特許第6532705号(P6532705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6532705
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】トナーの製造方法及びトナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20190610BHJP
   G03G 9/09 20060101ALI20190610BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20190610BHJP
【FI】
   G03G9/087 331
   G03G9/087 325
   G03G9/087
   G03G9/09
   G03G9/08 381
【請求項の数】16
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2015-42313(P2015-42313)
(22)【出願日】2015年3月4日
(65)【公開番号】特開2015-187715(P2015-187715A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2017年10月24日
(31)【優先権主張番号】特願2014-46574(P2014-46574)
(32)【優先日】2014年3月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山下 泰治
(72)【発明者】
【氏名】川口 覚博
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−086502(JP,A)
【文献】 特開2006−276073(JP,A)
【文献】 特開2007−034277(JP,A)
【文献】 特開2009−063969(JP,A)
【文献】 特開2012−068341(JP,A)
【文献】 特開2013−145362(JP,A)
【文献】 特開2011−118175(JP,A)
【文献】 特開2006−276305(JP,A)
【文献】 特開2013−114092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤と結晶性樹脂(A)とエステル基を有するビニル樹脂(B)とを含有するトナー(Z)の製造方法であって、前記ビニル樹脂(B)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られる分子量分布において、分子量が3,000〜60,000の領域で少なくとも1つのピークを有する樹脂(LB)を含むものであって、前記ビニル樹脂(B)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られる分子量分布において、分子量が3,000〜60,000の領域で少なくとも1つのピークを有する樹脂(LB)と、分子量が10万〜250万の領域で少なくとも1つのピークを有する樹脂(HB)の混合物であって、前記ビニル樹脂(B)の含有率が、トナー(Z)の重量に基づいて50〜90重量%であって、まず着色剤と結晶性樹脂(A)とビニル樹脂(B)を含有する分散液(W)中の分散体(X)を凝集させてなる凝集体(Y)を加熱して融合させて樹脂粒子(Z’)を得る工程を含むことを特徴とするトナー(Z)の製造方法。
【請求項2】
エステル基を有するビニル樹脂(B)のエステル基濃度が、(B)の重量に基づいて5〜60重量%である請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】
結晶性樹脂(A)が、エステル基、ウレタン基、ウレア基及びアミド基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する結晶性樹脂である請求項1又は2に記載のトナーの製造方法。
【請求項4】
結晶性樹脂(A)がエステル基を有する結晶性樹脂である請求項3に記載のトナーの製造方法。
【請求項5】
結晶性樹脂(A)の(A)の重量に基づくエステル基濃度(重量%)と、エステル基を有するビニル樹脂(B)の(B)の重量に基づくエステル基濃度(重量%)との差の絶対値が45重量%以下である請求項4に記載のトナーの製造方法。
【請求項6】
結晶性樹脂(A)とエステル基を有するビニル樹脂(B)の溶解度パラメータの差の絶対値が1.8(cal/cm31/2以下である請求項1〜5のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項7】
トナーが、条件1を満たす請求項1〜6のいずれかに記載のトナーの製造方法。
[条件1]
1.1≦(Tg1)/(Tg2)≦3.5
関係式中、(Tg1)はトナーの示差走査熱量測定で測定開始温度20℃から測定終了温度150℃まで毎分10℃、昇温したときに検出されるガラス転移温度[℃]を表す。
(Tg2)はトナーの示差走査熱量測定でTg1測定後、150℃から−20℃まで毎分10℃で冷却し、−20℃から測定終了温度150℃まで毎分10℃で昇温したときに検出されるガラス転移温度[℃]を表す。
【請求項8】
エステル基を有するビニル樹脂(B)が、炭素数1〜50のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを構成単位とするエステル基を有するビニル樹脂である請求項1〜7のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項9】
エステル基を有するビニル樹脂(B)が重合性二重結合を有する芳香族炭化水素及び/又は炭素数3〜15の不飽和モノカルボン酸を構成単位とするエステル基を有するビニル樹脂である請求項1〜8のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項10】
エステル基を有するビニル樹脂(B)の120℃での貯蔵弾性率G’(120)が1000〜1×106[Pa・s]である請求項1〜9のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項11】
結晶性樹脂(A)の吸熱ピークの最大温度(Ta)が50〜100℃である請求項1〜10のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項12】
結晶性樹脂(A)の重量平均分子量が3,000〜50,000である請求項1〜11のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項13】
結晶性樹脂(A)が、以下の条件2及び3を満たす請求項1〜12のいずれかに記載のトナーの製造方法。
[条件2]
G’(Ta+10)≦1,000[Pa・s]
[条件3]
1×106≦G’(Ta−10)≦1×109[Pa・s]
関係式中、G’(Ta+10)は(Ta+10)[℃]における(A)の貯蔵弾性率[Pa・s]を表し、G’(Ta−10)は(Ta−10)[℃]における(A)の貯蔵弾性率[Pa・s]を表す。
【請求項14】
結晶性樹脂(A)が、条件4を満たす請求項1〜13のいずれかに記載のトナーの製造方法。
[条件4]
3≦Log{G’(Ta−10)}−Log{G’(Ta+10)}≦8
関係式中、G’(Ta−10)は(Ta−10)[℃]における(A)の貯蔵弾性率[Pa・s]を、G’(Ta+10)は(Ta+10)[℃]における(A)の貯蔵弾性率[Pa・s]を表す。
【請求項15】
結晶性樹脂(A)の含有率が、トナーの重量に基づいて5〜30重量%である請求項1〜14のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項16】
着色剤が、黒色着色剤、青色着色剤、赤色着色剤及び黄色着色剤からなる群より選ばれる1種類以上を含有する着色剤である請求項1〜15のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子写真用トナーには省エネルギー化の観点から、耐熱保存性、耐湿熱保存性と低温定着性の両立が望まれている。この課題を解決するため、非晶質ポリエステルに結晶性ポリエステルを含有させることで定着温度の低下と耐熱保存性の両立を達成する方法が提案されている(特許文献1)。しかし、この方法では低温定着性と耐熱保存性については良好な結果が得られるものの、トナー製造工程において結晶性ポリエステルが非晶ポリエステルに相溶してしまい、トナーの耐湿熱保存性及び耐久性が低くなり、複写機・プリンターの設計に制限があるという問題があった。
これらの問題を解決すべく、スチレン−アクリル系樹脂に結晶性ポリエステル樹脂を含有させる技術が提案されている(特許文献2)。スチレン−アクリル系樹脂を用いることで、結晶性樹脂と相溶せず明確に境界を有する構造に制御することで耐久性は向上している。しかしながら、結晶性ポリエステルとスチレン−アクリル樹脂は相溶性が悪いため、十分な低温定着性が得られず、印刷画像の光沢についても不十分なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−091882号公報
【特許文献2】特開2013−080112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、耐熱保存性、耐湿熱保存性と低温定着性の両立ができ、かつトナー耐久性、光沢に優れるトナーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、耐熱保存性、耐湿熱保存性と低温定着性を両立したトナーの製造方法を開発すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、着色剤と結晶性樹脂(A)とエステル基を有するビニル樹脂(B)とを含有するトナー(Z)の製造方法であって、まず着色剤と結晶性樹脂(A)とビニル樹脂(B)を含有する分散液(W)中の分散体(X)を凝集させてなる凝集体(Y)を加熱して融合させて樹脂粒子(Z’)を得る工程を含むことを特徴とするトナー(Z)の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のトナーの製造方法は、耐熱保存性、耐湿熱保存性と低温定着性を両立し、トナー耐久性、光沢に優れるトナーを製造可能である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のトナー(Z)は、着色剤と結晶性樹脂(A)とエステル基を有するビニル樹脂(B)とを含有することを特徴とする。
その製造方法は、例えば、以下の3つの工程を含む。
(1)着色剤と結晶性樹脂(A)とビニル樹脂(B)を含有する分散液(W)を得る。
(2)分散液(W)中の分散体(X)を凝集させてなる凝集体(Y)を得る。
(3)凝集体(Y)を加熱して融合させて樹脂粒子(Z’)を得る。
【0008】
本発明における結晶性樹脂とは、融解熱の吸熱ピーク温度(以下Taと略記する)が、示差走査熱量測定(DSC)において吸熱ピークを有する樹脂を意味する。なお、Taは以下の方法で測定することができる。
【0009】
<Taの測定方法>
示差走査熱量計{例えば「DSC210」[セイコーインスツル(株)製]}を用いて、以下の手順で測定する。
(1)前処理として、試料をDSCを用いて150℃まで昇温して溶融した後、150℃から70℃まで1.0℃/分の速度で冷却し、次に70℃から10℃までは0.5℃/分の速度で冷却する。
(2)この試料をDSCにより昇温速度20℃/分で再び150℃まで2回目の昇温を行い吸発熱変化を測定する。「吸発熱量」と「温度」とのグラフを描き、このとき2回目の昇温で観測される吸熱ピーク温度をTa’とする。複数ある場合は最も吸熱量が大きいピークの温度をTa’とする。
(3)(2)でTa’が判明したので、新たな試料を恒温槽を用いて150℃まで昇温して溶融した後、150℃から(Ta’−15)℃まで冷却し、この温度で6時間保管した後、次に(Ta’−10)℃で6時間保管する。この操作によって試料にアニール処理を施す。
(4)前記のアニール処理した試料を、DSCにより降温速度10℃/分で0℃まで冷却する。
(5)昇温速度20℃/分で再び昇温して吸発熱変化を測定して同様のグラフを描き、吸熱ピークの最大温度をTaとする。
【0010】
本発明における結晶性樹脂(A)としては、結晶性ポリエステル樹脂(A1)、結晶性ポリウレタン樹脂(A2)、結晶性ポリウレア樹脂(A3)、結晶性ポリアミド樹脂(A4)、結晶性ビニル樹脂(A5)、結晶性エポキシ樹脂(A6)及び結晶性ポリエーテル樹脂(A7)等が挙げられる。
(A)は単独でも二種以上を併用してもよい。
【0011】
結晶性ポリエステル樹脂(A1)としては、ジオール(1)とジカルボン酸(2)を構成単位とするものが挙げられる。ただし、必要に応じて1官能及び3官能以上のアルコール成分や酸成分を併用してもよい。
【0012】
ジオール(1)としては、炭素数2〜30のアルキレングリコール(例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ネオペンチルグリコール及び2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等);
数平均分子量(以下、Mnと略記することがある。)=106〜10,000のアルキレンエーテルグリコール(例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等);炭素数6〜24の脂環式ジオール(例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールA等);
Mn=100〜10,000の前記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(以下、「アルキレンオキサイド」をAOと略記することがある。)付加物(付加モル数2〜100)[例えば1,4−シクロヘキサンジメタノールのエチレンオキサイド(以下、「エチレンオキサイド」をEOと略記することがある。)10モル付加物等]
炭素数15〜30のビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等)又は炭素数12〜24のポリフェノール(例えばカテコール、ハイドロキノン及びレゾルシン等)のAO[EO、プロピレンオキサイド(以下、「プロピレンオキサイド」をPOと略記することがある。)及びブチレンオキサイド等]付加物(付加モル数2〜100)(例えばビスフェノールA・EO2〜4モル付加物及びビスフェノールA・PO2〜4モル付加物等);重量平均分子量(以下、Mwと略記することがある。)=100〜5,000のポリラクトンジオール(例えばポリ−ε−カプロラクトンジオール等);
