【実施例】
【0017】
実施例のフライヤー10は、
図1〜
図3に示す如く、調理油が貯留される箱状の油槽11と、該油槽11が収容されるケーシング12と、該ケーシング12の内部に配設された加熱装置としてのバーナー13と、該バーナー13により加熱された加熱空気を油槽11の外周囲に流通させる排気通路14とを備える。
【0018】
前記ケーシング12は、底壁12a、前壁12b、後壁12cおよび左右の側壁12d,12dから、上方に開口する箱状に構成されて、該ケーシング12の内部に油槽11の後述する本体部19が収容されるようになっている。なお、ケーシング12の後壁12cは、側壁12d,12dの上端から上方に所定長さ延出し、後述するダクト部24の後側を覆うよう構成される。前記油槽11は、
図1〜
図3に示す如く、上方に開口する箱状に構成された本体部19と、該本体部19の上縁に設けられた枠状支持部20とから構成され、本体部19をケーシング12の内部に収容した状態で、枠状支持部20がケーシング12における前壁12bおよび左右の側壁12d,12dの上端に載置されるよう構成される。本体部19は、略矩形状の底壁15の前端縁に上方に延在する第1前壁16が接続されると共に、該第1前壁16の上端に、前方に向かうにつれて上方傾斜する傾斜壁50が接続され、更に該傾斜壁50の前端に上方に延在する第2前壁51が接続されている。そして、第1前壁16、傾斜壁50および第2前壁51の左右側縁に側壁12d,12dが接続されることで、本体部19には深さの異なる貯留部52a,52bが画成される。なお、貯留部52a,52bについて、以後、本体部19の後部側に画成される貯留部52aを第1貯留部52aと指称し、前部側に画成される貯留部52bを第2貯留部52bと指称する場合もある。
【0019】
前記油槽11の本体部19は、
図2および
図3に示す如く、前記ケーシング12の内部寸法より小さく設定されて、該本体部19をケーシング12の内部に収容した状態で、本体部19の前後、左右および下方にはケーシング12の各壁12a,12b,12c,12d,12dとの間に空間が画成されるようになっている。
【0020】
前記本体部19を構成する一対の側壁18,18は、左右対称に形成されている。各側壁18は、
図2に示す如く、上端から下方に略鉛直状(上下方向)に延在する第1側面部(第1面部)18aと、該第1側面部18aの下端から下方に向かうにつれて他方の側壁18に近接するように下方傾斜する傾斜面部(第2面部)18bと、該傾斜面部18bの傾斜下端から下方に略鉛直状(上下方向)に延在する第2側面部(第3面部)18cとを備える。そして、左右の両第2側面部18c,18cの下端が、底壁15の左右両端縁に接続されると共に、各側壁18,18の前後の端縁が第1前壁16、傾斜壁50、第2前壁51および後壁17の左右の端縁に接続されている。油槽11は、第2側面部18c,18c、第1前壁16および後壁17で画成される前記第1貯留部52aの底部側は略矩形状に形成される。なお、実施例では、第1側面部18aの下端は前記第1前壁16の上端まで延在し、傾斜面部18bおよび第2側面部18cが第1前壁16の上端より下側の前記第1貯留部52aの側部を画成している。また、油槽11の底壁15には、調理油を排出する排油管21が接続されており、該排油管21に設けられたバルブ(図示せず)を開放することで、油槽11に貯留されている調理油を外部に排出し得るよう構成される。なお、油槽11の底壁15は排油管21に向けて下方傾斜するよう形成されて、調理油を排油管21からスムーズに排出し得るようになっている。
【0021】
前記各側壁18の第1側面部18aの上端縁に、上方に向かうにつれて他方の側壁18から離間するように上方傾斜する上枠面部22が形成されると共に、該上枠面部22の上端縁に、下方に略鉛直状に延在する支持縁部22aが設けられている。また、前記第2前壁51の上端縁には、前方に向かうにつれて上方傾斜するように形成したスロープ部23が設けられ、該スロープ部23の左右の側縁に上枠面部22,22が接続されている。更に、前記後壁17の上端には、
図3に示す如く、前記ケーシング12の後壁12cと略同じ高さ位置まで上方に延在する上部後壁53が設けられている。実施例では、左右の上枠面部22,22、スロープ部23および上部後壁53から前記枠状支持部20が構成されており、油槽11の本体部19を前記ケーシング12の内部に収容した状態で、左右の支持縁部22a,22aおよびスロープ部23がケーシング12の対応する側壁12d,12dおよび前壁12bの上端に接続されている。なお、実施例では、本体部19の後壁17および枠状支持部20の上部後壁53は一体で構成されており、両後壁17,53から後方に離間するケーシング12の後壁12cの左右端部間は、上部後壁53の左右両端に設けられた壁および側壁12d,12dに接続されて、後述するダクト部24が収容される空間を画成するようになっている。前記枠状支持部20のスロープ部23は、被調理品を調理油中に流し入れるべく機能する。
