(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記sNAGナノファイバーが、放射線照射されていないポリ−β−N−アセチルグルコサミンファイバーの微細構造を有する、請求項1〜16の何れか1項に記載の組成物。
前記sNAGナノファイバーは、80%よりも多い、90%よりも多い、95%よりも多い、または100%のN−アセチルグルコサミン単糖類を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
上記sNAGナノファイバーの赤外線スペクトルは、放射線照射されていない、微細藻類のポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンの赤外線スペクトルとおよそ同じである、または同等である、請求項1〜18の何れか1項に記載の組成物。
前記sNAGナノファイバーは、MTTアッセイにおいて、血清を枯渇させたヒト臍帯静脈内皮細胞の代謝速度を増加させる、および/または、トリパンブルー排除試験において、血清を枯渇させたヒト臍帯静脈内皮細胞のアポトーシスを救助しない、請求項1〜23のいずれか1項に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[3.1 用語定義]
本明細書中で使用される場合、用語「sNAGナノファイバー」、「sNAG」、「タリデルム(Taliderm)」または「タリム(Talymed)」(以前は「タリデルム」として知られた)は、ポリ−N−アセチルグルコサミンおよび/またはその誘導体の短縮化された繊維に関して、交換可能に使用される。好ましい実施形態において、sNAGナノファイバーは、ポリ−N−アセチルグルコサミンおよび/またはその誘導体の短縮化された繊維の全体からなる。タリデルムまたはタリムは、ポリ−N−アセチルグルコサミンおよび/またはその誘導体の短縮化されたファイバーの全体からなる膜である、sNAGナノファイバーの例である。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「約」は、所定の値の周辺の範囲を意味しており、得られた値が、明白に記載された値と同一または実質的に同一(例えば、10%、5%または1%以内)であることを意味している。一実施形態において、用語「約」は、所定の値または範囲の10%以内であることを意味している。他の実施形態において、用語「約」は、所定の値または範囲の5%以内であることを意味している。他の実施形態において、用語「約」は、所定の値または範囲の1%以内であることを意味している。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「疾患」および「障害」は、被験体の状態に関して交換可能に用いられる。ここに記載した方法に基づき治療または予防可能な疾患/障害の例としては、エーラー・ダンロス症候群、表皮水疱症、強皮症、骨粗鬆症、椎間板障害、椎間板変性、変形性関節症、線維症、皮膚のシワ形成、および創傷に伴う瘢痕化が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「被験体」および「患者」は、動物(例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、トリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、ネズミ、ラット、ウサギ、ギニーピッグ等)に関して、交換可能に用いられる。いくつかの実施形態において、被験体は、非霊長類および霊長類のような哺乳動物である(例えば、サルおよびヒト)。特定の実施形態において、被験体はヒトである。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「有効量」は、sNAGナノファイバーまたはその組成物を被験体に投与することとの関連でsNAGナノファイバーまたはその組成物の量に関し、有益な効果または治療効果が得られる量である。特定の実施形態において、sNAGナノファイバーまたはその組成物の「有効量」は、sNAGナノファイバーまたはその組成物の量に関し、以下に示す効果のうち、少なくとも1、2、3、4またはそれ以上を達成するために十分な量である:(i)被験体もしくは被験体集団における、疾患またはそれに関連する症状の重大性の縮小または回復;(ii)疾患に関連する症状の持続期間の短縮;(iii)被験体もしくは被験体集団における、疾患またはそれに関連する症状の進行阻止;(iv)疾患に関連する症状の後退;(v)疾患に関連する症状の発生または攻撃阻止;(vi)疾患に関連する症状の再発防止;(vii)被験体もしくは被験体集団の入院発生の減少;(viii)被験体もしくは被験体集団の入院期間の短縮;(ix)被験体もしくは被験体集団の生存率の上昇;(x)被験体もしくは被験体集団の症状の排除;(xi)被験体もしくは被験体集団の他の療法における予防または治療効果の強化または改善;(xii)被験体もしくは被験体集団における疾患の症状数の減少;(xiiii)被験体における組織の抗張力の向上;(xiv)被験体の組織における弾性の向上;(xv)被験体の組織におけるエラスチン含量または生産の増加;(xvi)被験体の組織における瘢痕サイズの縮小;(xvii)被験体の組織における総コラーゲン含量の減少;(xviii)被験体の組織におけるI型コラーゲン発現または含量の減少;(xix)被験体の組織におけるIII型コラーゲン発現または含量の増加;(xx)被験体の組織における、より整列したコラーゲンの誘導;(xxi)被験体の組織における平滑筋アクチン含量もしくは発現の減少、または筋線維芽細胞含量の減少;(xxii)組織の抗張力の低下、組織の弾性の低下、組織のコラーゲン含量もしくは異常コラーゲン含量の増加、組織のI型コラーゲン発現の増加、組織のIII型コラーゲン発現の減少、組織のコラーゲン配列の異常、組織の平滑筋アクチン含量の増加、および組織の筋線維芽細胞含量の増加のうちの、1つ以上が原因となるもしくは1つ以上に関連する症状の攻撃、発生もしくは再発の予防;並びに/または(xxiii)例えば、アンケート等のような当業者に公知の方法によって評価した生活の質の向上。特定の実施形態において、sNAGナノファイバーの「有効量」は、例えば、以下の5.6の項目に記載した特定のsNAGナノファイバー組成物の量に関連する。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「早産のヒト乳児」は、妊娠期間37週未満で生まれたヒト乳児に関する。
【0036】
本明細書中で使用される場合、用語「ヒト乳児」は、1歳までのヒトの新生児に関する。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「早産のヒト乳児」は、妊娠期間37週未満(例えば、妊娠37週、36週、35週、34週、33週、32週、31週、30週、29週、28週、または、28週よりも少ない週数未満)で生まれた1歳までのヒトの新生児に関する。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「ヒト幼児」は、1歳から3歳までのヒトに関する。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「ヒト小児」は、1歳から18歳までのヒトに関する。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「ヒト成人」は、18歳以上のヒトに関する。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「高齢のヒト成人」は、65歳以上のヒトに関する。
【0042】
本明細書中で使用される場合、1以上の遺伝子産物の「正常」な発現は:(i)処置される症状を示していない被験体、または処置される状態および障害の診断を受けていない被験体において見られることが知られている平均的発現レベル;(ii)処置される症状を示していない被験体、または処置される病状および障害の診断を受けていない被験体の、3、5、10、20、25、50またはそれ以上において検出される平均的発現レベル;並びに/または(iii)病状および障害の攻撃前に、ここに記載された組成物を投与した患者において検出される発現レベル、である。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「低発現」または「低レベルの発現」は、(例えば、遺伝子によって生成されるタンパク質、ペプチドおよび/またはmRNAのレベルに基づく)遺伝子発現との関連で、「正常」な遺伝子発現よりも発現が少ないことに関する。特定の実施形態において、「低発現」は、「正常」な遺伝子発現の、99%未満、95%未満、90%未満、85%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、または20%未満の遺伝子発現に関する。他の特定の実施形態において、「低発現」は、「正常」な遺伝子発現の、約20倍、約15倍、約10倍、約5倍、約4倍、約3倍、約2倍、または、約1.5倍少ない遺伝子発現に関する。さらなる実施形態において、「低発現」は、「正常」な遺伝子発現よりも、約1.25倍、約1、5倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍以上少ない遺伝子発現に関する。
【0044】
本明細書中で使用される場合、用語「高発現」または「高レベルの発現」は、(例えば、遺伝子によって生成されるタンパク質、ペプチドおよび/またはmRNAのレベルに基づく)遺伝子発現との関連で、「正常」な遺伝子発現よりも発現が多いことに関する。特定の実施形態において、「高発現」は、「正常」な遺伝子発現の、99%以上、95%以上、90%以上、85%以上、75%以上、70%以上、65%以上、60%以上、55%以上、50%以上、45%以上、40%以上、35%以上、30%以上、25%以上、または20%以上の遺伝子発現に関する。他の特定の実施形態において、「高発現」は、「正常」な遺伝子発現よりも、約20倍、約15倍、約10倍、約5倍、約4倍、約3倍、約2倍、または、約1.5倍多い遺伝子発現に関する。さらなる実施形態において、「高発現」は、「正常」な遺伝子発現よりも、約1.25倍、約1、5倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍以上多い遺伝子発現に関する。
【0045】
本明細書中で使用される場合、用語「変化した発現」または「レベルが変化した発現」は、遺伝子産物に関し、正常な遺伝子発現レベルと異なる(例えば、20%、25%、30%、50%、75%、100%、150%、200%、250%、300%以上)レベルである。
【0046】
本明細書中で使用される場合、用語「大多数」は、例えば、50.5%、51%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%等を含む、50%を超えることに関する。
【0047】
本明細書中で使用される場合、用語「治療」は、組織の抗張力もしくは弾性の低下、組織の総コラーゲン含量の増加、組織のI型コラーゲン含量(例えば、発現)の増加、組織のIII型コラーゲン含量の減少、組織の異常な(例えば、乱れた)コラーゲンの配列、組織のエラスチン含量(例えば、発現)の減少、組織の筋線維芽細胞含量の増加、並びに/またはアルファ平滑筋アクチン含量(例えば、発現)の増加が関連するいずれかの障害または疾患の予防および/または処置において用いられ得る、いずれかの手順、方法、組成物、処方物、および/または物質に関連し得る。障害または疾患の例には、エーラー・ダンロス症候群、表皮剥離、水疱症、強皮症、骨粗鬆症、椎間板障害、椎間板変性、変形性関節症、線維症、皮膚のシワ形成、および創傷に伴う瘢痕が含まれるが、これに限定されない。特定の実施形態において、用語「治療」は、ここに列挙した障害または疾患の処置および/または予防に有益な、薬物治療、アジュバント治療、放射線、手術、生物学的治療、支持療法、および/または他の治療に関する。特定の実施形態において、用語「治療」は、sNAGナノファイバーまたはその組成物以外の治療に関する。特定の実施形態において、「さらなる治療」は、sNAGナノファイバーまたはその組成物を用いた処置以外の治療に関する。特定の実施形態において、治療は、アジュバント治療としてのsNAGナノファイバーの使用を含む。例えば、薬物治療、生物学的治療、手術、および/または支持療法と同時に、sNAGナノファイバーを用いる。
【0048】
[4.図面の簡単な説明]
図1:sNAGナノファイバーは、組織の抗張力(相対的応力)および弾性を向上させる。損傷を与えた後21日目における、処置済みおよび未処置の創傷の両方、および損傷を与えていないコントロールの皮膚を回収し、Instron5942歪みゲージ伸長計およびBluehill 3試験ソフトウェアを用いた抗張力および弾性試験に供した。皮膚の抗張力を、皮膚が20%破壊される前に耐え得る相対的応力を測定することによって決定し、弾性を、mm伸長によって測定した。(A)は抗張力測定結果であり、(B)は弾性測定結果である。
【0049】
図2:sNAGナノファイバーは、組織のエラスチン生成を増加させる。損傷を与えたのち10日目における、sNAGで処置した創傷動物および(処置していない)コントロールの組織切片のエラスチンファイバーを、ワンギーソン(Van Geison)染色法によって染色した。
【0050】
図3:sNAGナノファイバーは、組織の瘢痕サイズを縮小させる。損傷を与えた後21日目における、sNAG処置した創傷動物の瘢痕とコントロール(処置していない)の瘢痕とを、キャリパーを用いて測定した。
【0051】
図4:sNAGナノファイバーは、コラーゲンの量を増加させ、コラーゲンの整列を誘導する。(A)は、損傷を与えた後10日目の、sNAGで処置した創傷およびコントロール(処置していない)の創傷からの組織切片のMassonトリクロム染色を示し、(b)は、損傷を与えた後10日目の、sNAGで処置した創傷およびコントロール(処置していない)の創傷におけるコラーゲンの堆積量を定量的に分析したヒドロキシプロリン試験の結果を示す。
【0052】
図5:sNAGナノファイバーは、I型コラーゲンの発現を減少させ、III型コラーゲンの発現を増加させる。損傷を与えた後5日目の、sNAGで処置した創傷およびコントロール(処置していない)の創傷から単離したRNAについて、RT−PCRによってI型コラーゲンおよびIII型コラーゲンの発現を試験した。
【0053】
図6:sNAGナノファイバーは、α−平滑筋アクチンを減少させる。(A)は、α−平滑筋アクチンに対する抗体で標識した、sNAGで処置した創傷部位または処置していない創傷部位を示す。(B)は、sNAGで処置した創傷部位または処置していない創傷部位における、α−平滑筋アクチンの発現を定量化した結果を示す。
【0054】
図7:sNAG処置は、瘢痕サイズの縮小およびより整列したコラーゲンをもたらす。(A)は、野生型オスマウス(n=3)において、sNAG膜で処置した切除創傷または処置せずに放置した切除創傷からの瘢痕の大きさを定量化した結果を示す。瘢痕は、治癒の21日後に測定した。(B)は、未処置WTマウス(n=3)およびsNAG処置マウス(n=3)の両方から回収した、損傷を与えた後10日目の皮膚創傷のパラフィン包埋切片のMassonトリクロム染色した結果を示す。20倍拡大図が創傷領域直下の再生組織に焦点を合わせている一方で、4倍の拡大図は、皮膚部位の全体を示す。矢印は、コラーゲン繊維の配列を示している。(C)は、ヒドロキシプロリン試験(p<0.05)を用いて、WTマウスにおいて行った、未処置の創傷と比較したsNAG処置された創傷におけるコラーゲン含量の定量化試験の結果を示す。
【0055】
図8:sNAG処置は、アルファ平滑筋発現を減少させる。(A)は、損傷を与えてから10日目に回収した、sNAGで処置したWTマウス(n=3)および未処置のWTマウス(n=3)の両方の皮膚創傷のパラフィン包埋切片を示す。α−SMAおよびTOPROに対する抗体を用いて、免疫蛍光検査(20倍)を行った。白矢印は、α−SMA抗体によって陽染した脈管構造を示す。(B)は、NIH ImageJソフトウェアを用いて行った、パラフィン包埋切片からのα−SMA発現の定量化の結果を示す(
*p<.05)。
【0056】
図9:sNAG処置は、損傷を受けた皮膚の抗張力および弾性の向上を誘導する。(A)は、sNAG処置したWTマウス(n=3)および未処置のWTマウス(n=3)から得た、損傷を受けた皮膚が耐え得る相対的応力の定量化の結果を示す。組織を、損傷を与えた後21日目に回収し、機械試験に供した。測定結果は、WT動物(n=3)の損傷を与えられていない組織由来のコントロールの皮膚(CTRL)と相対的である。(B)は、損傷を与えてから21日目のWT動物から回収した、sNAG処置した創傷(n=3)および未処置の創傷(n=3)からの皮膚の弾性を定量化した結果を示す。(C)は、損傷を与えていない皮膚(コントロール)、並びに損傷を与えてから10日目のWT動物の、sNAGで処置した創傷および未処置の創傷から得たパラフィン包埋切片のワンギーソン(Van Geison)染色の結果を示す(
*p<.05、
**p<.01)。矢印は、濃く染色されたエラスチン繊維を示す。
【0057】
図10:sNAG処置は、線維芽細胞の整列を向上させる。(A)は、パラフィン包埋フィブリンゲルのヘマトキシリン染色部位およびエオシン染色部位の代表的な画像を示す。線維芽細胞を、フィブリンゲルに包埋する前に一晩、血清を枯渇させた状態にし、そして、sNAG(50μg/mL)で処置しないまたは刺激するのいずれかに供した。黒丸は、フィブリンゲルに設けた、ゲルの収縮に沿う張力点として機能する虫ピンを示している。(B)は、パラフィン包埋フィブリンゲルの免疫蛍光染色の結果を示す。切片をファロイジンおよびDAPIで標識する。
【0058】
図11:線維芽細胞のsNAGに依存した整列は、Akt1を必要とする。(A)は、血清を枯渇させた線維芽細胞、sNAGで処置した線維芽細胞、または、sNAGによる刺激(50μg/mL)の前にAkt1に対するレンチウイルスに形質導入した線維芽細胞、を包埋したフィブリンゲルの収縮を定量化した結果を示す。(B)は、パラフィン包埋フィブリンゲルのヘマトキシリンおよびエオシン染色部位の代表的な画像である。線維芽細胞を血清を枯渇させた状態とし、そしてsNAG刺激(50μg/mL)の前にスクランブルコントロールまたはAkt1レンチウイルスのいずれかによって形質導入した。(C)は、ホスホ−AktおよびDAPIに対する抗体を用いた、血清を枯渇させた(未処置)またはsNAGで処置したフィブリン包埋線維芽細胞の免疫蛍光の結果を示す。(D)sNAGで処置したAkt1ヌル動物(n=3)および未処置のAkt1ヌル動物(n=3)からの持ちこたえた皮膚創傷の相対的応力の定量化の結果を示す。組織を、損傷を与えた後21日目に回収し、機械試験に供した。測定は、Akt1−/−動物(n=3)の損傷を受けていない組織由来のコントロール(CTRL)の皮膚に関連する(
*p<.05)。
【0059】
[5.発明の詳細な説明]
本発明の発明者らは、sNAGナノファイバーが、組織における抗張力の向上、組織における弾性の向上、組織における総コラーゲン含量または異常なコラーゲンの含量の減少、組織におけるI型コラーゲン発現の減少、組織におけるIII型コラーゲン発現の増加、組織におけるコラーゲンの整列の誘導、組織におけるエラスチン生成の増加、組織における平滑筋アクチン発現の減少、および/または組織における筋線維芽細胞含量の減少、を可能にすることを見出した。特に、以下の項目6に挙げた実施例において実証しているように、本発明の発明者らは、sNAGナノファイバーが、皮膚の創傷治癒中の、抗張力の向上、弾性の向上、エラスチン生成の増加、総コラーゲン含量の減少、I型コラーゲン発現の減少、III型コラーゲン発現の増加、コラーゲンの整列の誘導、およびアルファ平滑筋アクチンの減少、を可能にすることを見出した。
【0060】
それゆえに、いずれの作用メカニズムにも拘束されることなく、sNAGナノファイバーは、組織の抗張力の低下、組織の弾性の低下、組織におけるエラスチン含量(例えば、発現)の減少、組織における総コラーゲン含量もしくは異常なコラーゲンの含量の増加、組織におけるI型コラーゲン発現の増加、組織におけるIII型コラーゲン発現の減少、組織におけるコラーゲン配列の異常、組織における平滑筋アクチンの増加、および/または組織における筋線維芽細胞含量の増加、に関連する病状、疾患および障害のいずれかの処置において作用し得る。ある局面において、sNAGナノファイバーは、皮膚の抗張力の低下、皮膚の弾性の低下、皮膚におけるエラスチン含量(例えば、発現)の減少、皮膚における総コラーゲン含量もしくは異常なコラーゲンの含量の減少、皮膚におけるI型コラーゲン含量(例えば、発現)の増加、皮膚におけるIII型コラーゲン含量(例えば、発現)の減少、皮膚におけるコラーゲンの異常な(例えば、乱れた)配列、皮膚における平滑筋アクチン発現の増加、および/または皮膚における筋線維芽細胞含量の増加、に関連する病状、疾患および障害のいずれかの処置において機能し得る。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバーは、抗張力の増強、細胞におけるコラーゲン整列の媒介、弾性の増強、および/または皮膚におけるエラスチン生成の増加させるように作用し得る。特定の実施形態において、sNAGナノファイバーは、皮膚創傷治癒に関連する、病状、疾患および障害のいずれかの処置において作用し得る。一実施形態において、sNAGナノファイバーは、皮膚創傷治癒中の、瘢痕の縮小、抗張力の向上、および/または細胞もしくは細胞中のコラーゲンの整列の媒介に作用し得る。
【0061】
したがって、組織の抗張力の低下、組織の弾性の低下、組織におけるエラスチン含量(例えば、発現)の減少、組織における総コラーゲン含量もしくは異常なコラーゲンの含量の増加、組織におけるI型コラーゲン含量(例えば、発現)の増加、組織におけるIII型コラーゲン含量(例えば、発現)の減少、組織におけるコラーゲンの異常な(例えば、乱れた)配列、組織における平滑筋アクチン含量(例えば、発現)の増加(例えば、組織におけるアルファ平滑筋アクチン含量の増加)、および/または組織における筋線維芽細胞含量の増加、に関連する病状および障害のいずれかを予防および/または処置する方法におけるsNAGナノファイバーの使用について、ここに記載する。特に、組織の抗張力の低下、組織の弾性の低下、組織におけるエラスチン含量(例えば、発現)の減少、組織における総コラーゲン含量もしくは異常なコラーゲンの含量の増加、組織におけるI型コラーゲン含量(例えば、発現)の増加、組織におけるIII型コラーゲン含量(例えば、発現)の減少、組織におけるコラーゲンの異常な(例えば、乱れた)配列、組織における平滑筋アクチン(例えば、アルファ平滑筋アクチン)含量(例えば、発現)の増加、および/または組織における筋線維芽細胞含量の増加、に関連する病状、疾患または障害のいずれかを予防および/または処置する方法におけるsNAGナノファイバーの原則的な使用について、ここに記載する。また、瘢痕の縮小、弾性の向上、または皮膚の抗張力の向上のための方法におけるsNAGナノファイバーの使用について、ここに記載する。また、ヒト被験体において、組織の再生または組織容積の増加(例えば、組織フィラーとしてのsNAGナノファイバーの使用)のための方法におけるsNAGナノファイバーの使用について、ここに記載する。
【0062】
特定の実施形態において、患者の皮膚におけるシワまたは瘢痕形成を予防または処置するための方法におけるsNAGナノファイバーの使用について、ここに記載する。他の実施形態において、皮膚の創傷に関連する瘢痕を、sNAGナノファイバーを用いて縮小させる方法におけるsNAGナノファイバーの使用について、ここに記載する。いくつかの実施形態において、患者におけるシワ、瘢痕または皮膚創傷を処置する方法におけるsNAGナノファイバーの使用についてここに記載し、この患者は、組織の抗張力が低下、組織の弾性が低下、組織におけるエラスチン含量が減少、組織における総コラーゲン含量もしくは異常なコラーゲンの含量が増加、組織におけるI型コラーゲン発現が増加、組織におけるIII型コラーゲン発現が減少、組織におけるコラーゲンの異常な配列、アルファ平滑筋アクチンが増加、または筋線維芽細胞含量が増加している。他の実施形態において、エーラー・ダンロス症候群、表皮剥離、水疱症、強皮症、骨粗鬆症、椎間板障害、椎間板変性、変形性関節症、または線維症を処置する方法におけるsNAGナノファイバーの使用について、ここに記載する。例えば、sNAGナノファイバーは、上述した疾患または障害の1以上の症状を低減させるために用いられ得る。
【0063】
[5.1 sNAGナノファイバー]
sNAGナノファイバー組成物をここに記載する。sNAGナノファイバーは、ポリ−N−アセチルグルコサミンおよび/またはその誘導体のファイバーを含んでおり、例えば、走査型電子顕微鏡(「SEM」)のような、当業者に公知のいずれかの方法によって測定した長さは概ね30μmよりも短く、少なくとも1μmである。このようなsNAGナノファイバーは、例えば、本明細書に記載したように得ることができる。
【0064】
特定の実施形態において、大多数のsNAGナノファイバー(さらに、特定の実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%もしくは100%、または、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%もしくは95%〜99%のsNAGナノファイバー)は、例えばSEMのような、当業者に公知の何れかの方法によって測定した長さが、約30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4または3μmよりも短く、少なくとも1μmである。特定の実施形態において、大多数のsNAGナノファイバー(さらに、特定の実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%もしくは100%、または、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%もしくは95%〜99%のsNAGナノファイバー)は、例えばSEMのような、当業者に公知の何れかの方法によって測定した長さが、約15μmまたは約12μmよりも短く、少なくとも1μmである。特定の実施形態において、全て(100%)のsNAGナノファイバーは、例えばSEMのような、当業者に公知の何れかの方法によって測定した長さが、約15μmまたは約10μmよりも短く、少なくとも1μmである。特定の実施形態において、大多数のsNAGナノファイバー(さらに、特定の実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%もしくは100%、または、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%もしくは95%〜99%のsNAGナノファイバー)は、例えばSEMのような、当業者に公知の何れかの方法によって測定した長さが、14、13、12、11、10、9、8または7μm以下であり、少なくとも1μmである。特定の実施形態において、大多数のsNAGナノファイバー(さらに、特定の実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%もしくは100%、または、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%もしくは95%〜99%のsNAGナノファイバー)は、例えばSEMのような、当業者に公知の何れかの方法によって測定した長さが、1〜15、2〜15、2〜14、1〜12、2〜12、1〜10、2〜10、3〜12、3〜10、4〜12、4〜10、5〜12、5〜10、1〜9、2〜9、3〜9、1〜8、2〜8、3〜8、4〜8、1〜7、2〜7、3〜7、4〜7、1〜6、1〜5、1〜4、または、1〜3μmである。
【0065】
特定の実施形態において、大多数のsNAGナノファイバー(さらに、特定の実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%もしくは100%、または、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%もしくは95%〜99%のsNAGナノファイバー)は、例えばSEMのような、当業者に公知の何れかの方法によって測定した長さが、約8、7、6、5、4、3または2μmである。他の特定の実施形態において、大多数のsNAGナノファイバー(さらに、特定の実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%もしくは100%、または、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%もしくは95%〜99%のsNAGナノファイバー)は、例えばSEMのような、当業者に公知の何れかの方法によって測定した長さが、約2〜10μm、約3〜8μm、約4〜7μm、約4〜10μm、または、約5〜10μmである。他の特定の実施形態において、全て(100%)のsNAGナノファイバーは、例えばSEMのような、当業者に公知の何れかの方法によって測定した長さが、約2〜10μm、約3〜8μm、約4〜7μm、約4〜10μm、または、約5〜10μmである。
【0066】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバーは、電子顕微鏡によって決定した厚みおよび/または直径が0.005〜5μmの範囲である。特定の実施形態において、sNAGナノファイバーは、平均またはいずれかの範囲(例えば、0.02〜2μm、0.02〜1μm、0.02〜0.75μm、0.02〜0.5μm、0.02〜0.5μm、0.05〜1μm、0.05〜0.75μm、0.05〜0.5μm、0.1〜1μm、0.1〜0.75μm、0.1〜0.5μm等)における厚みおよび/または直径が、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.2、2.4、2.6、2.8、3または4μmである。特定の実施形態において、大多数のsNAGナノファイバー(さらに、特定の実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%もしくは100%、または、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%もしくは95%〜99%のsNAGナノファイバー)は、厚みまたは直径が、約0.02〜1μmである。他の特定の実施形態において、大多数のsNAGナノファイバー(さらに、特定の実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%もしくは100%、または、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%もしくは95%〜99%のsNAGナノファイバー)は、厚みまたは直径が、約0.05〜0.5μmである。特定の実施形態において、全て(100%)のsNAGナノファイバーは、厚みまたは直径が、約0.02〜1μmまたは約0.05〜0.5μmである。特定の実施形態において、大多数のsNAGナノファイバー(さらに、特定の実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%もしくは100%、または、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%もしくは95%〜99%のsNAGナノファイバー)は、厚みまたは直径が、約0.02〜2μm、0.02〜1μm、0.02〜0.75μm、0.02〜0.5μm、0.02〜0.5μm、0.05〜1μm、0.05〜0.75μm、0.05〜0.5μm、0.1〜1μm、0.1〜0.75μm、または、0.1〜0.5μmである。
