(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記SBRエラストマーブロックの前記ブタジエン部の1,2-結合の含有量が4から75mol%に及ぶ範囲内であり、1,4-結合の含有量が20から96mol%に及ぶ範囲内である、請求項1又は2記載の積層体。
前記第1層の前記SBRエラストマーブロックの前記ブタジエン部位の二重結合の25から100mol%に及ぶ割合が水素添加されている、請求項1〜3のいずれか1項記載の積層体。
前記第1層の前記組成物において、水素添加されていてもよい少なくとも1種のブタジエン/スチレンランダム共重合体系エラストマーブロックと、少なくとも1種のスチレン系熱可塑性ブロックとを含む前記ブロック共重合体熱可塑性エラストマー(TPE)の含有量が、70から100phrに及ぶ範囲である、請求項1〜5のいずれか1項記載の積層体。
前記第2層の前記組成物において、水素添加されていてもよい少なくとも1種のブタジエン/スチレンランダム共重合体系エラストマーブロックと少なくとも1種のスチレン系熱可塑性ブロックとを含む前記ブロック共重合体熱可塑性エラストマー(TPE)の含有量が、5から49phrに及ぶ範囲内である、請求項1〜8のいずれか1項記載の積層体。
前記第2層の前記ジエンエラストマーが、本質的に不飽和のジエンエラストマー及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか1項記載の積層体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0006]主にTPEエラストマーを含む層を使用することで従来のタイヤを改善する一方で、該層を隣接する架橋又は非架橋のジエン層に容易に接着させることを目的に、本出願人は驚くべきことに本発明の積層体を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0007]そこで、本発明のサブジェクトマターは、タイヤ用エラストマー積層体であって、前記積層体は少なくとも2層の隣接するエラストマーの層を有し、
‐ 第1層は、少なくとも1種の熱可塑性エラストマー(TPE)をベースとする組成物で構成され、前記熱可塑性エラストマーが、水素添加されていてもよい少なくとも1種のブタジエン/スチレンランダム共重合体系エラストマーブロックと、少なくとも1種のスチレン系熱可塑性ブロックとを含むブロック共重合体であり、含有量が50phrより多く100phr(phr:エラストマー100質量部に対する質量部)に及ぶ範囲内であり、
‐ 第2層は、少なくとも1種のジエンエラストマーと、少なくとも1種の熱可塑性エラストマー(TPE)とをベースとする組成物で構成され、前記ジエンエラストマーの含有量が50phrより多く95phrに及ぶ範囲内であり、前記熱可塑性エラストマーが水素添加されていてもよい少なくとも1種のブタジエン/スチレンランダム共重合体系エラストマーブロックと少なくとも1種のスチレン系熱可塑性ブロックとを含むブロック共重合体であり、前記熱可塑性エラストマーの含有量が5phrから50phr未満に及ぶ範囲である。
【0006】
[0008]この積層体により、本発明の多層積層体の2層間の接着が満足のいくものとなる。従来技術の解決策に比べると、本発明は非常に簡潔である。なぜならば、本発明によると、TPE層をジエン層に接着させる役目だけの層をなくすことが可能となるからで、タイヤが重くなることも、タイヤの転がり抵抗を増加させることもない。
[0009]本発明のもう一つの主要な利点は、接着用の追加のエラストマー層を使わずに、主としてジエンによる層(従来のタイヤ組成物同様)が熱可塑性エラストマー層に接着可能となるので、材料の無駄をなくすことができる。材料の無駄がないことは、更には環境保全にも非常に好適である。
[0010]本発明は上記で定義した積層体であって、好ましくは、積層体中の前記熱可塑性エラストマーの数平均分子量が30,000g/molと500,000g/molの間である積層体に関する。
【0007】
[0011]また、本発明は前記で定義した積層体であって、好ましくは、熱可塑性エラストマーのエラストマーブロックがガラス転移温度25℃未満のエラストマーから選択される積層体に関する。SBRエラストマーブロックのスチレン含量は、10から60%に及ぶ範囲内がよい。また、SBRエラストマーブロックでは、ブタジエン部との1,2-結合の割合が4から75mol%に及ぶ範囲内であり、1,4-結合の割合が20から96mol%に及ぶ範囲内であるとよい。
[0012]本発明は上記で定義した積層体であって、好ましくは、第1層のSBRエラストマーブロックが、ブタジエン部位の二重結合の25から100mol%、更には50から100mol%、より好ましくは80から100mol%に及ぶ割合で水素添加されている積層体に関する。
[0013]また、本発明は前記で定義した積層体であって、好ましくは、第2層のSBRエラストマーブロックが、ブタジエン部位の二重結合の0から80mol%、更には20から70mol%、より好ましくは30から60mol%に及ぶ割合で水素添加されている積層体に関する。
[0014]また、本発明は前記で定義した積層体であって、好ましくは、ブロック共重合体の熱可塑性スチレンブロックが、ガラス転移温度が80℃より高いポリマーから選択され、半結晶性熱可塑性ブロックの場合、融点が80℃より高いポリマーから選択される、積層体に関する。ブロック共重合体中の熱可塑性スチレンブロックの割合は、5から70%に及ぶ範囲内がよい。
【0008】
[0015]また、本発明は前記で定義した積層体であって、好ましくは、ブロック共重合体の熱可塑性ブロックがポリスチレンから選択され、好ましくは、未置換スチレン、メチルスチレン、パラ-t-ブチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、フルオロスチレン、パラ-ヒドロキシスチレン及びこれらの混合物からなる群から選択されるスチレンモノマーから得られたポリスチレンから選択される。ブロック共重合体の熱可塑性ブロックは、未置換スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、α,2-ジメチルスチレン、α,4-ジメチルスチレン、ジフェニルエチレン、パラ-t-ブチルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、2,4-ジクロロスチレン、2,6-ジクロロスチレン、2,4,6-トリクロロスチレン、o-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、p-ブロモスチレン、2,4-ジブロモスチレン、2,6-ジブロモスチレン、2,4,6-トリブロモスチレン、o-フルオロスチレン、m-フルオロスチレン、p-フルオロスチレン、2,4-ジフルオロスチレン、2,6-ジフルオロスチレン、2,4,6-トリフルオロスチレン、パラ-ヒドロキシスチレン及びこれらの混合物からなる群から選択されるスチレンモノマーから得られたポリスチレンから選択されるとよい。より好ましくは、ブロック共重合体の熱可塑性ブロックは未置換のポリスチレンから得られる。
[0016]また、本発明は前記で定義した積層体であって、好ましくは、前記第1層の組成物において、水素添加されていてもよい少なくとも1種のブタジエン/スチレンランダム共重合体系エラストマーブロックと、少なくとも1種のスチレン系熱可塑性ブロックとを含むブロック共重合体熱可塑性エラストマー(TPE)の含有量が、70から100phr、好ましくは、80から100phrに及ぶ範囲内である積層体に関する。
【0009】
[0017]また、本発明は前記で定義した積層体であって、好ましくは、水素添加されていてもよい少なくとも1種のブタジエン/スチレンランダム共重合体系エラストマーブロックと、少なくとも1種のスチレン系熱可塑性ブロックとを含むブロック共重合体熱可塑性エラストマーが、第1層の唯一のエラストマーである、積層体に関する。