【0022】
前記油槽11の外側には、
図2および
図3に示す如く、所定間隔離間して排気路カバー28が配設されている。この排気路カバー28は、油槽11の第1前壁16から前方(外側)に離間して配設された前カバー部28aと、油槽11の後壁17から後方(外側)に離間して配設された後カバー部28bと、油槽11における左右の側壁18,18から側方(外側)に離間して配設された一対の側カバー部28c,28cと、油槽11の底壁15から下方(外側)に離間して配設された底カバー部28dとから構成されて、該排気路カバー28は上方に開口する箱状に形成されている。前カバー部28aの上端縁は、油槽11の前記本体部19における傾斜壁50の下面に接続されており、
図3に示す如く、該本体部19における前部(具体的には第1貯留部52aの前側)に、排気路カバー28における前カバー部28a、左右の側カバー部28c,28cおよび底カバー部28dと、油槽11の第1前壁16および傾斜壁50とによって燃焼室25が画成されて、該燃焼室25に前記バーナー13が配置されている。実施例のバーナー13は、ガスバーナーであって、図示しないガス供給源から供給されたガスを燃焼することで燃焼室25内の空気を加熱するよう構成される。なお、実施例では、バーナー13として、ガスの流れによって一次空気を吸引する自然吸気式のブンゼンバーナーが用いられている。
【0023】
前記排気路カバー28の後カバー部28bと油槽11の後壁17との間に、後部排気路26が画成されている。また、後カバー部28bには、後述するダクト部24に連通する開口部28eが形成されており、後部排気路26内の加熱空気が開口部28eを通ってダクト部24に流入するよう構成される。
【0024】
前記排気路カバー28の各側カバー部28cは、
図2に示す如く、対応する側壁18の第1側面部18aより外側に位置し、該側カバー部28cと第1側面部18aとの離間幅の厚みの側断熱材(断熱材)29が、該側カバー部28cの内側に配設されている。また、底カバー部28dの上面に、該底カバー部28dの上面と油槽11の底壁15の下面との離間幅の厚みの底断熱材(断熱材)30が配設されており、該底断熱材30と左右両側の側断熱材29,29の下端とが隙間なく接続されている。そして、油槽11における各側壁18の外側に、前記傾斜面部18b、第2側面部18c、側断熱材29および底断熱材30によって前後方向に延在する側部排気路(排気路)40が画成される。各側部排気路40は前後に開口して、前記燃焼室25および後部排気路26に連通するよう構成されている。すなわち、前記油槽11の外側には、側部排気路40,40および後部排気路26により、前記燃焼室25に連通する排気通路14が形成され、該排気通路14を流通する加熱空気によって油槽11に貯留されている調理油を加熱するよう構成される。実施例では、側部排気路40を流通する加熱空気が油槽11における傾斜面部18bおよび第2側面部18cの外面に接触するよう構成されており、該傾斜面部18bおよび第2側面部18cが調理油(油槽11)との熱交換面として機能している。また、油槽11における燃焼室25に臨む第1前壁16と傾斜壁50および後部排気路26に臨む後壁17も、加熱空気と調理油(油槽11)との熱交換面として機能するよう構成される。なお、側断熱材29の上端部は、側壁18における第1側面部18aの外面に当接するよう構成されて、側部排気路40からの放熱が抑制されるようになっている。
【0025】
前記油槽11の後壁17とケーシング12の後壁12cとの間に、上下方向に延在するダクト部24が配設されており、該ダクト部24内に上下方向に延在するダクト排気路27が画成されている。ダクト部24の下部は、前記排気路カバー28の後カバー部28bの後側に重なって位置し、該ダクト部24の後カバー部28bに重なる前部に、前記開口部28eに連通する開口部24aが形成されている。また、ダクト部24を構成する上壁には、上下方向に貫通する排気口24bが形成されている。すなわち、前記後部排気路26からダクト排気路27に流入した加熱空気は、排気口24bから外部に排出されるようになっている。なお、前記排気路カバー28およびケーシング12には、前記燃焼室25と外部とを連通する吸気口(図示せず)が形成されており、ダクト部24によるドラフト効果(煙突効果)によって吸気口から燃焼室25に外部空気を取り入れ得るように構成されている。