【0067】
特定の実施形態において、大多数のsNAGナノファイバー(さらに、特定の実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%もしくは100%、または、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%もしくは95%〜99%のsNAGナノファイバー)は、長さが1〜15μmの間である、または、長さが1〜10μm、2〜10μm、3〜10μm、4〜10μm、4〜7μm、5〜10μmもしくは5〜15μmの間(もしくはその範囲内)であり、そして、厚みまたは直径が、約0.02〜1μmである。
【0068】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバーの分子量は、100kDa、90kDa、80kDa、75kDa、70kDa、65kDa、60kDa、55kDa、50kDa、45kDA、40kDa、35kDa、30kDaまたは25kDaよりも小さい。特定の実施形態において、大多数のsNAGナノファイバー(さらに、特定の実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%もしくは100%、または、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%もしくは95%〜99%のsNAGナノファイバー)は、分子量が、100kDa、90kDa、80kDa、75kDa、70kDa、65kDa、60kDa、55kDa、50kDa、45kDa、40kDa、35kDa、30kDaまたは25kDaよりも小さい。他の実施形態において、大多数のsNAGナノファイバー(さらに、特定の実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%もしくは100%、または、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%もしくは95%〜99%のsNAGナノファイバー)は、分子量が、約5kDa〜100kDa、約10kDa〜100kDa、約20kDa〜100kDa、約10kDa〜80kDa、約20kDa〜80kDa、20kDa〜75kDa、約25kDa〜約75kDa、約30kDa〜約80kDa、約30kDa〜約75kDa、約40kda〜約80kDa、約40kDa〜約75kDa、約40kDa〜約70kDa、約50kDa〜約70kDaまたは約55kDa〜約65kDaの間である。特定の実施形態において、大多数のsNAGナノファイバー(さらに、特定の実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%もしくは100%、または、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%もしくは95%〜99%のsNAGナノファイバー)は、分子量が、約60kDaである。
【0069】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバーの1%〜5%、5%〜10%、5%〜15%、20%〜30%または25%〜30%は、脱アセチル化されている。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバーの1%、5%、10%、15%、20%、25%または30%は、脱アセチル化されている。他の実施形態において、sNAGナノファイバーの30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%または1%未満は、脱アセチル化されている。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバーの1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは99%以上、または、全て(100%)は、脱アセチル化されている。の実施形態において、sNAGナノファイバーの1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%または100%未満は、脱アセチル化されている。
【0070】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバーの70%〜80%、75%〜80%、75%〜85%、85%〜95%、90%〜95%、90%〜99%または95%〜100%は、アセチル化されている。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバーの70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%は、アセチル化されている。他の実施形態において、sNAGナノファイバーの70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%よりも多くは、アセチル化されている。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバーの1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%以上、または、全て(100%)は、アセチル化されている。他の実施形態において、sNAGナノファイバーの1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%未満は、アセチル化されている。
【0071】
特定の実施形態において、大多数のsNAGナノファイバー(さらに、特定の実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.9%もしくは100%のsNAGナノファイバー)は、2〜12μm、2〜10μm、4〜15μm、4〜10μm、5〜15μmもしくは5〜10μmの間(またはその範囲内)であり、このようなsNAGナノファイバーの少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%は、アセチル化されている。
【0072】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバーは、少なくとも1つのグルコサミン単糖類を含んでおり、さらに、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%のN−アセチルグルコサミン単糖類を含んでいてもよい。他の実施形態において、sNAGナノファイバーは、少なくとも1つのN−アセチルグルコサミン単糖類を含んでおり、さらに、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%のグルコサミン単糖類をさらに含んでいてもよい。
【0073】
ある局面において、sNAGナノファイバーは、MTTアッセイにおいて、血清を枯渇させたヒト臍帯静脈内皮細胞(「EC」)の代謝速度を上昇させる。MTTアッセイは、細胞増殖(細胞成長)を測定するための、臨床試験および標準比色分析(色の変化を測定する分析)である。簡単に言うと、黄色MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム臭化物、テトラゾール)は、生細胞のミトコンドリアにおいて、紫ホルマザンに変換される。ミトコンドリア還元酵素が活性であるときにのみこの変換は生じ、それゆえに、この変換は、細胞の生存数(生細胞の数)に直接関連する。MTTアッセイは、WO2011/130646およびWO2012/142581に記載されており、これらの全体が参考として本明細書中に援用される。細胞の代謝速度は、また、当業者に周知の他の技術によって決定してもよい。
【0074】
他の局面において、sNAGナノファイバーは、トリパンブルー排除試験において、血清を枯渇させたECのアポトーシスを救助しない。トリパンブルー排除試験は、細胞懸濁液に存在する生存細胞数を決定するために用いられる、色素排除試験である。生細胞が、トリパンブルー、エオシンまたはプロピジウムのような特定の色素を排除する完全細胞膜を有している一方で、死亡細胞が有していないという原理に基づいている。トリパンブルー分析は、WO2011/130646およびWO2012/142581に記載されており、これらの全体が参考として本明細書中に援用される。細胞の生存能力は、また、当業者に周知の他の技術によって決定してもよい。
【0075】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバーを含む組成物を記載しており、このsNAGナノファイバーは、MTTアッセイにおける血清を枯渇させたヒト臍帯静脈内皮細胞の代謝速度を上昇させる、および/または、トリパンブルー排除試験における血清を枯渇させたヒト臍帯静脈内皮細胞のアポトーシスを救助しない。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバーは、MTTアッセイにおける血清を枯渇させたヒト臍帯静脈内皮細胞の代謝速度を上昇させ、そして、トリパンブルー排除試験における血清を枯渇させたヒト臍帯静脈内皮細胞のアポトーシスを救助しない。
【0076】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバーは生体適合性がある。溶出試験、筋肉注入、または、動物被験体への皮内もしくは全身投与のような処置を含むが、これらに限定されない種々の技術により、生体適合性を決定してもよい。このような試験は、米国特許番号6,686,342(例えば実施例10参照)に記載されており、これらの全体が参考として本明細書中に援用される。生体適合性試験のいくつかは、WO2011/130646およびWO2012/142581にも記載されており、これらの全体が参考として本明細書中に援用される。
【0077】
特定の実施形態において、ここに記載した方法において使用されるsNAGナノファイバーは、生体適合性試験または試験群において、反応性ではない。例えば、ここに記載した方法において使用されるsNAGナノファイバーは、溶出試験、筋肉注入試験、皮内試験、および/または、全身性試験において試験した場合に、反応性ではない。他の実施形態において、ここに記載した方法において使用されるsNAGナノファイバーは、溶出試験、筋肉注入試験、皮内試験または全身性試験において試験した場合に、試験結果がグレード0またはグレード1である。さらに他の実施形態において、ここに記載した方法において使用されるsNAGナノファイバーは、溶出試験、筋肉注入試験、皮内試験、および/または全身性試験において試験した場合に、最も穏やかに反応する。特定の実施形態において、ここに記載した組成物は、アレルギー反応または炎症を引き起こさない。他の実施形態において、ここに記載した組成物が、例えば適用部位において引き起こすアレルギー反応または炎症は、最も穏やかである。試験結果に関連する試験および評価は、米国特許番号6,686,342、WO2011/130646およびWO2012/142581に記載されており、これらの全体が参考として本明細書中に援用される。
【0078】
具体的な実施形態において、sNAGナノファイバーは、筋肉内への移植試験において試験された場合に反応性でない。一局面において、筋肉内への移植試験は、後出の項6.8.3に記載されているような、筋肉内への移植試験(ISO 4週間の移植)である。特定の実施形態において、sNAGナノファイバーは、溶出試験によって決定される生物反応性を示さない(溶出試験グレード=0)。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバーは、皮内注射試験によって決定される試験スコアが「0」に等しく、および/または、最大でも無視できる程度の刺激性である。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバーは、クライン試験において皮内での反応を誘発せず(すなわち、グレードIの反応)、および/または、クライン試験によって決定される弱いアレルギーポテンシャル(allergenic potential)を有する。WO2011/130646およびWO2012/142581(各々の全体が参考として本明細書中に援用される。)は、sNAGナノファイバーが、筋肉内への移植試験、皮内注射試験およびクライン試験において反応性でないことを示している。
【0079】
特定の局面において、sNAGナノファイバーは、免疫的に中性である(すなわち、これらは、免疫反応を誘発しない。)。
【0080】
いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバーは、生分解性である。sNAGナノファイバーは、患者に投与した後または移植した後、好ましくは、約1日間、2日間、3日間、5日間、7日間(1週間)、8日間、10日間、12日間、14日間(2週間)、17日間、21日間(3週間)、25日間、28日間(4週間)、30日間、1か月間、35日間、40日間、45日間、50日間、55日間、60日間、2か月間、65日間、70日間、75日間、80日間、85日間、90日間、3か月間、95日間、100日間または4か月間以内に分解される。
【0081】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバーは、検出可能な異物反応を引き起こさない。異物反応は、創傷治癒の間に起こり得るものであり、外傷部位における滲出液の蓄積、当該部位を清浄化する炎症細胞の浸潤、および肉芽組織の形成を含む。異物が持続的に存在することは、完全な治癒を阻害し得る。異物反応は、創傷治癒において発生する再吸収および再構築よりも、異物巨細胞の形成、異物の被包(encapsulation)、および慢性炎症によって特徴付けられる。被包とは、異物の周囲に堆積した、固く、一般的に無血管性のコラーゲンのシェルが宿主組織から異物を効果的に隔離することを指す。一実施形態において、sNAGナノファイバーを用いた部位(例えば、創傷、または創傷において細菌感染した部位)の処置は、処置後、1日間、3日間、5日間、7日間、10日間または14日間は異物反応を引き起こさない。一実施形態において、sNAGナノファイバーを用いた部位(例えば、創傷)の処置は、処置後1日間、3日間、5日間、7日間、10日間または14日間、異物の被包を誘発しない。
【0082】
いくつかの実施形態において、(i)sNAGナノファイバーは、繊維を含有しており、当該繊維の大多数は、長さが約1ミクロンと約15ミクロンとの間であり、そして、(ii)(a)sNAGファイバーは、MTTアッセイにおいて血清飢餓ECの代謝速度を増加させ、および/または、トリパンブルー排除試験において血清飢餓ECのアポトーシスを救助せず、そして、(ii)(b)sNAGファイバーは、筋肉内への移植試験において試験された場合に反応性でない。特定の実施形態において、(i)sNAGナノファイバーは、繊維を含有しており、当該繊維の大多数は長さが約1ミクロンと約12ミクロンとの間であり、そして、(ii)(a)sNAGナノファイバーは、MTTアッセイにおいて血清飢餓ECの代謝速度を増加させ、および/または、トリパンブルー排除試験において血清飢餓ECのアポトーシスを救助せず、そして、(ii)(b)sNAGナノファイバーは、筋肉内への移植試験において試験された場合に反応性でない。いくつかの実施形態において、(i)sNAGナノファイバーは、繊維を含有しており、当該繊維の大多数は、長さが、1ミクロンから10ミクロン、2ミクロンから10ミクロン、4ミクロンから10ミクロン、5ミクロンから10ミクロン、または5ミクロンから15ミクロン、までの間(または、の範囲)であり、そして、(ii)(a)sNAGナノファイバーは、MTTアッセイにおいて血清飢餓ECの代謝速度を増加させ、および/または、トリパンブルー排除試験において血清飢餓ECのアポトーシスを救助せず、そして、(ii)(b)sNAGナノファイバーは、筋肉内への移植試験において試験された場合に反応性でない。いくつかの実施形態において、(i)sNAGナノファイバーは、繊維を含有しており、当該繊維の大多数は、長さが約4ミクロンと約10ミクロンとの間であり、そして、(ii)(a)sNAGファイバーは、MTTアッセイにおいて血清飢餓ECの代謝速度を増加させ、および/または、トリパンブルー排除試験において血清飢餓ECのアポトーシスを救助せず、そして、(ii)(b)sNAGファイバーは、筋肉内への移植試験において試験された場合に反応性でない。特定の実施形態において、(i)sNAGナノファイバーは、繊維を含有しており、当該繊維の大多数は長さが約4ミクロンと約7ミクロンとの間であり、そして、(ii)(a)sNAGナノファイバーは、MTTアッセイにおいて血清飢餓ECの代謝速度を増加させ、および/または、トリパンブルー排除試験において血清飢餓ECのアポトーシスを救助せず、そして、(ii)(b)sNAGナノファイバーは、筋肉内への移植試験において試験された場合に反応性でない。
【0083】
特定の実施形態において、上記sNAGナノファイバーは、当業者によって決定されるS. aureus等の細菌の増殖または生存に対して直接的な影響を与えない。他の実施形態において、sNAGナノファイバーは、WO2011/130646(その全体が参考として本明細書中に援用される。)に記載されている方法によって決定されるように、S. aureus等の細菌の増殖または生存に対して直接的な影響を与えない。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバーは、インビトロにおいて細菌の増殖または生存に対して直接的な影響を与えない。一実施形態において、sNAGナノファイバーは、(例えば、インビトロにおいて)グラム陰性細菌の増殖または生存に対して直接的な影響を与えない。別の実施形態において、上記sNAGナノファイバーは、(例えば、インビトロにおいて)グラム陽性細菌の増殖または生存に対して直接的な影響を与えない。さらに別の実施形態において、sNAGナノファイバーは、(例えば、インビトロにおいて)グラム陽性細菌またはグラム陰性細菌のどちらの増殖または生存に対しても直接的な影響を与えない。
【0084】
いくつかの実施形態において、(i)sNAGナノファイバーは、繊維を含有し、ファイバーの大多数は、長さが、約1ミクロンおよび約15ミクロン、約1ミクロンおよび約12ミクロン、約1ミクロンおよび約10ミクロン、約4ミクロンおよび約10ミクロン、約4ミクロンおよび約15ミクロン、約5ミクロンおよび約10ミクロン、約5ミクロンおよび約15ミクロン、または約4ミクロンおよび約7ミクロン、の間(または、の範囲)であり、(ii)sNAGナノファイバーは、インビトロにおける黄色ブドウ球菌の細菌培養の、細菌成長または細菌生存に対して影響を与えなくて、そして(iii)sNAGナノファイバーは、生体適合性試験において試験された場合に反応性でない(例えば、筋肉内への移植試験)。
【0085】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバーは、sNAGナノファイバー組成物を用いて処置された、または、sNAGナノファイバー組成物に曝された、細胞、組織または器官において、特定のパターンの遺伝子の発現(例えば、RT−PCR、マイクロアレイまたはELISAによって決定されるRNAまたはタンパク質の発現)を誘導する。
【0086】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバー、またはsNAGナノファイバーを含有している組成物は、I型コラーゲンの発現を減少させる。特定の実施形態において、sNAGナノファイバー、またはsNAGナノファイバーを含有している組成物は、III型コラーゲンの発現を増加させる。特定の実施形態において、sNAGナノファイバー、またはsNAGナノファイバーを含有している組成物は、コラーゲンタンパク質の全体の発現を減少させる。
【0087】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバー、またはsNAGナノファイバーを含有している組成物は、エラスチンタンパク質の発現を増加させる。
【0088】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバー、またはsNAGナノファイバーを含有している組成物は、1つ以上のアクチンタンパク質の発現を減少させる。特定の実施形態において、sNAGナノファイバー、またはsNAGナノファイバーを含有している組成物は、平滑筋細胞における1つ以上のアクチンタンパク質(例えば、α平滑筋アクチンタンパク質)の発現を減少させる。
【0089】
いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバー、またはsNAGナノファイバーを含有している組成物は、sNAGナノファイバーで処置する前の被験体の細胞、組織または器官における、上に列挙した1つ以上のタンパク質の発現レベル(例えば、上に列挙した1つ以上のタンパク質の公知の平均レベル)と比較して、約0.25倍、約0.5倍、約1倍、約1.5倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約12倍、約15倍もしくは約20倍と等しい量、または、それら以上の量の、上に列挙した1つ以上のタンパク質の発現を、減少させる。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバー、またはsNAGナノファイバーを含有している組成物は、sNAGナノファイバーで処置する前の被験体の細胞、組織または器官における、上に列挙した1つ以上のタンパク質の発現レベル(例えば、上に列挙した1つ以上のタンパク質の公知の平均レベル)の、約10%、約25%、約50%、約75%もしくは約100%、約125%、約150%、約175%、約200%、約225%、約250%、約275%、約300%、約350%、約400%、約450%、約500%、約550%、約600%、約650%、約700%、約750%、約800%、約900%または約1000%以上の量の、上に列挙した1つ以上のタンパク質の発現を、減少させる。
【0090】
いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバー、またはsNAGナノファイバーを含有している組成物は、1つ以上のディフェンシンタンパク質の発現、1つ以上のディフェンシン様タンパク質の発現、および/または1つ以上のToll様レセプターの発現を誘導する。
【0091】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバー、またはsNAGナノファイバーを含有している組成物は、1つ以上のα−ディフェンシン(例えば、DEFA1(すなわち、α−ディフェンシン1)、DEFA1B、DEFA3、DEFA4、DEFA5、DEFA6)、1つ以上のβ−ディフェンシン(例えばDEFB1(すなわち、β−ディフェンシン1)、DEFB2、DEFB4、DEFB103A、DEFB104A、DEFB105B、DEFB107B、DEFB108B、DEFB110、DEFB112、DEFB114、DEFB118、DEFB119、DEFB123、DEFB124、DEFB125、DEFB126、DEFB127、DEFB128、DEFB129、DEFB131、DEFB136)、および/または、1つ以上のθ−ディフェンシン(例えば、DEFT1P)、の発現を、誘導する/増加させる。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバー、またはsNAGナノファイバーを含有している組成物は、1つ以上の、DEFA1、DEFA3、DEFA4、DEFA5、DEFB1、DEFB3、DEFB103A、DEFB104A、DEFB108B、DEFB112、DEFB114、DEFB118、DEFB119、DEFB123、DEFB124、DEFB125、DEFB126、DEFB128、DEFB129およびDEFB131の発現を、誘導する/増加させる。特定の実施形態において、sNAGナノファイバー、またはsNAGナノファイバーを含有している組成物は、1つ以上のTollレセプター(例えば、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11および/またはTLR12)の発現を、誘導する/増加させる。他の実施形態において、sNAGナノファイバー、またはsNAGナノファイバーを含有している組成物は、1つ以上の、IL−1、CEACAM3、SPAG11、SIGIRR(IL1様レセプター)、IRAK1、IRAK2、IRAK4、TBK1、TRAF6およびIKKiの発現を、誘導する/増加させる。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバー、またはsNAGナノファイバーを含有している組成物は、1つ以上の、IRAK2、SIGIRR、TLR1、TLR2、TLR4、TLR7、TLR8、TLR10およびTRAF6の発現を、誘導する/増加させる。一実施形態において、sNAGナノファイバー、またはsNAGナノファイバーを含有している組成物は、上に列挙した遺伝子産物の少なくとも1つの発現を、誘導する/増加させる。
【0092】
いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバー、またはsNAGナノファイバーを含有している組成物は、sNAGナノファイバーで処置する前の被験体の細胞、組織または器官における、上に列挙した1つ以上の遺伝子産物の発現レベル(例えば、上に列挙した1つ以上の遺伝子産物の公知の平均レベル)と比較して、約0.25倍、約0.5倍、約1倍、約1.5倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約12倍、約15倍もしくは約20倍以上の量の、上に列挙した1つ以上の遺伝子産物の発現を、誘導する/減少させる。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバー、またはsNAGナノファイバーを含有している組成物は、sNAGナノファイバーで処置する前の被験体の細胞、組織または器官における、上に列挙した1つ以上の遺伝子の発現レベル(例えば、上に列挙した1つ以上のタンパク質の公知の平均レベル)の、約10%、約25%、約50%、約75%もしくは約100%、約125%、約150%、約175%、約200%、約225%、約250%、約275%、約300%、約350%、約400%、約450%、約500%、約550%、約600%、約650%、約700%、約750%、約800%、約900%または約1000%以上の量の、上に列挙した1つ以上の遺伝子産物の発現を、誘導する/増加させる。
【0093】
いくつかの実施形態において、長いポリ−N−アセチルグルコサミン、キチンおよび/またはキトサンではない、sNAGナノファイバーは、当業者に公知の方法、または本明細書中に記載される方法によって決定した場合、上に列挙した1つ以上の遺伝子産物の発現を、誘導する/増加させる。これら実施形態のいくつかにおいて、長いポリ−N−アセチルグルコサミン、キチンおよび/またはキトサンは、当業者に公知の方法、または本明細書中に記載される方法によって決定した場合、上記列挙した1つ以上の遺伝子産物の発現を誘導しないか/増加させないか、または、長いポリ−N−アセチルグルコサミン、キチンおよび/またはキトサンは、当業者に公知の方法、または本明細書中に記載される方法によって決定した場合、sNAGナノファイバーによって誘導される1つ以上の上に列挙した遺伝子産物の発現レベルと比較して、上に列挙した1つ以上の遺伝子産物の、より低い発現レベル(例えば、1.25倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍または10倍以上低い)を引き起こす。
【0094】
特定の実施形態において、長いポリ−N−アセチルグルコサミン、キチンおよび/またはキトサンではない、sNAGナノファイバーは、当業者に公知の方法、または本明細書中に記載される方法によって決定した場合、上に列挙した1つ以上の遺伝子産物の発現を、縮小させる/減少させる。これら実施形態のいくつかにおいて、長いポリ−N−アセチルグルコサミン、キチンおよび/またはキトサンは、当業者に公知の方法、または本明細書中に記載される方法によって決定した場合、上記列挙した1つ以上の遺伝子産物の発現を、縮小させないか/減少させないか、または、長いポリ−N−アセチルグルコサミン、キチンおよび/またはキトサンは、当業者に公知の方法、または本明細書中に記載される方法によって決定した場合、sNAGナノファイバーによって縮小される1つ以上の上に列挙した遺伝子産物の発現レベルと比較して、上に列挙した1つ以上の遺伝子産物の、より低い発現レベル(例えば、1.25倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍または10倍以上低い)を引き起こす。
【0095】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバー、またはsNAGナノファイバーを含有している組成物は、WO2011/130646およびWO2012/142581(各々の全体が参考として本明細書中に援用される。)に開示されている1つ以上の遺伝子発現プロファイルに、一致している、類似している、およそ同じである、または同等である、遺伝子発現プロファイルを誘導する(表1、表2、表3、表5、表8および表9、項6.2〜6.5を参照のこと)。
【0096】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバー、またはsNAGナノファイバーを含有している組成物は、長いポリ−N−アセチルグルコサミンポリマーまたは長いポリ−N−アセチルグルコサミンファイバーによって誘導されるプロファイルとは異なる遺伝子発現プロファイルを誘導する。具体的な実施形態において、sNAGナノファイバーによって誘導される遺伝子発現プロファイルは、WO2011/130646およびWO2012/142581(表1、表2、表3、表5、表8および表9、項6.2〜6.5を参照のこと)に示された遺伝子発現プロファイルに一致する、同様である、およそ同じである、または同等である。一方で、長いポリ−N−アセチルグルコサミンポリマーまたは長いポリ−N−アセチルグルコサミンファイバーによって誘導される遺伝子発現プロファイルは、WO2012/142581の、表8および/または表9、項6.5に示された遺伝子発現プロファイルに一致する、同様である、およそ同じである、または同等である。他の実施形態において、sNAGナノファイバー、またはsNAGナノファイバーを含む組成物は、キチンまたはキトサンによって誘導される遺伝子発現プロファイルとは異なる遺伝子発現プロファイルを誘導する。
