(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
胴部、該胴部から径方向外側に拡径する第1フランジ部、および前記胴部から径方向外側に拡径して前記第1フランジ部に対して前記胴部の軸線方向で対向する第2フランジ部を備えた樹脂製のコイルボビンの製造方法であって、
前記軸線方向に対して交差する方向で分割された複数の金型を用いてインサート成形を行い、前記第1フランジ部および前記第2フランジ部にステータコアが固定された前記コイルボビンを樹脂成形する成形工程と、
前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との間から前記コイルボビンのパーティングラインに生成されたバリを除去する後処理工程と、
を有し、
前記後処理工程では、前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との間に超音波発生装置のホーンの先端側を前記パーティングラインに沿って進入させるとともに、前記コイルボビンを周方向に往復回転させる第1バリ取り工程を行い、
前記ホーンの先端側は、前記軸線方向のサイズが前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との間隔と等しい軸部になっていることを特徴とするコイルボビンの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成でも、窪みの深さより大きなバリが生成されると、フランジの内面や胴部の外周面からバリが突出してしまい、コイル線が切断するおそれがある。
【0006】
一方、バリを除去する方法として、バイト等の切削工具をフランジ部の間に進入させてバリを切削する方法があるが、切削工具では、パーティングラインに形成される薄くて腰の弱いバリを確実に除去することが困難である。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、コイルボビンのフランジ部の間に形成されたバリを効率よく除去することのできるコイルボビンの製造方法、およびバリ取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、胴部、該胴部から径方向外側に拡径する第1フランジ部、および前記胴部から径方向外側に拡径して前記第1フランジ部に対して前記胴部の軸線方向で対向する第2フランジ部を備えた樹脂製のコイルボビンの製造方法であっ
て、前記軸線方向に対して交差する方向で分割された複数の金型を用いてインサート成形を行い、前記第1フランジ部および前記第2フランジ部にステータコアが固定された前記コイルボビンを樹脂成形する成形工程と、前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との間から前記コイルボビンのパーティングラインに生成されたバリを除去する後処理工程と、を有し、前記後処理工程では、前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との間に超音波発生装置のホーンの先端側を前記パーティングラインに沿って進入させる
とともに、前記コイルボビンを周方向に往復回転させる第1バリ取り工程を
行い、前記ホーンの先端側は、前記軸線方向のサイズが前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との間隔と等しい軸部になっていることを特徴とする。
【0009】
本発明における「バリ取り」や「バリの除去」とは、第1フランジ部と第2フランジ部との間でのバリの突出を解消または抑制することを意味している。従って、本発明における「バリ取り」や「バリの除去」とは、バリに対する切削や研削のようにバリを切除する
という意味の他にバリを押し潰すという意味も含む。
【0010】
本発明に係るコイルボビンの製造方法では、コイルボビンを成形した後、後処理工程において、第1フランジ部と第2フランジ部との間に超音波発生装置のホーンの先端側をパーティングラインに向けて進入させるので、ホーンの振動によって、バリが切除されるとともに、バリが押し潰される。従って、第1フランジ部と第2フランジ部との間において、パーティングラインに生成したバリを効率よく除去することができる。それ故、第1フランジ部と第2フランジ部との間にコイル線を巻回する際、バリが原因でコイル線が切断されるという事態が発生しにくい。
また、ホーンの先端側は、第1フランジ部と第2フランジ部との間隔とサイズが等しい軸部になっているため、第1フランジ部と第2フランジ部との間に沿ってホーンを移動させれば、パーティングラインに生成したバリを効率よく除去することができる。また、第1バリ取り工程では、コイルボビンを周方向に回転させるため、コイルボビンの簡素な移動によってパーティングラインに生成したバリを効率よく除去することができる。さらに、第1バリ取り工程では、コイルボビンを周方向に往復回転させるため、パーティングラインに生成したバリを効率よく除去することができる。