Mw=1,000〜20,000のポリブタジエンジオール等が挙げられる。
【0013】
これらのうち好ましいのは、炭素数2〜30のアルキレングリコール及びMw=100〜5,000のポリラクトンジオールであり、更に好ましいのは、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、及びドデカンジオールである。
【0014】
必要により併用される1価のアルコール成分としては、脂肪族モノアルコール及び芳香族モノアルコール等が挙げられる。モノアルコールも使用するときは、1種類でもよいし、2種類以上を併用してもよい。
脂肪族モノアルコールとしては、鎖式飽和モノアルコール及び鎖式不飽和モノアルコール等が挙げられる。
鎖式飽和モノアルコールとしては、炭素数1〜30の直鎖又は分岐の鎖式飽和モノアルコール(メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、ヘキサノール、4−メチル−1−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、ヘプタノール、3−エチル−3−ペンタノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ノナノール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、デカノール、ウンデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコール等)、及び炭素数1〜30の直鎖又は分岐の鎖式飽和モノアルコールに炭素数2〜4のAO(EO、PO及びBO)を付加したもの(付加モル数1〜20モル)等が挙げられる。
【0015】
鎖式不飽和モノアルコールとしては、炭素数2〜30の直鎖又は分岐の鎖式不飽和モノアルコール(アリルアルコール、2−ブテン−1−オール、2−ペンテン−1−オール、2−ヘキセン−1−オール、2−ヘプテン−1−オール、2−オクテン−1−オール、2−ノネン−1−オール、2−デセン−1−オール、2−ドデセノール、パルミトレイルアルコール、オレイルアルコール及びリノレイルアルコール等)、及び炭素数1〜30の直鎖又は分岐の鎖式不飽和モノアルコールに炭素数2〜4のAO(EO、PO及びBO)を付加したもの(付加モル数1〜20モル)等が挙げられる。
【0016】
芳香族モノアルコールとしては、炭素数6〜30の芳香族モノアルコール(フェノール、エチルフェノール、イソブチルフェノール、ペンチルフェノール、オクチルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール及びベンジルアルコール等);及び炭素数6〜30の芳香族モノアルコールに炭素数2〜4のAO(EO、PO及びBO)を付加したもの(付加モル数1〜20モル)等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、脂肪族モノアルコールであり、更に好ましいのは鎖式飽和モノアルコールである。
【0017】
必要により併用される3価以上のアルコール成分としては、炭素数3〜36の3〜8価又はそれ以上の多価脂肪族アルコール(アルカンポリオール及びその分子内又は分子間脱水物、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、及びポリグリセリン;糖類及びその誘導体、例えばショ糖及びメチルグルコシド);トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)のAO付加物(付加モル数2〜30);ノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等)のAO付加物(付加モル数2〜30);
アクリルポリオール[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと他のビニル系モノマーの共重合物等];等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、3〜8価又はそれ以上の多価脂肪族アルコールである。
【0018】
ジカルボン酸(2)としては、炭素数4〜32のアルカンジカルボン酸(例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸及びオクタデカンジカルボン酸等);炭素数4〜32のアルケンジカルボン酸(例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸及びメサコン酸等);炭素数8〜40の分岐アルケンジカルボン酸[例えばダイマー酸、アルケニルコハク酸(ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸及びオクタデセニルコハク酸等);炭素数12〜40の分岐アルカンジカルボン酸[例えばアルキルコハク酸(デシルコハク酸、ドデシルコハク酸及びオクタデシルコハク酸等);炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等)等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、炭素数4〜32のアルカンジカルボン酸及び炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸であり、更に好ましいのは、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸である。
【0019】
必要により併用される1価の酸成分としては、脂肪族モノカルボン酸及び芳香族モノカルボン酸が挙げられる。なお、モノカルボン酸は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
脂肪族モノカルボン酸としては、鎖式飽和モノカルボン酸、鎖式不飽和モノカルボン酸及び脂環式モノカルボン酸等が挙げられる。
【0020】
鎖式飽和モノカルボン酸としては、炭素数2〜30の直鎖又は分岐の鎖式飽和モノカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−エチルヘキサン酸、カプロン酸 、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸及びリグノセリン酸等)等が挙げられる。
【0021】
鎖式不飽和モノカルボン酸としては、炭素数3〜30の直鎖又は分岐の鎖式不飽和モノカルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、エレオステアリン酸、8,11−エイコサジエン酸、5,8,11−エイコサトリエン酸、アラキドン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エライジン酸、エルカ酸及びネルボン酸等)等が挙げられる。
【0022】
脂環式モノカルボン酸としては、炭素数4〜14の脂環式モノカルボン酸(シクロプロパンカルボン酸、シクロブタンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸及びシクロヘプタンカルボン酸等)等が挙げられる。
【0023】
芳香族モノカルボン酸としては、炭素数7〜36の芳香族モノカルボン酸が挙げられ、具体的には、安息香酸、ビニル安息香酸、トルイル酸、ジメチル安息香酸、t−ブチル安息香酸、クミン酸、ナフトエ酸、ビフェニルモノカルボン酸及びフロ酸等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、脂肪族モノカルボン酸であり、更に好ましいのは鎖式飽和モノカルボン酸である。
【0024】
必要により併用される3価以上の酸成分としては、炭素数9〜20の芳香族カルボン酸(トリメリット酸、およびピロメリット酸等)、炭素数6〜36の脂肪族(脂環式を含む)カルボン酸(ヘキサントリカルボン酸、およびデカントリカルボン酸等)、及びこれらのエステル形成性誘導体や酸無水物等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、トリメリット酸、ピロメリット酸、及びこれらの酸無水物である。
【0025】
結晶性ポリエステル樹脂(A1)は、耐熱保存安定性の観点から、ジオール(1)及びジカルボン酸(2)の構成単位としての合計炭素数が8以上のものが好ましく、更に好ましくは10以上、特に好ましくは12以上、最も好ましくは14以上であり、トナー(Z)の低温定着性の観点から、前記合計炭素数が52以下のものが好ましく、更に好ましくは45以下、特に好ましくは40以下、最も好ましくは30以下である。
【0026】
結晶性ポリウレタン樹脂(A2)としては、前記ジオール(1)及び/又はジアミン(3)とジイソシアネート(4)を構成単位とするもの(A21)、前記結晶性ポリエステル樹脂(A1)、前記ジオール(1)及び/又はジアミン(3)とジイソシアネート(4)を構成単位とするもの(A22)、前記結晶性ポリエステル樹脂(A1)とジイソシアネート(4)を構成単位とするもの(A23)等が挙げられる。
必要に応じて1官能及び3官能以上のアルコール成分、酸成分、及びイソシアネート成分を用いてもよい。
【0027】
ジアミン(3)としては、炭素数2〜18の脂肪族ジアミン及び炭素数6〜20の芳香族ジアミン等が挙げられる。
炭素数2〜18の脂肪族ジアミンとしては、鎖状脂肪族ジアミン及び環状脂肪族ジアミン等が挙げられる。
【0028】
鎖状脂肪族ジアミンとしては、炭素数2〜12のアルキレンジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等)及びポリアルキレン(炭素数2〜6)ポリアミン[ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミン等]等が挙げられる。
【0029】
環状脂肪族ポリアミンとしては、炭素数4〜15の脂環式ジアミン{1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4’−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)及び3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等}及び炭素数4〜15の複素環式ジアミン[ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン、及び1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン等]等が挙げられる。
【0030】
炭素数6〜20の芳香族ジアミンとしては、非置換芳香族ジアミン、アルキル基(メチル基、エチル基、n−又はイソプロピル基及びブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基)を有する芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0031】
非置換芳香族ジアミンとしては、1,2−、1,3−又は1,4−フェニレンジアミン、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、チオジアニリン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン、2,6−ジアミノピリジン、m−アミノベンジルアミン、ナフチレンジアミン及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0032】
アルキル基を有する芳香族ジアミンとしては、2,4−又は2,6−トリレンジアミン、クルードトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ビス(o−トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジメチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,4−ジエチル−、2,5−ジアミノベンゼン、1,4−ジイソプロピル−2,5−ジアミノベンゼン、1,4−ジブチル−2,5−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノメシチレン、1,3,5−トリエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリイソプロピル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノナフタレン、2,6−ジメチル−1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジイソプロピル−1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジブチル−1,5−ジアミノナフタレン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、3,3’,5,5’−テトライソプロピルベンジジン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジエチル−3’−メチル−2’,4−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジイソプロピル−3’−メチル−2’,4−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−2,2’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0033】
ジイソシアネート(4)としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く。以下同様。)6〜20の芳香族ジイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネート、鎖状脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基及びオキサゾリドン基含有変性物等)及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0034】
芳香族ジイソシアネートとしては、1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、m−又はp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI{粗製ジアミノフェニルメタン[ホルムアルデヒドと芳香族アミン(アニリン)又はその混合物との縮合生成物及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0035】