【0097】
具体的な実施形態において、sNAGナノファイバーは、ポリ−N−アセチルグルコサミンおよび/またはその誘導体に放射線を照射することによって得られる。ポリ−N−アセチルグルコサミンおよびその誘導体に関しては、後出の項5.1.1を参照し、放射線照射を用いたsNAGナノファイバーを生成するための方法に関しては、後出の項5.2を参照のこと。短縮したポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンファイバーおよび/または短縮したポリ−N−アセチルグルコサミン誘導体ファイバー(すなわち、sNAGナノファイバー)を形成するために、放射線照射は、ポリ−N−アセチルグルコサミンナノファイバーおよびポリ−N−アセチルグルコサミン誘導体ファイバーの長さを短縮するために用いられてもよい。具体的には、放射線照射は、ポリ−N−アセチルグルコサミンまたはその誘導体の長さおよび分子量を、その微細構造を乱すことなく減じるために用いられてもよい。sNAGナノファイバーの赤外線スペクトル(IR)は、放射線照射されていないポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンまたはその誘導体の赤外線スペクトルと同様である、およそ同じである、または同等である。
【0098】
一実施形態において、sNAGナノファイバーは、キチンまたはキトサン由来ではない。一方で、別の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、キチンもしくはキトサン由来であってもよいか、またはsNAGナノファイバーは、キチンもしくはキトサン由来であってもよい。
【0099】
[5.1.1 ポリ−N−アセチルグルコサミンおよびその誘導体]
米国特許番号5,622,834、5,623,064、5,624,679、5,686,115、5,858,350、6,599,720、6,686,342、7,115,588、および米国特許公開番号2009/0117175(各々の全体が参考として本明細書中に援用される。)は、ポリ−N−アセチルグルコサミンおよびその誘導体、並びに、これらの生成方法について記載されている。いくつかの実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミンは、β−1→4配置を有する。他の実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミンは、α−1→4配置を有する。ポリ−N−アセチルグルコサミンおよびその誘導体は、ポリマー形態またはファイバー形態であり得る。
【0100】
ポリ−N−アセチルグルコサミンを、例えば、微細藻類、好ましくは珪藻類よりも、生成することが可能であり、また、精製してもよい。ポリ−N−アセチルグルコサミンの生成のための最初の原料として使用される珪藻類は、Coscinodiscus genus、Cyclotella genusおよびThalassiosira genusのメンバーを含むが、これらに限定されない。ポリ−N−アセチルグルコサミンは、公知の機械的な力による方法および化学/生物学的方法(例えば、米国特許番号5,622,834、5,623,064、5,624,679、5,686,115、5,858,350、6,599,720、6,686,342および7,115,588(各々の全体が参考として本明細書中に援用される。)を参照のこと)を含む多くの異なる方法を介して、珪藻類の培養菌から得てもよい。特定の実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミンは、アワビ、甲殻類、昆虫、真菌または酵母のうちの1つ以上に由来していない。
【0101】
一実施形態において、ポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンは、a)細胞体およびポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンポリマーファイバーを含む微細藻類を、十分な時間でN−アセチルグルコサミンポリマーファイバーを細胞体から分離することができる生物学的薬剤(フッ化水素など)で処置することにより、ポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンポリマーファイバーを細胞体から解放させること、b)ポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンポリマーファイバーを細胞体から分離すること、および、c)ポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンポリマーが単離され、そして精製されるように、分離ポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンポリマーファイバーから不純物を除去すること、を含む処置によって得られる。
【0102】
他の実施形態において、ポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンは、アワビ、甲殻類、昆虫、真菌または酵母の1つ以上に由来してもよい。特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、キチンまたはキトサンを含有しない。
【0103】
ポリ−N−アセチルグルコサミンの単糖類単位の1つ以上は、脱アセチル化されていてもよい。特定の実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミンの1%〜5%、5%〜10%、5%〜15%、20%〜30%または25%〜30%は、脱アセチル化されている。いくつかの実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミンの1%、5%、10%、15%、20%、25%または30%は、脱アセチル化されている。他の実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミンの30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%または1%未満は、脱アセチル化されている。いくつかの実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミンの1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは99%以上、または、全て(100%)は、脱アセチル化されている。他の実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミンの1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%または100%未満は、脱アセチル化されている。
【0104】
特定の実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミン組成物は、アセチル化グルコサミン(すなわち、N−アセチルグルコサミン)単糖類を、70%〜80%、75%〜80%、75%〜85%、85%〜95%、90%〜95%、90%〜99%または95%〜100%含有している。いくつかの実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミン組成物は、アセチル化グルコサミン(すなわち、N−アセチルグルコサミン)単糖類を、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%含有している。他の実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミン組成物は、アセチル化グルコサミンを、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%よりも多く含有している。いくつかの実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミン組成物は、アセチル化グルコサミンを、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%以上含有している、または、全て(100%)において含有している。他の実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミン組成物は、アセチル化グルコサミンを、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%または100%未満含有している。
【0105】
いくつかの実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミン組成物は、少なくとも1つのグルコサミン単糖類を含有し、さらに、N−アセチルグルコサミン単糖類を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%含有してもよい。他の実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミン組成物は、少なくとも1つのN−アセチルグルコサミン単糖類を含有し、さらに、グルコサミン単糖類を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%含有してもよい。
【0106】
また、ポリ−N−アセチルグルコサミン誘導体は、本明細書中に記載される組成物に用いられてもよい。ポリ−N−アセチルグルコサミン誘導体およびこのような誘導体を生成する方法は、米国特許番号5,623,064(例えば、項5.4を参照のこと)に記載されており、その全体が参考として本明細書中に援用される。ポリ−N−アセチルグルコサミン誘導体は、部分的にもしくは完全に、脱アセチル化されたポリ−N−アセチルグルコサミン、または、脱アセチル化されたその誘導体を含有してもよいが、これらに限定されない。さらに、ポリ−N−アセチルグルコサミンは、硫酸化、リン酸化および/または硝酸化されることにより、誘導体化されてもよい。ポリ−N−アセチルグルコサミン誘導体は、例えば、硫酸化ポリ−N−アセチルグルコサミン誘導体、リン酸化ポリ−N−アセチルグルコサミン誘導体、または硝酸化ポリ−N−アセチルグルコサミン誘導体を含む。さらに、ポリ−N−アセチルグルコサミンの単糖類単位の1つ以上は、1つ以上のスルホニル基、1つ以上のO−アシル基を有してもよい。さらに、脱アセチル化ポリ−N−アセチルグルコサミンの1つ以上の単糖類は、N−アシル基を有してもよい。ポリ−N−アセチルグルコサミンまたはその脱アセチル化誘導体の1つ以上の単糖類は、O−アルキル基を有してもよい。ポリ−N−アセチルグルコサミンの単糖類単位の1つ以上は、アルカリ誘導体であってもよい。ポリ−N−アセチルグルコサミンの脱アセチル化誘導体の単糖類単位の1つ以上は、N−アルキル基を有してもよい。ポリ−N−アセチルグルコサミンの脱アセチル化誘導体の単糖類単位の1つ以上は、少なくとも1つのデオキシハロゲン誘導体を有してもよい。ポリ−N−アセチルグルコサミンの脱アセチル化誘導体の単糖類単位の1つ以上は、塩を形成してもよい。ポリ−N−アセチルグルコサミンの脱アセチル化誘導体の単糖類単位の1つ以上は、金属キレートを形成してもよい。特定の実施形態において、金属は亜鉛である。ポリ−N−アセチルグルコサミンの脱アセチル化誘導体の単糖類単位の1つ以上は、N−アルキリデン基またはN−アリ−リデン基を有してもよい。一実施形態において、上記の誘導体は酢酸塩誘導体である。別の実施形態において、上記の誘導体は酢酸塩誘導体ではない。一実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミンまたは脱アセチル化ポリ−N−アセチルグルコサミンは、乳酸によって誘導体化される。別の実施形態において、上記の誘導体は、乳酸によって誘導体化されない。
【0107】
[5.2 sNAGナノファイバーの生成方法]
ポリ−N−アセチルグルコサミンポリマーまたはポリ−N−アセチルグルコサミンファイバー、および、上記のいずれかのポリ−N−アセチルグルコサミンポリマー誘導体またはポリ−N−アセチルグルコサミンファイバー誘導体は、乾燥ポリマーもしくは乾燥ファイバー、または、ポリマー膜もしくはファイバー膜として、放射線照射され得る。あるいは、ポリ−N−アセチルグルコサミンポリマーまたはポリ−N−アセチルグルコサミンファイバー、および、上記のいずれかのポリ−N−アセチルグルコサミンポリマー誘導体またはポリ−N−アセチルグルコサミンファイバー誘導体は、湿った状態で放射線照射され得る。放射線照射によってsNAGナノファイバーを生成する方法、および、そのように生成されたsNAGナノファイバーは、米国特許公開番号2009/0117175に記載されており、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0108】
特定の実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミンポリマーまたはポリ−N−アセチルグルコサミンファイバーは、放射線照射のために、懸濁物/スラリーまたはウエットケーキに処方される。放射線照射は、外傷用医薬材料のような最終的な処方物に上記のポリマーまたはファイバーを処方する前、同時または後に、行われ得る。一般的に、懸濁物/スラリーおよびウエットケーキの、上記のポリマー含有量またはファイバー含有量は、様々であり、例えば、蒸留水1mLあたり約0.5mg〜約50mgのポリマーまたはファイバーが、スラリーのために用いられ、蒸留水1mLあたり約50mg〜約1000mgのポリマーまたはファイバーが、ウエットケーキの処方のために用いられる。上記のポリマーまたはファイバーは、それが懸濁物/スラリーまたはウエットケーキをより形成しやすくするために、まず、凍結乾燥され、液体窒素凍結され、そして粉砕されてもよい。また、ウエットケーキが形成されるように、懸濁物/スラリーは、ろ過され、水が取り除かれ得る。特定の局面において、上記のポリマーまたはファイバーは、蒸留水1mLあたり約0.5mg、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約12mg、約15mg、約18mg、約20mg、約25mgもしくは約50mg、または、上記の実施形態のいずれかの範囲(例えば1〜10mg/mL、5〜15mg/mL、2〜8mg/mL、20〜50mg/mL等)のポリマーまたはファイバーを含有する懸濁物として、放射線照射される。他の局面において、上記のポリマーまたはファイバーは、蒸留水1mLあたり約50〜約1000mgのポリマーまたはファイバーを含有するウエットケーキとして、放射線照射される。具体的な実施形態において、ウエットケーキは、蒸留水1mLあたり約50、100、200、300、400、500、600、700、800、900もしくは1,000mg、または、いずれかの範囲(例えば、100〜500mg/mL、300〜600mg/mL、50〜1,000mg/mL等)のポリマーまたはファイバーを含有する。
【0109】
放射線照射は、好ましくは、γ線、電子ビーム線またはX線の形態である。2つの放射線照射発生源が、好ましく、それらは、放射性核種および電気である。特定の実施形態において、放射性核種は、コバルト60およびセシウム137である。これらの核種の両方は、γ線を放出し、それは、質量を有していない光子である。γ線は、0.66MeVから1.3MeVまでのエネルギーを有する。電気を用いる場合、電子は生成され、そしてエネルギーが10MeV以上になるまで加速される。ポリマーまたはファイバーのサイズを縮小させるためにこれらに放射線照射する場合に、考慮すべきことは、10MeVの電子による、水と同様の密度を有する材料の浸透深度は、一方向照射では約3、7cm、または、二方向照射では約8.6cmに限定されることである。浸透深度は、より低い電子エネルギーでは減少する。電子ビーム経路に金属ターゲット(通常、タングステンまたはタンタル)を配置することにより、電子エネルギーをX線に変換することができる。X線への変換は、5MeVまでのエネルギーを有する電子に限定される。X線は、質量を有していない光子であり、γ線と同様に、ポリマーまたはファイバーに浸透することができる。電子エネルギーからX線エネルギーへの変換は、わずか約8%の効率である。低い変換効率を補うために、X線生成設備では、高出力の電子ビーム装置が必要である。
【0110】
具体的な実施形態において、放射線照射はγ線照射である。
【0111】
放射線の吸収線量は、生成物の単位質量あたりの吸収エネルギーであり、グレイ(gy)またはキログレイ(kgy)で測定される。乾燥ポリマーまたは乾燥ファイバーに対する、好ましい吸収線量は、約500kgy〜約2,000kgyの放射線であり、最も好ましくは、約750kgy〜1,250kgyの放射線、または約900〜1,100kgyの放射線である。ウエットポリマーまたはウエットファイバーに対する、好ましい吸収線量は、約100kgy〜約500kgyの放射線であり、最も好ましくは、約150kgy〜約250kgy、または約200kgy〜約250kgyの放射線である。
【0112】
放射線照射量は、上記のポリマーまたはファイバーの長さに対するその効果の点で記載されることが可能である。具体的な実施形態において、使用される放射線照射量は、好ましくは、それぞれ、上記のポリマーまたはファイバーの最初の長さの約10%〜約90%のいずれかまで、上記のポリマーまたはファイバーの長さを縮小させる。具体的な実施形態において、平均の長さは、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%もしくは約90%、または、いずれかの範囲(例えば、20%〜40%、30%〜70%等)、まで縮小される。あるいは、使用される放射線照射量は、好ましくは、ポリマーまたはファイバーの長さを、1ミクロンから100ミクロンまでのいずれかまで縮小させる。具体的な実施形態において、また、最初のファイバーの長さに応じて、上記のポリマーまたはファイバーの長さは、約15μm未満、約14μm未満、約13μm未満、約12μm未満、約11μm未満、約10μm未満、約8μm未満、約7μm未満、約5μm未満、約4μm未満、約3μm未満、約2μm未満または約1μm未満まで縮小される。特定の実施形態において、大多数の(また、特定の実施形態において、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%もしくは100%、または、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%もしくは95%〜99%の)ポリマーまたはファイバーの長さは、約20μm以下、約15μm以下、約12μm以下、約10μm以下、約8μm以下、約7μm以下または約5μm以下まで縮小される。特定の実施形態において、ポリマーまたはファイバーの放射線照射は、大多数の(また、特定の実施形態において、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%もしくは100%、または、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%もしくは95%〜99%の)ファイバーの長さを、約1μm〜約20μm、約1μm〜約15μm、約2μm〜約15μm、約1μm〜約12μm、約2μm〜約12μm、約1μm〜約10μm、約2μm〜約10μm、約1μm〜約8μm、約2μm〜約8μm、約1μm〜約7μm、約2μm〜約7μm、約3μm〜約8μm、約4μm〜約10μm、約4μm〜約7μm、約5μm〜約10μm、約1μm〜約5μm、約2μm〜約5μm、約3μm〜約5μm、約4μm〜約10μmまたは上述の長さの間のいずれかの範囲(それらも同様に含まれる)まで縮小させる。
【0113】
また、放射線照射量は、上記のポリマーまたはファイバーの分子量に対するその効果の点で記載され得る。具体的な実施形態において、使用される放射線照射量は、好ましくは、上記のポリマーまたはファイバーの初期分子量の約10%〜約90%のいずれかにまで、当該ポリマーまたはファイバーの分子量を減少させる。具体的な実施形態において、平均分子量は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%もしくは約90%、または、いずれかの範囲(例えば、20〜40%、30〜70%等)にまで減少させられる。あるいは、使用される放射線照射量は、好ましくは、ポリマーまたはファイバーの分子量を、1,000〜1,000,000ダルトンのいずれかにまで減少させる。具体的な実施形態において、また、ポリマーまたはファイバーの平均分子量は、初期分子量に応じて、1,000,000ダルトン未満、750,000ダルトン未満、500,000ダルトン未満、300,000ダルトン未満、200,000ダルトン未満、100,000ダルトン未満、90,000ダルトン未満、80,000ダルトン未満、70,000ダルトン未満、60,000ダルトン未満、50,000ダルトン未満、25,000ダルトン未満、10,000ダルトン未満または5000ダルトン未満にまで減少させられる。特定の実施形態において、平均分子量は、少なくとも、500ダルトン、1,000ダルトン、2,000ダルトン、3,500ダルトン、5,000ダルトン、7,500ダルトン、10,000ダルトン、25,000ダルトン、50,000ダルトン、60,000ダルトンまたは100,000ダルトンにまで減少させられる。また、上記の平均分子量の何れの範囲も含まれ、例えば、特定の実施形態において、ポリマーまたはファイバーの放射線照射は、10,000〜100,000ダルトン、1,000〜25,000ダルトン、50,000〜500,000ダルトン、25,000〜100,000ダルトン、30,000〜90,000ダルトン、約40,000〜約80,000ダルトン、約25,000〜約75,000ダルトン、約50,000〜約70,000ダルトンまたは約55,000〜約65,000ダルトン等のいずれかにまで、平均分子量を減少させる。特定の実施形態において、上記のポリマーまたはファイバーの放射線照射は、大多数のファイバーの分子量を、また、特定の実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%もしくは100%、または、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%もしくは95%〜99%のファイバーの分子量を、約20,000〜約100,000ダルトン、約25,000〜約75,000ダルトン、約30,000〜約90,000ダルトン、約40,000〜約80,000ダルトン、約50,000〜約70,000ダルトンまたは約55,000〜約65,000ダルトンの範囲の何れかにまで減少させる。特定の実施形態において、上記のポリマーまたはファイバーの放射線照射は、大多数のファイバーの分子量を、また、特定の実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%もしくは100%、または、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%もしくは95%〜99%のファイバーの分子量を、約60,000ダルトンに減少させる。
【0114】
本発明の実施に有用な組成物(例えば、外傷用医薬材料、および本明細書中に記載される他の組成物)を形成するために、放射線照射に続いて、スラリーは、ろ過され、乾燥され得て、また、ウエットケーキは、乾燥され得る。
【0115】
[5.3 sNAGナノファイバーを含有する組成物]
sNAGナノファイバーは、本明細書中に記載されるように、任意の投与経路(例えば、局所(topical)、経口、筋肉内、静脈内、直腸、皮下、全身、または局所(local))を経る種々の組成物に処方されてもよい。
【0116】
sNAGナノファイバーを含有する組成物は、クリーム、膜、フィルム、液体溶液、懸濁物(例えば、濃い懸濁物)、パウダー、ペースト、軟膏、座薬、ゼラチン状組成物、噴霧剤、ゲルまたはスプレーとして処方されてもよい。一実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、極薄膜として処方される。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、外傷用医薬材料、マットまたは包帯(bandage)として処方される。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、マスクまたはピールとして処方される。特定の実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、硬くないか、または、隔膜が形成されていない。別の実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、硬いか、または隔膜が形成されている。投与前の液体中の溶液もしくは懸濁物に適した硬い剤形も想定される。また、上記の組成物は、(臀部、膝、肩のための)整形インプラント(ピン、ネジ等)、心臓血管インプラント(ステント、カテーテル等)、およびその抗菌活性が有益になるであろう同様のものなどの、移植可能なデバイスに組み込まれるか、または移植可能なデバイス上に被覆されることも考えられる。
【0117】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、全身投与のために処方される(例えば、非経口投与)。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、経口投与、筋肉内投与、静脈内投与、直腸投与、または皮下投与のために処方される。他の実施形態において、sNAGナノファイバーは、局所(全身ではない)投与のために処方される。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、皮内投与、皮下投与または筋肉内投与のために処方される。一実施形態において、sNAGナノファイバーは、皮内投与のために処方される(例えば、皮内注射のための懸濁物として)。一実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、皮下投与のために処方される(例えば、皮下注射のための懸濁物として)。一実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、筋肉内投与のために処方される(例えば、筋肉内注射のための懸濁物として)。具体的な実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、局所投与のために処方される。特定の実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、ゲル、スプレー、クリーム、懸濁物、軟膏またはペーストとして、局所投与のために処方される。特定の実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、美容用途のためのマスクまたはピールとして、局所投与のために処方される。
【0118】
sNAGナノファイバーを含有する組成物は、1つ以上の医薬的に許容される賦形剤を含んでもよい。好適な賦形剤は、水、生理食塩水、食塩水、ぶどう糖、グリセロース、エタノールなど、または、これらの組み合わせを含んでもよい。また、好適な賦形剤は、でんぷん、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦、石灰粉末、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロール・モノステアレート、油(ピーナツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などのような、石油由来の油、動物由来の油、野菜由来の油または合成物由来の油を含む)、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、プロピレン、グリコール等も含む。さらに、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、1つ以上の湿潤剤、乳化剤、pH緩衝化剤および他の薬剤を含んでもよい。sNAGナノファイバー組成物は、生理学的に許容されるキャリアに、例えば、局所的な使用に適した生理学的に許容されるキャリアに組み込まれてもよい。用語「薬学的に許容される」は、動物における使用について、また、より具体的には、ヒトにおける使用について、連邦もしくは州政府の規制当局によって承認されていること、または、米国薬局方もしくは一般的に認識された他の薬局方に列挙されていることを意味する。好適な薬学的キャリアは、E.W. Martinによる“Remington’s Pharmaceutical Sciences”に記載されている。
【0119】
組成物中のsNAGナノファイバーの終量は異なってもよい。例えば、(例えば、患者への投与のために調製された)組成物中のsNAGナノファイバーの量は、約50w/v%以上、約60w/v%以上、約70w/v%以上、約75w/v%以上、約80w/v%以上、約85w/v%以上、約90w/v%以上、約95w/v%以上、約98w/v%以上または約99w/v%以上であってもよい。一実施形態において、組成物中のsNAGナノファイバーの量は、約95%、約98%、約99%または約100%である。また、(例えば、患者への投与のために調製された)組成物中のsNAGナノファイバーの量は、約50w/v%〜約100w/v%、約60w/v%〜約100w/v%、約70w/v%〜約100w/v%、約75w/v%〜約100w/v%、約80w/v%〜約100w/v%、約90w/v%〜約100w/v%、約95w/v%〜約100w/v%、約70w/v%〜約95w/v%、約75w/v%〜約95w/v%、約80w/v%〜約95w/v%、約90w/v%〜約95w/v%、約70w/v%〜約90w/v%、約75w/v%〜約90w/v%または約80w/v%〜約90w/v%であってもよい。組成物は、sNAGナノファイバーの、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%または99%よりも高い溶液を含有してもよい。
【0120】