[0018]また、本発明は前記で定義した積層体であって、好ましくは、第1層が架橋系を含まない積層体に関する。
[0019]また、本発明は前記で定義した積層体であって、好ましくは、第1層が、置換されていてもよいポリフェニレンエーテルユニットをベースとする熱可塑性樹脂を更に含む、積層体に関する。好ましくは、置換されていてもよいポリフェニレンエーテルユニットをベースとする熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、ASTM D3418、1999によるDSCで測定した際、0℃から215℃に及ぶ範囲内である。また、置換されていてもよいポリフェニレンエーテルユニットを含む熱可塑性樹脂は、好ましくは、一般式(I)で表されるポリフェニレンユニットを主に含む化合物である。
【0010】
【化1】
(I)
【0011】
式中、
- R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ互いに独立して、水素、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ハロゲン、アミノ基、アルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基、又は、任意でヘテロ原子を含んでいても、置換されていてもよい、炭素原子を少なくとも2個有する炭化水素基から選択される同じ又は異なる基を示し、R
1とR
3、またR
2とR
4はそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって、式(I)の化合物のベンゼン環に縮合して1個又はそれより多い縮合環を形成してもよく、
- nは3から300に及ぶ範囲内の整数である。
[0020]また、本発明は前記で定義した積層体であって、好ましくは、R
1及びR
2がアルキル基、とりわけメチル基を示し、R
3及びR
4が水素原子を表す積層体に関する。
[0021]また、本発明は前記で定義した積層体であって、好ましくは、置換されていてもよいポリフェニレンエーテルユニットをベースとする前記熱可塑性樹脂の含有量が、1から90phr、好ましくは2から80phr、より好ましくは3から60phr、更に好ましくは5から60phrに及ぶ範囲内である、積層体に関する。
【0012】
[0022]また、本発明は前記で定義した積層体であって、好ましくは、水素添加されていてもよい少なくとも1種のブタジエン/スチレンランダム共重合体系エラストマーブロックと少なくとも1種のスチレン系熱可塑性ブロックとを含むブロック共重合体熱可塑性エラストマー(TPE)の含有量が、第2層の組成物において、5から49phr、より好ましくは10から49phrに及ぶ範囲内である、積層体に関する。
[0023]また、本発明は前記で定義した積層体であって、好ましくは、第2層のジエンエラストマーが、本質的に不飽和のジエンエラストマー及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される、積層体に関する。好ましくは、前記ジエンエラストマーは、炭素原子4個〜12個の共役ジエンモノマーの重合で得られたホモポリマー、1種以上の共役ジエン同士の共重合で得られた共重合体、1種以上の共役ジエンと炭素原子8個〜20個を有する1種以上のビニル芳香族化合物との共重合で得られた共重合体、及びこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、前記ジエンエラストマーは、ポリブタジエン、合成ポリイソプレン、天然ゴム、ブタジエン共重合体、イソプレン共重合体及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される。
【0013】
[0024]また、本発明は前記で定義した積層体であって、好ましくは、第2層が補強充填剤を含み、好ましくは該補強充填剤がカーボンブラック及び/又はシリカである、積層体に関する。好ましくは、主たる補強充填剤がシリカである。
[0025]また、本発明は前記で定義した積層体を含むタイヤに関する。
[0026]更に、本発明は、圧縮空気のつまった物体における前記で定義した積層体の使用に関する。
[0027]より具体的には、本発明は、前記で定義した積層体であって、自転車等のエンジンのついていない車両、又は、乗用車タイプ、SUV(「スポ―ツ汎用車」)等の自動車、二輪車両(特にオートバイ)、航空機、並びに、大型バン、「ヘビーデューティー」車、即ち、地下鉄、バス、重量車両の道路運送車両(大型トラック、牽引自動車、トレーラー)又は農業用車両もしくは工事現場用車両などのオフロード用車両、又はそのほかの運送又は操縦車両から選択される産業用車両に装着することを意図するタイヤに使用される、積層体に関する。
[0028]本発明及びその有利な点については、以下に記載の説明及び実施形態に鑑みれば容易に理解できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0029]本明細書において、特に指定のないかぎり、記載のパーセント(%)はすべて質量パーセントである。
[0030]更に、本特許出願の定義において、「phr」という用語は、熱可塑性エラストマーとジエンエラストマーとを混合したエラストマー100部に対する質量部を意味する。本発明の定義では、熱可塑性エラストマー(TPE)はエラストマーの範疇に含まれる。
[0031]更に、「aとbとの間」という表現で表される数値の間隔は、aより大きく、bより小さい(即ち、極限点のaとbは含まない)数値範囲を示し、一方、「aからb」という表現で表される数値の間隔は、aからbまで(即ち、極限点aとbとを含む)の数値範囲を示す。
【0015】
[0032]本発明の要件として、本特許出願では、「熱可塑性エラストマー層」又は「TPE層」は、熱可塑性エラストマーがジエンエラストマーよりも質量的に多く含まれるエラストマーの層を示し、「ジエン層」は、ジエンエラストマーが熱可塑性エラストマーよりも質量的に多く含まれるエラストマーの層と規定する。
[0033]本発明の積層体は、記載の2層間、即ち、本発明の要件を明確にすると、第1層及び第2層(それぞれ熱可塑性エラストマー層とジエン層)の間は接着が優れている。つまり、本発明によると、前記で定義した熱可塑性エラストマー層が前記で定義したジエン層と接着するのは、SBRブロックとPSブロックとを有する特定量のTPEがジエン層に存在することで、ジエン層が熱可塑性エラストマー層中のSBRブロックとPSブロックとを有するTPEと相溶するからである。
[0034]本発明の詳細を以下に説明する。最初に本発明による積層体の2層に共通となる潜在的な成分について、次に、本発明による積層体のそれぞれの層に特有の要素について、そして最後に本発明による積層体の2層間における接着の説明をする。
【0016】
I.多層積層体の層に共通となる潜在的構成要素
[0035]本発明の多層積層体は、処方の異なる「熱可塑性エラストマー層」と「ジエン層」と呼ばれる少なくとも2種のエラストマー層を設けることを必須の特徴とし、前記多層積層体の層は、以下に定義するSBRブロックとPSブロックとを有する熱可塑性エラストマー(TPE)を少なくとも1種含む。少なくともジエン層は、TPEに加えて後述のジエンエラストマーも含む。
[0036]本発明による多層積層体の層は、エラストマー類に加えて、存在してもしなくてもよい必須ではない他の成分を含んでいてもよく、それらのうち、いくつかを後述するが、前記エラストマーと一緒に含む。
【0017】
I-1.SBRブロックとPSブロックとを有する特定の熱可塑性エラストマー(TPE)
[0037]一般に、熱可塑性エラストマー(「TPE」と略記する)は、エラストマーと熱可塑性ポリマーとの中間の構造を有する。熱可塑性エラストマーは、熱可塑性の硬いブロックが柔軟なエラストマーブロックを介して連結した構成のブロック共重合体である。