脂肪族ジイソシアネートとしては、鎖状脂肪族ジイソシアネート及び環状脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
鎖状脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0036】
脂環式ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−又は2,6−ノルボルナンジイソシアネート及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0037】
ジイソシアネートの変性物としては、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基及び/又はオキサゾリドン基を含有する変性物等が用いられ、変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI及びトリヒドロカルビルホスフェート変性MDI等)、ウレタン変性TDI及びこれらの混合物[例えば変性MDIとウレタン変性TDI(イソシアネート含有プレポリマー)との混合物]等が挙げられる。
また、これらの変性物のうち3官能以上のポリイソシアネート成分も用いることができる。
【0038】
ジイソシアネート(4)のうちで好ましいのは、炭素数6〜15の芳香族ジイソシアネート、炭素数4〜15の脂肪族ジイソシアネートであり、更に好ましいのはTDI、MDI、HDI、水添MDI及びIPDIである。
【0039】
結晶性ポリウレタン樹脂(A2)は、前記ジオール(1)に加え、カルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基、スルファミン酸(塩)基及びリン酸(塩)基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するジオール(1’)を構成単位としてもよい。(A2)がジオール(1’)を構成単位とすることにより、樹脂粒子の帯電性、耐熱保存安定性が向上する。
なお、本発明における「酸(塩)」は、酸又は酸塩を意味する。
【0040】
カルボン酸(塩)基を有するジオール(1’)としては、酒石酸(塩)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸(塩)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸(塩)及び3−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]プロパン酸(塩)等が挙げられる。
スルホン酸(塩)基を有するジオール(1’)としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)エタンスルホン酸(塩)、2−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エタンスルホン酸(塩)及び5−スルホ−イソフタル酸−1,3−ビス(2−ヒドロキシエチル)エステル(塩)等が挙げられる。
スルファミン酸(塩)基を有するジオール(1’)としては、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)スルファミン酸(塩)、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)スルファミン酸(塩)、N,N−ビス(4−ヒドロキシブチル)スルファミン酸(塩)及びN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)スルファミン酸(塩)等が挙げられる。
リン酸(塩)基を有するジオール(1’)としては、ビス(2−ヒドロキシエチル)ホスフェート(塩)等が挙げられる。
酸塩を構成する塩としては、アンモニウム塩、アミン塩(メチルアミン塩、ジメチルアミン塩、トリメチルアミン塩、エチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、プロピルアミン塩、ジプロピルアミン塩、トリプロピルアミン塩、ブチルアミン塩、ジブチルアミン塩、トリブチルアミン塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、N−メチルエタノールアミン塩、N−エチルエタノールアミン塩、N,N−ジメチルエタノールアミン塩、N,N−ジエチルエタノールアミン塩、ヒドロキシルアミン塩、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン塩及びモルホリン塩等)、4級アンモニウム塩[テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩及びトリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム塩等]、アルカリ金属塩(ナトリウム塩及びカリウム塩等)が挙げられる。
ジオール(1’)のうち、樹脂粒子の帯電性及び耐熱保存安定性の観点から好ましいのは、カルボン酸(塩)基を有するジオール(1’)及びスルホン酸(塩)基を有するジオール(1’)である。
【0041】
結晶性ポリウレア樹脂(A3)としては、前記ジアミン(3)とジイソシアネート(4)を構成単位とするもの等が挙げられる。
【0042】
結晶性ポリアミド樹脂(A4)としては、前記ジカルボン酸(2)とジアミン(3)を構成単位とするもの等が挙げられる。
【0043】
結晶性ビニル樹脂(A5)としては、重合性二重結合を有する単量体を単独重合又は共重合した重合体である。重合性二重結合を有する単量体としては、以下の(5)〜(13)が挙げられる。
【0044】
(5)重合性二重結合を有する炭化水素:
(5−1)重合性二重結合を有する脂肪族炭化水素:
(5−1−1)重合性二重結合を有する鎖状炭化水素:炭素数2〜30のアルケン(例えばエチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等);炭素数4〜30のアルカジエン(例えばブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン及び1,7−オクタジエン等)。
(5−1−2)重合性二重結合を有する環状炭化水素:炭素数6〜30のモノ又はジシクロアルケン(例えばシクロヘキセン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等)及び炭素数5〜30のモノ又はジシクロアルカジエン[例えば(ジ)シクロペンタジエン等]等。
(5−2)重合性二重結合を有する芳香族炭化水素:スチレン;スチレンのハイドロカルビル(炭素数1〜30のアルキル、シクロアルキル、アラルキル及び/又はアルケニル)置換体(例えばα−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン及びトリビニルベンゼン等);及びビニルナフタレン等。
【0045】
(6)カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体及びそれらの塩:
炭素数3〜15の不飽和モノカルボン酸{例えば(メタ)アクリル酸[「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。]、クロトン酸、イソクロトン酸及び桂皮酸等};炭素数3〜30の不飽和ジカルボン酸(無水物)[例えば(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(無水)シトラコン酸及びメサコン酸等];及び炭素数3〜10の不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜10)エステル(例えばマレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノデシルエステル、フマル酸モノエチルエステル、イタコン酸モノブチルエステル及びシトラコン酸モノデシルエステル等)等。
カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体の塩を構成する塩としては、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩及びカリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩及びマグネシウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩及び4級アンモニウム塩等が挙げられる。
アミン塩としては、アミン化合物であれば特に限定されないが、例えば1級アミン塩(エチルアミン塩、ブチルアミン塩及びオクチルアミン塩等)、2級アミン(ジエチルアミン塩及びジブチルアミン塩等)、3級アミン(トリエチルアミン塩及びトリブチルアミン塩等)が挙げられる。4級アンモニウム塩としては、テトラエチルアンモニウム塩、トリエチルラウリルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩及びトリブチルラウリルアンモニウム塩等が挙げられる。
カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体の塩としては、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、マレイン酸モノナトリウム、マレイン酸ジナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウム、マレイン酸モノカリウム、アクリル酸リチウム、アクリル酸セシウム、アクリル酸アンモニウム、アクリル酸カルシウム及びアクリル酸アルミニウム等が挙げられる。
【0046】
(7)スルホ基と重合性二重結合を有する単量体及びそれらの塩:
炭素数2〜14のアルケンスルホン酸(例えばビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸及びメチルビニルスルホン酸等);スチレンスルホン酸及びこのアルキル(炭素数2〜24)誘導体(例えばα−メチルスチレンスルホン酸等;炭素数5〜18のスルホ(ヒドロキシ)アルキル−(メタ)アクリレート(例えばスルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸及び3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等);炭素数5〜18のスルホ(ヒドロキシ)アルキル(メタ)アクリルアミド[例えば2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等];アルキル(炭素数3〜18)アリルスルホコハク酸(例えばプロピルアリルスルホコハク酸、ブチルアリルスルホコハク酸、2−エチルヘキシル−アリルスルホコハク酸等);ポリ[n(重合度。以下同様。)=2〜30]オキシアルキレン(オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレン等。オキシアルキレンは単独又は併用でもよく、併用する場合、付加形式はランダム付加でもブロック付加でもよい。)モノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル[例えばポリ(n=5〜15)オキシエチレンモノメタクリレート硫酸エステル及びポリ(n=5〜15)オキシプロピレンモノメタクリレート硫酸エステル等];下記一般式(1)〜(3)で表される化合物;及びこれらの塩等が挙げられる。
なお、塩としては、(6)カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体の塩を構成する塩として例示したものが挙げられる。
【0047】
【化1】
【0048】
【化2】
【0049】
【化3】
【0050】
式(1)〜(3)中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基であり、ROが複数ある場合、1種でも2種以上でもよく、2種以上を併用した場合は、結合形式はランダムでもブロックでもよい。R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜15のアルキル基;m及びnは、それぞれ独立に1〜50の数;Arはベンゼン環;Rは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルキル基を表す。
【0051】
(8)ホスホノ基と重合性二重結合を有する単量体及びその塩:
(メタ)アクリロイルオキシアルキルリン酸モノエステル(アルキル基の炭素数1〜24)(例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート及びフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等)、(メタ)アクリロイルオキシアルキルホスホン酸(アルキル基の炭素数1〜24)(例えば2−アクリロイルオキシエチルホスホン酸等)。
なお、塩としては、(6)カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体を構成する塩として例示したもの挙げられる。
【0052】
(9)ヒドロキシル基と重合性二重結合を有する単量体:
ヒドロキシスチレン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル及び庶糖アリルエーテル等。
【0053】
(10)重合性二重結合を有する含窒素単量体:
(10−1)アミノ基と重合性二重結合を有する単量体:
アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アリルアミン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、クロチルアミン、N,N−ジメチルアミノスチレン、メチル−α−アセトアミノアクリレート、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルチオピロリドン、N−アリールフェニレンジアミン、アミノカルバゾール、アミノチアゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノイミダゾール、アミノメルカプトチアゾール及びこれらの塩等。
