(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一端にレンズを収容する収容部が形成され、他端に光ファイバが挿入される挿入孔が形成される保持部材と、前記保持部材の一端における前記レンズの収容方向と交差する方向の前記保持部材の外周面に設けられ、前記レンズの中心を、結合対象に設けられる光学要素の中心に位置合わせする吸着力を発生させる吸着部材と、を具備し、前記一端から前記他端に向けて延出する光結合部材と、
前記光結合部材の延出方向である第1の方向、前記第1の方向に直交する高さ方向としての第2の方向、及び、前記第1の方向と前記第2の方向に直交する第3の方向の全てに対し、前記光結合部材の前記結合対象への位置合わせ動作を許容しながら、前記光結合部材の移動を規制する移動規制部材と、を有し、
前記移動規制部材は、前記光結合部材の延出方向である一端から他端まで設けられたガイド溝を有し、前記光結合部材は、前記吸着部材が前記移動規制部材の一端側から突出した状態で前記保持部材が前記ガイド溝に配置されており、前記保持部材と前記ガイド溝との間にはクリアランスが設けられており、前記吸着部材は、前記移動規制部材の一端側で、前記位置合わせ動作が許容されていることを特徴とする光コネクタ。
前記ガイド溝の幅寸法及び高さ寸法は、前記ガイド溝に配置された部分の前記光結合部材の幅寸法及び高さ寸法よりも大きく前記吸着部材が配置された位置での前記光結合部材の幅寸法又は高さ寸法の少なくとも一方より小さいことを特徴とする請求項1記載の光コネクタ。
前記吸着部材を前記移動規制部材の一端面側に付勢する付勢部材を備え、前記付勢部材の付勢力は前記吸着部材における前記結合対象に対する前記吸着力よりも弱いことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の光コネクタ。
前記付勢部材は、前記移動規制部材と前記光結合部材との間を繋ぐ弾性体であり、前記弾性体の弾性力により、前記吸着部材が前記移動規制部材の一端面側に付勢されることを特徴とする請求項4記載の光コネクタ。
前記付勢部材は、前記移動規制部材の他端側で、前記光結合部材に設けられた第1の吸着部と、前記第1の吸着部に対向し、筐体側に固定された第2の吸着部とを有し、前記第1の吸着部と前記第2の吸着部との間の吸着により前記吸着部材が前記移動規制部材の一端面側に付勢されることを特徴とする請求項4記載の光コネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。光コネクタにはメス型(レセプタクル)とオス型(プラグ)があり、以下に説明するように、一例としてメス型もオス型もどちらも本発明の特徴的構成を備えている。したがって、どちらを主体に説明してもよいのであるが、以下では、特に断らない限り、メス型の光コネクタ及びそれに使用される光結合部材を主として説明し、オス型の光コネクタに使用される光結合部材を、「結合対象」として説明する。
【0021】
図1は、本実施の形態に係る光コネクタ(メス型)の部分斜視図である。
図2は、
図1に示す光コネクタの構成部品を分解した分解斜視図である。説明の便宜上、光コネクタ1に対して相手側の光コネクタ100(
図8参照)との接続側を前方側(一端側)と呼び、前記接続側と反対側を後方側(他端側)と呼ぶものとする。
図1から
図3では、紙面下方側が前方側であり、紙面上方側が後方側である。また、
図4、
図6、
図7Bにおいては紙面左方側が前方側であり、紙面右方側が後方側である。また、図面上、X方向とY方向とは水平面内にて直交する2方向を指し、X方向は、光コネクタに配置される複数の光結合部材の並び方向であり、Y方向は、光結合部材の延出方向である。また、Z方向は、X方向及びY方向に直交する高さ方向を指す。X方向、Y方向、及びZ方向の関係は他の図面においても同様である。
【0022】
図1、
図2に示す光コネクタ1は、光結合部材10と、移動規制部材の一例であるガイド部材2と、カバー部材3と、開口4aを有するシールドケース4と、基部5とを有して構成される。まず、光結合部材10について説明する。
【0023】
図3は、本実施の形態に係る光結合部材の説明図であり、
図2に示すA−A矢視の部分縦断面図である。
図3に示すように、本実施の形態に係る光結合部材10は、概して円筒形状を有する保持部材としてのホルダ11と、このホルダ11の一端部に保持されるボールレンズ12と、ホルダ11の一端部の外周に設けられた吸着部材としての磁石14とを含んで構成されている。例えば、本実施の形態に係る光結合部材10においては、光ファイバ13としてプラスチック光ファイバが好適に挿入される。ただし、本発明に係る光結合部材により保持される光ファイバは、これに限定されるものではなくガラスファイバで構成されてもよい。
【0024】
ホルダ11は、例えば、ステンレス等の金属材料で形成される。特に、加工性の点から、ホルダ11は、オーステナイト系ステンレスで形成されることが好ましい。
図3に示すように、ホルダ11における後端部には、光ファイバ13が挿入される挿入孔11aが設けられている。一方、ホルダ11における前端部(ボールレンズ12側の端部)には、開口部11bが設けられている。この開口部11bの内側には、ボールレンズ12を収容する収容部11cが設けられている。この収容部11cは、ボールレンズ12の表面の損傷を防止するためにボールレンズ12全体をその内側に収容可能な寸法に設けられ、ボールレンズ12が圧入可能に構成されている。
【0025】
ホルダ11の内部には、光ファイバ13の外径寸法よりも僅かに大径の貫通孔11dが設けられている。この貫通孔11dは、挿入孔11aに連通すると共に、収容部11cに連通して設けられている。さらに、ホルダ11には、その外周部から工具等により押圧加工を施すことで形成される複数の陥没部11eが設けられている。これらの陥没部11eは、収容部11cと貫通孔11dとの間に設けられ、詳細について後述するように、ボールレンズ12及び光ファイバ13の位置決めに利用される。
【0026】
ボールレンズ12は、例えば、ガラス材料で形成され、球形状を有する。