[0038]本発明の要件として、前記特定の熱可塑性エラストマーは、水素添加されていてもよい少なくとも1種のブタジエン/スチレンランダム共重合体系(SBR)エラストマーブロックと、少なくとも1種のスチレン共重合体系(PS)熱可塑性ブロックとを含むブロック共重合体である。以下、SBRブロックに言及する際は、該ブロックは、主として(即ち50質量%より多く、好ましくは80質量%より多く、さらに好ましくは100質量%)ブタジエン/スチレンランダム共重合体で構成されるエラストマーのブロックであり、前記共重合体は、水素添加されていてもされていなくてもよい。スチレンブロックに言及する際は、該ブロックは、主として(即ち50質量%より多く、好ましくは80質量%より多く、さらに好ましくは100質量%)、ポリスチレン等のスチレンポリマーで構成されるブロックである。
【0018】
1.1.1 SBRブロックとPSブロックとを有するTPEの構造
[0039] SBRブロックとPSブロックとを有するTPEの数平均分子量(Mnで表される)は、好ましくは30,000と500,000g/molの間、より好ましくは40,000と400,000g/molの間である。ここに示した最低限度を下回ると、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEのSBRエラストマー鎖間で凝集の恐れがある。特に、希釈(エクステンダー油の存在下)によりその危険がある。更には、加工温度の上昇が破断点特性などの機械的性質に影響する恐れがあり、結果的には「熱(hot)」性能の低減につながる。また、Mnが過度に高くなると、加工に悪影響を及ぼすことがある。50,000から300,000g/molの範囲、より好ましくは60,000から150,000g/molの範囲の値が、タイヤ積層体、特にはタイヤトレッドを有するタイヤ用積層体にはとりわけ適切であることがわかった。
[0040]SBRブロックとPSブロックとを有するTPEエラストマーの数平均分子量(Mn)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による公知方法で求める。例えば、熱可塑性スチレンエラストマーの場合、試料を約1g/Lの濃度でテトラヒドロフランに事前に溶解した後、溶液を0.45μmの多孔性濾紙で濾過を行ってから注入する。使用する装置はウォーターズ・アライアンスのクロマトグラフィー装置のシリーズである。溶離液はテトラヒドロフラン、流速0.7ml/分、システム温度は35℃で、分析時間は90分である。4本セットのウォーターズカラム、商品名Styragel(HMW7、HMW6E及び2本のHT6E)を使用する。ポリマー試料溶液の流入量は100μlである。検出器はウォーターズ2410示差式屈折計で、このクロマトグラフィーのデータを利用するための関連ソフトウェアは、ウォーターズミレニアムシステムである。計測した平均分子質量を、ポリスチレン標準で作成した較正曲線と比較する。この条件は当該分野の当業者であれば調整可能である。
【0019】
[0041]SBRブロックとPSブロックとを有するTPEエラストマーの多分散指数PIの値(注:PI = Mw/Mn、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)は、好ましくは3未満、より好ましくは2未満、更に好ましいのは1.5未満である。
[0042]公知の方法では、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEは2つのガラス転移温度ピークを有する(TgはASTM D3418に準じて測定する)。低い方の温度は、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEのSBRエラストマー部位に関連しており、高い方の温度は、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEの熱可塑性PS部位に関連している。そこで、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEの柔軟性のあるSBRブロックの方は、周囲温度(25℃)より低いTgで定義され、硬いPSブロックのTgは80℃より高い。
[0043]本出願において、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEのガラス転移温度に言及する場合、このガラス転移温度は、SBRエラストマーブロックに対応するTgである。SBRブロックとPSブロックとを有するTPEのガラス転移温度(「Tg」)は、好ましくは25℃以下、より好ましくは10℃以下である。Tg値がこの最低値より大きいと、トレッドを超低温で使用した場合にトレッド性能が低下することがある。このような使用には、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEのTgは-10℃以下であることが更に好ましい。また、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEのTgは、-100℃より高いほうが好ましい。
【0020】
[0044]SBRブロックとPSブロックとを有するTPEは、ブロック数が少ない(5未満、一般的には2又は3)共重合体であるとよく、その場合、ブロックは15,000g/molより高質量であることが好ましい。SBRブロックとPSブロックとを有するTPEは、例えば、熱可塑性ブロック1個とエラストマーブロック1個とを有するジブロック共重合体であってもよい。また、2個の硬いセグメントを1個の柔軟なセグメントで連結した三元ブロックエラストマーであることも多い。この硬いセグメントと柔軟なセグメントは線状に、又は星型もしくは分岐形状に配置されていてもよい。通常、これらのセグメント又はブロックには、それぞれ基本単位(例えば、スチレン/SBR/スチレンブロック共重合体では、スチレン単位やブタジエン/スチレン単位)が少なくとも5個より多く、一般に10個より多く含まれることが多い。
[0045]また、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEは、より小さなブロックを数多く(30個より多く、一般には50から500個)有していてもよく、その場合、ブロックの質量が比較的小さいことが好ましく、例えば500から5000g/molである。結果、このようなSBRブロックとPSブロックとを有するTPEは、SBRブロックとPSブロックとを有するマルチブロックタイプのTPEと呼ばれ、エラストマーブロック/熱可塑性ブロックのつながりになる。
【0021】
[0046]第1の変形によると、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEが線状である。例えば、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEがジブロック共重合体、即ち、PSブロック/SBRブロックである。また、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEは、トリブロック共重合体、即ち、PSブロック/SBRブロック/PSブロックであってもよく、これは、中心のエラストマーブロック1個と、エラストマーブロックの両端それぞれの末端熱可塑性ブロックである。同様に、SBRブロックとPSブロックとを有するマルチブロックタイプのTPEは、SBRエラストマーブロック/熱可塑性PSブロックの線状タイプでもよい。
