(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0022】
最初に、車両ドア開閉制御装置の構成について、
図1〜
図3を参照しながら説明する。
図1は、車両100を後方から見た図であり、
図2は、車両100を側方から見た図である。車両100は乗用車であって、車体1、バックドア2、後部バンパー3、後部ウィンドウ4、タイヤ5を備えている。後部バンパー3には、ユーザのジェスチャを検出するための複数のセンサ11〜14と、各センサ11〜14に対応する複数のLED21〜24が設けられている。
【0023】
ここで、LED21〜24は、本発明における「表示器」の一例である。
【0024】
センサ11〜14は、たとえば静電容量式の近接センサからなり、水平方向(地面Gと平行な方向)に所定の間隔を置いて配列されている。センサ11、12は左寄りの位置に設けられており、センサ13、14は右寄りの位置に設けられている。LED21〜24は、それぞれセンサ11〜14の上に設けられている。
【0025】
図2に示すように、センサ11は、所定の検出領域Rを有している。この検出領域Rは、
図1で水平方向にも広がっている。センサ12〜14についても同様である。破線で示すように、足Kの先が車体1と地面Gとの間に入るように、足Kを蹴り出す動作(以下、「キック動作」という。)を行うと、足Kが検出領域Rに入って、センサ11〜14がキック動作を検出し、バックドア2が自動的に開かれる。これについては、後で詳細に説明する。なお、センサ11〜14の検出領域Rは、複数のセンサ(たとえば隣接する2つのセンサ)間で重なっているため、足Kのキック動作は複数のセンサにより検出される。LED21〜24は、各センサ11〜14のキック動作検出可否をセンサごとに表示するために設けられている。これについても、後で詳細に説明する。
【0026】
図3は、車両ドア開閉制御装置の電気的構成を示したブロック図である。車両ドア開閉制御装置200は、
図1の車両100に搭載されており、上述したセンサ11〜14およびLED21〜24と、センサ11〜14の出力信号が入力される検出回路32と、LED21〜24を駆動するLED出力回路33と、ECU(Electronic Control Unit)を構成する制御部30と、各部に電源を供給する車載バッテリ40と、バックドア2の開閉を行うバックドア開閉部50とを備えている。
【0027】
センサ11〜14および検出回路32は、検出部10を構成している。LED21〜24は、表示部20を構成している。検出回路32は、センサ11〜14の出力信号を後述する2値化信号に変換する回路などから構成されている。LED出力回路33は、LED21〜24に電流を供給して各LEDを駆動する回路などから構成されている。
【0028】
制御部30は、通信回路31、電源回路34、およびCPU35を有している。通信回路31は、ユーザが所持する電子キー60との間で、LF(Low Frequency)やUHF(Ultra High Frequency)による通信を行う。電源回路34は、車載バッテリ40の電力を制御部30の各ブロックへ供給する回路であって、DC−DCコンバータなどから構成されている。
【0029】
CPU35は、ID照合部35a、キー位置検出部35b、および判定部35cを備えている。これらの各ブロックの機能は、実際にはソフトウェアにより実現される。CPU35には、これら以外にも、各種の処理を行うブロックが含まれているが、ここでは、本発明に関係するブロックのみを図示してある。
【0030】
ID照合部35aは、通信回路31が電子キー60から受信した、電子キー60のID(識別情報)の正否を検証する。キー位置検出部35bは、電子キー60から送信される信号に基づいて、電子キー60の所在位置を検出する。判定部35cは、センサ11〜14の出力信号に基づいて、各センサがキック動作を検出可能か否かを判定する。判定部35cは、これ以外にも、制御に必要な各種の判定を行う。
【0031】
なお、車両には、上述した制御部30のほかにも、各種の制御部(ECU)が搭載されており、制御部30はこれらの制御部とCAN(Controller Area Network)を介して接続されているが、
図3では図示を省略してある。
【0032】
バックドア開閉部50は、バックドア2を開閉するためのモータ、バックドア2を施錠・解錠するためのアクチュエータ、およびこれらを駆動する駆動回路などから構成される。
【0033】
次に、以上の構成を備えた車両ドア開閉制御装置200において、バックドアを開く場合の手順について説明する。
