特許第6532403号(P6532403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6532403光電気混載基板に設けた光送信機または光送受信機の送信部
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6532403
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】光電気混載基板に設けた光送信機または光送受信機の送信部
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20190610BHJP
   G02B 6/125 20060101ALI20190610BHJP
   G02B 6/124 20060101ALI20190610BHJP
   H01S 5/022 20060101ALI20190610BHJP
   G02F 1/015 20060101ALI20190610BHJP
【FI】
   G02B6/12 301
   G02B6/125 301
   G02B6/124
   H01S5/022
   G02F1/015
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-528267(P2015-528267)
(86)(22)【出願日】2014年7月18日
(86)【国際出願番号】JP2014069164
(87)【国際公開番号】WO2015012213
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2017年6月29日
(31)【優先権主張番号】特願2013-151491(P2013-151491)
(32)【優先日】2013年7月22日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】517177464
【氏名又は名称】アイオーコア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】屋敷 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】蔵田 和彦
【審査官】 佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/013128(WO,A1)
【文献】 特開2005−266623(JP,A)
【文献】 ARAKAWA,Y.et al.,Silicon Photonics for Next Generation System Integration Platform,IEEE Communication magazine ,2013年 3月,Vol.51,Issue 3,72-77
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12−6/13
G02F 1/00−1/125
H01S 5/02−5/026
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電気混載基板に設けた光送信機または光送受信機の送信部であって、
複数のチャンネルでレーザ光を出射する半導体レーザと、前記半導体レーザにそれぞれ光学的に結合され、前記チャンネルごとに前記レーザ光を入力光として伝搬する光導波路と、前記入力光を変調して光信号を生成する光変調器と、前記光変調器にそれぞれ結合され、該光変調器から伝搬された前記光信号を外部に出力する光信号出力部と、前記光導波路にそれぞれ結合され、前記レーザ光を2以上の入力光に分岐する光分岐部であって、前記変調器が各前記光分岐部に設けられた2以上の光出力端子にそれぞれ結合される光分岐部と、を備え、
前記半導体レーザが、前記光電気混載基板の平面において、前記光信号出力部を挟んで前記光変調器とは反対側に配置され、
前記光信号出力部が、各前記伝搬された光信号を回折させるグレーティング・カプラを備え、
前記光分岐部が、それぞれ複数の2分岐型光カプラまたは3分岐光カプラを多段配置して、前記レーザ光を任意の個数の入力光に分岐するように構成したこと特徴とする、光送信機または光送受信機の送信部。
【請求項2】
請求項1に記載の光送信機または光送受信機の送信部において、前記光信号出力部が、更に、前記グレーティング・カプラに光学的に結合され、且つ、前記光電気混載基板の平面に対して所望の角度で立設されて、前記光信号を外部出力させる光ピンを備えるように構成されること特徴とする、光送信機または光送受信機の送信部。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光送信機または光送受信機の送信部において、