sNAGナノファイバー組成物は、0.1mg/mLから50mg/mLまでのsNAGナノファイバーを含有するように処方されてもよい。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、0.5mg/mLから30mg/mLまでの、5mg/mLから30mg/mLまでの、5mg/mLから25mg/mLまでの、7.5mg/mLから20mg/mLまでの、または10mg/mLから20mg/mLまでの、sNAGナノファイバーを含有するように処方されてもよい。具体的な実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、約1mg/mL、約5mg/mL、約10mg/mL、約15mg/mL、約20mg/mL、約25mg/mLまたは約30mg/mLのsNAGナノファイバーを含有するように処方されてもよい。sNAGナノファイバー組成物は、局所的な注入(例えば、懸濁物の形態での、例えば、皮内(intradermal)注射、皮内(intracutaneous)注射、筋肉内注射)による投与のために、5mg/mLから30mg/mLまでのsNAGナノファイバー(例えば、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、7.5mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、12.5mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、17.5mg/mL、18mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、21mg/mL、22mg/mL、23mg/mL、24mg/mL、25mg/mL、26mg/mL、27mg/mL、28mg/mL、29mg/mLまたは30mg/mL)を含有するように処方されてもよい。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、局所的な注入(例えば、懸濁物の形態での、例えば、皮内(intradermal)注射、皮内(intracutaneous)注射、筋肉内注射)による投与のために、7.5mg/mLから25mg/mLまでのsNAGナノファイバーを含有するように処方されてもよい。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、局所的な注入(例えば、懸濁物の形態での、例えば、皮内(intradermal)注射、皮内(intracutaneous)注射、筋肉内注射)による投与のために、10mg/mLから20mg/mLまでのsNAGナノファイバーを含有するように処方されてもよい。一実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、局所的な注入(例えば、懸濁物の形態での、例えば、皮内(intradermal)注射、皮内(intracutaneous)注射、筋肉内注射)による投与のために、約12.5mg/mLから約17.5mg/mLまでのsNAGナノファイバー、または約15mg/mLのsNAGナノファイバーを含有するように処方されてもよい。sNAGナノファイバー組成物は、局所的な投与(例えば、懸濁物またはスプレーの形態での、皮膚への投与、粘膜表面への投与、創傷への投与)のために、0.1mg/mLから50mg/mLまでのsNAGナノファイバー(例えば、0.1mg/mL、0.5mg/mL、1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、7.5mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、12.5mg/mL、13、mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、17.5mg/mL、18mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、21mg/mL、22mg/mL、23mg/mL、24mg/mL、25mg/mL、26mg/mL、27mg/mL、28mg/mL、29mg/mL、30mg/mL、31mg/mL、32mg/mL、33mg/mL、34mg/mL、35mg/mL、36mg/mL、37mg/mL、38mg/mL、39mg/mL、40mg/mL、41mg/mL、42mg/mL、43mg/mL、44mg/mL、45mg/mL、46mg/mL、47mg/mL、48mg/mL、49mg/mLまたは50mg/mL)を含有するように処方されてもよい。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、局所的な投与のために、0.5mg/mLから50mg/mLまでの、0.5mg/mLから30mg/mLまでの、1mg/mLから50mg/mLまでの、1mg/mLから40mg/mLまでの、1mg/mLから30mg/mLまでの、5mg/mLから30mglまでの、5mg/mLから20mg/mLまでの、sNAGナノファイバーを含有するように処方されてもよい。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、局所的な投与のために、1mg/mLから30mg/mLまでのsNAGナノファイバーを含有するように処方されてもよい。一実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、局所的な投与のために、約5mg/mLから約25mg/mLまでのsNAGナノファイバー、約10mg/mLから約20mg/mLまでのsNAGナノファイバー、または約15mg/mLのsNAGナノファイバーを含有するように処方されてもよい。sNAGナノファイバー組成物は、局所的な投与(例えば、ゲル、クリームまたはペーストの形態での、皮膚への投与、粘膜表面への投与または創傷への投与)のために、0.1mg/cm
2から10mg/cm
2までのsNAGナノファイバー(例えば、0.1mg/cm
2、0.25mg/cm
2、0.5mg/cm
2、0.75mg/cm
2、1mg/cm
2、2mg/cm
2、2.5mg/cm
2、3mg/cm
2、4mg/cm
2、5mg/cm
2、6mg/cm
2、7mg/cm
2、7.5mg/cm
2、8mg/cm
2、9mg/cm
2、または10mg/cm
2)を含有するように処方されてもよい。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、局所的な投与のために、0.5mg/cm
2から10mg/cm
2までの、0.75mg/cm
2から7.5mg/cm
2までの、1mg/cm
2から7.5mg/cm
2までの、または1mg/cm
2から5mg/cm
2までの、sNAGナノファイバーを含有するように処方されてもよい。特定の実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、局所的な投与のために、約1mg/cm
2から約5mg/cm
2までのsNAGナノファイバー、または約1mg/cm
2のsNAGナノファイバー、約2.5mg/cm
2のsNAGナノファイバー、もしくは約5mg/cm
2のsNAGナノファイバーを含有するように処方されてもよい。
【0121】
sNAGナノファイバー組成物は、創傷被覆材中に処方されてもよい。特定の実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、隔膜、膜またはフィルムの形態の創傷被覆材として処方される。あるいは、sNAGナノファイバー組成物は、隔膜、膜またはフィルムなどの、外傷用医薬材料の基材に添加されてもよい。隔膜、膜またはフィルムは、種々の標準サイズで供給され得て、それは、さらに切断され、処置される領域の大きさに合わせられ得る。上記の基剤は、患者に適用する前に、ポリマーまたはファイバーが添加されたか、または被覆された包袋(bandage)またはガーゼなどの、従来の外傷用医薬材料であり得る。あるいは、sNAGナノファイバーは、糸、マイクロビーズ、微粒子または微小線維によって作製された隔膜、膜またはフィルムとして処方され得て、また、上記の組成物は、隔膜を形成するマットとして処方され得る。特定の実施形態において、外傷用医薬材料の少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%は、sNAGナノファイバーによって構成されている。特定の局面において、外傷用医薬材料は、ガーゼまたは包帯(bandage)などの従来の外傷用医薬材料を含まない。そのような実施形態においては、sNAGナノファイバー自体が、創傷被覆材として処方される。
【0122】
具体的な実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、創傷被覆材中に処方されない。
【0123】
sNAGナノファイバー組成物は、クリーム、膜、フィルム、溶液、懸濁物(例えば、濃厚な懸濁物)、パウダー、ペースト、軟膏、座薬、ゼラチン状組成物、噴霧剤、ゲルまたはスプレーに処方されてもよい。特定の実施形態において、処方物の、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%は、sNAGナノファイバーによって構成されている。
【0124】
sNAGナノファイバーを含有する組成物は、さらに、任意の好適な、天然ポリマーもしくは天然ファイバーまたは合成ポリマーもしくは合成ファイバーを含んでもよい。好適なポリマーまたはファイバーの例は、セルロースポリマー、キサン、ポリアラミド、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミド/イミド、ポリアミドヒドラジド、ポリヒドラジド、ポリイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリエステル/アミド、ポリエステル/イミド、ポリカーボネート/アミド、ポリカーボネート/イミド、ポリスルホン/アミド、ポリスルホンイミドなど、ならびに、これらのコポリマーおよび混合物を含む。他の好適な種類のポリマーまたはファイバーは、ポリフッ化ビニリデンおよびポリアクリロニトリルを含む。これらのポリマーまたはファイバーの例は、米国特許番号RE30,351、4,705,540、4,717,393、4,717,394、4,912,197、4,838,900、4,935,490、4,851,505、4,880,442、4,863,496、4,961,539、ならびに、欧州特許出願0 219 878に記載されたものを含み、各々の全体が参考として本明細書中に援用される。上記のポリマーまたはファイバーは、セルロースポリマー、ポリアミド、ポリアラミド、ポリアミド/イミドまたはポリイミドのいずれか少なくとも1つを含み得る。特定の実施形態において、上記のポリマーまたはファイバーは、ポリアラミド、ポリエステル、ウレタンおよびポリテトラフルオロエチレンを含む。一実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、一種類以上のポリマー(例えば、sNAGナノファイバーおよびセルロース)を含有する。
【0125】
特定の局面において、sNAGナノファイバーは、組成物中で、唯一の活性成分である。一実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、別の抗菌剤を含有しておらず、例えば、抗生物質を含有しない。一実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、亜鉛を含有しない。
【0126】
他の実施形態において、組成物は、例えば、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗酵母剤、化学療法薬剤または他の任意の薬剤のような、1つ以上のさらなる活性成分を含有する。いくつかの実施形態において、さらなる活性成分は、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗酵母剤、ディフェンシンペプチド、ディフェンシン様ペプチドもしくはToll様レセプターペプチドまたは増殖因子の1つ以上である。具体的な実施形態において、さらなる活性成分は、PDGF−AA、PDGF−AB、PDGF−BB、PDGF−CC、PDGF−DD、FGF−1、FGF−2、FGF−5、FGF−7、FGF−10、EGF、TGF−α、(HB−EGF)、アンフィレグリン(amphiregulin)、エピレグリン(epiregulin)、ベータセルリン(betacellulin)、ニューレグリン(neuregulins)、エピゲン(epigen)、VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、VEGF−E、胎盤増殖因子(PLGF)、アンジオポイエチン(angiopoietin)−1、アンジオポイエチン−2、IGF−I、IGF−II、肝細胞増殖因子(HGF)およびマクロファージ刺激タンパク質(MSP)の1つ以上などの、増殖因子である。他の実施形態において、さらなる活性成分は、免疫システム、痛み止め剤または解熱剤を増強する薬剤である。当該技術分野において知られている1つ以上の任意のさらなる活性成分が、sNAGナノファイバーと組み合わせて用いられ得る。例えば、WO2011/130646およびWO2012/142581(各々の全体が参考として本明細書中に援用される。)に記載されているさらなる活性成分のいずれかが、sNAGナノファイバーと組み合わせて用いられ得る。
【0127】
特定の実施形態において、さらなる活性成分は、抗ウイルス剤である。当業者によく知られている任意の抗ウイルス剤(例えば、WO2011/130646およびWO2012/142581(各々の全体が参考として本明細書中に援用される。)に記載されている)が、sNAGナノファイバー組成物中に用いられてもよい。
【0128】
いくつかの実施形態において、さらなる活性成分は、抗炎症剤である。抗炎症剤の非限定的な例は、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)(例えば、セレコキシブ(CELEBREX
TM)、ジクロフェナク(VOLTAREN
TM)、エトドラク(LODINE
TM)、フェノプロフェン(NALFON
TM)、インドメタシン(INDOCIN
TM)、ケトララック(TORADOL
TM)、オキサプロジン(DAYPRO
TM)、ナブメントン(RELAFEN
TM)、スリンダック(CLINORIL
TM)、トルメンチン(TOLECTIN
TM)、ロフェコキシブ(VIOXX
TM)、ナプロセン(ALEVE
TM、NAPROSYN
TM)、ケトプロフェン(ACTRON
TM)およびナブメトン(RELAFEN
TM))、ステロイド抗炎症剤(例えば、グルココルチコイド、デキサメタゾン(DECADRON
TM)、コルチコステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン(MEDROL
TM))、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン(PREDNISONE
TMおよびDELTASONE
TM)およびプレドニゾロン(PRELONE
TMおよびPEDIAPRED
TM))、抗コリン作動薬(例えば、硫酸アトロピン、硝酸メチルアトロピンおよびイプラトロピウムブロミド(ATROVENT
TM))、β2−アゴニスト(例えば、アブテロール(VENTOLIN
TMおよびPROVENTIL
TM)、ビトルテロール(TORNALATE
TM)、レバルブテロール(XOPONEX
TM)、メタプロテレノール(ALUPENT
TM)、ピルブテロール(MAXAIR
TM)、ターブトライン(BRETHAIRE
TMおよびBRETHINE
TM)、アルブテロール(PROVENTIL
TM、REPETABS
TMおよびVOLMAX
TM)、フォルモテロール(FORADIL AEROLIZER
TM)およびサルメテロール(SEREVENT
TMおよびSEREVENT DISKUS
TM))、ならびに、メチルキサンチン(例えば、テオフィリン(UNIPHYL
TM、THEO−DUR
TM、SLO−BID
TMおよびTEHO−42
TM))を含む。
【0129】
sNAGナノファイバー組成物は、例えば、ヒアルロン酸、コラーゲン、カルシウムヒドロキシアパタイト、脂質(例えば、ヒトの脂質、特に、自己由来の脂質)、ポリ乳酸、死体の真皮(例えば、ヒト)、ポリメタクリル酸メチル、および/またはポリアルキルイミドなどの、さらなる組織充填剤を含有してもよい。他の局面において、sNAGナノファイバー組成物は、さらなる組織充填剤を含有しない。sNAGナノファイバー組成物は、ボツリヌス毒素を含有してもよい。他の局面において、sNAGナノファイバーは、ボツリヌス毒素を含有しない。
【0130】
sNAGナノファイバー組成物は、コラーゲンを含有してもよいが、特定の局面においては、sNAGナノファイバー組成物は、コラーゲンを含有しない。別の実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、ヒアルロン酸を含有してもよいが、特定の局面においては、sNAGナノファイバー組成物は、ヒアルロン酸を含有しない。別の実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、ヒトの脂質を含有してもよいが、特定の局面においては、sNAGナノファイバー組成物は、ヒトの脂質を含有しない。
【0131】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、さらなる治療を含まない。特定の実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、さらなる抗ウイルス剤、抗ガン剤、抗菌剤、抗酵母剤、抗炎症剤、化学療法薬剤、抗血管形成剤、ディフェンシンペプチド、ディフェンシン様ペプチド、Toll様レセプターペプチドまたは増殖因子を含有しない。特定の実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、亜鉛を含有しない、および/または、亜鉛と組み合わせて投与されない。
【0132】
いくつかの実施形態において、さらなる活性成分は、抗菌剤(例えば、抗生物質、ディフェンシンペプチド、ディフェンシン様ペプチド、Toll様レセプターペプチド)または増殖因子ではない。具体的な実施形態において、さらなる活性成分は、PDGF−AA、PDGF−AB、PDGF−BB、PDGF−CC、PDGF−DD、FGF−1、FGF−2、FGF−5、FGF−7、FGF−10、EGF、TGF−α、(HB−EGF)、アンフィレグリン、エピレグリン、ベータセルリン、ニューレグリン、エピゲン、VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、VEGF−E、胎盤増殖因子(PLGF)、アンジオポイエチン−1、アンジオポイエチン−2、IGF−I、IGF−II、肝細胞増殖因子(HGF)およびマクロファージ刺激タンパク質(MSP)のような増殖因子ではない。特定の実施形態において、さらなる活性成分は、免疫システム、鎮痛剤または解熱剤を増強する薬剤ではない。
【0133】
特定の実施形態において、さらなる活性成分は、抗生物質ではない。
【0134】
他の局面において、sNAGナノファイバー組成物は、有意な量のタンパク質材料を含有していない。具体的な実施形態において、sNAGナノファイバー組成物のタンパク質含有量は、0.1w%、0.5w%または1w%以下である。他の実施形態において、上記の組成物のタンパク質含有量は、クマシー染色によって検出されない。
【0135】
また、一実施形態において、亜鉛は、sNAGナノファイバー組成物に含まれている。また、亜鉛は、その抗微生物特性に加えて、創傷治癒においても機能する(Andrews et al.,1999,Adv Wound Care 12:137-8を参照のこと)。亜鉛は、好ましくは、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛またはグルコン酸亜鉛のような、塩の形態で添加される。
【0136】
[5.4 予防的な使用および治療的な使用]
特定の実施形態において、疾患、障害または症状を有する症候群を妨げるおよび/または処置するために、sNAGナノファイバーまたはその組成物が使用され得る。これらは、引っ張り強さおよび伸縮性の増加、コラーゲンの減少、コラーゲンの組織化、および/または平滑筋アクチン発現の減少、または筋線維芽細胞の含有量の減少に優れている。これらの疾患は、組織の引っ張り強さの低下、組織の伸縮性の低下、組織におけるエラスチン含有量の低下、組織における総コラーゲン含有量もしくは異常コラーゲン含有量の増加、組織におけるI型コラーゲン含有量の増加、組織におけるIII型コラーゲン含有量の低下、組織におけるコラーゲンの異常な整列、組織におけるα平滑筋アクチン含有量の増加、および/または、組織における筋線維芽細胞の増加を含む症状に関連するか、あるいはこのような症状を有する。
【0137】
[引っ張り強さの増加]
本発明者らは、驚くべきことに、sNAGナノファイバーが組織の引っ張り強さおよび伸縮性を増加し得ることを見出した。よって、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーは、組織の引っ張り強さの低下または組織伸縮性の低下に関連する疾患および/または症状を処置および/または予防するために使用され得る。
【0138】
特定の実施形態において、被験体におけるエーラー・ダンロス症候群の症状を処置および/または予防するための方法が、本明細書中に提供され、本方法は、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物を上記被験体に投与する工程を包含する。エーラー・ダンロス症候群は、欠陥を有するコラーゲンによって生じる、コラーゲンまたは結合組織の遺伝性の障害の一群である。エーラー・ダンロス症候群には主要な6つのタイプが存在し、各タイプが、その独特な症状および症状に基づいて分類される。特に、エーラー・ダンロス症候群の主要な6つのタイプは、運動機能亢進のタイプ3、古典的なタイプ1および2、脈管系のタイプ4、脊椎後弯側弯症、関節弛緩症、および皮膚口内炎である。上記症状および症状は、患者が有するエーラー・ダンロス症候群のタイプに依存して変化し得るが、この症候群の主要な症状および症状としては以下が挙げられる:筋骨格の症状(例えば、捻挫、崩壊、亜脱臼および過伸展の傾向がある不安定な関節、進行した骨関節炎の早期の発症、慢性変形性関節症、指のスワンネック(swan neck)変形、使用によって増加する筋疲労、幼少期の弱い筋緊張、骨減少症、伸縮性の靭帯および腱、ならびに、腱または筋肉の断裂);皮膚の症状(例えば、ビロードのようなテクスチャーを有する伸縮性の皮膚、容易に裂けるもろい皮膚、容易な打撲(bruising)、異常な創傷治癒および瘢痕形成、広げられた萎縮性瘢痕への誘導(leading)、冗長なしわ、軟体動物のような腫瘍、皮下スフェロイド(spheroid)、前腕または皮膚の脂質の増殖、ならびに、血管形成(angioplasia));心脈管の症状(例えば、もろい血管、頸動脈海綿洞(carotoid- cavernous fistula)、心弁膜症、起立性頻脈症候群、起立性調節障害、上行大動脈の拡大および/または断裂、嚢胞性中膜壊死、静脈瘤、ならびに、脈管皮膚状態(例えば、レイノー症候群またはリベド血管炎)。特定の実施形態において、sNAGナノファイバーまたはその組成物は、エーラー・ダンロス症候群の1つ、2つ、3つまたはそれ以上の症状を処置および/または予防するために使用される。いくつかの実施形態において、sNAGファイバーまたはその組成物は、エーラー・ダンロス症候群の主要なタイプの1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは全ての、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の症状を処置および/または予防するために使用される。特定の実施形態において、sNAGナノファイバーまたはその組成物は、エーラー・ダンロス症候群に共通する、皮膚に関連する症状(例えば、柔らかい皮膚、もろい皮膚、容易に傷つく皮膚、過剰な瘢痕化、鈍い創傷治癒、および身体の組織における柔らかい(tender)部位にわたる肉芽腫瘍(eshy tumors)の発達を含む。)の1つ、2つまたはそれ以上を処置および/または予防するために使用される。他の実施形態において、sNAGナノファイバーまたはその組成物は、エーラー・ダンロス症候群の関節関連症状(例えば、緩んだもしくは不安定な関節、関節の頻繁な脱臼、関節痛、および変性性の関節疾患の早期開始を含む。)の1つ以上を処置および/または予防するために使用される。
【0139】
別の特定の実施形態において、被験体における、過度に脆弱な皮膚によって特徴付けられる遺伝性結合組織疾患である表皮水疱症(EB)の症状を処置および/または予防するための方法が、本明細書中に提供され、本方法は、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物を上記被験体に投与する工程を包含する。表皮水疱症は、発生率が1/50000であり、その重篤度は軽いものから致死的なものにまで至る。表皮水疱症は3つのタイプ(単純型表皮水疱症、接合型表皮水疱症および栄養障害型表皮水疱症)に分けられる。特定の実施形態において、被験体における表皮水疱症の1つ、2つまたは全てのタイプの症状を処置および/または予防するための方法が、本明細書中に提供され、本方法は、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物を上記被験体に投与する工程を包含する。
【0140】
健康な皮膚を有する被験体において、タンパク質アンカーが互いに独立して動く(例えば通り抜ける)ことを妨げる層の間に上記タンパク質アンカーが存在する。しかし、表皮水疱症を伴うこれらの発生(born)において、これらの皮膚層の最表層は皮膚層を一緒に保持するタンパク質アンカーを欠き、これらの層の間での摩擦を生成する(擦りまたは押圧のような)任意の作用が皮膚層を分離し、皮膚および粘膜において、水疱および激しい痛みを生じさせる。よって、一実施形態において、sNAGナノファイバーまたはその組成物は、表皮水疱症の症状(例えば水疱)を、皮膚上および粘膜表面上で予防および/または処置するために使用される。
【0141】
別の特定の実施形態において、被験体の皮膚におけるシワまたは窪みを処置および/または予防するための方法が、本明細書中に提供され、本方法は、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーを上記被験体に投与する工程を包含する。上記シワまたは窪みは、その深さに依存して粗いか微細であり得、
数μmから
数mmまで皮膚の内部へ伸びている。具体的には、粗いシワはしばしば表情線といわれ、額、目尻(例えばカラスの足跡)、および口のいずれかの側の縦線(例えば笑い皺)としてあらわれるが、微細なシワは、皮膚上に(特に顔の動く領域(例えば眼、口、上唇など)において)現れる線またはギザギザの、より浅いネットワークを含む。皮膚におけるシワまたは窪みは、筋肉質量および皮膚の厚みの減少、真皮におけるコラーゲンおよびエラスチンのクロスリンク、および角質層(SC)の感想の1つ以上の結果として生じる。皮膚におけるこれらの構造的な変化は、機械的強度および伸縮性の喪失を引き起こし、皮膚の表面への目に見えるシワの出現に至る。よって、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物を局所的に適用して、皮膚における機械的強度および伸縮性の喪失を処置および/または予防し、その結果として、構造的な変化に関連する上記シワまたは窪みを処置および/または予防し得る。
【0142】
[コラーゲンの減少]
本発明者らはまた、sNAGナノファイバーがコラーゲンレベルを低減し得ることを見出した。よって、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーは、コラーゲン形成の増加に関連する症状を有する疾患および/または症候群を処置および/または予防するために使用され得る。
【0143】
特定の実施形態において、被験体において結合組織傷害である強皮症の症状を処置および/または予防するための方法が、本明細書中に提供され、本方法は、sNAG何御ファーバーまたはその組成物を上記被験体に投与する工程を包含する。作用の任意のメカニズムによって結合されることなく、強皮症を有する被験体の線維芽細胞(結合組織において最も一般的な細胞)が過剰量のコラーゲンを産生すると信じられている。この過剰量のコラーゲンは、皮膚および内部器官の内側に集積する結合組織の堅いバンドを形成し得、器官の機能を損なわし得る。さらに、過剰量のコラーゲンの産生は、血管および関節に影響を及ぼし得、そして疾患(例えばレイノー症候群)および/または指足のしびれ、痛みおよび変色、胃食道逆流疾患(すなわちGERD)、ならびに皮膚の変化(例えば、指および手の膨張、てかてかした皮膚、および皮膚継ぎ目の肥厚)の症状となり得る。したがって、sNAGナノファイバーまたはその組成物は、コラーゲン関連症状である強皮症および/またはその関連疾患もしくは症候群を予防および/または処置するために使用され得る。特定の実施形態において、sNAGナノファイバーまたはその組成物は、皮膚の理解した領域に局所的に適用されるか、コラーゲンレベルおよび関連する症状を低減させるために局所的に注射される。
【0144】
強皮症のいくつかのタイプは皮膚の実に影響を及ぼし、他のタイプの強皮症は身体全体に影響を及ぼす。一般に、局在性の強皮症は、手および顔の皮膚のみに影響を及ぼす。対照的に、全身性の強皮症(硬化症)は、広い範囲の皮膚および器官(例えば、心臓、肺、または腎臓)に影響を及ぼし得る。全身性の強皮症には2つのタイプがある:限定的な疾患(CREST症候群)および拡散性疾患。特定の実施形態において、sNAGナノファイバーまたはその組成物は、全身性の強皮症の1つ、2つまたはそれ以上を予防および/または処置するために使用される。他の実施形態において、sNAGナノファイバーまたはその組成物は、局在性の強皮症の1つ、2つまたはそれ以上を予防および/または処置するために使用される。
【0145】
強皮症の症状としては、以下が挙げられる:皮膚の症状(例えば、高温および低温に応答して青色または白色に変色する指またはつま先(レイノー症候群参照);脱毛;皮膚の硬化;異常に暗いまたは明るい皮膚;指、手および前腕の皮膚の肥厚化、硬化および圧迫;皮膚の下の小さな白いこぶ;指先またはつま先の腫れ(潰瘍);および、顔面のこわばったマスクのような皮膚)、骨および筋肉の症状(例えば、関節痛;脚のしびれおよび痛み;指および関節の痛み、凝りおよび腫れ)、呼吸の問題(例えば、乾いた咳、呼吸の短縮および喘鳴)、ならびに消火器の問題(例えば、食事の後の膨満、便秘、下痢、嚥下困難、および食堂の逆流または胸焼け)。特定の実施形態において、sNAGナノファイバーまたはその組成物は、強皮症のこれらの症状の1つ、2つまたはそれ以上を処置および/または予防するために使用される。特定の実施形態において、sNAGナノファイバーまたはその組成物は、強皮症の皮膚症状の1つ、2つまたはそれ以上を処置および/または予防するために使用される。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバーまたはその組成物は、強皮症の骨および筋肉の症状の1つ、2つまたはそれ以上を処置および/または予防するために使用される。
