(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンは、機械駆動等に用いられ、回転可能に支持されたロータを有するタービン本体を備えている。ロータは、タービン本体に対して蒸気が供給されることによって回転駆動される。
【0003】
このような蒸気タービンでは、運転が停止された際に、ロータが熱の偏りで湾曲したり、自重で撓んだりする等の不具合が生じる場合がある。そのため、蒸気タービンでは、運転停止時にロータを低速で回転させるターニング装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、蒸気タービンには、タービン本体の内部の蒸気を中段から抽気する抽気ラインを有するものがある。このような蒸気タービンでは、抽気した蒸気を前段に再び供給したり、他の設備へ供給したりしている。しかしながら、蒸気タービンが停止してタービン本体の内部の圧力が低下することで、抽気した蒸気がタービン本体の内部へ逆流する可能性がある。そのため、抽気ラインには、抽気した蒸気の逆流を防止するための弁装置が設けられている。
【0005】
このような弁装置では、制御油によってピストンを移動させる油筒によって駆動されることで弁体が開閉可能とされている。長期間に渡って蒸気タービンの運転が継続された場合、蒸気を抽気し続けるために弁装置は開状態のままとなっている。その結果、弁体の位置が移動しないことで、弁体を駆動させるピストンの位置も変化せずに、油筒の内部でピストンが固着して可動不能となる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、蒸気タービンを安定して運転するためには、使用頻度が低くとも、蒸気タービンの停止時に確実に弁体を駆動させて弁装置を閉状態とする必要がある。そのため、弁装置を開状態として蒸気タービンの運転したまま、ピストンが可動することを確認するための動作試験を定期的に行いたいという要望がある。
【0008】
本発明は、弁装置を開状態としたまま動作試験を実施することが可能な弁システム及び蒸気タービンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様に係る弁システムは、流路を弁体によって開閉可能な弁装置と、前記弁体を駆動させる駆動機構と、を備え、前記駆動機構は、軸線方向に延びるシリンダ室を内側に形成するシリンダケースと、該シリンダ室を前記軸線方向の第一側の第一室と、前記軸線方向の第二側の第二室と、に区画するピストンと、前記第一室の内部に作動流体を流入させる流入口と、前記第二室内に配置されて前記ピストンを前記第一側に押し付けるように付勢する弾性部材と、前記第一室と前記第二室とを連通させるバイパス路と、前記バイパス路を開閉可能な開閉弁と、を有し、前記弁装置は、前記ピストンが前記第一側に移動されることで閉塞させる方向に前記弁体が可動され、前記ピストンが前記第二側に移動されることで開放させる方向に前記弁体が可動され、前記バイパス路は、前記弁装置を
全開状態とさせる前記ピストンの前記軸線方向の位置よりも前記第二側で前記第一室と接続されている。
【0010】
このような構成によれば、流入口から第一室に作動流体を供給した状態で開閉弁を開放することで、弁装置が開状態となるピストンの軸線方向の位置よりも第一側に作動流体の液面が移動しない。したがって、ピストンは、弁装置が開状態となる軸線方向の位置よりも第一側には移動できない。そのため、弁装置を閉状態とすることなく、ピストンを移動させることができる。
【0012】
このような構成によれば、開閉弁を開放することでピストンを移動させつつも、弁装置が全開状態となる軸線方向の位置よりも第一側には移動できない。そのため、弁装置を全開状態としたまま、ピストンを移動させることができる。これにより、弁装置の全開状態としたまま動作試験を実施することができる。
【0013】
本発明の第
二の態様に係る弁システムでは、
第一の態様において、前記駆動機構は、前記第二室の内部の前記作動流体を排出させる排出口を有していてもよい。
【0014】
