(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6532623
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】サッシ取付枠の防水材
(51)【国際特許分類】
E06B 3/96 20060101AFI20190610BHJP
E06B 7/16 20060101ALI20190610BHJP
E06B 7/23 20060101ALI20190610BHJP
【FI】
E06B3/96 B
E06B7/16 B
E06B7/23 T
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-45103(P2019-45103)
(22)【出願日】2019年3月12日
【審査請求日】2019年3月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390018245
【氏名又は名称】イワキ化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519088362
【氏名又は名称】霜田ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】下川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】羽田 涼一
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−205091(JP,A)
【文献】
実開昭47−030935(JP,U)
【文献】
特開昭51−055125(JP,A)
【文献】
特開2013−117143(JP,A)
【文献】
特開2018−003563(JP,A)
【文献】
特開平08−042263(JP,A)
【文献】
米国特許第04262450(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/96− 3/99
E06B 7/16− 7/24
F16J 15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サッシ取付枠の枠材の小口端面に設けられる防水材であって、軟性樹脂シートと、それよりも厚さの薄い硬性樹脂シートの間に、芯布を挾持させて一体に圧着させて防水シートを形成し、該防水シートにおいて、当接する枠材のビス穴と対応する位置にビス孔を形成したことを特徴とするサッシ取付枠の防水材。
【請求項2】
サッシ取付枠の縦枠材と横枠材との接続部における枠材の小口端面に設けられる防水材であって、軟性樹脂シートと硬性樹脂シートの間に、芯布を挾持させて一体に圧着させて防水シートを形成し、該防水シートの軟性樹脂シートの表面に、外面に剥離紙付きの両面接着シートを接着し、これを前記小口端面形に合わせた形に形成したことを特徴とする請求項1に記載のサッシ取付枠の防水材。
【請求項3】
サッシ取付枠の縦枠材と横枠材との接続部における枠材の小口端面に設けられる防水材であって、EPDMからなる軟性樹脂シートと硬性樹脂シートの間に、芯布を挾持させて一体に圧着させて防水シートを形成し、該防水シートの軟性樹脂シートの表面に、外面に剥離紙付きの両面接着シートを接着し、これを前記小口端面形に合わせた形に形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のサッシ取付枠の防水材。
【請求項4】
サッシ取付枠の縦枠材と横枠材との接続部における、枠材の小口端面に設けられる防水材であって、厚さ0.7ミリ±10%の軟性樹脂シートと、厚さ0.5ミリ±10%の硬性樹脂シートの間に、芯布を挾持させて一体に圧着させて、防水シートを形成するとともに、該防水シートの軟性樹脂シートの表面に、外面に剥離紙付きの両面接着シートを接着し、これを前記小口端面形に合わせた形に形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のサッシ取付枠の防水材。
【請求項5】
サッシ取付枠の枠材に設けられる防水材であって、EPDMからなる軟性樹脂シートと、該軟性樹脂シートよりも厚さの薄い硬性樹脂シートの間に、芯布を挾持させて一体に圧着させて防水シートを形成し、該防水シートを、枠材同士を固定するビスの座面シートとして円形に形成し、かつその中央部に、ビス主部の直径よりやや小さなビス孔を形成したことを特徴とするサッシ取付枠の防水材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物における窓や戸のサッシを取付ける、サッシ取付枠の、縦枠と横枠材における接続部分(小口端面)に設ける防水材に関する。
