給する。コントローラ2004は、受信信号に応じて、図22では図示を省略した送信回路を制御するようにする。
【0016】
オペアンプ2002、フィルタ2003及びコントローラ2004には、内蔵バッテリー2005から電源電圧が供給される。そして、オペアンプ2002、フィルタ2003、コントローラ2004及び内蔵バッテリー2005は、アクティブスタイラス2000の回路グランドに接続されている。このアクティブスタイラス2000の回路グランドは導電性を有する筐体にも接続されており、受信信号を増幅するオペアンプ2002の基準電位となる。
【0017】
この場合、電子機器1000とアンテナ2001との間は結合容量Ctを介して静電結合される。また、アクティブスタイラス2000が使用者により把持されて電子機器1000の位置検出センサ上で使用される状態では、アクティブスタイラス2000の回路グランドと電子機器1000の位置検出センサとの間で、容量Ch及び抵抗Rhで等価される人体を介して静電結合される状態になる。
【0018】
そして、電子機器1000とアンテナ2001との間の結合容量Ctと、電子機器1000とアクティブスタイラス2000の回路グランドとの間の結合容量Chとの差が小さい場合には、電子機器1000からの信号が人体を通じてアクティブスタイラス2000に回り込むようになる。オペアンプ2002は、アクティブスタイラス2000の回路グランドとアンテナ2001との間の差動信号を検出しており、この電子機器1000から回り込む信号のため、アクティブスタイラス2000の受信信号の信号強度が小さくなってしまう。場合によっては、電子機器1000からの信号の波形の位相が、アクティブスタイラス2000内部で反転してしまう場合もある。
【0019】
図23に、結合容量Ctとアンテナ2001との結合点PA(図23(A)参照)と、アクティブスタイラス2000の回路グランドと結合容量Chとの結合点PB(図23(B))と、オペアンプ2002の出力端PC(図23(C)参照)との、それぞれにおける信号強度の例を示す。この図23に示すように、オペアンプ2002の出力端PC(図23(C)参照)の信号強度は、結合容量Ctと結合容量Chとの大小関係に応じて小さくなったり、反転してしまったりする。
【0020】
すなわち、結合容量Ctが結合容量Chよりも大きい(Ct>Ch)ときには、図23(A),(B),(C)において、左側に示すようになり、オペアンプ2002の出力端PCの信号強度は、小さくなる。また、結合容量Ctが結合容量Chと等しい(Ct=Ch)ときには、図23(A),(B),(C)において、中央に示すようになり、オペアンプ2002の出力端PCの信号強度はゼロになる。さらに、結合容量Ctが結合容量Chよりも小さい(Ct<Ch)ときには、図23(A),(B),(C)において、右側に示すようになり、オペアンプ2002の出力端PCの信号強度は小さくなると共に、信号が反転した状態となってしまう。
【0021】
なお、図22に示した例では、アクティブスタイラス2000では筐体が導体で構成され、当該筐体が回路グランドとなるようにされているように示したが、筐体が導体で構成される必要はない。すなわち、アクティブスタイラス2000内のプリント基板にグランド導体が形成されている場合においても、使用者の人体とプリント基板のグランド導体とが容量結合されることで、上述と同様の問題が生じる。
【0022】
この発明は、以上の問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記の課題を解決するために、この発明は、
位置検出領域に対応して配置された複数の導体を有し、使用者が把持するアクティブスタイラスが指示する位置と、前記アクティブスタイラスを把持する前記使用者の手によるタッチが検出可能なタッチパネルであって、
前記タッチパネルとの間での静電結合を介して前記タッチパネルから送信される信号が受信可能に構成された前記アクティブスタイラスに対し、前記静電結合を介して信号を送信する信号送信回路と、
前記アクティブスタイラスとの間での静電結合を介して前記アクティブスタイラスが指示する位置を検出するアクティブスタイラス指示位置検出回路と、
前記使用者の手がタッチされたことを検出するタッチ検出回路と、
前記タッチ検出回路によるタッチ検出結果に対応して、前記タッチパネルに配置された導体であって前記タッチ検出回路でタッチが検出された前記使用者の手と静電結合している導体を前記タッチパネルのグランドへカップリングさせるカップリング制御を行うカップリング制御回路と
を備えていることを特徴とするタッチパネルを提供する。
【0024】
上述の構成の発明によるタッチパネルにおいては、使用者がアクティブスタイラスを把持してタッチパネルの上に持ち来すと、使用者の手がタッチパネルにタッチされたことが検出され、そのタッチが検出された使用者の手と静電結合している導体が、タッチパネルのグランド(回路グランド)にカップリングされる。すると、タッチパネルのグランド(回路グランド)にカップリングされた導体は、使用者の人体を通じて外部グランドにカップリングされる。
【0025】
このため、タッチパネルのグランド(回路グランド)が外部グランドに接続されていないときにも、タッチパネルのグランド(回路グランド)がタッチパネルにタッチしている人体(手)を通じて外部グランドに接続される状態となり、アクティブスタイラスに送信される信号の強度は低下しない。
【0026】
また、タッチパネルのグランド(回路グランド)が外部グランドに接続されることで、外部グランドに接続されている人体の手と強く結合されることになる。したがって、アクティブスタイラスを把持している人体の手を通じてアクティブスタイラスに回り込むタッチパネルからの信号を外部グランドに流すことで、抑制することができる。このため、アクティブスタイラスで受信された信号の強度が低下したり、反転したものされてしまうのを軽減あるいは防止することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、タッチパネルのグランド(回路グランド)が外部グランドに接続されていないときにも、タッチパネルのグランド(回路グランド)がタッチパネルにタッチしている人体(手)を通じて外部グランドに接続される状態となり、アクティブスタイラスに送信される信号の強度の低下を軽減あるいは防止することができる。
【0028】