【0034】
ユーザが所持する電子キー60(
図3)は、ユーザの操作に基づいて、または車両ドア開閉制御装置200の通信回路31から送信された応答要求信号を受信したことに基づいて、当該電子キー60のIDを車両100へ送信する。このIDは、通信回路31で受信される。CPU35のID照合部35aは、受信されたIDと、CPU35の内部メモリに記憶されているIDとを照合して、両者が一致すれば照合OKとし、両者が一致しなければ照合NGとする。照合OKが、バックドア2を開く際の前提条件となる。
【0035】
照合結果がOKであれば、CPU35の判定部35cは、検出回路32から入力されるセンサ11〜14の出力信号に基づいて、センサ11〜14のそれぞれにつき、キック動作の検出が可能か否かを判定する。この判定の結果、センサ11〜14がいずれもキック動作を正常に検出できる場合は、判定部35cは、LED出力回路33に、表示部20のすべてのLED21〜24を点灯させる指令を送る。LED出力回路33は、この指令に基づいてLED21〜24に電流を供給し、各LEDを点灯させる。
【0036】
その結果、
図4に示すように、車両100の後部に設けられているLED21〜24が、すべて点灯状態となる。それぞれのLEDの点灯は、当該LEDと対応するセンサが、キック動作の検出が可能な状態にあることを示している。このため、
図4の場合、ユーザは、すべてのLED21〜24が点灯していることを視認した上で、すべてのセンサ11〜14によりキック動作を検出できることを認識する。
【0037】
次に、ユーザは、
図2に示したキック動作を行う。この場合、すべてのセンサ11〜14がキック動作を検出できるので、ユーザは
図4におけるどのセンサ位置でキック動作を行ってもよい。たとえば、
図2のように、センサ11と足Kとが対向する位置でキック動作を行う場合、足Kを前方に蹴り出すと、センサ11に足Kが近づくため、センサ11の出力信号のレベルは大きくなる。その後、足Kを後方に引くと、センサ11から足Kが遠ざかるため、センサ11の出力信号のレベルは小さくなる。このため、センサ11の出力信号は、
図5(a)のP1に示したような波形となる。
【0038】
また、センサ11に隣接するセンサ12の検出領域は、センサ11の検出領域と重なっているので、センサ11の位置で行われたキック動作は、センサ12においても検出される。しかし、センサ12は、センサ11に比べて足Kから離れているため、センサ12の出力信号は、
図5(a)のP2に示したような、P1よりレベルの低い波形となる。
【0039】
これらの出力信号P1、P2に対して、
図5(b)に示すように、所定の閾値Thが設定されている。検出回路32は、この閾値Thを用いて出力信号P1、P2を2値化する。Q1は出力信号P1の2値化信号であり、Q2は出力信号P2の2値化信号である。CPU35の判定部35cは、
図5(b)のように、2値化信号Q1の出力期間W1内に、2値化信号Q2の出力期間W2が収まっている場合は、センサ11、12で検出された足の動作は、キック動作であると判断する。
【0040】
このように判断すると、次に判定部35cは、バックドア開閉部50から取得した情報に基づいて、バックドア2が施錠状態か否かを判定する。そして、バックドア2が施錠状態であれば、判定部35cからバックドア開閉部50へ解錠指令が送られる。バックドア開閉部50は、この指令を受け取ると、アクチュエータを駆動してバックドア2を解錠状態とし、これに続いて、モータを駆動してバックドア2を開く。このようにして、キック動作により非接触でバックドア2を自動的に開くことができる。
【0041】
一方、ユーザが車両100の後方を、センサ11〜14の配列方向に通過する場合は、センサ11、12の各出力信号P1、P2は、
図5(c)に示したような、レベルが同じで位相がずれた波形となる。この場合、2値化信号Q2の出力期間W2は、2値化信号Q1の出力期間W1内に収まっていない。このため、CPU35の判定部35cは、センサ11、12で検出された足の動作は、キック動作ではないと判定する。この場合は、判定部35cからバックドア開閉部50へ解錠指令が送られず、バックドア2は開かない。
【0042】
なお、
図5(a)において、Xは、キック動作を正常に検出できる信号レベルの範囲を表しており、Vaはその上限値、Vbはその下限値である(
図8および
図11においても同様)。上限値Vaと下限値Vbは、センサ11〜14の特性などを考慮して、所定の値に設定されている。
【0043】
