特許第6532166号(P6532166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6532166
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】ダンプトラック
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/18 20060101AFI20190610BHJP
   B62D 21/02 20060101ALI20190610BHJP
   B60P 1/28 20060101ALI20190610BHJP
【FI】
   B62D21/18 G
   B62D21/02 A
   B60P1/28 Z
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-151560(P2016-151560)
(22)【出願日】2016年8月1日
(65)【公開番号】特開2018-20610(P2018-20610A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2018年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北口 篤
(72)【発明者】
【氏名】石原 和典
(72)【発明者】
【氏名】岩城 毅
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 芳文
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−30581(JP,A)
【文献】 特開2015−155250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/18
B60P 1/28
B62D 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム、前記車体フレームの後端部に設けられたマウント、前記マウントに取り付けられたヒンジピン、及び前記ヒンジピンを介して前記車体フレームに対して上下方向に回動自在に取り付けられた荷台が設けられ、前記荷台に積載された運搬対象物を運搬するダンプトラックであって、
前記車体フレームは、
左右の両側に配置されて前後方向に延びる一対のサイドフレームと、
前記各サイドフレームの後端部に接続されて左右方向に延びるリアメンバとを備え、
前記各サイドフレームは、
左右方向で間隔をもって前後方向に延びる内側板及び外側板と、
前記内側板及び前記外側板の上端を閉塞する上板と、
前記内側板及び前記外側板の下端を閉塞する下板と、
前記上板及び前記下板の後端を連結し、前記車体フレームの後方側へ湾曲して形成された曲げ板とを有し、
前記車体フレームの後部は、前記各サイドフレームの前記外側板の後端部の周縁と前記曲げ板の内周面とが接触するように、これらの外側板の後端部が前記曲げ板の内側に収容され、かつ、前記リアメンバの両端が左右の前記外側板の内側面に接合されたボックス構造から成るテールフレームを備え、
前記テールフレームは、前記外側板の後端部の周縁と前記曲げ板の内周面との接触部分に、前記ボックス構造の外側及び内側から溶接して形成された複数の溶接部を有することを特徴とするダンプトラック。
【請求項2】
請求項1に記載のダンプトラックにおいて、
前記マウントは、厚さが前記外側板よりも大きく設定され、前記曲げ板の外周面に立設された平板状の支持部材を備え、
前記支持部材は、前記外側板と平行に配置され、前記外側板の上下方向の延長線上に配置されたことを特徴とするダンプトラック。
【請求項3】
請求項1に記載のダンプトラックにおいて、
前記マウントは、厚さが前記外側板よりも大きく設定され、前記曲げ板の外周面に立設された平板状の支持部材を備え、
前記支持部材は、
前記ヒンジピンの軸部を嵌合するためのヒンジピン用嵌合部が設けられ、前記曲げ板を覆うようにその外周面に沿って湾曲した凹部を含む基端部と、
前記基端部の前記凹部の両側から前記上板側及び前記下板側へ向かって突出した上端部及び下端部とを有し、
前記上端部及び前記下端部のうち少なくとも一方は、前記リアメンバの上下方向の延長線上の位置まで延設されたことを特徴とするダンプトラック。
【請求項4】
請求項3に記載のダンプトラックにおいて、
前記内側板の後端は、前記リアメンバの前面に接合されたことを特徴とするダンプトラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土砂等の運搬対象物を運搬するダンプトラックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ダンプトラックは、4輪を配置した車体フレームと、この車体フレームの中央から後方にかけて荷台が取り付けられている。その主要構造物の1つである車体フレームは、左右の両側に配置されて前後方向に延びる一対のサイドフレームと、各サイドフレームの前端部を連結するフロントメンバと、各サイドフレームの後端部を連結するリアメンバとから少なくとも構成されている。
