(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。尚、添付図面において、本明細書全体を通して類似の構成要素には、同様の参照符号を付して表すこととする。
【0013】
図1は、本発明によるシート処理装置を備えた画像形成システムの全体構成を概略的に示している。同図に示すように、画像形成システム100は、画像形成装置Aと、これに併設されるシート後処理装置Bとから構成される。画像形成装置Aは、画像形成ユニットA1とスキャナーユニットA2とフィーダーユニットA3とで構成される。画像形成ユニットA1は、装置ハウジング1の内部に給紙部2と画像形成部3と排紙部4とデータ処理部5とを備えている。
【0014】
給紙部2は、それぞれ異なるサイズの画像形成用シートを収納する複数のカセット機構2a,2b,2cで構成され、図示しない本体制御部から指定されたサイズのシートを給紙経路6に繰り出す。各カセット機構2a,2b,2cは給紙部2から着脱可能に設置され、それぞれ内部のシートを1枚ずつ分離する分離機構と、シートを繰り出す給紙機構とが内蔵されている。給紙経路6には、各カセット機構2a,2b,2cから供給されるシートを下流側に給送する搬送ローラーと、経路端部には各シートを先端揃えするレジストローラー対とが設けられている。
【0015】
給紙経路6には、大容量カセット2dと、手差しトレイ2eとが接続されている。大容量カセット2dは、大量に消費するサイズのシートを収納するオプションユニットで構成される。手差しトレイ2eは、分離給送が困難な厚紙シート、コーティングシート、フィルムシートなどの特殊シートを供給可能なように構成される。
【0016】
画像形成部3は、例えば静電印刷機構で構成されており、回転する感光ドラム9と、その周囲に配置された、光学ビームを発光する発光器10、現像器11、クリーナー(図示せず)とを備えている。図示のものはモノクロ印刷機構であり、感光ドラム9に発光器10で光学的に潜像を形成し、この潜像に現像器11でトナーインクを付着させる。
【0017】
この感光ドラム9に画像形成するタイミングに合わせて、給紙経路6からシートを画像形成部3に送り、転写チャージャー12で該シート上に画像を転写し、排紙経路14に配置されている定着ローラ13で定着させる。排紙経路14には、排紙ローラー15と排紙口16とが配置され、後述するシート後処理装置Bに画像形成したシートを搬送する。
【0018】
スキャナーユニットA2は、画像原稿を載置するプラテン17と、プラテン17に沿って往復動するキャリッジ18と、光電変換手段19と、キャリッジ18によるプラテン17上の原稿からの反射光を光電変換手段19に案内する縮小光学系20とを備える。光電変換手段19は、縮小光学系20からの光学出力を画像データに光電変換して、電気信号として画像形成部3へ出力する。
【0019】
また、スキャナーユニットA2は、フィーダーユニットA3から送られてくるシートを読み取るために、走行プラテン21を備えている。フィーダーユニットA3は、給紙トレイ22と、給紙トレイ22から送り出したシートを走行プラテン21に案内する給紙経路23と、走行プラテン21を通過した原稿を収納する排紙トレイ24で構成される。給紙トレイ22からの前記原稿は、走行プラテン21を通過する際に、キャリッジ18と縮小光学系20とで読み取られる。
【0020】
本発明において、画像形成装置Aは、上述した静電印刷機構からなる画像形成部3を備えたものに限定されない。例えば、シフト印刷機構、インクジェット印刷機構、インクリボン転写印刷機構(熱転写リボン印刷、昇華型リボン印刷など)、その他の印刷機構を備えたものを同様に採用することができる。
【0021】
図2は、画像形成装置Aから送られてくる画像を形成されたシートを後処理するシート後処理装置Bの構成を示している。シート後処理装置Bは、画像形成装置Aからのシートを導入するための搬入口26を設けた装置ハウジング27を備える。装置ハウジング27は、搬入口26を像形成装置Aの排紙口16に連通させるように、画像形成装置Aのハウジング1に位置を合わせて配置される。
【0022】
シート後処理装置Bは、搬入口26から導入されるシートを搬送するシート搬入経路28と、シート搬入経路28から分岐される第1排紙パス30、第2排紙パス31及び第3排紙パス32と、第1経路切換手段33と、第2経路切換手段34とを備える。第1及び第2経路切換手段33、34は、それぞれシート搬入経路28を搬送されるシートの搬送方向を変更するフラッパーガイドで構成されている。
【0023】
第1経路切換手段33は、図示しない駆動手段によって、搬入口26からのシートを第3排紙パス32に案内するモードと、第1排紙パス30及び第2排紙パス31の方向に案内するモードとに切り換えられる。第1排紙パス30と第2排紙パス31とは、一旦第1排紙パス30に導入されたシートを、搬送方向を反転させて第2排紙パス31にスイッチバック搬送することが可能なように連通して配置されている。