【0146】
[組織化したコラーゲンの表現型]
本発明者らはさらに、sNAGナノファイバーがコラーゲンファイバーの組織化および/または配向を増加し得ることを見出した。したがって、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーは、コラーゲンファイバーの不完全な組織化に関連する症状を有する疾患および/または症候群を処置または予防するために使用され得る。
【0147】
別の実施形態において、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物は、被験体における低い骨密度を処置するために使用される。骨格の脆弱性(skeletal fragility)および骨の脆弱性(bone brittleness)の増加は、骨マトリクスの強度の低下に起因するようである。骨マトリクスにおけるこの低下した強度は、部分的には、コラーゲンファイバーの貧弱な組織化によると考えられる。よって、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物は、低い骨密度によって特徴付けられる疾患および/または障害(例えば骨粗鬆症)を処置するために使用され得る。sNAGナノファイバーまたはその組成物は、コラーゲンファイバーの組織化または配向を増加または修正するために、骨密度が低い領域へ注入され得る。
【0148】
特定の実施形態において、被験体における骨粗鬆症の症状を処置および/または予防するための方法が、本明細書中に提供され、本方法は、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物を上記被験体に投与する工程を包含する。特定の実施形態において、sNAGナノファイバーまたはその組成物は、骨密度の低い領域に注入される。sNAGナノファイバーは、例えばゲルまたは懸濁物の形態で投与され得る。
【0149】
特定の実施形態において、被験体における椎間板障害および/または椎間板変性の症状を処置および/または予防するための方法が、本明細書中に提供され、本方法は、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物を上記被験体に投与する工程を包含する。椎間板障害の形態学は、存在する成分のタイプおよびアセンブリされる様式に依存する。このことは、その組織が、負荷についてのその初期の生理学的機能をどのように実行するのかを決定して、他の堅い脊柱の全ての方向への移動を可能にする。椎間板の成分は、歳を重ねるにつれて、中央の膠様の核髄質(central gelatinous nucleus pulposus)の周りにコラーゲンファイバーの規則的な一連の同心円のバンドからなる線維性の外輪を有して、規則的に始まるが、層状のバンドの数およびサイズにおいて、より多くの分岐、鉗合および不同を伴って層の複雑性が増加する。椎間板のコラーゲンの組織化における変化は、変更された負荷を導き得、そして、椎間板の形態学の崩壊について、自己永続的な(self-perpetuating)サイクルを達成し得る。これはいったん開始されると不可逆的である。疾患および変性を伴う椎間板の細胞組織化にも変更がある。したがって、sNAGナノファイバーまたはその組成物は、sNAGナノファイバーを局所的に投与する(例えば、椎間板の周りまたは傍に、sNAGナノファイバー組成物を注射する)ことによって椎間板障害または椎間板変性を処置および/または予防するために使用され得る。特に、sNAGナノファイバーまたはその組成物は、頸椎L4とL5との間の椎間板に注入され得る。
【0150】
特定の実施形態において、被験体における変形性関節症の症状を処置および/または予防するための方法が、本明細書中に提供され、本方法は、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物を上記被験体に投与する工程を包含する。関節軟骨の分解が主に、変形性関節症の原因であり、この関節軟骨の95%までをコラーゲンが占める。変形性関節症の進行の間のコラーゲンに関連するプロテオグリカン含有量の迅速な喪失は、間接におけるコラーゲン組織化の激しい混乱、および変形性関節症を特徴付ける痛みと凝りを導く。よって、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物は、変形性関節症を処置および/または予防し、コラーゲンの構造/組織化を修復するために使用され得る。本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物は、変形性関節症に罹患した個々の関節にsNAGナノファイバーを注入することによって局所的に適用され得る。
【0151】
[平滑筋アクチン発現の低下/筋線維芽細胞含有量の低下]
本発明者らはまた、sNAGナノファイバーが、平滑筋アクチンの発現を低減し得る、および/または筋線維芽細胞の含有量を低減し得る、ということを見出した。したがって、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーは、平滑筋アクチン発現の増加または筋線維芽細胞含有量の増加に関連する症状を有する疾患および/または症候群を処置および/または予防するために使用され得る。
【0152】
特定の実施形態において、被験体において線維症および/または瘢痕を処置および/または予防するための方法が、本明細書中に提供され、本方法は、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物を上記被験体に投与する工程を包含する。線維症は、器官または組織の修復または反応のプロセスにおける線維性の結合組織の過剰な形成である。瘢痕は、コンフルエントな線維症であり、これは、潜在的な器官または組織の構造を破壊する。器官の線維症による組織の破壊は、心臓、肺、肝臓、腎臓および皮膚の疾患に関連する致死的な帰結に寄与する。有害な線維性組織の拘縮を引き起こす細胞は、筋線維芽細胞であり、これは、コラーゲン様の細胞外マトリクス(ECM)および張力の過剰な産生によって特徴付けられる表現型を有している。筋線維芽細胞は、組織における線維性状態の成立に極めて重要な役割を担い、さらに、組織における線維性のストレスファイバーを形成するためにα平滑筋アクチンの発現に依存する。よって、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物は、多くの疾患および状態を特徴付ける線維症を処置するために使用され得る。sNAGナノファイバーまたはその組成物は、皮膚上に局所的に投与されるか、罹患した組織および/または器官の中、周りまたは傍に注入されることによって投与され得る。一実施形態において、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物は、炎症性の腸疾患に関連する線維症を処置するために使用されず、および/または炎症性の腸疾患を処置するために使用されない。
【0153】
特定の実施形態において、被験体における創傷に関連する瘢痕(例えば皮膚の創傷)を処置および/または予防するための方法が、本明細書中に提供され、本方法は、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物を上記被験体に投与する工程を包含する。と会問えば、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物は、被験体における創傷に関連する瘢痕を処置するために、新鮮な創傷、あるいは創傷を負わせた1時間、6時間、12時間、24時間、5日、1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、またはそれよりも長く経過した後の創傷に投与され得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物は、被験体における創傷に関連する瘢痕を処置するために、部分的に治癒したかまたは完全に治癒した創傷に投与される。特定の実施形態において、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物は、創傷に直接的に、創傷の近傍に、または創傷によって残された瘢痕に投与され得る。本明細書中で企図される創傷は、任意の創傷(例えば、手術創、銃創、裂傷、切創、貫通、すり傷またはやけど)であり得る。創傷は開放した創傷であり得る。創傷は、瘢痕を生じる危険性が高い創傷であり得る。
【0154】
特定の実施形態において、被験体(例えばヒト)における創傷に関連する瘢痕を低減させる方法が、本明細書中に提供され、本方法は、sNAGナノファイバーを含有する組成物を上記被験体に投与する工程を包含し、上記sNAGナノファイバーの50%よりも多くが約1〜15μmの間の長さである。一実施形態において、上記創傷は手術創である。別の実施形態において、上記創傷は皮膚の外傷である。特定の実施形態において、上記組成物は、上記被験体に局所的に投与される。一実施形態において、上記被験体は、創傷に由来する瘢痕を有し、sNAGナノファイバーが上記瘢痕の領域に局所的に投与される。特定の実施形態において、上記組成物は、少なくとも21日間にわたって局所的に投与される。別の実施形態において、上記被験体は、創傷に由来する瘢痕を有し、上記sNAGナノファイバーは、上記瘢痕の領域内への局所注射によって投与される。
【0155】
特定の実施形態において、被験体(例えばヒト)における創傷に関連する線維症または癒着を処置または予防するための方法が、本明細書中に提供され、本方法は、sNAGナノファイバーを含有する組成物を上記被験体に投与する工程を包含し、上記sNAGナノファイバーの50%よりも多くが約1〜15μmの間の長さである。一実施形態において、上記創傷は手術創である。別の実施形態において、上記創傷は皮膚の外傷である。特定の実施形態において、上記組成物は、上記被験体に局所的に投与される。一実施形態において、上記被験体は、創傷に由来する癒着または線維症を有し、sNAGナノファイバーが上記癒着または線維症の領域に局所的に投与される。特定の実施形態において、上記組成物は、少なくとも21日間にわたって局所的に投与される。別の実施形態において、上記被験体は、創傷に由来する癒着または線維症を有し、上記sNAGナノファイバーは、上記癒着または線維症の領域内への局所注射によって投与される。
【0156】
[再生性の適用]
本発明者らは、sNAGナノファイバーがコラーゲンファイバーの組織化および/または配向を増加し得ること、引っ張り強度を増加し得ること、ならびに組織の伸縮性およびエラスチン含有量を増加し得ることを見出したので、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーは、被験体における組織を再生および/または充填するために使用され得る。
【0157】
したがって、特定の実施形態において、組織を再生するかまたは組織にボリュームを加えるための、sNAGナノファイバーを含有する組成物を使用するための方法が本明細書中に提供され、上記sNAGナノファイバーの50%よりも多くが約1〜15μmの間の長さである。特定の実施形態において、被験体における組織を再生するための方法が本明細書中に提供され、本方法は、sNAGナノファイバーを含有する組成物を上記組織に投与する工程を包含し、上記sNAGナノファイバーの50%よりも多くが約1〜15μmの間の長さである。上記組織は軟組織(例えば皮膚または筋肉)であっても硬組織(例えば骨)であってもよい。いくつかの実施形態において、上記組成物は、美容手順または外科手順の観点で組織を再生するために使用される。一実施形態において、上記組成物は、形成外科手順の観点で組織を再生するために使用される。これらの適用のいくつかにおいて、sNAGナノファイバーは、組織フィラーとして処方される、および/または使用される。特定の実施形態において、上記組織は、ヒト被験体の顔の軟組織である(例えば、組成物が、唇、頬、瞼、顎、または顔のシワもしくは窪みを膨らませるため、持ち上げるため、またはボリュームを加えるために使用され得る。)。これらの適用のいくつかにおいて、sNAGナノファイバーは、別の組織フィラーと一緒に処方される、および/または組み合わせて使用される。特定の実施形態において、組成物は、上記被験体における組織に局所的に投与される。他の実施形態において、組成物は、上記組織に局所的な注射によって投与される。他の実施形態において、組成物は、上記組織内への局所注射によって投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、皮内へ、皮下へまたは筋肉内へ投与される。
【0158】
sNAGナノファイバーを含む組織フィラー組成物は、以下の目的を含むがこれらに限定されない任意の美容手順または外科手順にて使用される:皮膚表面におけるシワまたは窪みを低減するため、皮膚表面にボリュームを加えるかおよび/または皮膚表面の下の組織の形状を変更するため。sNAGナノファイバーを含む組織フィラー組成物はまた、疾患または手術の影響を受けたか疾患または手術に起因する喪失の影響を受けた組織を修復または再生するために使用され得る。
【0159】
特定の実施形態において、被験体の皮膚の表面におけるシワまたは窪みを処置または予防するための方法が本明細書中に提供され、本方法は、sNAGナノファイバーを含有する組成物を上記被験体に投与する工程を包含し、上記sNAGナノファイバーの50%よりも多くが約1〜15μmの間の長さである。特定の実施形態において、上記組成物は、被験体の皮膚表面におけるシワまたは窪みを処置または予防するための真皮フィラーとして処方および/または使用される。いくつかの実施形態において、美容または形成外科の手順の間の、被験体の皮膚表面上の領域におけるシワまたは窪みを低減させるための方法が本明細書中に提供され、本方法は、sNAGナノファイバーを含有する組成物を、皮膚表面の下の領域へ局所的に注射する工程を包含し、上記sNAGナノファイバーの50%よりも多くが約1〜15μmの間の長さである。
【0160】
別の特定の実施形態において、美容手順または形成外科手順の間に被験体における組織にボリュームを加えるための方法が本明細書中に提供され、本方法は、sNAGナノファイバーを含有する組成物を上記組織に投与する工程を包含し、上記sNAGナノファイバーの50%よりも多くが約1〜15μmの間の長さである。いくつかの実施形態において、美容手順または形成外科手順の間に被験体における組織にボリュームを加えるための方法が本明細書中に提供され、本方法は、sNAGナノファイバーを含有する組成物を上記組織に局所的に注射する工程を包含し、上記sNAGナノファイバーの50%よりも多くが約1〜15μmの間の長さである。
【0161】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバー組成物が、美容適用および/または外科適用のための組織フィラー(例えば真皮フィラー)として有用であることが当該分野にて知られている別の因子と一緒に処方される。例えば、上記組成物は、ヒアルロン酸、コラーゲン、ヒドロキシアパタイトカルシウム、脂質(例えば、ヒト脂質、特に、自己脂質)、ポリ乳酸、死体の真皮(例えばヒト)、ポリメチルメタクリレート、および/またはポリアルキルイミドとともに処方され得るか、あるいはこれらと組み合わせて使用され得る。なお別の実施形態において、上記sNAGナノファイバー組成物は、別の組織フィラー(例えば真皮フィラー)と一緒に処方されないか、あるいは、これと組み合わせて使用されない。一実施形態において、上記sNAGナノファイバー組成物は、ボツリヌス毒素と一緒に処方されるか、あるいは、これと組み合わせて使用される。
【0162】
[ディフェンシン]
特定の実施形態において、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物は、1つ以上のディフェンシンペプチドが発現していないかまたは発現が低レベルであるかに関連する、あるいは、1つ以上のディフェンシンペプチドをコードする遺伝子における変異/欠失/低い遺伝子コピー数(GCN)に関連する疾患を処置および/または予防するために使用される。変異しているか/欠失しているか/有しているGCNが低いか/発現していないか/発現が低いかもしくは変更されているディフェンシン遺伝子の例としては、α−ディフェンシンのいずれかが挙げられる。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物は、1つ以上のトール様レセプター(例えば、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、および/またはTLR12)が、発現していない/発現レベルが低いかもしくは変更されていることに関連する、あるいは、該トール様レセプターの変異/欠失/低GCNに関連する疾患を処置および/または予防するために使用される。なお別の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、IL−1、CEACAM3、SPAG11、SIGIRR(IL1様レセプター)、IRAK1、IRAK2、IRAK4、TBK1、TRAF6およびIKKiの1つ以上が、発現していない/発現レベルが低いかもしくは変更されていることに関連する、あるいは、IL−1、CEACAM3、SPAG11、SIGIRR(IL1様レセプター)、IRAK1、IRAK2、IRAK4、TBK1、TRAF6およびIKKiの1つ以上の変異/欠失/低GCNに関連する疾患を処置および/または予防するために使用される。
【0163】
[5.5 患者集団]
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、ナイーブな被験体(すなわち疾患または障害を有していない被験体)に投与され得る。一実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、疾患または障害に罹患する危険性があるナイーブな被験体に投与される。
【0164】
一実施形態において、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバー組成物は、疾患または障害を有すると診断されたことがある患者に投与され得る。別の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、疾患または障害の症状を1つ以上示す患者に投与され得る。特定の実施形態において、患者は、本明細書中に記載される組成物の投与の前に疾患または障害を有すると診断されている。
【0165】
他の特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、本明細書中に記載される疾患の症状(例えば、エーラー・ダンロス症候群、表皮水疱症、強皮症、骨粗鬆症、椎間板障害、椎間板変性、変形性関節症または線維症)の1つ以上を有すると診断された患者または該症状を示す患者に投与され得る。他の特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、皮膚の引っ張り強さの低下および/または皮膚の伸縮性の低下(例えば、皮膚表面におけるシワまたは窪み)と関連する状態を有する患者に投与され得る。一実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、瘢痕を有する患者に投与され得る。別の実施形態において、本明細書中に記載される粗背負物は、創傷を有さない患者に投与される。特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、創傷(例えば皮膚創傷)を有する患者に、例えば、回復の際に瘢痕化を生じる危険性がある創傷に投与され得る。特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、瘢痕化の危険性が増加している患者に投与され得る。特定の実施形態において、患者は、状態および疾患(例えば上述したように列挙される疾患の1つ)を有すると診断されるか、あるいは、本明細書中に記載される組成物の投与の前に状態および疾患の症状の1つ以上を示す。疾患は、患者の症状の評価および/または(例えば上述したような)患者の生物学的サンプルにおける病原体の検出を含む、当業者に公知の任意の方法によって診断され得る。1つの例において、本明細書中に記載される組成物は、外科医または他の医学専門家によって疾患または状態を有すると診断された患者に投与され得る。別の例において、患者は、疾患または状態の1つ以上の症状を検出の際に、本明細書中に記載される組成物を使用し得る。
【0166】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物が投与されるべき被験体は、I型コラーゲンおよび平滑筋アクチン(例えばα平滑筋アクチン)の高レベルでの発現(あるいは、他の理由、これらの高い細胞内含有量または組織含有量)を有する被験体である。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される組成物が投与されるべき被験体は、I型コラーゲン(コラーゲン含有量の総量によって測定されたもの)の高レベルでの発現(あるいは、他の理由、これらの高い細胞内含有量または組織含有量)を有する被験体である。特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物が投与されるべき被験体は、エラスチンタンパク質またはIII型コラーゲンが発現していない被験体か、これらのタンパク質の発現が低レベルである被験体か、あるいはこれらのタンパク質における変異/欠失(あるいは、他の理由、これらの高い細胞内含有量または組織含有量)を有する被験体である。
【0167】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物が投与されるべき被験体は、1つ以上のディフェンシンペプチドが発現していない被験体か、このタンパク質の発現が低レベルである被験体か、1つ以上のディフェンシンペプチドをコードする遺伝子における変異/欠失を有する被験体である。一実施形態において、本明細書中に記載される組成物が投与されるべき被験体は、1つ以上のα−ディフェンシン(例えばDEFA1、DEFA1B、DEFA3、DEFA4、DEFA5、DEFA6)、1つ以上のβ−ディフェンシン(例えばDEFB1、DEFB2、DEFB4、DEFB103A、DEFB104A、DEFB105B、DEFB107B、DEFB108B、DEFB110、DEFB112、DEFB114、DEFB118、DEFB119、DEFB123、DEFB124、DEFB125、DEFB126、DEFB127、DEFB128、DEFB129、DEFB131、DEFB136)、および/または1つ以上のθ−ディフェンシン(例えばDEFT1P)が発現していない被験体か、これらのタンパク質の発現が低レベルである被験体か、これらのタンパク質の発現レベルが変更された被験体である。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される組成物が投与されるべき被験体は、DEFA1、DEFA3、DEFA4、DEFA5、DEFB1、DEFB3、DEFB103A、DEFB104A、DEFB108B、DEFB112、DEFB114、DEFB118、DEFB119、DEFB123、DEFB124、DEFB125、DEFB126、DEFB128、DEFB129およびDEFB131の1つ以上が発現していない被験体か、これらの発現が低レベルである被験体か、これらの発現レベルが変更された被験体である。特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物が投与されるべき被験体は、トールレセプター(例えばTLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11および/またはTLR12)の1つ以上が発現していない被験体か、これらの発現が低レベルである被験体か、これらの発現レベルが変更された被験体である。なお他の実施形態において、本明細書中に記載される組成物が投与されるべき被験体は、IL−1、CEACAM3、SPAG11、SIGIRR(IL1様レセプター)、IRAK1、IRAK2、IRAK4、TBK1、TRAF6およびIKKiの1つ以上が発現していない被験体か、これらの発現が低レベルである被験体か、これらの発現レベルが変更された被験体である。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される組成物が投与されるべき被験体は、IRAK2、SIGIRR、TLR1、TLR2、TLR4、TLR7、TLR8、TLR10およびTRAF6の1つ以上が発現していない被験体か、これらの発現が低レベルである被験体か、これらの発現レベルが変更された被験体である。
【0168】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物が投与されるべき被験体は、AKT1の発現レベルが低いか、正常であるか、または高い被験体である。特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物が投与されるべき被験体は、AKT1の発現レベルが正常であるか、または高い被験体である。特定の実施形態において、明細書中に記載される組成物が投与されるべき被験体は、検出可能なレベルのAkt1タンパク質を有する被験体である。特定の実施形態において、明細書中に記載される組成物が投与されるべき被験体は、AKT1の発現またはAkt1タンパク質のレベルを減少させることが知られている因子を用いる治療を行っていない被験体である。
【0169】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物が投与されるべき被験体は、組織(例えば皮膚)の引っ張り強さの低下、組織(例えば皮膚)の伸縮性の低下、組織(例えば皮膚)におけるコラーゲンの異常な(例えばまとまりのない)整列、および/または組織(例えば皮膚)における筋線維芽細胞含有量の増加を有する被験体である。一実施形態において、上記被験体は、組織(例えば皮膚)の引っ張り強さが低下している。一実施形態において、上記被験体は、組織(例えば皮膚)の伸縮性が低下している。一実施形態において、上記被験体は、組織(例えば皮膚)におけるコラーゲンの異常な(例えばまとまりのない)整列を有している。一実施形態において、上記被験体は、組織(例えば皮膚)における筋線維芽細胞含有量が増加している。組織の特徴または特性における増加または減少は、その組織の正常な特徴または特性の1.25倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍または10倍の差異である。ここで、組織の「正常な」特徴または特性は、以下である:(i)症状を示さないかまたは処置されるべき状態および疾患を有すると診断されていない被験体において見出されることが知られている組織の特徴または特性の平均;(ii)症状を示さないかまたは処置されるべき状態および疾患を有すると診断されていない、3名、5名、10名、20名、25名、50名またはそれ以上の被験体において検出される組織の特徴または特性の平均;および/または(iii)上記状態および疾患の開始前に本明細書中に記載される組成物が投与される被験体において検出される組織の特徴または特性。
【0170】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、エーラー・ダンロス症候群を有する(例えばエーラー・ダンロス症候群を有すると診断された)患者、あるいは、エーラー・ダンロス症候群の1つ、2つまたはそれ以上の症状を示す患者に投与される。
【0171】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、表皮水疱症を有する(例えば表皮水疱症を有すると診断された)患者、あるいは、表皮水疱症の1つ、2つまたはそれ以上の症状を示す患者に投与される。
【0172】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、シワおよび/または皮膚の窪みを有する患者に投与される。
【0173】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、美容手順または形成外科を受けている患者に投与される。特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、組織フィラー(例えば柔組織フィラーまたは硬組織フィラー)の必要性がある患者に投与される。特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、真皮フィラーの必要性がある患者に投与される。特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、組織再生の必要性がある(例えば、手術または疾患に起因して欠失または喪失した組織を修復する必要性がある)患者に投与される。
【0174】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、組織再生(例えば、軟組織の再生または硬組織の再生)の必要性がある患者に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、軟組織(例えば皮膚、結合組織または筋肉)の再生の必要性がある患者に投与される。一実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、硬組織(例えば骨)の再生の必要性がある患者に投与される。
【0175】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、瘢痕(例えば皮膚創傷のような創傷によって生じる瘢痕)を有する患者に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、皮膚創傷(例えば治癒の際に瘢痕化が生じる危険性のある創傷)のような創傷を有する患者に投与される。
【0176】
他の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、創傷(例えば皮膚創傷)を有する患者に投与されない。
【0177】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、強皮症を有する(例えば強皮症を有すると診断された)患者、あるいは強皮症の症状の1つ、2つまたはそれ以上を示す患者に投与される。
【0178】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、骨粗鬆症を有する(例えば骨粗鬆症を有すると診断された)患者、あるいは骨粗鬆症の症状の1つ、2つまたはそれ以上を示す患者に投与される。
【0179】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、椎間板障害を有する(例えば椎間板障害を有すると診断された)患者、あるいは椎間板障害の症状の1つ、2つまたはそれ以上を示す患者に投与される。