また、タッチパネルのグランド(回路グランド)が外部グランドに接続されることで、外部グランドに接続されている人体の手と強く結合されることになるので、人体の手を通じてアクティブスタイラスに回り込むタッチパネルからの信号を外部グランドに流すことで抑制することができ、アクティブスタイラスで受信された信号の強度が低下したり、反転したものされてしまうのを軽減あるいは防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】この発明によるタッチパネルの実施形態を説明するために用いる図である。
図2】この発明によるタッチパネルの実施形態の構成例を示すブロック図である。
図3】この発明によるタッチパネルの実施形態の構成例の一部の構成例を示す図である。
図4】この発明によるタッチパネルの実施形態の構成例の一部の構成例を示す図である。
図5】この発明によるタッチパネルの実施形態の動作説明のための図である。
図6】この発明によるタッチパネルの実施形態の動作説明のために用いる図である。
図7】この発明によるタッチパネルの実施形態におけるセンサ上でのタッチ検出状態を説明するための図である。
図8】この発明によるタッチパネルの実施形態の効果を説明するための図である。
図9】この発明によるタッチパネルの実施形態の処理動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
図10】この発明によるタッチパネルの実施形態の処理動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
図11】この発明によるタッチパネルの他の実施形態を説明するために用いる図である。
図12】この発明によるタッチパネルの他の実施形態を説明するために用いる図である。
図13】この発明によるタッチパネルの他の実施形態を説明するために用いる図である。
図14】この発明によるタッチパネルの他の実施形態を説明するために用いる図である。
図15】この発明によるタッチパネルの他の実施形態を説明するために用いる図である。
図16】この発明によるタッチパネルの他の実施形態の構成例を説明するための図である。
図17】この発明によるタッチパネルと共に用いられるアクティブスタイラスの例を説明するための図である。
図18】タッチパネルから送信信号を静電結合を介してアクティブスタイラスに送信する際の状態を説明するための図である。
図19図18の状態の説明に用いる図である。
図20】タッチパネルから送信信号を静電結合を介してアクティブスタイラスに送信する際の状態を説明するための図である。
図21図20の状態の説明に用いる図である。
図22】タッチパネルから送信信号を静電結合を介してアクティブスタイラスに送信する際の状態を説明するための図である。
図23図22の状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明によるタッチパネルの実施形態を、図を参照しながら説明する。なお、以下に説明するタッチパネルの実施形態は、この発明による信号処理装置及び回路グランドと外部グラントとのカップリング方法の実施形態を含むものである。この場合の外部グランドとしては、通常は地球電位とされるが、安定な固定電位であれば地球電位に限られるものではない。
【0031】
図1は、この発明の信号処理装置及び回路グランドと外部グラントとのカップリング方法の一実施形態が適用されて構成された、この実施形態のタッチパネル1を備えた電子機器2の一例を示すものである。図1に示す例の電子機器2は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置の表示画面2Dを備える、例えばパッド型パソコンやスマートフォンと呼ばれる携帯電話端末などの携帯機器であり、表示画面2Dの前面部にはタッチパネル1を構成するセンサ(位置検出センサ)10が配設されている。そして、この電子機器2は、この例では電源としてバッテリー(図示は省略)を用いるものとされている。
【0032】
電子機器2の表示画面2Dの前面部に配設されたセンサ10上で指示体により位置指示操作が行われると、タッチパネル1は、指示体により指示された位置を検出し、電子機器2が備えるマイクロコンピュータによって操作位置に応じた表示処理を施すことができる。この例においては、タッチパネル1は、指示体として、使用者の手や指3と、送信信号を送出するアクティブ静電ペンであるアクティブスタイラス4との両方を検出することできるように構成されている。
【0033】
[タッチパネル1の構成例]
次に、この実施形態のタッチパネル1の構成例について説明する。図2は、この実施形態のタッチパネル1の概略構成例を説明するための図である。この例のタッチパネル1は、いわゆるクロスポイント構成のセンサ10を備えており、手や指3などの指示体による静電タッチ(以下、単にタッチという)を検出することができると共に、アクティブスタイラス4により指示された位置(以下、ペン指示位置という)を検出することができるように構成されている。
【0034】
センサ10は、この例では、下層側から順に、第1の導体群11、絶縁層(図示は省略)、第2の導体群12を積層して形成されたものである。第1の導体群11は、第1の方向、例えば、横方向(X軸方向)に延在した第1の導体11Y、11Y、…、11Y(mは1以上の整数)を互いに所定間隔離して並列に配置されている
また、第2の導体群12は、この例では、第1の導体11Y、11Y、…、11Yの延在方向に対して交差するY軸方向に延在した第2の導体12X、12X、…、12X(nは1以上の整数)を互いに所定間隔離して並列に配置されている。
【0035】
なお、以下の説明において、第1の導体11Y、11Y、…、11Yについて、それぞれの導体を区別する必要がないときには、その導体を、第1の導体11Yと称する。同様に、第2の導体12X、12X、…、12Xについて、それぞれの導体を区別する必要がないときには、その導体を、第2の導体12Xと称することとする。
【0036】
このように、タッチパネル1では、第1の導体群11と第2の導体群12を交差させて形成したセンサパターンにより規定される位置検出領域において、手や指3やアクティブスタイラス4などの指示体が指示する位置を検出する構成を備えている。
【0037】
この実施形態のタッチパネル1のセンサ10の位置検出領域は、電子機器2が備える表示装置の表示画面2Dの画面サイズに対応し、画面サイズと同等の大きさの指示入力面10Sを備えており、光透過性を有する、第1の導体群11と第2の導体群12とによって形成されている。
【0038】