[0047]本発明の別な変形によると、本発明の要件に使用するSBRブロックとPSブロックとを有するTPEが、少なくとも3個の分岐を有する星型分岐状である。例えば、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEは、少なくとも3つの分岐を有する星型分岐SBRエラストマーブロックと、該SBRエラストマーブロックの各分岐の先端に位置する熱可塑性PSブロックとで構成されてもよい。中央のエラストマーの分岐の数は様々で、例えば3から12個、好ましくは3から6個である。
[0048]本発明の更に別な変形によると、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEは、分岐又はデンドリマーの形態である。SBRブロックとPSブロックとを有するTPEが、分岐状又はデンドリマーのSBRエラストマーブロックと、該デンドリマーエラストマーブロックの各分岐の先端に位置する熱可塑性PSブロックとから構成されてもよい。
【0022】
1.1.2 エラストマーブロックの性状
[0049]本発明の目的のためには、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEのエラストマーブロックのすべてが、当該分野の当業者に公知であるブタジエン/スチレンランダム共重合体タイプ(SBR)のエラストマーであるとよい。
[0050]SBRブロックとPSブロックとを有するTPEにおけるSBRエラストマーブロックの割合は30から95%、好ましくは40から92%、より好ましくは50から90%に及ぶ範囲内である。
[0051]SBRブロックは、ASTM D3418、1999規格に準じたDSCで測定したTg(ガラス転移温度)が25℃未満、好ましくは10℃未満、より好ましくは0℃未満が好ましく、-10℃未満が非常に好ましい。また、SBRブロックのTgは-100℃より高く、Tgが20℃と-70℃の間、より具体的には0℃と-50℃の間であるSBRブロックが特に好適である。
【0023】
[0052]公知の如く、SBRブロックには、スチレンの含有量、ブタジエン部との1,2-結合の含有量、ブタジエン部との1,4-結合の含有量が含まれる。ブタジエン部との1,4-結合の含有量は、ブタジエン部位が水素添加されていない場合、トランス-1,4-結合とシス-1,4-結合の含有量で構成される。
[0053]とりわけ、スチレン含有量が例えば10から60質量%、好ましくは20から50質量%に及ぶ範囲内で、ブタジエン部位については、1,2-結合含有量が4から75%(mol%)及び1,4-結合の含有量が20から96%(mol%)のSBRブロックの使用が特に好ましい。
[0054]SBRブロックの水素添加の程度に応じて、SBRブロックのブタジエン部位における二重結合の含有量は減少し、完全に水素添加されると0mol%まで減少する。
[0055]本発明による積層体の第1層で使用されるSBRブロックとPSブロックとを有するTPEにおいては、SBRエラストマーブロックの水素添加は、ブタジエン部位の二重結合が25から100mol%の割合で水素添加されている程度が好ましい。ブタジエン部位の二重結合は、より好ましくは50から100mol%、極めて好ましくは80から100mol%が水素添加されているとよい。
【0024】
[0056]本発明による積層体の第2層で使用されるSBRブロックとPSブロックとを有するTPEにおいては、SBRエラストマーブロックの水素添加は、ブタジエン部位の二重結合が0から80mol%の割合で水素添加されている程度が好ましい。ブタジエン部位の二重結合は、より好ましくは20から70mol%、極めて好ましくは30から60mol%が水素添加されているとよい。
[0057]本発明の定義の範囲内では、SBRのスチレン部位は、スチレンモノマーから選択されるモノマー、特には未置換スチレン、置換スチレン及びこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーで構成される。置換スチレンのなかで、メチルスチレン(好ましくは、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン及びp-メチルスチレン、α-メチルスチレン、α,2-ジメチルスチレン、α,4-ジメチルスチレン及びジフェニルエチレン)、パラ-t-ブチルスチレン、クロロスチレン(好ましくは、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、2,4-ジクロロスチレン、2,6-ジクロロスチレン及び2,4,6-トリクロロスチレン)、ブロモスチレン(好ましくは、o-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、p-ブロモスチレン、2,4-ジブロモスチレン、2,6-ジブロモスチレン及び2,4,6-トリブロモスチレン)、フルオロスチレン(好ましくは、o-フルオロスチレン、m-フルオロスチレン、p-フルオロスチレン、2,4-ジフルオロスチレン、2,6-ジフルオロスチレン及び2,4,6-トリフルオロスチレン)、パラ-ヒドロキシスチレン及びこれらの混合物からなる群から選択される置換スチレンが好ましく選択されることになる。
【0025】
[0058]本発明の好適な実施形態の一つによると、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEのエラストマーブロックは、数平均分子量(「Mn」)が全体で25,000から350,000g/mol、好ましくは35,000から250,000g/molであると、タイヤトレッドとしての使用に適応する良好なゴム状弾性と十分な機械的強度を、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEに付与することができる。
[0059]また、エラストマーブロックを上記で定義したような数種のエラストマーブロックで構成することもできる。
1.1.3 熱可塑性ブロックの性状
[0060]熱可塑性ブロックの定義には、硬い熱可塑性ブロックのガラス転移温度(Tg)という特性を使用する。この特性については当該分野の当業者には周知である。このガラス転移温度によって、特には工業的加工(転移)温度を選択することができる。非晶質ポリマー(又は非晶質ポリマーブロック)の場合は、加工温度をTgよりも大幅に高い温度に選択する。半結晶ポリマー(又は半結晶ポリマーブロック)という特定の場合は、ガラス転移温度よりも高い融点に注視すればよい。この場合、考慮中のポリマー(又はポリマーブロック)の加工温度を選択できるのはガラス転移温度ではなく融点(M.p.)である。そのため、今後、「Tg」(又はM.p.が適当であればM.p.)の言及をする際は、加工温度を決定するのに用いる温度であることを踏まえる必要がある。
【0026】
[0061]本発明の要件のためには、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEエラストマーは、好ましくは、Tg(又はM.p.が適当であればM.p.)が80℃以上で、かつ、スチレンモノマーの重合体(PS)で構成された熱可塑性ブロックを1個以上含む。とりわけ、この熱可塑性ブロックのTg(又はM.p.が適当であればM.p.)は、80℃から250℃の範囲内であるとよい。好ましくは、この熱可塑性ブロックのTg(又はM.p.が適当であればM.p.)は80℃から200℃、より好ましくは80℃から180℃であるとよい。
[0062]SBRブロックとPSブロックとを有するTPEにおいて、熱可塑性PSブロックの割合は5から70%、好ましくは8から60%、より好ましくは10から50%に及ぶ範囲内である。