次に、センサ11〜14の一部が、キック動作を検出できない状態にある場合について説明する。たとえば、
図6に示すように、車両6が標識70にきわめて接近した状態で駐車している場合は、センサ13のすぐ近くに標識70の支柱70aが存在するため、センサ13の出力信号は、
図8に示したような、レベルの大きい信号となる。そして、そのレベルは上限値Vaを超えているので、センサ13の位置でキック動作が行われても、判定部35cは、キック動作を検出することができない。このような状況は、センサ付近にショッピングカートなどが存在する場合にも生じうる。
【0044】
そこで、判定部35cは、センサ11〜14の出力信号のレベルが上限値Vaを超えている場合は、当該センサはキック動作検出が不可能であると判定する。そして、判定部35cは、キック動作検出が不可能と判定したセンサ(ここではセンサ13)に対応するLED(ここではLED23)を消灯状態にすべく、LED出力回路33に、LED21、22、24だけを点灯させる指令を送る。LED出力回路33は、この指令に基づいて、LED21、22、24に電流を供給する一方、LED23には電流を供給しない。
【0045】
その結果、
図6に示したように、キック動作検出が不可能なセンサ13に対応するLED23は消灯状態となり、他のセンサ11、12、14に対応するLED21、22、24は点灯状態となる。このため、ユーザは、LED23が消灯していることから、センサ13と対向する位置でキック動作ができないことを認識し、他のセンサ11、12、14のいずれかと対向する位置でキック動作を行う。以降の手順については、前述した通りである。
【0046】
なお、
図6の状態において、センサ14の位置でキック動作が行われた場合、センサ14の出力信号は、
図5(a)のP1のような信号となるが、センサ13の出力信号は、
図8のような信号となるので、
図5(b)の方法ではキック動作を検出することはできない。これに対しては、たとえば、あるセンサ(ここではセンサ13)の出力信号が
図8のような信号となった場合に、当該センサに隣接するセンサ(ここではセンサ14)のみでキック動作を検出できるように、検出アルゴリズムを切り替えればよい。
【0047】
図7は、LEDの他の表示例を示している。
図6では、LED23を消灯状態にしたが、
図7(a)では、LED23を他のLEDと異なる色で点灯させている。たとえば、LED21、22、24は緑色で点灯しており、LED23は赤色で点灯している。また、
図7(b)では、LED23を点滅させている。この場合のLED23の色は、他のLEDと同じ色であってもよいし、異なる色であってもよい。
【0048】
ここで、
図6の場合のLED21、22、24の点灯は、本発明における「第1表示形態」の一例であり、LED23の消灯は、本発明における「第2表示形態」の一例である。また、
図7(a)の場合のLED21、22、24の点灯は、本発明における「第1表示形態」の一例であり、LED23の色違いによる点灯は、本発明における「第2表示形態」の一例である。さらに、
図7(b)の場合のLED21、22、24の点灯は、本発明における「第1表示形態」の一例であり、LED23の点滅は、本発明における「第2表示形態」の一例である。
【0049】
以上は、センサ自体に異常がないにもかかわらず、標識等の存在により、キック動作を検出できなくなる場合について述べたが、センサが故障している場合も、当然、キック動作は検出不可能となる。
【0050】
センサが故障した場合、その出力信号は、
図11に示したような、レベルが最小値(たとえばゼロボルト)の信号となる。そして、そのレベルは下限値Vbを下回っているので、故障したセンサの位置でキック動作が行われても、判定部35cは、キック動作を検出することができない。
【0051】
そこで、判定部35cは、センサ11〜14の出力信号のレベルが下限値Vbを下回っている場合は、当該センサはキック動作検出が不可能であると判定する。ここでは、センサ12が故障しているものとする。判定部35cは、キック動作検出が不可能と判定したセンサ12に対応するLED22を消灯状態にすべく、LED出力回路33に、LED21、23、24だけを点灯させる指令を送る。LED出力回路33は、この指令に基づいて、LED21、23、24に電流を供給する一方、LED22には電流を供給しない。
【0052】
その結果、