【0003】
各サイドフレームは、左右方向で間隔を空けて前後方向に延びる内側板及び外側板と、内側板及び外側板の上端を閉塞する上板と、内側板及び外側板の下端を閉塞する下板と、上板及び下板の後端を連結する曲げ板とを有している。このような構成のサイドフレームは、前後方向に長い構造物であるため比較的薄い板材を使用しており、例えば、上板と下板と両側板とを溶接により接合して中空のボックス構造にすることで、サイドフレームの剛性を確保している(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
ダンプトラックの荷台は、車体フレームの後方にマウントを介して取り付けられたヒンジピンと、このヒンジピンより車体フレームの前方に取り付けられたホイストシリンダとによって、車体フレームに連結されている。これにより、荷台は、ホイストシリンダの伸縮動作に伴って、ヒンジピンを中心に上下方向に回動する(起伏動作する)。
【0005】
このような荷台には、例えば、油圧ショベル等にて土砂や砕石等の運搬対象物が山積みされる。そして、ダンプトラックは、荷台を倒伏状態から起立状態に移行させることによって、荷台に積載された運搬対象物を降ろすことができる構成とされている。一方、荷台の底部には、緩衝材としてのゴムパッドが設けられており、荷台は、ゴムパッドを介して各サイドフレームの上板に着座する。よって、車体フレームは、運搬対象物が積載された荷台の荷重を、ゴムパッド及びヒンジピンを介して受けることとなる。
【0006】
したがって、荷台の積載部に運搬対象物が山積みされた場合、荷台には、この運搬対象物から高い負荷が掛かり、この荷台に掛かる負荷は、荷台の底部を形成する底板に取り付けられたレール及びヒンジピンに連結された部分、すなわち、マウントにて受けられる。特に、このマウントは、荷台の回動軸となるヒンジピンを支持する部材であるため、荷台を起立させて運搬対象物を降ろすときに高い負荷が掛かる。また、マウントは、部分的な部材であることも考慮して、車体フレームと荷台に使用する部材の中では、比較的厚い板材が使用されており、高い剛性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−30581号公報
【特許文献2】実公平7−7268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2に開示された従来技術においては、その厚板のマウントは、車体フレームの後部のテールフレームを構成する比較的薄い曲げ板上に設置されるため、マウントと曲げ板との剛性差によって曲げ板側が高応力となる。また、従来技術の外側板と曲げ板との取り付け構造においては、曲げ板の側方に外側板を配置することにより、これらの部材の接合部分に隙間が生じないようにして溶接されているが、このような構造は剛性を考慮すると理想的ではなく、マウントからの荷重によって曲げ板が変形し易くなっている。その結果、特に外側板と曲げ板との溶接継手部に応力集中が生じ、当該溶接継手部は高応力となる。
【0009】
ところで、溶接継手部が高応力となる構造物の場合、その溶接継手部はその応力と頻度により疲労が蓄積して損傷する場合がある。このような溶接継手部の損傷を発生させないためには、その応力を許容応力以下に抑えること、すなわち、変形を抑制することが有効である。そのため、テールフレームの変形を抑制する方法の一つとして、曲げ板の板厚を厚くすれば良いが、その場合、曲げ板の設置範囲はマウントに比べて広いことから、車体質量が増加し、許容積荷質量の減少、走行燃費の悪化、及びタイヤ寿命の低下等が生じ、好ましくない。
【0010】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、車体質量を増加させることなく、テールフレームの変形を抑止することができるダンプトラックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明のダンプトラックは、車体フレーム、前記車体フレームの後端部に設けられたマウント、前記マウントに取り付けられたヒンジピン、及び前記ヒンジピンを介して前記車体フレームに対して上下方向に回動自在に取り付けられた荷台が設けられ、前記荷台に積載された運搬対象物を運搬するダンプトラックであって、前記車体フレームは、左右の両側に配置されて前後方向に延びる一対のサイドフレームと、前記各サイドフレームの後端部に接続されて左右方向に延びるリアメンバとを備え、前記各サイドフレームは、左右方向で間隔をもって前後方向に延びる内側板及び外側板と、前記内側板及び前記外側板の上端を閉塞する上板と、前記内側板及び前記外側板の下端を閉塞する下板と、前記上板及び前記下板の後端を連結し、前記車体フレームの後方側へ湾曲して形成された曲げ板とを有し、前記車体フレームの後部は、前記各サイドフレームの前記外側板の後端部の周縁と前記曲げ板の内周面とが接触するように、これらの外側板の後端部が前記曲げ板の内側に収容され、かつ、前記リアメンバの両端が左右の前記外側板の内側面に接合されたボックス構造から成るテールフレームを備え、前記テールフレームは、前記外側板の後端部の周縁と前記曲げ板の内周面との接触部分に、前記ボックス構造の外側及び内側から溶接して形成された複数の溶接部を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のダンプトラックによれば、車体質量を増加させることなく、テールフレームの変形を抑止することができる。前述した以外の課題、構成、及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係るダンプトラックの側面図である。
図2図1に示すダンプトラックの車体フレームの側面図である。
図3図2に示す車体フレームの平面図である。
図4図2に示す車体フレームの底面図である。
図5図2のB−B線に沿って要部を切断した断面図である。
図6図2のC−C線に沿って要部を切断した断面図である。
図7図3のD−D線に沿って要部を切断した断面図である。
図8図5に示す外側板と曲げ板との接合部分を拡大して示す図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る要部を図3のD−D線と同じ位置で切断した断面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る外側板と曲げ板との接合部分を拡大して示す図である。
図11図5に示す荷台兼リアサスペンション用マウントに対するリアメンバの配置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るダンプトラックを実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0015】
[第1実施形態]
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るダンプトラック1は、車体フレーム2、一対の前輪3、一対の後輪4、及び荷台5を備えている。一対の前輪3は、車体フレーム2の前部の左右両端に回転可能に取り付けられている。また、一対の後輪4は、車体フレーム2の後部の左右両端に回転可能に取り付けられている。さらに、荷台5は、土砂や砕石等の運搬対象物Aを積載する部分であって、車体フレーム2上に起伏可能に取り付けられている。
【0016】
車体フレーム2は、いわゆる車体であって、左右の両側に配置された一対のサイドフレーム21(図3参照)から構成されている。これら一対のサイドフレーム21は、前後方向に細長く延びたフレーム形状を有し、荷台5が車体フレーム2に着座した状態では、荷台5の一対のレール12がちょうど一対のサイドフレーム21上に載置されるように構成されている。すなわち、サイドフレーム21の幅とレール12の幅が略等しく形成されている。なお、車体フレーム2の構造の詳細については後述する。
【0017】
また、車体フレーム2の後部には、荷台5を起立又は倒伏させる(上下方向に回動させる)際の回転中心となるヒンジピン6が取り付けられている。この車体フレーム2のうちのヒンジピン6より前方には、この車体フレーム2と荷台5とを連結する油圧シリンダとしての一対のホイストシリンダ7が取り付けられている。
【0018】
これらの一対のホイストシリンダ7は、車体フレーム2の前後方向の略中央部に取り付けられている。また、車体フレーム2の左側の前輪3の上方には、オペレータが乗車する運転室であるキャブ8が設けられ、車体フレーム2の前部には、エンジンや油圧機器等(図示せず)が収容されたパワーユニット10が設けられている。
【0019】
よって、オペレータがキャブ8からホイストシリンダ7を駆動すると、荷台5は、ホイストシリンダ7の収縮動作に伴ってヒンジピン6を中心に下方に回動し、車体フレーム2に着座する倒伏姿勢となる。また、荷台5は、ホイストシリンダ7の伸長動作に伴ってヒンジピン6を中心に上方に回動し、運搬対象物Aを後方へ放出する起立姿勢となる。
【0020】
なお、図1の符号9は、荷台5が左右方向に移動することを防止するために車体フレーム2の側部と当接するガイドである。また、車体フレーム2と前輪3との間には、車体フレーム2を介して荷台5を支持するフロントサスペンションシリンダ(図示せず)が介装されており、車体フレーム2と後輪4との間には、車体フレーム2を介して荷台5を支持するリアサスペンションシリンダ(図示せず)が介装されている。