[0063]SBRブロックを有するTPEの熱可塑性ブロックは、ポリスチレンブロックである。好適なポリスチレンは、未置換スチレン、置換スチレン及びこれらの混合物からなる群から選択されるスチレンモノマーから得られる。置換スチレンのなかでは、メチルスチレン(好ましくは、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン及びp-メチルスチレン、α-メチルスチレン、α,2-ジメチルスチレン、α,4-ジメチルスチレン及びジフェニルエチレン)、パラ-t-ブチルスチレン、クロロスチレン(好ましくは、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、2,4-ジクロロスチレン、2,6-ジクロロスチレン及び2,4,6-トリクロロスチレン)、ブロモスチレン(好ましくは、o-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、p-ブロモスチレン、2,4-ジブロモスチレン、2,6-ジブロモスチレン及び2,4,6-トリブロモスチレン)、フルオロスチレン(好ましくは、o-フルオロスチレン、m-フルオロスチレン、p-フルオロスチレン、2,4-ジフルオロスチレン、2,6-ジフルオロスチレン及び2,4,6-トリフルオロスチレン)、パラ-ヒドロキシスチレン及びこれらの混合物からなる群から選択される置換スチレンモノマーが選択されることが好ましい。
【0027】
[0064]特に好ましくは、SBRブロックを有するTPEの熱可塑性ブロックは、未置換のポリスチレンから得られたブロックであるとよい。
[0065]本発明の変形の一つによると、前記で定義したポリスチレンブロックは、少なくとも1種の他のモノマーと共重合して、前記で定義したようなTg(又はM.p.が適当であればM.p.)を有する熱可塑性ブロックを形成してもよい。
[0066]例示であるが、重合したモノマーと共重合が可能な他のモノマーは、ジエンモノマー、とりわけ炭素原子を4から14個有する共役ジエンモノマー、炭素原子を8から20個有するビニル芳香族系モノマーから選択することができる。
[0067]本発明によると、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEの熱可塑性ブロックは、全体で数平均分子量(「Mn」)が5000から150,000g/molの範囲で、その場合、タイヤトレッドとしての使用に適応する良好なゴム状弾性と十分な機械的強度をSBRブロックとPSブロックとを有するTPEに付与することができる。
[0068]また、熱可塑性ブロックが、上記で定義したような数種の熱可塑性ブロックで構成されていてもよい。
【0028】
1.1.4 SBRブロックとPSブロックとを有するTPEの例
[0069]SBRブロックとPSブロックとを有する市販のTPEエラストマーの一例として、旭化成株式会社がSOE S1611、SOE L605又はSOE L606といった商品名で販売しているSOEタイプのエラストマーが挙げられる。
1.1.5 各層におけるSBRブロックとPSブロックとを有するTPEの含有量
[0070]タイヤ積層体の各層におけるSBRブロックとPSブロックとを有するTPEの含有量について、以下に各層ごとの具体的な説明を示す。
I-2 ジエンエラストマー
[0071]本発明の多層積層体の熱可塑性エラストマー層を使用可能にするには、前記熱可塑性エラストマーで基本的に十分であるが、ジエンエラストマーをこの熱可塑性エラストマー層で使用するとよい。ジエン層については、ジエンエラストマーを熱可塑性エラストマーよりも多く含む。
【0029】
[0072]そこで、本発明の多層積層体は、少なくとも1種(即ち、1種又はそれより多い)のジエンエラストマーを含み、ジエンエラストマーは単独でも、又は、少なくとも1種(即ち、1種又はそれより多い)の別のジエンエラストマー (又はゴム)との混合物として使用してもよい。
[0073]ジエンエラストマーは、本発明の積層体の各層において任意である場合と任意ではない場合があるが、その含有量については本発明の積層体の各層の具体的な特質とともに、以下に説明する。
[0074]「ジエン」エラストマー又はゴムとは、公知のごとく、ジエンモノマー(共役又は非共役炭素‐炭素二重結合を2つ有するモノマー)から少なくとも一部(即ち、ホモポリマー又は共重合体)が生じるエラストマー(1つ以上と解される)を意味すると理解すればよい。
[0075]このようなジエンエラストマーは、「本質的に不飽和」又は「本質的に飽和」の2つのカテゴリーに分類することができる。
【0030】
[0076]「本質的に不飽和」とは、ジエン源(共役ジエン)となるユニットの含有量が15%(mol%)より多い共役ジエンモノマーから少なくとも一部が生じるジエンエラストマーを一般的に意味すると解される。「本質的に不飽和である」ジエンエラストマーというカテゴリーにおいて、「高度に不飽和である」ジエンエラストマーとは、ジエン源(共役ジエン)のユニット含有量が50%より多いジエンエラストマーを特に意味すると解される。
[0077]そこで、ある種のブチルゴム類又はジエンとEPDMタイプのα-オレフィンとの共重合体類などのジエンエラストマーを、「本質的に飽和の」ジエンエラストマー(ジエン源となるユニットの含有量が低い、又は非常に低く、通常15%未満)と呼ぶことができる。
[0078]これらの定義を考えると、前記カテゴリーにかかわらず、本発明による組成物で使用可能なジエンエラストマーは、より詳細には以下を意味すると解される。
(a)炭素原子4個から12個を有する共役ジエンモノマーを重合して得られたホモポリマー、
(b)1種以上の共役ジエン同士、又は共役ジエンと炭素原子8個から20個を有する1種以上のビニル芳香族化合物との共重合により得られた共重合体、
【0031】
(c)エチレンと炭素原子3個から6個のα-オレフィンと、炭素原子6個から12個の非共役ジエンモノマーとの共重合により得られた三元共重合体で、例えば、エチレンとプロピレンと、とりわけ1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン又はジシクロペンタジエン等の上記タイプの非共役ジエンモノマーとから得られたエラストマー、
(d)イソブテンとイソプレン(ジエンブチルゴム)との共重合体、また、この種の共重合体のハロゲン化共重合体、特に塩化又は臭化共重合体。
[0079]いかなるタイプのジエンエラストマーも本発明で使用することができる。組成物が加硫系を含む場合は、本質的に不飽和なエラストマーの使用が好ましく、特に、上記(a)及び(b)タイプの使用が、本発明による多層積層体の製作には好ましい。
[0080]共役ジエンとして、以下のものが特に好適である。1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジ(C
1-C
5アルキル)-1,3-ブタジエン類、例えば、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン又は2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、アリール-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン又は2,4-ヘキサジエンである。ビニル芳香族化合物としては、例えば以下が好適である。スチレン、オルト-、メタ-又はパラ-メチルスチレン、「ビニルトルエン」の市販の混合物、パラ-(t-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン又はビニルナフタレン。
【0032】