図9に示したように、キック動作検出が不可能なセンサ12に対応するLED22は消灯状態となり、他のセンサ11、13、14に対応するLED21、23、24は点灯状態となる。このため、ユーザは、LED22が消灯していることから、センサ12と対向する位置でキック動作ができないことを認識し、他のセンサ11、13、14のいずれかと対向する位置でキック動作を行う。以降の手順については、前述した通りである。
【0053】
なお、
図9の状態において、センサ11の位置でキック動作が行われた場合、センサ11の出力信号は、
図5(a)のP1のような信号となるが、センサ12の出力信号は、
図11のような信号となるので、
図5(b)の方法ではキック動作を検出することはできない。これに対しては、たとえば、あるセンサ(ここではセンサ12)の出力信号が
図11のような信号となった場合に、当該センサに隣接するセンサ(ここではセンサ11)のみでキック動作を検出できるように、検出アルゴリズムを切り替えればよい。
【0054】
図10は、LEDの他の表示例を示している。
図9では、LED22を消灯状態にしたが、
図10(a)では、LED22を他のLEDと異なる色で点灯させている。たとえば、LED21、23、24は緑色で点灯しており、LED22は赤色で点灯している。また、
図10(b)では、LED22を点滅させている。この場合のLED22の色は、他のLEDと同じ色であってもよいし、異なる色であってもよい。
【0055】
ここで、
図9の場合のLED21、23、24の点灯は、本発明における「第1表示形態」の一例であり、LED22の消灯は、本発明における「第2表示形態」の一例である。また、
図10(a)の場合のLED21、23、24の点灯は、本発明における「第1表示形態」の一例であり、LED22の色違いによる点灯は、本発明における「第2表示形態」の一例である。さらに、
図10(b)の場合のLED21、23、24の点灯は、本発明における「第1表示形態」の一例であり、LED22の点滅は、本発明における「第2表示形態」の一例である。
【0056】
ところで、上述した各場合におけるLED21〜24(全部または一部)を点灯させるタイミング、および点灯しているLEDを消灯させるタイミングについては、種々のパターンが考えられる。
図12は、その一例を示したもので、車両運転の一連のシーケンス中での、LEDの点灯・消灯タイミングを表している。
【0057】
図12において、ユーザが車両100に接近すると(ステップS1)、電子キー60と車両100との間の通信に基づいて、電子キー60のIDの照合が行われ、照合OKであれば(ステップS2)、センサ11〜14の状態に応じて、LED21〜24の全部または一部を点灯させる(ステップS3)。ユーザは、必要によりキック動作を行い、バックドア2を開けて荷物を収納した後、車両100のドア(前列または後列のドア)を開けて乗車する(ステップS4、S5)。そして、ドアを閉じてから(ステップS6)、エンジンを起動し(ステップS7)、続いてシフトレバーをP位置(パーキング位置)から移動させる(ステップS8)。この時点で、点灯していたLEDは消灯する(ステップS9)。この後、車両100は発進して走行状態へ移行する(ステップS10)。
【0058】
走行していた車両100が停止した後(ステップS11)、シフトレバーをP位置へ移動すると(ステップS12)、この時点でLEDは再び点灯する(ステップS13)。そして、エンジンを停止した後(ステップS14)、ユーザは、ドアを開けて降車する(ステップS15、S16)。降車後にドアが閉じられ(ステップS17)、続いてドアが施錠されると(ステップS18)、点灯していたLEDは消灯する(ステップS19)。
【0059】
図12の点灯・消灯タイミングは一例であって、他のタイミングを採用してもよい。たとえば、ステップS9のLED消灯は、ステップS7(エンジン起動)またはステップS6(ドア閉)の次に実行してもよく、あるいは、ユーザのキック動作が検出された時点で実行してもよい。また、ステップS13のLED点灯は、ステップS14(エンジン停止)またはステップS15(ドア開)の次に実行してもよい。
【0060】
図13は、キック動作によりバックドア2を開く場合の手順を示したフローチャートである。この手順は、CPU35によって実行される。
【0061】