【0026】
前記油槽11の内部には、被調理品が油槽底部に沈み込んでしまうのを防ぐための底網(網部材)41が、前記左右の側壁18,18における傾斜面部18b,18b間に着脱自在に載置されている。この底網41は、油槽11内において被調理品の調理領域における底面を規定するものであって、該底網41を傾斜面部18b,18b間に載置した状態で、底網41より所定高さだけ上側に調理油の油面Lが位置するまで油槽11に調理油が貯留されるようになっている。
【0027】
図2に示す如く、前記側壁18における傾斜面部18bおよび第2側面部18cの外側面に、側部伝熱部材(伝熱部材)31が上下方向に離間して複数配設されている。傾斜面部18bおよび第2側面部18cに配設される側部伝熱部材31の構成は同じであるが、傾斜面部18bに配設される側部伝熱部材31を第1側部伝熱部材31と指称し、第2側面部18cに配設される側部伝熱部材31を第2側部伝熱部材31と指称して区別する場合もある。
【0028】
前記側部伝熱部材31は、
図4,
図5に示す如く、側壁18に沿って前後方向に延在する取付基部32と、該取付基部32における前後方向に延在する一方の端縁(実施例では下端縁)に設けられて前後方向に離間する複数のフィン33とを備え、取付基部32が対応する傾斜面部18bまたは第2側面部18cの外面に固定される。また、側部伝熱部材31は、複数のフィン33が前後方向に一定間隔で離間するよう設けられると共に、前記取付基部32には、前後に隣り合うフィン33,33の間に切欠部32aが設けられている。すなわち、取付基部32には、前後方向(取付基部32の長手方向)に一定間隔で切欠部32aが設けられている。そして、側部伝熱部材31は、取付基部32における各フィン33に対応する位置(前端または後端と切欠部32aとの間または前後に隣り合う切欠部32a,32aの間)において、対応する傾斜面部18bまたは第2側面部18cにスポット溶接により固定されるようになっている。取付基部32の切欠部32aは、スポット溶接する位置の目印として機能すると共に、フライヤー10の使用時と非使用時による加熱・非加熱によって生ずる油槽11と側部伝熱部材31(取付基部32)との膨張、収縮の変化度合の違いを吸収する機能を有する。また、側部伝熱部材31(取付基部32)の厚みは、油槽11における側壁18の厚みより薄く設定されて、スポット溶接部(金属の溶融接合部)での側壁18および取付基部32の強度が異なるよう設定される。すなわち、スポット溶接により金属が溶けて接合されたスポット溶接部における側壁18の強度より、該スポット溶接部における取付基部32の強度が低くなるよう設定されて、油槽11と側部伝熱部材31との膨張、収縮の変化度合の違いによってスポット溶接部が剥離してしまう事態が生ずる場合には、取付基部32からスポット溶接部が剥離するようになっている。なお、
図4において取付基部32がスポット溶接される部位(固定部)を、黒丸で示している。
【0029】
前記第1側部伝熱部材31は、取付基部32を傾斜面部18bに固定した状態で、
図2および
図5に示す如く、前記フィン33が傾斜面部18bから離間するにつれて下方傾斜するよう構成される。すなわち、前記側部排気路40を流通する加熱空気は、
図6に示す如く、フィン33の傾斜によって傾斜面部18bに向けて積極的に案内されるよう構成されており、該加熱空気によって油槽11(側壁18)を直接加熱し得るようになっている。また、第1側部伝熱部材31におけるフィン33は、
図2および
図6に示す如く、該フィン33の延出端が側部排気路40を画成する側断熱材29に近接位置して、該フィン33によって側部排気路40は上下方向に仕切られるよう構成されている。すなわち、フィン33の下側を流れる加熱空気は、側部排気路40の幅方向の全体に亘って該フィン33によって傾斜面部18bに向けて案内されるようになっている。なお、各側部伝熱部材31において前後に離間するフィン33,33の間に画成される隙間が、側部排気路40において加熱空気が上方移動するのを許容する通過部34として機能している。
【0030】
ここで、フライヤー10では、前記底網41より上側で被調理品が油揚げされると、該被調理品から分離した揚げカスが底網41を通って油槽底部に沈んで堆積する。この揚げカスは、高温の調理油に長期間に亘って晒されると焦げついてしまい、油槽11の清掃が煩わしいものとなる。すなわち、油槽11に貯留されている調理油は、被調理品が油揚げされる上部側は調理に適した調理温度に維持される必要があるのに対し、下部側の温度は調理温度よりは低温に保持された方が好ましい。