【0021】
荷台5は、底板(フロア)11a、前板(フロント)11b、及び一対の側板(サイド)11cにより上方及び後方が開放された略箱型の形状を有し、その内部に運搬対象物Aを積載するための積載部が形成されている。なお、底板11a、前板11b、及び側板11cはそれぞれ溶接により接合されている。そして、荷台5は、その底板11aが前方にやや下り傾斜した状態で、車体フレーム2に着座している。
【0022】
また、前板11bの上部には、略板状の天板(キャノピ)11dが取り付けられている。この天板11dは、前板11bの上部からダンプトラック1の前方上部を覆うように前方に突出させて取り付けられている。すなわち、この天板11dは、車体フレーム2上に荷台5が着座する倒伏姿勢で、この荷台5からの運搬対象物Aの落下によるキャブ8やパワーユニット10等の損傷を防止するために設けられている。
【0023】
さらに、底板11aの下面には、車体フレーム2の前後方向に亘って、中空のボックス構造から成る一対のレール12が取り付けられており、車体フレーム2と荷台5との間には、衝撃を緩和するための複数のゴムパッド13が設けられている。本発明の第1実施形態では、一対のレール12の下面にゴムパッド13が5個ずつ取り付けられており、荷台5の倒伏姿勢において合計10個のゴムパッド13が車体フレーム2と荷台5との間に介在している。
【0024】
各レール12は、荷台5が車体フレーム2に着座した状態において、ちょうど車体フレーム2の各サイドフレーム21の上面に載置されるように、各サイドフレーム21と同じような形状となっている。ゴムパッド13は、ダンプトラック1の走行中に荷台5が振動するのを防止したり、荷台5に運搬対象物Aを積み込む際の車体フレーム2に対する衝撃を吸収したりするためのものである。
【0025】
また、各レール12の長手方向の中間部よりやや後ろ側の位置には、ヒンジピン6を回転可能に挿通するためのヒンジピンブラケット14が取り付けられている。これらのヒンジピンブラケット14は、ヒンジピン6を回転可能に支持する部材であるため、後述の荷台兼リアサスペンション用マウント27と同様に、比較的厚い板材が使用されており、高い剛性が確保されている。
【0026】
次に、車体フレーム2の具体的な構成について、図2図4を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図2図4に示すように、車体フレーム2は、各サイドフレーム21の前端部に接続されて左右方向に延びるフロントメンバ22と、各サイドフレーム21の後端部に接続されて左右方向に延びるリアメンバ23と、前後方向におけるフロントメンバ22とリアメンバ23との間の位置に設けられ、各サイドフレーム21に接続されて左右方向に延びる複数のクロスメンバ(本実施例では、2枚のクロスメンバ)24とを備えている。
【0028】
サイドフレーム21は、左右方向で間隔をもって前後方向に延びる内側板211及び外側板212と、内側板211の平らな上端面及び外側板212の平らな上端面と当接し、内側板211及び外側板212の上端を閉塞する上板213と、内側板211の平らな下端面及び外側板212の平らな下端面と当接し、内側板211及び外側板212の下端を閉塞する下板214と、これらの上板213及び下板214の後端を連結し、車体フレーム2の後方側へ湾曲して形成された曲げ板215とを有している。
【0029】
したがって、サイドフレーム21は、これらの内側板211、外側板212、上板213、下板214、及び曲げ板215によって内部に空間が形成された中空のボックス構造となっている。内側板211及び外側板212は、いずれも、サイドフレーム21の左右方向(図5の左右方向)に間隔を空けて対峙される。
【0030】
一方、上板213及び下板214は、いずれも、内側板211及び外側板212と溶接により接合される。同様に、曲げ板215は、上板213及び下板214と溶接により接合される。このように形成された各サイドフレーム21は、左右の内側板211及び外側板212と、上下の上板213及び下板214とが溶接により一体化されるので、中空であっても高い剛性が確保されている。
【0031】
また、図3図4に示すように、上板213と下板214は、後側部位が各サイドフレーム21の間を接続する接続部位となり、この接続部位よりも前側部位が二又状に分岐した分岐部位として形成されている。これらの上板213と下板214の接続部位に対応する位置において、前後方向で間隔をもって対面した状態で、上板213と下板214との間に2枚のクロスメンバ24が配置されている。
【0032】