CPU35は、まずID照合部35aにより、電子キー60のIDの照合を行う(ステップS101)。照合結果がOKであれば(ステップS101;YES)、次に判定部35cにより、各センサ11〜14の出力信号をチェックし(ステップS102)、すべてのセンサがキック動作検出可能な状態にあるか否かを確認する(ステップS103)。その結果、すべてのセンサ11〜14がキック動作検出可能であれば(ステップS103;YES)、すべてのLED21〜24を第1表示形態で表示(たとえば点灯)させる。一方、センサ11〜14の一部がキック動作検出不可能であれば(ステップS103;NO)、検出可能なセンサに対応するLEDを第1表示形態で表示(たとえば点灯)させ、検出不可能なセンサに対応するLEDを第2表示形態で表示(たとえば消灯)させる(ステップS107)。
【0062】
ステップS104またはステップS107を実行した後、センサ11〜14の出力信号に基づいて、キック動作の有無を判定する(ステップS105)。そして、キック動作が行われたと判定すると(ステップS105;YES)、CPU35は、バックドア開閉部50を駆動して、バックドア2を開く(ステップS106)。なお、ステップS101で照合結果がNGであれば(ステップS101;NO)、ステップS102〜S107を実行することなく、処理を終了する。
【0063】
以上述べた実施形態によれば、センサ11〜14がいずれもキック動作を正常に検出できる場合は、表示部20のLED21〜24がすべて点灯するので、ユーザは、すべてのLEDが点灯していることを視認することで、すべてのセンサ11〜14がキック動作を検出できる状態にあることを認識する。このため、ユーザは、任意のセンサ位置でキック動作を行うことで、バックドア2を開くことができる。なお、LEDの点灯に代えて、LEDを点滅させてもよい。
【0064】
一方、センサ11〜14の一部がキック動作を正常に検出できない場合は、キック動作検出が可能なセンサに対応するLEDは点灯状態となり、キック動作検出が不可能なセンサに対応するLEDは消灯、色違い点灯、点滅のような状態となる。このため、ユーザは、消灯などの状態にあるLEDに対応するセンサの位置ではキック動作を行わず、点灯状態のLEDに対応するセンサの位置でキック動作を行うことで、バックドア2を開くことができる。これにより、無駄なキック動作が回避され、キック動作をしてもバックドア2が開かないことへの不満も解消される。
【0065】
また、以上述べた実施形態では、センサ11〜14の検出可否の表示は、各センサに対応して設けられたLED21〜24により、センサ単位で行うが、キック動作の検出は、複数のセンサの出力信号に基づいて行っている(
図5参照)。このため、キック動作とそうでない動作とを正確に区別でき、キック動作の検出精度を高めることができる。
【0066】
次に、本発明の他の実施形態につき、
図14〜
図16を参照しながら説明する。車両によっては、ユーザが接近したときに自動的に点灯するウェルカムライトが備わっているものがある。本実施形態は、このウェルカムライトを利用して、センサの状態を表示するものである。
【0067】
図14において、車両100は、LED25〜29からなる5個のウェルカムライトを備えている。LED25は前列左ドア(助手席ドア)に、LED26は前列右ドア(運転席ドア)に、LED27は後列左ドア(後部左座席ドア)に、LED28は後列右ドア(後部右座席ドア)に、LED29はバックドアに、それぞれ設けられている。後列左ドアと後列右ドアは、いずれもスライドドアとなっている。
【0068】
また、後列左ドアの下方、後列右ドアの下方、およびバックドアの下方には、それぞれキック動作を検出するためのセンサ17〜19が設けられている。センサ17、18はスライドドア用のセンサであり、センサ19はバックドア用のセンサである。LED27〜29は、それぞれセンサ17〜19に対応しており、これらのLEDは、ウェルカムライトであるとともに、センサ17〜19の状態(キック動作検出の可否)を表示する表示器を兼用している。一方、LED25、26は、それぞれに対応するセンサが存在せず、ウェルカムライトとしてのみ用いられる。LED25、26は省略することも可能であり、この場合は、すべてのウェルカムライトが表示器を兼用する。
【0069】
なお、本実施形態による車両ドア開閉制御装置の構成は、
図3のセンサ11〜14がセンサ17〜19に置き換わり、LED21〜24がLED25〜29に置き換わり、LED出力回路33が制御部30の中に設けられる点を除いて、
図3と同様であるので、図示を省略する。
【0070】
ウェルカムライトであるLED25〜29は、ユーザが車両100に接近して、ユーザの所持する電子キー60から車両100へ、所定の信号が送信されることにより点灯する。この場合、ウェルカム専用のLED25、26は、たとえば青色で点灯する。一方、センサ状態の表示を兼ねるLED27〜29は、センサ17〜19の状態に応じた表示を行う。以下、これについて具体的に説明する。