[0081]共重合体は、ジエンユニットを質量比で99%と20%の間、ビニル芳香族ユニットを質量比で1%と80%の間で含むとよい。エラストマーはどんな微細構造を有していてもよく、採用する重合条件、特に、調節剤及び/又はランダム化剤の有無や使用する調節剤及び/又はランダム化剤の量によって微細構造は変わる。エラストマーは、例えば、分散液又は溶液状に調製してもよく、カップリング剤及び/又は星型分岐剤又は官能化剤を用いて、カップリング及び/又は星型分岐又は官能化することができる。例えばカーボンブラックにカップリングするには、C-Sn結合を含む官能基又はアミノ化官能基、例えばベンゾフェノンが挙げられ、シリカ等の無機の補強充填剤にカップリングするには、シラノール官能基又は末端にシラノールを有するポリシロキサン官能基(例えば、FR2740778又は米国特許第6013718号記載)、アルコキシシラン基(例えば、FR2765882又は米国特許第5977238号記載)、カルボキシル基(例えば、WO01/92402又は米国特許第6815473号、WO2004/096865又は米国特許第2006/0089445号記載)、或は、ポリエーテル基(例えば、EP1127909又は米国特許第6503973号記載)が挙げられる。官能化エラストマーのその他の例としては、エポキシ化エラストマー(SBR、BR、NR又はIR)が挙げられる。
【0033】
I-3 ナノメートル系(又は補強用)充填剤及びマイクロメートル系(又は非補強用)充填剤
[0082]本発明の多層積層体を使用可能にするには、上記エラストマーで基本的には十分であるが、特に、本発明の積層体のジエン層又は第2層においては、組成物中に補強充填剤を使用するとよい。
[0083]補強充填剤を使用する場合、タイヤの製造に通常使用されているいずれのタイプの充填剤も利用できる。例えば、カーボンブラック等の有機充填剤、シリカ等の無機充填剤、又は、これら二つのタイプの充填剤混合物で、特にカーボンブラックとシリカとの混合物である。とりわけ第2層においては、主要補強充填剤としてシリカを使用するとよい。
[0084]無機補強充填剤を使用する場合、公知のごとく、無機充填剤(その粒子表面)とエラストマーとの化学的及び/又は物理的性質を十分に連結することを目的とした、少なくとも二官能価のカップリング剤(又は結合剤)、とりわけ二官能価オルガノシラン又はポリオルガノシロキサンを使用することができる。
[0085]同様に、本発明による多層積層体の層組成物は、1種またはそれより多くのマイクロメートル系充填剤、即ち、「非補強用」充填剤又は不活性充填剤と呼ばれる、この分野の当業者には公知の板状充填剤等を含有してもよい。
【0034】
1.4 PPE樹脂
[0086]本発明の多層積層体を使用可能にするには、上記エラストマーで基本的に十分であるが、特に、本発明による積層体の熱可塑性エラストマー層では、組成物中にPPE樹脂を使用してもよい。
[0087]即ち、第1層は特に好ましいが、本発明の積層体は、置換されていてもよいポリフェニレンエーテルユニット(「PPE樹脂」と略す)を含む熱可塑性樹脂を含有してもよい。この種の化合物については、例えば、専門辞典「Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry(工業化学のためのウルマン百科事典)」VCH出版、A 21巻、605-614頁、第5版、1992に記載がある。
[0088]本発明の条件で使用可能なPPE樹脂は、ASTM D3418、1999の規格にしたがってDSCにより計測した際のガラス転移温度(Tg)が、0℃から215℃に及び範囲、好ましくは5℃から200℃、より好ましくは5℃から185℃に及ぶ範囲にある。PPE樹脂のTgが0℃より低いと、それを含む組成物はTgを十分に変えることができず、一方、PPE樹脂のTgが215℃を超えると、特に均一な混合物を得るという観点から製造上の問題に遭遇するおそれがある。
[0089]好ましくは、PPE樹脂は、一般式(I)のポリフェニレンユニットを主として含む化合物であるとよい。
【0036】
式中、
- R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ互いに独立して、水素、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ハロゲン、アミノ基、アルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基、又は、任意でヘテロ原子を含んでいても置換されていてもよい、炭素原子を少なくとも2個有する炭化水素基から選択される同じ又は異なる基を示し、R
1とR
3、またR
2とR
4はそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって、式(I)の化合物のベンゼン環の1個又はそれより多い縮合環を形成してもよく、
- nは3から300に及ぶ範囲内の整数である。
[0090]好ましくは、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ互いに独立して、下記から選択される同じ又は異なる基を表す。
‐水素、
‐ヒドロキシル基、アルコキシ基、ハロゲン、アミノ基、アルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基、
‐炭素原子を1個から25個(好ましくは2個から18個)有する直鎖、分岐又は環状アルキル基で、任意で窒素、酸素及び硫黄から選択されるヘテロ原子を有していてもよく、更に任意でヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基又はハロゲンで置換されていてもよい、
‐炭素原子を6個から18個(好ましくは6個から12個)有するアリール基で、任意でヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキル基又はハロゲンで置換されていてもよい。
【0037】
[0091]より好ましくは、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ互いに独立して、下記から選択される同じ又は異なる基を表す。
‐水素、
‐ヒドロキシル基、炭素原子1から6個のアルコキシ基、ハロゲン基、アミノ基、炭素原子1個から6個のアルキルアミノ基又は炭素原子2個から12個のジアルキルアミノ基、
‐炭素原子を1個から12個(好ましくは2個から6個)有する直鎖、分岐又は環状アルキル基で、任意でヘテロ原子を有していてもよく、更に任意でヒドロキシル基、炭素原子1個から6個のアルコキシ基、アミノ基、炭素原子1個から6個のアルキルアミノ基、炭素原子2個から12個のジアルキルアミノ基又はハロゲンで置換されていてもよい、
‐炭素原子を6個から18個(好ましくは6個から12個)有するアリール基で、任意でヒドロキシ基、炭素原子1個から6個のアルコキシ基、アミノ基、炭素原子1個から6個のアルキルアミノ基、炭素原子2個から12個のジアルキルアミノ基、炭素原子1個から12個のアルキル基又はハロゲンで置換されていてもよい。
【0038】
[0092]更に好ましくは、R
1及びR
2がアルキル基、とりわけメチル基を表し、R
3及びR
4が水素原子を表す。この場合のPPE樹脂は、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)である。
[0093]また、好ましくはnが3から50までの範囲、より好ましくは5から30、更には6から20に及ぶ範囲内の整数であるとよい。
[0094]好ましくは、PPE樹脂が、一般式(I)のポリフェニレンユニットを80質量%より多く、より好ましくは95質量%より多く含む化合物であるとよい。
[0095]ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)の例として、特に、サビック社製のNoryl SA 120又は旭化成株式会社製のXyron S202Aが挙げられる。
【0039】