【0024】
第2経路切換手段34は、第1経路切換手段33の下流側に配置されている。第2経路切換手段34は、同じく図示しない駆動手段によって、第1経路切換手段33を通過したシートを第1排紙パス30に導入するモードと、一旦第1排紙パス30に導入されたシートを反転させて、第2排紙パス32に反転搬送即ちスイッチバック搬送するモードとに切り換えられる。
【0025】
シート後処理装置Bは、それぞれ異なる後処理を行う第1〜第3処理部B1〜B3を備える。更にシート搬入経路28には、搬入されたシートにパンチ穴を穿孔するパンチユニット50が配置されている。
【0026】
第1処理部B1は、第1排紙パス30下流端の排紙口35から搬出された複数のシートを集積し、部揃えして綴じ処理し、装置ハウジング27の外側に設けられた積載トレイ36に排出する綴じ処理部である。後述するように、第1処理部B1は、シート又はシート束を搬送するための本発明によるシート処理装置37と、シート束を綴じ処理する綴じ処理ユニット38とを備える。第1排紙パス30の下流端には、排紙口35からシートを排出するための排出ローラー対39が設けられている。
【0027】
第2処理部B2は、第2排紙パス31からスイッチバック搬送されてくる複数のシートをシート束にし、該シート束の中央部で綴じ処理した後、折り処理を行う。折り処理は、互いに圧接した折りロール対41のニップ部に折り位置を合わせてシート束を配置し、反対側から折りブレード42を差し込んで折りロール対41を回転させ、シート束を折り合わせる。折り処理されたシート束は、排出ローラー43によって、装置ハウジング27の外側に設けられた積載トレイ44に排出される。
【0028】
第3処理部B3は、第3排紙パス32から送られてくるシートを、搬送方向に直交する方向に所定量オフセットさせて集積するグループと、オフセットさせることなく集積するグループとに区分けするジョグ仕分けを行う。ジョグ仕分けしたシートは、装置ハウジング27の外側に設けられた積載トレイ46に排出され、オフセットされたシート束とオフセットされないシート束とが積み上げられる。
【0029】
図3は、第1処理部B1の好適な実施形態の全体構成を概略的に示している。上述したように、第1処理部B1は、排紙口35からのシートを集積し、部揃えし、綴じ処理後に積載トレイ36に排出するためのシート処理装置37と、該シート処理装置により集積かつ部揃えされたシート束を綴じ処理する綴じ処理ユニット38とを備える。図示される綴じ処理ユニット38は、ステープル針を打ち込んでシート束を綴じ処理するステープラー装置である。綴じ処理ユニット38は、ステープラー装置ではなく、針無しでシート束を綴じ処理する針無し綴じ装置を用いることもできる。
【0030】
シート処理装置37は、排紙口35の下流側にかつ該排紙口から下方に所定の距離をもって配置された処理トレイ51を備える。シート処理装置37は、排紙口35から処理トレイ51に排出された綴じ処理前のシートを該処理トレイの奥側に即ち積載トレイ36への搬出方向とは反対側に搬送するための搬送するためのシート搬入機構52と、処理トレイ51上で複数のシートを束状に集積して位置合わせするためのシート整合機構53と、綴じ処理されたシートを積載トレイ36に搬出するためのシート搬出機構54とを備える。
【0031】
図4に示すように、処理トレイ51は、その上面にシートを搬出方向に沿って少なくとも部分的に支持する概ね平坦なシート支持面55を有する。シート支持面55は、搬出方向の下流側から上流側に向けて概ね40°前後の比較的急な角度をもって下向きに傾斜している。処理トレイ51は、シート支持面55の下流端55aから下流側に積載トレイ36の上方に向けて進退可能な左右1対の補助支持部材56を有する。
【0032】
シート搬入機構52は、後述するようにシート束搬出機構54としても機能する搬送ローラー装置71と、掻き込み回転体72とを備える。搬送ローラー装置71は、処理トレイ51を挟んで上側の搬送ローラー73と下側の搬送ローラー74とからなるローラー対を幅方向に左右各1対有する。上側搬送ローラー73は、処理トレイ51の上方に揺動可能に支持された昇降ブラケット75の先端に回動可能に支持され、下側搬送ローラー74は、前記処理トレイ下側の支持ロッド61に回動自在に設けられている。
【0033】
シートが排紙口35から処理トレイ51に排出されると、昇降ブラケット75が下向きに回転して上側搬送ローラー73を該処理トレイ上のシート上面に当接させる。次に、上側搬送ローラー73を駆動して図中反時計方向に、下側搬送ローラー74を時計方向に回転させる。これにより、シートは処理トレイ51上を搬入方向即ち搬出方向とは逆方向に搬送される。