図3に示すように、ボールレンズ12は、その前端部が、ホルダ11の前端部と同一の位置に配置されるように収容部11cに収容される。また、ボールレンズ12は、収容部11c内に収容された状態において、貫通孔11dに挿入された光ファイバ13の先端部に臨むように配置されている。すなわち、ホルダ11に陥没部11eを設けることで形成される内壁面に位置決めされた状態において、ボールレンズ12と光ファイバ13とは、一定の位置関係を有する位置に位置決めされる。このとき、ボールレンズ12は、光ファイバ13の先端面(前端面)に対向して配置された状態となっている。ボールレンズ12は、光ファイバ13から入射される光を平行状態に調整するコリメートレンズで構成することができる。
【0027】
光ファイバ13は、その中心を貫通して設けられるコア13aと、このコア13aを被覆するクラッド13bと、このクラッド13bを被覆して補強する補強層13cとから構成される。光ファイバ13のボールレンズ12に対向する端面においては、コア13a、クラッド13b及び補強層13cが、同一平面上に配置されている。すなわち、ボールレンズ12に対向する端面において、コア13a、クラッド13b及び補強層13cが揃って配置されている。なお、光ファイバ13の構成は、
図2、
図4及び
図13以外では簡略化して図示している。
【0028】
光ファイバ13は、挿入孔11aを介して貫通孔11dに挿入され、その先端部がボールレンズ12の近傍でその球面に対向するように配置した状態で固定されている。例えば、光ファイバ13は、ホルダ11の内周面に塗布された接着剤により固定される。なお、ホルダ11の一部を変形させることで光ファイバ13を固定するようにしてもよい。
【0029】
本実施の形態に係る光結合部材10において、光ファイバ13は、例えば、グレーデッドインデックス(GI)型光ファイバで構成され、ファイバ軸に垂直な断面で屈折率が連続的に変化するように構成されている。また、コア13a及びクラッド13bは、例えば、C−H結合のHをFに置換した全フッ素置換光学樹脂で構成されている。このように、光ファイバ13を全フッ素置換光学樹脂で構成すると共に、GI型光ファイバで構成することにより、高速かつ大容量通信を実現することができる。
【0030】
光結合部材10においては、コストの上昇を抑制しつつ、簡易にボールレンズ12と光ファイバ13との位置決めを行うためにホルダ11に設けた陥没部11eを利用する。具体的には、ホルダ11に陥没部11eを設けることで形成される当接面(傾斜面)に、ボールレンズ12及び光ファイバ13の一部を当接させて位置決めを行うことにより、これらの位置決め用のスペーサなどの構成を不要とし、コストの上昇を抑制しつつ、簡易にボールレンズ12と光ファイバ13との位置決めを可能とする。
【0031】
ここで、ホルダ11におけるボールレンズ12及び光ファイバ13の位置決め方法について
図4を用いて説明する。
図4は、
図3に示す2点鎖線B内の拡大図である。
図4に示すように、陥没部11eを設けることで形成される傾斜面のうち、ボールレンズ12に対向する部分には、ボールレンズ12の一部が当接する一方、光ファイバ13に対向する部分には、光ファイバ13を構成するコア13a以外のクラッド13b又は補強層13c、或いはクラッド13b及び補強層13cの一部が当接する。このように当接した状態でボールレンズ12及び光ファイバ13がそれぞれホルダ11の所定位置に位置決めされる。
【0032】
図4に示すように、陥没部11eは、光ファイバ13の挿入方向と直交する平面(例えば、
図4に示す光ファイバ13の端面と平行に配置され、陥没部11eの中心を通過する平面I)に対して、ボールレンズ12に対向する部分の角度と、光ファイバ13に対向する部分の角度とが異なる角度に設けられている。このような陥没部11eは、例えば、先端部の形状が異なる先細の工具を用いて押圧加工を施すことにより設けられる。このような工具で押圧加工することにより、陥没部11eは、その押圧加工時における中心軸を基準として、ボールレンズ12に対向する部分の角度と、光ファイバ13に対向する部分の角度とを異なる角度とすることで、形状の異なるボールレンズ12と光ファイバ13とを効果的に位置決めすることが可能となる。
【0033】
また、ホルダ11においては、このような陥没部11eがホルダ11の同一周上に複数(本実施の形態においては、3つ)設けられている。同一周上への陥没部11eの形成は、例えば、上述した先端形状の異なる工具によりホルダ11の外周から同時に押圧加工を施すことが考えられる。このように同一周上に複数の陥没部11eを設けることにより、ボールレンズ12及び光ファイバ13をそれぞれ複数の位置で当接させることができるので、より高精度にボールレンズ12及び光ファイバ13の位置決めを行うことが可能となる。
【0034】
陥没部11eにおけるボールレンズ12に対向する部分は、傾斜面11e
1を構成する。この傾斜面11e
1は、
図4に矢印で示す光ファイバ13の挿入方向と直交する平面(例えば、
図4に示す光ファイバ13の端面と平行に配置され、陥没部11eの基端部を通過する平面J)に対する角度θ
1が0°以上45°以下となるように設けられている。このようにボールレンズ12側の傾斜面11e
1の角度θ
1を光ファイバ13の挿入方向と直交する平面Jに対して0°以上45°以下に設定することにより、ボールレンズ12における光ファイバ13側の一部を支持した状態で位置決めすることができるので、ボールレンズ12の位置精度を高めることができる。
【0035】
一方、陥没部11eにおける光ファイバ13に対向する部分は、傾斜面11e
2を構成する。傾斜面11e
2は、光ファイバ13の挿入方向と直交する平面(例えば、
図4に示す光ファイバ13の端面と平行に配置される平面K)に対する角度θ
2が20°以下となるように設けられている。このように傾斜面11e
2の角度を平面Kに対して20°以下に設けることにより、光ファイバ13が、上述したように、コア13a、クラッド13b及び補強層13cが同一平面上に配置される光ファイバで構成される場合に、当該光ファイバ13の端面を陥没部11eに当接させることにより、これらの位置精度を確保し易くすることができる。
【0036】
このように光結合部材10においては、ホルダ11に設けた陥没部11eにボールレンズ12の一部及び光ファイバ13の一部を当接させて位置決めするようにしたことから、陥没部11eを基準としてボールレンズ12及び光ファイバ13を位置決めできるので、別部品をホルダ11に挿入する場合と比べて、作業効率を向上させることができ、コストの上昇を抑制しつつ、簡単にボールレンズ12と光ファイバ13との位置決めを行うことが可能となる。
【0037】