(10−2)アミド基と重合性二重結合を有する単量体:
(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、桂皮酸アミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジベンジルアクリルアミド、メタクリルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド及びN−ビニルピロリドン等。
(10−3)ニトリル基と重合性二重結合を有する炭素数3〜10の単量体:
(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン及びシアノアクリレート等。
(10−4)ニトロ基と重合性二重結合を有する炭素数8〜12の単量体:
ニトロスチレン等。
【0054】
(11)エポキシ基と重合性二重結合を有する炭素数6〜18の単量体:
グリシジル(メタ)アクリレート及びp−ビニルフェニルフェニルオキサイド等。
【0055】
(12)ハロゲン元素と重合性二重結合を有する炭素数2〜16の単量体:
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロロスチレン、ブロムスチレン、ジクロロスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン及びクロロプレン等。
【0056】
(13)重合性二重結合を有するエステル、重合性二重結合を有するエーテル、重合性二重結合を有するケトン及び重合性二重結合を有する含硫黄化合物:
(13−1)重合性二重結合を有する炭素数4〜16のエステル:
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル−4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチル−α−エトキシアクリレート、炭素数1〜50のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート及びエイコシル(メタ)アクリレート等]、ジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の直鎖、分枝鎖又は脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の直鎖、分枝鎖又は脂環式の基である)、ポリ(メタ)アリロキシアルカン類(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン及びテトラメタアリロキシエタン等)等、ポリアルキレングリコール鎖と重合性二重結合を有する単量体[ポリエチレングリコール[Mn=300]モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn=500)モノアクリレート、メチルアルコールEO10モル付加物(メタ)アクリレート及びラウリルアルコールEO30モル付加物(メタ)アクリレート等]、ポリ(メタ)アクリレート類[多価アルコール類のポリ(メタ)アクリレート:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]等が挙げられる。
【0057】
(13−2)重合性二重結合を有する炭素数3〜16のエーテル:
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル−2−エチルヘキシルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニル−2−メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、ビニル−2−ブトキシエチルエーテル、3,4−ジヒドロ−1,2−ピラン、2−ブトキシ−2’−ビニロキシジエチルエーテル、アセトキシスチレン及びフェノキシスチレン等が挙げられる。
(13−3)重合性二重結合を有する炭素数4〜12のケトン:
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン及びビニルフェニルケトン等が挙げられる。
(13−4)重合性二重結合を有する炭素数2〜16の含硫黄化合物:
ジビニルサルファイド、p−ビニルジフェニルサルファイド、ビニルエチルサルファイド、ビニルエチルスルホン、ジビニルスルホン及びジビニルスルホキサイド等が挙げられる。
【0058】
結晶性エポキシ樹脂(A6)としては、ポリエポキシド(14)の開環重合物、ポリエポキシド(14)と活性水素含有化合物[水、前記ジオール(1)、ジカルボン酸(2)、ジアミン(3)等]との重付加物等が挙げられる。
【0059】
ポリエポキシド(14)としては、分子中に2個以上のエポキシ基を有していれば特に限定されない。ポリエポキシド(14)のうち好ましいのは、硬化物の機械的性質の観点から分子中にエポキシ基を2〜6個有するものである。ポリエポキシド(14)のエポキシ当量(エポキシ基1個当たりの分子量)は、好ましくは65〜1,000であり、更に好ましくは90〜500である。エポキシ当量が1,000以下であると、架橋構造が密になり硬化物の耐水性、耐薬品性及び機械的強度等の物性が向上し、一方、エポキシ当量が65未満のものを合成するのは困難である。
【0060】
ポリエポキシド(14)としては、芳香族系ポリエポキシ化合物、複素環系ポリエポキシ化合物、脂環族系ポリエポキシ化合物及び脂肪族系ポリエポキシ化合物等が挙げられる。
芳香族系ポリエポキシ化合物としては、多価フェノール類のグリシジルエーテル体及びグリシジルエステル体、グリシジル芳香族ポリアミン並びにアミノフェノールのグリシジル化物等が挙げられる。
【0061】
多価フェノールのグリシジルエーテル体としては、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ハロゲン化ビスフェノールAジグリシジル、テトラクロロビスフェノールAジグリシジルエーテル、カテキンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ピロガロールトリグリシジルエーテル、1,5−ジヒドロキシナフタリンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、オクタクロロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェニルジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフチルクレゾールトリグリシジルエーテル、トリス(ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、ジナフチルトリオールトリグリシジルエーテル、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、p−グリシジルフェニルジメチルトリールビスフェノールAグリシジルエーテル、トリスメチル−t−ブチル−ブチルヒドロキシメタントリグリシジルエーテル、9,9’−ビス(4−ヒドキシフェニル)フロオレンジグリシジルエーテル、4,4’−オキシビス(1,4−フェニルエチル)テトラクレゾールグリシジルエーテル、4,4’−オキシビス(1,4−フェニルエチル)フェニルグリシジルエーテル、ビス(ジヒドロキシナフタレン)テトラグリシジルエーテル、フェノール又はクレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル体、リモネンフェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル体、ビスフェノールA2モルとエピクロロヒドリン3モルの反応から得られるジグリシジルエーテル体、フェノールとグリオキザール、グルタールアルデヒド又はホルムアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル体、及びレゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル体等が挙げられる。
【0062】
多価フェノールのグリシジルエステル体としては、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル及びテレフタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
グリシジル芳香族ポリアミンとしては、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミン及びN,N,N’,N’−テトラグリシジルジフェニルメタンジアミン等が挙げられる。更に、前記芳香族系として、p−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、トリレンジイソシアネート又はジフェニルメタンジイソシアネートとグリシドールの付加反応によって得られるジグリシジルウレタン化合物、前記2反応物にポリオールも反応させて得られるグリシジル基含有ポリウレタン(プレ)ポリマー及びビスフェノールAのAO付加物のジグリシジルエーテル体も含む。
【0063】
複素環系ポリエポキシ化合物としては、トリスグリシジルメラミンが挙げられる。
脂環族系ポリエポキシ化合物としては、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エチレングリコールビスエポキシジシクロペンチルエール、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)ブチルアミン及びダイマー酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。脂環族系としては、前記芳香族系ポリエポキシド化合物の核水添化物も含む。
【0064】
脂肪族系ポリエポキシ化合物としては、多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテル体、多価脂肪酸のポリグリシジルエステル体及びグリシジル脂肪族アミンが挙げられる。多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテル体としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル及びポリグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。多価脂肪酸のポリグリシジルエステル体としては、ジグリシジルオキサレート、ジグリシジルマレート、ジグリシジルスクシネート、ジグリシジルグルタレート、ジグリシジルアジペート及びジグリシジルピメレート等が挙げられる。グリシジル脂肪族アミンとしては、N,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。脂肪族系としては、ジグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートの(共)重合体も含む。
ポリエポキシド(14)のうち好ましいのは、脂肪族系ポリエポキシ化合物及び芳香族系ポリエポキシ化合物である。ポリエポキシドは、2種以上を併用してもよい。
【0065】
結晶性ポリエーテル樹脂(A7)としては、結晶性ポリオキシアルキレンポリオール等が挙げられる。
結晶性ポリオキシアルキレンポリオールの製造方法としては特に限定されず、公知のいずれの方法でもよい。
【0066】
例えば、キラル体のポリオキシアルキレンポリオールを、通常のポリオキシアルキレンポリオールの重合で使用される触媒で開環重合させる方法(Journal of the American Chemical Society、1956年、第78巻、第18号、p.4787−4792 に記載)や、安価なラセミ体のポリオキシアルキレンポリオールを、立体的に嵩高い特殊な化学構造の錯体を触媒として用いて、開環重合させる方法が挙げられる。
特殊な錯体を用いる方法としては、ランタノイド錯体と有機アルミニウムを接触させた化合物を触媒として用いる方法(特開平11−12353号公報に記載)やバイメタル−μ−オキソアルコキサイドとヒドロキシル化合物をあらかじめ反応させる方法(特表2001−521957号公報に記載)等が挙げられる。
【0067】
また、非常にアイソタクティシティーの高いポリオキシアルキレンポリオールを得る方法として、サレン錯体を触媒として用いる方法(Journal of the American Chemical Society、2005年、第127巻、第33号、p.11566−11567 に記載)等が挙げられる。
【0068】
例えば、キラル体のポリオキシアルキレンポリオールを用い、その開環重合時に、開始剤として、グリコール又は水を用いると、末端にヒドロキシル基を有するアイソタクティシティが50%以上であるポリオキシアルキレングリコールが得られる。アイソタクティシティが50%以上であるポリオキシアルキレングリコールは、その末端を例えば、カルボキシル基になるように変性したものであってもよい。なお、アイソタクティシティが50%以上であると、通常ポリオキシアルキレンポリオールは結晶性を有する。
上記グリコールとしては、前記ジオール(1)等が挙げられ、カルボキシ変性するのに用いるカルボン酸としては、前記ジカルボン酸(2)等が挙げられる
【0069】
結晶性ポリオキシアルキレンポリオールの製造に用いる原料としては、PO、1−クロロオキセタン、2−クロロオキセタン、1,2−ジクロロオキセタン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、BO、メチルグリシジルエーテル、1,2−ペンチレンオキサイド、2,3−ペンチレンオキサイド、3−メチル−1,2−ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、1,2−へキシレンオキサイド、3−メチル−1,2−ペンチレンオキサイド、2,3−ヘキシレンオキサイド、4−メチル−2,3−ペンチレンオキサイド、アリルグリシジルエーテル、1,2−へプチレンオキサイド、スチレンオキサイド及びフェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの原料は、単独でも2種以上を併用してもよい。これらのうち好ましいのは、PO、BO、スチレンオキサイド及びシクロへキセンオキサイドである。
【0070】
結晶性樹脂(A)のうち、低温定着性の観点から好ましいのは、結晶性ポリエステル樹脂(A1)、結晶性ポリウレタン樹脂(A2)、結晶性ポリウレア樹脂(A3)及び結晶性ポリアミド樹脂(A4)であり、更に好ましいのは、エステル基、ウレタン基、ウレア基及びアミド基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する結晶性樹脂であり、特に好ましいのは、エステル基を有する結晶性樹脂である。
