特許第6532693号(P6532693)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6532693
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】髪用塗布具
(51)【国際特許分類】
   A45D 19/00 20060101AFI20190610BHJP
【FI】
   A45D19/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-20229(P2015-20229)
(22)【出願日】2015年2月4日
(65)【公開番号】特開2016-140650(P2016-140650A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】丸山 精一
(72)【発明者】
【氏名】小林 武
【審査官】 青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/066764(WO,A1)
【文献】 特開2004−313588(JP,A)
【文献】 特開2009−106655(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0156339(US,A1)
【文献】 米国特許第8696228(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 19/00−20/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を収容する容器と、該容器内の塗布液を含浸して毛髪に塗布する塗布体と、該塗布体に併設される複数の櫛体を備えた櫛部とを備え、櫛部によって梳いた毛髪に前記塗布体から前記塗布液を塗布するための髪用塗布具において、
櫛部における配列方向端部の櫛体は、地肌に対して角度45°で軸方向7.5Nの力を加えると1mm以上変形する可撓性を有すると共に、櫛部における配列方向両端の櫛体の間の空間が、毛髪の通ることが可能な空間を投影面積で70%以上にしたことを特徴とする髪用塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、髪用塗布具に関するものであり、容器本体に取り付けられ、髪(人間、その他のペット動物等を含む毛髪)を梳きながら容器に収容した塗布液(染毛剤、整髪剤、育毛剤等)を髪に塗布するための髪用塗布具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、容器に収容した染毛剤などをその容器に取り付けた櫛部の櫛歯間に導入して、この櫛部で髪を梳くことによって髪を染める髪用塗布具が知られている。
【0003】
髪用塗布具において、頭皮への染毛剤の付着を防ぐ提案がされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、塗布液供給部(塗布体)を部分的に覆う櫛歯状のガードを設けた毛染容器が開示されている。この毛染容器は、そのガードによって塗布体が直接的に頭皮に当たらないようにした構成のものである。
【0005】
また、特許文献2には、櫛部にそれぞれと吐出孔が設けられた第1櫛歯と第2櫛歯を交互に設け、第1櫛歯よりも第2櫛歯を短くすることにより、第1櫛歯が頭皮に主に当たるようにして第2櫛歯から頭皮に毛髪化粧料が付着する可能性を低くした毛髪化粧用具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2007/066764
【特許文献2】特開平11−169223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述の従来の髪用塗布具では、髪の生え際部分等の毛髪の根本まで染毛したい場合に、地肌の汚れを防止する部材が邪魔になり、特許文献1では、ガードを外す必要が生じ、また、特許文献2では、櫛歯の高さが邪魔になって生え際の塗布が困難である等の問題点を有していた。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、地肌汚れ防止用の構造を維持しつつ、生え際部分の根元まで十分に液を塗布可能にする髪用塗布具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、塗布液を収容する容器と、該容器内の塗布液を含浸して毛髪に塗布する塗布体と、該塗布体に併設される複数の櫛体を備えた櫛部とを備え、櫛部によって梳いた毛髪に前記塗布体から前記塗布液を塗布するための髪用塗布具において、
櫛部における配列方向端部の櫛体は、地肌に対して角度45°で軸方向7.5Nの力を加えると1mm以上変形する可撓性を有していることを特徴とする髪用塗布具である。
【0010】
本発明において、櫛部における配列方向端部の櫛体は、横断面が楕円形状であることが好適である。
【0011】
また、本発明において、櫛部における配列方向両端の櫛体の間の空間が、毛髪の通ることが可能な空間を投影面積で70%以上にしたことが好適である。
【0012】
本発明において、前記塗布体に対して、前記櫛体の間の空間が、髪を梳く複数の方向に基づき設定されたことが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の髪用塗布具によれば、櫛部における配列方向端部の櫛体は、地肌に対して角度45°で軸方向7.5Nの力を加えると1mm以上変形する可撓性を有した構造であるので、櫛体がしなって毛髪の生え際やもみあげまで塗布液を塗布することができ、非常に使い勝手が良いという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る髪用塗布具のキャップ付きの全体説明図で、(a)が外観図、(b)が縦断面図である。