このような構成によれば、開閉弁を開放することでバイパス路を介して第二室に流れ込んだ作動流体を排出口から排出することができる。そのため、第二室に作動流体が溜まったままになってしまうことを抑えることができ、開閉弁を何度開放しても第一室内の作動流体を第二室内に流すことができる。したがって、開閉弁を開放するたびにピストンを繰り返し移動させることができ、動作試験を繰返し実施することができる。
【0015】
本発明の第
三の態様に係る弁システムでは、第一
又は第二の態様のいずれか一つにおいて、前記流入口に繋がれた逆止弁を備えていてもよい。
【0016】
このような構成によれば、動作試験を実施するための開閉弁を開くことで第一室の圧力が変化した際に、第一室内の作動流体が流入口から逆流してしまうことを防ぐことができる。また、第一室の圧力変化が作動流体の供給源に影響を及ぼすことを抑えることができる。
【0017】
本発明の第
四の態様に係る蒸気タービンは、第一から第
三の態様のいずれか一つの弁システムと、前記弁装置で開閉される前記流路によって蒸気が抽気されるタービン本体とを備える。
【0018】
このような構成によれば、蒸気タービンの停止した際に、抽気していた蒸気がタービン本体の内部に逆流することを防ぐように弁装置を安定して閉状態とすることができる。したがって、停止時の不具合の発生を抑えて、安定して蒸気タービンを運転することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、弁装置の開放させたまま動作試験を実施することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の蒸気タービン100を説明する。
図1に示すように、蒸気タービン100は、タービン本体110と、弁システム1とを備える。
【0022】
タービン本体110は、筒状のケーシング130と、不図示の軸受に回転可能に支持されたロータ120と、を有している。
【0023】
ロータ120は、ケーシング130内に配置されている。ロータ120は、ロータ本体121と、このロータ本体121に固定された複数のブレード122とを備えている。このように構成されるブレード122に蒸気Sが供給されることで、タービン本体110は回転力を得ている。
【0024】
ケーシング130は、蒸気流入口131と、蒸気排出口132と、抽気口133とを有している。
蒸気流入口131は、ケーシング130の外部からの蒸気Sを内部に導入する。蒸気流入口131は、ロータ120の複数のブレード122よりも上流側に設けられている。ここで、上流側とは、ロータ120が延在する延在方向の一方側である。つまり、蒸気流入口131から流入した蒸気Sは、複数のブレード122のうち、最も上流側に配置されたブレード122に向かって流れる。
【0025】
蒸気排出口132は、ケーシング130の内部を流れた蒸気Sを外部に排出する。蒸気排出口132は、ロータ120の複数のブレード122よりも下流側に設けられている。ここで、下流側とは、ロータ120が延在する延在方向の他方側である。つまり、蒸気排出口132は、複数のブレード122のうち、最も下流側に配置されたブレード122を通って流れた蒸気Sを排出する。
【0026】
抽気口133は、蒸気流入口131と蒸気排出口132との間からケーシング130の内部の蒸気Sを外部に抽気する。つまり、抽気口133は、蒸気流入口131から導入される蒸気Sよりも低い圧力状態であって、蒸気排出口132から排出される蒸気Sよりも高い圧力状態である蒸気Sを抽気する。抽気口133は、ロータ120の延在方向に並ぶ複数のブレード122の間に配置されている。つまり、抽気口133は、タービン本体110の中段から蒸気Sを抽気している。抽気口133は、抽気ライン133aに接続されている。抽気ライン133aは、抽気口133から抽気した蒸気Sを不図示の他の蒸気タービンや他の設備に供給する。
【0027】
弁システム1は、抽気口133から抽気された蒸気Sの供給量を調整する。本実施形態の弁システム1は、
図2に示すように、弁装置2と、駆動機構3と、制御油供給ライン4と、制御油排出ライン5と、逆止弁6と、を備える。
【0028】