前記半導体レーザがm個(mは1以上の整数)のチャンネルからなり、前記光導波路が第1〜mの光導波路からなり、前記光分岐部が第1〜mの光分岐部からなり、
前記第1〜mの光分岐部が、それぞれ前記レーザ光を任意のn個(nは2以上の整数)の入力光に分岐し、前記光出力端子を通じて第1〜nの光変調器に結合され、
第kの光導波路(kは1以上で且つm以下の任意の整数)が、第(k−1)の光分岐部に結合される第nの光変調器と第kの光分岐部に結合される第1の光変調器との間、または、第kの光分岐部に結合される第nの光変調器と第(k+1)の光分岐部に結合される第1の光変調器との間のいずれか一方を通って第kの光分岐部に結合され、複数の前記光導波路における各配線長が等しくなるように設けたことを特徴とする、光送信機または光送受信機の送信部。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の光送信機または光送受信機の送信部であって、
前記光導波路が、それぞれ曲がり部を含む曲げ導波路として配設され、各前記光導波路が、前記半導体レーザから対応する前記光信号出力部への直線方向と直交する方向に前記半導体レーザから延びると共に、前記半導体レーザから所与の距離で前記曲がり部により前記光信号出力部直線方向に90度屈曲されることを特徴とする、光送信機または光送受信機の送信部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電気混載基板に設けた光送信機または光送受信機の送信部に関し、更に特定すれば、このような光送信機または光送受信機の送信部のうち、半導体レーザの配置および光導波路の配設に特徴を有する光集積回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ボード間、コンピュータ間、周辺機器間などの電子機器の接続において、電気配線による信号遅延、発熱、EMI(電磁放射ノイズ)の発生などの問題が表面化している。そして、電気配線で発生するこのような問題を解決するために、シリコンフォトニクス技術を用いた光インターコネクションが開発されつつある(非特許文献1)。ここで、シリコンフォトニクスとは、シリコンを材料とする光素子技術を意味しており、また、光インターコネクションとは、外部機器などからの電気信号を光信号に、光信号を電気信号に変換して、信号のやり取りを行う技術を意味している。非特許文献1はLSIチップ間での伝送例を示しているが、他方、光コネクタを介してファイバで伝送することによる、変換された光信号の機器間での伝送も可能である。
【0003】
このような光インターコネクションでは、光電気混載基板において、電気信号の入出力のための接続構成と光信号の入出力のための接続構成が互いに干渉することなく、また、電気接続を簡便に行うことが可能な構造とするとともに、光学接続のための構成を簡素化して、光学接続を正確且つ簡便に行うことができる構成とする必要がある。
【0004】
図1および図2は、光電気混載基板に設けた従来技術の光送信機用の光集積回路の平面概略図を示している。図1では、光導波路素子等一般的な光学素子の配置を示している。一方、図2では、光導波路等については示しておらず、その替わりに高速電気信号の入力パッド(ここでは導電ピン)やドライバICといった回路素子の配置を示している。このような光集積回路は、上記シリコンフォトニクス技術を用いてシリコン基板内に形成することにより、小型高密度化が可能となる。
【0005】
図1の光集積回路100では、レーザ光が半導体レーザ1から光学結合により入射され、スポットサイズ変換器2を介して光導波路3を伝搬して、光カプラ(MMIカプラ)4に結合される。光カプラ4では、レーザ光が複数の入力光に分岐され、次いで、この入力光が、曲がり部5aを有する曲げ導波路として構成した光導波路5を伝搬し、複数の光変調器を配列した光変調器アレイ60に入力される。光変調器アレイ60から出力された光信号は、更に光導波路7を介して複数の光信号出力素子を配列した光信号出力素子アレイ80へと結合され、この光信号出力素子から光ファイバ等を通じて外部に出力される。
【0006】
光電気混載基板では、図2に示されるように、電気接続を行うための複数の高速電気信号の入力パッドが基板平面周縁部に沿って配置される電気I/Oアレイ90、および光変調の制御を行うドライバIC50を配置し、更に光電気混載基板上に高速電気配線の電気結線95が形成される。光電気混載基板平面上、ドライバIC50の配置領域は光変調器アレイ60の領域と重複し、ドライバICは光変調器上に配置され、光変調器内での光の進行方向とドライバICへの電気信号の進行方向は一致している。このため、半導体レーザ1の配置は、電気I/Oアレイ90や電気結線を避けるようにして配置する(ここでは平面コーナー部)ことになる。
【0007】