【0031】
そこで、実施例のフライヤー10では、前記油槽11における第1貯留部52aの底部側を画成する前記第2側面部18cに配設される前記第2側部伝熱部材31は、前記取付基部32を第2側面部18cに固定した状態で、
図2および
図5に示す如く、前記フィン33が略水平に延在するよう構成される。すなわち、前記燃焼室25から側部排気路40に流入した加熱空気は、第2側部伝熱部材31の配設領域では、加熱空気がフィン33によって第2側面部18cに向けて積極的には案内されないように構成されて、該第2側面部18cは前記傾斜面部18bに比較して低温に保持されるようになっている。言い替えると、側部排気路40は、下方傾斜するフィン33が臨む上部領域と、水平なフィン33が臨む下部領域とに分けられており、上部領域ではフィン33によって加熱空気が積極的に側壁18(傾斜面部18b)に向けて案内されるのに対し、下部領域ではフィン33によって加熱空気が積極的には側壁18(第2側面部18c)に向けて案内されないよう構成される。なお、第2側部伝熱部材31におけるフィン33は、
図2および
図6に示す如く、該フィン33の延出端が側部排気路40を画成する側断熱材29に近接位置して、該フィン33によって側部排気路40は上下方向に仕切られるよう構成されている。
【0032】
前記傾斜面部18bに配設される複数の第1側部伝熱部材31は、各第1側部伝熱部材31のフィン33が上下方向に整列するように配置されている。また、前記第2側面部18cに配設される複数の第2側部伝熱部材31についても、各第2側部伝熱部材31のフィン33が上下方向に整列するように配置されている。
【0033】
前記油槽11の後壁17は、
図3に示す如く、略鉛直状(上下方向)に延在する第1後面部17aと、該第1後面部17aの下端から下方に向かうにつれて前方に向けて下方傾斜する後傾斜面部17bと、該後傾斜面部17bの傾斜下端から下方に略鉛直状(上下方向)に延在する第2後面部17cとを備える。そして、後傾斜面部17bと第2後面部17cとによって、前記第1貯留部52aにおける第1前壁16の上端より下側領域を画成すると共に、該後傾斜面部17bおよび第2後面部17cと前記排気路カバー28における後カバー部28bとの間に前記後部排気路26が画成されている。
【0034】
図3に示す如く、前記後壁17における後傾斜面部17bおよび第2後面部17cの外側面に、後部伝熱部材(伝熱部材)35が上下方向に離間して複数配設されている。後傾斜面部17bおよび第2後面部17cに配設される後部伝熱部材35の構成は同じであるが、後傾斜面部17bに配設される後部伝熱部材35を第1後部伝熱部材35と指称し、第2後面部17cに配設される後部伝熱部材35を第2後部伝熱部材35と指称して区別する場合もある。また、後部伝熱部材35の構成は、前記側部伝熱部材31と同じであるので、同一機能の部分については同じ符号を付して詳細説明は省略する。
【0035】
すなわち、前記後部伝熱部材35は、後壁17(後傾斜面部17b,第2後面部17c)に固定される取付基部32と、該取付基部32の下端縁に設けられて左右方向に離間すると共に後方に延在する複数のフィン33とを備える。そして、第1後部伝熱部材35は、取付基部32を後傾斜面部17bに固定することでフィン33が下方傾斜するよう構成されると共に、第2後部伝熱部材35は、取付基部32を第2後面部17cに固定することでフィン33が水平となるよう構成される。すなわち、前記側部排気路40から後部排気路26に流入した加熱空気は、第1後部伝熱部材35の配設領域(後部排気路26の上部領域)ではフィン33によって後傾斜面部17bに向けて積極的に案内されるのに対し、第2後部伝熱部材35の配設領域(後部排気路26の下部領域)ではフィン33によって加熱空気が後傾斜面部17bに向けて積極的には案内されないようになっている。
【0036】
〔実施例の作用〕
次に、前述のように構成された実施例のフライヤー10の作用について説明する。
【0037】
前記バーナー13を燃焼させると、前記燃焼室25内の空気が加熱され、該加熱空気は、側部排気路40,40、後部排気路26を流通した後にダクト排気路27に流入し、前記排気口24bから外部に排出される。加熱空気は、油槽11における燃焼室25に臨む第1前壁16と傾斜壁50、各側部排気路40を画成する傾斜面部18bと第2側面部18cおよび後部排気路26を画成する後傾斜面部17bと第2後面部17cの各外面に接触して調理油と熱交換して該調理油が加熱される。実施例では、油槽11の各側壁18の傾斜面部18bおよび第2側面部18cを介して加熱空気と調理油とを熱交換するよう構成したので、側壁18を第1側面部のみの構成とした場合に比べて調理油と加熱空気との熱交換面積を増やして調理油を効率的に加熱することができる。また、実施例のフライヤー10では、油槽11の第1前壁16、傾斜壁50および後壁17(後傾斜面部17bと第2後面部17c)も調理油と加熱空気との熱交換面として機能しているので、調理油をより効率的に加熱することができる。