弁装置2は、抽気された蒸気Sの流通する抽気ライン133aの開閉を行う。弁装置2は、抽気ライン133aの一部をなす流路21aを弁体22によって開閉可能とされている。弁装置2は、抽気ライン133aの途中に設けられている。本実施形態の弁装置2は、逆止弁である。つまり、弁装置2は、開状態では流路21aの一方向に向かって蒸気Sを流通可能とし、閉状態では蒸気Sを流通不能としている。弁装置2は、弁本体21と、弁体22と、支持軸23と、規制部24とを有する。
【0029】
弁本体21は、抽気された蒸気Sが流通する流路21aが内部に設けられている。弁本体21は、抽気ライン133aに接続されている。弁本体21は、対向する位置に二カ所の開口が設けられた筐体である。流路21aは、二カ所の開口を連通するように形成されている。
【0030】
弁体22は、弁本体21の内部に配置されている。弁体22は、弁本体21の一方の開口を閉塞可能な形状をなしている。弁体22は、開口に対して嵌合することで弁装置2を閉状態(蒸気Sが流路21aを流通不能な状態)とし、開口から離間することで弁装置2を開状態(蒸気Sが流路21aを流通可能な状態)としている。
【0031】
支持軸23は、弁体22を弁本体21に対して回転させる。つまり、弁体22は、支持軸23を中心として弁本体21に対して回転する。支持軸23は、駆動機構3と接続されている。
【0032】
規制部24は、弁体22の位置を規制している。規制部24は、弁本体21の内部に設けられている。規制部24は、弁体22が弁装置2を全開状態とした際に、弁体22と接触可能な位置に配置されている。つまり、弁体22が規制部24に接触した状態が、弁本体21の開口に対して弁体22が最も開いた状態である。したがって、本実施形態の弁装置2では、規制部24に対して弁体22が接触した状態が全開状態である。
【0033】
駆動機構3は、作動流体である制御油を用いて弁体22を駆動させる。駆動機構3は、供給される制御油の量を調整することで、弁装置2の開度を調整して蒸気Sの抽気を開始又は停止させる。本実施形態の駆動機構3は、シリンダケース31と、ピストン32と、ロッド33と、流入口34と、排出口35と、弾性部材36と、バイパス路37と、開閉弁38と、連結部39と、を有する。
【0034】
シリンダケース31は、軸線O方向に延びるシリンダ室311を内側に形成している。シリンダ室311は、シリンダケース31の内部に形成された制御油が流入する空間である。シリンダケース31は、軸線Oを中心として中空円筒状をなして延びている。本実施形態のシリンダケース31は、二つの有底筒状の部材の開口部分を互いに合わせるようにして形成されている。
【0035】
ピストン32は、シリンダ室311を軸線O方向の第一側(軸線O方向の一方側、
図2における紙面下側)の第一室311aと、軸線O方向の第二側(軸線O方向の他方側、
図2における紙面上側)の第二室311bとに区画している。ピストン32は、シリンダ室311内に配置されている。ピストン32は、軸線O方向に移動する。ピストン32は、シリンダケース31の内周面に全周が摺動可能とされており、シリンダケース31に対する相対位置が変化する。本実施形態のピストン32は、軸線O方向と直交する断面がシリンダケース31の内周面と摺接するような円形状をなしている。これにより、ピストン32は、移動に伴って第一室311aの大きさと第二室311bの大きさとを変化させている。ピストン32は、後述するロッド33に接続されている。ピストン32は、シリンダ室311を第一側に移動することで、弁装置2の開度が小さくなるようにロッド33を介して弁体22を可動させる。ピストン32は、シリンダ室311を第二側に移動することで、弁装置2の開度が大きくなるようにロッド33を介して弁体22を可動させる。つまり、弁装置2は、ピストン32がシリンダ室311を第一側に移動されることで閉塞させる方向に弁体22が可動される。弁装置2は、ピストン32がシリンダ室311を第二側に移動されることで開放させる方向に弁体22が可動される。
【0036】