磁石14は、ホルダ11における前端部(ボールレンズ12側の端部)の外周に設けられている。例えば、磁石14は、概して円筒形状を有している。磁石14は、その内部にホルダ11の一部を収容した状態でホルダ11に固定されている。例えば、磁石14は、ホルダ11の外周面に塗布された接着剤により固定される。なお、溶接等によりホルダ11の外周面に磁石14を固定するようにしてもよい。
【0038】
磁石14は、
図3、
図4に示すように、その前端部の断面14sが平面形状を有している。磁石14の前端部の断面14sは、ホルダ11の前端部よりも若干前方の位置に配置されるようにホルダ11に固定される。上述したように、収容部11cに収容されたボールレンズ12の前端部は、ホルダ11の前端部と同一の位置に配置される。したがって、磁石14の前端部の断面14sは、ボールレンズ12の前端部の位置よりも若干前方に配置されている。
【0039】
また、磁石14は、前端部近傍がN極に着磁され、後端部近傍がS極に着磁されている。詳細について後述するように、磁石14は、結合対象となる光結合部材20の磁石24と互いに吸着し、ボールレンズ12の中心を、光結合部材20のボールレンズ22の中心に位置合わせする役割を果たす(
図12参照)。
【0040】
図3に示すように、ホルダ11の挿入孔11a付近、すなわちホルダ11の後端側には、ストッパ部材6が設けられている。ストッパ部材6は、光結合部材10が必要以上に前方に突出するのを防止する機能を有する。ストッパ部材6は、例えば、ホルダ11の外周面に接着固定されている。ストッパ部材6は、
図1〜
図3に示すように、貫通孔を備えた円筒形状(リング形状)で形成され、光結合部材10のホルダ11の部分が、ストッパ部材6の貫通孔に挿入されている。ただし、本実施の形態では、ストッパ部材6の形状を限定するものではない。ストッパ部材6は、ホルダ11の外周面の外周面に部分的に設けられてもよいし、複数のストッパ部材6が、ホルダ11の外周面に間欠的に設けられてもよい。ストッパ部材6の材質は、樹脂や金属等で形成され、材質を特に限定するものでない。
【0041】
図1〜
図3に示すように、ストッパ部材6の前端面6aには付勢部材としてのコイルばね7が設けられている。コイルばね7は、引張コイルばねで構成されている。
図1、
図2に示すように、コイルばね7は、次に説明するガイド部材2の後端面2cに接続されている。すなわち、コイルばね7は、ガイド部材2の後端面2cと、ガイド部材2の後端側にて、光結合部材10に取り付けられたストッパ部材6の前端面6aとの間を繋いでいる。
【0042】
次に、ガイド部材2について説明する。ガイド部材2は、樹脂等の電気絶縁材料で形成されたブロック状であり、ガイド部材2の上面2a(基部5と対向する面(下面)と反対側の面)には、前端面(一端面)2bから後端面(他端面)2cにかけて直線状に延びる有底凹状のガイド溝8、8が形成されている。そして、各光結合部材10のホルダ11が個別に各ガイド溝8、8に配置される。なお、
図2に示すように、各光結合部材10のホルダ11の部分が各ガイド溝8内に配置され、磁石14の部分は、ガイド部材2の前端面2bの前方に突出している。
【0043】
図5は、
図2に示すカバー部材を光結合部材が配置されたガイド部材に取り付けた状態におけるガイド部材、光結合部材及びカバー部材のC−C矢視の縦断面図である。
図5に示すように、各ガイド溝8は、底面8aと底面8aのX方向の両側に位置する壁面8bとを備えている。
図5に示すように、ガイド溝8の幅寸法、すなわち両側の壁面8b、8b間の間隔(X方向の間隔)は、T1である。幅寸法T1は、ガイド溝8内に配置される光結合部材10(
図5ではホルダ11が、外周表面として位置する部分の直径M1)よりも大きく形成されている。したがって、ガイド溝8と光結合部材10との間には、X方向にT1−M1にて求められるクリアランス(間隙)が発生している。一方、ガイド溝8の幅寸法T1は、磁石14が配置された部分の光結合部材10の幅寸法(
図5では磁石14を点線で示す。なお、磁石14が外周表面として位置する部分の光結合部材10の幅寸法は直径M2で示される)M2よりも小さい。したがって、磁石14の部分は、ガイド溝8内に入り込まずガイド部材2の前端面2bに突出した状態で保持される。
【0044】
また、
図5に示すように、各ガイド溝8の高さ寸法、すなわち、壁面8bのZ方向の高さ寸法は、T2である。高さ寸法T2は、ガイド溝8内に配置される光結合部材10の直径M1よりも大きく形成されている。
図5に示すように、ガイド溝8の上方がカバー部材3で塞がれることで、ガイド溝8内に配置された光結合部材10の上下方向(Z方向)へのクリアランス(隙間)が、T2−M1とされている。また、ガイド溝8の高さ寸法T2は、磁石14を備えた部分の光結合部材10の直径M2よりも小さい。なお、ガイド溝8の幅寸法T1及び高さ寸法T2が、磁石14を備えた部分の光結合部材10の幅寸法あるいは高さ寸法の少なくとも一方より小さい寸法関係にあれば足りる。
【0045】
上述したように、ガイド部材2の後端側では、光結合部材10のストッパ部材6の前端面6aとガイド部材2の後端面2cとの間にコイルばね7が繋がれている(
図2参照)。コイルばね7は、引張コイルばねであり、磁石14をガイド部材2の前端面2b側に付勢する付勢力が作用している。このため、
図2のように各ガイド溝8内に配置された光結合部材10にはガイド部材2の後端方向への付勢力が作用し、各磁石14の後端面がガイド部材2の前端面2bに当接した状態で保持されている。
【0046】
図2に示すように、ガイド部材2の両側の側面2dには、例えば、Y方向に長尺状の突起2eが形成されている。なお、
図2では、図面上見える一方の側面2dにのみ突起2eが図示されている。
【0047】
図2に示すように、カバー部材3は、平板状の天井部3aと天井部3aのX方向の両側にて下方且つ垂直に折れ曲がる外壁部3b、3bとを有して構成される。カバー部材3は、樹脂や非磁性金属等で形成される。例えば、カバー部材3を樹脂で形成した場合は、天井部3aと外壁部3bから成るカバー部材3を射出成形等により形成できる。あるいは、カバー部材3が非磁性金属材料で形成される場合は金属板を折り曲げて天井部3a及び外壁部3bを構成することができる。
図2に示すようにカバー部材3のX方向の両側に設けられた外壁部3bには、Y方向に長尺状の長穴3cが形成されている。なお、
図2では、図面上見える一方の外壁部3bにのみ長穴3cが図示されている。長穴3cの大きさはガイド部材2に設けられた突起2eの大きさと略同一とされている。そして、光コネクタ1の組立工程の際、カバー部材3がガイド部材2の上方から組み込まれることで、