【0034】
掻き込み回転体72は、処理トレイ51の上方かつ搬出方向上流側に、回転可能に配置されたリング形状又は短円筒状のベルト部材で構成される。前記ベルト部材は、処理トレイ51上を搬送されてくるシートの上面に接触し、押圧しながら図中反時計方向に回転する。これにより、搬送中のシートに生じ得るカールやスキューに対応しながら、シートをその先端が処理トレイ51の搬出方向上流端に設けられたシート端規制部材76に当接するまで送り込むことができる。シート端規制部材76は、例えば
図4に示す断面コ字形のチャネル状部材で構成される。
【0035】
シート整合機構53は、シート端制限部とサイド整合機構とから構成される。前記シート端制限部は、上述したシート端規制部材76を左右1対有する。シート端規制部材76は、排紙口35から処理トレイ51上に搬入されたシートの位置を搬入(又は搬出)方向に、該シートの搬入方向先端(又は搬出方向後端)で規制かつ/又は整合させる。
【0036】
前記サイド整合機構は、処理トレイ51上のシート及びシート束を幅方向に移動させ、その側端縁で幅方向の位置を規制かつ/又は整合させる。前記サイド整合機構は、
図4に示すように、処理トレイ51の幅方向中心を挟んで左右に配置された一対のサイド整合部材77を有する。サイド整合部材77は、互いに内面を対向させて、処理トレイ51のシート支持面55から垂直上方に延出する平板状の部材で構成されている。各サイド整合部材77の前記内面は、それぞれ処理トレイ51上のシートの幅方向の近接する側端縁と係合して、該シートの幅方向位置を規制する。
【0037】
各サイド整合部材77は、それぞれ処理トレイ51の背面側に設けた可動支持部(図示せず)と、該処理トレイに貫設された幅方向の直線状スリット78を介して一体に結合されている。各前記可動支持部はそれぞれ、例えばラックピニオン機構を介して個別の駆動モーターにより駆動されて幅方向に往復移動し、それによって各サイド整合部材77は、それぞれ独立して互いに接近又は離反する向きに移動させ、所望の幅方向位置に停止させることができる。
【0038】
シート搬出機構54は、
図5に示すように、コンベア装置81と上述した搬送ローラー装置71とから構成される。コンベア装置81は、駆動モーター82より駆動される駆動プーリー83と従動プーリー84との間に掛け回され、シートの搬出方向に沿って両方向に周回移動するコンベアベルト85を有する。コンベアベルト85には、処理トレイ51のシート支持面55に沿って移動するシート押出部材86が固定されている。
【0039】
シート押出部材86は、処理トレイ51の搬出方向上流端付近の初期位置と、駆動プーリー83と従動プーリー84との略中間に設定される最大押出位置との間で、両方向に移動可能に設けられている。シート押出部材86は、例えば
図4に示す断面コ字形のチャネル状部材で構成され、シート支持面55上のシートの後端即ち搬出方向上流端を押し出すようにして、該シートを搬出方向に送り出す。また、シート押出部材86は、前記シート端制限部の一部として、少なくとも前記初期位置から搬出方向に移動した位置で、シートの後端位置を規制する。
【0040】
搬送ローラー装置71は、各対の上側搬送ローラー73と下側搬送ローラー74とが、処理トレイ51の搬出方向下流端付近でシートを搬送可能に上下から挟み込むように配置されている。左右の前記ローラー対は、
図4に示すように、処理トレイ51の幅方向中心を挟んで左右対称に配置される。
【0041】
図6は、上述した実施形態のシート処理装置37を備えた画像形成システム100の制御構成を示している。画像形成システム100は、画像形成装置Aの本体制御部87と、それに接続されたシート後処理装置Bの後処理装置制御部88とを備えている。ユーザーは、本体制御部87に接続された入力部(図示せず)から、画像形成装置Aにおける画像形成モードと、シート後処理装置Bにおける後処理モードの設定を行う。
【0042】
画像形成モードでは、例えばカラー・モノクロ印刷、両面・片面印刷などのモード設定と、シートサイズ、シート紙質、プリントアウト部数、拡大・縮小印刷、などの画像形成条件を設定する。後処理モードでは、例えば整合処理モード、綴じ処理モード、折り処理モード、穿孔処理モード等の様々な後処理モードの条件を設定する。
【0043】
本体制御部87は、設定された後処理モードの条件と、シート枚数、部数及びシートサイズ等の情報を後処理装置制御部88に転送する。更に本体制御部87は、シートへの画像形成を終了する都度、ジョブ終了信号を後処理装置制御部88に送信する。
【0044】
後処理装置制御部88は、制御CPUとそれに接続されたROM及びRAMとで構成され、前記ROMに記憶された制御プログラムと前記RAMに記憶された制御データによって、第1処理部B1における所定の後処理を実行する。このため、後処理装置制御部88の前記CPUには、上述した全ての駆動モーター及びセンサーが接続され、各駆動モーターの駆動を制御する。