この実施形態のタッチパネル1のセンサ10において、手や指3のタッチを検出する場合は、第1の方向に配置された第1の導体群11に送信信号を供給すると共に、第2の方向に配置された第2の導体群12から信号を受信するように構成されている。また、アクティブスタイラス4による指示位置を検出する場合には、第1の導体群11及び第2の導体群12のそれぞれからの信号を受信する構成となる。なお、クロスポイント型静電容量方式の位置検出装置の原理等については、この出願の発明者の発明に係る出願の公開公報である特開2011−3035号公報、特開2011−3036号公報、特開2012−123599号公報等に詳しく説明されている。
【0039】
この実施形態のタッチパネル1は、図2に示すように、タッチパネル(位置検出センサ)を構成するセンサ10と、このセンサ10に接続される信号処理回路20とで構成されている。信号処理回路20は、センサ10との入出力インターフェースとされるYマルチプレクサ21Y及びXマルチプレクサ21Xと、コマンド生成回路22と、タッチ検出用信号生成回路23と、タッチ検出回路24と、ペン指示検出回路25と、Yグランドセレクタ26Y及びXグランドセレクタ26Xと、制御回路27とからなる。
【0040】
Yマルチプレクサ21Yは、第1の導体群11と、コマンド生成回路22、タッチ検出用信号生成回路23及びペン指示検出回路25との間に設けられており、制御回路27の制御により、第1の導体群11を構成する複数の第1の導体11Yのそれぞれと、コマンド生成回路22、タッチ検出用信号生成回路23及びペン指示検出回路25との接続が切り替えられる。
【0041】
Xマルチプレクサ12Xは、第2の導体群12と、タッチ検出回路24及びペン指示検出回路25との間に設けられており、制御回路27の制御により、第2の導体群12を構成する複数の第2の導体12Xのそれぞれと、タッチ検出回路24及びペン指示検出回路25との接続が切り替えられる。
【0042】
コマンド生成回路22は、第1の導体群11を通じてアクティブスタイラス4に送信するコマンド信号を生成し、Yマルチプレクサ21Yに供給する。コマンド信号としては、アクティブスタイラス4に対して、当該アクティブスタイラス4が使用する周波数を設定する設定コマンドや、アクティブスタイラス4における位置検出用信号や筆圧検出信号の送出タイミングを指示するコマンドなどを含む。そして、コマンド生成回路22は、制御回路27からの制御信号を受けて、その制御信号に応じたコマンド信号を生成し、送出する。この例では、コマンド生成回路22からのコマンド信号は、Yマルチプレクサ21Yを通じて第1の導体群11の複数の第1の導体11Yに供給される。
【0043】
タッチ検出用信号生成回路23は、制御回路27からの制御信号に基づいてタッチ検出用信号を生成し、Yマルチプレクサ21Yに供給する。タッチ検出用信号としては、この例では、例えばアダマール行列などの直交行列からなる拡散符号が用いられ、Yマルチプレクサ21Yを通じて第1の導体群11の複数の第1の導体11Yに供給される。
【0044】
タッチ検出回路24は、センサ10における手や指3の位置を検出する機能を有する。すなわち、複数個の第1の導体11Yと複数個の第2の導体12Xとを交差させて形成したセンサパターンのそれぞれの交点(クロスポイント)における第1の導体11Yと第2の導体12Xとの間の静電容量が、手や指3によりタッチ指示された位置では変化するので、その静電容量の変化を検出することにより、センサ10上のタッチの位置を検出するようにする。
【0045】
この実施形態では、タッチ検出用信号生成回路23からの送信信号(この例では拡散符号)を第1の導体群11Yに供給し、第1の導体11Yと第2の導体12Xとの間の静電容量(相互容量)を介して第2の導体12Xから受信信号を得る。タッチ検出回路24は、手や指3がタッチされたクロスポイント位置では、人体を通じて外部グランドに接続されるために静電容量(相互容量)が変化することに基づいて、その位置の第2の導体12Xからの受信信号のレベル(拡散符号の相関レべル)が変化することを検知することで、タッチ位置を検出する。タッチ検出回路24には、受信信号から拡散符号の相関レべルを検出するために、タッチ検出用信号生成回路23から第1の導体群11Yに供給される送信信号(拡散符号)に対応した信号(相関演算用拡散符号)が供給されている。そして、タッチ検出回路24は、検出したタッチ位置の検出結果を制御回路27に供給する。
【0046】
ペン指示検出回路25は、センサ10上におけるアクティブスタイラス4による指示位置を検出するものである。アクティブスタイラス4は、後述するように、内部に発信回路4S(図1参照)を備え、この発信回路4Sからの信号をペン先の電極から送出する。なお、発信回路4Sは、発振器で構成してもよいし、発振器で発生した発振信号に変調などの処理を施した信号を発生する回路であってもよい。ペン指示検出回路25は、このアクティブスタイラス4からの信号を、センサ10の第2の導体群12からのみならず、第1の導体群11からも受信する。なお、この例のアクティブスタイラス4は、ペン先の電極をアンテナとしてタッチパネル1からの送信信号を受信する。
【0047】
ペン指示検出回路25は、第1の導体群11及び第2の導体群12を構成するそれぞれの第1の導体11Y及び第2の導体12Xについて、アクティブスタイラス4からの信号の受信信号のレベルをチェックして、当該受信信号が高レベルとなっている第1の導体11Y及び第2の導体12Xを検出して、アクティブスタイラス4が指示する位置を検出するようにする。そして、ペン指示検出回路25は、アクティブスタイラス4が指示する位置についての検出結果を制御回路27に供給する。
【0048】
Yグランドセレクタ26Yは、この例では、第1の導体群11と、Yマルチプレクサ21Yとの間に設けられ、第1の導体群11の第1の導体11Yのそれぞれと、タッチパネル1の回路グランドとのカップリングを、制御回路27の制御により制御する。
【0049】
ここで、導体と回路グランドとのカップリングとは、導体のそれぞれと回路グランドとが直接的に接続される場合に限らず、導体と回路グランドとが抵抗や容量を介して接続されている場合を含むものである。
【0050】
図3は、このYグランドセレクタ26Yの構成例を示すものである。すなわち、第1の導体群11を構成する第1の導体11Y、…、11Ym−1、11Yのそれぞれは、Yマルチプレクサ21Yに接続されると共に、スイッチ回路26Y、…、26Ym−1、26Yのそれぞれを通じて、タッチパネル1の回路グランドSGに、この例では直接に接続される。そして、スイッチ回路26Y、…、26Ym−1、26Yのそれぞれのオン、オフが制御回路27からの制御信号により切り替え制御される。