これらのクロスメンバ24は、左右の両端が各サイドフレーム21の内側板211に接合され、上端及び下端が各サイドフレーム21の上板213及び下板214の上記接続部位にそれぞれ接合されている。よって、車体フレーム2は、各クロスメンバ24、各サイドフレーム21の内側板211、上板213、及び下板214により内部に空間が形成された中空のボックス構造を含んでいる。
【0033】
さらに、図2に示すように、車体フレーム2の長手方向の中間部よりやや後ろ側には、ホイストシリンダ7を支持するホイストプレート25が取り付けられ、各クロスメンバ24の下方には、後輪4に駆動力を伝達するための減速機(図示せず)を装着する減速機用マウント26が取り付けられている。また、車体フレーム2の後端部のうち曲げ板215上には、荷台5の一対のヒンジピンブラケット14の内側に互いに間隔を空けて配置された一対の荷台兼リアサスペンション用マウント27が取り付けられている。
【0034】
この荷台兼リアサスペンション用マウント27は、ヒンジピンブラケット14と共に、荷台5の回動軸となるヒンジピン6を支持するため、荷台5を起立させて運搬対象物Aを降ろすときに高い負荷が掛かる。特に、荷台兼リアサスペンション用マウント27は、ヒンジピン6の他、車体フレーム2の後部に作用する荷重や衝撃を内部の油圧により緩和するリアサスペンションシリンダを支持するため、ダンプトラック1の走行に伴う負荷も掛かる。したがって、荷台兼リアサスペンション用マウント27は、局部的な構成部材であることも考慮して、車体フレーム2と荷台5に使用する部材の中では、比較的厚い板材が使用されており、高い剛性が確保されている。
【0035】
ところで、荷台兼リアサスペンション用マウント27は、車体フレーム2の曲げ板215上に設置されているため、荷台兼リアサスペンション用マウント27と曲げ板215との剛性差によって曲げ板215側が高応力となる。そのため、車体フレーム2の剛性を考慮すると、外側板212を曲げ板215の内周側に配置することが理想的であるが、次のような問題が生じる。
【0036】
すなわち、車体フレーム2がボックス構造であるため、内側板211、外側板212、及びリアメンバ23の配置関係によっては、車体フレーム2の内側から外側板212と曲げ板215とを十分に溶接するのが困難となる。また、外側板212を曲げ板215の内周側に配置して両部材を接合させる場合、車体フレーム2の製造上、外側板212と曲げ板215との接合部分に隙間が生じてしまうので、当該接合部分のうち内側の強度の信頼性が低くなる。
【0037】
そこで、本発明の第1実施形態では、図5に示すように、車体フレーム2の後部において、各サイドフレーム21の外側板212の後端部の周縁212Aと曲げ板215の内周面215Aとが接触するように、これらの外側板212の後端部が曲げ板215の内側に収容され、かつ、リアメンバ23の両端が左右の外側板212の内側面212bに接合された中空のボックス構造から成るテールフレーム31が設けられている。
【0038】
そして、このテールフレーム31は、外側板212の後端部の周縁212Aと曲げ板215の内周面215Aとの接触部分に、ボックス構造の外側及び内側から溶接して形成された複数の溶接部(以下、便宜的にボックス構造の外側の溶接部に32Aの符号を付し、ボックス構造の内側の溶接部に32Bの符号を付す)を有している。
【0039】
本発明の第1実施形態に係るテールフレーム31は、左右の内側板211、左右の外側板212、上板213、下板214、曲げ板215、リアメンバ23、及び荷台兼リアサスペンション用マウント27により形成されている。以下、このようなテールフレーム31の具体的な構成について、図5図8を参照しながら詳細に説明する。
【0040】
本発明の第1実施形態においては、テールフレーム31の荷台兼リアサスペンション用マウント27は、例えば図5図7に示すように、厚さが外側板212よりも大きく設定され、曲げ板215の外周面215Bに立設された平板状の支持部材271を備えている。この支持部材271は、外側板212と平行に配置され、外側板212の上下方向の延長線上に位置するように配置されている。
【0041】
具体的には、本発明の第1実施形態に係る支持部材271は、その外側面271aの位置と外側板212の外側面212aの位置が左右方向において一致するように、曲げ板215の外周面215Bに溶接により接合されている。つまり、図6において、外側板212の外側面212aは、支持部材271の外側面271aと同一の鉛直面上に位置し、外側板212の内側面212bは、支持部材271の外側面271aよりも内側、かつ内側面271bよりも外側に位置している。
【0042】
また、図7に示すように、支持部材271は、曲げ板215を覆うようにその外周面215Bに沿って湾曲した凹部を含む基端部271Aと、この基端部271Aの凹部の両側から上板213側及び下板214側へ向かって突出した上端部271B及び下端部271Cとを有している。