[0096]公知の如く、PPE樹脂は、例えば調節可能な数平均分子量(Mn)が特には15,000から30,000g/molであることが多く、このように分子量が大きい場合、Mnは、当該分野の当業者に公知の方法でSEC(GPCとも呼ばれ、米国特許第4588806号、欄8参照)により測定される。本発明を満たすには、通常見受けられる質量よりもMnが小さいPPE樹脂、特には6000g/mol未満、好ましくは3500g/mol未満、とりわけ、Mnが700から2500g/molに及ぶ範囲内であるPPE樹脂も本発明の組成物に好ましく使用することができる。6000g/mol未満のPPEの数平均分子量(Mn)はNMRにより測定する。従来のSEC測定では正確さが十分ではないからである。このNMR測定は、当該分野の当業者に公知な方法により、鎖末端の官能基のアッセイ又は重合開始剤のアッセイのどちらかにより行う。例えば、Subhash C. Shit及びSukumar Maitiの「Application of NMR spectroscopy in molecular weight determination of polymers(ポリマーの分子量測定におけるNMR分光学の応用)」"European Polymer Journal" 22巻、12号、1001‐1008ページ(1986)で説明されている。
[0097]PPE樹脂の多分散度PI(注:PI = Mw/Mnで、この場合、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)の値は、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下である。
【0040】
[0098]積層体中のPPE樹脂の含有量は、特に第1層においては、1から90phrに及ぶ範囲、より好ましくは2から80phr、更に好ましくは3から60phr、極めて好ましくは5から60phrに及ぶ範囲内であるとよい。
I-5 様々な添加剤
[0099]タイヤのエラストマー層に通常含まれる当該分野の当業者に公知である様々な添加剤を、本発明の多層積層体は更に含んでもよい。例えば、酸化防止剤又はオゾン分解防止剤等の保護剤、UV安定剤、種々の加工助剤又は他の安定化剤、或は、タイヤ構造体の残りの部分への接着を助長することができる促進剤から選択される1種以上の添加剤が選ばれる。これらすべての添加剤は多層積層体の熱可塑性エラストマー層に一度に、かつ優先的には含まれわけではなく、多層積層体の熱可塑性エラストマー層がこれらの添加剤を何も含まないこともある。
[00100]また、任意であるが、本発明による多層積層体の層組成物は、当該分野の当業者に公知である架橋系を含んでもよい。多層積層体の熱可塑性エラストマー層組成物は、架橋系を含まない方がよい。
【0041】
[00101]また、任意であるが、本発明による多層積層体の層組成物は、エキステンダー油(もしくは可塑化オイル(plasticizing oil))又は可塑化樹脂(plasticizing resin)等の可塑剤を含んでもよく、この役割は、係数を下げ、粘着力を上げることで多層積層体の加工を、特にタイヤに組み込む際の加工を容易にする。
[00102]多層積層体の組成物は、前記エラストマーに加えて、常にブロックエラストマーに対する質量比で過半数に達しない比率であるようにして、1種以上の(非エラストマー性)熱可塑性ポリマー、例えばポリエーテルを主に含む熱可塑性ポリマーを含んでもよい。
II.多層積層体
[00103]前述の通り、本発明の多層積層体の必須の特徴は、少なくとも2層の隣り合うエラストマー層を有することである。
【0042】
‐ 第1層は、少なくとも1種の熱可塑性エラストマー(TPE)を含む組成物で構成され、前記熱可塑性エラストマーが、水素添加されていてもよい少なくとも1種のブタジエン/スチレンランダム共重合体系エラストマーブロックと、少なくとも1種のスチレン系熱可塑性ブロックとを含むブロック共重合体であり、その含有量が50phrより多く100phr(phr:エラストマー100質量部に対する質量部)に及ぶ範囲内であり、
‐ 第2層は、少なくとも1種のジエンエラストマーと、少なくとも1種の熱可塑性エラストマー(TPE)とを含む組成物で構成され、前記ジエンエラストマーの含有量は50phrより多く95phrに及ぶ範囲内であり、前記熱可塑性エラストマーは、水素添加されていてもよい少なくとも1種のブタジエン/スチレンランダム共重合体系エラストマーブロックと少なくとも1種のスチレン系熱可塑性ブロックとを含むブロック共重合体で、前記熱可塑性エラストマーの含有量が5phrから50phr未満に及ぶ範囲である。
II-1 第1層又は熱可塑性エラストマー層
[00104]第1層の熱可塑性エラストマー層として、前記で定義のSBRブロックとPSブロックとを有するTPEエラストマーを50phrより多く含むエラストマー組成物を使用し、熱可塑性ブロック及びエラストマーブロックの構造及び化学的性状についてのすべての好適な実施形態はすべて前記の通りである。
【0043】
[00105]前記熱可塑性エラストマー層は、任意であるがTPE以外のエラストマー、即ちジエンエラストマーを少ない量で(最大で50phr)含んでもよい。このようなジエンエラストマーは前記で定義したもので、熱可塑性エラストマー層組成物も、任意であるが好ましくは前記で示したものを含んでもよく、本発明の積層体第2層にも共通である他の成分も任意であるが含んでもよい。これらのうち、特にPPE樹脂が挙げられる。
[00106]第1層のSBRブロックとPSブロックとを有するTPE含有量は、好ましくは70から100phr、特には80から100phrに及ぶ範囲内である。
[00107]しかしながら、とりわけ好適な実施形態では、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEが、熱可塑性エラストマー層中に唯一存在するエラストマーであり、このような場合は結果的には含有量が100phrになる。
[00108]第1層は、任意であるが好ましくは前記で示した他の成分を含んでもよく、本発明の積層体第2層にも共通である他の成分も任意であるが含んでもよい。これらのうち、特にPPE樹脂が挙げられる。
【0044】
II-2 第2層又はジエン層
[00109]第1層と組み合わせる第2層としては、エラストマー組成物が使用され、このエラストマー組成物は、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEを5から50phr未満の範囲で、ジエンエラストマーの一部の代わりとして含むことを特徴とする。そのため、第2層におけるジエンエラストマー含有量は50と95phrの間である。SBRブロックとPSブロックとを有するTPEが前記最低限の含有量より少ないと、接着効果が不十分となり、一方、推奨する最高限度を超えると、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEの強力な存在により、ジエン層の特性が過度に悪影響を受けることになる。
[00110]本発明の別の好適な実施形態によると、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEの含有量(即ち、数種のTPEが存在する場合は合計含有量)は5から49phr、より好ましくは10から49phrの範囲内である。その結果、ジエンエラストマー含有量(即ち、数種が存在する場合は合計含有量)は好ましくは51から95phrの範囲内、より好ましくは51から90phrの範囲内である。
【0045】
[00111]第2層も、任意であるが好ましくは前記で示した他の成分を含んでもよく、本発明の積層体第1層にも共通である他の成分も任意であるが含んでもよい。他の成分として特に補強充填剤が挙げられる。
III. 積層体の2層の接着
[00112]本発明の積層体における第1層の第2層に対する接着力は、本発明の積層体の第1層タイプの層が従来のジエン層(即ち、熱可塑性エラストマーを含まない)に対する接着力に比べて、著しく向上していることがわかった。
[00113]この接着力は、本発明による積層体の層中に存在するSBRブロックとPSブロックとを有するTPEの相溶性によって発現する。
IV.積層体のタイヤへの使用