【0180】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、椎間板変性を有する(例えば椎間板変性を有すると診断された)患者、あるいは椎間板変性の症状の1つ、2つまたはそれ以上を示す患者に投与される。
【0181】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、変形性関節症を有する(例えば変形性関節症を有すると診断された)患者、あるいは変形性関節症の症状の1つ、2つまたはそれ以上を示す患者に投与される。
【0182】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、線維症を有する(例えば線維症を有すると診断された)患者、あるいは線維症の症状の1つ、2つまたはそれ以上を示す患者に投与される。いくつかの実施形態において、処置された患者は、炎症性腸疾患、あるいは炎症性腸疾患と関連する線維症を有さない。
【0183】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、創傷と関連する癒着を有する(例えば創傷と関連する癒着を有すると診断された)患者、あるいは創傷と関連する癒着の危険性がある患者に投与される。創傷は、皮膚創傷でも手術創でもあり得る。
【0184】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、創傷と関連する線維症を有する(例えば創傷と関連する線維症を有すると診断された)患者、あるいは創傷と関連する線維症の危険性がある患者に投与される。創傷は、皮膚創傷でも手術創でもあり得る。
【0185】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、免疫不全の患者、および/または、急性もしくは慢性の疾患もしくは感染症にかかりやすい患者(例えばHIV陽性患者、または癌処置もしくは移植手順の結果として免疫不全になった患者)に投与される。一実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、嚢胞性線維症を有すると診断された患者に投与される。
【0186】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、状態および疾患を有する患者に、その状態および疾患が明示される前、またはその状態および疾患が重篤になる前(例えば、その患者が処置または入院を必要とする前)に、投与される。一実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、疾患を有する患者に、その疾患、障害または状態が明示された後、またはその状態および疾患が重篤になった後(例えば、その患者が処置または入院を必要とする後)に、投与される。
【0187】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、動物に投与される。特定の実施形態において、上記動物はトリである。特定の実施形態において、上記動物はイヌである。特定の実施形態において、上記動物はネコである。特定の実施形態において、上記動物はウマである。特定の実施形態において、上記動物はウシである。特定の実施形態において、上記動物は哺乳動物(例えば、ウマ、ブタ、マウスまたは霊長類(好ましくはヒト))である。
【0188】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、ヒト成人に投与される。特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、50歳を超えたヒト成人に投与される。特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物が投与されるべき被験体は、高齢のヒト成人である。
【0189】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、ヒト幼児に投与される。特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、ヒト小児に投与される。特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、ヒト乳児に投与される。特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、早産のヒト乳児に投与される。
【0190】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、創傷(例えば開放創(切開、裂傷、貫通、すり傷または火傷))を処置するために被験体に投与されない。
【0191】
[5.6 投与の様式]
特定の実施形態において、状態および疾患またはその症状を処置および/または予防する方法が、本明細書中に記載され、sNAGナノファイバーを含有する組成物が、そのような処置の必要性がある患者に局所的に投与される。
【0192】
他の実施形態において、状態および疾患またはその症状を処置および/または予防する方法が、本明細書中に記載され、sNAGナノファイバーを含有する組成物が、そのような処置の必要性がある患者の器官または組織に局所的に(すなわち、非全身性に)注射される。上記組成物は、軟組織または硬組織に局所的に注射され得る。例えば、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、骨に(例えば骨密度が低い領域に)、あるいは椎間板に(例えばL4とL5との間に)注射され得る。他の例において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、骨の表面に、椎間板の表面に投与され得る。いくつかの実施形態において、組織を再生するため、組織にボリュームを加えるため、あるいは、皮膚の表面におけるシワまたは窪みを処置または予防するための方法が本明細書中に記載される。
【0193】
いくつかの実施形態において、状態および疾患またはその症状を処置および/または予防する方法が、本明細書中に記載され、sNAGナノファイバーを含有する組成物が、そのような処置の必要性がある患者における表面組織(例えば皮膚表面または粘膜表面)に局所的に投与される。別の実施形態において、状態および疾患またはその症状を処置および/または予防する方法が、本明細書中に記載され、sNAGナノファイバーを含有する組成物が、そのような処置の必要性がある患者における(例えば手術の後の)内部の器官または組織に局所的に投与される。
【0194】
いくつかの実施形態において、有効量のsNAGナノファイバーおよび/またはsNAGナノファイバー組成物が被験体に投与される。
【0195】
いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、皮膚に(例えば、状態および疾患の症状がある部位に)局所的に投与される。なお他の実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、状態および疾患の部位(例えば状態および疾患の症状がある部位)に、あるいはその部位の周囲に、局所的に投与される。なお他の実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、状態および疾患の部位(例えば状態および疾患の症状がある部位)に近接して適用される。なお他の実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、状態および疾患の危険性が高い部位(例えば状態および疾患の症状がある部位)に局所的に投与される。
【0196】
本明細書中に記載されるsNAGナノファイバー組成物は、局所投与に好適な多くの手段のいずれかによって投与され得る。このような手段は当業者によく知られており、吸入、経鼻腔、経膣、経直腸、経頬、もしくは経舌下による、皮膚に局所的なもの、身体の他の表面(例えば粘膜表面)に局所的なものに限定されない。局所投与の様式は、処置または予防されるべき状態および疾患に依存して変動し得る。sNAGナノファイバー組成物は、種々のタイプの局所投与のために処方され得る。
【0197】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、局所的に、例えば、そのような処置の必要性がある患者の皮膚に、または、そのような処置の必要性がある患者の別の組織に、適用される。いくつかの実施形態において、上記組成物は、状態および疾患(またはその症状)の部位に、および/または、状態および疾患(またはその症状)の部位に近接して、直接的に適用され得る。いくつかの実施形態において、上記組成物は、状態および疾患が潜在的に発達している部位(例えば開放創)に、直接的に適用され得る。
【0198】
いくつかの実施形態において、状態および疾患またはその症状を処置および/または予防するための方法が本明細書中に記載され、ここで、sNAGナノファイバーを含有する組成物が、そのような処置の必要性がある患者に全身性に(例えば非経口で)投与される。
【0199】
特定の実施形態において、状態および疾患またはその症状を処置および/または予防するための方法が本明細書中に記載され、ここで、sNAGナノファイバーを含有する組成物が、そのような処置の必要性がある患者に、経口投与される。
【0200】
特定の実施形態において、状態および疾患またはその症状を処置および/または予防するための方法が本明細書中に記載され、ここで、sNAGナノファイバーを含有する組成物が、そのような処置の必要性がある患者に筋肉内投与される。特定の実施形態において、組織を再生するため、組織にボリュームを加えるため、あるいは、皮膚表面におけるシワまたは窪みを処置および/または予防するための方法が本明細書中に記載され、ここで、sNAGナノファイバーを含有する組成物が、そのような処置の必要性がある患者に筋肉内投与される。
【0201】
特定の実施形態において、状態および疾患またはその症状を処置および/または予防するための方法が本明細書中に記載され、ここで、sNAGナノファイバーを含有する組成物が、そのような処置の必要性がある患者に静脈内投与される。
【0202】
特定の実施形態において、状態および疾患またはその症状を処置および/または予防するための方法が本明細書中に記載され、ここで、sNAGナノファイバーを含有する組成物が、そのような処置の必要性がある患者に直腸内投与される。
【0203】
特定の実施形態において、状態および疾患またはその症状を処置および/または予防するための方法が本明細書中に記載され、ここで、sNAGナノファイバーを含有する組成物が、そのような処置の必要性がある患者に皮下に投与される。特定の実施形態において、組織を再生するため、組織にボリュームを加えるため、あるいは、皮膚表面におけるシワまたは窪みを処置および/または予防するための方法が本明細書中に記載され、ここで、sNAGナノファイバーを含有する組成物が、そのような処置の必要性がある患者に皮下に投与される。
【0204】
特定の実施形態において、状態および疾患またはその症状を処置および/または予防するための方法が本明細書中に記載され、ここで、sNAGナノファイバーを含有する組成物が、そのような処置の必要性がある患者に皮内に投与される。特定の実施形態において、組織を再生するため、組織にボリュームを加えるため、あるいは、皮膚表面におけるシワまたは窪みを処置および/または予防するための方法が本明細書中に記載され、ここで、sNAGナノファイバーを含有する組成物が、そのような処置の必要性がある患者に皮内に投与される。
【0205】
他の実施形態において、状態および疾患またはその症状を処置および/または予防するための方法が本明細書中に記載され、ここで、sNAGナノファイバーを含有する組成物が、そのような処置の必要性がある患者に全身性に(例えば非経口で)投与されない。
【0206】
他の実施形態において、状態および疾患またはその症状を処置および/または予防するための方法が本明細書中に記載され、ここで、sNAGナノファイバーを含有する組成物が、そのような処置の必要性がある患者に局所的に注射される。特定の実施形態において、組織を再生するため、組織にボリュームを加えるため、あるいは、皮膚表面におけるシワまたは窪みを処置および/または予防するための方法が本明細書中に記載され、ここで、sNAGナノファイバーを含有する組成物が、そのような処置の必要性がある患者に局所注射によって投与される。他の実施形態において、皮膚表面におけるシワまたは窪みを処置または予防するための方法が本明細書中に記載され、ここで、sNAGナノファイバーを含有する組成物が、そのような処置の必要性がある患者の皮膚表面の下のシワまたは窪みへの直接的な局所注射によって投与される。
【0207】
一実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、患者の皮膚に適用される。例えば、このような組成物は、皮膚の状態および疾患を処置または予防するために、患者の皮膚に局所的に適用され得る。別の実施形態において、上記組成物は、患者の皮膚の下の領域への直接的な(例えば、再生するためまたはボリュームを加えるための、皮膚の下の領域への直接的な)注射によって適用され得る。
【0208】
別の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、患者の粘膜表面に局所的に提供され得る。例えば、このような組成物は、口腔または歯茎の状態および疾患を処置または予防するために口腔粘膜に局所的に適用され得る。
【0209】
局所投与のための、上に列挙された方法は、懸濁物(例えば、濃厚な懸濁物)、クリーム、軟膏、ゲル、溶液、膜、スプレー、ペースト、パウダー、もしくは本明細書中に記載される他の任意の処方物または当該分野で公知のものの形態でのsNAGナノファイバーの投与を含み得る。sNAGナノファイバーはまた、例えば、患者の皮膚上に局在する疾患または感染を処置するために、着衣または包帯に適用され得る。特定の実施形態において、sNAGナノファイバーを含有する組成物は、硬くないか、または、隔膜が形成されていない。
【0210】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、スプレーとして適用され得る。
【0211】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、シリンジ、あるいは該組成物の患者への局所送達に好適な別のタイプのアプリケータ(例えば、スパーテル、綿棒、スクイーズチューブのようなチューブ)を用いて局所的に適用され得る。例えば、本明細書中に記載される組成物は、懸濁物(例えば濃厚な懸濁物)、溶液、クリーム、軟膏、またはゲルとして処方され、患者の皮膚、粘膜または他の組織表面に、アプリケータ(例えばシリンジ)を介して、局所的に投与され得る。
【0212】
別の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、外科手順の部位で適用され得る。例えば、このような組成物は、スプレーされても、クリーム、懸濁物(例えば濃厚な懸濁物)、溶液、軟膏、ゲル、膜またはパウダーとして適用されても、外科手順に適用されるか外科手順に適用された組織または器官の表面上にコートされてもよい。一実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、外科的な切開の部位で、摘出された組織の部位で、あるいは外科的な縫い目または縫合の部位で適用される。本明細書中に記載される組成物のこのような投与は、例えば、組織の線維化を処置または予防し得る。例えば、本明細書中に記載される組成物は、線維症の高い危険性をもたらすことが知られている外科手順の間または後に使用され得る。本明細書中に記載される組成物は、上に列挙したかまたは他の外科手順の部位で適用され得る。
【0213】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、シリンジを用いる注射によって適用され得る。
【0214】
なお他の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、患者における状態および疾患を処置または予防するために、患者においてまたは患者に挿入されて使用されるデバイス(例えば、口腔衛生製品、カテーテル、外科用器具または他の製品)の上にコーティングされ得る。
【0215】
いくつかの実施形態において、本明細書にて企図される方法は、患者における疾患の検出/診断を含む工程を包含する。いくつかの実施形態において、検出/診断は、患者の生物学的サンプルにおける疾患についての試験またはアッセイを含む。他の実施形態において、診断は、患者が疾患の1つ以上の症状を有するか否かを評価することを含む。
【0216】
本明細書中に記載される組成物は、徐放性特性を示し得る、および/または、そのような組成物の持続的放出を生じる処方物中にて投与され得る。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバーは、前出の5.1の項で記載したような時間にわたって生分解し、sNAGナノファイバーのこれらの特性は、本明細書中に記載される組成物の徐放性を導き得るか、そのような徐放性に寄与し得る。なお別の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、徐放能を示すように、当該分野で公知の任意の方法を用いて処方される。本明細書中に記載される組成物は、この組成物の患者への投与の後の6時間、12時間、18時間、24時間(1日間)、2日間、3日間、5日間、7日間(1週間)、10日、14日(2週間)、3週間または4週間に等しいかまたはそれよりも長い期間にわたって徐放性を示し得る。
【0217】
企図される処置レジメンは、sNAGナノファイバー組成物の単回用量もしくは単回適用、sNAGナノファイバー組成物の二回用量もしくは二回適用、またはsNAGナノファイバー組成物の複数回用量もしくは複数回適用のレジメンを含む。単回用量もしくは単回適用は、時間ごと、日ごと、週ごとまたは月ごとに投与され得る。例えば、単回用量のsNAGナノファイバー組成物は、一日に1回、2回、3回、4回、週に1回、2回、3回、1日おきに、2週に1回、3週に1回、4週に1回、月に1回、あるいは2月に1回投与され得る。
【0218】
sNAGナノファイバー組成物は、2日間、3日間、4日間、5日間、1週間、2週間、3週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、9ヶ月間、1年間、1.5年間、2年間、2.5年間、3年間、4年間、5年間、7年間、10年間、またはそれ以上に等しいかまたはそれよりも長い期間にわたって投与され得る。一実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、処置の持続時間の間に、副作用を何ら引き起こさないか、軽度な副作用のみを引き起こす。別の実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、過敏(例えば中程度または重篤な過敏)またはアレルギー(例えば中程度または重篤なアレルギー)を引き起こさない。
【0219】
上記組成物中のsNAGナノファイバーの濃度は、変動してもよい。一般に、有効量のsNAGナノファイバーが、本明細書中に記載される状態または疾患を処置するために本明細書中に記載される組成物において使用される。有効量は、本明細書中に記載される1つ以上の硬化を達成するに十分な量であり、例えば、状態および疾患の1つ以上の症状を低減させるか全滅させるに十分な量である。例えば、組成物は、患者への局所送達に好適な形態にて、組成物の用量/適用あたり、約0.2〜20mg/cm
2のsNAGナノファイバーを含み得る。特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、患者への局所送達に好適な形態にて、組成物の用量/適用あたり、約0.25〜20mg/cm
2、約0.5〜20mg/cm
2、約1〜20mg/cm
2、約1〜15mg/cm
2、約1〜12mg/cm
2、約1〜10mg/cm
2、約1〜8mg/cm
2、約1〜5mg/cm
2、約2〜8mg/cm
2、または約2〜6mg/cm
2のsNAGナノファイバーを含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、患者への局所送達に好適な形態にて、組成物の用量/適用あたり、約5〜50mg/mLのsNAGナノファイバーを含み得る。特定の実施形態において、本明細書中に記載の組成物は、患者への局所送達に好適な形態にて、組成物の用量/適用あたり、約5〜40mg/mL、約5〜35mg/mL、約10〜50mg/mL、約10〜40mg/mL、約10〜35mg/mL、約10〜30mg/mL、約15〜40mg/mL、約15〜35mg/mL、約15〜30mg/mL、または約20〜30mg/mLのsNAGナノファイバーを含み得る。特定の実施形態において、本明細書中に記載の組成物は、患者への局所送達に好適な形態にて、組成物の用量/適用あたり、約10mg/mL、約12mg/mL、約15mg/mL、約20mg/mL、約25mg/mLまたは約30mg/mLのsNAGナノファイバーを含み得る。特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、患者において処置されるべき表面(例えば皮膚、粘膜表面または他の組織の表面)の0.5cm
2〜1cm
2あたり、約50〜100μL、約50〜200μL、約50〜250μL、約50〜300μL、約50〜350μL、約50〜400μL、約50〜450μL、約50〜500μL、約100〜200μL、約100〜300μL、約100〜400μL、約100〜500μLの範囲の量の、全体の溶液または懸濁物(sNAGナノファイバーを含む)を含み得る。全体の溶液または懸濁物は、生理食塩水、緩衝液、溶液(例えばHank緩衝化溶液)、または任意の他の生理学的に適合性な溶液を含み得る。
【0220】
他の実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、患者への局所注射(例えば皮内(intradermal)注射、皮内(intracutaneous)注射または筋肉内注射)による投与に好適な形態にて、組成物の用量/適用あたり、約5mg/mLのsNAGナノファイバーを含み得る。特に、sNAGナノファイバー組成物は、局所注射による投与に好適な形態にて、組成物の用量/適用あたり、約5mg/mL、約6mg/mL、約7mg/mL、約7.5mg/mL、約8mg/mL、約9mg/mL、約10mg/mL、約11mg/mL、約12mg/mL、約12.5mg/mL、約13mg/mL、約14mg/mL、約15mg/mL、約16mg/mL、約17mg/mL、約17.5mg/mL、約18mg/mL、約19mg/mL、約20mg/mL、約21mg/mL、約22mg/mL、約23mg/mL、約24mg/mL、約25mg/mL、約26mg/mL、約27mg/mL、約28mg/mL、約29mg/mL、または約30mg/mLのsNAGナノファイバーを含み得る。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、患者への局所注射による投与に好適な形態にて、組成物の用量/適用あたり、約7.5mg/mL〜25mg/mLのsNAGナノファイバーを含み得る。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、患者への局所注射による投与に好適な形態にて、組成物の用量/適用あたり、約10mg/mL〜20mg/mLのsNAGナノファイバーを含み得る。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、患者への局所注射による投与に好適な形態にて、組成物の用量/適用あたり、約10mg/mL、約15mg/mL、または約20mg/mLのsNAGナノファイバーを含み得る。
【0221】
他の実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、患者への局所送達に好適な形態にて、組成物の用量/適用あたり、約10mg/mL〜50mg/mLのsNAGナノファイバーを含み得る。特に、sNAGナノファイバー組成物は、患者への局所送達に好適な形態にて、組成物の用量/適用あたり、約0.1mg/mL、約0.5mg/mL、約1mg/mL、約2mg/mL、約3mg/mL、約4mg/mL、約5mg/mL、約6mg/mL、約7mg/mL、約7.5mg/mL、約8mg/mL、約9mg/mL、約10mg/mL、約11mg/mL、約12mg/mL、約12.5mg/mL、約13mg/mL、約14mg/mL、約15mg/mL、約16mg/mL、約17mg/mL、約17.5mg/mL、約18mg/mL、約19mg/mL、約20mg/mL、約21mg/mL、約22mg/mL、約23mg/mL、約24mg/mL、約25mg/mL、約26mg/mL、約27mg/mL、約28mg/mL、約29mg/mL、約30mg/mL、約31mg/mL、約32mg/mL、約33mg/mL、約34mg/mL、約35mg/mL、約36mg/mL、約37mg/mL、約38mg/mL、約39mg/mL、約40mg/mL、約41mg/mL、約42mg/mL、約43mg/mL、約44mg/mL、約45mg/mL、約46mg/mL、約47mg/mL、約48mg/mL、約49mg/mL、または約50mg/mLのsNAGナノファイバーを含み得る。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、患者への局所送達に好適な形態にて、組成物の用量/適用あたり、約0.5mg/mL〜50mg/mL、約0.5mg/mL〜30mg/mL、約1mg/mL〜50mg/mL、約1mg/mL〜40mg/mL、約1mg/mL〜30mg/mL、約5mg/mL〜30mg/mL、約5mg/mL〜20mg/mL、約5mg/mL〜25mg/mL、または約10mg/mL〜20mg/mLのsNAGナノファイバーを含み得る。
【0222】
他の実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、患者への局所送達に好適な形態にて、組成物の用量/適用あたり、約0.1mg/cm
2〜10mg/cm
2のsNAGナノファイバーを含み得る。特に、sNAGナノファイバー組成物は、患者への局所送達に好適な形態にて、組成物の用量/適用あたり、約0.1mg/cm
2、約0.5mg/cm
2、約0.75mg/cm
2、約1mg/cm
2、約2mg/cm
2、約2.5mg/cm
2、約3mg/cm
2、約4mg/cm
2、約5mg/cm
2、約6mg/cm
2、約7mg/cm
2、約7.5mg/cm
2、約8mg/cm
2、約9mg/cm
2、または約10mg/cm
2のsNAGナノファイバーを含み得る。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、患者への局所送達に好適な形態にて、組成物の用量/適用あたり、約0.5mg/cm
2〜10mg/cm
2、約0.75mg/cm
2〜7.5mg/cm
2、約1mg/cm
2〜7.5mg/cm
2、または約1mg/cm
2〜5mg/cm
2のsNAGナノファイバーを含み得る。
【0223】
[5.7 組合せ療法]
種々の実施形態において、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物は、1つ以上の他の治療と組み合わせて被験体に投与され得る。この1つ以上の他の治療は、疾患の処置または予防に有利であり得、あるいは、症状、または状態および疾患と関連する症状を改善し得る。特定の実施形態において、上記治療は、少なくとも5分間空けて、少なくとも30分間空けて、1時間空けて、約1時間空けて、約1時間〜約2時間空けて、約2時間〜約3時間空けて、約3時間〜約4時間空けて、約4時間〜約5時間空けて、約5時間〜約6時間空けて、約6時間〜約7時間空けて、約7時間〜約8時間空けて、約8時間〜約9時間空けて、約9時間〜約10時間空けて、約10時間〜約11時間空けて、約11時間〜約12時間空けて、約12時間〜18時間空けて、18時間〜24時間空けて、24時間〜36時間空けて、36時間〜48時間空けて、48時間〜52時間空けて、52時間〜60時間空けて、60時間〜72時間空けて、72時間〜84時間空けて、84時間〜96時間空けて、96時間〜120時間空けて、投与される。特定の実施形態において、2つ以上の治療が同一の特許出願(patent visit)内で投与される。
【0224】
特定の実施形態において、1つ以上の治療は手術である。特定の実施形態において、手術が、患者における器官または組織に対して実施され、本明細書中に記載される組成物が、手術の前、最中および/または後に操作部位(例えば創傷部位)に投与される。
【0225】
特定の実施形態において、手術は、固形腫瘍または皮膚がんの全てまたは一部を取り除くために実施され、本明細書中に記載される組成物が、手術の前、最中および/または後に腫瘍の部位に投与される。特定の実施形態において、1つ以上の治療は放射線療法である。
【0226】
特定の実施形態において、1つ以上の治療は抗ウイルス剤または抗菌剤である。当業者によく知られている任意の抗ウイルス剤は、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物と組み合わせて使用され得る。sNAGナノファイバーと組み合わせて使用され得る抗ウイルス剤および抗菌剤は、WO 2011/130646およびWO 2012/142581に記載されており、これらの各々はその全体が本明細書中に参考として援用される。
【0227】
他の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、任意のさらなる抗ウイルス剤および抗菌剤を含まない。一実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、抗生物質を含まない。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバーは、1つ以上の抗ウイルス剤および/または抗菌剤と組み合わせて被験体に投与されない。一実施形態において、sNAGナノファイバーは、1つ以上の抗生物質と組み合わせて被験体に投与されない。一実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、亜鉛を含まない、および/または、亜鉛と組み合わせて被験体に投与されない。
【0228】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物と組み合わせて使用される治療は、抗炎症剤である。抗炎症剤の非限定的な例としては、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)(例えば、セレコキシブ(CELEBREX
TM)、ジクロフェナク(VOLTAREN