図1に示すようにガイド部材2の突起2eがカバー部材3の長穴3cに入り込み、カバー部材3がガイド部材2に固定される。
【0048】
図1、
図2に示すシールドケース4は金属で形成される。シールドケース4は、前端側から後端側にかけて貫通する開口4aを備えている。また、
図1、
図2に示すようにシールドケース4の上面部4bには、切起しにより一対の弾性舌片4cがX方向に間隔を空けて形成されている。
【0049】
図1に示すように、ガイド部材2、光結合部材10及びカバー部材3の組立部材が、シールドケース4の後端側に嵌め込まれる。よって、シールドケース4の開口4aの大きさは、ガイド部材2、光結合部材10及びカバー部材3の組立部材を嵌合可能な大きさで形成されている。本実施の形態では、上記組立部材をシールドケース4の開口4aに圧入し、あるいは、上記組立部材の外面とシールドケース4の内面との間に接着剤を介して接合することができる。
図1に示すように、シールドケース4の前端周面4dよりも後方に光結合部材10の磁石14が位置し、且つ、カバー部材3の天井部3aが弾性舌片4cの後方に位置するように、シールドケース4に対するガイド部材2、光結合部材10及びカバー部材3の組立部材の挿入位置が規定される(後述の
図6A、
図7B等も参照)。
【0050】
上記のようにして一体化されたシールドケース4及びガイド部材2の下面がそれぞれ、基部5の上面に接着剤等を介して接合される。このとき、
図2では特に図示していないが、シールドケース4及びガイド部材2の下面がそれぞれ平坦面であると、一体化されたシールドケース4及びガイド部材2の各下面には段差が生じる。このため、基部5の上面も
図2に示すように平坦面であると、シールドケース4及びガイド部材2の各下面と基部5の上面との間を適切に平面接合できないため、例えば、ガイド部材2の下面に予め段差を設けておき、シールドケース4と一体化したときにガイド部材2とシールドケース4の各下面が連続した平坦面となるように構成することができる。あるいは、基部5の上面側に、一体化したシールドケース4及びガイド部材2の各下面間に形成された段差とは逆段差を設けておくことで、シールドケース4及びガイド部材2の各下面と基部5の上面との間を適切に凹凸接合することができる。なお、
図1、
図2では基部5は、平板で形成されているが、例えば、基部5は筐体の一部を構成している。すなわち、基部5は、
図6に示す筐体9の底面部分を抜き出して図示したものである。あるいは、基部5が筐体9とは別に設けられ、基部5が筐体9の内面に配置されて、シールドケース4及びガイド部材2を固定する台座として用いることもできる。基部5及び筐体9は樹脂等の絶縁材料で形成される。
【0051】
図6Aは、本実施の形態に係る光コネクタ(メス型)の平面図であり、
図6Bは、本実施の形態に係る光コネクタ(メス型)の側面図である。
図6A及び
図6Bには、光コネクタ1の内部に配置される光結合部材10を点線で示す。例えば、筐体9は、上側筐体9aと下側筐体9bとに二分されている。上側筐体9aは、カバー部材3のように天井部と天井部のX方向の両側に位置する下向きの外壁部とを備えた構成であり、一方、下側筐体9bは、底面部と底面部のX方向の両側に位置する上向きの外壁部とを備えた構成である。そして、上側筐体9a及び下側筐体9bの夫々の外壁部同士が接合されることで、上側筐体9aと下側筐体9bとが一体化された筐体9を得ることができる。上側筐体9aと下側筐体9bとの接合方法は特に限定されるものでなく、接着剤等による化学的接合や、凹凸嵌合等の物理的接合であってもよい。
【0052】
図6A及び
図6Bに示すように、筐体9よりも前方にシールドケース4の一部が突出している。また、
図6Aに示すように、筐体9の前方にシールドケース4の上面部4bに設けられた弾性舌片4cが露出している。
【0053】
図7Aは、本実施の形態に係る光コネクタ(メス型)の正面図であり、
図7Bは、
図7Aに示すD−D矢視の横断面図である。
図7Aに示すように、光コネクタ1の正面には、ホルダ11の外周に設けられたリング状の磁石14の前端面が露出している。さらに、リング状の磁石14の中心に配置されたボールレンズ12が見えている。
図7Aでは、光コネクタ1内に配置された2つの光結合部材10の各ボールレンズ12の中心がX方向に一直線に並んだ状態であるが、ボールレンズ12同士が多少、上下方向(Z方向)にずれている状態も許容される。後で詳述するように、本実施の形態における光結合部材10は、浮動構造(フローティング構造;floating configuration)にて支持されており、ガイド部材2により結合対象との間のX方向、Y方向及びZ方向への位置合わせ動作が許容されている。したがって、ボールレンズ12の中心位置がX方向から若干上下方向にずれていても、光結合部材10の浮動動作により結合対象と適切に位置合わせを行うことが可能である。
【0054】
図7Bに示すように、光結合部材10のガイド部材2よりも後端側に配置されたストッパ部材6の前端面6aとガイド部材2の後端面2cとの間にはコイルばね7が接続されており、コイルばね7の付勢力により、光結合部材10が後端方向に向けて付勢されている。そのため、
図7Bに示すように、磁石14の後端面がガイド部材2の前端面2bに当接した状態とされている。
【0055】
また、
図5においてもすでに説明したように、
図7Bに示すように、ガイド部材2のガイド溝8に配置された光結合部材10のホルダ11の部分とガイド溝8との間にはX方向にクリアランスCLが設けられている。
図7Bでは各光結合部材10と各ガイド溝8との間に設けられたクリアランスCLが左右両側で同じ大きさとされるが、クリアランスCLが若干、左右方向にずれていてもよい。上記したように、本実施の形態における光結合部材10が浮動構造(フローティング構造)であり、ガイド部材2のガイド溝8との間で光結合部材の移動が制限を受けながらも結合対象との位置合わせ動作に係る移動については許容されている。したがって、
図7Bに示す光結合部材10とガイド溝8との間のX方向のクリアランスCLに若干ばらつきがあっても、光結合部材10の浮動動作により結合対象と適切に位置合わせを行うことが可能である。また、クリアランスは、各光結合部材10のホルダ11の部分と各ガイド溝8との上下方向(Z方向)にも設けられている(
図5参照)。
【0056】
続いて、オス型(プラグ)の光コネクタについて説明する。
図8Aは、本実施の形態に係る光コネクタ(オス型)の平面図であり、