【0051】
図4は、Xグランドセレクタ26Xの構成例を示すものである。Xグランドセレクタ26Xは、この例では、第2の導体群12と、Xマルチプレクサ21Xとの間に設けられ、第2の導体群12の第2の導体12Xのそれぞれと、タッチパネル1の回路グランドSGとのカップリングを、制御回路27の制御により制御する。すなわち、第2の導体群12を構成する第2の導体12X、12X、…、12Xのそれぞれは、Xマルチプレクサ21Xに接続されると共に、スイッチ回路26X、26X、…、26Xのそれぞれを通じて、タッチパネル1の回路グランドSGに、この例では直接に接続される。そして、スイッチ回路26X、26X、…、26Xのそれぞれのオン、オフが制御回路27からの制御信号により切り替え制御される。
【0052】
制御回路27は、タッチパネル1の全体の動作を制御するためのもので、この例では、MPU(microprocessor unit)で構成されており、導体と回路グランドとのカップリングを制御するカップリング制御回路の機能を備えている。
【0053】
この実施形態のタッチパネル1は、アクティブスタイラス4に対するアップリンク(送信)とダウンリンク(受信)とを時分割で行うと共に、手や指3のタッチ検出とアクティブスタイラス4による指示位置の検出とを時分割で行うように制御するように構成されている。制御回路27は、この時分割処理を管理する。
【0054】
すなわち、この実施形態のタッチパネル1では、図5に示すように、アップリンクの期間とダウンリンクの期間とを時分割で交互に実行するようにする。そして、アップリンクの期間は、コマンド生成回路22からのコマンド信号をアクティブスタイラス4に対して送信するコマンド送信期間である。また、ダウンリンクの期間は、位置検出期間として、その前半は、手や指3によるタッチパネル1へのタッチを検出するタッチ検出期間であり、その後半は、アクティブスタイラス4による指示位置を検出するペン指示検出期間である。
【0055】
制御回路27は、アップリンク期間のコマンド送信期間では、Yマルチプレクサ21Yを、コマンド生成回路22からのコマンド信号をYグランドセレクタ26Yを通じて第1の導体群11の複数の導体11Yのそれぞれに供給する状態になるように制御する。このとき、制御回路27は、タッチ検出回路24及びペン指示検出回路25が非動作状態となるように制御する。
【0056】
また、制御回路27は、ダウンリンク期間の位置検出期間の前半のタッチ検出期間では、Yマルチプレクサ21Yをタッチ検出用信号生成回路23からのタッチ検出用信号(この例では拡散符号)を、Yグランドセレクタ26Yを通じて第1の導体群11の第1の導体11Yのそれぞれに供給する状態になるように制御する。そして、このタッチ検出期間では、制御回路27は、Xマルチプレクサ21Xを、第2の導体群12の複数の第2の導体12Xのそれぞれに得られる受信信号をタッチ検出回路24に供給する状態となるように制御する。このとき、制御回路27は、コマンド生成回路22及びペン指示検出回路25が非動作状態になるように制御する。
【0057】
このタッチ検出期間においては、タッチ検出用信号生成回路23からのタッチ検出用信号(この例では拡散符号)が、第1の導体群11の複数の第1の導体11Yから第2の導体群12の複数の第2の導体12Xに、それら間の静電結合を通じて伝送される。
【0058】
タッチ検出回路24では、Xマルチプレクサ21Xから出力される第2の導体群12の複数の第2の導体12Xのそれぞれに得られる前記タッチ検出用信号(この例では拡散符号)の受信信号と、タッチ検出用信号生成回路23からの位置検出用信号(この例では相関演算用拡散符号)との相関を演算することにより、手や指3がタッチされていて、送信信号であるタッチ検出用信号が低下しているクロスポイントを検出することで、手や指3のタッチ位置を検出する。
【0059】
なお、このタッチ検出期間では、タッチ検出用信号によるタッチ検出を1回のみ行うようにしてもよいし、複数回繰り返して行うようにしてもよい。
【0060】
また、制御回路27は、ダウンリンク期間の位置検出期間の後半のペン指示検出期間では、第1の導体群11の第1の導体11Yのそれぞれに得られる信号がペン指示検出回路25に供給される状態になるようにYマルチプレクサ21Yを制御すると共に、Xマルチプレクサ21Xを、第2の導体群12の複数の第2の導体12Xのそれぞれに得られる受信信号がペン指示検出回路25に供給される状態になるように制御する。このとき、制御回路27は、コマンド生成回路22、タッチ検出用信号生成回路23及びタッチ検出回路24が非動作状態になるように制御する。
【0061】
このペン指示検出期間においては、アクティブスタイラス4から送信される位置検出用信号を、第1の導体群11及び第2の導体群12のそれぞれにおいて検出するようにする。すなわち、ペン指示検出回路25では、先ず、Yマルチプレクサ21Yから出力される第1の導体群11の複数の第1の導体11Yのそれぞれに得られる、アクティブスタイラス4からの受信信号のレベルを検出し、その受信レべルが所定値より大になっている複数の第1の導体11Yを検出し、それらの複数の第1の導体11Yからアクティブスタイラス4により指示されているセンサ10上のY方向位置を検出する。
【0062】
また、ペン指示検出回路25は、Xマルチプレクサ21Xから出力される第2の導体群12の複数の第2の導体12Xのそれぞれに得られる、アクティブスタイラス4からの位置検出用信号の受信信号のレベルを検出し、その受信レべルが所定値より大になっている複数の第2の導体12Xを検出し、それらの複数の第2の導体12Xからアクティブスタイラス4により指示されているセンサ10上のX方向位置を検出する。
【0063】
そして、ペン指示検出回路25は、検出したY方向位置とX方向位置とから、アクティブスタイラス4により指示されているセンサ10上の座標位置を検出する。
【0064】
そして、この実施形態では、制御回路27は、タッチ検出期間で、タッチパネル1における手や指3のタッチを検出したときには、その後のコマンド送信期間において、そのタッチ位置に含まれる第1の導体11Y及び/又は第2の導体12Xの内の、少なくとも1本の導体を回路グランドSGにカップリングさせるように、Yグランドセレクタ26Yのスイッチ回路26Y〜26Y、Xグランドセレクタ26Xのスイッチ回路26X〜26Xを切り替え制御するようにする。