[00114]本発明による積層体は、いずれのタイプのタイヤでも使用できる。とりわけ、ゴムで製造したタイヤ完成品又は半製品での使用に適切である。特には、二輪車、乗用車タイプ、産業用タイプの自動車用のタイヤ、或は、自転車等のモーター無しのタイヤに適している。
[00115]本発明による積層体は、硬化前又は硬化後であっても積層体の層を合体させて作ることができる。より具体的には、熱可塑性エラストマー層は硬化の必要がないので、ジエン層の硬化前又は硬化後に本発明による積層体のジエン層と合体することができる。ジエン層自体はタイヤに使用する前に硬化することが必要である。
[00116]本発明の多層積層体は、特に、高速走行が可能な乗用車のタイヤ又はヘビーデューティー車両等の産業用車両のタイヤ等、あらゆるタイプの車両の空気タイヤに有利に使用することができる。
【0046】
V.積層体の調製
[00117]本発明の多層積層体は当該分野の当業者に公知である方法により、積層体の2つの層をそれぞれ調製した後、ジエン層の硬化前又は硬化後に熱可塑性エラストマー層とジエン層を合体させて作製する。熱可塑性エラストマー層とジエン層の合体は、熱をかけ、更に任意で圧力をかけて行ってもよい。
V-1 熱可塑性エラストマー層の調製
[00118]本発明による多層積層体の熱可塑性エラストマー層の調製は、従来の方法で、例えば、二軸押出機に様々な成分を投入し、マトリックスを溶融させてすべての成分を混合し、熱可塑性エラストマー層の作製が可能なフラットダイを使って行う。より一般的には、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEは、押出、カレンダー処理、押出吹込成形、射出成形又は流延フィルム等の当該分野の当業者に公知である方法によって成形することができる。
【0047】
V-2 ジエン層の調製
[00119]本発明による多層積層体のジエン層は、適切な混合器で当該分野の当業者に周知の通常の手順に従って連続する2段階を用いて調製する。第1段階は、最高温度が130℃と200℃の間、好ましくは145℃と185℃の間に達するまで高温で熱動力的に加工又は混錬する工程(「非生産的」段階と呼ぶこともある)で、それに続いて、前述より低い温度、一般的には120℃未満、例えば60℃と100℃の間の温度で機械的加工を行う第2段階(「生産的」段階と呼ぶこともある)で、仕上げの第2段階では架橋系又は加硫系を混入する。
[00120]本発明の好適な実施形態によると、第1の「非生産的」段階で、加硫系を除き、SBRブロックとPSブロックとを有するTPEエラストマー又は任意の充填剤等の本発明の組成物のすべての基本成分を混錬によりジエンエラストマーにしっかりと混入させる。即ち、少なくともこれらの様々な基本成分を混合器に導入し、最高温度が130℃と200℃の間、好ましくは145℃と185℃の間に達するまで、一回又は何回かの工程にわけて熱動力的混錬を行う。
【0048】
[00121]一例であるが、第1の「非生産的」段階は1回の熱動力的工程で行うもので、この工程で、加硫系を除き、すべての必要成分、任意の補助的被覆剤又は加工助剤及び様々な他の添加剤を、一般的な密閉式ミキサー等の適切な混合器に投入する。非生産的段階における全混錬時間は、1分と15分の間が好ましい。最初の「非生産的」段階でこのようにして得られた混合物を冷却した後、通常、開放型ミル等の外部混合器で低温にて加硫系を混合する。その後、すべての成分を数分間、例えば2分と15分の間の時間、混合する(生産的段階)。
[00122]こうして得られた最終組成物に引き続きカレンダー処理を施して、例えば、本発明ではジエン層であるが層状に成形する。
V-3 積層体の調製
[00123]本発明の多層積層体は、熱可塑性エラストマー層を、ジエン層の硬化前又は硬化後にジエン層と合体させて作製する。硬化前の場合、熱可塑性エラストマー層をジエン層に載せて本発明の積層体を形成した後、積層体又は当該積層体を備えたタイヤの硬化を行う。硬化後の場合、熱可塑性エラストマー層を予備硬化したジエン層に積載する。二層の接着を達成するためには、TPEの加工温度より高く、ガラス転移温度(Tg)より高い温度、半結晶性熱可塑性ブロックの場合は該TPEの融点(M.p.)より高い温度が層と層との境界面には必要であり、任意であるが、圧力を一緒にかけてもよい。
【0049】
VI 実施例
VI-1 実施例の調製
[00124]本発明の多層積層体の実施例を、前記で示したように調製する。
VI-2 使用した試験の説明
[00125]本発明によるタイヤの多層積層体の実施例は、「剥離」試験にしたがって、TPE層とジエン層との接着力について試験を行う。
[00126]下記の積層体の層を接着して、剥離試験用の試験片を作成する。層は、布で補強したジエン層(張力を受けた際の層の変形を限界内にとどめる)/TPE層/布で補強したジエン層である。このような対称的な重なりにおいては、初期クラックがTPE層と隣接するジエン層の一方との間に入る。
[00127]積層体の試験片は、一旦重ねてから27分間加圧下で160℃にする。切断機を用いて幅30mmの細片に切り出す。初期クラックの両側を引張試験機Insron(登録商標)のあご部に続けてセットする。温度100℃、引張速度100mm/分で試験を行う。引張応力を記録し、これを試験片の幅で標準化する。幅の単位あたりの強度(N/mm)を、引張試験機の可動するクロスヘッドの変位(0と200mmの間)との関数として曲線を得る。接着力の値は、試験片における破損の開始に相応し、曲線の最大値となる。TPE層を持たないコントロール(base 100)を基準に、実施例の接着性を比較する。接着力のほか、破損パターン又は破損のタイプを追記する。接着(adhesive)パターンとは、接着境界面が破損点である。結合(cohesive)パターンとは、材料(ジエン層又はTPE層)の結合が境界面の接着強さより低く、破損点がいずれかの層内にあることを示す。
【0050】
VI-3 積層体例
VI-3-1 実施例1
[00128]最初に多層積層体熱可塑性組成物と種々のジエン層を調製し、硬化前に重ねて、前記に示したように試験を行った。組成物は以下の表1A及び表1Bに示す。
【0053】
(1)SBR溶液、スチレンとブタジエンとの共重合体で、スチレン単位が26.5%でブタジエン部の1,2-単位が24%(T
g:-48℃)
(2)SOE、旭化成株式会社販売のSOE S 1611。
(3)キャボット社販売のASTMグレードN234。
(4)シリカ、ローディア社製ゼオジル(Zeosil)1165MP。
(5)TESTPカップリング剤、デグサ社製Si69。
(6)N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン、フレキシス社製6-PPD。
(7)DPG:ジフェニルグアニジン、フレキシス社製パーカシット(Perkacit)DPG
(8)ステアリン酸、ユニケマ社製プリステレン(Pristerene)。
(9)ユミコア社製の工業グレード酸化亜鉛。
(10)N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、フレキシス社製サントキュア(Santocure)CBS。
【0054】
[00129]表2に示した結果によると、熱可塑性エラストマー層を従来のジエン層(即ち、TPEは組成の中に全く含まれていない)と合体する状況と比較して、本発明による積層体の接着は良好な結果を示している。
[00130]また、A1/B2とA1/B3の例を比較すると、ジエン層中のSBRブロックとPSブロックとを有するTPE含量が40phrを超えると、ジエン層とSBRブロックとPSブロックとによるTPEの熱可塑性層との接着力は変わらず、その結果、本発明ではSBRブロックとPSブロックとを有するTPE含量が49phrを超える必要がないとしている。それどころか、ジエン層のSBRブロックとPSブロックとを有するTPE含量が50phrを上回ると、熱可塑性エラストマーの特性がジエン層のジエン特性より強くなり、ジエン層と隣接する別のジエン層との接着が減退する可能性がある。