図8Bは、本実施の形態に係る光コネクタ(オス型)の側面図である。また、
図9Aは、本実施の形態に係る光コネクタ(オス型)の正面図であり、
図9Bは、
図9Aに示すE−E矢視の横断面図である。
図8及び
図9において、
図1〜
図7と同じ符号の箇所は
図1〜
図7と同じ部材や同じ部分を示しているが、同じ部材でも説明の便宜上、光結合部材、磁石、ボールレンズ、ホルダ、光ファイバについては符号を変えた。ただし、磁石の着磁形態は、メス型とオス型とで逆になっている。この点については後で詳述する。
図8A及び
図8Bにおいては、
図6A及び
図6Bと同様に、光コネクタ100の内部に配置される光結合部材20(符号24は、磁石である)を点線で示す。なお、光コネクタ100では、右方側が前方側となり、左方側が後方側となる。
【0057】
図9Bに示す各光結合部材20は、
図7Bに示す光結合部材10の結合対象であり、光結合部材10と磁石の着磁方向を除いて同じ構成である。すなわち、
図7Bに示す光結合部材10を180度回転させたものが光結合部材20である。なお、説明の便宜上、
図8、
図9では、光結合部材20、ホルダ21、ボールレンズ22、光ファイバ23、及び磁石24とする。
【0058】
図8、
図9に示す光コネクタ100はオス型であるため、光コネクタ100に用いられるシールドケース104の外周表面が、メス型である光コネクタ1のシールドケース4の開口4a内に挿入可能な大きさとされる。このとき、光コネクタ100のシールドケース104を、光コネクタ1のシールドケース4の開口4a内に圧入して互いに固定できるように、シールドケース4の開口4aの内周面の大きさが、シールドケース104の外周表面の大きさと等しいか、あるいは若干、シールドケース104の外周表面の大きさを、シールドケース4の開口4aの内周面の大きさよりも小さくしている。また、
図9A及び
図9Bに示すように、シールドケース104には前方から後方に向けて貫通する開口104aが設けられ、光結合部材20の磁石24が開口104a内にて露出している。また、ボールレンズ22の前端面が開口104aから見えている。
【0059】
図8Aに示すように、シールドケース104の上面部104bには、一対の挿入孔104cがX方向に間隔を空けて形成されている。各挿入孔104cは、シールドケース4の上面部4bにX方向に設けられた一対の弾性舌片4c(
図6A参照)と組になっている。したがって、作業者等が光コネクタ1、100を接続したとき、シールドケース4の上面部4bに設けられた一対の弾性舌片4cが、シールドケース104の上面部104bに形成された挿入孔104cに入り込み抜け止めされる。一方、接続した状態から作業者等が、光コネクタ1、100同士を引き離すと、弾性舌片4cが弾性変形して挿入孔104cから外れるので、光コネクタ1、100同士を簡単に外すことができる。
【0060】
また、
図8Bに示すように、光コネクタ100の筐体109は、
図6Bに示す筐体9と同様に上側筐体109aと下側筐体109bとで構成され、上側筐体109aと下側筐体109bとが接合されて筐体109を得ることができる。また、
図8A、
図8B及び
図9Bに示すように、筐体109の後端側面109cは前方から後方にかけて先細るように傾斜している。したがって、光コネクタ1、100は、筐体9、109の後端部の形状が異なっている。ただし、本実施の形態に示す筐体9、109の形状は、一例であって同じ形状としてもよいし、使用用途等に合わせて種々変更することができる。なお、筐体9、109の形状を異ならせることで、外見から容易にオス型、メス型の区別をつけることができる。
【0061】
なお、
図9Bに示す光コネクタ100も、
図7Bと同様に、光結合部材20のガイド部材2よりも後端側(図示左方側)に配置されたストッパ部材6の前端面6aとガイド部材2の後端面2cとの間にはコイルばね7が接続されており、コイルばね7の付勢力により、光結合部材20がガイド部材2の後端方向に向けて付勢されている。そのため、
図9Bに示すように、磁石24の後端面がガイド部材2の前端面2bに当接した状態とされている。また、
図9Bにおいても、
図7Bと同様に、ガイド部材2のガイド溝8に配置された光結合部材20(ホルダ21)とガイド溝8との間には、X方向へのクリアランスCLが設けられている。クリアランスは、ガイド溝8と光結合部材20との上下方向(Z方向)においても設けられている。
【0062】
図10Aは、
図6Aに示す光コネクタ(メス型)と
図8Aに示す光コネクタ(オス型)とを接続した状態を示す平面図であり、
図10Bは、
図6bに示す光コネクタ(メス型)と
図8Bに示す光コネクタ(オス型)を接続した状態を示す側面図である。また、
図11Aは、
図10Bに示すF−F矢視の横断面図であり、
図11Bは、
図10Aに示すG−G矢視の縦断面図である。
図10A及び
図10Bにおいては、各光コネクタ1、100の内部に配置される光結合部材10、20を点線で示す。
【0063】
作業者等が光コネクタ1と光コネクタ100とを接続する。このとき、オス型である光コネクタ100のシールドケース104が、メス型である光コネクタ1のシールドケース4の開口4a内に挿入されて、光結合部材10と結合対象としての光結合部材20とが次に説明する結合作業による位置合わせ動作を経て結合される。なお、光コネクタ1と光コネクタ100とを接続すると、
図11Bに示すように、シールドケース4に設けられた弾性舌片4cがシールドケース104に設けられた挿入孔104cに入り込み、抜け止めがなされる。
【0064】
以下、光コネクタ1、100を接続した際の光結合部材10、20同士の結合作業について説明する。
図12は、本実施の形態に係る光結合部材10、20の結合作業の説明図である。
図12において、光ファイバ13、23の一部を点線で示す。
図12に示すように、光結合部材20は、磁石24の着磁形態のみにおいて光結合部材10と相違する。光結合部材20において、磁石24は、磁石14と異なり、ボールレンズ22側の先端部近傍がS極に着磁され、反対側の端部近傍がN極に着磁されている。ボールレンズ22と光ファイバ23との位置決めや、ボールレンズ22とホルダ21や磁石24との位置関係などについては、光結合部材10と同一である。
【0065】
各光コネクタ1、100に設けられる磁石14、24は初め、
図7B及び
図9Bに示すように、ガイド部材2の前端面2bに当接した状態とされる。ここで、
図7B及び