【0065】
すなわち、使用者がアクティブスタイラス4を把持して、例えば図6に示すように、センサ10の入力面10S上において、アクティブスタイラス4により位置指示する場合、使用者の手3Hの掌の一部が入力面10Sにタッチする状態となることが多い。タッチパネル1のタッチ検出回路24は、タッチ検出期間において、この使用者の手3Hの掌の一部のタッチ位置を、センサ10上において、例えば図7において斜線を付して示した領域AHとして検出し、当該タッチ検出結果の情報を制御回路27に通知する。
【0066】
制御回路27は、このタッチ検出回路24からのタッチ検出結果の情報に基づいて、その後のコマンド送信期間において、領域AH内の、センサ10の入力面10Sに、より強くタッチしていると思われる例えば領域AHの中央位置の第1の導体11Y及び第2の導体12Xn−7を、回路グランドSGにカップリングするように、Yグランドセレクタ26Y及び/又はXグランドセレクタ26Xを制御する。すなわち、制御回路27は、この例では、検出されたタッチ位置の領域を判定し、その判定したタッチ位置の領域に基づいて、使用者の手や指と静電結合していて、人体を通じてより強く外部グランドにカップリングすることが可能な導体を特定し、その特定された導体を回路グランドSGにカップリングするように制御する。
【0067】
このように、タッチ検出期間において検出された、タッチパネル1における手や指3のタッチ位置に対応した所定数の導体は、その後のコマンド送信期間においては、回路グランドSGにカップリングされるので、図8に示すように、タッチパネル1の回路グランド側は、抵抗Rh及び容量Chで等価される人体5を通じて外部グランドEGにカップリングされる。したがって、タッチパネル1からアップリンクのコマンド送信期間でアクティブスタイラス4に送信されるコマンド信号の信号強度は低下することなく送信できる。
【0068】
そして、タッチパネル1の回路グランドSGが外部グランドEGにカップリングされることで、外部グランドにカップリングされている人体5と強く結合されることになるので、人体の手を通じてアクティブスタイラス4に回り込むタッチパネルからの信号を外部グランドEGに流すことができ、アクティブスタイラス4で受信されたコマンド信号の強度が低下したり、反転したものされてしまうのを軽減あるいは防止することができる。
【0069】
なお、上述の例では、コマンド送信期間において、そのタッチ位置に含まれる第1の導体11Y及び/又は第2の導体12Xの内のそれぞれ1本ずつを回路グランドSGにカップリングした。しかし、カップリングする導体数は、これに限られるものではなく、検出したタッチ位置に含まれる第1の導体11Y及び第2の導体12Xの内の、全部の導体を回路グランドとカップリングさせるようにしてもよいし、一部の複数本の導体を回路グランドとカップリングさせるようにしてもよい。一部の複数本の導体を回路グランドとカップリングする場合にも、制御回路27は、上述と同様にして、検出したタッチ領域のパターンに基づいて、回路グランドSGとカップリングさせる複数の導体を特定するようにする。
【0070】
また、第1の導体11Yは、コマンド送信期間には、コマンド信号の送信用として用いられるが、回路グランドSGにカップリングされた第1の導体11Yは、送信信号を外部に送出することができず、コマンド信号の送信には用いられなくなる。そこで、第1の導体群11の複数の第1の導体11Yは、回路グランドSGへのカップリング用としては用いず、第2の導体群12の複数の第2の導体12Xのみを、回路グランドSGへのカップリング用として用いるように構成してもよい。
【0071】
[タッチパネル1の制御回路27の動作の流れの例]
この実施形態のタッチパネル1の制御回路27の動作の流れの例を、図9及び図10のフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0072】
制御回路27は、位置検出期間であるか否か判別し(ステップS101)、位置検出期間であると判別したときには、タッチ検出期間であるか否か判別する(ステップS102)。このステップS102で、タッチ検出期間であると判別したときには、制御回路27は、前述したようにして、第1の導体群11の複数の第1の導体11Yに、タッチ検出用信号生成回路23からのタッチ検出用信号を供給すると共に、第2の導体群12の複数の第1の導体12Xのそれぞれからタッチ検出用信号の受信信号を受信して、両者の相関を演算することにより、手や指3のタッチを検出するように制御する(ステップS103)。
【0073】
そして、制御回路27は、ステップS103でのタッチ検出の結果、手や指のタッチを検出したか否か判別し(ステップS104)、手や指3のタッチを検出しなかったと判別したときには、処理をステップS102に戻し、このステップS102以降の処理を繰り返す。
【0074】
また、ステップS104で、手や指3のタッチを検出したと判別したときには、制御回路27は、センサ10上のタッチ位置(タッチ領域)を検出して、それを電子機器のホストコンピューターに伝送すると共に、当該タッチ位置の第1の導体11Y及び/または第2の導体12Xの1本あるいは複数本、または全部を、コマンド送信期間に回路グランドSGにカップリングする導体として決定し、それをバッファメモリに記憶する(ステップS105)。このステップS105の次には、制御回路27は、処理をステップS102に戻し、このステップS102以降の処理を繰り返す。
【0075】
そして、ステップS102で、タッチ検出期間ではない(あるいはタッチ検出期間が終了した)と判別したときには、制御回路27は、ペン指示検出期間であるか否か判別する(ステップS106)。このステップS106でペン指示検出期間であると判別したときには、制御回路27は、前述したように、第1の導体11Y及び第2の導体12Xの全てを受信導体として、アクティブスタイラス4からの位置検出用信号を受信することに基づいて、アクティブスタイラス4によって指示されたセンサ10上の位置を検出するように制御する(ステップS107)。
【0076】
そして、制御回路27は、センサ10上のペン指示位置の検出結果を電子機器のホストコンピューターに伝送する(ステップS108)。このステップS108の次には、制御回路27は、処理をステップS106に戻し、このステップS106以降の処理を繰り返す。そして、ステップS106で、ペン指示検出期間ではない(あるいはペン指示検出期間が終了した)と判別したときには、制御回路27は、処理をステップS101に戻し、このステップS101以降の処理を繰り返す。