【0045】
後処理装置制御部88によりシート処理装置37及び排出ローラー対39を制御して、複数のシートShを処理トレイ51上に集積してシート束を形成した後、積載トレイ36に搬出する過程を添付図面を用いて説明する。
図7(a)〜(c)は、シートShを処理トレイ51に搬入する過程、
図8(a)〜(e)及び
図9(d)、(e)は、処理トレイ51上に後続のシートを集積してシート束を形成する過程、
図10(a)〜(d)は、処理トレイ51上のシート束を積載トレイ36に搬出する過程をそれぞれ示している。
図11は、複数のシートを処理トレイ51上に集積してからシート束として積載トレイ36に搬出するまでの過程のフロー図である。
【0046】
先ず、
図7(a)に示すように、排出ローラー対39を回転させて、排紙口35から処理トレイ51上にシートShを排出させる(ステップSt1)。第1排紙パス30及び排紙口35付近にそれぞれ設けた排紙センサーがシートShの後端を検出することによって、シートShの処理トレイ51への排出が検知されると、シート搬入機構52を作動させる(ステップSt2)。
図7(b)に示すように、昇降ブラケット75を下向きに回転させて、上側搬送ローラー73を処理トレイ51上のシート上面に当接させ、図中反時計方向に回転させると共に、掻き込み回転体72を同じく図中反時計方向に回転させて、シートShを搬入方向に搬送する。
【0047】
図7(c)及び
図8(a)に示すように、シートShをその先端がシート端規制部材76に当接するまで搬送した後、上側搬送ローラー73及び掻き込み回転体72を停止させる。これにより、シートShは、その搬出方向後端がシート端規制部材76により位置決めされる。このとき、シートShは、搬出方向下流側の端部が積載トレイ36上面、又は積載トレイ36上のシート上面に接しており、処理トレイ51と積載トレイ36とに跨がった状態で支持される。
【0048】
次に、
図8(a)の待避位置にある左右のサイド整合部材77を、シートShを両側から挟み込むように内側に移動させる(ステップSt3)。各サイド整合部材77は、それぞれ規制面77aがシートShの両側端縁に係合し、前記両規制面の離隔距離がシートShの幅寸法と一致する位置まで移動させる。これにより、シートShは、
図8(b)に示すように、その幅方向中心が処理トレイ24のセンター基準Sxに一致する集積位置に位置合わせされる。この後、サイド整合部材77をそれぞれ
図8(a)の前記待避位置に復帰させる。
【0049】
図8(c)に示すように、次のシートSh2を、
図7(a)と同様にして処理トレイ51の先のシートSh1の上に排出する(ステップSt4)。次のシートSh2は、
図7(b)と同様に上側搬送ローラー73及び掻き込み回転体72を回転させて、その先端即ち搬出方向後端がシート端規制部材76に当接するまで搬送して位置決めする(ステップSt5)。次に、
図8(a)と同様にサイド整合部材77を内側に移動させ、シートShを規制面77aで両側から挟み込み、その幅方向中心を処理トレイ24のセンター基準Sxに位置合わせする(ステップSt5)。これにより、
図9(d)に示すように、処理トレイ51の先のシートSh1の上に、次のシートSh2が、搬出方向及び幅方向に位置を整合させて積層される。
【0050】
これら
図8(c)、
図9(d)の上記過程を繰り返すことによって、処理トレイ51上に所定枚数のシート束が形成される(ステップSt7)。形成された前記シート束は、必要に応じて幅方向即ち搬出方向に直交する向きに所定の距離オフセット移動させることができる。前記オフセット移動は、両サイド整合部材77を前記待避位置に復帰させずにシート束Sbを両側から挟んだまま、
図9(e)に示すように、幅方向に移動させることにより行う。
【0051】
次に、処理トレイ51上に形成しかつ必要に応じてオフセット移動させたシート束Sbを、シート搬出機構54により積載トレイ36に搬出する。シート束Sbを、
図9(e)に示すように両サイド整合部材77で両側から挟んだまま、コンベア装置81を作動させて、シート押出部材86を
図10(a)の搬出方向上流端位置から
図10(b)の最大押出位置まで駆動し、シート束Sbを搬出方向に、その搬出方向後端が前記最大押出位置に至る位置まで搬送する(ステップSt8)。
【0052】
シート押出部材86が前記最大押出位置で停止した後、
図10(b)に示すように、上側搬送ローラー73を下方に移動させてシート束Sbの上面に当接させ、シート束Sbを下側搬送ローラー74との間に挟み込む。