図9Bに示す磁石14、24の位置を「初期位置」とする。初期位置とは、光コネクタ1、100同士を接続する前の基準位置を示している。作業者等が光コネクタ1、100同士を接続すると、磁石14、24同士が、接続したシールドケース4、104内で一定距離まで接近して向き合う状態となる。このとき、磁石14、24間に作用する吸着力によって初期位置から磁石14、24同士が引き寄せられ、互いに前方へ移動する。これにより、磁石24と磁石14とが接触した状態となる(
図12B参照)。
【0066】
そして、
図12Bに示す状態から、さらに磁石24及び磁石14の吸着力によって、磁石24の光結合部材10側の断面24sと、磁石14の光結合部材20側の断面14sとが対向して配置するように磁石14、24同士が移動する。ここでは、磁石14が下方側に、磁石24が上方側に移動する。これにより、
図12Cに示すように、磁石24の光結合部材10側の断面24sと、磁石14の光結合部材20側の断面14sとが密着した状態となる。
【0067】
光結合部材10と光結合部材20とは、それぞれの構成部品の位置関係が同一である。このため、磁石24の光結合部材10側の断面24sと、磁石14の光結合部材20側の断面14sとが、密着した状態となることにより、ボールレンズ12の中心と、ボールレンズ22の中心とが一致した状態となる。なお、本実施の形態では、光結合部材10、20が共に位置合わせ動作を許容されているが、例えば、結合対象が固定で動かない場合は、光結合部材10のみが
図12A及び
図12Bの移動をして結合対象に結合される。
【0068】
なお、本実施の形態では、各光コネクタ1、100に複数の光結合部材10、20が配置されている。したがって、接続される光結合部材10、20は複数組ある。使用用途にもよるが、各組の結合タイミングを略同時とすることができ、あるいは、結合タイミングを変えることもできる。例えば、上記に説明した光コネクタ1、100における各組の結合タイミングが略同時となるように規定されている。「略同時」とは、厳密な同時ではなく製造誤差等を含む概念である。
【0069】
図12に説明した結合作業において本実施の形態では、移動規制部材が用いられて、光結合部材10の結合対象である光結合部材20への位置合わせ動作を許容しながら、それ以上の移動はできないように規制されている。以下、光結合部材10に対する移動規制について説明する。なお、説明は省略するが、光結合部材20についても同様である。本実施の形態における光結合部材10は、浮動構造(フローティング構造)にて支持されている。すなわち、光結合部材10が左右方向(X方向)、前後方向(Y方向)及び上下方向(Z方向)の3軸方向のいずれにも移動可能に支持されている。しかしながら、光結合部材10の3軸方向への自由な移動を許容し移動規制をしないと、例えば、複数の光結合部材10を並設した場合、各光結合部材間で生じる反発力や吸着力により各光結合部材10の初期位置が安定しない。また、光結合部材10を1つだけ配置した場合でも、光結合部材10を光コネクタ1内に組み込む際の位置決め精度が低下しやすく、また、光コネクタ1に強い衝撃等が加わった場合に光結合部材10が筐体部分に激しく衝突する等してボールレンズ12等の破損を招く恐れがある。このように、光結合部材10の初期位置が安定しないと、結合対象と高い位置合わせ精度により結合することができず、あるいは、結合対象との結合そのものができない恐れがある。したがって、本実施の形態では、光結合部材10の結合対象への位置合わせ動作を許容しながら、光結合部材10の移動を規制する移動規制部材を設けている。
【0070】
以上のように光結合部材10においては、ホルダ11に設けられた磁石14の吸着力によって、ボールレンズ12の中心が光結合部材20のボールレンズ22の中心に位置合わせされることから、作業者等が光コネクタ1、100同士を接続するだけで、ボールレンズ12と、ボールレンズ22とを簡単且つ自動的に位置合わせすることができる。このとき、結合対象との位置合わせ動作以上の光結合部材10の移動が規制される。これにより、複雑な結合作業を必要とすることなく、結合対象との位置合わせ精度を向上させることができ、光ファイバ内の光の伝搬効率を向上することが可能となる。
【0071】
具体的には、本実施の形態では、移動規制部材としてガイド部材2を用いている。ガイド部材2には、前端から後端にかけてガイド溝8が形成されており、光結合部材10は、磁石14がガイド部材2の前端側から突出した状態でホルダ11がガイド溝8に配置されている。そして、
図5に示す通り、ガイド溝8の幅寸法T1及び高さ寸法T2は、ガイド溝8に配置される部分の光結合部材10の直径(幅寸法)M1よりも大きい。これにより、光コネクタ1、100の接続により、磁石14、24との間で吸着力が発生すると、ガイド溝8を通って光結合部材10が結合対象である光結合部材20との結合方向へ適切に移動できる。また、ガイド溝8の幅寸法T1及び高さ寸法T2は、ガイド溝8に配置される部分の光結合部材10の直径よりも大きいため、ホルダ11とガイド溝8との間にクリアランスが生じている。したがって、光結合部材10は、ガイド溝8の延出方向(前後方向;Y方向)と交差する方向の左右方向(X方向)及び高さ方向(Z方向)に形成されたクリアランス範囲にて適切に移動できる。したがって、光結合部材10は、結合対象への位置合わせ動作が3軸方向に許容され、適切に、光結合部材10と結合対象である光結合部材20とのボールレンズ12、22の中心を合わせる位置合わせ動作が可能である。加えて、ガイド溝8の底面8a及び側壁8b、及びガイド溝8の上面を塞ぐカバー部材3の天井部面は、光結合部材10が必要以上に移動するのを抑制する規制面を構成する。さらに、ガイド溝8の幅寸法T1及び高さ寸法T2は、磁石14を備えた部分の光結合部材10の直径M2よりも小さいため、磁石14が、ガイド部材2のガイド溝8内に入り込まず、光結合部材10が必要以上に後端方向へ移動することを規制できる。これにより適切に、光結合部材10の結合対象である光結合部材20への位置合わせ動作を許容しながら、光結合部材10の移動を規制することができる。
【0072】