【0038】
ここで、実施例のフライヤー10では、前記側部排気路40を流通する加熱空気と側壁18の外面との熱交換面積を大きく確保しているので、ダクト部24によるドラフト効果(煙突効果)による自然流通方式であっても調理油を効率的に加熱することができる。また、実施例のフライヤー10では、バーナー13として自然吸気式のブンゼンバーナーを用いているので、低コストで効率的な加熱が図られる。
【0039】
前記側部排気路40に臨む傾斜面部18bに配設された第1側部伝熱部材31は、
図2および
図5に示す如く、前記フィン33が下向きに傾斜しているので、該側部排気路40における傾斜面部18bから離間する側を流通する加熱空気は、該フィン33によって傾斜面部18bに向けて積極的に案内され、油槽11を効率的に加熱し得る。すなわち、側部排気路40内において下方から上方へ移動する加熱空気は、
図6に示す如く、第1側部伝熱部材31の配設領域(上部領域)においては下方傾斜するフィン33に沿って傾斜面部18bに案内されて集められ、該加熱空気が傾斜面部18bの近接位置を後方に向けて流通することで、油槽11(側壁18)と加熱空気との直接的な熱交換率が向上する。従って、前記第1貯留部52aにおいて傾斜面部18bが臨む領域に貯留されている調理油が効率的に加熱される。また、側壁18に配設する側部伝熱部材31の数を増やすことなく調理油(油槽11)の効率的な加熱を達成し得るので、部品点数や組み立て工数が増大することもなく、製造コストを抑制し得る。
【0040】
前記油槽11における傾斜面部18bに配設した第1側部伝熱部材31のフィン33が水平姿勢となる比較例と、該傾斜面部18bに配設した第1側部伝熱部材31のフィン33が下方傾斜する姿勢となる発明例とについて、同一条件で調理油を加熱した検証では、比較例に対して発明例での加熱効率が0.5%向上する結果が得られた。
【0041】
実施例のフライヤー10では、
図3に示す如く、前記油槽11の後壁17に後傾斜面部17bおよび第2後面部17cを設けて、前記後部排気路26を流通する加熱空気と油槽11(後壁17)との熱交換面積を広くしているので、加熱空気によって調理油を効率的に加熱することができる。また、後傾斜面部17bに、フィン33を下方傾斜させた第1後部伝熱部材35を配設すると共に、第2後面部17cに、フィン33を水平にした第2後部伝熱部材35を配設しているので、前記側部排気路40から後部排気路26に流入した加熱空気は、第1後部伝熱部材35の配設領域ではフィン33によって後傾斜面部17bに向けて積極的に案内されて、油槽11における上部領域(調理領域)の調理油を効率的に加熱することができる。一方で、側部排気路40から後部排気路26に流入した加熱空気は、第2後部伝熱部材35の配設領域ではフィン33によって後傾斜面部17bに向けて積極的には案内されないので、油槽11における下部領域の調理油の過熱を抑制し得る。すなわち、油槽11に貯留されている調理油を、調理領域では調理に適した温度に効率的に加熱し得ると共に、底部側で揚げカスが堆積する領域では調理温度より低温として、該揚げカスが焦げついて清掃が煩雑となるのを防止することができる。
【0042】
ここで、前記油槽11の側壁18に設けた側部伝熱部材31におけるフィン33の延出端を、前記側部排気路40を画成する側断熱材29の内面から大きく離間させると、側部排気路40において側壁18から離間する側を流通する加熱空気が該隙間を通って上方に移動し易くなって、油槽11における被調理品の調理領域の全体を均等に加熱し得なくなるおそれがある。しかしながら、実施例のフライヤー10では、油槽11の側壁18に設けた側部伝熱部材31におけるフィン33の延出端を、
図2,
図6に示す如く、側部排気路40を画成する側断熱材29の内面に近接させて該フィン33によって側部排気路40を上下に仕切るよう構成したので、側部排気路40において側壁18から離間する側を流通する加熱空気が側壁18側に案内されることなく上方に集まるのを防ぐことができ、油槽11における被調理品の調理領域の全体を均等に加熱し得る。
【0043】