図10(c)に示すように、上側搬送ローラー73を駆動して図中時計方向に、下側搬送ローラー74を反時計方向にそれぞれ回転させ、シート束Sbを搬出方向に搬送する。シート押出部材86は、前記最大押出位置で停止した後、前記搬出方向上流端位置に戻す。シート束Sbは、上側及び下側搬送ローラー73,74によって、
図10(d)に示すように積載トレイ36上に搬出される(ステップSt9)。
【0053】
シート後処理装置Bは、後続のシートを一時的に第1排紙パス30の上流側に溜めておくバッファリング機能を備えている。本実施形態では、処理トレイ51上に載置された先のシート束Sbに所定の処理を行う間、画像形成装置Aから送り込まれる後続のシートSh3は、第1及び第2経路切換手段33,34を開いた状態でシート搬入経路28から第1排紙パス30に搬送され、排紙口35から処理トレイ51に排出されずに反転パス90内にバッファリング即ち一時的に滞留される。これにより、画像形成装置Aから排出されるシートを、中断したり遅らせたりすることなく、シート後処理装置Bに受け入れることができ、高い生産性を保つことが可能となる。
【0054】
本実施形態において、処理トレイ51上で先のシート束Sbに行う所定の処理は、シート整合機構53の前記シート端制限部とサイド整合機構とを用いて、載置した複数のシートの位置を整合させてシート束を形成する整合処理である。反転パス90は、第1排紙パス30の上流側に連通する第2排紙パス31の上流側部分によって構成される。
【0055】
図12(a)〜(e)は後続のシートをバッファリングする過程を示している。
図12(a)に示すように、後続のシートSh3は、その後端即ち上流端が第2経路切換手段34を通過して所定のスイッチバック位置Pbに至るまで、排出ローラー対39によって第1排紙パス30を下流側に搬送する(ステップSt10)。このとき、シートSh3は、下流側先端部分が排紙口35から処理トレイ51の上方に延出するが、完全に排出されることはない。
【0056】
後続のシートSh3の後端がスイッチバック位置Pbに達すると、
図12(b)に示すように、第2経路切換手段34を閉じ、かつ排出ローラー対39を逆転させ、後続のシートSh3をスイッチバック搬送して反転パス90(第2排紙パス31)内に送り込む(ステップSt11)。シートSh3は、その下流端を第1排紙パス30の入口付近に位置させて、搬送ローラー対91により挟持された状態で、反転パス90内の所定のバッファ位置に保持される。
【0057】
次の後続のシートSh4がシート搬入経路28を搬送されて、その下流側先端が第1排紙パス30に入り、
図12(c)に示すように、前記バッファ位置にある先の後続のシートSh3の下流端と一致する位置に至ると、搬送ローラー対91を回転させて該先の後続のシートSh3を反転パス90から第1排紙パス30に搬送する。搬送ローラー対91の搬送速度は、シート搬入経路28の搬送ローラー対92の搬送速度と同じである。先の後続のシートSh3と次の後続のシートSh4は、第1排紙パス30内で重なった状態で排出ローラー対39に向けて搬送する(ステップSt12)。
【0058】
排出ローラー対39は、後続のシートSh3,Sh4を搬出方向に搬送して排紙口35から部分的に排出させる。後続のシートSh3,Sh4は、
図12(d)に示すように、その後端位置が第1排紙パス30内のスイッチバック位置Pbに達すると、第2経路切換手段34を閉じ、かつ排出ローラー対39を逆転させてスイッチバック搬送し、反転パス90内に送り込む。反転パス90に搬送された後続のシートSh3,Sh4は、搬送ローラー対91により挟持されて前記所定のバッファ位置まで搬送され、保持される。
【0059】
これら一連の過程を繰り返すことによって、
図12(e)に示すように、所定枚数の後続のシートSh3,Sh4を反転パス90内に滞留させることができる。滞留させるシート枚数は、第1処理部B1におけるシート束Sbの整合処理に要する時間と、画像形成装置Aから送り込まれるシートの搬送速度とによって設定できるが、一度に整合処理されるシート束のシート枚数を超えることはない。
【0060】
反転パス90内の後続のシートSh3,Sh4は、第1処理部B1におけるシート束Sbの整合処理が終了するタイミングに合わせて、再び搬送ローラー対91により第1排紙パス30に搬送される。反転パス90から第1排紙パス30を通る経路は、少なくともシート搬入経路28より小さい曲率で湾曲しているので、シートSh3,Sh4を反転パス90から高速で搬送すると、その最中に折れ、曲がり、しわ、破れ等の損傷を与える虞がある。かかる損傷を防止するために、搬送ローラー対91による反転パス90内でのシート搬送速度は、搬送ローラー対92によるシート搬入経路28内でのシート搬送速度よりも低速に設定される。
【0061】