上記は光送信機用の光集積回路の一例として示したが、光送受信機の送信部用のものに関しても同様である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】”Demonstration of 12.5-Gbps optical interconnects integrated with lasers, optical splitters, optical modulators and photodetectors on a single silicon substrate”, OPTICS EXPRESS Vol. 20, No, 26 (2012/12/10) B256−B263
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、光電気混載基板に設けた従来技術の光集積回路では、半導体レーザ1の配置は、電気I/Oアレイ90や電気結線を避けるようにして配置する(図1および図2では平面コーナー部)ことになる。その結果、小型高密度を追究してチャンネル数を増やしていくと電気配線の引き回しに困難が生じることになる。また、半導体レーザを避けて電気配線を行うことで電気配線をドライバIC内の電気の進行方向に対して90度以上に折り曲げて配置する必要が生じることもあり、特にチャンネルあたりの信号の高速化が進むにつれ電気信号の劣化が避けられないものとなる。更に、半導体レーザの配置を光電気混載基板平面のコーナー部とし、光変調器までの光導波路で最短でつなぐと、図1からも分かるように、半導体レーザ1と光変調器アレイ60の間に配設される各光導波路5は、その配線長がチャンネルごとに大きく異なるという問題点が生じていた。
【0010】
一般に、光導波路の長さは入力光の減衰を及ぼす。特にマルチチャンネルの動作では受信側での入力光の大きさがチャンネルごとに異なると、チャンネルごとの受信機の増幅率が異なることでクロストークが発生しやすくなる。したがって、チャンネルごとに光導波路長が異なるのは好ましいことではない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、単チャンネルまたは多チャンネル型の半導体レーザの配置および複数の光導波路の配設に特徴を有する光集積回路を備えた光送信機または光送受信機の送信部を提供する。
【0012】
本発明の光電気混載基板に設けた光送信機または光送受信機の送信部では、複数のチャンネルでレーザ光を出射する半導体レーザ、半導体レーザにそれぞれ光学的に結合され、チャンネルごとにレーザ光を入力光として伝搬する光導波路、入力光を変調して光信号を生成する光変調器、および、各光変調器に結合され、光変調器から伝搬された光信号を外部に出力する光信号出力部を備える。そして、半導体レーザが、光電気混載基板の平面において、光信号出力部を挟んで光変調器とは反対側に配置されること特徴とする。
【0013】
また、本発明の光電気混載基板に設けた光送信機または光送受信機の送信部では、上記光導波路にそれぞれ結合され、レーザ光を2以上の入力光に分岐する光分岐部であって、変調器が各光分岐部に設けられた2以上の光出力端子にそれぞれ結合される、光分岐部を備える。
【0014】
更に、本発明の光電気混載基板に設けた光送信機または光送受信機の送信部では、上記光信号出力部が、伝搬された各光信号を回折させるグレーティング・カプラ、および、グレーティング・カプラに光学的に結合され、且つ、光電気混載基板の平面に対して所望の角度で立設されて、光信号を外部出力させる光ピンを備える。
【0015】
加えて、本発明の光電気混載基板に設けた光送信機または光送受信機の送信部では、半導体レーザがm個(mは1以上の整数)のチャンネルからなり、光導波路が第1〜mの光導波路からなり、光分岐部が第1〜mの光分岐部からなり、第1〜mの光分岐部が、それぞれレーザ光を任意のn個(nは2以上の整数)の入力光に分岐し、光出力端子を通じて第1〜nの光変調器に結合され、第kの光導波路(kは1以上で且つm以下の任意の整数)が、第(k−1)の光分岐部に結合される第nの光変調器と第kの光分岐部に結合される第1の光変調器との間、または、第kの光分岐部に結合される第nの光変調器と第(k+1)の光分岐部に結合される第1の光変調器との間のいずれか一方を通って第kの光分岐部に結合され、複数の光導波路における各配線長が等しくなるように設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の基本的構成によれば、光電気混載基板に設けた本発明の光送信機または光送受信機の送信部は、光集積回路において、半導体レーザを光変調器の出力側、即ち光信号出力部の近傍に配置することで周波数依存性の大きい電気信号配線の電気結線をより効果的かつ自由に行えるようにする。これにより、高速・高周波数用電気配線の負荷を小さくすることができる。さらに光のインターフェースとして光ピンを備えることにより、上述した電気配線の劣化の抑制を可能とした上で、半導体レーザやドライバICの配置に影響を受けることなく、更に、ファイバなどの外部の導波路に対する低損失な結合が可能となる。半導体レーザからの光を光変調器の間隙を通る光導波路により光変調器に導き、配線を等しくすることで、ドライバICや光変調器全体を迂回する場合に比べ、配線長を短く抑えつつ、光損失の均一化が実現でき、受信側のクロストークの抑制も可能となり、更には、良好な信号品質を有する光インターコネクションを実現することを可能とする。