【0071】
結晶性樹脂(A)がエステル基を有する場合の、(A)の重量に基づく(A)のエステル基濃度は、耐熱保存安定性及び耐湿熱保存安定性の観点から、好ましくは5〜75重量%であり、更に好ましくは10〜70重量%、特に好ましくは15〜65重量%、最も好ましくは20〜60重量%である。
なお、結晶性樹脂(A)の(A)の重量に基づくエステル基濃度は、(A)中のエステル基[−C(=O)O−]の数から算出することができる。
【0072】
結晶性樹脂(A)のTaは、トナー(Z)の低温定着性の観点から、好ましくは50〜100℃であり、更に好ましくは55〜95℃、特に好ましくは60〜90℃である。
なお、(A)としては、Taの異なる2種以上の(A)を含有していてもよい。
【0073】
結晶性樹脂(A)の酸価は、耐熱保存性及び耐湿熱保存性の観点から好ましくは30mgKOH/g以下であり、更に好ましくは25mgKOH/g、特に好ましくは20mgKOH/g以下である。
【0074】
結晶性樹脂(A)のMwは、トナー(Z)の低温定着性と耐熱保存性及び耐湿熱保存性との両立の観点から、好ましくは3,000〜50,000であり、更に好ましくは3,500〜35,000、特に好ましくは4,000〜25,000である。
【0075】
結晶性樹脂(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られる分子量分布は、トナー(Z)の低温定着性と耐熱保存性及び耐湿熱保存性の両立の観点から、分子量3,000〜50,000の領域に少なくとも1つのピークを有することが好ましく、分子量3,500〜35,000の領域に少なくとも1つのピークを有することが更に好ましく、分子量4,000〜2,5000の領域に少なくとも1つのピークを有することが特に好ましい。
【0076】
本発明における樹脂のMn、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下の条件で測定することができる。
装置(一例) :「HLC−8120」[東ソー(株)製]
カラム(一例):「TSK GEL GMH6」[東ソー(株)製]2本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液(不溶解分をグラスフィルターでろ別したもの)
溶液注入量 :100μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、
18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、
1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0077】
結晶性樹脂(A)は、低温定着性の観点から、[条件2]、[条件3]を同時に満たすことが好ましい。
[条件2]
G’(Ta+10)≦1,000[Pa・s]
ただし、G’(Ta+10)は(Ta+10)[℃]における(A)の貯蔵弾性率[Pa・s]を表す。
【0078】
[条件3]
1×10≦G’(Ta−10)≦1×10[Pa・s]
ただし、G’(Ta−10)は(Ta−10)[℃]における(A)の貯蔵弾性率[Pa・s]を表す。
【0079】
なお、条件2の左辺のG’(Ta+10)値は、さらに800以下が好ましい。
また、条件3の中央のG’(Ta−10)の値は、さらに1×10Pa・s以下が好ましい。
【0080】
本発明における貯蔵弾性率G’は以下の条件で測定することができる。
装置 :ARES−24A(レオメトリック社製)
治具 :8mmパラレルプレート
周波数 :1Hz
歪み率 :1%
昇温速度:3℃/min
【0081】
結晶性樹脂(A)の溶解性パラメーター(以下SP値と略記する)は、ビニル樹脂との相溶性の観点から好ましくは9.0〜12.0(cal/cm1/2、であり、更に好ましくは9.5〜11.5(cal/cm1/2、特に好ましくは9.5〜11.0(cal/cm1/2である。
なお、本発明におけるSP値は、Fedorsによる方法[Polym.Eng.Sci.14(2)152,(1974)]により計算することができる。
【0082】
結晶性樹脂(A)は、低温定着性及び光沢の観点から、[条件4]を満たすことが好ましい。
[条件4]
3≦Log{G’(Ta−10)}−Log{G’(Ta+10)}≦8
ただし、G’(Ta−10)は(Ta−10)[℃]における(A)の貯蔵弾性率[Pa・s]を、G’(Ta+10)は(Ta+10)[℃]における(A)の貯蔵弾性率[Pa・s]を表す。
条件4のLog{G’(Ta−10)}−Log{G’(Ta+10)}の値は、3以上7以下がさらに好ましい。
【0083】
[条件2]、[条件3]、[条件4]を満たす結晶性樹脂(A)は、(A)中の結晶性成分のSP値を調整することや重量平均分子量を調整すること等により得ることができる。
例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られる分子量分布において、低分子量領域にピークを有する結晶性部の比率を増加させると、G’(Ta+10)の値は小さくなる。また、(A)のSP値を低下させることでG’(Ta+10)の値は小さくなる。
【0084】
本発明におけるエステル基を有するビニル樹脂(B)としては、前記の結晶性ビニル樹脂(A5)の構成単量体として例示した 「(13−1)重合性二重結合を有する炭素数4〜16のエステル」を構成単量体とするビニル樹脂が挙げられる。
低温定着性の観点から、(B)として好ましいのは、炭素数1〜50のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを構成単位とするビニル樹脂である。
【0085】
エステル基を有するビニル樹脂(B)は、「(13−1)重合性二重結合を有する炭素数4〜16のエステル」に加え、前記の結晶性ビニル樹脂(A5)の構成単量体として例示した(5)〜(13)から任意に選ばれる単量体を構成単量体とするビニル樹脂も好ましい。
結晶性樹脂(A)との相溶性の観点から、より好ましいのは、重合性二重結合を有する芳香族炭化水素及び/又は炭素数3〜15の不飽和モノカルボン酸を構成単位とするエステル基を有するビニル樹脂である。
(B)は単独でも二種以上を併用してもよい。
【0086】
エステル基を有するビニル樹脂(B)のMwは、低温定着性、耐熱保存性、耐湿熱保存性及び耐久性の観点から、好ましくは3,000〜250万であり、更に好ましくは3,500〜200万、特に好ましくは4,000〜180万である。
【0087】
本発明におけるエステル基を有するビニル樹脂(B)はゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られる分子量分布において、トナー(Z)の低温定着性の観点から分子量が3,000〜60,000の領域のみに少なくとも1つのピークを有していてもよい。
【0088】
また、エステル基を有するビニル樹脂(B)は単独でも二種以上を併用してもよく、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られる分子量分布において、低温定着性と耐熱保存性、耐湿熱保存性及び耐久性の両立の観点から、分子量が3,000〜60,000の領域と、分子量が10万〜250万の領域に、それぞれ少なくとも1つのピークを有するものであることが好ましい。
更に好ましいのは3,500〜40,000の領域と、12万〜200万の領域に、それぞれ少なくとも1つのピークを有するものであり、特に好ましいのは、4,000〜20,000の領域と、14万〜180万の領域に、それぞれ少なくとも1つのピークを有するものである。
【0089】
エステル基を有するビニル樹脂(B)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られる分子量分布において、分子量が3,000〜60,000の領域で少なくとも1つのピークを有する樹脂(LB)と、分子量が10万〜250万の領域で少なくとも1つのピークを有する樹脂(HB)の混合物であってもよい。
(B)が(LB)と(HB)の混合物である場合、(LB)と(HB)を一括で合成してもよいし、(LB)と(HB)をそれぞれ合成して混合してもよい。
また、(LB)と(HB)を混合する方法としては、粉体混合、溶融混練及び溶解混合等が挙げられる。
【0090】
(LB)のMwは、トナー(Z)の低温定着性の観点から、好ましくは3,000〜60,000であり、更に好ましくは3,500〜40,000、特に好ましくは4,000〜20,000である。
【0091】
(HB)のMwは、トナー(Z)の耐熱保存性、耐湿熱保存性及び耐久性向上の観点から、好ましくは10万〜250万であり、更に好ましくは12万〜200万、特に好ましくは14万〜180万である。
【0092】
エステル基を有するビニル樹脂(B)の酸価は、トナー(Z)の耐熱保存性、耐湿熱保存性の観点から好ましくは30mgKOH/g以下であり、更に好ましくは25mgKOH/g、特に好ましくは20mgKOH/gである。
【0093】
エステル基を有するビニル樹脂(B)のガラス転移温度(以下Tgと略記する)はトナー(Z)の低温定着性の観点から好ましくは40〜110℃であり、更に好ましくは40〜100℃、特に好ましくは40〜90℃である。
【0094】
エステル基を有するビニル樹脂(B)は、前記モノマーとラジカル重合開始剤を用いて、溶液重合、塊状重合、懸濁重合及び乳化重合等の公知の重合方法で得ることができる。
これらの重合方法のうち、分子量制御の観点から好ましいのは、溶液重合、懸濁重合、塊状重合及びこれらの組み合わせである。
ラジカル開始剤としては、アゾ系重合開始剤(例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル、およびアゾビスシアノ吉草酸)、および有機過酸化物系重合開始剤〔例えばベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2、2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン〕等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、ジ−t−ブチルパーオキサイド、および2、2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンである。
重合開始剤の使用量は、モノマーの全量に基づいて、好ましくは0.01〜10重量%、更に好ましくは0.05〜8重量%、特に好ましくは0.1〜6重量%である。
【0095】
本発明のエステル基を有するビニル樹脂(B)の合成に使用可能な有機溶剤としては、芳香族炭化水素溶剤(トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びテトラリン等);脂肪族炭化水素溶剤(n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン、ミネラルスピリット及びシクロヘキサン等);ハロゲン溶剤(塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、四塩化炭素、トリクロロエチレン及びパークロロエチレン等);エステル溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ピルビン酸メチル及びピルビン酸エチル等);エーテル溶剤(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノエチルエーテル等);ケトン溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン及びシクロヘキサノン等);アルコール溶剤(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール及びトリフルオロエタノール等);アミド溶剤(ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等);スルホキシド溶剤(ジメチルスルホキシド等);複素環式化合物溶剤(N−メチルピロリドン等)及びこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、操作性の観点から芳香族溶剤、さらに好ましくは、キシレン、トルエン、エチルベンゼンである。
また、懸濁重合を行う場合、後述の無機分散剤、および水溶性ポリマー等を用いて水中で重合することができる。
【0096】
本発明の製造方法で得られたトナー(Z)中のスチレンモノマー含有率は、耐熱保存性、耐湿熱保存性及び耐久性の観点から、(Z)の重量に基づいて、好ましくは100ppm以下であり、更に好ましくは50ppm以下、特に好ましくは25ppm以下、最も好ましくは5ppm以下である。なお、(Z)中のモノマー含有率は、ガスクロマトグラフィーで測定することができる。
【0097】
本発明の製造方法で得られたトナー(Z)中のモノマー含有率は、耐熱保存性、耐湿熱保存性及び耐久性の観点から、(Z)の重量に基づいて、好ましくは300ppm以下であり、更に好ましくは200ppm以下、特に好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下である。なお、(Z)中のモノマー含有率は、ガスクロマトグラフィーで測定することができる。
【0098】
ガスクロマトグラフィーでトナー(Z)中のモノマー含有率及びスチレンモノマー含有率を測定する際の、測定条件の一例を以下に示す。
機種:「GC2010」[(株)島津製作所製]
カラム:「DB−5」(5重量%フェニルメチルポリシロキサン、内径0.25mm、長さ30m)[(株)島津製作所製]
溶離液:ジメチルホルムアミド
流速:40.5ml/min
検出器温度:250℃
注入量:1μl
【0099】
本発明の製造方法で得られたトナー(Z)中の揮発性有機化合物(以下VOCと略記する)の含有率は、耐熱保存性、耐湿熱保存性及び耐久性の観点から、(Z)の重量に基づいて好ましくは500ppm以下であり、更に好ましくは300ppm以下、特に好ましくは200ppm以下、最も好ましくは100ppm以下である。なお、(Z)中のVOCの含有率は、ガスクロマトグラフフィーで測定することができる。
【0100】
130℃で一定量のトナー(Z)を一定時間加熱し、発生したVOCのガスを捕集し、ガスクロマトグラフィーで(Z)中のVOCの含有率を測定する。測定条件の一例を以下に示す。
機種:「GC2010」[(株)島津製作所製]