ピストン32は、予め定めた軸線O方向の位置を超えて第二側に移動することで弁装置2を開状態とする。この際、弁装置2が開状態となるピストン32の軸線O方向の位置を開閉位置Aと称する。したがって、この開閉位置Aよりも第二側にピストン32が移動することで弁装置2は開状態となり、開閉位置Aよりも第一側にピストン32が移動することで弁装置2は閉状態となる。さらに、ピストン32は、開放位置を超えて第二側に移動可能とされている。ピストン32は、開閉位置Aを超えて第二側に移動することで、弁装置2を全開状態とする。この際、弁装置2が全開状態となるピストン32の軸線O方向の位置を全開位置Bと称する。ピストン32は、全開位置Bを超えてさらに第二側に移動可能とされている。この際、ピストン32が最も軸線O方向の第二側に移動した状態での位置を裕度位置Cと称する。
【0037】
ロッド33は、ピストン32に接続されている。ロッド33は、ピストン32とともに移動する。ロッド33は、シリンダケース31の軸線O方向に延びている。ロッド33は、シリンダケース31の軸線Oを中心に円柱状をなして延在している。ロッド33は、端部がナットを介してピストン32に接続されている。ロッド33は、ピストン32と接続されていない側の端部がシリンダケース31の第二側の端部から飛び出している。ロッド33は、軸線O方向の第一側に移動しても、第二側の端部が第二室311b内から突出したままとなる長さで形成されている。
【0038】
流入口34は、シリンダ室311内に制御油を流入させる。流入口34は、第一室311aと連通するようにシリンダケース31と一体に設けられている。流入口34は、第一室311aの内部に制御油を流入させる。流入口34は、シリンダケース31に対して一つのみ設けられている。具体的には、流入口34は、シリンダケース31の第一側の端部寄りの側部に設けられている。流入口34は、後述する制御油供給ライン4に接続されている。
【0039】
排出口35は、シリンダ室311内の制御油を外部に排出させる。排出口35は、第二室311bと連通するようにシリンダケース31と一体に設けられている。排出口35は、第二室311bの内部の制御油を外部に排出させる。排出口35は、シリンダケース31に対して一つのみ設けられている。具体的には、排出口35は、シリンダケース31の裕度位置Cよりも第二側の側部に設けられている。排出口35は、後述する制御油排出ライン5に接続されている。
【0040】
弾性部材36は、第二室311b内に配置されている。弾性部材36は、ピストン32を軸線O方向の第一側に向かって押し付けるように付勢している。弾性部材36は、シリンダ室311を形成するシリンダケース31の内周面のうちの第二側の端面と、ピストン32の第二側を向く端面と、に固定されている。本実施形態の弾性部材36は、例えば、コイル状バネが用いられる。
【0041】
バイパス路37は、第一室311aと第二室311bとを連通させている。バイパス路37は、第一室311aと第二室311bとを繋ぐ配管である。バイパス路37は、開閉位置Aよりも第二側で第一室311aと接続されている。本実施形態のバイパス路37は、全開位置Bの時に丁度ピストン32で開口部分が塞がれる位置であって、裕度位置Cよりも第一側で第一室311aと接続されている。バイパス路37は、排出口35と対向する位置で第二室311bと接続されている。
【0042】
開閉弁38は、バイパス路37の途中に設けられている。開閉弁38は、バイパス路37を開閉可能としている。つまり、開閉弁38が開くことでバイパス路37が開放された状態となる。開閉弁38が閉じることで、バイパス路37が閉塞された状態となる。
【0043】
連結部39は、ピストン32と弁体22とを連結している。連結部39は、ピストン32の移動に伴って弁体22を支持軸23回りに回転させる。連結部39は、ロッド33と支持軸23とを連結している。連結部39は、全開位置Bよりも第一側にピストン32が移動した際には、ロッド33が移動することで支持軸23を回転させる。連結部39は、全開位置Bを超えて第二側にピストン32が移動した際には、ロッド33が移動しても支持軸23を回転させない。つまり、連結部39は、全開位置Bと裕度位置Cとの間では、ロッド33が移動しても支持軸23を回転させない。
【0044】
制御油供給ライン4は、制御油供給源41に接続されている。制御油供給ライン4は、流入口34に接続されている。制御油供給ライン4は、制御油供給源41から供給された制御油を流入口34まで流通させる。制御油供給ライン4は、制御油供給源41からの制御油の供給が停止されることで、流入口34から排出された制御油を制御油供給源41まで流通させる。