【0017】
その結果、本発明は、高周波特性の良好な送信機または光送受信機の送信部を実現可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、従来技術による光送信機(または光送受信機の送信部)用の光集積回路の平面概略図である。
図2図2は、従来技術による光送信機用の光集積回路の平面概略図である。
図3図3は、本発明の実施形態による光送信機(または光送受信機の送信部)用の光集積回路の平面概略図である。
図4図4は、本発明の実施形態による光送信機(または光送受信機の送信部)用の光集積回路の平面概略図である。
図5図5は、本発明の実施形態による光送信機(または光送受信機の送信部)用の光集積回路の平面概略図である。
図6図6は、本発明の実施形態による光送信機(または光送受信機の送信部)用の光集積回路の断面図である。
図7図7は、本発明の実施形態による光送信機(または光送受信機の送信部)用の光集積回路における各光学素子の配置態様を説明した概略図である。
図8図8は、本発明の実施形態による光送信機(または光送受信機の送信部)用の光集積回路における図7に基づいた光学素子の配置例を示す。
図9図9は、本発明の実施形態による光送信機(または光送受信機の送信部)用の光集積回路における図7に基づいた光学素子の配置例を示す。
図10図10は、本発明の実施形態による光送信機(または光送受信機の送信部)用の光集積回路における図7に基づいた光学素子の配置例を示す。
図11図11は、本発明の実施形態による光送信機(または光送受信機の送信部)用の集積回路における図7に基づいた光学素子の他の配置例を示す。
図12図12は、本発明の他の実施形態による光送信機(または光送受信機の送信部)用の集積回路における光学素子の配置例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態による光電気混載基板に設けた光送信機または光送受信機の送信部について、以下に図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では主に光送信機を想定して説明するが、光送受信機の送信部についても同様のことが言える。また、同様の構成要素には同様の符号を付してある。
【0020】
図3から図5は、光電気混載基板に設けた本発明の実施形態による光送信機用の集積回路200の平面概略図である。図3は、光導波路等の光学素子の配置態様を示しており、従来技術を示した図1に対応する。一方、図4では、光導波路等については示しておらず、その替わりに高速電気信号の入力パッド(ここでは導電ピン)やドライバICといった回路素子の配置を示しており、従来技術を示した図2に対応する。
【0021】
図3に示すように、本実施形態による光送信機用の集積回路200は、光電気混載基板上に、1以上のチャンネルでレーザ光を出射する単チャンネルまたは多チャンネル型の半導体レーザ10、チャンネルごとにスポットサイズ変換器20を介して半導体レーザ10から光学的に結合され、レーザ光を主に横方向に伝搬する光導波路30、光導波路30にそれぞれ結合され、レーザ光を2以上の入力光に分岐する光カプラ4aを備える光分岐部40a、各光分岐部に設けられた2以上の光出力端子にそれぞれ結合され入力光を変調して光信号を生成する光変調器6、光変調器6にそれぞれ結合され光変調器から伝搬される光信号を外部に出力する光信号出力部80aを備える。
【0022】
光カプラ4aを備える複数の光分岐部40aが縦方向に一列に整列して光カプラ・アレイ40を形成し、また、複数の光変調器6が縦方向に一列に整列して光変調器アレイ60を形成し、更に、複数の光信号出力部80aが縦方向に一列に配列して光信号出力アレイ80を形成する。
【0023】
そして、光電気混載基板の平面200において、半導体レーザ10は、光信号出力部80a(光信号出力アレイ80)を挟んで光変調器6(光変調器アレイ60)とは反対側に配置される。
【0024】