【0012】
本発明において、前記軸部の先端面には、凸部または凹部が複数形成されていることが好ましい。かかる構成によれば、軸部の先端面に形成された凸部のエッジや凹部のエッジによって、バリを切除できるので、バリを効率よく除去することができる。
【0015】
本発明において、前記後処理工程では、前記第1バリ取り工程の後、前記第1フランジ部の外周端部および前記第2フランジ部の外周端部にブラシの毛先を当接させるブラッシング工程と、該ブラッシング工程と同時または前記ブラッシング工程の後に、エアノズルから前記第1フランジ部の外周端部および前記第2フランジ部の外周端部に向けて空気流を吹き付けるエアブロー工程と、を行うことが好ましい。かかる構成によれば、バリの除去によって発生した屑をコイルボビンから効率よく除去することができる。
【0016】
本発明において、前記ブラシは、毛先を径方向外側に向けた回転ブラシであって、当該回転ブラシの回転中心軸線は、前記軸線と平行であることが好ましい。かかる構成によれば、ブラシの毛に折れや切断等が発生しにくい。
【0017】
本発明において、前記後処理工程では、前記第1バリ取り工程の前に、前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との間に切削工具を進入させて前記バリを切削する第2バリ取り工程を有することが好ましい。切削工具ではバリを完全に除去できなくても、第1フランジ部の外周端部や第2フランジ部の外周端部からバリを減らすことができる。従って、第1フランジ部と第2フランジ部との間にホーンの先端側を容易に進入させることができる。
【0018】
本発明において、前記後処理工程を前記コイルボビンにおいて角度位置が180°ずれた2個所に対して同時に行うことが好ましい。かかる構成によれば、第1フランジ部と第2フランジ部との間において、角度位置が180°ずれた2個所にパーティングラインおよびバリが発生した場合でもバリを効率よく除去することができる。
【0019】
本発明において、前記コイルボビンでは、前記胴部、前記第1フランジ部および前記第2フランジ部が、前記軸線方向において複数組形成されており、前記複数組の前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との間に対して前記後処理工程を同時に行うことが好ましい。かかる構成によれば、複数組の第1フランジ部と第2フランジ部との間から効率よくバリを除去することができる。
【0020】
また、本発明は、胴部、該胴部から径方向外側に拡径する第1フランジ部、および前記胴部から径方向外側に拡径して前記第1フランジ部に対して前記胴部の軸線方向で対向する第2フランジ部を備え、前記第1フランジ部、および前記
第2フランジ部にステータコアが固定されたインサート成形品からなる樹脂製のコイルボビンからバリを除去するバリ
取り装置であって、前記コイルボビンを搬送する搬送装置と、該搬送装置による前記コイルボビンの搬送経路の途中で、
前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との間に超音波発生装置のホーンの先端部を前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との間に形成されたパーティングラインに沿って進入させるとともに、前記コイルボビンを周方向に往復回転させる第1バリ取り部を有し、前記ホーンの先端側は、前記軸線方向のサイズが前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との間隔と等しい軸部になっていることを特徴とする。
【0021】
本発明におけるバリ取り装置では、コイルボビンを成形した後、後処理工程において、第1フランジ部と第2フランジ部との間に超音波発生装置のホーンの先端側をパーティングラインに向けて進入させると、ホーンの超音波振動によって、バリが切除されるとともに、バリが押し潰される。従って、第1フランジ部と第2フランジ部との間において、パーティングラインに生成したバリを効率よく除去することができる。それ故、第1フランジ部と第2フランジ部との間にコイル線を巻回する際、バリが原因でコイル線が切断されるという事態が発生しにくい。また、ボビンの搬送が搬送装置によって行われるので、複数のコイルボビンから効率よくバリを除去することができる。
また、ホーンの先端側は、第1フランジ部と第2フランジ部との間隔とサイズが等しい軸部になっているため、第1フランジ部と第2フランジ部との間に沿ってホーンを移動させれば、パーティングラインに生成したバリを効率よく除去することができる。また、第1バリ取り部では、コイルボビンを周方向に回転させるため、コイルボビンの簡素な移動によってパーティングラインに生成したバリを効率よく除去することができる。さらに、第1バリ取り部では、コイルボビンを周方向に往復回転させるため、パーティングラインに生成したバリを効率よく除去することができる。