図2図1の髪用塗布具のキャップを外した全体説明図で、(a)が塗布部の長辺側から見た外観図、(b)が塗布部の短辺側から見た外観図である。
図3図1の髪用塗布具のキャップを外した全体説明図で、(a)が後方からの斜視図、(b)が前方からの斜視図である。
図4図1の髪用塗布具の前端部について非使用時の拡大説明図である。
図5図1の髪用塗布具の前端部について使用時の拡大説明図である。
図6図1の髪用塗布具の櫛体についての説明図で、(a)が斜視図、(b)が前方からの視図、(c)が(d)のC−C線に沿う断面図、(d)が側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0016】
図1図6は実施形態に係る髪用塗布具の説明図である
【0017】
図1に示すように、髪用塗布具は、塗布液を収容する容器10と、該容器内の塗布液を含浸して毛髪に塗布する塗布体12と、該塗布体12に併設される複数の櫛体14を備えた櫛部16とを備え、櫛部16によって梳いた毛髪に前記塗布体12から前記塗布液を塗布するための髪用塗布具に関するものである。図1に示すように、髪用塗布具は、容器10の先方部に、塗布体12及び櫛部16を不使用時に覆うキャップ26を着脱自在に設けたものである。当該髪用塗布具は、使用時に、図2図3に示すように、前記キャップ26を外して、塗布体12及び櫛部16を露出した状態にできる。
【0018】
ここで櫛部16は、後に詳述するが、図2図3に示されるように、櫛体14が横・縦に配列されており、その配列方向端部の櫛体14(14a,14a)は、地肌に対して角度45°で軸方向7.5Nの力を加えると1mm以上変形する可撓性を有しているものである。
【0019】
また、後述するが、複数の塗布体12が二列並べられて、並べられた塗布体12を挟んで外側に櫛部16が設けられている。先方から見ると、塗布体12の並び方向が櫛部16の櫛体14の並び方向と平行になるように配列されている。
【0020】
各部を説明する。
図1図3に示すように、本実施形態に係る髪用塗布具は、先端部に設けた櫛部16に複数の櫛体14が形成され、複数の櫛体14に並設される複数の塗布体12を有し、その櫛部16によって髪を梳くと共に、取り付けられる容器10内の塗布液を、塗布体12を介して毛髪に塗布するためのものである。
【0021】
前記髪用塗布具において、樹脂製の容器10は、後端が閉鎖され、先端の開口した筒状に成形された容器本体20と、容器本体20の外部を覆うカバー体22とを備えている。内部の容器本体20内には、貯溜体18が挿入収容される。貯溜体18には化粧料である塗布液が担持(貯溜)される。容器本体20には、その前端外周にフランジ20aが拡径して形成されており、そのフランジ20aの後方に、把持カバー体22の前端が外嵌することにより、容器本体20に対してカバー体22が着脱可能に固定される。また、フランジ20aの先方の外周面には、ネジ(雄ネジ)が形成されている。
【0022】
なお、カバー体22は、外周面に窪み22aの形成で持ちやすくなっており、かつ窪み22aやその他の模様、シュリンク等外面に意匠的な装飾も施すことができるものである。
【0023】
また、上の貯溜体18としては塗布液を貯溜や担持できるものである限り、その材料に制限されるものではなく、例えば、中綿等を挙げることができる。
【0024】
容器本体20の先端開口20bには、継手24が装着されている。継手24には、取付け孔24aと係止部24bが形成される。取付け孔24aは、部概略筒状に先方に突出した部分であって正面視すると概略矩形にほぼ軸中央に形成される。取付け孔24aには、複数の棒状の塗布体12が二列等の複数列に挿入され、各塗布体12と取付け孔24a内周または開口との間は、スペーサ24cが介装されていて、それによって、塗布体12のガタ付が防止される。塗布体12は、スペーサ24cを介して取付け孔24a内に装填され、塗布体12は容器本体20の軸方向に沿って設けられる。
【0025】
また、継手24の取付け孔24aの外側面には、櫛部16の基部32を差し込んで取り付けるための係止部24bが先方向きに突出して形成される。
【0026】
塗布体12の後端部12Aは、その装填時に上述の貯溜体18の先端内に挿入されて連結される。
【0027】
なお、継手24の外壁面と容器本体20の筒状開口部の内壁面とは液密に密着しており、また、継手24は上記開口部から着脱可能でも、完全に固定されても良い。
【0028】
上記の塗布体12は、その使用する塗布液の液保持力特許第4726439号記載のもの等を適用できる。
【0029】
塗布体12の素材としては、スライバーペン芯、フェルト状物、連続気泡スポンジ状物等が好適である。
【0030】
ここで、図1に示すように、髪用塗布具は、その非使用時に上記の塗布体12及び櫛部16は、キャップ26にて覆って着脱自在になっている。
【0031】
キャップ26は、それぞれ概略カップ状の内キャップ26a、中キャップ26b及び外キャップ26cが内側から外側に多層状に配設されたものである。内キャップ26aは後方向きの開口部内に、塗布体12と櫛部16を覆った状態で、開口部の周囲が、継手24の係止部24b外周の平坦面に当接する。
【0032】
また、内キャップ26aの奥側になる先端部には、櫛部16と塗布体12とを分かちながらこれらの先端部に近接する突起が成形されたガイド孔28が設けられる。
【0033】
中キャップ26b内にはコイルバネ30が配され、コイルバネ30の弾性力によって内キャップ26aを後方向きに付勢している。
【0034】