バッファリングしたシートSh3,Sh4のシート枚数をカウントして、それが一度に整合処理されるシート束のシート枚数と同じであるかを判定する(ステップSt13)。そうである場合は、更に後続のシートが画像形成装置Aから第1排紙パス30に送り込まれる前に、シートSh3,Sh4を反転パス90から処理トレイ51に搬出する(ステップSt14)。それにより、バッファリングしたシートSh3,Sh4の後端に第1排紙パス30内で後続のシートが追い着いて衝突したり、それにより処理トレイ51への搬出が妨げられ、損傷し、後続のシートまでが合流し、ジャム(紙詰まり)する等の問題が発生することを防止する。
【0062】
バッファリングしたシート枚数が、一度に整合処理されるシート束のシート枚数より1枚少ない場合、
図12(e)に示す反転パス90内のシートSh3,Sh4に、更に後続のシートを合流させ、必要枚数にして処理トレイ51に搬出する(ステップSt15)。例えば、
図13(a)に示すように、更に後続のシートSh5がシート搬入経路28を搬送されて、その下流側先端が第1排紙パス30に入り、前記バッファ位置にある先の後続のシートSh3,Sh4の下流端と一致する位置に至ると、搬送ローラー対91を回転させて該先の後続のシートSh3,Sh4を反転パス90から第1排紙パス30に搬送する。
【0063】
上述したように、本実施形態では、最後のシートSh5が反転パス90内のシートSh3,Sh4よりも高速で搬送されるので、その下流側端部が先に排出ローラー対39に到達し、衝止されて停止する。そこへ後から排出ローラー対39に到達した先のシートSh3,Sh4が、第1排紙パス30内で重なった状態で合流する。次に、排出ローラー対39を搬出方向に、途中で反転させずに回転させると、シートSh3,Sh4,Sh5は、
図13(b)に示すように、下流側端部を揃えて排出ローラー対39にニップされ、処理トレイ51上に搬出される。
【0064】
この場合、最後のシートSh5より後のシートがシート搬入経路28を搬送されてくるまでに、反転パス90内のシートSh3,Sh4だけを処理トレイ51に搬出する場合よりも、時間的に余裕がある。従って、画像形成装置Aから供給される後のシートが第1排紙パス30内で追い着くことによって起こり得る上記衝突等の問題を、より確実に回避することができる。
【0065】
バッファリングされる後続のシートは、
図12(a)に示すように、搬出ローラー対39における反転動作の際に、その下流側部分が排紙口35から処理トレイ51上に大きく延出する。そのため、バッファリング対象の後続シートが、処理トレイ51上での処理動作範囲内に入ったり通過する場合がある。このとき、シート処理装置37を作動させて、処理トレイ51上に載置されているシート又はシート束に処理を行うと、その処理動作がバッファリング対象の後続シートと干渉し、その搬送を妨げたり、シートに損傷を与える虞がある。
【0066】
シート処理装置37の処理動作がバッファリング対象の後続シートの搬送と干渉する場合として、本実施形態では、
図7(c)又は
図8(c)のように、処理トレイ51上に排出された先のシートSh又はSh2を、その搬出方向後端がシート端規制部材76に当接する位置まで搬送して搬出方向に整合させる処理がある。この場合、シートを処理トレイ上で搬入方向に送り込むシート搬入機構52の搬送ローラー装置71の動作が、バッファリング対象の後続シートと干渉する虞がある。
【0067】
図14は、ステップSt1又はSt4の後、
図7(a)のように、先のシートShが処理トレイ51上に、積載トレイ36に跨がって排出された状態で、バッファリング対象の後続シートShbが搬出ローラー対39により反転搬送される場合を示している。
図15は、ステップSt1又はSt4の後で、後続シートShbを反転搬送する過程のフロー図である。この場合、排紙口35から処理トレイ51上に延出している後続シートShbの搬送方向下流側部分が、搬送ローラー装置71の上側搬送ローラー73及び昇降ブラケット75の可動範囲R1内にあると、それら上側搬送ローラー及び昇降ブラケットの動作は、バッファリング対象の後続シートShbと干渉する。
【0068】
本体制御部87は、後続シートShbが、反転動作の際に上側搬送ローラー73の可動範囲R1を通過するかを判定する(ステップSt21)。そうである場合は、後続シートShbの搬出方向下流端が可動範囲R1に至ってから、該可動範囲を後続シートShbが通過して抜け出るまでの間、シート搬入機構52の動作を遅らせる。即ち、昇降ブラケット75を同図に示す上方の初期位置に待機させ、上側搬送ローラー73を処理トレイ51上のシート上面に当接させる下降動作を遅らせる(ステップSt22)。
【0069】
これにより、バッファリング対象の後続シートShbは、搬出ローラー対39における反転動作において、何ら妨げられたり遅延させられることなく、所定の搬送速度で反転パス90に反転搬送される。後続シートShbが可動範囲R1を抜け出たと判断される(ステップSt23)と、ステップSt2又はSt5に進み、処理トレイ51上のシートShの搬出方向後端を位置合わせする。