上記した本実施の形態では、光コネクタ1内部に組み込まれる光結合部材10は2つであったが、数を限定するものでない。光結合部材10は1つであってもよく、3つ以上であってもよい。本実施の形態では、光結合部材10が複数設けられる場合、ガイド部材2に設けられるガイド溝8は、各光結合部材10に個別に設けられることが好ましい。すなわち、光結合部材10が2つであれば、ガイド溝8も2つ形成され、光結合部材10が4つであれば、ガイド溝8は4つ形成される。これにより、光コネクタ1内に組み込まれる複数の光結合部材10の磁石14間の磁力(吸着力)により、各光結合部材10同士が、ガイド溝8の幅以上に離反あるいは接近するのを抑制することができる。したがって、複数の光結合部材10の初期位置を安定して保持することができる。
【0073】
また、本実施の形態に係る光結合部材10においては、磁石14からの吸着力によりボールレンズ12の中心と光結合部材20のボールレンズ22の中心とが位置合わせされる。このため、光結合部材20に対して容易に着脱することができると共に、長期間に亘って繰り返し着脱することが可能となる。
【0074】
光コネクタ1、100に配置される各磁石14、24の断面14s、24sの形状は同一に構成されている。このため、これらの磁石14、24の吸着力により断面14s、24s同士を密着させることができる。これにより、光結合部材20に対して安定して光結合部材10を結合させることが可能となる。
【0075】
特に、光コネクタ1に配置される磁石14は、結合対象である光結合部材20側の断面14sの外形形状が、ボールレンズ12の中心を中心点とした真円形状に構成されている。このため、光結合部材20の磁石24と吸着する際に磁石14が回転することがない。このため、磁石14が設けられるホルダ11の回転を防止できるので、ホルダ11に保持される光ファイバ13が捻じれる事態を防止することが可能となる。
【0076】
また、光コネクタ1に配置される磁石14における光結合部材20側の断面14sは、ボールレンズ12の前端部(光結合部材20側の端部)よりも前方に突出している。同様に、光コネクタ100に配置される磁石24も光結合部材10側の断面24sが、ボールレンズ22の前端部(光結合部材10側の端部)よりも前方に突出している。これにより、磁石14、24の断面14s、24sが接触してもボールレンズ12、22同士は接触しないため、ボールレンズ12、22の表面が損傷する事態を防止することが可能となる。なお、磁石14、24同士が接触した際の、ボールレンズ12とボールレンズ22との間の距離は1mm以下であることが好ましい。これにより、光ファイバ13内の光の伝搬効率が低下するのを抑制することができる。
【0077】
なお、磁石14、24の断面14s、24sとボールレンズ12、22との配置関係は、上記に限定されない。以下、別の配置関係について
図13を用いて説明する。
図13は、本実施の形態の変形例に係る光結合部材の説明図である。
図13に示すように、磁石14、24の断面14s、24sとボールレンズ12、22とが同一の位置に配置されている。これにより、ボールレンズ12、22間の距離を短縮することができるので、ボールレンズ12、22間の間隙の増大に伴って光ファイバ13内の光の伝搬効率が低下するのを回避することが可能となる。
【0078】
また、磁石14、24のどちらか一方の断面14s、24sをボールレンズ12、24の前端部よりも前方に突出させ、他方の断面14s、24sをボールレンズ12、24の前端部と同一の位置に配置してもよい。なお、このような場合でも磁石14、24同士が接触した際の、ボールレンズ12とボールレンズ22との間の距離は1mm以下であることが好ましい。これにより、光ファイバ13内の光の伝搬効率が低下するのを抑制することができる。
【0079】
なお、上記実施の形態に係る光結合部材10においては、磁石14、24が発生する吸着力によって光結合部材10と光結合部材20とを結合する場合について説明している。しかしながら、光結合部材10の構成については、これに限定されるものではない。光結合部材10と光結合部材20との結合を強固にしたり、光結合部材10と光結合部材20とを結合し易くしたりすることは実施の形態として好ましい。
【0080】
また、本実施の形態では、
図7B等に示すように、ガイド部材2の前端側に突出した磁石14をガイド部材2の前端面2b方向に付勢する付勢部材としてのコイルばね7が設けられている。具体的には、コイルばね7は、ガイド部材2の後端面2cと、ガイド部材2の後端面2cよりも後方にて光結合部材10に設けられたストッパ部材6の前端面6aとの間を接続する引張コイルばねである。また、コイルばね7の付勢力は、磁石14の結合対象である磁石24との間で作用する磁力(吸着力)よりも弱く設定されている。これにより、光結合部材10の磁石14は、ガイド部材2の前端面2bに当接した初期位置から、光コネクタ1、100同士の接続によって磁石14、24間で作用する磁力により、前方に移動して光結合部材10、20同士が適切に結合される。また、光コネクタ1、100の接続状態から光コネクタ1、100を引き離すと、磁石14、24同士が離れ、このとき、コイルばね7の付勢力により、光結合部材10の磁石14がガイド部材2の前端面2bに当接する初期位置に適切に戻される。なお、本実施の形態における「付勢力」は、光結合部材10と光結合部材20との結合状態から結合を解除した際に、光結合部材10を元の位置に戻すための力であり、初期位置の状態で、付勢力が光結合部材10に作用していなくてもよい。
【0081】
上記の実施の形態では、光結合部材10、20との結合状態の解除により、光結合部材10を初期位置に戻す付勢部材として、コイルばね7が用いられたが、弾性体としてコイルばね7以外にゴム等が用いられてもよい。このように、付勢部材として弾性体が用いられることで、簡単な構成で、光結合部材10に対して付勢力を付加することができる。
【0082】
また、上記実施の形態では、コイルばね7がガイド部材2の後端面2cとストッパ部材6の前端面6aとの間に設けられていたが、コイルばね7等の弾性体をガイド部材2の前端面2bと磁石14の後端面との間に接続してもよい。
【0083】
ただし、付勢部材は、ガイド部材2の後端側に配置されていることが好ましい。ガイド部材2の後端側は前端側に比較して広いスペースがあるため、無理なく付勢部材を配置することができる。また、磁石14の初期位置としてガイド部材2の前端面2bに当接した状態を得ることができる。
【0084】
また、本実施の形態では、コイルばね7が用いられる構成に代えて、以下に説明する付勢部材を用いてもよい。
図14は、
図9Bとは異なる付勢部材を適用した光コネクタ(オス型)の説明図である。
図14では、オス型の光コネクタ100を用いて説明するが、メス型の光コネクタ1についても同様に適用できる。
【0085】