カラム:「DB−5」(5重量%フェニルメチルポリシロキサン、内径0.25mm、長さ30m)[(株)島津製作所製]
流速:40.5ml/min
検出器温度:250℃
注入量:1μl
【0101】
エステル基を有するビニル樹脂(B)の、(B)の重量に基づくエステル基濃度は、低温定着性の観点から、好ましくは5〜60重量%であり、更に好ましくは10〜55重量%、特に好ましくは15〜50重量%、最も好ましくは20〜45重量%である。
なお、(B)の(B)の重量に基づくエステル基濃度は、(B)中のエステル基[−C(=O)O−]の数から算出することができる。
【0102】
結晶性樹脂(A)の(A)の重量に基づくエステル基濃度と、エステル基を有するビニル樹脂(B)の(B)の重量に基づくエステル基濃度との差の絶対値は、低温定着性の観点から好ましくは45重量%以下であり、更に好ましくは40重量%以下、特に好ましくは35重量%以下である。
【0103】
エステル基を有するビニル樹脂(B)のSP値は、低温定着性の観点から好ましくは9.5〜11.5(cal/cm1/2、であり、更に好ましくは9.5〜11.0(cal/cm1/2、特に好ましくは10.0〜11.0(cal/cm1/2である。
【0104】
結晶性樹脂(A)とエステル基を有するビニル樹脂(B)のSP値の差の絶対値は、低温定着性の観点から好ましくは1.8(cal/cm1/2以下であり、更に好ましくは1.6以下、特に好ましくは1.4以下である。
【0105】
エステル基を有するビニル樹脂(B)の120℃での貯蔵弾性率G’(120)は、低温定着性の観点から好ましくは1,000〜1×10[Pa・s]であり、更に好ましくは3,000〜5×10[Pa・s]、特に好ましくは5,000〜1×10[Pa・s]である。
【0106】
本発明におけるエステル基を有するビニル樹脂(B)は、Tg又はMwが異なる2種以上のエステル基を有するビニル樹脂を含有していてもよい。
【0107】
本発明の製造方法で得られたトナー(Z)には、上記の結晶性樹脂(A)、エステル基を有するビニル樹脂(B)以外の樹脂を含有していてもよい。その樹脂は、分散液(W)を得る際に予め含有させておくことで、(Z)に含有させることができる。
【0108】
上記の結晶性樹脂(A)及びエステル基を有するビニル樹脂(B)以外の樹脂としては、例えば、非晶質ポリエステル、非晶質ポリアミド、非晶質ポリエステルアミド、非晶質ポリウレタン、非晶質ポリエステルウレタン、結晶性樹脂(A)とエステル基を有するビニル樹脂(B)が部分的に化学結合したハイブリッド樹脂、非晶質ポリエステルとエステル基を有するビニル樹脂(B)が部分的に化学結合したハイブリッド樹脂などが含有されていてもよい。
【0109】
本発明における着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料、顔料等のすべてを使用することができるが、耐久性の観点から、黒色着色剤、青色着色剤、赤色着色剤及び黄色着色剤からなる群より選ばれる1種類以上を含有しているのが好ましい。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、チタンブラック、磁性粉(酸化鉄亜鉛及び酸化鉄ニッケル等)等が挙げられる。
青色着色剤としては、銅フタロシアニン顔料及びアントラキノン顔料等が挙げられる。具体的には、C.I.Pigment Blue2、3、6、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17:1及び60等が挙げられる。
黄色着色剤としては、モノアゾ顔料及びジスアゾ顔料等のアゾ顔料、及び縮合多環顔料等が挙げられる。具体的には、C.I.Pigment Yellow3、12、13、14、15、17、62、65、73、74、83、93、97、120、138、155、180、181、185、及び186等が挙げられる。
赤色着色剤としては、モノアゾ顔料及びジスアゾ顔料等のアゾ顔料、及び縮合多環顔料等の化合物が用いられる。具体的には、C.I.Pigment Red31、48、57:1、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、149、150、163、170、184、185、187、202、206、207、209、251、及びC.I.Pigment Violet19等が挙げられる。
【0110】
本発明における樹脂粒子(Z’)は、着色剤、結晶性樹脂(A)及びエステル基を有するビニル樹脂(B)を含有する。
分散液(W)を構成する分散媒としては、水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、水を必須構成成分とする液体であれば制限なく使用でき、水、溶剤の水溶液、界面活性剤の水溶液、合成高分子分散剤の水溶液及びこれらの混合物等が用いることができる。
溶剤としては、例えば、上記の有機溶剤のうちエステル又はエステルエーテル溶剤、エーテル溶剤、ケトン溶剤、アルコール溶剤、アミド溶剤、スルホキシド溶剤、複素環式化合物溶剤及びこれらの2種以上の混合溶剤等が挙げられる。溶剤を含有する場合、溶剤の含有率は、水性媒体の重量に基づいて、0.1〜80重量%が好ましい。更に好ましく1〜70重量%、特に好ましくは5〜30重量%である。
【0111】
樹脂粒子(Z’)の体積平均粒径は、好ましくは0.050〜1μm、更に好ましくは0.1〜0.5μm、特に好ましくは0.2〜0.4μmである。
樹脂粒子(Z’)の体積平均粒径は、コールターカウンター「マルチサイザーIII」(ベックマンコールター社製)を用いて測定することができる。
【0112】
分散液(W)を得る方法は特に限定されないが、以下の〔1〕〜〔10〕が挙げられる。
〔1〕着色剤、ポリエステル樹脂(A)及びエステル基を有するビニル樹脂(B)を、必要であれば適当な分散剤存在下で水系媒体中に分散させ、分散液(W)を製造する方法。
〔2〕ポリエステル樹脂(A)とエステル基を有するビニル樹脂(B)の有機溶剤溶液、及び着色剤を、必要であれば適当な分散剤存在下で水系媒体中に分散させ、分散液(W)を製造する方法。
〔3〕ポリエステル樹脂(A)とエステル基を有するビニル樹脂(B)の有機溶剤溶液、及び着色剤を、必要であれば適当な分散剤存在下で水系媒体中に分散させた後、有機溶剤を除去して分散液(W)を製造する方法。
〔4〕水系媒体中に着色剤が分散されてなる水系分散液、水系媒体中にポリエステル樹脂(A)が分散されてなる水系分散液、及び水系媒体中にエステル基を有するビニル樹脂(B)が分散されてなる水系分散液をそれぞれ調製し、これらを混合して分散液(W)を製造する方法。それぞれの水系分散液を調製する際、必要であれば適当な分散剤を使用することができる。また、エステル基を有するビニル樹脂(B)の場合、懸濁重合、乳化重合等により水系分散液を調製することもできる。
〔5〕着色剤、ポリエステル樹脂(A)の前駆体及びエステル基を有するビニル樹脂(B)、又はそれらの有機溶剤溶液を、必要であれば適当な分散剤存在下で水系媒体中に分散させ、その後に(A)の前駆体から(A)を生成させて、分散液(W)を製造する方法。
〔6〕着色剤、ポリエステル樹脂(A)及びエステル基を有するビニル樹脂(B)の前駆体、又はそれらの有機溶剤溶液を、必要であれば適当な分散剤存在下で水系媒体中に分散させ、その後に(B)の前駆体から(B)を生成させて、分散液(W)を製造する方法。
〔7〕着色剤、ポリエステル樹脂(A)の前駆体及びエステル基を有するビニル樹脂(B)の前駆体、又はそれらの有機溶剤溶液を、必要であれば適当な分散剤存在下で水系媒体中に分散させ、その後に(A)の前駆体、(B)の前駆体からそれぞれ(A)、(B)を生成させて、分散液(W)を製造する方法。
〔8〕着色剤、ポリエステル樹脂(A)及びエステル基を有するビニル樹脂(B)を含有する樹脂を、機械回転式又はジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで分級した後、適当な分散剤存在下で水系媒体中に分散させる方法。
〔9〕着色剤、ポリエステル樹脂(A)及びエステル基を有するビニル樹脂(B)を含有する樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂溶液を、霧状に噴霧することにより粒子を得た後、該粒子を適当な分散剤存在下で水系媒体中に分散させる方法。
〔10〕着色剤、ポリエステル樹脂(A)及びエステル基を有するビニル樹脂(B)を含有する樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂溶液に貧溶剤を添加するか、又はあらかじめ有機溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより粒子を析出させ、次いで有機溶剤を除去した後、適当な分散剤存在下で水系媒体中に分散させる方法。
【0113】
前記の〔1〕〜〔10〕の方法における分散剤としては、公知の界面活性剤、無機分散剤、水溶性ポリマー等を用いることができる。また、乳化又は分散の助剤として有機溶剤、可塑剤等を併用することができる。
【0114】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤等が挙げられる。なお、界面活性剤は2種以上を併用してもよい。
【0115】
アニオン性界面活性剤としては、炭素数8〜24のアルキル基を有するエーテルカルボン酸(塩)[(ポリ)オキシエチレン(繰り返し単位数1〜100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム等]、炭素数8〜24のアルキル基を有するエーテル硫酸エステル塩[(ポリ)オキシエチレン(繰り返し単位数1〜100)ラウリル硫酸ナトリウム等]、炭素数8〜24のアルキル基を有するスルホコハク酸エステル塩[モノ又はジアルキルスルホコハク酸エステルジ又はモノナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(繰り返し単位数1〜100)モノ又はジアルキルスルホコハク酸エステルジ又はモノナトリウム等]、(ポリ)オキシエチレン(繰り返し単位数1〜100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム、炭素数8〜24のアルキル基を有するスルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、炭素数8〜24のアルキル基を有するリン酸エステル塩[ラウリルリン酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(繰り返し単位数1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等]、脂肪酸塩(ラウリン酸ナトリウム及びラウリン酸トリエタノールアミン等)、アシル化アミノ酸塩(ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム及びラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム等)等が挙げられる。
【0116】
カチオン性界面活性剤としては、4級アンモニウム塩型及びアミン塩型のカチオン界面活性剤等が挙げられる。4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤としては、3級アミン類と4級化剤[ハロゲン化アルキル(メチルクロライド、メチルブロマイド、エチルクロライド及びベンジルクロライド等)、ジメチル硫酸、ジメチルカーボネート及びエチレンオキサイド等]との反応で得られる化合物等が使用でき、例えばラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(塩化ベンザルコニウム)、セチルピリジニウムクロライド、ポリオキシエチレントリメチルアンモニウムクロライド及びステアラミドエチルジエチルメチルアンモニウムメトサルフェート等が挙げられる。アミン塩型カチオン界面活性剤としては、1〜3級アミン類を無機酸(塩酸、硝酸、硫酸及びヨウ化水素酸等)又は有機酸(酢酸、ギ酸、シュウ酸、乳酸、グルコン酸、アジピン酸及びアルキルリン酸等)で中和することにより得られる化合物が使用でき、1級アミン塩型のものとしては、脂肪族高級アミン(ラウリルアミン、ステアリルアミン、セチルアミン、硬化牛脂アミン及びロジンアミン等の高級アミン)の無機酸塩又は有機酸塩、低級アミン類の高級脂肪酸(ステアリン酸及びオレイン酸等)塩等が挙げられる。2級アミン塩型のものとしては、脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物等の無機酸塩又は有機酸塩が挙げられる。
【0117】
両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型両性界面活性剤[炭素数10〜18の脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等)、アルキル(炭素数10〜18)ジメチルアミノ酢酸ベタイン(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等)、イミダゾリニウム型カルボキシベタイン(2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等)]、スルホベタイン型両性界面活性剤[炭素数10〜18の脂肪酸アミドプロピルヒドロキシエチルスルホベタイン(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルヒドロキシエチルスルホベタイン等)、ジメチルアルキル(炭素数10〜18)ジメチルヒドロキシエチルスルホベタイン(ラウリルヒドロキシスルホベタイン等)]、アミノ酸型両性界面活性剤[β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等]が挙げられる。
【0118】
非イオン性界面活性剤としては、アルキレンオキサイド付加型非イオン性界面活性剤及び多価アルコール型非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