【0077】
ステップS101で、位置検出期間ではない(あるいは位置検出期間は終了した)と判別したときには、制御回路27は、コマンド送信期間であるか否か判別する(図10のステップS111)。ステップS111で、コマンド送信期間ではない(あるいはコマンド送信期間は終了した)と判別したときには、制御回路27は、処理をステップS101に戻し、このステップS101以降の処理を繰り返す。
【0078】
ステップS111で、コマンド送信期間であると判別したときには、制御回路27は、タッチ検出期間において回路グランドSGにカップリングする導体が記憶されているか否か判別する(ステップS112)。このステップS112で、回路グランドSGにカップリングされる導体が記憶されていると判別したときには、制御回路27は、当該記憶されている導体を、回路グランドSGにカップリングするように、Yグランドセレクタ26Y及び/またはXグランドセレクタ26Xを制御するようにする(ステップS113)。
【0079】
そして、制御回路27は、第1の導体群11の複数の導体11Yからコマンド信号を送信させるように制御する(ステップS114)。ステップS112で、回路グランドSGにカップリングする導体が記憶されていないと判別したときには、制御回路27は、ステップS114に進み、第1の導体群11の複数の導体11Yからコマンド信号を送信させるように制御する。
【0080】
そして、制御回路27は、このステップS114の次には、ステップS111に戻り、このステップS111以降の処理を繰り返す。
【0081】
[上述の実施形態の変形例]
上述の実施形態では、タッチパネル1において、アクティブスタイラス4へのコマンド送信処理と、タッチ検出処理と、ペン指示検出処理とを時分割処理とするようにしたが、時分割処理に限らず、それぞれの処理において使用する周波数を異ならせることによる周波数多重処理や拡散符号を用いた多重処理として、同時並行的な処理とするようにしてもよい。また、必要に応じて時分割処理と周波数多重処理や拡散符号を用いた多重処理とを併用するようにしてもよい。
【0082】
この場合、例えば周波数多重処理による同時並行的な処理を考慮する場合には、図11に示すように、周波数の異なる複数の信号を使用することができる。例えば、コマンド信号には、周波数f1を割り当て、タッチ検出用信号には、周波数f2(≠f1)を割り当て、ペン指示検出用信号には、周波数f3(≠f1≠f2)を割り当てるようにする。
【0083】
そして、アクティブスタイラス4の受信回路のオペアンプの出力信号に対しては、周波数f1を中心とした帯域成分を抽出するためのバンドパスフィルタを設ける。また、タッチパネル1のタッチ検出回路24の受信信号の入力側には、周波数f2を中心とした帯域成分を抽出するためのバンドパスフィルタを設け、また、ペン指示検出回路25の受信信号の入力側には、周波数f3を中心とした帯域成分を抽出するためのバンドパスフィルタを設ける。
【0084】
このように周波数多重や拡散符号を用いた多重処理によりコマンド信号送信処理と、ペン指示検出処理とを同時並行的に実行する場合には、コマンド信号の送信処理と、アクティブスタイラス4により指示された位置の検出の処理とが並行して行われることになるので、回路グランドSGにカップリングさせる導体の選定に当たっては、ペン指示検出処理に、できるだけ影響を与えないように考慮する必要がある。
【0085】
すなわち、タッチ検出処理により、例えば図7に示したように手の掌のタッチ領域AHが検出されたときに、例えばペン指示検出処理で検出されるペン指示位置が、図7における位置PSであるときには、当該位置PSの位置の近傍の第1の導体11Y及び第2の導体12Xは、領域AHを通る第1の導体11Y及び第2の導体12Xとは異なる。したがって、この場合には、領域AHを通る第1の導体11Y及び第2の導体12Xのいずれを、回路グランドにカップリングさせても、ペン指示検出に影響はない。
【0086】
しかし、例えばペン指示検出処理で検出されるペン指示位置が、図7における位置PS1であるときには、当該位置PS1の位置の近傍の第1の導体11Yが領域AHを通っているため、この第1の導体11Yを回路グランドSGにカップリングさせてしまうと、ペン指示位置の検出が困難になる。そこで、この場合には、領域AHを通る第1の導体11Yは回路グランドSGにカップリングさせることなく、領域AHを通る第2の導体12Xを回路グランドSGにカップリングさせるようにする。
【0087】
また、例えばペン指示検出処理で検出されるペン指示位置が、図7における位置PS2であるときには、当該位置PS2の位置の近傍の第2の導体12Xが領域AHを通っているため、この第2の導体12Xを回路グランドSGにカップリングさせてしまうと、ペン指示位置の検出が困難になる。そこで、この場合には、領域AHを通る第2の導体12Xは回路グランドSGにカップリングさせることなく、領域AHを通る第1の導体11Yを回路グランドSGにカップリングさせるようにする。
【0088】
すなわち、周波数多重や拡散符号を用いた多重処理によりコマンド信号送信処理と、ペン指示検出処理とを同時並行的に実行する場合には、制御回路27は、第1の導体11Y及び/または第2の導体12Xを回路グランドSGにカップリングさせる前に、タッチ検出結果によるタッチ検出領域と、ペン指示検出結果によるペン指示検出位置との関係から、ペン指示検出に影響の無い導体を選定し、その選定に基づいて、回路グランドSGにカップリングさせる導体を、上述のようにして決定する。
【0089】
図11の例の周波数多重処理では、タッチ検出用信号の周波数と、ペン指示検出用の周波数とを異ならせるようにしたが、静電結合を用いたタッチ検出処理におけるタッチ位置の検出と、ペン指示位置検出処理におけるペン指示位置の検出とでは、その位置検出の方法が異なるので、タッチ検出用信号の周波数と、ペン指示検出用の周波数とでは、図12に示すように、同じ周波数を用いるようにすることもできる。
【0090】
すなわち、タッチ検出は、図12(A)に示すように、受信したタッチ検出用信号の受信レベルが所定の閾値Vth1よりも低下している導体を検出するものであるのに対して、ペン指示検出は、図12(B)に示すように、受信した位置検出用信号の受信レベルが所定の閾値Vth2を超える導体を検出するものである。したがって、タッチ検出用信号の周波数と、ペン指示検出用の周波数とが同じ周波数であっても、タッチ検出及びペン指示検出は、それぞれ独立して行うことが可能である。