TM)、エトドラク(LODINE
TM)、フェノプロフェン(NALFON
TM)、インドメタシン(INDOCIN
TM)、ケトララック(TORADOL
TM)、オキサプロジン(DAYPRO
TM)、ナブメントン(RELAFEN
TM)、スリンダック(CLINORIL
TM)、トルメンチン(TOLECTIN
TM)、ロフェコキシブ(VIOXX
TM)、ナプロセン(ALEVE
TM、NAPROSYN
TM)、ケトプロフェン(ACTRON
TM)およびナブメトン(RELAFEN
TM))、ステロイド抗炎症剤(例えば、グルココルチコイド、デキサメタゾン(DECADRON
TM)、コルチコステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン(MEDROL
TM))、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン(PREDNISONE
TMおよびDELTASONE
TM)およびプレドニゾロン(PRELONE
TMおよびPEDIAPRED
TM))、抗コリン作動薬(例えば、硫酸アトロピン、硝酸メチルアトロピンおよびイプラトロピウムブロミド(ATROVENT
TM))、β2−アゴニスト(例えば、アブテロール(VENTOLIN
TMおよびPROVENTIL
TM)、ビトルテロール(TORNALATE
TM)、レバルブテロール(XOPONEX
TM)、メタプロテレノール(ALUPENT
TM)、ピルブテロール(MAXAIR
TM)、ターブトライン(BRETHAIRE
TMおよびBRETHINE
TM)、アルブテロール(PROVENTIL
TM、REPETABS
TMおよびVOLMAX
TM)、フォルモテロール(FORADIL AEROLIZER
TM)およびサルメテロール(SEREVENT
TMおよびSEREVENT DISKUS
TM))、ならびに、メチルキサンチン(例えば、テオフィリン(UNIPHYL
TM、THEO−DUR
TM、SLO−BID
TMおよびTEHO−42
TM))が挙げられる。
【0229】
いくつかの実施形態において、本命視書中に記載されるsNAGナノファイバーと組み合わせて使用される治療またはさらなる因子は、組織フィラー(例えば真皮フィラー)である。さらなる組織フィラーは、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポリ乳酸、ヒドロキシアパタイトカルシウム、ppリメチルメタクリレート(PMMA)、またはポリアルキルイミドであり得る。組織フィラーはまた、ヒト脂肪(例えば自己のヒト脂肪)であり得る。いくつかのこれらの実施形態において、さらなる組織フィラーは、sNAGナノファイバーと一緒に1つの組成物(すなわち、sNAGナノファイバーおよびさらなる組織フィラーを含む組成物)の中に処方され得る。一実施形態において、コラーゲンが、sNAGナノファイバーと一緒に処方される。一実施形態において、ヒアルロン酸が、sNAGナノファイバーと一緒に処方される。一実施形態において、ヒト脂肪が、sNAGナノファイバーと一緒に処方される(このような実施形態において、組合せ処方物が、患者への投与の前に医師によって調製されてもよい。)。なお別の実施形態において、sNAGナノファイバーは、別の組織フィラーと組み合わせて(例えば、別の組織フィラーの前に、同時に、または後に)、別の組織フィラーとともに1つの組成物中に処方されることなく投与され得る。
【0230】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物と組み合わせて使用される治療またはさらなる因子は、ボツリヌス毒素(例えば、BOTOX
TMまたはDTSPORT
TM)である。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバーはボツリヌス毒素と組み合わせて(例えばボツリヌス毒素の前に、同時にまたは後に)、ボツリヌス毒素とともに1つの組成物中に処方されることなく投与され得る。
【0231】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物と組み合わせて使用される治療は、美容手順である。例えば、美容手順は、ケミカルピールまたはレーザー処置であり得る。一実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、ケミカルピールまたはレーザー処置(例えばレーザーでの皮膚再表面化(resurfacing))の後に適用され得る。別の実施形態において、sNAGナノファイバー組成物は、ケミカルピールまたはレーザー処置(例えばレーザーでの皮膚再表面化)と同時に、あるいはその間に適用され得る。
【0232】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物と組み合わせて使用される治療は、形成外科手順である。例えば、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物は、組織フィラー処置を必要とする形成外科手順における組織フィラーとして使用され得る。別の例において、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物は、瘢痕化、癒着または線維化を防ぐための形成外科手順の後に局所的に適用され得る。
【0233】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物と組み合わせて使用される治療は、痛みに対する医薬(例えば鎮痛剤)である。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバーまたはその組成物と組み合わせて使用される治療は、熱に対する医薬である。
【0234】
[5.8 キット]
本明細書中に記載されるsNAGナノファイバー組成物の1つ以上を備える薬学的なパックまたはキットがまた、本明細書中に提供される。パックまたはキットは、本明細書中に記載される組成物を含む1以上の成分で充填された1つ以上の容器を備えている。上記組成物は、好ましくは、シールされた、防水の、滅菌されたパッケージ内に含まれ、これは、夾雑が生じることなく組成物の取り出しを容易にする。容器を構成する材料は、アルミホイル、プラスチック、または容易に滅菌される別の慣用的な材料であり得る。キットは、組成物の単回の投与または複数回の投与のための材料を含み得、好ましくは、各投与のための材料は、別々で、防水で滅菌されたパッケージにて提供される。
【0235】
別の実施形態において、二重の区画を有する容器が提供される。第1の区画は、上述した本明細書中に記載されるsNAGナノファイバー組成物のいずれかを含み、第2の区画は、別の活性因子(例えば、sNAGナノファイバー組成物と組み合わせて使用されるべき別の因子)を含む(例えば、sNAGナノファイバーと組み合わせて使用され得るさらなる因子について記載された、上の項5.7を参照のこと。)。当該分野または医療分野において、第1の区画における組成物は、患者への連続的な投与のために、第2の区画におけるさらなる因子と容易に組み合わせられる。
【0236】
キットはまた、本明細書中に記載されるsNAGナノファイバー組成物の1つ以上の投与のための、あるいは、別の活性因子(例えばsNAGナノファイバー組成物と組み合わせて使用される別の因子)の投与のための、アプリケータ―を備え得る。一実施形態において、キットは、sNAGナノファイバー組成物の局所投与のためのアプリケータ―を備える。sNAGナノファイバー組成物の局所投与のためのアプリケータ―の例としては、シリンジ、スパーテル、チューブ(スクイーズチューブ)および綿棒が挙げられるがこれらに限定されない。別の実施形態において、キットは、局所注射によるsNAGナノファイバー組成物の投与のためのアプリケータ―(例えばシリンジ)を備える。
【0237】
さらに、緊急用または軍事用に設計されたキットはまた、予め滅菌された、使い捨て可能な器具(例えば、ハサミ、メス、クランプ、圧迫帯、弾性の包帯、非弾性の包帯など)を備え得る。
【0238】
通知書が、必要に応じて、製薬学または生理学の製品の製造、使用または販売を統括する政府機関によって定められた形態にて、このようなキットまたはパックに添付され。この通知書は、ヒト投与のための製造、使用または販売の期間による承認を反映している。例えば、キットは、FDA承認に関する通知書および/または使用のための指示書を備え得る。
【0239】
本明細書中に含まれるキットは、上述した適用および方法に使用され得る。
【0240】
[6.実施例]
以下の実施例は、ポリ−N−アセチル−グルコサミンナノファイバー(sNAG)による皮膚創傷の処置が、未処置の創傷と比較した瘢痕サイズの縮小、並びに抗張力および弾性の向上をもたらすことを明らかにする。本発明者らによるMassonトリクロム染色を用いたコラーゲン含量の可視化は、sNAGで処置した創傷が、コラーゲン含量の減少、および損傷を受けていない組織と同様にコラーゲン小繊維が整列したコラーゲン表現型を示すこと、を示唆した。さらに、以下の実施例は、sNAGの処置が、創傷内の平滑筋アクチンの発現を減少させることを明らかにし、筋線維芽細胞含量の減少を示唆している。総合すれば、以下の実施例1から5に示したデータは、sNAGナノファイバーによる組織の処置は、コラーゲン含量の減少、コラーゲン小繊維の適切な配列およびIII型コラーゲン発現の増加、並びに組織弾性の向上およびエラスチン含量の増加をもたらすメカニズムにより、瘢痕形成を低減させることを示唆する。
【0241】
さらに、本発明者らは、インビトロおよびインビボのsNAGナノファイバーによる処置が、上皮/間質性相互作用に関与する新規のタンパク質である、上皮間質性相互作用タンパク質1(EPSTI1)のAkt1に依存した発現の増加をもたらすことを見出した。OPSTI1、Hsp47(コラーゲンシャペロン)およびビメンチンの共染色は、適切に配列したコラーゲンを生成する細胞において、このタンパク質がアップレギュレートされることを明らかにした。本発明者らは、インビトロでの線維芽細胞の配列の調節を評価するためのフィブリンゲルを作製した。ゲル様マトリクスを2つの「ピン」を含むウエル内に形成し、これにより、ポールとポールの間に細胞を並べるようにゲルが力を付与できる中心点を提供する。本発明者らは、包埋線維芽細胞のsNAG刺激が、Akt1に依存したプロセスにより、未処置のコントロールと比較してより良い整列をもたらすことを見出した。さらに、本発明者らは、Akt1ヌル動物におけるsNAG処置は、抗張力または弾性の向上をもたらさないことを見出した。総合すると、これらのデータは、sNAGナノファイバーはAkt1依存性経路を刺激することで、皮膚創傷治癒中の、線維芽細胞の適切な配列、瘢痕の減少、および抗張力の向上をもたらすことを示唆する。
【0242】
以下に提供する実施例において用いたsNAGナノファイバー(タリデルムとしても知られる)は、珪藻由来のより長い型のファイバー(NAGとして知られる)から得られる、短い、生物分解性のpGlcNAcファイバーであり、その平均の長さは4から7μmであり、そのポリマー分子量は約60,000Daである。以下に提供する実施例において用いたsNAGナノファイバーは、Marine Polymer Technologiesによって製造されたものであり、処置のための適切なパッチに成形した。
【0243】
[6.1 実施例1:sNAGナノファイバーによる組織の抗張力および弾性の向上]
この実施例は、sNAGナノファイバーが組織の抗張力および弾性を向上させることを明らかにする。特に、この実施例は、sNAGナノファイバーによって処置した皮膚創傷が損傷を受けていない組織と同様の抗張力を示したことを実証する。この実施例はさらに、sNAGナノファイバーによる皮膚創傷の処置により、未処置の皮膚創傷と損傷を受けていないコントロールの皮膚との両方と比較して、組織の弾性が向上したことを実証する。
【0244】
[材料および方法]
8週齢〜12週齢の野生型C57B1/6マウスのオス成体8匹を、実験に用いた。そのうちの4匹に21日間損傷を与えず、コントロール群とし(野生型マウスの損傷を受けていない正常な皮膚の代表的なサンプル)、残りの4匹を実験群とした。実験群(4匹のマウス)において、脱毛によって毛を除去し、その部位を洗浄して、70% エタノールを用いて殺菌した。実験群のマウスを、O2/イソフルレン気化麻酔器(VetEquip, Inc.)を用いて麻酔した。イソフルレンは、誘発のために4%を、手術のために2%を用いた。4mm生検パンチ(Miltex)を用いて2つの完全厚皮膚創傷を形成することで、脇腹それぞれに同一の2つの創傷を形成した。一方の脇腹を、蒸留水で湿らせたsNAG薄膜(Marine Polymer Technologies, Inc.)によって処置し、また、他方の脇腹を処置せずに放置した。創傷部位をポリウレタン透明包帯(Tegaderm, 3M)で覆い、治癒するまで21日間放置した。21日目に、創傷部位(処置済および未処置)を回収し、皮膚を切り取って(15mm×7mm)均一な張力を保証した。損傷を与えていないコントロール動物からの脇腹組織を同様の方法で回収した(未処置コントロール)。
【0245】
処置済みおよび未処置の創傷の両方、ならびに損傷を与えていないコントロールの皮膚を、Instron5942歪みゲージ伸長計およびBluehill 3試験ソフトウェアを用いた抗張力および弾性試験に供した。皮膚の抗張力を、皮膚の20%が破壊される前に耐え得る相対的応力を測定することによって決定し、弾性を、mm伸長によって測定した。
【0246】
[結果および結論]
図1Aおよび1Bは、抗張力(相対的応力)および弾性の結果を示す。機械試験の分析は、WT動物のsNAGで処置した皮膚創傷の抗張力が、未処置の創傷と比較して、約40%増強したことを示す(
図1A)。さらに、sNAGで処置した創傷は、損傷を受けていないコントロールの皮膚と同レベルまで抗張力の回復を示した(
図1A)。抗張力の測定中、WT動物のsNAGで処置した皮膚創傷は、コントロールまたは未処置の対応物よりも弾性があったことに、注目した。
図1Bは、sNAG処置が、治癒組織の弾性を、未処置の皮膚創傷および損傷を与えていないコントロールの皮膚の両方と比較して、顕著に向上させたことを示す。
【0247】
[6.2 実施例2:sNAGナノファイバーによる組織のエラスチン生成の増加]
この実施例は、sNAGナノファイバーがエラスチン生成を増加させることを示す。特に、この実施例は、sNAGナノファイバーによって処置した皮膚創傷がエラスチン生成を示した一方で、未処置の創傷はエラスチン生成を示さなかったことを実証する。
【0248】
[材料および方法]
8週齢〜12週齢の野生型C57B1/6マウスのオス成体4匹を実験に用いた。脱毛によって毛を除去し、その部位を洗浄して、70% エタノールを用いて殺菌した。マウスを、O2/イソフルレン気化麻酔器(VetEquip, Inc.)を用いて麻酔した。イソフルレンは、誘発のために4%を、手術のために2%を用いた。4mm生検パンチ(Miltex)を用いて2つの完全厚皮膚創傷を形成することで、脇腹それぞれに同一の2つの創傷を形成した。一方の脇腹を、蒸留水で湿らせたsNAG薄膜 (Marine Polymer Technologies, Inc.)によって処置し、また、他方の脇腹を処置せずに放置した。創傷部位をポリウレタン透明包帯(Tegaderm, 3M)で覆い、治癒するまで10日間放置した。10日目に、創傷を4℃で一晩、4% パラホルムアルデヒド中に固定し、パラフィン包埋して、分析のために切片化した。
【0249】
損傷を与えた動物からの組織切片において、上述したように、ワンギーソン(Van Geison)染色手順によってエラスチンファイバーを染色した。簡単に言えば、切片をキシレンで清浄し、一連のグレードのアルコールから蒸留水までを通して再水和し、ヘマトキシリン(Sigma-Aldrich)で染色し、2%塩化第二鉄中で差別化し、そして洗浄した。それから、組織切片を、脱水前にワンギーソン(Van Geison)対比染色によって染色し、キシレンで清浄し、Cytoseal−XYL(Richard-Allan Scientific)で標本した。区分化した組織切片を、オリンパスBX40顕微鏡を用いて可視化し、オリンパスカメラ(Model DP25)およびDP2−BSW入力ソフトウェアを用いて記録した。
【0250】
[結果および結論]
図2は、処置した動物からの創傷が、新たに治癒した部分においてエラスチン生成(薄い黒の構造によって可視化した)を示した一方で、処置していない創傷はエラスチン生成を示さなかったことを示す。
【0251】
[6.3 実施例3:sNAGナノファイバーによる組織の瘢痕の縮小]
この実施例は、sNAGナノファイバーが組織の瘢痕を縮小させることを示す。特に、この実施例は、sNAGナノファイバーによって処置した皮膚創傷の瘢痕サイズが、未処置の創傷の瘢痕サイズと比較して、約2倍の縮小を示したことを実証する。
【0252】
[材料および方法]
8週齢〜12週齢の野生型C57B1/6マウスのオス成体5匹を、実験に用いた。脱毛によって毛を除去し、その部位を洗浄して、70% エタノールを用いて殺菌した。マウスを、O2/イソフルレン気化麻酔器(VetEquip, Inc.)を用いて麻酔した。イソフルレンは、誘発のために4%を、手術のために2%を用いた。4mm生検パンチ(Miltex)を用いて2つの完全厚皮膚創傷を形成することで、脇腹それぞれに同一の2つの創傷を形成した。一方の脇腹を、蒸留水で湿らせたsNAG薄膜(Marine Polymer Technologies, Inc.)によって処置し、また、他方の脇腹を処置せずに放置した。創傷部位をポリウレタン透明包帯(Tegaderm, 3M)で覆い、治癒するまで21日間放置した。21日目に、動物を安楽死させ、キャリパーを用いて瘢痕を測定した。
【0253】
[結果および結論]
図3に示すように、sNAGによって処置した創傷は、未処置の創傷と比較して、瘢痕サイズの約2倍の縮小を示す。
【0254】
[6.4 実施例4:sNAGナノファイバーによる組織のコラーゲン含量の減少および整列したコラーゲンの実現]
この実施例は、sNAGナノファイバーが、組織におけるコラーゲン含量を減少させ、整列したコラーゲンの配列形成を誘導することを示す。特に、この実施例は、sNAGナノファイバーによって処置した皮膚創傷が、未処置の創傷と比較して、コラーゲン含量の減少と、より整列したコラーゲンの配列とを示すことを実証する。
【0255】
[6.4.1 Massonトリクロム染色を用いたコラーゲン含量および配列の分析]
[材料および方法]
8週齢〜12週齢の野生型C57B1/6マウスのオス成体4匹を実験に用いた。脱毛によって毛を除去し、その部位を洗浄して、70% エタノールを用いて殺菌した。マウスを、O2/イソフルレン気化麻酔器(VetEquip, Inc.)を用いて麻酔した。イソフルレンは、誘発のために4%を、手術のために2%を用いた。4mm生検パンチ(Miltex)を用いて2つの完全厚皮膚創傷を形成することで、脇腹それぞれに同一の2つの創傷を形成した。一方の脇腹を、蒸留水で湿らせたsNAG薄膜(Marine Polymer Technologies, Inc.)によって処置し、また、他方の脇腹を処置せずに放置した。創傷部位をポリウレタン透明包帯(Tegaderm, 3M)で覆い、治癒するまで10日間放置した。10日目に、創傷を4℃で一晩、4%パラホルムアルデヒド中に固定し、パラフィン包埋して、分析のために切片化した。
【0256】
組織切片のMassonトリクロム染色(Sigma-Aldrich)を、製造者の取扱説明書に従って行った。簡単に言うと、切片を水に脱パラフィン化し、ブアン(Bouin)液中でインキュベートした。スライドを、上述した製造者の取扱説明書に記載された通り、ヘマトキシレン、ビーブリッヒスカーレット−酸フクシン(Biebrich Scarlet-Acid Fucshin)、リンタングステン/リンモリブデン酸溶液、アニリンブルー溶液および酢酸を用いた一連のインキュベートの被験体とした後、組織切片を脱水し、キシレン中で清浄し、Cytoseal−XYL(Richard-Allan Scientific)を用いて標本した。Massonトリクロム切片を、オリンパスBX40顕微鏡を用いて可視化し、画像をオリンパスカメラ(Model DP25)およびDP2−BSW入力ソフトウェアを用いて記録した。
【0257】
[結果および結論]
処置済および未処置の創傷におけるコラーゲンの量および質を試験するために、損傷を与えてから10日目の組織切片においてMassonトリクロム染色を行った。
図4Aに示すように、皮膚創傷のsNAGによる処置が、青色の染色が少ないことによって示されたコラーゲン含量の減少をもたらし、また、皮膚創傷のsNAGによる処置が、新しいコラーゲンが既存のコラーゲンに対して適切に配列し、特に創傷の輪郭において、より整列したコラーゲンの配列をもたらす。
【0258】
[6.4.2 ヒドロキシプロリン分析を用いたコラーゲン含量の分析]
処置済みおよび未処置の創傷において、コラーゲン堆積量を定量分析することにより、ヒドロキシプロリン分析を行った。
【0259】
[材料および方法]
8週齢〜12週齢の野生型C57B1/6マウスのオス成体4匹を実験に用いた。脱毛によって毛を除去し、その部位を洗浄して、70% エタノールを用いて殺菌した。マウスを、O2/イソフルレン気化麻酔器(VetEquip, Inc.)を用いて麻酔した。イソフルレンは、誘発のために4%を、手術のために2%を用いた。4mm生検パンチ(Miltex)を用いて2つの完全厚皮膚創傷を形成することで、脇腹それぞれに同一の2つの創傷を形成した。一方の脇腹を、蒸留水で湿らせたsNAG薄膜(Marine Polymer Technologies, Inc.)によって処置し、また、他方の脇腹を処置せずに放置した。創傷部位をポリウレタン透明包帯(Tegaderm, 3M)で覆い、治癒するまで10日間放置した。10日目に以下の処置を行った:
1.組織を凍結乾燥した。組織の乾燥重量を確認するために、組織を重量測定した;
2.凍結乾燥組織を粉砕し(粉末が細かいほど好ましく、例えば、小さい秤量スパチュラを有するチューブの中で細かくする)、加水分解管(例えば、パイレックス(登録商標)チューブ−Fisher cat. #14-932A)中に載置した。5mLの6N HClをヒュームフードに添加した。チューブを窒素ガス雰囲気下で保持し、空気を放出させた(ほぼ表面の真下に20秒までの秒数の間N
2を吹き付ける)。チューブに堅く栓をした。渦を形成しないようにチューブをゆっくりと攪拌した。チューブをオーブン中に載置し、120度で3時間(または一晩中)加水分解した;
3.インキュベートの後、サンプルを、10mLのH
2Oおよび2mLの実験用緩衝液を含む50mLの円錐チューブに移した;
4.4N NaOHを用いてpHを7〜8に調整し、6N HClを補正に用いた。pH調整後の量が、サンプル間で顕著に異なり得ることに注目した。量の差は、結果を分析する際に正確な量を得るために補正した;
5.50mgまでの活性炭を各サンプルに添加し、炭が懸濁するように強く攪拌し、3000rpmまでの回転数で10分間遠心分離機にかけた;
6.この間に、標準液を作製した。組織の標準液は、0(ブランク)、1、2、3、4、5、7および10μg/mLのヒドロキシプロリン溶液になる。分析は0.125μg/mLに感度がよく、組織培養におけるコラーゲンレベルを定量化することもできた(例えば)。標準液を、1000μg/mLの凍結ストックを等分したものから溶解させて、サンプルの各セットにフレッシュを作製した。標準液を15mLチューブ中で作製した;
7.サンプル上清の2mLまたは標準液の2mLを、フレッシュの15mLチューブに添加した(各サンプルに1つのチューブが必要とされ、そして各標準液に1つ必要とされた)。ブランク:2mLの作用溶液;
8.1mLのクロラミンTをチューブに添加し、強く攪拌して、20分間室温に立たせた;
9.1mLのエールリッヒ試薬を、反応チューブに添加し、強く攪拌して、60℃のウォーターバス中で15分間インキュベートした;
10.反応チューブを水道水中で冷却し、分光光度計において558nmを読み取った;
11.溶液を適切なハザード容器中に廃棄した;
12.標準曲線からμg/mLに関して読み取った。総ヒドロキシプロリン量のために、pH調整後の終量によって乗じた。μg ヒドロキシプロリン/mg 組織のために、乾燥重量で割った。
【0260】
[使用したヒドロキシプロリンストック]
10mgのL−ヒドロキシプロリン(Sigma)を測量し、dH
2O中に載置して、1mg/mLの濃縮液を作製し、1mL等分を凍結させた。
【0261】
[標準液の希釈]
1mLの1000ug/mL(ストック):9mL dH
2O=100ug/mL
1.2mLの100ug/mL:10.8mL dH
2O=10ug/mL(11mL必要)
1mLの10ug/mL:9mL dH
2O=1ug/mL
7ug/mL……………3.5mLの10ug/mL:1.5mL dH
2O
5ug/mL……………2mLの10ug/mL:2mL dH
2O
4ug/mL……………2mLの10ug/mL:3mL dH
2O
3ug/mL……………1.5mLの10ug/mL:3.5mL dH
2O
2ug/mL……………1mLの10ug/mL:4mL dH
2O
1ug/mL……………1mLの10ug/mL:9mL dH
2O
0.75ug/mL…………3mLの1ug/mL:1mL dH
2O
0.50ug/mL…………2mLの1ug/mL:2mL dH
2O
0.25ug/mL…………1mLの1ug/mL:3mL dH
2O
0.125ug/mL…………0.5mLの1ug/mL:3.5mL dH
2O
ブランク
[酢酸(0.5M)]
14.4mL 酢酸
485.6 dH
2O
[緩衝液ストック調製(500mL)]
25g 無水クエン酸
6mL 0.5M 酢酸
60g 酢酸ナトリウム
17g 水酸化ナトリウム
試薬をdH
2O中に、総量500mLになるように溶解させた.
[実験用緩衝液]
500mL 緩衝液ストック
100mL dH
2O
150mL 1−プロパノール
必要に応じて、酢酸を用いてpH7から8に調整。
4℃で数か月安定.
[クロラミンT]
1.41g クロラミンT
10mL dH
2O
10mL 1−プロパノール
80mL 実験用緩衝液
pH6から7の間,黒っぽいボトル中に保管.
[エールリッヒ試薬]
7.5g p−ジメチルーアミノーベンズアルデヒド
30mL 1−プロパノール
13mL 過塩素酸 (60%)
50mL作製
数時間のみ安定,各測定セットの前に作製.
すべての試薬をSigma社から購入した。
【0262】
[結果および結論]
ヒドロキシプロリン分析を、処置済みおよび未処置の創傷におけるコラーゲン堆積の量を定量分析するために行った。
図4Bに示すように、sNAG処置した創傷は、全体のコラーゲン含量が約3倍減少した。
【0263】
[6.5 実施例5:sNAGナノファイバーによるI型コラーゲン発現の減少およびIII型コラーゲン発現の増加]
この実施例は、sNAGナノファイバーがI型コラーゲン発現を減少させ、III型コラーゲン発現を増加させることを示す。特に、この実施例は、sNAGナノファイバーによって処置した創傷において、未処置の創傷と比較して、I型コラーゲンの発現が減少し、そしてIII型コラーゲンの発現が増加することを証明する。
【0264】
[材料および方法]
8週齢〜12週齢の野生型C57B1/6マウスのオス成体4匹を実験に用いた。脱毛によって毛を除去し、その部位を洗浄して、70% エタノールを用いて殺菌した。マウスをO2/イソフルレン気化麻酔器(VetEquip, Inc.)を用いて麻酔した。イソフルレンは、誘発のために4%を、手術のために2%を用いた。4mm生検パンチ(Miltex)を用いて2つの完全厚皮膚創傷を形成することで、脇腹それぞれに同一の2つの創傷を形成した。一方の脇腹を、蒸留水で湿らせたsNAG薄膜(Marine Polymer Technologies, Inc.)によって処置し、また、他方の脇腹を処置せずに放置した。創傷部位をポリウレタン透明包帯(Tegaderm, 3M)で覆い、治癒するまで5日間放置した。5日目に、創傷(処置済みおよび未処置)から単離したRNAについて、I型コラーゲンおよびIII型コラーゲンの発現を試験した。
【0265】
半定量RT−PCRのために、Gibco BRLから購入したSuperscript First Strand合成キットを用いて、製造者の取扱説明書に従って、オリゴ(dT)を用いることにより、cDNAをトータルRNA(2から5μg)から合成し、RNA−STAT60(Tel-Test, Inc.)を用いて製造者によって示された手順に従って単離した。PCR反応は、同量のcDNAおよび1.25μMの適切なプライマー対(Proligo, Inc.)を含んでいた。プライマー配列は以下のとおりである:I型コラーゲン;フォワード5’ ACGGCTGCACGAGTCACAC 3’、リバース 5’ GGCAGGCGGGAGGTCTT 3’、III型コラーゲン;フォワード5’ GTTCTAGAGGATGGCTGTACTAAACACA 3’、リバース5’ TTGCCTTGCGTGTTTGATATTC 3’および HPRT;フォワード5’ AAGGACCTCTCGAAGTGTTGGATA 3’、リバース5’ CATTTAAAAGGAACTGTTGACAACG 3’。サイクルの条件は、94℃で5分間、94℃で1分間を20から35サイクル、50から65℃(プライマーT
mに基づく)で1分間、72℃で1分45秒間+2秒/サイクル、72℃で7分間、および4℃で冷却、であった。サイクル数は、使用した各プライマー対に対する分析の線形範囲内になるように経験的に決定した。全ての半定量RT−PCRを、内部コントロールとしてのHPRTプライマーと共に行った。
【0266】
[結果および結論]
sNAGが、発現するコラーゲンの型の変化を誘導するか否かを試験するために、損傷を与えた後5日目の創傷(処置済みおよび未処置)から単離したRNAについて、PCRによってI型コラーゲンおよびIII型コラーゲンの発現を試験した。
【0267】
図5に示すように、sNAG処置した創傷は、I型コラーゲン発現が減少し、III型コラーゲン発現が増加する。
【0268】
[6.6 実施例6:平滑筋アクチンの減少]
この実施例は、sNAGナノファイバーが、アルファ平滑筋アクチンを測定することによって評価する筋線維芽細胞含量を減少させることを証明する。特に、sNAGナノファイバーで処置した皮膚創傷においては、未処置の皮膚創傷と比較して、アルファ平滑筋アクチンが少なくとも2倍減少する。
【0269】
[材料および方法]
8週齢〜12週齢の野生型C57B1/6マウスのオス成体4匹を実験に用いた。脱毛によって毛を除去し、その部位を洗浄して、70% エタノールを用いて殺菌した。マウスをO2/イソフルレン気化麻酔器(VetEquip, Inc.)を用いて麻酔した。イソフルレンは、誘発のために4%を、手術のために2%を用いた。4mm生検パンチ(Miltex)を用いて2つの完全厚皮膚創傷を形成することで、脇腹それぞれに同一の2つの創傷を形成した。一方の脇腹を、蒸留水で湿らせたsNAG薄膜(Marine Polymer Technologies, Inc.)によって処置し、また、他方の脇腹を処置せずに放置した。創傷部位をポリウレタン透明包帯(Tegaderm, 3M)で覆い、治癒するまで10放置した。10日目に、創傷を4℃で一晩、4%パラホルムアルデヒド中に固定し、パラフィン包埋して、分析のために切片化した。