【0022】
本発明において、前記搬送経路の前記第1バリ取り部より下流側には、前記第1フランジ部の外周端部および前記第2フランジ部の外周端部にブラシの毛先を当接させるブラッシング装置と、当該ブラッシング装置によりブラッシング工程が行われている前記コイルボビン、または前記ブラッシング工程が行われた後の前記コイルボビンに対して前記第1フランジ部および前記第2フランジ部に向けて空気流を吹き付けるエアノズルと、を有することが好ましい。かかる構成によれば、バリの除去によって発生した屑をコイルボビンから効率よく除去することができる。また、超音波発生装置によるバリ取りに連続して、ブラッシング工程およびエアブロー工程を行うことができる。
【0023】
本発明において、前記搬送経路の前記超音波発生装置より上流側には、前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との間に進入して前記バリを切削する切削工具を備えた第2バリ取り部を有していることが好ましい。切削工具ではバリを完全に除去できなくても、第1フランジ部の外周端部や第2フランジ部の外周端部からバリを減らすことができる。従って、第1フランジ部と第2フランジ部との間にホーンの先端側を容易に進入させることができる。また、切削工具による第1バリ取り工程と、超音波発生装置による第2バリ取り工程とを連続して行うことができる。
【0024】
本発明において、前記搬送装置は、ターンテーブル装置であることが好ましい。かかる構成によれば、コイルボビンが直線的に搬送される場合に比して、バリ取り装置の小型化および処理速度の高速化を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明においては、コイルボビンを成形した後、第1フランジ部と第2フランジ部との間に超音波発生装置のホーンの先端側をパーティングラインに向けて進入させるので、ホーンの振動によって、バリが切除されるとともに、バリが押し潰される。従って、第1フランジ部と第2フランジ部との間において、パーティングラインに生成したバリを効率よく除去することができる。それ故、第1フランジ部と第2フランジ部との間にコイル線を
巻回する際、バリが原因でコイル線が切断されるという事態が発生しにくい。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明を適用したコイルボビンの製造方法、およびバリ取り装置を説明する。
【0028】
(ステータおよびコイルボビンの構成)
図1は、本発明が適用されるステータ2等の説明図であり、
図1(a)、(b)、(c)は、モータ1の主要部の分解斜視図、コイル線51、52を巻回する前のステータ2の説明図、およびステータコア611、621、612、622等の説明図である。
図2は、本発明が適用されるコイルボビン4の説明図であり、
図2(a)、(b)、(c)は、コイルボビン4の正面図、コイルボビン4の側面図、およびコイルボビン4に発生するバリBの説明図である。
【0029】
図1に示すように、モータ1は、概ね、筒状のステータ2と、ステータ2の内側に同軸状に配置されたロータ3とによって構成されている。ロータ3は、回転軸31と、回転軸31の外周面に固定された永久磁石32とを有しており、永久磁石32は、ホルダ33等を介して回転軸31に固定されている。
【0030】
ステータ2は、モータ軸線およびステータ2の軸線(軸線L)に沿って配置された第1ステータ組21および第2ステータ組22を備えている。第1ステータ組21はA相に対応し、第2ステータ組22はB相に対応しており、第1ステータ組21および第2ステータ組22は基本的な構成が同一である。ステータ2は、複数のステータコアとのインサート成形により製造された樹脂製のコイルボビン4を有しており、以下に説明するコイル線51、52およびステータコア611、621、612、622は、コイルボビン4によって保持されている。
【0031】
より具体的には、
図1および
図2に示すように、コイルボビン4には、第1ステータ組21に相当する位置に、円筒状の胴部411と、胴部411から径方向外側に拡径する円環状の第1フランジ部421と、胴部411から径方向外側に拡径して第1フランジ部421に対して胴部411の軸線L方向で対向する円環状の第2フランジ部431とを備えている。第1フランジ部421と第2フランジ部431との間では、胴部411の周りにコイル線51が巻回されている。また、第1ステータ組21は、第1フランジ部421に対して胴部411とは反対側で重なるステータコア611(外ステータコア)と、第2フランジ部431に対して胴部411とは反対側で重なるステータコア621(内ステータコア)とを有している。ステータコア611、621は各々、円環部631、641と、円環部631、641の内縁からコイルボビン4の胴部411の内周面に沿って突出した