【0091】
そこで、図13に示すように、この場合には、コマンド信号には、周波数f1を割り当て、タッチ検出用信号とペン指示検出用信号には、周波数f2(≠f1)を割り当てるようにすることができる。
【0092】
次に、以上の実施形態では、センサ10のタッチ検出及びペン指示検出のための第1の導体11Y及び/または第2の導体12Xを、回路グランドSGにカップリングさせる導体とした。しかし、回路グランドSGにカップリングさせる導体を、これらタッチ検出及びペン指示検出のための第1の導体11Y及び/または第2の導体12Xとは別の導体としてもよい。
【0093】
図14は、その場合の一例である。すなわち、図14の例のセンサ10A上には、複数の第1の導体11Yの隣り合うものの間に、回路グランドSGにカップリングさせるための第3の導体11YG〜11YGを形成すると共に、複数の第2の導体12Xの隣り合うものの間に、回路グランドSGにカップリングさせるための第4の導体12XG〜12XGを形成する。この場合に、第3の導体11G〜11YG及び第4の導体12XG〜12XGは光透過性を有する導体で形成されているのは、第1の導体11Y及び第2の導体12Xと同様である。
【0094】
そして、第3の導体11YG〜11YGをYグランドセレクタ26GYに接続し、また、第4の導体12XG〜12XGをXグランドセレクタ26GXに接続する。Yグランドセレクタ26GYは、図3に示したYグランドセレクタ26Yと同様にして、第3の導体11YG〜11YGのそれぞれを、制御回路27の制御により、スイッチ回路を通じて回路グランドSGとカップリングすることができるように構成されている。また、Xグランドセレクタ26GXは、図4に示したXグランドセレクタ26Xと同様にして、第4の導体12XG〜12XGのそれぞれを、制御回路27の制御により、スイッチ回路を通じて回路グランドSGとカップリングすることができるように構成されている。
【0095】
この場合に、制御回路27は、第3の導体11YG〜11YGのそれぞれと、第1の導体11Y〜11Yのそれぞれとの位置関係を把握していると共に、第4の導体12XG〜12XGのそれぞれと、第2の導体12X〜12Xのそれぞれとの位置関係を把握している。したがって、制御回路27は、使用者の手や指3のタッチが検出された第1の導体11Yや第2の導体12Xに近接する第3の導体11YGや第4の導体12XGを検出することができ、それらを回路グランドSGとカップリングするための導体として選定することができる。なお、この明細書の説明において、第3の導体11YG〜11YGのそれぞれを区別する必要がないときには、第3の導体11YGと記載し、また、第4の導体12XG〜12XGのそれぞれを区別する必要がないときには、第4の導体12XGと記載することとする。
【0096】
この図14の例においては、制御回路27は、タッチ検出がされた位置(領域)に含まれる第1の導体11Y及び/または第2の導体12Xに隣接する第3の導体11YG及び/または第4の導体12XGを、回路グランドにカップリングさせるように制御する。
【0097】
したがって、この図14の例のタッチパネルにおいても、上述の実施形態のタッチパネルと同様にして、アクティブスタイラス4に送信する信号の強度の低下を抑えることができると共に、アクティブスタイラス4における受信信号の強度の低下や反転を抑制することができる。
【0098】
そして、この図14の例によれば、回路グランドSGにカップリングされる導体は、センサ10Aにおいて、コマンド送信や、タッチ位置やペン指示位置検出に用いられない第3の導体11YG及び/又は第4の導体12XGである。したがって、この図14の例のタッチパネル1によれば、コマンド送信や、タッチ位置やペン指示位置検出の処理とは全く無関係に、センサ10A上のタッチ位置の導体を回路グランドSGにカップリングすることができるという効果がある。
【0099】
以上説明した図14の例では、回路グランドSGにカップリングするための第3の導体11YG及び第4の導体12XGは、第1の導体11Y及び第2の導体12Xと同じセンサ基板上に形成するようにした。このため、隣り合う第1の導体11Y間及び隣り合う第2の導体12X間に、第3の導体11YG及び第4の導体12XGを形成する必要があり、導体の形成ピッチが狭くなり、センサ10Aの製造が困難になる恐れがある。
【0100】
図15の例は、図14の例の上記の問題の改善例である。すなわち、図15の例のセンサ10Bは、2層のセンサ基板10Ba及び10Bbを張り合わせた構成とする。この例では、センサ基板10Baの表面には、複数の第1の導体11Yを形成し、裏面には複数の第2の導体12Xを形成する。また、センサ基板10Bbの表面には、第4の導体12XGを形成し、裏面には第3の導体11YGを形成する。その他の構成は、図14の例と同様とする。
【0101】
この図15の例によれば、コマンド信号送信及びタッチ検出並びにペン指示検出用の複数の第1の導体11Y及び第2の導体12Xが形成されたセンサ基板10Baと、回路グランドSGとカップリングする複数の第3の導体11YG及び第4の導体12XGとが形成された基板10Bbとは別基板であるので、導体の形成ピッチは、狭くならず、センサ10Bの製造において、導体の形成についての困難性の問題が改善される。
【0102】
また、回路グランドSGとカップリングするためにセンサ基板10Baとは別の基板10Bbに形成する導体は、図15の例のように、複数の導体とするのではなく、基板Bbの一方の面の全面に一様な導体(この例では光透過性の導体)を形成するようにしてもよい。その場合には、当該基板Bbの全面に形成する導体を一つのスイッチ回路を通じて回路グランドに接続するように構成し、その一つのスイッチ回路を制御回路27により切り替え制御すればよい。そして、この場合には、センサ基板Baに形成されている複数の第1の導体11X及び複数の第2の導体12で使用者の手や指のタッチが検出されたときには、使用者の手や指が基板Bbの一方の面の全面に形成されている導体と静電結合している。そこで、使用者の手や指によるタッチ位置に関係なく、前記一つのスイッチ回路をオンとして、基板Bbの全面に形成されている導体を回路グランドとカップリングするように制御すればよい。すなわち、この場合には、制御回路27は、タッチされた位置がどの位置かを検出して回路グランドとカップリングさせる導体を特定する処理は不要となる。
【0103】