ここでは、光分岐部40a(光カプラ・アレイ40)を、光変調器6(光変調器アレイ60)を挟んで半導体レーザ10の反対側に配置したが、半導体レーザ10と光信号出力部80a(光信号出力アレイ)との間に配置してもよい。ただし、光分岐部40a(光カプラ・アレイ40)と高速信号用の電気結線95は、電気結線95を光分岐部40a(光カプラ・アレイ40)上に形成でき、干渉しないため、光分岐部40a(光カプラ・アレイ40)を、光変調器6(光変調器アレイ60)を挟んで半導体レーザ10の反対側に配置するほうが、チップ面積を小さくした上で電気結線のための面積を広くとれるので望ましい。
【0025】
従来技術を示した図1と比較すると、このように半導体レーザ10が、光変調器6(光変調器アレイ60)の出力側、特に光信号出力アレイ80側に配置されている点で大きく異なっており、また、スポットサイズ変換器20からの光導波路30が、隣接する光変調器6の間を横方向に通るようにして半導体レーザ1とは反対側に配置される光分岐部40aに接続される点でも異なっている。なお、図示した半導体レーザ10は多チャンネル型としているが、これに限定されず図1のような単チャンネル型としてもよい。
【0026】
光電気混載基板平面における半導体レーザ10の配置は、図4および図5を参照することによってより一層明らかとなる。即ち、本実施形態による光送信機は、光集積回路において、半導体レーザ10を、(電気I/Oアレイ90側ではなく)左側の光信号出力アレイ80側に配置する。これにより、従来技術で必要としていた半導体レーザ配置領域(図5の破線領域z)を、図4に示すように入力パッドの配置領域、および入力パッドからドライバIC50に向けた高速電気配線の電気結線領域用スペースとして確保する。その結果、従来技術よりも広い面積で高速電気配線の電気結線をより自由に行うことを可能にする。
【0027】
また、図4および図5に示す素子配置態様では、本実施形態による光送信機が備える光信号出力部80aとして光ピン8aを備える。より具体的には、当該光信号出力部80aは、光変調器6から伝搬されてきた光信号を回折させるグレーティング・カプラ8b、および、このグレーティング・カプラ8bに光学的に結合され、且つ、光電気混載基板の平面に対して所望の角度で立設されて、光信号を外部出力させる光ピン8aを備えるように構成される。このように光信号出力部80aを構成することで、従来、例えば光ファイバとの接続用等に設けられた光ファイバ・アレイ配置用の領域(図5の破線領域z)を、半導体レーザ10の配置スペースとして確保・利用できるという利点がある。
【0028】
さらに、図1に示した従来技術の光集積回路平面100(図5の破線領域Zに相当)と比較すると、図5に示した本実施形態による光送信機用の集積回路平面200では、半導体レーザ10の配置領域を従来のもの(z)から変更したことにより、光電気混載基板平面全体をドライバIC50や光信号出力アレイ80に対して幾分か横方向にシフト可能である(左向き方向の点線矢印)。これに伴い、半導体レーザ10の配置スペース下方に新たに設けられることになる領域(図5の破線領域z)を、電気配線用の新たな配置スペースとして利用可能となる。例えば、低速の変調制御信号の入出力のための制御用パッド(図示せず)の配置用スペースとして新たに確保・利用することを可能にする。これにより、低速電気配線領域および高速電気配線領域をより一層分離させることが可能となり、更なる効果的な電気信号配線が可能となる。
【0029】
再度図3を参照すると、本実施形態による光送信機において、複数の光導波路30は、曲がり部30aを含む曲げ導波路として所与の隣接した光変調器の間を通して、各配線長を等しくする(即ち等長配線となる)ように配設される。光導波路30をこのように配設することによって、例えば、光変調器アレイ60および光信号出力アレイ80の外周に光導波路30を迂回させる場合と比較して、より短い配線長での光導波路の等長配線を可能にする。なお、本発明の全体を通じて、光導波路は、縦方向の導波路、横方向の導波路、および導波路を90度屈曲させる曲がり部を備えるように構成される。
【0030】
隣接する光変調器の間の光導波路配設について次に補足する。シリコンフォトニクス技術を用いて形成される5μm×5μmスケールの光集積回路で用いられる光変調器のサイズは、一般的に40μm×250μm程度であり、隣接する光変調器間のピッチは約125μmである。この点、隣接する光変調器間には、約85μmの空白地帯がある。そして、光導波路のコア径を3μm、この両側のクラッドを片側1μmと想定すると、隣接する光変調器間には、20本程度の光導波路が配設可能ということになる。
【0031】
このように、本発明の光送信機の光集積回路200は、光電気混載基板において半導体レーザを光変調器の出力側、即ち光信号出力部の近傍に配置し、周波数依存性の小さい光導波路の配設を等長配線となるように工夫することによって、周波数依存性の大きい高速電気配線の配設をより効果的かつ自由に行えるようにし、電気配線の負荷を小さくすることを可能にする。
【0032】