極歯651、661とを有しており、ステータコア611の極歯651とステータコア621の極歯661は、周方向で交互に並んでいる。円環部631、641には、周方向の複数個所に貫通穴631a、641aが形成されている。このため、インサート成形の際、貫通穴631a、641aを介して円環部631、641の両側に樹脂を流動させることができる。また、円環部631、641の外周縁には、切り欠き631b、631c、641b、641cが形成されており、インサート成形の際、切り欠き631c、641cによって、ステータコア611、621の周方向の位置決めが行われる。
【0032】
また、コイルボビン4では、第1ステータ組21に対して軸線L方向において隣り合う第2ステータ組22に相当する位置に、円筒状の胴部412と、胴部412から径方向外側に拡径する円環状の第1フランジ部422と、胴部412から径方向外側に拡径して第1フランジ部422に対して胴部412の軸線L方向で対向する円環状の第2フランジ部432とを備えている。第1フランジ部422と第2フランジ部432との間では、胴部412の周りにコイル線52が巻回されている。また、第2ステータ組22は、第1フランジ部422に対して胴部412とは反対側で重なるステータコア612(外ステータコア)と、第2フランジ部432に対して胴部412とは反対側で重なるステータコア622(内ステータコア)とを有している。ステータコア612、622は各々、円環部632、642と、円環部632、642の内縁からコイルボビン4の胴部412の内周面に沿って突出した極歯652、662とを有しており、ステータコア612の極歯652とステータコア622の極歯662は、周方向で交互に並んでいる。円環部632、642には、周方向の複数個所に貫通穴632a、642aが形成されている。このため、インサート成形の際、貫通穴632a、642aを介して円環部632、642の両側に樹脂を流動させることができる。また、円環部632、642の外周縁には、切り欠き632b、632c、642b、642cが形成されており、インサート成形の際、切り欠き632c、642cによって、ステータコア612、622の周方向の位置決めが行われる。
【0033】
また、コイルボビン4では、切り欠き632b、641b、642bが形成されている部分に端子台48、49が形成される。また、切り欠き631bは樹脂部分47によって埋められる。
【0034】
(コイルボビン4の製造方法)
このような構成のステータ2に用いるコイルボビン4を製造するにあたっては、成形工程において、インサート成形機の金型内の所定位置にステータコア611、612、621、622を配置した状態で射出成形を行い、ステータコア611、612、621、622と一体にコイルボビン4を製造する。その際、第1フランジ部421と第2フランジ部431との間の部分、および第1フランジ部422と第2フランジ部432との間の部分は、
図2(a)に模式的に示すように、軸線Lに対して交差する方向に分割された複数の金型71、72によって成形する。より具体的には、成形の際、金型71の円弧部710と金型72の円弧部720とによって胴部411、412に対する成形面を構成する。そして、成形後、金型71、72を離間させて、コイルボビン4を得る。
【0035】
かかる成形方法では、コイルボビン4において、第1フランジ部421の第2フランジ部431と対向する面、第2フランジ部431の第1フランジ部421と対向する面、第1フランジ部422の第2フランジ部432と対向する面、第2フランジ部432の第1フランジ部422と対向する面、胴部411、412の外周面にパーティングラインPが発生する。また、コイルボビン4では、
図2(c)に示すように、パーティングラインPに沿ってバリBが発生しやすい。
【0036】
そこで、本形態では、
図3〜
図6を参照して以下に説明する後処理工程を行い、第1フ
ランジ部421と第2フランジ部431との間や、第1フランジ部422と第2フランジ部432との間に発生したバリBを除去する。
【0037】
(後処理工程の構成)
図3は、本発明を適用したバリ取り装置10の平面構成を模式的に示す説明図である。
図4は、
図3に示すバリ取り装置10において切削装置16によってバリ取りを行う工程の説明図であり、
図4(a)、(b)、(c)は、切削装置16によってバリ取りを行う前のコイルボビン4の説明図、切削装置16の説明図、および切削装置16によってバリ取りを行った後のコイルボビン4の説明図である。
図5は、
図3に示すバリ取り装置10において超音波発生装置17によってバリ取りを行う工程の説明図であり、