【0045】
制御油排出ライン5は、制御油供給源41に接続されている。なお、制御油排出ライン5は、制御油供給源41とは異なる制御油排出先に接続されていてもよい。制御油排出ライン5は、排出口35に接続されている。制御油排出ライン5は、第二室311bから排出された制御油を制御油供給源41まで流通させる。
【0046】
逆止弁6は、制御油供給ライン4の途中に設けられている。逆止弁6は、流入口34に繋がれている。逆止弁6は、制御油供給源41から第一室311aに向かって制御油を流通可能としている。逆止弁6は、第一室311aから制御油供給源41に向かって流れる制御油の流通状態を、第一室311a内の内部圧の急激な低下を防ぐために制御している。
【0047】
次に、上記構成の弁システム1の動作について説明する。
上記のような弁システム1では、蒸気タービン100の運転時に、抽気ライン133aによってタービン本体110からの蒸気Sの抽気を可能とするために弁装置2は全開状態とされている。弁装置2を全開状態とするために、駆動機構3では開閉弁38を閉塞した状態で第一室311aに制御油が供給される。具体的には、制御油供給ライン4を介して制御油供給源41から流入口34に制御油が供給される。流入口34から制御油が供給されることで、第一室311aに制御油が溜まり、ピストン32が制御油に押されて第二側に移動する。ピストン32が第二側に移動することでロッド33が移動し、ロッド33に接続された連結部39によって支持軸23が回転する。ピストン32が開閉位置Aを超えて第二側に移動することで、弁体22が規制部24に向かって回転する。その後、ピストン32が全開位置Bまで移動することで、弁体22は規制部24と接触する位置まで回転する。ピストン32が全開位置Bを超えて裕度位置Cまで移動する間、ロッド33の移動は連結部39によって支持軸23まで伝達されずに、支持軸23は回転しない。その結果、弁体22は、回転せずに規制部24と接触した位置が維持される。これにより、弁装置2は全開状態が維持され、タービン本体110内の蒸気Sを抽気ライン133aによって抽気することが可能とされる。
【0048】
また、弁システム1では、蒸気タービン100の停止時に、抽気ライン133aでのタービン本体110からの蒸気Sの抽気を不能とするために弁装置2は閉状態とされている。弁装置2を閉状態とするために、駆動機構3では第一室311aから制御油が排出される。
図3に示すように、制御油供給ライン4を介して流入口34から第一室311a内の制御油が排出される。流入口34から第一室311aの制御油が排出されることで、裕度位置Cから全開位置Bに向かってピストン32が第一側に移動する。この際、ロッド33の移動は連結部39によって支持軸23まで伝達されずに、支持軸23は回転しない。その結果、弁体22は、回転せずに規制部24と接触した位置が維持される。ピストン32が全開位置Bを超えてさらに第一側に移動することで、ロッド33に接続された連結部39が支持軸23を回転させ始める。支持軸23が回転することで弁体22が規制部24から離れて弁本体21の開口に向かって回転する。ピストン32が開閉位置Aを超えて移動することで、弁体22は弁本体21の開口を閉塞する位置まで回転する。これにより、弁装置2は閉状態となり、タービン本体110内の蒸気Sを抽気ライン133aによって抽気することが不能とされる。
【0049】
また、本実施形態の弁システム1では、蒸気タービン100の運転時に定期的に駆動機構3に対してピストン32が正しく動作するか否かを確認するための動作試験が実施される。
【0050】
動作試験を実施する際には、蒸気タービン100の運転時に、第一室311aに制御油を供給しながら、開閉弁38を開放させる。開閉弁38が開放されることで、制御油がバイパス路37を流通可能となる。その結果、
図4に示すように、第一室311a内の制御油がバイパス路37を介して第二室311b内に流れ込む。第一室311a内の制御油が第二室311b内に流れ込むことで、制御油が流れ込んだ分だけピストン32が裕度位置Cから第一側に移動する。これにより、ピストン32の位置を移動させて、ピストン32が正常に動作するか否かを判断することができる。