【0070】
本体制御部87は、別の実施形態において、昇降ブラケット75の下降動作を低速で行わせることにより、バッファリング対象の後続シートShbとの干渉を回避することができる。この場合、昇降ブラケット75の下降速度、下降開始のタイミングは、後続シートShbのサイズ(搬出方向長さ)から予め決定されている排紙口35からの最大延出長さ、排出ローラー対39のシート搬送速度等に基づいて、可動範囲R1における後続シートShbの通過状態を考慮して決定される。
【0071】
後続シートShbの搬出方向長さが小さく、その搬出方向下流端が、排紙口35から最大に延出しても、可動範囲R1に至らないと判断される場合(ステップSt21)は、上側搬送ローラー73及び昇降ブラケット75を動作させても、後続シートShbと干渉する虞がない。従って、本体制御部87は、後続シートShbの反転動作に拘わらず、ステップSt2又はSt5に進み、通常通りに搬出方向の整合処理を行い、昇降ブラケット75を下降させ、上側搬送ローラー73を回転させて、処理トレイ51上のシートShを搬入方向に搬送する。
【0072】
本実施形態において、シート処理装置37の処理動作がバッファリング対象の後続シートの搬送と干渉する別の場合として、
図8(b)、(d)に示すように、搬出方向後端をシート端規制部材76に当接させたシートSh又はSh2を前記サイド整合機構で幅方向に整合させる処理、及び
図8(e)に示すように、シート束Sbを幅方向に移動させるオフセット処理がある。これらの場合、シート又はシート束を処理トレイ上で幅方向に移動させる前記サイド整合機構のサイド整合部材77の動作が、バッファリング対象の後続シートと干渉する虞がある。
【0073】
図16(a)、(b)は、ステップSt2又はSt5の後、
図7(d)及び
図8(a)のように、処理トレイ51上のシートShがその搬出方向後端をシート端規制部材76に当接させた状態で、バッファリング対象の後続シートShbが搬出ローラー対39により反転搬送される場合を示している。
図17は、ステップSt2又はSt5の後で、後続シートShbを反転搬送する過程のフロー図である。この場合、排紙口35から処理トレイ51上に延出している後続シートShbの搬送方向下流側部分が、シートShを整合処理するサイド整合部材77の可動範囲R2内にあると、該サイド整合部材の動作は、バッファリング対象の後続シートShbの前記搬送方向下流側部分と干渉する。
【0074】
本体制御部87は、後続シートShbが、反転動作の際にサイド整合部材77の可動範囲R2を通過するかを判定する(ステップSt31)。そうである場合は、後続シートShbの搬出方向下流端がサイド整合部材77の可動範囲R2に至ってから、該可動範囲を後続シートShbが通過して抜け出るまでの間、サイド整合部材77の動作を遅らせる。即ち、サイド整合部材77を同図に示す左右の初期位置に待機させ、前記サイド整合機構による整合処理を遅らせる(ステップSt32)。
【0075】
これにより、バッファリング対象の後続シートShbは、搬出ローラー対39における反転動作において、何ら妨げられたり遅延させられることなく、所定の搬送速度で反転パス90に反転搬送される。後続シートShbが可動範囲R2を抜け出たと判断される(ステップSt33)と、ステップSt3又はSt6に進み、処理トレイ51上のシートShの幅方向の位置合わせを行う。
【0076】
本体制御部87は、別の実施形態において、サイド整合部材77の前記初期位置からシートShの両側縁に当接する処理位置までの移動を低速で行わせることにより、バッファリング対象の後続シートShbとの干渉を回避することができる。この場合、サイド整合部材77の移動速度、移動開始のタイミングは、該サイド整合部材の処理トレイ51からの高さ、後続シートShbのサイズ(搬出方向長さ)から予め決定されている排紙口35からの最大延出長さ、排出ローラー対39のシート搬送速度等に基づいて、可動範囲R2における後続シートShbの通過状態を考慮して決定される。
【0077】
後続シートShbの幅寸法が小さく、その搬出方向下流端が、排紙口35から最大に延出しても、可動範囲R2に含まれないと判断される場合(ステップSt31)は、サイド整合部材77を動作させても、後続シートShbと干渉する虞がない。従って、本体制御部87は、後続シートShbの反転動作に拘わらず、通常通りにサイド整合部材77を移動させて、幅方向の整合処理を行う。
【0078】
また、
図8(e)に示すオフセット処理の場合、サイド整合部材77の可動範囲が、幅方向の整合処理における可動範囲R2とは異なる。しかしながら、この場合も、本体制御部87が、