実施例のフライヤー10では、前記燃焼室25における底部側にバーナー13が配置されており、バーナー13の点火時におけるCO(一酸化炭素)を含む加熱空気は、該燃焼室25から前記側部排気路40における下部側に流入し易くなっている。側部排気路40の下部領域である前記第2側部伝熱部材31の配設領域においては、該第2側部伝熱部材31のフィン33は水平姿勢となっているので、該フィン33での加熱空気の第2側面部側への積極的な案内はなされない。すなわち、加熱空気がフィン33で案内されて第2側面部側に集中することで側部排気路40内での加熱空気の流れが抑制されることなく該加熱空気は後方に向けて円滑に流れる。従って、バーナー13の点火時におけるCO(一酸化炭素)を含む加熱空気は第2側部伝熱部材31の配設領域を円滑に流れ、CO濃度を低減することができる。
【0044】
前記バーナー13の燃料として都市ガスを用いた場合において、前記油槽11における第2側面部18cに配設した第2側部伝熱部材31のフィン33が下方傾斜する姿勢となる発明例1と、該第2側面部18cに配設した第2側部伝熱部材31のフィン33が水平姿勢となる発明例2とについて、ピークCO濃度を測定した結果、発明例1のピークCO濃度が2200ppmであったのに対し、発明例2のピークCO濃度が1800ppmとなり、CO濃度の低減効果があることが検証された。
【0045】
前記側部伝熱部材31は、取付基部32の長手方向に一定間隔で切欠部32aを設けているので、側部伝熱部材31を油槽11の側壁18に溶接固定する際に、該切欠部32aを目印としてスポット溶接の位置を特定することが容易となり、作業時間を短縮することができる。また、取付基部32に対して長手方向に一定間隔でスポット溶接を施し得るので、側部伝熱部材31を側壁18に対して長手方向の全長に亘って安定して固定し得ると共に、溶接痕が一定間隔で(規則正しく)並ぶので、意匠性が低下するのを防ぐことができる。
【0046】
ここで、フライヤー10の使用時と非使用時とでは、前記各側部排気路40に臨む側壁18および該側壁18に固定された側部伝熱部材31は、側部排気路40内の温度変化によって膨張、収縮する。側部伝熱部材31の膨張、収縮は、側壁18に固定されている取付基部32に設けた切欠部32aによって吸収されて、該側部伝熱部材31にクラック等が生ずることは防止される。また、側壁18と側部伝熱部材31とでは、大きさ(長さ、体積)が異なることから、側壁18の膨張、収縮の変化度合と、側部伝熱部材31の膨張、収縮の変化度合とが異なり、膨張、収縮が繰り返されると取付基部32と側壁18とのスポット溶接部が剥離するおそれがある。実施例では、側壁18の厚みに対して取付基部32の厚みを薄く設定し、側壁18と取付基部32とにおいてスポット溶接部における強度に差を設けている。従って、膨張、収縮の変化度合の違いによってスポット溶接部が剥離する場合には、強度の弱い取付基部32からスポット溶接部が剥離することで、油槽11(側壁18)に穴があいて調理油が漏れたり補修が大がかりになるのを防ぐことができる。
【0047】
(第1の別実施例について)
図7は、前記側部伝熱部材31の第1の別実施例を示すものであって、該第1の別実施例の側部伝熱部材(伝熱部材)36について、以後は第1別種側部伝熱部材36と指称するものとする。この第1別種側部伝熱部材36は、取付基部37と、該取付基部37における前後方向に延在する両端縁に接続された一対のフィン38,38とから構成される。各フィン38は、取付基部側が開放する櫛歯状に形成された部材であって、各歯部38aが取付基部37に接続されている。第1別種側部伝熱部材36の取付基部37は、前後方向に所定間隔で離間する複数の接続部37aからなり、各接続部37aの端部がフィン38の歯部38aに接続されている。すなわち、第1別種側部伝熱部材36は、側壁18に取付基部37を固定した状態での縦断面において、側壁18から離間する側が開口するコ字状に形成されている。また、第1別種側部伝熱部材36には、取付基部37および一対のフィン38,38に、前後方向に一定間隔で離間するコ字状の切欠部39が形成されている。そして、第1別種側部伝熱部材36は、取付基部37における各接続部37aが側壁18(傾斜面部18bまたは第2側面部18c)にスポット溶接により固定されるようになっている。
【0048】