【0071】
図15は、すべてのセンサ17〜19が正常状態(キック動作検出が可能な状態)にある場合の、各LEDの表示形態を示している。ウェルカム専用のLED25、26は、上述したように青色で点灯する。また、ウェルカム専用でないLED27〜29は、青色(または他の色)で点滅する。ユーザは、LED27〜29の点滅によって、すべてのセンサ17〜19の位置でキック動作が可能なことを認識する。なお、LED27〜29の点滅は、LED25、26と異なる色での点灯としてもよい。
【0072】
図16(a)は、センサ17〜19のうち、センサ18が故障している場合の、各LEDの表示形態を示している。ウェルカム専用のLED25、26は、センサ18の故障に関係なく、青色で点灯する。また、ウェルカム専用でないLED27〜29のうち、正常なセンサ17、19に対応するLED27、29は、青色(または他の色)で点滅する。一方、故障したセンサ18に対応するLED28は、消灯状態となる。ユーザは、LED28が消灯していることで、センサ18の位置でキック動作ができないことを認識する。
【0073】
図16(b)は、センサ18が故障した場合の他の表示例を示している。
図16(a)では、故障したセンサ18に対応するLED28を消灯させているが、
図16(b)では、故障したセンサ18に対応するLED28を、他のLEDと異なる色(たとえば赤色)で点灯させている。他のLEDについては、
図16(a)と同じ表示形態となっている。この場合も、ユーザは、LED28が他と異なる色で点灯していることで、センサ18の位置でキック動作ができないことを認識する。
【0074】
ここで、
図15の場合のLED27〜29の点滅は、本発明における「第1表示形態」の一例であり、LED25、26の点灯は、本発明における「第3表示形態」の一例である。また、
図16(a)の場合のLED27、29の点滅は、本発明における「第1表示形態」の一例であり、LED28の消灯は、本発明における「第2表示形態」の一例であり、LED25、26の点灯は、本発明における「第3表示形態」の一例である。さらに、
図16(b)の場合のLED27、29の点滅は、本発明における「第1表示形態」の一例であり、LED28の色違いによる点灯は、本発明における「第2表示形態」の一例であり、LED25、26の点灯は、本発明における「第3表示形態」の一例である。
【0075】
図14〜
図16で説明した実施形態によれば、車両100に備わっているウェルカムライトを利用して、各センサ17〜19の状態(キック動作検出可否)を表示するので、センサ状態を表示するための専用のLEDが不要となり、部品点数の増加を抑えることができる。
【0076】
次に、本発明のさらに他の実施形態につき、
図17〜
図19を参照しながら説明する。本実施形態は、ユーザのいるエリアに対応するセンサのみを有効化し、また、そのエリアに対応するLEDのみを駆動するものである。
【0077】
図17において、ウェルカムライトであるLED25〜29と、センサ17〜19の配置については、
図14の場合と同じである。また、本実施形態の場合も、車両ドア開閉制御装置の構成は、
図3のセンサ11〜14がセンサ17〜19に置き換わり、LED21〜24がLED25〜29に置き換わり、LED出力回路33が制御部30の中に設けられる点を除いて、
図3と同様であるので、図示を省略する。
【0078】
図17で示されているZ1〜Z3は、ウェルカム検出エリアであって、これらのエリアにユーザが進入したとき、すなわちユーザが所持する電子キー60(
図3)がエリアZ1〜Z3内で検出されたときに、ウェルカムライトが点灯する。エリアZ1に電子キー60が存在することは、車両100の左側に装備されたアンテナ(図示省略)と電子キー60とのLF通信により、キー位置検出部35b(
図3)で検出することができる。同様に、エリアZ2に電子キー60が存在することは、車両100の右側に装備されたアンテナ(図示省略)と電子キー60とのLF通信により、また、エリアZ3に電子キー60が存在することは、車両100の後方に装備されたアンテナ(図示省略)と電子キー60とのLF通信により、それぞれキー位置検出部35bで検出することができる。
【0079】
本実施形態では、センサ17〜19のうち、電子キー60が検出されたエリアに対応する位置に設けられたセンサのみを、キック動作の検出が可能なように有効化する。たとえば、