【0043】
基端部271Aの上部には、ヒンジピン6の軸部を挿通して嵌合するためのヒンジピン用嵌合部272が設けられ、基端部271Aの下部には、リアサスペンションシリンダのロッドの先端に取り付けられた連結ピン(図示せず)の軸部を挿通して嵌合するためのサスペンションシリンダ用嵌合部273が設けられている。上端部271B及び下端部271Cのうち、例えば、上端部271Bは、リアメンバ23の上下方向の延長線上の位置まで延設されている。なお、リアメンバ23は、上板213及び下板214に対して垂直に配置されている。
【0044】
一方、図6において、内側板211は、支持部材271の内側面271bよりも内側に位置しており、内側板211の後端は、例えば図5に示すように、リアメンバ23の前面に溶接により接合されている。また、図6において、リアメンバ23のうち左右の内側板211の間、例えば、リアメンバ23の中央部分には、外側板212と曲げ板215とを溶接するために、作業員がテールフレーム31のボックス構造内へ通り抜けることが可能なマンホール231が穿設されている。
【0045】
このマンホール231はテールフレーム31の製造時にのみ形成され、外側板212と曲げ板215の溶接作業が完了すると、マンホール231を閉塞する蓋232がリアメンバ23に溶接等で取り付けられることにより、テールフレーム31の内部の空間が密閉されるようになっている。よって、リアメンバ23は1枚の平らな板状体となり、リアメンバ23の強度を維持することにより、リアメンバ23による曲げ板215の支持状態を良好に保つことができるので、曲げ板215の中央側が下方へ撓むのを抑制することができる。
【0046】
外側板212と曲げ板215の溶接作業においては、例えば図8に示すように、外側板212及び曲げ板215の直交する2つの面をテールフレーム31の外側及び内側から溶接する隅肉溶接が用いられることにより、溶接ビードから成る溶接部32A,32Bが外側板212の後端部の左右両側にそれぞれ形成される。これらの溶接部32A,32Bにおけるのど厚La,Lb及び脚長Sa,Sbは、左右両側で互いに均等になるようにそれぞれ設定されている(La=Lb,Sa=Sb)。
【0047】
このように構成した本発明の第1実施形態に係るダンプトラック1によれば、車体フレーム2の後部のテールフレーム31は、左右の外側板212の後端部を曲げ板215の内周側に配置すると共に、リアメンバ23をこれらの外側板212の間に配置したボックス構造から成っている。そして、外側板212及び曲げ板215が、当該ボックス構造の外側及び内側から溶接して接合されることにより、テールフレーム31の剛性が向上すると共に、荷台兼リアサスペンション用マウント27からの荷重を受ける曲げ板215を外側板212が下側から強固に保持することができる。
【0048】
したがって、曲げ板215が荷台兼リアサスペンション用マウント27からの荷重によって変形し難くなるので、曲げ板215の板厚を厚くしなくても、外側板212と曲げ板215との溶接継手部に発生する応力集中を十分に緩和することができる。これにより、車体質量を増加させることなく、テールフレーム31の変形を抑止できるので、ダンプトラック1の軽量化を実現できると共に、優れた信頼性を得ることができる。
【0049】
また、本発明の第1実施形態に係るダンプトラック1では、荷台兼リアサスペンション用マウント27の支持部材271は、外側板212と左右方向の位置が重なるように、外側板212の真上の位置に平行に配置されているので、荷台兼リアサスペンション用マウント27からの荷重を、曲げ板215を介して外側板212に円滑に伝達することができる。これにより、外側板212と曲げ板215との溶接継手部に掛かる負荷を軽減することができる。
【0050】
また、本発明の第1実施形態に係るダンプトラック1では、支持部材271の上端部271Bは、リアメンバ23と前後方向の位置が重なるように、リアメンバ23の真上の位置まで延設されているので、運搬対象物Aを荷台5から降ろす際に、曲げ板215が荷台兼リアサスペンション用マウント27から受ける負荷をリアメンバ23に分散させることができる。これにより、曲げ板215が撓むのを抑制できるので、荷台兼リアサスペンション用マウント27の横倒れを未然に防ぐことが可能となり、安定した構造を有するテールフレーム31を提供することができる。
【0051】
また、本発明の第1実施形態に係るダンプトラック1では、内側板211の後端は、リアメンバ23の前面に接合されているので、テールフレーム31のうちリアメンバ23よりも後方は、内側板211が存在せず、外側板212、曲げ板215、及びリアメンバ23で仕切られた作業空間を含むボックス構造となっている。そのため、作業員は、リアメンバ23のマンホール231から当該ボックス構造内に入り、外側板212と曲げ板215とを内側から容易に溶接することができる。これにより、外側板212と曲げ板215の溶接作業における利便性を高めることができる。