また、外キャップ26cは、容器10側の後端部の内面にネジ(雌ネジ)が形成されており、容器本体20のフランジ20aよりも先方部分のネジ(雄ネジ)に外キャップ26cのネジが螺合する構造である。これらのネジ同士の螺合によって、キャップ26が容器本体20ひいては容器10に対して着脱自在な構成になっている。
【0035】
櫛部16は図4図6に示すように、樹脂製の成形部材からなり、概略矩形板状の基部32と、基部32の先端側面に間隔をおいて突出成形された複数の櫛体14とからなる。図1図3に示す櫛部16の取付け状態では、櫛体14の先端が塗布体12の先端より突き出している。
【0036】
櫛部16における配列方向端部の櫛体14が、地肌に対して角度45°で軸方向7.5Nの力を加えると1mm以上変形する可撓性を有している。
【0037】
前記基部32には、後部から切り込むように形成された差し込み穴32aが形成されて、この差し込み穴32aが前記の継手24の係止部24bが差し込まれて着脱可能に係合される係合部として成形される。
【0038】
また、櫛部16においては、図6に示すように3つ(複数の例)の櫛体14は基部の平坦方向に沿った横方向に配列されており、その配列方向端部つまり両端部の櫛体14(14a,14a)は、横断面が楕円形状に形成され、また、中央の櫛体14bは横断面が円形形状に形成されている。各櫛体14の各先端はRつまり丸み(例えば球状)を帯びて形成されている。
【0039】
また、櫛部16における配列方向両端の櫛体14の間の空間が、毛髪の通ることが可能な空間34を投影面積で70%以上にしたものである。具体的には、図6(d)に示すように、両端部の櫛体14(14a,14a)同士の間の面積S1を基準に、中央の櫛体14bを除いた空間の面積S2の比(S2/S1)が70%以上あるということである。
【0040】
また、櫛部16と塗布体12のある塗布部に対して、前記櫛体の間の空間が、髪を梳く複数の方向に基づき設定されている。具体的には、図3に示すように、櫛部16と塗布体12との塗布部は、先方から見ると矩形を呈しており、櫛部16の櫛体14及び塗布体12の配列方向を縦方向(符号「Y」方向)として、櫛部16と塗布体12の並列方向を横方向(符号「X」)としている。
【0041】
したがって、櫛部16と塗布体12が矩形配列されているので、実施形態の髪用塗布具においては、Y方向、X方向という使う向きを90°変更することによって、塗布体12と櫛部16とからなる塗布部の使い方を変えることができる。具体的には、この櫛部16を横方向(X方向)または(Y方向)に沿って塗布に使用した場合、前記の面積の比S2/S1を70%以上にしている。
【0042】
髪用塗布具を使用する際に、図3に示すように、幅が広く塗布体12が多く見える櫛部16の面16Aに髪の毛が垂直に交わるように使用すると、つまり、前記X方向に移動させて髪に塗布するように使用した場合、塗布体12の先端よりも櫛部16の櫛体14が引っ込んでいるので、塗布体12が地肌に触れず、地肌への塗布液が付くことも心配せずに塗布することができる。また、図6(c)に示すように、四隅の櫛体14(14a,14a)の断面が楕円形状であるため、荷重を意識せずに一定の感覚で塗布できる。
【0043】
また、その使用の際に、櫛部16において、両端部の櫛体14(14a,14a)同士の間の面積S1を基準に、中央の櫛体14bを除いた空間の面積S2の比(S2/S1)が70%以上あるものとして、従来品に対して、髪の通りと塗布量を増やすために、櫛体14同士の間隔を最低限にし、毛髪の通る面積比率を上げたものである。
【0044】
一方、幅が狭くペン芯が少なく見える面(図3で符号「16B」で示す)塗布方向と垂直に交わるように使用する(Y方向に移動させる)と、1回梳く際に通過する塗布体12の本数が増え、狭い範囲に対して入念に塗布できる。
【0045】
また、四隅の櫛体14(14a,14a)の断面が楕円形状であるため、毛髪への押し荷重を調整することで櫛体14が弾性変形し塗布体12と頭皮との隙間を調整できる。変形する前が図4に示す状態であり、変形後が図5に示すよう状態である。図5に変形量を符号「δ」で示す。
【0046】
したがって、毛髪根元などの塗布が難しい部分により丁寧に塗布できる。
【0047】
さらに、頭皮に押し付けても痛くならないように、図4に示すように、櫛体14先端14sはSR(断面円形)形状とし、髪が絡まないように支柱との接続部は滑らかなR面(曲面)で繋いでいる。
【0048】
なお、塗布体12及び櫛部16の少なくとも一方を着脱可能とすることが好ましい。着脱可能とすることにより、塗布体12にしつこく付着する抜け毛などの絡み毛の除去が極めて容易になり、その使い勝手に支障が生じなくなる。
【0049】
前記実施形態では、塗布液を染毛剤としたが、これに限る必要はない。例えば、整髪剤、育毛剤、またペットその他の動物の毛艶剤等であっても良い。但し、これらの塗布液は、上述の塗布体の液保持力における関係を満たす必要がある。
【0050】
また、前記実施形態では、櫛部16における櫛体14の数が6本で、塗布体12の数が5本2列(10本)であったが、本発明においては、いずれも複数であればよく、又、並列数等の適宜に設定できることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の髪用塗布具は、染毛剤の他、整髪剤、育毛剤、ペットその他の毛艶剤等の塗布具に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 容器
12 塗布体
14 櫛体
16 櫛部
16A 櫛部の幅広面側
16B 櫛部の幅狭面側
20 容器本体
22 カバー体
24 継手
32 櫛部の基部
34 櫛体間の空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6