【背景技術】
【0002】
建物に固定されている窓や戸のサッシ取付枠は、現在ではアルミ型材の縦枠材と横枠材を組合わせている。その接続部は熔接せずに、四隅の接続部分における小口の端面にシール材を当てる物もある。そのシール材は、一般的な防水ゴムシートであり、経時的に硬化して防水性が低下する。
例えばサッシの防水材として特許文献1に記載があるのは、単純なゴムパッキンである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−113377号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、建物の戸や窓を取付ける、サッシ取付部における防水材は、例えばゴム質の管体を取付枠とコンクリート間の防水に使用されている。
縦横枠材で組立てられるサッシ取付枠において、例えばアルミ型材で作られる枠材の、複雑な断面を持つ小口部分は、小口端面が平滑ではなく、雨水が浸みることは避けられないもので、薄いゴムシートを小口に当てることがおこなわれているが、枠材の断面積は広くても、小口端面は輪郭部の端面が細いので、それに合わせて防水シートを当接するには手間がかかることと、材質が柔らかいと防水性が劣り、硬質であるとなじみ難く密着性に問題が生じる。
本発明は、このような問題点を解決し、作業性に優れ、かつ防水効果の高いサッシ取付枠の防水材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
【0006】
(1) サッシ取付枠の枠材の小口端面に設けられる防水材であって、軟性樹脂シートと、それよりも厚さの薄い硬性樹脂シートの間に、芯布を挾持させて一体に圧着させて防水シートを形成し、該防水シートにおいて、当接する枠材のビス穴と対応する位置にビス孔を形成した、サッシ取付枠の防水材。
【0007】
(2) サッシ取付枠の縦枠材と横枠材との接続部における枠材の小口端面に設けられる防水材であって、軟性樹脂シートと硬性樹脂シートの間に、芯布を挾持させて一体に圧着させて防水シートを形成し、該防水シートの軟性樹脂シートの表面に、外面に剥離紙付きの両面接着シートを接着し、これを前記小口端面形に合わせた形に形成した前記(1)に記載のサッシ取付枠の防水材。
【0008】
(3) サッシ取付枠の縦枠材と横枠材との接続部における枠材の小口端面に設けられる防水材であって、EPDMからなる軟性樹脂シートと硬性樹脂シートの間に、芯布を挾持させて一体に圧着させて防水シートを形成し、該防水シートの軟性樹脂シートの表面に、外面に剥離紙付きの両面接着シートを接着し、これを前記小口端面形に合わせた形に形成した前記(1)又は(2)に記載のサッシ取付枠の防水材。
【0009】
(4) サッシ取付枠の縦枠材と横枠材との接続部における、枠材の小口端面に設けられる防水材であって、厚さ0.7ミリ±10%の軟性樹脂シートと厚さ0.5ミリ±10%の硬性樹脂シートの間に、芯布を挾持させて一体に圧着させて、防水シートを形成するとともに、該防水シートの軟性樹脂シートの表面に、外面に剥離紙付きの両面接着シートを接着し、これを前記小口端面形に合わせた形に形成した前記(1)〜(3)のいずれかに記載のサッシ取付枠の防水材。
【0010】
(5) サッシ取付枠の枠材に設けられる防水材であって、EPDMからなる軟性樹脂シートと、それよりも厚さの薄い硬性樹脂シートの間に、芯布を挾持させて一体に圧着させて防水シートを形成し、該防水シートを、枠材同士を固定するビスの座面シートとして円形に形成し、かつその中央部に、ビス主部の直径よりやや小さなビス孔を形成したサッシ取付枠の防水材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、次のような効果が奏せられる。
【0012】
前記(1)に記載の発明において、サッシ取付枠の防水シートが、軟性樹脂シートと、それよりも厚さの薄い硬性樹脂シートの間に、芯布を挾持させて一体に圧着させて形成されているので、サッシ取付枠組立時においてシール材として使用する時、前記硬性樹脂シートは全体の平坦性を維持させ、芯布はシートの伸縮と裂切を抑制し強度を保持させる。厚い軟性樹脂シートは、圧縮されて対面する枠材の小口端面に食込まれて密着し防水性を高めるが、厚い軟性樹脂シートは、圧縮されても芯布があるために平面方向に広がることがなく、厚さ方向に伸縮して水密性を高いものとする。