図6は、本発明の実施形態による光送信機用の光集積回路の断面図を示す。図6を用いて光信号送信の際の作動態様を説明する。光出力部側に設けた半導体レーザ10からのレーザ光は、スポットサイズ変換器20、光導波路30、導電ピン9a側に設けた光分岐部40a等を介して光変調器6に入力され((i)〜(iii))、光変調器6で変調された光信号を出力する(iv)。変調された光信号は、光導波路を介してグレーティング・カプラ8bに到達し、このグレーティング・カプラ8bで回折により光軸が変換されて、光ピン8aを介して外部に出力される(v)。なお、導電ピン9aを通じて外部より入力される電気信号は、光変調器6及び半導体レーザ10を制御するドライバIC50に入力され((I)〜(II))、変調制御信号(電気信号)として、電気配線を介して光変調器6に供給される(III)。
【0033】
これより、図7を参照して、本発明の実施形態における光送信機用の各光学素子の配置、即ち、光信号出力アレイ80側に設けた半導体レーザ10および電気I/Oアレイ90(図示せず)側に設けた光カプラ4(光分岐部40a)の間の光導波路の配設態様について更に詳細に説明する。便宜上、mチャンネルの半導体レーザ10のチャンネル番号をCH[k]と表し(ここでは、mは2以上の整数、kは1以上m以下の任意の整数として、多チャンネルの半導体レーザを想定する。)、また、CH[k]に関連付けられる光導波路をPATH[k]、光カプラをMMI[k]と表す。
【0034】
図示のように、光カプラMMI[k−1],MMI[k],MMI[k+1]が光カプラ・アレイ40において縦方向に一列に整列している。光カプラMMI[k]は、レーザ光をn個(nは2以上の整数)の入力光に分岐し、その光出力端子を通じてそれぞれn個の光変調器に結合される。なお、図7では、光カプラMMI[k]を一段配置としているが、これに限定されず、例えば後述する図8図11のように、光カプラ4aを2段以上の多段配置として光分岐部40aを構成してもよい。
【0035】
また、光カプラMMI[k]に結合されるn個の光変調器をMOD[k][1]〜MOD[k][n]と表す。図示のように、光変調器アレイ60において、光変調器をMOD[k−1][1]〜MOD[k−1][n],MOD[k][1]〜MOD[k][n],MOD[k+1][1]〜MOD[k+1][n]が縦方向に整列している。
【0036】
図7に示すように、特定の隣接する光変調器間に配設された光導波路PATH[k]は、等長配線を実現するために、光カプラMMI[k−1]に結合される光変調器MOD[k−1][n]と光カプラMMI[k]に結合される光変調器MOD[k][1]との間(実線)、または、光カプラMMI[k]に結合される光変調器MOD[k][n]と光カプラMMI[k+1]に結合される光変調器MOD[k+1][1]との間(点線)のいずれか一方を通して光カプラMMI[k]に結合するように配設される。
【0037】
なお、上端の光導波路PATH[1]は、光カプラMMI[1]に結合される光変調器MOD[1][n]および光カプラMMI[2]に結合される光変調器MOD[2][1]との間を通し、同様に、下端の光導波路PATH[m]は、光カプラMMI[m−1]に結合される光変調器MOD[m][n]および光カプラMMI[m]に結合される光変調器MOD[m][1]との間を通すように配設することになる。
【0038】
これより、図8図11を参照して、本発明の実施形態による光送信機用の集積回路における図7に基づく光学素子の配置例を示す。図8図11は、一例として12チャンネルの光出力を有し、即ち、グレーティング・カプラ(図中、「GC」で表す)および光ピン(図示せず)の組が12個整列される。同じく、光変調器(図中、「MOD」で表す)も12個整列される。ここで、図8は2チャンネルの半導体レーザ、図9は3チャンネルの半導体レーザ、そして図10は単チャンネル型の半導体レーザの例である。
【0039】
図8では、2チャンネルの半導体レーザ(LD)に対し光出力が12チャンネルとしていることから、12個の光変調器を6個ずつにグループ分けし、図7に基づいてグループ間の隣接光変調器間に2本の光導波路30を配設している。更に、光分岐部40aを2分岐型光カプラ4a’および3分岐型光カプラ4a’’の2段配置とすることにより、半導体レーザ(LD)の各チャンネルから出力されるレーザ光をそれぞれ6つの入力光に分岐している。
【0040】
同様に、図9では、3チャンネルの半導体レーザ(LD)に対し光出力が12チャンネルとしていることから、12個の光変調器を4個ずつにグループ分けし、図7に基づいて、グループ間の隣接光変調器間に1本または2本の光導波路30を配設している。更に、光分岐部40aを2分岐型光カプラ4a’の2段配置とすることにより、各チャンネルの半導体レーザから出力されるレーザ光をそれぞれ4つの入力光に分岐している。