図5(a)、(b)、(c)、(d)は、超音波発生装置17の説明図、超音波発生装置17によってバリ取りを行う様子を示す説明図、超音波発生装置17によってバリ取りを行う際、コイルボビン4を回転させる様子を示す説明図、および超音波発生装置17によってバリ取りを行った後のコイルボビン4の説明図である。なお、
図5(a)、(b)、(c)、(d)では、図面に向かって左側に正面図を示し、図面に向かって右側に側面図を示してある。
【0038】
図6は、
図3に示すバリ取り装置10に用いた超音波発生装置17のホーン171の先端面170の説明図である。
図7は、
図3に示すバリ取り装置10のブラッシング装置18によってブラッシング等を行う工程の説明図であり、ブラッシングを行う前のコイルボビン4の説明図、ブラッシング装置18の正面図、ブラッシング装置18の側面図、およびブラッシング後のコイルボビン4の説明図である。
【0039】
図3に示すように、本形態のバリ取り装置10は、コイルボビン4を搬送する搬送装置15を有しており、搬送装置15によるコイルボビン4の搬送経路14に沿って、切削装置16、超音波発生装置17およびブラッシング装置18が配置されている。
【0040】
本形態において、搬送装置15は、矢印Rで示す方向に回転するターンテーブル150であり、外周端部には、周方向に沿って4つのボビン保持具151が等角度間隔に設けられている。本形態において、ボビン保持具151は、コイルボビン4の胴部411、412の内側に進入して、軸線Lが水平となるようにコイルボビン4を保持する。その結果、コイルボビン4は、パーティングラインPを上下方向に向けてボビン保持具151に保持される。また、ボビン保持具151は、コイルボビン4の軸線L周りに回転可能であり、コイルボビン4を軸線L周りに回転させる。
【0041】
ターンテーブル150において、周方向の等角度間隔の4個所は、各々、コイルボビン4の投入および排出が行われる投入・排出部11a、切削装置16によるバリ取り部11b、超音波発生装置17によるバリ取り部11c、およびブラッシング部11dになっている。従って、ターンテーブル150は角度90°毎に間欠的に回転し、各処理部にコイルボビン4を搬送し、以下に説明する工程が順に行われる。
【0042】
まず、投入・排出部11aでコイルボビン4が投入されると、ターンテーブル150は、角度90°回転し、コイルボビン4は、バリ取り部11bに搬送される。
図4(a)に示すように、コイルボビン4は、バリ取り部11bに到達した状態では、第1フランジ部421と第2フランジ部431との間、および第1フランジ部422と第2フランジ部432との間にバリBが存在する。
図4(b)に示すように、バリ取り部11bには切削装置16が配置されており、切削装置16は、切削工具161と、切削工具161をコイルボビン4との間で進退させる駆動装置(図示せず)とを有している。本形態において、駆動装置は、切削工具161を軸線Lに対して直交する水平方向で進退させる。本形態において、切削工具161は、計4本設けられており、1本目の切削工具161は、第1フラ
ンジ部421と第2フランジ部431との間のうち、胴部411より上方側に進入し、2本目の切削工具161は、第1フランジ部421と第2フランジ部431との間のうち、胴部411より下方側に進入し、3本目の切削工具161は、第1フランジ部422と第2フランジ部432との間のうち、胴部412より上方側に進入し、4本目の切削工具161は、第1フランジ部422と第2フランジ部432との間のうち、胴部412より下方側に進入する。
【0043】
従って、切削工具161は、パーティングラインPに対して直角な方向から進入し、胴部411、412の上下双方において、第1フランジ部421の外周端部と第2フランジ部431の外周端部との間のバリB、および第1フランジ部422の外周端部と第2フランジ部432の外周端部との間のバリBを切除し、除去する。その結果、
図4(c)に示すように、第1フランジ部421と第2フランジ部431との間、および第1フランジ部422と第2フランジ部432との間では、径方向外側の端部のバリBを減らすことができる。このようにして、切削装置16によるバリ取り工程(第2バリ取り工程)が行われる。
【0044】
バリ取り部11bでのバリ取りが終了した後、ターンテーブル150は、角度90°回転し、コイルボビン4はバリ取り部11cに搬送される。
図5(a)に示すように、バリ取り部11cには、コイルボビン4の上方に、第1フランジ部421と第2フランジ部431との間にホーン171の先端部171aを向けた超音波発生装置17と、超音波発生装置17をコイルボビン4との間で上下動させる駆動装置(図示せず)とを有している。本形態において、超音波発生装置17は、2台設けられており、コイルボビン4の下方にも、第1フランジ部421と第2フランジ部431との間にホーン171の先端部171aを向けた超音波発生装置17が設けられている。また、2台の超音波発生装置17のいずれにおいても、ホーン171は、2つの先端部171a、171bを備えており、第1フランジ部421と第2フランジ部431との間に先端部171aを向けるとともに、第1フランジ部422と第2フランジ部432との間に先端部171bを向けている。