次に、以上説明したタッチパネルのセンサは、ストライプ状の複数本の導体を、Y方向及びX方向に、互いに交差するように配列したものである。センサ上の導体の構成は、このようなストライプ状の導体からなるものに限られる訳ではない。
【0104】
図16の例のセンサ10Cは、センサ基板10Ca上に、所定形状、この例では矩形形状の導体片13を、Y方向及びX方向の両方向に、それぞれ複数個ずつ配列する。そして、複数個の導体片13のそれぞれの全ては、グランドセレクタ26Cを通じてマルチプレクサ21Cに接続される。
【0105】
グランドセレクタ26Cは、図3図4に示したYグランドセレクタ26YやXグランドセレクタ26Xと同様に、複数個の導体片13のそれぞれを、そのままマルチプレクサ21Cに接続させると共に、スイッチ回路をそれぞれ介して回路グランドSGに接続させる構成を備える。グランドセレクタ26Cのそれぞれの導体片13についての各スイッチ回路は、制御回路27Cからの制御信号により切り替え制御される。
【0106】
マルチプレクサ21Cは、図2に示したコマンド生成回路22、タッチ検出用信号生成回路23、タッチ検出回路24及びペン指示検出回路25と同様の回路を含む送受信回路28Cに接続されている。マルチプレクサ21Cは、この例においては、制御回路27Cからの制御信号を受けて、図5に示したように、時分割で、コマンド送信期間、位置検出期間のタッチ検出期間及びペン指示検出期間のそれぞれの期間において、使用する導体片13を選択するようにする。
【0107】
送受信回路28Cは、コマンド生成回路22、タッチ検出用信号生成回路23、タッチ検出回路24及びペン指示検出回路25と同様の回路により、上述の実施形態と同様の処理動作をする。ただし、この例の場合には、タッチ検出及びペン指示位置検出は、複数個の導体片13のそれぞれについて行われる。そして、送受信回路28Cのタッチ検出結果及びペン指示検出結果が制御回路27Cに供給される。
【0108】
制御回路27Cは、送受信回路28Cからのタッチ検出結果に基づいて、手や指3がタッチしている複数個の導体片13を検出し、その中から回路グランドSGにカップリングする導体片13を選定する。そして、制御回路27Cは、送受信回路28Cからコマンド信号を送出する際には、当該選定したスイッチ回路をオンとする切り替え制御信号を生成して、グランドセレクタ26Cに供給する。
【0109】
したがって、この図16の例においても、前述の実施形態と同様に、アクティブスタイラス4に送信するコマンド信号の強度が低下するのを軽減あるいは防止することができると共に、アクティブスタイラス4において、受信したコマンド信号の強度が低下したり、反転してしまうのを軽減あるいは防止することができる。
【0110】
そして、特に、この図16の例の場合には、導体片13の単位で回路グランドSGとのカップリングが可能である。そのため、コマンド信号の送信時に、回路グランドSGにカップリングしているために送信に寄与しなくなる導体部分を最小限にすることが可能である。
【0111】
なお、この図16の例のタッチパネルにおいても、時分割処理ではなく周波数多重処理とすることが可能である。
【0112】
[その他の実施形態及び変形例]
なお、上述の実施形態では、タッチパネルのセンサは、複数の導体が第1の方向(X方向)と、第2の方向(Y方向)との両方向に配列されているものとしたが、いずれか一方の方向に複数の導体が配列されたものであってもよい。
【0113】
なお、上述の実施形態では、タッチ検出においては拡散符号を用いる方法を説明したが、これに限られるものではなく、周知のその他のタッチ検出方法が適用可能であることは言うまでもない。
【0114】
なお、上述の実施形態のタッチパネルの例では、電子機器2はバッテリー駆動の場合であったが、AC商用電源で駆動される場合にも、アクティブスタイラスへのタッチパネルからの信号の回り込みの低減を考慮する場合には、AC商用電源で駆動される場合にも有効である。
【0115】
また、タッチパネルの回路グランドを外部グランドにカップリングして安定化させることは、前述したように、タッチパネルがACアダプターに接続されてAC商用電源で駆動される場合には、前述したように、この発明によるカップリング制御は不要である。そこで、タッチパネルの回路グランドを外部グランドにカップリングして安定化させる場合を重視する場合において、ACアダプターとバッテリー駆動との両方を電源として用いることができる電子機器に用いられるタッチパネルの場合には、電源として、ACアダプターとバッテリー駆動とのいずれを使用している状態であるのかを判定する回路を備えるようにして、バッテリー駆動のときにのみ、上述した回路グランドへのカップリング制御を行うように構成してもよい。
【0116】
なお、この発明によるタッチパネルがコマンド信号を静電結合を通じて送信する相手としては、アクティブスタイラス以外であっても、上述と同様にして、コマンド信号の強度の低下を軽減あるいは防止することができるものである。
【0117】
なお、上述の実施形態の説明では、アクティブスタイラス4は、芯体をアンテナとして、タッチパネル1からのコマンド信号を受信すると共に、芯体から位置検出用信号をタッチパネルに送信するようにした。しかし、アクティブスタイラスの構成としては、これに限られるものではなく、例えば図17に示すように、アクティブスタイラス4の筐体の芯体41の近傍のスリーブ42を導体により構成し、芯体41とスリーブ42とを用いて、タッチパネル1との信号の送受を行うように構成してもよい。この場合に、芯体41とスリーブ42とのいずれか一方をコマンド信号の受信用、他方を位置検出用信号の送信用とすればよい。
【0118】
なお、上述の実施形態では、タッチ検出された手や指と静電結合している導体を回路グランドに接続するようにしたが、回路グランドではなく、タッチパネルの駆動電源(バッテリー電源を含む)が得られる導体に結合するようにしてもよい。
【0119】
なお、前述もしたが、上述の実施形態の説明における外部グランドとしては、地球電位に限られるものではなく、安定な固定電位であればよい。
【符号の説明】
【0120】
1…タッチパネル、4…アクティブスタイラス、10…センサ、11…第1の導体群、12…第2の導体群、20…信号処理回路、21Y…Yマルチセレクタ、21X…Xマルチセレクタ、22…コマンド生成回路、23…タッチ検出用信号生成回路、24…タッチ検出回路、25…ペン指示検出回路、26Y…Yグランドセレクタ、26X…Xグランドセレクタ、27…制御回路
図1
図2
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