【0041】
図8および図9から分かるように、半導体レーザ10と光分岐部40aとの間の各光導波路30が等長配線となるように配設するのに加えて、光分岐部40aと光変調器6の間の各光導波路も等長配線とするために、光分岐部40aは、複数の2分岐型または3分岐の光カプラによる多段配置としてレーザ光を任意の個数の入力光に分岐するように構成するのがよいが、これに限定されず、等長配線である限りにおいて、4分岐等の光カプラの一段または多段配置としてもよい。なお、図8では、3分岐型光カプラと光変調器間の各光導波路を等長配線とするために、光導波路に適宜曲がり部30a’を設けるよう工夫しているが、この曲がり部は各光導波路が等長配線となればいずれの配置態様でもよい。
【0042】
なお、半導体レーザが単チャンネル型半導体レーザの場合には、図10のように光変調器アレイ60の中間(即ち、6個ずつにグループ分けした光変調器のグループ間)に1本の光導波路30を通し、光分岐部40aを2分岐型光カプラおよび3分岐型光カプラによる3段配置とするように構成する。これにより、光変調器アレイ60の外周に光導波路30を配設するよりも導波路長を短くすることができる。
【0043】
図11は、図9における光学素子の配置の更なる変形例である。図11では、図9と比較して、半導体レーザ(LD)からのレーザ光の出射方向を変更している。即ち、曲がり部30aを含む曲げ導波路として配設されるチャンネルごとの光導波路が、半導体レーザ10から光信号出力アレイ80に向けた横方向(光信号出力部(GC)に向いた方向)と直交する縦方向に向けてスポットサイズ変換器から延びると共に、半導体レーザ10から所与の距離で曲がり部3aにより光信号出力部方向(即ち横方向)に90度屈曲される。このように構成するのは、半導体レーザとスポットサイズ変換器を端面結合させる場合に生じる迷光が、クラッド内に閉じて反射により伝搬することにより、光集積回路の他の素子や装置に悪影響を与えるのを回避するためである。ここでの距離は、信号光の強度に関連付けて設定するのがよい。一例として、光導波路を伝播する光信号に対する迷光の相対強度が−30dBとなるような距離を所与の距離として設定することが考えられる。
【0044】
なお、図9の変形例として図11を示したが、それ以外の配置例においても同様のことが言える。
【0045】
上記図7図11の各素子配置例においては、光カプラ4aを備える光分岐部40aが縦方向に一列に整列して形成されることを前提に記載したが、当業者にとって、このような光カプラ4aを備える光分岐部40aは必須の構成要素ではない点が認められて然るべきである。
【0046】
より具体的には、図12に示される素子配置例のように、図11と比較して、光カプラ4aを備える光分岐部40aに係る構成を有しない態様としてもよい。図12(a)の例は4チャンネルの場合、図12(b)の例は8チャンネルの場合について記載している。即ち、半導体レーザからチャンネル数分有するスポットサイズ変換器を介して、光導波路が光変調器にそれぞれ直接結合され、レーザ光(入力光)が直接光変調器に入力されるように構成してもよい。図12の配置例のように、2の倍数個のチャンネル存在する場合には、2チャンネルを一組と考えることで、複数の光導波路が曲がり部を含む曲げ導波路として各配線長を概ね等しくする(即ち等長配線となる)ように配設可能な点に留意すべきである。
【0047】
加えて、光導波路の配設について、図11のような光分岐部40aを有する場合の配設態様と図12のような光分岐部40aを有しない場合の配設態様との組み合わせによりその全体を構成可能であることは言うまでもない。
【0048】
以上、図面を参照しつつ本発明のいくつかの実施形態を説明してきたが、当業者であれば、他の類似する実施形態を使用することができること、また、本発明から逸脱することなく適宜形態の変更又は追加を行うことができることに留意すべきである。なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるべきではなく、特許請求の範囲の記載に基き解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0049】
光集積回路 100,200
半導体レーザ 1,10
スポットサイズ変換器 2,20
光カプラ 4,4a,4a’,4a’’
光カプラ・アレイ 40
光分岐部 40a
光導波路 3,5,7,30
曲がり部 5a,30a,30a’
光変調器 6
光変調器アレイ 60
光ピン 8a
グレーティング・カプラ 8b
光信号出力アレイ 80
光出力部 80a
導電ピン 9a
電気I/Oアレイ 90
電気結線 95
ドライバIC 50
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12