【0052】
しかも、このような内側板211とリアメンバ23との配置関係を採用することにより、内側板211がリアメンバ23及び曲げ板215を介して荷台兼リアサスペンション用マウント27を支持することができる。このように、本発明の第1実施形態は、テールフレーム31のボックス構造を内側板211で補強しているので、テールフレーム31の耐久性を向上させることができる。
【0053】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態では、図7に示すように、支持部材271の上端部271B及び下端部271Cのうち上端部271Bが、リアメンバ23の上下方向の延長線上の位置まで延設されたのに対し、第2実施形態では、図9に示すように、支持部材271の上端部271B及び下端部271Cのうち下端部271Cが、リアメンバ23の上下方向の延長線上の位置まで延設されたことである。
【0054】
また、本発明の第2実施形態においては、例えば図10に示すように、外側板212の後端部の周縁212Aのうち外側に開先を設け、この開先と曲げ板215の内周面215Aとの突き合わせ部分をテールフレーム31の外側及び内側から溶接する開先隅肉溶接が用いられることにより、溶接ビードから成る溶接部32C,32Dが外側板212の後端部の左右両側にそれぞれ形成される。
【0055】
そして、溶接部32Cにおけるのど厚Lc及び脚長Scは、溶接部32Dにおけるのど厚Ld及び脚長Sdよりも大きくになるようにそれぞれ設定されている(Lc>Ld,Sc>Sd)。つまり、本発明の第2実施形態では、外側板212の後端部の周縁212Aに開先を形成するための機械加工が必要となるものの、テールフレーム31の外側の溶接部32Cの強度が、第1実施形態に係る溶接部32Aの強度よりも増すことから、外側板212と曲げ板215との溶接継手部の信頼性を向上させることができる。その他の第2実施形態の構成は、第1実施形態の構成と同じであり、同一又は対応する部分には同一の符号を付している。
【0056】
本発明の第2実施形態に係るダンプトラック1によれば、上述した第1実施形態と同様の作用効果が得られる他、支持部材271の下端部271Cは、リアメンバ23と前後方向の位置が重なるように、リアメンバ23の真下の位置まで延設されているので、ダンプトラック1の走行に伴って、曲げ板215が荷台兼リアサスペンション用マウント27から受ける負荷をリアメンバ23に分散させることができる。これにより、曲げ板215の変形量を減少させることができるので、外側板212と曲げ板215との溶接継手部の疲労や損傷を軽減することができる。
【0057】
なお、上述した本発明の各実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【0058】
本実施形態は、図7図9に示すように、荷台兼リアサスペンション用マウント27における支持部材271の上端部271B及び下端部271Cのうちいずれか一方がリアメンバ23の上下方向の延長線上の位置まで延設された構成について説明したが、本発明はこの場合に限らず、例えば図11に示すように、支持部材271の上端部271B及び下端部271Cの双方がリアメンバ23の上下方向の延長線上の位置まで延設されるように構成してもよい。
【0059】
また、本実施形態では、図7図9に示すように、リアメンバ23は、上板213及び下板214に対して垂直に配置された場合について説明したが、本発明はこの場合に限らず、例えば図11に示すように、必ずしもリアメンバ23を上板213及び下板214に対して垂直に配置しなくてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…ダンプトラック、2…車体フレーム、5…荷台、6…ヒンジピン、7…ホイストシリンダ、12…レール、14…ヒンジピンブラケット、21…サイドフレーム、22…フロントメンバ、23…リアメンバ、24…クロスメンバ、25…ホイストプレート、26…減速機用マウント、27…荷台兼リアサスペンション用マウント、31…テールフレーム、32A〜32D…溶接部
211…内側板、212…外側板、212A…周縁、212a…外側面、212b…内側面、213…上板、214…下板、215…曲げ板、215A…内周面、215B…外周面、231…マンホール、232…蓋、271…支持部材、271A…基端部、271B…上端部、271C…下端部、271a…外側面、271b…内側面、272…ヒンジピン用嵌合部、273…サスペンションシリンダ用嵌合部
図1
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