【0045】
ここで、ホーン171の先端部171a、171bは、モータ軸線方向の寸法が第1フランジ部421と第2フランジ部431との間隔や第1フランジ部422と第2フランジ部432との間隔と等しい軸部からなる。また、
図6に示すように、先端部171a、171b(軸部)の先端面170には、複数の凸部や、複数の凹部が形成されている。
【0046】
このように構成したバリ取り部11cにおいて、バリ取りを行うには、まず、ホーン171に超音波振動を発生させながら、
図5(a)、(b)に矢印H1で示すように、先端部171a、171bを各々、第1フランジ部421と第2フランジ部431との間、および第1フランジ部422と第2フランジ部432との間に進入させる。本形態において、ホーン171の先端部171a、171bはパーティングラインPに沿って第1フランジ部421と第2フランジ部431との間、および第1フランジ部422と第2フランジ部432との間に進入する。そして、
図5(c)に示すように、ボビン保持具151は、コイルボビン4を軸線Lを中心に周方向に回転させる。また、本形態では、コイルボビン4を周方向の所定の角度範囲を往復回転させる。本形態では、コイルボビン4を周方向の所定の角度範囲を1往復回転させる。その結果、ホーン171の先端部171a、171bは各々、第1フランジ部421と第2フランジ部431との間、および第1フランジ部422と第2フランジ部432でコイルボビン4に対して相対移動する。従って、バリBの一部は、ホーン171の先端部171a、171bによって切除されるとともに、一部がホーン171の先端部171a、171bによって押し潰される結果、
図5(d)に示すように、第1フランジ部421と第2フランジ部431との間、および第1フランジ部422と第2フランジ部432からバリBが除去される。しかる後に、ホーン171は、矢印H2で示すように、コイルボビン4から離間する方向に移動する。このようにして、
超音波発生装置17によるバリ取り工程(第1バリ取り工程)が行われる。
【0047】
バリ取り部11cでのバリ取りが終了した後、ターンテーブル150は、角度90°回転し、コイルボビン4はブラッシング部11dに搬送される。
図7(a)に示すように、ブラッシング部11dに搬送されたコイルボビン4には、削り屑C等が付着していることがあり、ブラッシング部11dでは、削り屑Cの除去が行われる。
図7(b)、(c)に示すように、ブラッシング部11dにはブラッシング装置18が配置されている。ブラッシング装置18は、ブラシ181と、ブラシ181を駆動する駆動装置(図示せず)と備えており、ブラシ181の毛先を第1フランジ部421、422および第2フランジ部431、432の外周端部を当接させる。本形態において、ブラシ181は、毛先を径方向外側に向けた回転ブラシであって、ブラシ181の回転中心軸線L181は、軸線L方向と平行である。また、ブラシ181は、第1フランジ部421、422および第2フランジ部431、432の上方側および下方側の各々に配置されている。本形態において、ブラシ181は、セラミック等の砥材が混合されたナイロンブラシである。
【0048】
このように構成したブラッシング装置18において、駆動装置は、ブラシ181を回転中心軸線L181周りに回転させるとともに、軸線Lと直交する方向にブラシ181を移動させる。また、ボビン保持具151は、矢印R18で示すように、コイルボビン4を軸線Lを中心に周方向に回転させる。本形態では、コイルボビン4を周方向の所定の角度範囲を往復回転させる。このようにして、ブラッシング工程によって、
図7(a)に示す削り屑Cを除去する。
【0049】
ここで、ブラッシング部11dには、
図7(c)に示すように、ブラシ181によるブラッシング工程と同時、またはブラシ181によるブラッシング工程の後に、コイルボビン4の第1フランジ部421、422および第2フランジ部431、432に向けて空気流を吹き付ける複数本のエアノズル191を備えたエアブロー装置19が配置されている。本形態において、エアノズル191は、上側のブラシ181とコイルボビン4との接触部分、および下側のブラシ181とコイルボビン4との接触部分の各々に向けてエアノズル191が配置されている。従って、エアノズル191によるエアブロー工程によって、コイルボビン4に付着している削り屑Cを除去する。
【0050】
そして、ブラッシング部11dのブラッシング工程が終了し、ターンテーブル150が角度90°回転すると、コイルボビン4は投入・排出部11aに戻り、投入・排出部11aから排出される一方、新たなコイルボビン4がターンテーブル150に供給される。以上の動作は、ターンテーブル150が角度90°回転する度に行われる。