アルキレンオキサイド付加型非イオン性界面活性剤としては、高級アルコール(炭素数8〜18)アルキレン(炭素数2〜4、好ましいのは2)オキサイド付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)、アルキル(炭素数1〜12)フェノールエチレンオキサイド付加物(付加モル数1〜30)、高級アミン(炭素数8〜22)アルキレン(炭素数2〜4、好ましいのは2)オキサイド付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜40)、脂肪酸(炭素数8〜18)エチレンオキサイド付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜60)、ポリプロピレングリコール(数平均分子量200〜4,000)エチレンオキサイド付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜50)、ポリオキシエチレン(繰り返し単位数3〜30)アルキル(炭素数6〜20)アリルエーテル並びにソルビタンモノラウレートエチレンオキサイド付加物(活性水素1個あたりの付加モル数1〜30)及びソルビタンモノオレートエチレンオキサイド付加物(活性水素1個あたりの付加モル数1〜30)等の多価(2〜8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2〜30)の脂肪酸(炭素数8〜24)エステルエチレンオキシド付加物(活性水素1個あたりの付加モル数1〜30)等が挙げられる。
多価アルコール型非イオン性界面活性剤としては、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、ソルビタンモノラウレート及びソルビタンモノオレート等の多価(2〜8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2〜30)の脂肪酸(炭素数8〜24)エステル並びにラウリン酸モノエタノールアミド及びラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸(炭素数10〜18)アルカノールアミド等が挙げられる。
【0119】
無機分散剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、ヒドロキシアパタイト等のリン酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機化合物が挙げられる。
【0120】
水溶性ポリマーとしては、セルロース化合物(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びこれらのケン化物等)、ゼラチン、デンプン、デキストリン、アラビアゴム、キチン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、アクリル酸(塩)重合体(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸の水酸化ナトリウム部分中和物及びアクリル酸ナトリウム−アクリル酸エステル共重合体等)、スチレン−無水マレイン酸共重合体の水酸化ナトリウム(部分)中和物及び水溶性ポリウレタン(ポリエチレングリコール及びポリカプロラクトンジオール等とポリイソシアネートの反応生成物等)等が挙げられる。
【0121】
可塑剤としては、フタル酸エステル(フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル及びフタル酸ジイソデシル等);脂肪族2塩基酸エステル(アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル及びセバシン酸−2−エチルヘキシル等);トリメリット酸エステル(トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル及びトリメリット酸トリオクチル等);リン酸エステル(リン酸トリエチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル及びリン酸トリクレジール等);脂肪酸エステル(オレイン酸ブチル等);及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0122】
前記の〔1〕〜〔10〕の方法における分散には、分散機を使用することができる。
分散機としては、一般に乳化機や分散機として市販されているものであれば特に限定されず、例えばバッチ式乳化機{「ホモジナイザー」(IKA社製)、「ポリトロン」(キネマティカ社製)及び「TKオートホモミキサー」[プライミクス(株)製]等}、連続式乳化機{「エバラマイルダー」[(株)荏原製作所製]、「TKフィルミックス」、「TKパイプラインホモミキサー」[プライミクス(株)製]、「コロイドミル」[神鋼パンテック(株)製]、「スラッシャー」、「トリゴナル湿式微粉砕機」[サンテック(株)製]、「キャピトロン」(ユーロテック社製)及び「ファインフローミル」[太平洋機工(株)製]等}、高圧乳化機{「マイクロフルイダイザー」[みずほ工業(株)製]、「ナノマイザー」[エス・ジーエンジニアリング(株)製]及び「APVガウリン」(ガウリン社製)等}、膜乳化機{「膜乳化機」[冷化工業(株)製]等}、振動式乳化機{「バイブロミキサー」[冷化工業(株)製]等}、超音波乳化機{「超音波ホモジナイザー」(ブランソン社製)等}等が挙げられる。
【0123】
分散液(W)中の分散体(X)の凝集体(Y)を得る方法としては、分散液(W)に、凝集剤を添加する方法が挙げられる。
凝集剤としては、酸(塩酸、硫酸、硝酸、酢酸及びシュウ酸等)、無機酸の金属塩(塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸銀、硫酸銅及び炭酸ナトリウム等)、脂肪酸の金属塩(酢酸ナトリウム、蟻酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、フタル酸ナトリウム及びサリチル酸カリウム等)、芳香族脂肪酸の金属塩(安息香酸ナトリウム等)、フェノール類の金属塩(ナトリウムフェノレート等)、アミン塩(アミノ酸の金属塩、トリエタノールアミン塩酸塩及びアニリン塩酸塩等)等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、無機酸の金属塩及び脂肪酸の金属塩であり、更に好ましいのは無機酸の金属塩である。
【0124】
凝集剤の添加量は、樹脂粒子(Z’)の重量に基づいて好ましくは1〜20重量%であり、更に好ましくは1〜15重量%である。
【0125】
凝集体(Y)を加熱融合させて樹脂粒子(Z’)を得る工程における加熱の温度は、好ましくは30〜100℃、更に好ましくは40〜100℃である。
加熱の時間は、好ましくは1〜12時間、更に好ましくは2〜10時間である。
【0126】
本発明の製造方法で得られたトナー(Z)には、更に、離型剤、荷電制御剤及び/又は流動化剤を含有させることができる。それらは、分散液(W)を得る際に、予め含有させておくことで、(Z)に含有させることができる。
【0127】
離型剤としては、天然ワックス(蜜ロウ、カルナバワックス及びモンタンワックス等)、石油ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、及びペトロラタム等)、合成ワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス及び酸化ポリプロピレンワックス等)、合成エステルワックス(炭素数10〜30の脂肪酸と炭素数10〜30のアルコールから合成される脂肪酸エステル等)等が挙げられる。
【0128】
離型剤のTaは、低温定着性及び光沢の観点から好ましくは40〜90℃であり、更に好ましくは45〜85℃、特に好ましくは50〜80℃である。
【0129】
離型剤の100℃における動粘度は、低温定着性及び光沢の観点から好ましくは3〜20[mm/s]であり、更に好ましくは4〜19[mm/s]、特に好ましくは5〜18[mm/s]である。
【0130】
荷電制御剤としては、ニグロシン化合物、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ化合物、銅フタロシアニン化合物、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素系ポリマー、ハロゲン置換芳香環含有ポリマー、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、セチルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
【0131】
荷電制御剤は、トナー(Z)の内部に分散していてもよく、(Z)表面を被覆していてもよく、(Z)内部に分散しかつ(Z)表面を被覆していてもよい。
【0132】
流動化剤としては、シリカ、チタニア、アルミナ、脂肪酸金属塩、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂等が挙げられ、これらの流動化剤からなる群より選ばれた少なくとも2種類を含有しているのが好ましい。
【0133】
流動化剤は球形、不定形いずれでもよいが、トナー(Z)の流動性の観点から球形が好ましい。流動化剤の一次粒子の体積平均粒径は、好ましくは5〜300nmであり、粒径の異なる2種類以上を併用してもよい。具体的には、一次粒子の体積平均粒径が10〜100nmの流動化剤1と、一次粒子の体積平均粒径が70〜200nmの流動化剤2とを併用したものであるのが好ましい。
【0134】
本発明の製造方法で得られたトナー(Z)を構成する各成分の含有率は、以下の通りである。
結晶性樹脂(A)の含有率は、(Z)の重量に基づき、好ましくは5〜30重量%であり、更に好ましくは6〜25重量%、特に好ましくは7〜20重量%である。
エステル基を有するビニル樹脂(B)の含有率は、(Z)の重量に基づき、好ましくは50〜95重量%であり、更に好ましくは55〜90重量%、特に好ましくは60〜85重量%である。
着色剤の含有率は、(Z)の重量に基づき、好ましくは0.1〜60重量%であり、更に好ましくは0.2〜55重量%、特に好ましくは0.5〜50重量%である。
離型剤の含有率は、(Z)の重量に基づき、好ましくは0〜30重量%であり、更に好ましくは0.5〜20重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。
荷電制御剤の含有率は、(Z)の重量に基づき、好ましくは0〜20重量%であり、更に好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは0.2〜7.5重量%である。
流動化剤の含有率は、(Z)の重量に基づき、好ましくは0〜10重量%であり、更に好ましくは0.2〜5.0重量%、特に好ましくは0.3〜4重量%である。
【0135】
本発明の製造方法で得られたトナー(Z)は、必要に応じて、キャリアー粒子[鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイト及び樹脂(アクリル樹脂及びシリコーン樹脂等)により表面をコーティングしたフェライト等]と混合して、電気的潜像の現像剤として用いることができる。また、キャリアー粒子の替わりに、帯電ブレード等と摩擦させて、電気的潜像を形成させることもでき、電気的潜像は、公知の熱ロール定着方法、熱ベルト定着方法及びフラッシュ定着方法等によって、支持体(紙及びポリエステルフィルム等)に定着される。
【0136】
本発明の製造方法で得られたトナー(Z)は、耐熱保存性、耐湿熱保存性及び低温定着性の観点から、以下の[条件1]を満たすものであることが好ましい。
【0137】
[条件1]
1.1≦(Tg1)/(Tg2)≦3.5
ただし、(Tg1)はトナー(Z)の示差走査熱量測定で測定開始温度20℃から測定終了温度150℃まで毎分10℃、昇温したときに検出されるTg [℃]を表し、(Tg2);トナー(Z)の示差走査熱量測定でTg1測定後、150℃から−20℃まで毎分10℃で冷却し、−20℃から測定終了温度150℃まで毎分10℃で昇温したときに検出されるTg[℃]を表す。
【0138】
さらに、条件1において、(Tg1)/(Tg2)は1.5以下が好ましく、また、3.0以下が好ましい。
【0139】
本発明において、Tgは以下の方法で測定することができる。
<Tgの測定方法>
示差走査熱量計(DSC){例えば「DSC210」[セイコーインスツル(株)製]}を用いて測定する。
Tgは、樹脂中の非結晶部に特有の物性であり、融解熱の最大ピーク温度とは区別される。また、前記融解熱の最大ピーク温度(Ta)の測定において、「吸発熱量」と「温度」とのグラフの最大ピーク温度以下でのベースラインの延長線と、最大ピークの立ち上がり部分から最大ピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点に対応する温度をTgとする。
測定手順としては、試料4〜6mgを精秤しアルミニウム製パンに封入し、サンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用する。測定条件としては、測定開始温度20℃から測定終了温度150℃まで毎分10℃、昇温したときに検出されるTgを(Tg1)とする。更にTg1測定後、150℃から−20℃まで毎分10℃で冷却し、−20℃から測定終了温度150℃まで毎分10℃で昇温したときに検出されるTgを(Tg2)とする。
【0140】
本発明の製造方法で得られたトナー(Z)の体積平均粒径は、好ましくは1〜15μmであり、更に好ましくは2〜10μm、特に好ましくは3〜8μmである。
なお、(Z)の体積平均粒径は、コールターカウンター「マルチサイザーIII」(ベックマンコールター社製)を用いて測定することができる。
【実施例】
【0141】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0142】
<製造例1>[結晶性樹脂(A−1)の合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール284重量部、アジピン酸650重量部、重合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2.5重量部を入れ、180℃に昇温し、同温度で窒素気流下に生成する水を留去しながら4時間反応させ、次いで220℃まで昇温した後、窒素気流下に生成する水を留去しながら4時間反応した。更に同温度で0.007〜0.026MPaの減圧下で水を留去しながら、酸価が0.5以下になるまで反応させた。その後、180℃まで冷却し、無水トリメリット酸25重量部を反応容器に入れ、180℃にて1時間反応させ、結晶性樹脂(A−1)を得た。
【0143】
<製造例2>[結晶性樹脂(A−2)の合成]
製造例1においてエチレングリコール284重量部、アジピン酸650重量部を、1,4−ブタンジオール254重量部、ドデカン二酸617重量部に置き換えた以外は製造例1と同様にして結晶性樹脂(A−2)を得た。
【0144】
<製造例3>[結晶性樹脂(A−3)の合成]