【0013】
前記(2)に記載の発明における防水材は、サッシ取付枠の縦枠材と横枠材との接続部における枠材の小口端面に固定するものとし、防水シートは軟性樹脂シートと硬性樹脂シートの間に、芯布を挾持させて一体に圧着させて形成されており、該防水シートの軟性樹脂シートの表面に、外面に剥離紙付きの両面接着シートを接着し、これを前記小口端面形に合わせた形に形成してあるので、剥離紙を除去すると、両面接着シートを枠材の小口端面に当てるだけで、防水材を枠材の複雑な形状の小口端面に、容易に接着させることができ、かつ、軟性樹脂シートに小口端面が食込むことによって、高い水密性が得られる。
【0014】
前記(3)に記載の発明において、サッシ取付枠の縦枠材と横枠材との接続部における枠材の小口端面に固定する防水材が、EPDMからなる軟性樹脂シートと硬性樹脂シートの間に、芯布を挾持させて一体に圧着させて、防水シートを形成してあるので、耐候性及び弾力性に優れており、シール材として使用する時、軟性樹脂シートが密着して水密性を容易に確保することができる。
また該防水シートの軟性樹脂シートの表面に、外面に剥離紙付きの両面接着シートを接着し、これを前記小口端面形に合わせた形に形成してあるので、剥離紙を除去すると、両面接着シートを枠材の小口端面に当てるだけで、防水材を枠材の複雑な形状の小口端面に、容易に接着させることができる。
【0015】
前記(4)に記載の発明において、防水材は、厚さ0.7ミリ±10%の軟性樹脂シートと、厚さ0.5ミリ±10%の硬性樹脂シートの間に、芯布を挾持させて一体に圧着させて、防水シートを形成したので、枠材の小口端面に防水材を接着してサッシ取付枠を組立てた時、硬性樹脂シートは平坦性を維持し、厚い軟性樹脂シートは圧縮されて密着性が高まり、防水性が高いものとなる。
【0016】
前記(5)に記載の発明において、防水材は、EPDMからなる軟性樹脂シートと該軟性樹脂シートよりも厚みの薄い硬性樹脂シートの間に、芯布を挾持させて一体に圧着させて防水シートが形成されているので、該防水シートを、枠材同士を固定するビスの座面シートとして円形とし、かつその中央部にビス主部の径よりやや小さなビス孔を形成されており、ビス孔にビスを挿通させて枠材の結合に該ビスを使用すると、枠材側のビス穴を水密に密封することができるので、従来のように、ビス頭の外面に樹脂シール剤を塗布する必要はなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】
図1におけるII−II線拡大縦断面図である。
【
図5】ビスとの関係を示す座面シートの縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
図1において、サッシ取付枠の防水材1は、
図3に示すサッシ取付枠2の枠材2A、2Bの小口端面全体に被着出来る大きさに、プレス裁断により型抜き形成されている。
枠材2A、2Bの小口端面形は千差万別なので、それぞれに対応して個別に打抜型を形成して、型抜き形成される。
【0019】
図2は、
図1におけるサッシ取付枠の防水材1のII−II線における拡大断面図である。
図2において、EPDM(エチレンプロピレンジェンゴム)の、例えば0.7ミリ±10%の軟性樹脂シート1Aと、同じく「EPDM」の、例えば0.5ミリ±10%の硬性樹脂シート1Bとを上下で押し出し、その中間に芯布1Cとして例えばポリエステルの寒冷紗を挾持し、一体に圧着して防水シート1Dとしたものである。
【0020】
防水シート1Dの表面には、芯布1Cである寒冷紗の織目が凹凸に表出しているので、平滑な金属面に載置しても、吸い付くように着いて滑りにくいものとなっている。寒冷紗の素材は、一般的には木綿や麻糸が使用されているが、EPDMとの親和性の点で、ポリエステル繊維が使用されている。
【0021】
これにより、防水材1の伸縮と引裂性が抑制される。芯布1Cとしては、寒冷紗に限定されるものではない。芯布1Cが中間に入っているので、防水材1が厚み方向に圧縮されても、軟性樹脂シート1Aが平面方向へ伸びることがなく、厚み方向に伸縮するため、水密性を高める。
「EPDM」は比重が軽く反発弾性に優れ、耐候性、耐薬品性にも優れている。
【0022】
図2において、前記防水シート1Dにおける軟性樹脂シート1Aの表面に、両面接着シート1Eを接着し、その表面に離型紙1Fが接着されている。これを枠材2A、2Bの小口端面2Cの形に合わせて、型抜きにより形成されている。