【0051】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のコイルボビン4の製造方法では、軸線L方向に対して交差する方向で分割された複数の金型71、72を用いてコイルボビン4を樹脂成形する成形工程の後、後処理工程で、第1フランジ部421、422と第2フランジ部431、432との間からコイルボビン4のパーティングラインPに生成されたバリBを除去する。また、後処理工程では、第1フランジ部421、422と第2フランジ部431、432との間に超音波発生装置17のホーン171の先端部171a、171bをパーティングラインPに沿って進入させる第1バリ取り工程を行う。このため、ホーン171の超音波振動によって、バリBが切除されるとともに、バリBが押し潰される。従って、第1フランジ部421、422と第2フランジ部431、432との間において、パーティングラインPに生成したバリBを効率よく除去することができる。それ故、第1フランジ部421、422と第2フランジ部431、432との間にコイル線51、52を巻回する際、バリBが原因でコイル線51、52が切断されるという事態が発生しにくい。
【0052】
また、ホーン171の先端部171a、171bは、軸線L方向のサイズが第1フランジ部421、422と第2フランジ部431、432との間隔と等しい軸部になっているため、第1フランジ部421、422と第2フランジ部431、432との間に沿ってホーン171を移動させれば、第1フランジ部421、422側および第2フランジ部431、432側のいずれの側に形成されたパーティングラインPに生成したバリBであっても効率よく除去することができる。
【0053】
また、第1バリ取り工程では、コイルボビン4を周方向に回転させるため、コイルボビン4の簡素な移動によってパーティングラインPに生成したバリBを効率よく除去することができる。しかも、第1バリ取り工程では、コイルボビン4を周方向に往復回転させるため、パーティングラインPを中心にホーン171の先端部171a、171bが移動する。このため、パーティングラインPに生成したバリBを効率よく除去することができる。
【0054】
また、先端部171a、171bの先端面170には、凸部または凹部が複数形成されているため、凸部のエッジや凹部のエッジによって、バリBを切除できるので、バリBを効率よく除去することができる。
【0055】
また、後処理工程では、第1フランジ部421、422の外周端部および第2フランジ部431、432の外周端部にブラシ181の毛先を当接させるブラッシング工程を行うとともに、エアノズル191から第1フランジ部421、422および第2フランジ部431、432に向けて空気流を吹き付けるエアブロー工程を行う。このため、バリBの除去によって発生した削り屑Cをコイルボビン4から効率よく除去することができる。また、ブラシ181は、回転中心軸線L181を軸線Lと平行に向けた回転ブラシである。このため、ブラシ181の毛に折れや切断等が発生しにくい。
【0056】
さらに、後処理工程では、第1バリ取り工程の前に、第1フランジ部421、422と第2フランジ部431、432との間に切削工具161を進入させる第2バリ取り工程を行う。かかる第2バリ取り工程では、バリBを完全に除去できなくても、バリBを減らすことができる。従って、第1フランジ部421、422と第2フランジ部431、432との間にホーンの先端側を容易に進入させることができる。
【0057】
また、後処理工程をコイルボビン4において角度位置が180°ずれた上下2個所に対して同時に行うため、バリBを効率よく除去することができる。また、本形態では、後処理工程を第1フランジ部421と第2フランジ部431との間、および第1フランジ部422と第2フランジ部432との間に同時に行うため、バリBを効率よく除去することができる。
【0058】
さらに、本形態のバリ取り装置10では、コイルボビン4の搬送経路14に、切削工具161を備えたバリ取り部11b、超音波発生装置17を備えたバリ取り部11c、およびブラッシング部11dが設けられているため、上記の工程を連続して行うことができる。それ故、バリ取りを効率よく行うことができる。
【0059】
(その他の実施の形態)
上記実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の例であるが、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施可能である。例えば、上記実施の形態に係るバリ取り装置10では、コイルボビン4を回転搬送していたが、直線的に搬送する場合に、コイルボビン4の搬送経路に、切削工具161を備えたバリ取り部11b、超音波発生装置17を備えたバリ取り部11c、およびブラッシング部11dを設けてもよい。