【0051】
この際、バイパス路37が開閉位置Aよりも第二側で第一室311aと接続されている。そのため、流入口34から第一室311aに制御油を供給した状態で開閉弁38を開放しても全開位置Bよりも第一側に制御油の液面が移動しない。したがって、ピストン32は、バイパス路37と接続されている位置まで移動するが、全開位置Bよりも第一側には移動できない。つまり、弁装置2では、弁体22が開口から離れて開いたままとなる。したがって、弁装置2を閉状態とすることなく、ピストン32を移動させることができる。これにより、弁装置2の開放させたまま動作試験を実施することができる。
【0052】
本実施形態では、バイパス路37が単に開閉位置Aよりも第二側ではなく、全開位置Bよりも第二側であって裕度位置Cよりも第一側で第一室311aと接続されている。そのため、開閉弁38を開放してもピストン32は全開位置Bより第一室311a側には移動できない。ピストン32が裕度位置Cと全開位置Bとの間に移動しても、支持軸23は回転されない。そのため、ピストン32を移動させても、弁装置2では、弁体22が規制部24に接触したままとなる。したがって、弁装置2を全開状態としたまま、ピストン32を移動させることができる。これにより、弁装置2の全開状態としたまま動作試験を実施することができる。その結果、抽気ライン133aでのタービン本体110からの蒸気Sの抽気量を低減させることなく、動作試験を実施することができる。
【0053】
また、第二室311bに連通するように排出口35が接続されていることで、開閉弁38を開放することでバイパス路37を介して第一室311aから第二室311bに流れ込んだ制御油を排出することができる。そのため、第二室311bに制御油が溜まったままになってしまうことを抑えることができる。その結果、開閉弁38を何度開放しても、第一室311a内の制御油を第二室311b内に流すことができる。したがって、開閉弁38を開放するたびにピストン32を繰り返し移動させることができ、動作試験を繰返し実施することができる。
【0054】
また、制御油供給ライン4の途中に流入口34に繋がれた逆止弁6が設けられている。そのため、開閉弁38を開くことで第一室311a内の圧力が変化した際に、第一室311a内の制御油が流入口34から制御油供給ライン4を逆流してしまうことを防ぐことができる。また、逆止弁6によって第一室311aから制御油供給源41に向かう制御油の流れが閉塞されていることで、第一室311aの圧力変化が制御油供給源41に影響を及ぼすことを抑えることができる。
【0055】
また、本実施形態の蒸気タービン100によれば、弁装置2を全開状態としながら、駆動機構3の動作試験を行うことができる。そのため、蒸気タービン100を運転しながら、駆動機構3のピストン32が炭化等の不具合によってシリンダケース31に固着してしまい、可動不能となっていないかを確認することができる。したがって、長期間にわたって連続して運転された蒸気タービン100を停止した際に、運転時に抽気していた蒸気Sがタービン本体110の内部に逆流すること防ぐように弁装置を安定して閉状態とすることができる。その結果、停止時の不具合の発生を抑えて、安定して蒸気タービン100を運転することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0057】
なお、本実施形態の弁装置2は、タービン本体110から蒸気Sを抽気する流路21aである抽気ライン133aに配置されることに限定されるものではない。例えば、弁装置2は、タービン本体110に蒸気Sを流入させる蒸気流入口131に繋がる流路21aに設けられていてもよく、タービン本体110から蒸気Sを排出させる蒸気排出口132に繋がる流路21aに設けられていてもよい。
【0058】
また、本実施形態の弁システム1では、ロッド33や連結部39を介してピストン32が移動した際に弁体22を可動させたが、このような構造に限定されるものでない。ピストン32の移動に伴って弁体22を可動させることが可能な構造であればよい。