図1に示すように、防水シート1Dの表面には、
図3における小口端面2Cのビス穴2Dに対応する位置に、ビス孔1Gが貫設されている。
【0023】
図4に示すように、建物3の窓部分に形成されているウィンドバリア4に、サッシ取付枠2が固定されている。
横枠材2Bに取付ける縦枠材2Aの小口端面2Cに、防水材1が接着され、横枠材2Bと縦枠材2Aとは、ビス6、6によって締着け固定される。
【0024】
図2における離型紙1Fは、
図1における下面に接着されているので、これを
図3における枠材2の小口端面2Cに接着させるには、
図2における離型紙1Fを両面接着シート1Eから剥離して、
図3における枠材2の小口端面2C上に、
図1の状態で防水材1を乗せて、両面接着シート1Eを接着させる。
【0025】
それに続いて、
図4に示すように、防水材1の硬性樹脂シート1Bの表面を、横枠材2Bの接合部位に当て、横枠材2Bのビス孔2Eにビス5を挿通し、前記硬性樹脂シート1Bにおける各ビス孔1Gに挿通させて、縱枠材2Aのビス穴2Dに螺合させて締付ける。これによって、縦枠材2Aと横枠材2Bの接合部における防水が完成する。
【0026】
前記締付けたビス5には、従来は、ビス頭5Aの表面に樹脂シール剤が塗布されて防水されていたが、本発明では、
図2に示す防水シート1Dからなる座面シート6を、
図5に示すように、ビス5のビス頭5Aの下に介在させる。
【0027】
座面シート6は、ビス5のビス頭5Aの直径よりもやや大きくし、そのビス孔6Aの径は、ビス5の直径よりもやや小としてあり、ビス5をビス孔6Aに圧入することにより、そのビス孔6A部分の防水性を保持することができる。
【0028】
これによって、ビス5を締めると、ビス穴2D、2Eの水密性が保持され、従来のようにビス頭5Aの表面に、樹脂シール剤を塗布して防水処理をしなくても防水性が保持され、作業性も良好となった。
【0029】
サッシ取付枠2の枠材2A、2Bは、建物毎に形状が異なり、その小口端面2Cは千差万別なので、建物の設計段階で、前記小口端面2Cの形状に適する防水材1を製造する。
【0030】
小口端面2Cの外形に合わせて打抜型を作り、型抜きにより防水シート1Dが形成されるので、製造が容易であり、枠材2A、2Bが中空管体であっても、その小口端面2Cに防水材1を正確に接着することができる。なお、枠材2A、2Bの接合部ではない小口端面にも、蓋材として接着することができる。
【0031】
前記防水シート1Dの厚さは、軟性樹脂シート1Aが例えば0.7ミリ±10%、硬性樹脂シート1Bが0.5ミリ±10%の合計1.2ミリ±10%で、これをビス5の締着けにより50%圧縮されて0.6ミリ±10%前後となるが、これより厚さが薄い場合には防水性の耐久性に支承が生じる虞れがあり、厚い場合には組立て精度保持に時間を要する。ただし、この数値に限定されるものではない。
【0032】
軟性樹脂シート1Aが硬性樹脂シート1Bよりも厚いことにより、枠材の食い込みによる防水性が高まる。防水シート1Dの材質は、この目的に適合する物なら何れでもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、厚い軟性樹脂シートと薄い硬性樹脂シートの間に、芯布を挾持させて一体に加圧接合させた防水シートに両面接着シートを接着し、サッシ取付枠の枠材における小口端面の形となるように打抜き形成してあるので、枠材の小口端面に容易に正確に接着することが出来、建築現場における、戸窓のサッシ取付枠の防水施工に効果的に利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1.防水材
1A.軟性樹脂シート
1B.硬性樹脂シート
1C.芯布
1D.防水シート
1E.両面接着シート
1F.離型紙
1G.ビス孔
2.サッシ取付枠
2A.縦枠材
2B.横枠材
2C.小口端面
2D、2E.ビス穴
3.建物
4.ウィンドバリア
5.ビス
5A.ビス頭
6.座面シート
6A.ビス孔
【要約】
【課題】 本発明は、建物のサッシ取付枠の枠材の接合部における小口端面部分の、耐久性の高い防水材を提供することを目的としている。
【解決手段】 サッシ取付枠の枠材に設ける防水材1であって、軟性樹脂シート1Aと硬性樹脂シート1B間に、芯布1Cを挾持させて一体に圧着させて、防水シート1Dを形成し、該防水シート1Dには、これを当接する枠材のビス穴2Eと対応する位置に、ビス孔2Gを形成した。
【選択図】
図2