【0270】
パラフィン包埋組織切片を、キシレンおよび一連のグレードのアルコールを通して再水和した。切片を0.01% Triton−X100で処置し、圧力調理器中で5分間、抗原脱マスキング溶液(Vector Laboratories)を用いて抗原回復の被験体とし、冷却させた。サンプルを、抗体標識前に、バックグラウンドバスター(Innovex Biosciences)中で30分間インキュベートした。皮膚切片を、マウスモノクローナル抗アクチンα−平滑筋抗体(Sigma)を用いて標識した。切片を4℃で一晩、一次抗体中においてインキュベートし、洗浄し、さらに適切な二次免疫蛍光抗体(Invitrogen)と共に室温で一時間インキュベートした。各抗体に対するコントロールの切片を、一次抗体を用いずに染色した。組織切片をOlympus FluroViewレーザースキャニング共焦点顕微鏡(Model IX70)を用いて可視化し、大気温度でオリンパスカメラ(Model FV5-ZM)およびFluoview 5.0入力ソフトウェアを用いて記録した。
【0271】
[結果および結論]
筋線維芽細胞は、組織修復における重要な細胞型であり、コラーゲン生成を介した瘢痕の形成に関係している。筋線維芽細胞群は、瘢痕のない胎児の創傷治癒中に減少する。筋線維芽細胞の集合体の分布を可視化するために、α−平滑筋アクチンに対する抗体で創傷切片を標識した。
図6Aに示し、
図6Bに定量化したように、sNAGで処置した創傷においては、未処置の創傷と比較して、α−平滑筋アクチンの発現が少なくとも2倍減少する。
図6Bにおいて、蛍光赤色に含まれるピクセルは、Y軸における「任意単位」として表されており、そのような単位は組織の領域ごとであり、アルファ平滑筋アクチンの発現および筋線維芽細胞含量の定量的評価を提供する。
【0272】
[6.7 実施例6.7:sNAGナノファイバーによる瘢痕サイズの縮小、並びに組織の抗張力および弾性の増強]
この実施例は、sNAGナノファイバーによる皮膚創傷の処置が、抗張力および弾性が向上し、コラーゲン含量が減少し、コラーゲンの整列が向上し、そして筋線維芽細胞含量が減少した、より小さい瘢痕をもたらすことを示す。フィブリンゲルアッセイを、インビトロでの線維芽細胞配列の調整を評価するために用いた。この評価において、フィブリン格子を2つのピンを用いて形成し、細胞をポールとポールとの間に並べる力をゲルが付与できる中心点を提供する。張力点を提供する格子内の線維芽細胞配列を評価するためのフィブリンゲルアッセイを用いて、この実施例は、sNAGナノファイバーによる刺激が、Akt1がまた必要とされる方法により、未処置のコントロールと比較して、線維芽細胞の配列を向上させることを示す。この実施例はさらに、sNAGが誘導する抗張力および弾性の向上に、インビボでAkt1が必要とされることを示す。総合すれば、これらの知見は、sNAGナノファイバーがAkt1依存性経路を刺激することにより、皮膚創傷治癒中の、線維芽細胞の適切な配列、瘢痕の縮小、および抗張力の向上をもたらすことを示す。それゆえに、pGlcNAナノファイバーによる処置が、修復された創傷のより良い組織構成をもたらし得る。
【0273】
[序論]
成体の創傷治癒においては、外科的および外傷性の損傷の両方に続く瘢痕の形成が避けられない。皮膚創傷に続く瘢痕形成は、正常な皮膚組織に変わる過剰なコラーゲンおよび線維性の組織の未整列の堆積のためである。瘢痕は、多くの場合、組織運動の制限、機能の喪失、審美性の貧しさ、および精神的苦痛をもたらす、主要な医学的副反応である[1]。瘢痕反応(組織再建)を伴わない治癒に対する哺乳動物の能力は、成長のある段階で制限され、その後の創傷治癒は瘢痕形成を伴い進行する。組織再建と瘢痕形成との間の主要な差異の1つは、コラーゲンの整列および堆積である。胎児の再建組織と成体の瘢痕との比較は、それぞれが極めて同様の成分を含むことを示し、組織構造の調節における差異であり、瘢痕の異常な分子組成における差異ではないことを示唆している。それゆえに、組織再建および瘢痕形成組織の修復は、制御が異なり得る共通のメカニズムを共有する[2]。瘢痕形成、並びにシリコンによる手当およびヒドロコルチゾンの注入のような現在の処置の制限された効果に影響を与えるために、新規の処置の開発および特徴付けが必要とされている[3]。
【0274】
[材料および方法]
[切除創傷治癒モデル、瘢痕定量化、抗張力測定]
野生型C57B1/6およびAkt1ヌルマウスモデル[4]を、全ての実験において用いた。Akt1ヌル動物を、全タンパク質の発現を阻害する翻訳開始部位における挿入突然変異を用いて作製した[14]。混合した129/C57B16環境におけるAkt1ヌル動物を、C57B1/6に8世代戻し交配した。麻酔した8週齢〜12週齢のマウスのオス成体に損傷を与えた。4mm生検パンチ(Miltex)を用いて2つの完全厚皮膚創傷を形成することで、脇腹それぞれに同一の2つの創傷を形成した。マウスをO2/イソフルレン気化麻酔器(VetEquip, Inc.)を用いて麻酔した。イソフルレンは、誘発のために4%を、手術のために2%を用いた。手術の前に脱毛によって毛を除去し、その部位を洗浄して、70% エタノールを用いて殺菌した。創傷を、Marine Polymer Technologies, Inc.から入手したpGlcNAcの乾燥形態の薄膜を、蒸留水で湿らせたものによって処置するか、処置せずに放置するかのいずれかにした。目的の日に、動物を安楽死させ、8mm生検パンチ(Miltex)を用いて、創傷全体を周囲の皮膚と共に回収した。創傷を4℃で一晩、4%パラホルムアルデヒド中に固定し、パラフィン包埋して、分析のために切片化した。
【0275】
瘢痕の測定のために、野生型マウスに上述した通り損傷を与えるか、または1cm
2の損傷を与え、創傷を収縮させないようにして、21日間治癒させた。21日目に、動物を安楽死させ、キャリパーを用いて瘢痕を測定した。
【0276】
抗張力のために、損傷を与えた動物を21日後に犠牲にし、創傷を回収した。処置済みおよび未処置の両方の創傷、並びに損傷を与えていないコントロールの皮膚を、Instron5942歪みゲージ伸長計およびBluehill 3試験ソフトウェアを用いた抗張力および弾性試験の被験体とした。皮膚の抗張力を、皮膚が20%破壊される前に耐え得る相対的応力を測定することによって決定し、弾性をmm伸長によって測定した。
【0277】
[ヘマトキシリンおよびエオシン染色(H&E)、Massonトリクロム染色、ピクロシリウスレッド染色]
H&E染色のために、切片をキシレンで清浄し、一連のグレードのアルコールを通して再水和し、ヘマトキシリン中において後、酸アルコール中においた。サンプルを、それからアンモニア水中におき、エタノールでリンスして、エオシンにさらした後、一連のグレードのアルコールを通して再水和し、キシレンで清浄した。切片を、Cytoseal−XYL(Richard-Allan Scientific)を用いて標本したH&E切片を、オリンパスBX40顕微鏡を用いて可視化し、オリンパスカメラ(Model DP25)およびDP2−BSW入力ソフトウェアを用いて記録した。
【0278】
組織切片についてのMassonトリクロム染色(Sigma-Aldrich)を、製造者の取扱説明書に従って行った。簡単に言うと、切片を水に脱パラフィン化し、ブアン(Bouin)液中でインキュベートした。スライドを、上述した製造者の取扱説明書に記載された通り、ヘマトキシレン、ビーブリッヒスカーレット−酸フクシン(Biebrich Scarlet-Acid Fucshin)、リンタングステン/リンモリブデン酸溶液、アニリンブルー溶液および酢酸を用いた一連のインキュベートの被験体とした後、組織切片を脱水し、キシレン中で清浄し、Cytoseal−XYL(Richard-Allan Scientific)を用いて標本した。Massonトリクロム切片を、オリンパスBX40顕微鏡を用いて可視化し、画像をオリンパスカメラ(Model DP25)およびDP2−BSW入力ソフトウェアを用いて記録した。
【0279】
[コラーゲンの抽出および生化学的定量化]
ヒドロキシプロリン分析を記述の通りに行った[15]。簡単に言うと、同量の創傷組織(8mm生検パンチ)を、損傷を与えてから21日目の処置済みまたは未処置の野生型マウス(それぞれn=4)から回収した。組織を、凍結乾燥させて、一定の乾燥重量を測定し、細かく砕いた。組織コラーゲンについて、120℃で18時間の、6N HClを用いた酸加水分解を完了し、4N NaOHを用いてpH7に中和した。1mLのクロラミンTを、コラーゲンサンプルの2mL量に添加し、室温で20分間インキュベートした。1mLのエールリッヒ試薬(25mL中の、60%過塩素酸、15mL 1−プロパノールおよび3.75g p−ジメチルーアミノーベンズアルデヒド)を添加し、サンプルを60℃で20分間インキュベートした。558の波長における吸収を分光光度計において読み取った。コラーゲンを、創傷組織の乾燥重量グラム当たりのヒドロキシプロリンのミリグラムとして定量化した。
【0280】
[エラスチン染色]
損傷を与えた動物からの組織切片を、上述したように、ワンギーソン(Van Geison)染色手順を用いてエラスチンファイバーを染色した。簡単に言えば、切片をキシレンで清浄し、一連のグレードのアルコールから蒸留水を通して再水和し、ヘマトキシリン(Sigma-Aldrich)で染色し、2%塩化第二鉄中で差別化し、洗浄した。それから、組織切片を、脱水前にワンギーソン(Van Geison)対比染色によって染色し、キシレンで清浄し、Cytoseal−XYL(Richard-Allan Scientific)で標本した。区分化した組織切片を、オリンパスBX40顕微鏡を用いて可視化し、オリンパスカメラ(Model DP25)およびDP2−BSW入力ソフトウェアを用いて記録した。
【0281】
[免疫蛍光、顕微鏡]
パラフィン包埋組織切片を、キシレンから一連のグレードのアルコールを通して再水和した。切片を0.01% Triton−X100で処置し、圧力調理器中で5分間、抗原脱マスキング溶液(Vector Laboratories)を用いて抗原回復の被験体とし、冷却した。サンプルを、抗体標識前に、バックグラウンドバスター(Innovex Biosciences)中で30分間インキュベートした。皮膚切片を、マウスモノクローナル抗アクチンα−平滑筋抗体(Sigma)、ビメンチンマウスモノクローナル抗体(Dako)、ファロイジン(Molecular Probes)およびDAPI(Molecular Probes)を用いて標識した。切片を4℃で一晩一次抗体中においてインキュベートし、洗浄し、さらに適切な二次免疫蛍光抗体(Invitrogen)と共に室温で一時間インキュベートした。各抗体に対するコントロールの切片を、一次抗体を用いずに染色した。組織切片をOlympus FluroViewレーザースキャニング共焦点顕微鏡(Model IX70)を用いて可視化し、大気温度でオリンパスカメラ(Model FV5-ZM)およびFluoview 5.0入力ソフトウェアを用いて記録した。
【0282】
[組織培養、フィブリンゲルアッセイ]
C3H10線維芽細胞を、1% ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を補ったEarle平衡塩類溶液(MEM/EBSS, Thermo)を含む最小必須培地において、5%CO2、37℃に維持した。正常ヒト線維芽細胞(ATCC)を、20% FCSを補ったMEM中に維持した。血清飢餓を、0.1%ウシ胎仔血清(Valley Biomedical)を補ったMEM/EBSS中で80から90%コンフルエントで24時間行った後、殺菌水(Marine Polymer Technologies, Inc.)中において、高度に精製されたpGlcNAc(50μg/mL)ナノファイバースラリー(sNAG)を用いて刺激した。
【0283】
フィブリンゲルアッセイを、24ウエル組織培養プレート(Becton Dickinson)中で行った。ウエルの底に300mLのSylgard 184エラストマー(Dow Corning)を添加し、5%CO2、37℃で一晩載置して、プレートを準備した。0.1mmの虫ピン2つを、ウエルの底の直径(16mm)に沿って各縁から3mm離れたSylgard中に挿入した。ウエルをPBS中の3%BSAを用いて30分間封鎖した。細胞の数を数え、10μL/mLのアスコルビン酸塩を添加した冷たいMEM/EBSS培地中に溶解させた5%ヒトフィブリノゲン(Sigma)を含むフィブリノゲン溶液中に再懸濁し、ウエル当たり250,000個の細胞濃度で覆った。ヒト血漿(Sigma)由来のトロンビン(100ユニット/mL)を、5mg/mLフィブリノゲンおよび細胞溶液に添加した。ゲルを、5%CO2、37℃で30分間インキュベートした後、5%ウシ胎仔血清を補充したMEM/EBSSを1mL添加した。小さいピペットチップを用いて、ウエルの壁から徐々にゲルを剥がした。その後、ゲルの自然な収縮を観察した。インキュベートの6から8時間後に、培地を除去し、ゲルをPBSで3回、各5分間洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで30分間固定した後、組織分析またはファロイジン染色のいずれかのために、パラフィン包埋した。ファロイジン染色のために、フィブリンゲルを0.3% Triton−X100で処理し、室温で1時間ファロイジン中においてインキュベートし、DAPIで10分間対応染色した。切片を、フルオロゲルを用いて標本した。組織分析のために、固定されたフィブリンゲル切片を、上述したH&E染色の被験体とした。
【0284】
[レンチウイルス感染]
Akt1に対するMission shRNAレンチウイルスコンストラクトを、Sigma/Aldrich社から購入した。レンチウイルスを293T細胞中で増殖させ、上述したように補充されたDMEM中に維持した。レンチウイルス生産を、Addgene社からのレンチウイルス粒子生産のための手順にしたがって、Addgene社から購入したpsPAX2およびpMD2.Gパッケージングベクターを用いて行った。標的細胞の感染のために、100mm
2プレート上を7.5×10
5個の細胞で覆い、一晩インキュベートした。次の日、細胞を、最終濃度1mg/mLのポリブレンおよびAkt1 shRNAレンチウイルスを用いて、形質転換した。形質導入の後、一晩血清を枯渇させた線維芽細胞を、sNAG(50mg/mL)で刺激した。適切でない効果はいずれも、非相同のAkt1配列に対するRNAi(Dharmacon)を用いて表現型を検証することによって制御した(データ示さず)。
【0285】
[結果]
[sNAG処置は瘢痕サイズの縮小およびコラーゲン配列の向上をもたらす]
この調査において、瘢痕形成におけるsNAGの効果を分析した。切除創傷を野生型動物に形成し、膜状のsNAGによって処置する、または処置せずに放置する、のいずれかを行った。損傷を与えてから21日目に、動物を犠牲にし、瘢痕サイズを測定した。
図7Aに定量して示すように、sNAGで処置した創傷は、未処置の創傷と比較して、瘢痕サイズが約2倍縮小したことを示す。処置済みおよび未処置の創傷においてコラーゲンの量および質を調査するために、損傷を与えてから10日目の組織切片においてMassonトリクロム染色を行った。
図7Bにおいて見られるように、皮膚創傷のsNAG処置が、特に創傷の境界部分において見られるように、青色染色部分が少ないことによって示されるコラーゲン含量の減少、および、新規のコラーゲンと既存のコラーゲンとが適切に配列し、より整列したコラーゲン配列をもたらす。ヒドロキシプロリン分析を、処置済みおよび未処置の創傷におけるコラーゲン堆積量を定量的に分析するために行った。
図7Cに示すように、sNAGで処置した創傷は、全体的なコラーゲン含量を約3倍減少させた。
【0286】
筋線維芽細胞は、組織修復における重要な細胞型であり、コラーゲン生成を介した瘢痕の形成に関係している[16、17]。筋線維芽細胞群は、瘢痕のない胎児の創傷治癒中に減少する。筋線維芽細胞群の分布を可視化するために、創傷切片を、アルファ平滑筋アクチン(αSMA)に対する抗体で標識した。
図8Aに示し、
図8Bに定量化したように、処置済みの創傷は、αSMAの発現を少なくとも2倍減少させることを示し、コラーゲン含量の減少が筋線維芽細胞数の減少のためであることを示唆している。
【0287】
[sNAG処置は、損傷を受けた皮膚の抗張力および弾性の向上を引き起こす]
コラーゲンが強度および機械的特性を付与すること[18]、並びに処置済みおよび未処置の皮膚創傷の間で、コラーゲン堆積および瘢痕形成が異なること、を考慮し、sNAG処置が抗張力および弾性の向上をもたらすか否かを評価した。抗張力および弾性を測定するために、皮膚創傷を、野生型動物に形成した皮膚創傷の、未処置および処置済みの両方を21日後に回収し、歪みゲージ伸長計を用いて機械試験の被験体にした。野生型マウスからの損傷を与えていない正常な皮膚を、コントロールとして用いた。機械試験の分析は、WT動物のsNAG処置した皮膚創傷が、未処置の創傷と比較して、抗張力の約40%の向上を表すことを示す(
図9A)。さらに、sNAG処置した創傷は、損傷を与えていないコントロールの皮膚と同等レベルの抗張力回復を表した(
図9A)。抗張力測定中に、WT動物からのsNAG処置した皮膚創傷が、コントロールまたは未処置の対応物よりも伸縮性が高いことに注目した。
図9Bは、sNAG処置が、未処置の皮膚創傷および損傷を与えていないコントロールの皮膚の両方と比較して、治癒組織の弾性の顕著な向上をもたらすことを示す。皮膚創傷のsNAG処置がエラスチン生成を増加させるか否かを評価するために、ワンギーソン(Van Geison)染色を分析した。
図9Cにおいて、処置済み動物由来の創傷は、新たに治癒した創傷においてエラスチン生成を示すが(薄い黒い構造によって表す)、未処置の創傷は示さない。これらの知見は、sNAG処置が弾性の向上と同様に抗張力の向上をもたらし、皮膚創傷のナノファイバー処置が、治癒中の皮膚の機械特性を共に向上させる一方で、瘢痕化を低減するという仮説を支持する。
【0288】
[sNAG処置が、線維芽細胞の配列とフィブリンゲルの収縮との向上をもたらす]
コラーゲンファイバーの配列および整列は線維芽細胞の適切な配列に関連すると思われるため、sNAG処置がインビトロの線維芽細胞の配列をもたらすか否かを評価するために、フィブリンゲルアッセイを用いた[19]。この仮説を試験するために、線維芽細胞をsNAGで処置または未処置で放置した後、フィブリンゲルに包埋した。フィブリンゲルを一晩収縮可能にした後、収縮を分析し、細胞配列の分析のために切片化した。細胞配列を可視化するために、ゲルを切片化してファロイジンまたはH&Eのいずれかで染色した。H&E染色したゲル切片の代表的な画像は、sNAG処置が配列した線維芽細胞をもたらすことを示す(
図10A)。黒丸は、ゲルの収縮に沿う張力点として機能するピンの位置を示す。sNAG処置した線維芽細胞は、未処置の細胞の散乱した整列されていない構成と比較して、編制された方式で、ピンから線形に放射状に広がる。ゲル切片のファロイジン染色を、また、sNAG処置細胞の整列した配列を可視化するために行った(
図4B)。sNAG依存性線維芽細胞配列を、ヒト皮膚線維芽細胞において確認した(図示せず)。さらに、sNAG処置した線維芽細胞は、未処置のコントロールと比較して向上したゲル収縮と相互に関連がある(以下を参照のこと)。総合すれば、これらのデータは、線維芽細胞のsNAG処置が整理された細胞配列をもたらすことを示す。線維芽細胞のこの配列は、
図7から9に示すように、sNAG処置した皮膚創傷において見られる、より整列したコラーゲンファイバーおよび向上した抗張力をもたらすと思われる。
【0289】
[sNAG依存性線維芽細胞の配列はAkt1を必要とする]
Akt1も線維芽細胞の配列のsNAGに依存した向上に必要とされるか否かを決定するために、線維芽細胞をAkt1に対するレンチウイルスを発現するshRNAを用いて形質導入し、フィブリンゲルに包埋した。
図11Aに示すように、sNAG処置した線維芽細胞は、未処置の線維芽細胞を含むゲルと比較して約40%ゲル収縮した。sNAG処置したshAkt1発現する線維芽細胞を含むゲルは、sNAG処置したコントロールよりも収縮が極めて小さかった。フィブリンゲルからのH&E染色切片の分析は、Akt1の発現が阻害された場合に配列が抑制されることを示す(
図11B)。
図11に示すように、sNAG処置した線維芽細胞は、未処置のコントロールと比較して、促進したAktのリン酸化を有し、Akt経路の活性化を示唆している。Akt1のノックダウンがインビトロで線維芽細胞の配列の低下をもたらすため、Akt1ヌル動物由来の皮膚創傷の抗張力がsNAGの処置によって影響を受けるか否かを評価した。sNAGで処置したまたは処置せずに放置した皮膚創傷を、上述したように、歪みゲージ伸長計を用いる抗張力試験の被験体とした。
図11Dに示すように、sNAG処置した創傷と未処置の創傷との間に顕著な差はなかった。総合すれば、これらの知見は、インビボで、sNAGに依存した抗張力の向上と同様に、sNAGに依存した線維芽細胞の配列にAkt1が必要とされることを示している。
【0290】
[考察]
上述した知見は、高度に精製されたpGlcNAナノファイバー(sNAG)による皮膚創傷の処置が、瘢痕形成を低減させることを示す。この瘢痕形成の低減は、コラーゲンの整列、抗張力および弾性の向上と、相互に関連がある。Akt1の除去は、sNAG処置によって誘導される抗張力の向上を阻害する。抗張力は、創傷治癒の成熟段階中におけるコラーゲンの再編によって決定され、この再編により、コラーゲンは、生成と代謝との間のバランスによってますます整理される[20]。一般に、瘢痕形成は、コラーゲン生成の増加と、コラーゲンの交差連結および配列の低下とによって特徴付けられ、抗張力の全体的な低下の原因となる。確かに、元々の抗張力の70%のみが、創傷回復および組織再編後に回復する[21]。
【0291】
処置済み創傷のMassonトリクロム染色およびヒドロキシプロリン定量化によって示されたように、sNAG処置は、全体的なコラーゲン含量の減少をもたらす。処置済み創傷のMassonトリクロム染色は、sNAG処置が、より分散したコラーゲン、運動性の向上、および創傷境界におけるコラーゲンの整列を導くことを示す。ピクロシリウスレッド染色は、sNAGで処置した創傷が、より均一なコラーゲンファイバーの配列を有し、sNAG処置による創傷の解決および再編の運動性の向上を示唆することを示す。コラーゲン含量の減少の支持において、α−平滑筋アクチン(αSMA)染色の低下をこの実施例において証明し、このことは、創傷における筋線維芽細胞数の減少を示唆している。筋線維芽細胞は、組織修復中の線維反応を担う異常な線維芽細胞であり、αSMAの発現の効力によって不活化された線維芽細胞から区別される。筋線維芽細胞は、皮膚創傷治癒におけるコラーゲンの主要な生産者であり、収縮中に活性であり、そしてアポトーシスによって創傷から取り除かれる[17]。筋線維芽細胞の持続性は、瘢痕の増大またはケロイド形成をもたらし得る[22、23]。損傷を受けてから10日目に、sNAG処置は、αSMA発現のほぼ3倍の減少をもたらした。例えば、収縮性の平滑筋表現型の減少、上皮の分化導入、間質または循環からの線維芽細胞の補充のような、筋線維芽細胞が分化し得る非常に多くの方向があるので、この実施例において見られた結果は、創傷治癒中のsNAG刺激が、その分化に影響し得ること、またはその除去を促進し得ることを示唆している。
【0292】
コラーゲン配列におけるsNAGの役割を理解するために、フィブリンゲルアッセイを用いた。フィブリンゲルアッセイは、配列し得る細胞における割線を提供する。コラーゲンを適切に堆積させるために、線維芽細胞自身が配列されなければならないという仮説を立てた。細胞配列は、適切な組織構造の形成のために重要なものであり、適切な機械的機能を提供する。インビボの状況をよりそっくりに模倣する三次元環境の使用が、これらの細胞反応の研究におけるインビトロシステムを提供する。このシステムは、正常な創傷治癒中に生じるのと同様の、フィブリンの凝塊、格子構造を伴う線維芽細胞を提供する。この三次元システムを用いて、上述した結論は、血清を枯渇させた条件下におけるsNAGによる線維芽細胞の前処置が、H&Eおよびファロイジン染色によって可視化したように、張力ポールへの著しい細胞の配列をもたらすことを示す(
図10)。配列のより定量的な測定として、上述した結論は、配列した細胞がフィブリンの凝塊を機械的に収縮させること(
図11)、並びに、収縮および配列の両方が、Akt1ノックダウンの条件下において排除されることを示す。興味深いことに、配列した細胞において、わずかではあるが再現可能なAktリン酸化反応の増加が観察された。これらの結果は、Akt1が、インビトロのsNAG誘引細胞配列に必要とされることを示す。Akt1ヌル動物は、このモデルにおいて損傷を受けた皮膚の抗張力がsNAG処置によって影響を受けないので、これらの結果が正しいこと証明する。
【0293】
Akt1ヌル動物および野生型動物において、損傷を受けていない皮膚の抗張力は同様であることは、注目すべきである。このことは、皮膚の発達を制御する細胞プログラムが、Akt1不在でも無傷であることを示唆する。Akt1/Akt2ダブルヌル動物は、小人症および早期の新生児致死性に加えて、薄皮表現型を示し、各皮膚層内の細胞数の著しい減少によって特徴付けられる。この表現型は、Akt3単独では補填できない増殖の欠如が原因である[14]。Akt2またはAkt3のいずれかの存在は、上述したようなsNAG刺激創傷修復および抗張力に影響せず、または、以前に報告されたような感染の除去および創傷の封鎖にも影響しない[4]。このことは、これらの2つの酵素が、sNAGが誘導する組織修復または抗菌効果に、機能的に重複しないことを証明する。
【0294】
Aktは、GTPアーゼのRhoファミリーを介して細胞骨格に信号を送り、中でも、細胞骨格修復を制御する[24]。Aktは、ビメンチンを直接リン酸化可能であり、細胞の形および運動性の変化に関与する中間体フィラメントタンパク質である[25]。運動型の細胞において、リン酸化Akt1は、先端/底部に二極化される細胞であるのに対して、細胞前縁に局在し、リン酸化Aktは細胞周囲に局在されがちである。これらの結果は、Aktが、細胞極性、細胞骨格の編制、および方向付けられた細胞移動において役割を果たすことを示唆する。線維芽細胞における一般的な合意は、ノックダウンおよび過発現分析の両方によって決定され、Akt2が移動を阻害する一方で、Akt1が移動を積極的に方向付けることである[26]。上皮細胞においては逆が正しい。上述したフィブリンゲルアッセイにおいて、Akt1は、2つの張力点の間の細胞のsNAG誘導配列に必要とされる。Akt1は、そして、細胞骨格再編成および細胞の位置決めに必要とされるはずであり、前後細胞極性に影響し得る。
【0295】
この実施例は、sNAG刺激が、損傷を受けていない皮膚および損傷を受けた皮膚の両方と比較して、弾性を向上させることを示す。弾性は、発達中に形成されるエラスチンファイバーによって付与される。エラスチン生成は成体においては見られないが、負傷後に、例えば、インスリン様成長因子−1(IGF−1)およびインターロイキン1(IL−1)のような特定のサイトカインおよび成長因子のアップレギュレートを通して誘導され得るが、異常に堆積し、そして治癒後数か月するまで検出されない。エラスチンの異常な堆積は、瘢痕の弾性および柔軟性の低下を引き起こす[27、28]。上述した結果は、損傷を受けてから21日後のsNAG処置が、未処置の創傷と比較して、エラスチンファイバー染色の増加を引き起こすことを示した。この染色の増加は、皮膚弾性の顕著な向上(
図9)および栄養エラスチンタンパク質発現の向上に相互に関連する。少なくともインビトロでは、sNAG刺激が、IL−1の発現を増加させ、このサイトカインとエラスチンファイバー染色との間の関連を示唆することを示している[12]。Akt1は、IL−1およびIGF−1の両方の下流で機能する主要な酵素であることは、よく立証されている。
【0296】
内皮細胞において、本発明者らは、sNAGナノファイバー処置に応じたエラスチン発現の増加を見出した。Akt1は、β1インテグリンの活性化を介した細胞外マトリクスアセンブリおよびフィブロネクチン編制を連結している[29]。sNAGは特にインテグリン依存性情報伝達を活性化し、これによってAkt1活性化を導くことが証明されている[30]。それゆえに、sNAGによって刺激した創傷におけるエラスチン堆積が、インテグリン/Akt1依存性経路によるものである可能性がある。エラスチンファイバー堆積は、一般に、成体においては生じない。それゆえに、sNAGが、皮膚修復および組織生体工学適用のための弾性生成を刺激するメカニズムを理解することが重要である。
【0297】
この実施例に記載した結果は、sNAGが、組織構造の回復をもたらす細胞プログラムを刺激することを示唆する。胎児の創傷治癒と成体の創傷治癒との間の正確な機械的相違は未知のままである一方で、胎児の創傷および出生後の創傷の、炎症性反応、細胞外マトリクス、細胞中間体、および遺伝子発現プロファイルに共通して存在する顕著な相違は示されている[31]。免疫システムの発達のために、胎児の創傷が有する炎症細胞は遥かに少なく、そして炎症細胞の存在はあまり識別されず[32]、胎児の創傷の成長因子プロファイルにおいて著しい相違を有する。
【0298】
以前に報告された結果は、sNAGナノファイバー刺激が代謝を向上させ[13]、内皮細胞の運動性および脈管形成を向上させ[12]、さらに重要なことに、抗菌活性を導く先天性免疫反応を増強させ[14]、この抗菌活性は少なくとも一部がAkt1活性に依存している、ことを示している。この実施例は、sNAG刺激が、皮膚創傷治癒中のコラーゲンおよび線維芽細胞配列の向上、抗張力および弾性の向上をもたらすことを示す。これらの結果は、sNAGナノファイバーが、張力を受けた細胞の配列を制御するAkt1の活性化、およびI型コラーゲン堆積および瘢痕形成の低減をもたらすインテグリン情報伝達を裏返しに刺激するモデルを示唆する。瘢痕化は、主要な医学的副反応であり、組織機能および審美性の低下、並びに現状の処置選択の制限の原因となり、そして、この実施例は、sNAGナノファイバーによる皮膚創傷の処置が瘢痕化を低減させるため用いられ得ることを示す。
【0299】
[実施例7に記載した参考文献および他の参考文献]
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【0300】
[7.参考としての援用]
本明細書に記載した、学術論文、特許および特許出願のような全ての参考文献の開示内容は、個別の論文または特許出願のそれぞれが、特におよび個別に参考として援用されることを示すように、これらの全体が参考として本明細書中に援用され、前述の発明は、明確な理解を目的として図面および実施例の手段により、一部詳細に説明されているけれども、本発明の教示の観点において当該技術分野における通常の知識を有する者に容易に明らかになり、特定の変更および修正は、本発明の特許請求の範囲の精神または範囲から一脱しないようにそこに加え得る。