図18に示すように、ユーザAがエリアZ1にいる場合は、電子キー60が存在するエリアとしてエリアZ1が検出されるので、エリアZ1に対応する位置にあるセンサ17が有効化される。すなわち、キック動作をした場合に、センサ17の出力信号が制御部30で受け付けられ、センサ17によるキック動作の検出が可能となる。一方、エリアZ1に対応しない位置にあるセンサ18、19は無効化される。すなわち、キック動作をしても、センサ18、19の出力信号が制御部30で受け付けられず、これらのセンサによるキック動作の検出は不可能となる。さらに、LED25〜29のうち、エリアZ1に対応する位置にあるLED25、27が駆動され、LED25は点灯し、LED27は点滅する。他のLEDは消灯している。なお、センサ17が故障している場合は、LED27は消灯、またはLED25と異なる色で点灯する。
【0080】
また、
図19に示すように、ユーザAがエリアZ3にいる場合は、電子キー60が存在するエリアとしてエリアZ3が検出されるので、エリアZ3に対応する位置にあるセンサ19が有効化される。すなわち、センサ19によるキック動作の検出が可能となる。一方、エリアZ3に対応しない位置にあるセンサ17、18は無効化され、これらのセンサによるキック動作の検出は不可能となる。さらに、LED25〜29のうち、エリアZ3に対応する位置にあるLED29が駆動され、LED29は点滅する。他のLEDは消灯している。なお、センサ19が故障している場合は、LED29は消灯、または他のLEDの点灯時の色と異なる色で点灯する。
【0081】
ここで、
図18の場合のLED27の点滅は、本発明における「第1表示形態」の一例であり、LED25の点灯は、本発明における「第3表示形態」の一例である。また、
図19の場合のLED29の点滅は、本発明における「第1表示形態」の一例である。
【0082】
図17〜
図19で説明した実施形態によれば、ユーザのいるエリアに対応する位置のセンサとLEDのみが動作し、それ以外のセンサとLEDは動作しないので、無駄な電力消費を抑制することができる。なお、本実施形態は、ウェルカムライトを備えていない車両にも適用することができる。この場合は、センサ17〜19に対応するLED27〜29だけが設けられる。
【0083】
本発明では、以上述べた実施形態以外にも、以下のような種々の実施形態を採用することができる。
【0084】
図1では、4個のセンサ11〜14と4個のLED21〜24を設け、1個のセンサに1個のLEDを対応させた例を挙げたが、センサとLEDの数がこれに限定されるものでないことは言うまでもない。また、センサを狭い間隔で多数設けて、水平方向の検出領域を広げた場合、たとえば隣接する2個のセンサに対応して1個のLEDを設けてもよい。この場合は、各センサに対応するLEDは、1個の共通のLEDとなる。
【0085】
図5では、隣接する2つのセンサの出力信号に基づいて、キック動作を検出する例を挙げたが、本発明はこれに限定されるものではなく、センサの数や配置に応じて、3つ以上のセンサの出力信号に基づいて、キック動作を検出してもよい。
【0086】
前記の実施形態では、表示器としてLEDを用いた例を挙げたが、LEDに代えて、有機EL素子のような発光素子や、バルブ(電球)などを用いてもよい。
【0087】
前記の実施形態では、センサとして、静電容量式の近接センサを用いた例を挙げたが、これに代えて、反射型光センサや超音波センサのような他のセンサを用いてもよい。また、センサのそれぞれは、単一のセンサ素子で構成してもよいし、複数のセンサ素子で構成してもよい。
【0088】
前記の実施形態では、キック動作によってバックドア2を開く場合について述べたが、本発明は、バックドア2を閉じる場合にも適用することができる。この場合は、バックドア2が開いた状態にあること、ID照合部35aでの照合結果がOKであること、および、キック動作が再度検出されたことを条件として、バックドア開閉部50によりバックドア2を閉じればよい。
【0089】
前記の実施形態では、キック動作によって開閉するドアとして、バックドアやスライドドアを例に挙げたが、ドアはトランクを開閉するドアなどであってもよい。
【0090】
前記の実施形態では、足Kを蹴り出すキック動作を例に挙げたが、足Kの動作としては、たとえば、足Kをまっすぐ前に動かしてセンサの検出領域R内へ運び、その後、検出領域Rから足Kを遠ざけるような動作であってもよい。また、足Kを左右方向や斜め方向に動かす動作であってもよい。
【0091】
前記の実施形態では、ユーザが行うジェスチャとして足の動作を例に挙げたが、ジェスチャは足の動作に限らず、手や腕などの動作であってもよい。