製造例1においてエチレングリコール284重量部、アジピン酸650重量部を、1,12−ドデカンジオール408重量部、ドデカン二酸434重量部に置き換えた以外は製造例1と同様にして結晶性樹脂(A−3)を得た。
【0145】
<製造例4>[結晶性樹脂(A−4)の合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に1,6−ヘキサンジオール379重量部、セバシン酸572重量部、重合触媒としてテトラブトキシチタネート2重量部を入れ、180℃に昇温し、同温度で窒素気流下に生成する水を留去しながら4時間反応させ、次いで220℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に生成する水を留去しながら4時間反応させ、更に0.007〜0.026MPaの減圧下で水を留去しながら反応させ、酸価が0.2[mgKOH/g]以下になった時点で取り出し、ポリエステルジオール(P−4)850重量部を得た。(P−4)の水酸基価は51[mgKOH/g]であった。
(P−4)850重量部が入った反応容器にメチルエチルケトン850重量部を投入し、60℃で1時間撹拌し溶液を得た。次いでこの溶液にヘキサメチレンジイソシアネート53重量部を投入し、80℃で7時間反応させた後、無水トリメリット酸21重量部を投入し、150℃に昇温し4時間反応させた後MEKを留去して、結晶性樹脂(A−4)を得た。
【0146】
<比較製造例1>[非晶性樹脂(RA−1)の合成]
製造例1においてエチレングリコール284重量部、アジピン酸650重量部を、ビスフェノールA・PO2モル付加物 452重量部、テレフタル酸116重量部、イソフタル酸116重量部に置き換えた以外は製造例1と同様にして、非晶性樹脂(RA−1)を得た。(RA−1)は明確なTaを持たないので非晶性樹脂である。
【0147】
結晶性樹脂(A−1)〜(A−4)、非晶性樹脂(RA−1)の物性値を表1に示す。
【0148】
【表1】
【0149】
<製造例5>[エステル基を有するビニル樹脂分散液(BD−1)の合成]
スチレン60重量部、n−ブチルアクリレート28重量部、メチルメタアクリレート10重量部、アクリル酸2重量部を秤量し、撹拌、均一化を行い油性液を得た。
また、イオン交換水800重量部にリン酸三カルシウム10.0重量部を添加して水系媒体を調整し、70℃に温調した。油性液に重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート4.0重量部を添加し、これを水系媒体に投入、TKオートホモミキサーで10,000rpmにて5分間撹拌し、油性液を水系媒体中に分散させた。その後、撹拌機をプロペラ撹拌羽根に替えて、200rpmで撹拌しながら70℃を保持して8.0時間重合した。
これにより体積平均粒径が200nmのエステル基を有するビニル樹脂分散液(BD−1)を得た。この分散液の固形分濃度は50重量%であった。
【0150】
<製造例6>[エステル基を有するビニル樹脂分散液(BD−2)の合成]
製造例5において、スチレン60重量部、n−ブチルメタアクリレート28重量部、メチルメタアクリレート10重量部、アクリル酸2重量部を、n−ブチルアクリレート28重量部、メチルメタアクリレート70重量部、アクリル酸2重量部に置き換えた以外は製造例5と同様にして、体積平均粒径が200nmのエステル基を有するビニル樹脂分散液(BD−2)を得た。この分散液の固形分濃度は50重量%であった。
【0151】
<製造例7>[エステル基を有するビニル樹脂分散液(BD−3)の合成]
製造例5において、スチレン60重量部、n−ブチルアクリレート28重量部、メチルメタアクリレート10重量部、アクリル酸2重量部を、n−ブチルアクリレート28重量部、メチルアクリレート70重量部、アクリル酸2重量部に置き換えた以外は製造例5と同様にして、体積平均粒径が200nmのエステル基を有するビニル樹脂分散液(BD−3)を得た。この分散液の固形分濃度は50重量%であった。
【0152】
<製造例8>[エステル基を有するビニル樹脂分散液(BD−4)の合成]
製造例5において、スチレン60重量部、n−ブチルアクリレート28重量部、メチルメタアクリレート10重量部、アクリル酸2重量部を、スチレン30重量部、n−ブチルアクリレート27重量部、メチルメタアクリレート40重量部、アクリル酸3重量部に置き換えた以外は製造例5と同様にして、体積平均粒径が150nmのエステル基を有するビニル樹脂分散液(BD−4)を得た。この分散液の固形分濃度は50重量%であった。
【0153】
<製造例9>[エステル基を有するビニル樹脂分散液(BD−5)の合成]
製造例5において、スチレン60重量部、n−ブチルアクリレート28重量部、メチルメタアクリレート10重量部、アクリル酸2重量部、t−ブチルパーオキシピバレート4.0重量部をn−ブチルアクリレート28重量部、メチルメタアクリレート70重量部、アクリル酸2重量部、2、2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン4重量部に置き換えた以外は製造例5と同様にして、体積平均粒径が200nmのエステル基を有するビニル樹脂分散液(BD−5)を得た。この分散液の固形分濃度は50重量%であった。
【0154】
<比較製造例2>[共重合体分散液(RBD−1)の合成]
製造例5において、スチレン60重量部、n−ブチルアクリレート28重量部、メチルメタアクリレート10重量部、アクリル酸2重量部をスチレン98重量部、アクリル酸2重量部に置き換えた以外は製造例5と同様にして、共重合体分散液(RBD−1)を得た。
【0155】
<比較製造例3> [共重合体分散液(RBD−2)の合成]
製造例9において、n−ブチルアクリレート28重量部、メチルメタアクリレート70重量部、アクリル酸2重量部を、スチレン98重量部、アクリル酸2重量部に置き換えた以外は製造例5と同様にして、共重合体分散液(RBD−2)を得た。
【0156】
分散液(BD−1)〜(BD−5)、(RBD−1)、(RBD−2)を乾燥して分析用のサンプルを得た。得られたサンプルのエステル基を有するビニル樹脂(LB−1)〜(LB−4)、(HB−1)、(RLB−1)、(RHB−1)の物性値を表2に示す。
【0157】
【表2】
【0158】
<製造例10> [結晶性樹脂分散液(AD−1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、製造例1で製造した樹脂(A−1)15重量部及びイオン交換水20重量部を投入し、撹拌下90℃に昇温し、同温度で30分間撹拌後、1時間かけて10℃まで冷却して結晶性樹脂を微粒子状に晶析させ、更にウルトラビスコミル(アイメックス製)で湿式粉砕し、結晶性樹脂分散液(AD−1)を得た。(AD−1)の体積平均粒径は0.5μm、固形分濃度は50重量%であった。
【0159】
<製造例11> [結晶性樹脂分散液(AD−2)の製造]
製造例10において樹脂(A−1)15重量部を樹脂(A−2)に置き換えた以外は製造例10と同様にし、結晶性樹脂分散液(AD−2)を得た。(AD−2)の体積平均粒径は0.5μm、固形分濃度は50重量%であった。
【0160】
<製造例12>[結晶性樹脂分散液(AD−3)の製造]
製造例10において樹脂(A−1)15重量部を樹脂(A−3)に置き換えた以外は製造例10と同様にし、結晶性樹脂分散液(AD−3)を得た。(AD−3)の体積平均粒径は0.5μm、固形分濃度は50重量%であった。
【0161】
<製造例13> [離型剤分散液1の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、パラフィンワックス「HNP−9」[融解熱最大ピーク温度:73℃、日本精鑞(株)製]10重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部、イオン交換水15重量部を投入し、撹拌下78℃に昇温し、同温度で30分間撹拌後、1時間かけて30℃まで冷却してパラフィンワックスを微粒子状に晶析させ、更にウルトラビスコミル(アイメックス製)で湿式粉砕し、離型剤分散液1を得た。得られた離型剤分散液1の体積平均粒径は0.25μm、固形分濃度は50重量%であった。
【0162】
<製造例14> [離型剤分散液2の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、カルナバワックス[融解熱最大ピーク温度:81℃]10重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部、イオン交換水15重量部を投入し、撹拌下90℃に昇温し、同温度で30分間撹拌後、1時間かけて30℃まで冷却してカルナバワックスを微粒子状に晶析させ、更にウルトラビスコミルで湿式粉砕し、離型剤分散液2を得た。得られた離型剤分散液2の体積平均粒径は0.15μm、固形分濃度は50重量%であった。
【0163】
<製造例15>[黒色着色剤分散液の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、カーボンブラック「MA100」[三菱化学(株)製]10重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部、イオン交換水40重量部を投入し、撹拌下30℃に昇温し、同温度で30分間撹拌後、更にウルトラビスコミルで湿式粉砕し、黒色着色剤分散液を得た。得られた黒色着色剤分散液の体積平均粒径は0.05μm、固形分濃度は20重量%であった。
【0164】
<製造例16>[青色着色剤分散液の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、銅フタロシアニン顔料C.I.PigmentBlue15:3「シアニンブルー4920」[大日精化工業(株)製]10重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部、イオン交換水40重量部を投入し、撹拌下30℃に昇温し、同温度で30分間撹拌後、更にウルトラビスコミルで湿式粉砕し、青色着色剤分散液を得た。得られた青色着色剤分散液の体積平均粒径は0.05μm、固形分濃度は20重量%であった。
【0165】
<実施例1〜10、比較例1〜4>[トナー(Z)の作製]
攪拌装置、加熱冷却装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、エステル基を有するビニル樹脂分散液、結晶性樹脂分散液、離型剤分散液、及び着色剤分散液を固形分で表3となるように仕込み、イオン交換水1,000重量部を仕込み、液温を30℃に調整した後、濃度25質量%の水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを10に調整した。
【0166】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物54.3重量部をイオン交換水54.3重量部に溶解させた水溶液を添加し、その後、系の温度を60℃にまで昇温することによって、樹脂粒子、着色剤粒子、離型剤粒子、結晶性樹脂粒子の凝集および融着を行った。開始後、粒度分布測定装置(コールターマルチサイザー3 ベックマンコールター社製)を用いて、適宜にサンプリングを行い、粒径5μmであることを確認し、30℃にまで冷却して反応を停止させ着色粒子の分散液を得た。次いで洗浄、濾別し、40℃で18時間乾燥を行い、揮発分を0.5重量%以下とした。得られたトナー粒子99重量部とコロイダルシリカ(日本アエロジル製アエロジルR972)1重量部とを均一混合して、体積平均粒径5μmの本発明のトナー(Z−1)〜(Z−10)、比較のトナー(RZ−1)〜(RZ−4)を得た。
【0167】
トナー(Z−1)〜(Z−10)、(RZ−1)〜(RZ−4)について、上記方法でスチレンモノマー含有率、モノマー含有率、VOC含有率を測定した、また、以下の方法で低温定着性、光沢、耐熱保存安定性、耐湿熱保存安定性、耐久性を評価した、その結果を表3に示す。
【0168】
[1]低温定着性
トナー(Z−1)〜(Z−10)、(RZ−1)〜(RZ−4)を紙面上に0.6mg/cmとなるよう均一に載せる(このとき粉体を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンターを用いる。上記の重量密度で粉体を均一に載せることができるのであれば他の方法を用いてもよい)。この紙を加圧ローラーに定着速度(加熱ローラ周速)213mm/sec、定着圧力(加圧ローラ圧)1MPaの条件で通した時のコールドオフセットの発生温度を測定した。コールドオフセットの発生温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味する。
【0169】
[2]光沢
140℃で定着した画像を光沢度計(VG−1D)(日本電色社製)を用い、投光角度、受光角度をそれぞれ60°にあわせ、S、S/10の切り替えSWはSにあわせ、0調整及び標準板を用い、標準設定の後試料台に前記画像を置き、光沢を測定した。
光沢の数値が高いほど、光沢に優れることを意味する。
【0170】
[3]耐熱保存安定性
トナー(Z−1)〜(Z−10)、(RZ−1)〜(RZ−4)を50℃の雰囲気で1日間静置し、ブロッキングの程度により下記の基準で耐熱保存安定性を評価した。
[評価基準]
○:ブロッキングが発生しない
△:ブロッキングが発生するが、力を加えると容易に分散する。
×:ブロッキングが発生し、力を加えても分散しない。
【0171】
[4]耐湿熱保存安定性
トナー(Z−1)〜(Z−10)、(RZ−1)〜(RZ−4)を、40℃、相対湿度80%の雰囲気で20時間静置し、ブロッキングの程度により下記の基準で耐湿熱保存安定性を評価した。
[評価基準]
○:ブロッキングが発生しない。
△:ブロッキングが発生するが、力を加えると容易に分散する。
×:ブロッキングが発生し、力を加えても分散しない。
【0172】
[5]耐久性
トナー(Z−1)〜(Z−10)、(RZ−1)〜(RZ−4)を二成分現像剤として、市販モノクロ複写機[AR5030、シャープ(株)製]を用いて連続コピーを行い、以下の基準で耐久性を評価した。
[評価基準]
◎:1万枚コピー後も画質に変化なく、カブリの発生もない。
○:1万枚コピー後でカブリが発生している。
△:6千枚コピー後でカブリが発生している。
×:2千枚コピー後でカブリが発生している。
【0173】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明の製造方法で得られたトナー(Z)は、耐熱保存性、耐湿熱保存性と低温定着性の両立ができ、かつトナー耐久性、光沢に優れることから、電子写真トナー、静電記録トナー及び静電印刷トナー等として有用である。