図14に関連して上述したと同様に、前記サイド整合機構の動作を制御することによって、バッファリング対象の後続シートShbとの干渉を回避することができる。
【0079】
更に、本実施形態において、シート処理装置37の処理動作がバッファリング対象の後続シートの搬送と干渉する別の場合として、ステップSt7又はステップSt8の後、
図10(b),(c)に示すように、処理トレイ51上のシート又はシート束を積載トレイ36に搬出する処理がある。
図18は、ステップSt7の後で、後続シートShbを反転搬送する過程のフロー図である。
図19は、ステップSt8の後で、後続シートShbを反転搬送する過程のフロー図である。
【0080】
これらの場合、シート押出部材86が
図10(a)の搬出方向上流端位置から
図10(b)の最大押出位置まで移動する可動範囲において、バッファリング対象の後続シートShbと干渉する虞がある。更に、
図14に関連して上述したように、排紙口35から処理トレイ51上に延出している後続シートShbの搬送方向下流側部分が、搬送ローラー装置71の上側搬送ローラー73及び昇降ブラケット75の可動範囲R1内にあると、それら上側搬送ローラー及び昇降ブラケットの動作は、バッファリング対象の後続シートShbと干渉する。
【0081】
本体制御部87は、後続シートShbが、反転動作の際にシート押出部材86の可動範囲を通過するかを判定する(ステップSt41)。そうである場合は、後続シートShbの搬出方向下流端がシート押出部材86の可動範囲に至ってから、該可動範囲を後続シートShbが通過して抜け出るまでの間、シート押出部材86の動作を遅らせる。即ち、シート押出部材86を搬出方向上流端の初期位置に待機させ、コンベア装置81による搬送を遅らせる(ステップSt42)。
【0082】
これにより、バッファリング対象の後続シートShbは、搬出ローラー対39における反転動作において、何ら妨げられたり遅延させられることなく、所定の搬送速度で反転パス90に反転搬送される。後続シートShbが前記シート押出部材の可動範囲を抜け出たと判断される(ステップSt43)と、ステップSt8に進み、シート押出部材86により処理トレイ51上のシート束Sbを搬出方向に、その後端が前記最大押出位置に至るまで搬送する。
【0083】
図19において、本体制御部87は、後続シートShbが、反転動作の際に上側搬送ローラー73の可動範囲R1を通過するかを判定する(ステップSt51)。そうである場合は、後続シートShbの搬出方向下流端が可動範囲R1に至ってから、該可動範囲を後続シートShbが通過して抜け出るまでの間、上側搬送ローラー73の動作を遅らせる。即ち、昇降ブラケット75を同図に示す上方の初期位置に待機させ、上側搬送ローラー73を処理トレイ51上のシート上面に当接させる下降動作を遅らせる(ステップSt42)。
【0084】
これにより、バッファリング対象の後続シートShbは、搬出ローラー対39における反転動作において、何ら妨げられたり遅延させられることなく、所定の搬送速度で反転パス90に反転搬送される。後続シートShbが上側搬送ローラー73の可動範囲R1を抜け出たと判断される(ステップSt53)と、ステップSt9に進み、シート束Sbを搬出方向に搬送し、積載トレイ36上に搬出する。
【0085】
本体制御部87は、
図14に関連して上述したように、上側搬送ローラー73及び昇降ブラケット75の動作開始のタイミングを遅らせ、又はそれらの動作速度を遅くすることによって、前記上側搬送ローラー及び昇降ブラケットとの干渉を回避することができる。更に本体制御部87は、排紙口35から処理トレイ51上に延出する後続シートShbの搬送方向下流側部分が、シート押出部材86の搬出方向上流端位置から大押出位置までの移動範囲にある間、該シート押出部材の動作開始のタイミングを遅らせ、又はその動作速度を遅くする。これにより、シート押出部材86とバッファリング対象の後続シートShbとの干渉を、同様に回避することができる。
【0086】
本発明は、バッファリング対象の後続シートShbが、上記各実施形態のように第1処理部B1において処理トレイ51から積載トレイ36に搬出される場合だけでなく、搬出ローラー対39による反転搬送させた後又は反転パス90に滞留させた後、シート後処理装置Bの別の処理部に送り込まれる場合も、同様に適用することができる。また、排紙口35から処理トレイ51に排出される後続シートShbは、上記整合処理を行わずに、そのまま該後続シート単独で又は該処理トレイ上の先のシート若しくはシート束と共に、搬送ローラー73、74によって積載トレイ36に搬出することもできる。
【0087】
以上、本発明を好適な実施形態に関連して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その技術的範囲において、様々な変更又は変形を加えて実施し得ることは言うまでもない。