前記第1別種側部伝熱部材36は、前記油槽11の傾斜面部18bに取付基部37を固定した場合は、各フィン38,38が下向きに傾斜するよう構成されて、側部排気路40を流通する加熱空気を傾斜面部18b(側壁18)に積極的に案内することで、調理油の加熱効率が向上される。また、第1別種側部伝熱部材36は、油槽11の第2側面部18cに取付基部37を固定した場合は、各フィン38,38が水平となって、側部排気路40を流通する加熱空気を第2側面部18c(側壁18)に向けて積極的には案内しないよう構成される。なお、各フィン38,38に設けられた歯部38a,38a間に位置する切欠部39が、加熱空気の上方への移動を許容する通過部34として機能するようになっている。また、第1別種側部伝熱部材36においても、切欠部39による作用効果は、実施例と同じである。なお、
図7において取付基部37がスポット溶接される部位(固定部)を、一部黒丸で示している。
【0049】
前記第1別種側部伝熱部材36は、取付基部37の両側にフィン38,38を備えているので、前記実施例の側部伝熱部材31と同等の熱交換面積を確保するために必要となる側壁18に対するスポット溶接部の数を低減することができ、作業時間を短縮し得ると共に部品点数も低減し得る。また、コ字形に形成された第1別種側部伝熱部材36は、側壁18に対して複数の第1別種側部伝熱部材36を上下に離間して固定する場合に、上下の第1別種側部伝熱部材36,36を1個分離間して固定しても実施例の側部伝熱部材31,31と同様の配置とすることができ、各第1別種側部伝熱部材36の固定作業が容易となる。更に、第1別種側部伝熱部材36をスポット溶接するための溶接代を側部伝熱部材31の場合より少なくし得るので、同じ面積の領域に伝熱部材を配設する場合には第1別種側部伝熱部材36の配置間隔を狭くすることで、実施例の側部伝熱部材31より多くの第1別種側部伝熱部材36を配設して熱交換面積を広くし得る。
【0050】
(第2の別実施例について)
図8は、前記側部伝熱部材31の第2の別実施例を示すものであって、該第2の別実施例の側部伝熱部材(伝熱部材)60について、以後は第2別種側部伝熱部材60と指称するものとする。この第2別種側部伝熱部材60の基本的な構成は、前記実施例の側部伝熱部材31と同じであるので、同一機能の部分については同じ符号を付して詳細説明は省略する。すなわち、第2別種側部伝熱部材60は、側壁18(傾斜面部18bまたは第2側面部18c)に固定される取付基部32と、該取付基部32から延出して前後方向に離間する複数のフィン33とから構成され、取付基部32を側壁18に固定した状態で、複数のフィン33は側壁18外面から交差する方向に延出する。そして、第2別種側部伝熱部材60では、前後方向に離間する複数のフィン33は、取付基部32に対する接続角度(取付基部32を側壁18に固定した状態での該側壁18とフィン33との交差角度)が前後方向において交互に異なるように設定されている。第2の別実施例では、取付基部32に対する接続角度(交差角度)が異なる2種類のフィン33が設けられており、一方の接続角度で設けられるフィンについて第1フィン33aと指称し、他方の接続角度で設けられるフィンについて第2フィン33bと指称する場合がある。そして、第1フィン33aと第2フィン33bとの具体的な配置は、第1フィン33aと第2フィン33bとが取付基部32の長手方向(前後方向)に交互に位置して、
図10に示す正面視において、第1フィン33aと第2フィン33bとによって取付基部32から離間するにつれて拡開するV字が形成されるようになっている。
【0051】
前記第2別種側部伝熱部材60は、
図10に示す如く、前記取付基部32を傾斜面部18bに固定した状態で、前記第1フィン33aおよび第2フィン33bは何れも傾斜面部18bから離間するにつれて下方傾斜するよう構成される。また、第2別種側部伝熱部材60は、前記取付基部32を第2側面部18cに固定した状態で、前記第1フィン33aが水平姿勢となる一方で、第2フィン33bが下方傾斜するよう構成されている。すなわち、第2別種側部伝熱部材60における第1フィン33aの取付基部32に対する接続角度は、実施例の側部伝熱部材31における取付基部32に対するフィン33の接続角度と同じに設定されている。
【0052】
ここで、
図9および
図10は、前記取付基部32に対するフィン33の接続角度を1種類とした実施例の側部伝熱部材31と、取付基部32に対するフィン33a,33bの接続角度を2種類とした第2別種側部伝熱部材60とを併用した別実施例のフライヤー61を示している。この別実施例のフライヤー61については、前記実施例のフライヤー10と異なる部分についてのみ説明し、同一部材や部分には同じ符号を付すものとする。
【0053】
別実施例のフライヤー61は、