図14に示すように、光結合部材20のガイド部材2よりも後端側に第1の吸着部102が設けられ、第1の吸着部102と対向する位置に第2の吸着部103が設けられている。第1の吸着部102と第2の吸着部103とで付勢部材が構成されている。第2の吸着部103は、第1の吸着部102の後端側の光結合部材20に接続されており、第2の吸着部103は、筐体109の内壁面に固定されている。第2の吸着部103は、光結合部材20には接触していない。この実施の形態では、第1の吸着部102が光結合部材20に対し必要以上に前方に突出するのを防止するストッパ部材として機能している。
【0086】
図14では、第1の吸着部102と第2の吸着部103との間に吸着力が生じており、第1の吸着部102と第2の吸着部103とが吸着している。例えば、第1の吸着部102と第2の吸着部103の一方が磁石とされ、他方が磁性金属材料で形成され、あるいは、両方が磁石で形成される。これにより、第1の吸着部102と第2の吸着部103とを磁力で吸着させることができ、簡単な構成で、光結合部材20に対して後端方向への付勢力を付加することができる。付勢力により、
図14に示すように磁石24の後端面がガイド部材2の前端面2bに当接する初期位置が得られる。なお、コイルばね7が配置される場合と同様に第1の吸着部102と第2の吸着部103との間に生じる吸着力(付勢力)は、作業者等が光コネクタ1、100を接続したときに磁石14、24間で生じる磁力に比べて弱い。このため、作業者等が光コネクタ1、100を接続したときに適切に光結合部材10、20の磁石14、24同士が引き付けられて位置決め動作を伴う吸着が行われるとともに、作業者等が接続された光コネクタ1、100を引き離すことで、第1の吸着部102と第2の吸着部103との間の吸着力により、光結合部材20を元の初期位置に戻すことができる。
【0087】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0088】
例えば、上記実施の形態においては、光結合部材10が備えるレンズがボールレンズ12で構成される場合について説明している。しかしながら、光結合部材10に適用されるレンズについてはボールレンズ12に限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、結合対象との間で適切に伝搬される光を結合可能であることを前提として、凸レンズや凹レンズ等の任意のレンズを適用することができる。
【0089】
また、上記実施の形態においては、光結合部材10が吸着部材として磁石14を備える場合について説明している。しかしながら、光結合部材10が備える吸着部材については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、吸着部材として、結合対象に設けられた磁石に吸着する磁性体を光結合部材10に備えるようにしてもよい。このように変更する場合にも、上記実施の形態と同様に、複雑な結合作業を必要とすることなく、光ファイバ13内の光の伝搬効率を向上することが可能となる。
【0090】
さらに、上記実施の形態においては、光結合部材10が備える磁石14が円筒形状を有する場合について説明している。しかしながら、光結合部材10が備える磁石14の形状については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、結合対象に設けられる磁石との関係において、ボールレンズ12の中心を結合対象側の光学要素の中心と位置合わせできることを前提として任意の形状とすることができる。例えば、磁石14は、断面形状が多角形の筒状体で構成するようにしてもよい。また、磁石14は、ホルダ11の前端部の周囲全体に囲む形状でなく、その一部に配置される形状であってもよい。さらに、磁石14は、前端部の断面が平面形状ではなく凹凸形状を有するようにしてもよい。
【0091】
さらに、上記実施の形態においては、光結合部材10の結合対象として同一の構成を有する光結合部材20と結合する場合を例に説明している。しかしながら、光結合部材10の結合対象については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、光結合部材10は、光学要素としてレンズを含まない結合対象、異なる断面形状を有する磁石24を備えた結合対象や、磁石24の代わりに磁性体を備えた結合対象と結合することができる。
【0092】
また、本実施の形態では、光結合部材に対する移動規制部材としてガイド部材2を提示したが、ガイド部材2に限定されるものでない。例えば、エラストマー等の柔軟性のある樹脂層で光結合部材のホルダ11の周囲を覆い、樹脂層の前端側に磁石14が突出した状態とする。樹脂層は、光結合部材の結合対象への位置合わせ動作を阻害しない柔軟性を有している。したがって、樹脂層を、光結合部材の結合対象への位置合わせ動作を許容はするが、光結合部材がそれ以上移動できないように規制する移動規制部材として機能させることができる。これによっても、複雑な結合作業を必要とすることなく、光ファイバ内の光の伝搬効率を向上することが可能となる。ただし、ガイド溝を有するガイド部材を移動規制部材として用い、ガイド溝に光結合部材のホルダを配置した構成とすることで、光結合部材の結合対象への位置合わせ動作範囲を精度よく規制でき、さらに、光結合部材のホルダをガイド部材のガイド溝に配置するだけで光結合部材の光コネクタ内の位置合わせを行うことができ、光結合部材の組み立て作業を容易にできる。
【0093】
なお、本実施の形態における光コネクタは、USB(Universal Serial Bus)規格に対応した電気コネクタ、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)規格(HDMIは登録商標)に対応した電気コネクタ、サンダーボルト(Thunderbolt)規格に対応した電気コネクタ、イーサネット(Ethernet)規格(イーサネット及びEthernetは登録商標)に対応した電気コネクタ等に用いることができる。また、給電用コネクタとしても用いることが可能である。給電用コネクタでは、まず、グランド用の光結合部材が結合対象のグランド用光結合部材と結合した後、遅れて残りの光結合部材同士が結合する構成とされる。例えば、各光結合部材に取りつけられる付勢部材としてのコイルばね等の付勢力を、各光結合部材毎に変えたり、磁石の磁力を変えたりすることで、結合タイミングを同時でなくずらすことができる。