図10に示す如く、前記第2側面部18cの最下段および最上段に配置される伝熱部材として前記側部伝熱部材31が用いられ、両側部伝熱部材31,31の間に配置される複数の伝熱部材として前記第2別種側部伝熱部材60が用いられている。なお、第2側面部18cにおける最上段に配置された側部伝熱部材31は、フィン33が下方傾斜するよう構成されている。また、前記傾斜面部18bの最下段および最上段に配置される伝熱部材として前記側部伝熱部材31が用いられ、両側部伝熱部材31,31の間に配置される複数の伝熱部材として前記第2別種側部伝熱部材60が用いられている。
【0054】
前記第2別種側部伝熱部材60は、取付基部37に対する接続角度が異なる第1フィン33aと第2フィン33bとを前後方向に交互に配置したので、前記側部排気路40における加熱空気の前後方向の流れをフィン33a,33bによって抑制して、該加熱空気が側壁18と接触する時間を長くすることができる。すなわち、フィンの数を増やすことなく側壁18と加熱空気との熱交換効率を向上し得るので、調理油の効率的な加熱をコストを上昇させることなく図ることができる。
【0055】
また、
図10に示す別実施例のフライヤー61では、上下に離間する実施例の側部伝熱部材31,31の間に、複数の第2別種側部伝熱部材60を配置することで、両側部伝熱部材31,31の間での加熱空気の前後方向への流れを抑制することができ、側壁18と加熱空気との熱交換効率を向上し得る。ちなみに、
図6に示す実施例のフライヤー10と、
図10に示す別実施例のフライヤー61とについて、同一条件で調理油を加熱した検証では、実施例のフライヤー10に対して別実施例のフライヤー61での加熱効率が0.5%向上する結果が得られた。なお、第2側面部18cに固定した第2別種側部伝熱部材60の第1フィン33aは水平姿勢となっているので、側部排気路40を流れる加熱空気が過度に第2側面部18c側に導びかれることはなく、揚げカスが堆積する領域の油温が過度に上昇するのは抑えられる。
【0056】
〔変更例〕
本願は、前述した実施例の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。
(1) 実施例では、油槽の側壁を構成する傾斜面部に配設した伝熱部材についてのみ、フィンを下方傾斜するよう構成したが、第2側面部に配設した伝熱部材についても、フィンを下方傾斜する構成を採用し得る。
(2) 実施例では、油槽の側壁に傾斜面部を設けたが、側壁における側部排気路(排気路)を画成する壁の全体が略鉛直状に延在する壁としてもよく、該壁に配設される全ての伝熱部材について、フィンを下方傾斜する構成を採用し得る。
(3) 実施例では、油槽の側壁に上下に離間して配設した複数の伝熱部材を、フィンが上下方向に整列する場合で説明したが、フィンが前後方向にずれて配設されたものであってもよい。
(4) 第1の別実施例の伝熱部材は、取付基部を前後方向に離間する複数の接続部から構成したが、該取付基部を1枚の板材から形成し、該板材の対向する端縁において前後方向に離間して複数のフィンを設けた構成を採用し得る。
(5) 実施例の伝熱部材は、取付基部に複数のフィンを設けた構成としたが、取付基部に1つのフィンを設けた複数の伝熱部材を、前後方向に離間して側壁外面に配設する構成を採用し得る。また、第1の別実施例の伝熱部材のように取付基部の上下両端にフィンを備える構成では、
図7に示す第1の別実施例の伝熱部材における切欠部の部分で分割された構成のものを採用することもできる。
【0057】
(6) 油槽の後壁に配設される後部伝熱部材として、
図7に示す第1の別実施例または
図8に示す第2の別実施例の伝熱部材を採用し得る。
(7) 実施例では、油槽に深さの異なる貯留部を設けたが、単一の深さの貯留部のみを設けた油槽であってもよい。
(8) 実施例では、ダクト部のドラフト効果による自然流通方式で加熱空気が排気路内を流通するよう構成したが、送風ファンやブロワ等を用いて加熱空気を排気路内に強制的に流通させる強制流通方式を採用し得る。
(9) 第2別種側部伝熱部材として、接続角度(交差角度)が異なる2種類のフィンを取付基部に設けたが、接続角度(交差角度)が異なる3種類以上のフィンを前後方向に交互に設けるようにしてもよい。例えば、接続角度(交差角度)が異なる3種類のフィンを用いる場合は、前後方向に第1フィン、第2フィン、第3フィン、第1フィン、第2フィン、第3フィン・・・の順で配置すればよい。
(10) 第2別種側部伝熱部材について、配置される側壁の位置、すなわち傾斜面部と第2側面部とに応じてフィンの接続角度(交差角度)を異なるようにしてもよい。
(11) 別実施例のフライヤーでは、側部伝熱部材と第2別種側部伝熱部材とを併用するようにしたが、伝熱部材として第2別種側部伝熱部材のみを用いるものであってもよい。