特許第6532706号(P6532706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6532706
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】減酸素セル、保管庫及び冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20060101AFI20190610BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20190610BHJP
   C25B 1/00 20060101ALI20190610BHJP
   C25B 1/10 20060101ALI20190610BHJP
   C25B 1/30 20060101ALI20190610BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20190610BHJP
【FI】
   C25B9/00 Z
   C25B15/08 302
   C25B9/00 A
   C25B1/00 Z
   C25B1/10
   C25B1/30
   F25D23/00 302Z
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-43791(P2015-43791)
(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公開番号】特開2016-160527(P2016-160527A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2018年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100088487
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 允之
(72)【発明者】
【氏名】吉永 典裕
(72)【発明者】
【氏名】田村 淳
(72)【発明者】
【氏名】八木 亮介
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 芳浩
(72)【発明者】
【氏名】内藤 勝之
(72)【発明者】
【氏名】深沢 大志
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−037620(JP,A)
【文献】 特開2015−029978(JP,A)
【文献】 特開2013−067852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00−15/08
F25D 11/00−16/00
F25D 27/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と、
前記陰極と接続した陰極集電板と、
陽極と、
前記陰極と前記陽極に挟持された電解質膜と、
前記陽極と接続した陽極集電板と、
親水性多孔体と、
前記陽極集電板と前記親水性多孔体の間に気化膜と、
前記電解質膜の縁部よりも内方であり、かつ、前記気化膜の縁部よりも外方に前記電解質膜と接続する第1の排気口と、
前記親水性多孔体に前記親水性多孔体を開口する第2の排気口とを有することを特徴とする減酸素セル。
【請求項2】
陰極と、
前記陰極と接続した陰極集電板と、
陽極と、
前記陰極と前記陽極に挟持された電解質膜と、
気化膜と
前記陽極と前記気化膜の間に陽極集電板と、
前記電解質膜の縁部よりも内方であり、かつ、前記気化膜の縁部よりも外方に前記電解質膜と接続する第1の排気口とを有することを特徴とする減酸素セル。
【請求項3】
陰極と、
前記陰極と接続した陰極集電板と、
陽極と、
前記陰極と前記陽極に挟持された電解質膜と、
前記陽極と接続した陽極集電板と、
親水性多孔体と、
前記陽極集電板と前記親水性多孔体の間に気化膜と、
前記親水性多孔体に前記親水性多孔体を開口する第2の排気口とを有することを特徴とする減酸素セル。
【請求項4】
前記第2の排気口の開口面積は、0.05cm以上であることを特徴とする請求項1又は3のいずれか1項に記載の減酸素セル。
【請求項5】
前記第1の排気口の開口面積は、0.05cm以上であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の減酸素セル。
【請求項6】
前記親水性多孔体の面積に対する前記第2の排気口の面積の比率は0.2%以上であることを特徴とする請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の減酸素セル。
【請求項7】
前記第1の排気口は、前記陽極の縁部より外方に設けられることを特徴とする請求項1、2及び5のいずれか1項に記載の減酸素セル。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の減酸素セルを備えたことを特徴とする保管庫。
【請求項9】
請求項8の保管庫を備えたことを特徴する冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、減酸素セル、保管庫及び冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素濃度を低減することで野菜などの食品等の被保管物の保管性を高めることが知られている。酸素濃度を低減することで食品などの酸化によって劣化する被保管物の保管性を高める方法として、電気化学セルを用いて陰極上で酸素と水素を反応させて水を生成して酸素を消費させることが知られている。陽極上の反応では、陽極に供給する水を気化させる気化膜が親水性化するなどして、陽極で生成した酸素が排出できなくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−239786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、陽極での酸素の排出性を有する減酸素セル、保管庫及び冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態にかかる減酸素セルは、陰極と、陰極と接続した陰極集電板と、陽極と、陰極と陽極に挟持された電解質膜と、陽極と接続した陽極集電板と、親水性多孔体と、陽極集電板と親水性多孔体の間に気化膜と、電解質膜の縁部よりも内方であり、かつ、気化膜の縁部よりも外方に電解質膜と接続する第1の排気口と、親水性多孔体に親水性多孔体を開口する第2の排気口とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の減酸素セルの概念図である。
図2】実施形態の減酸素セルの概念図である。
図3】実施形態の減酸素セルの概念図である。
図4】実施形態の減酸素セルの概念図である。
図5】実施形態の減酸素セルの概念図である。
図6】実施形態の減酸素セルの概念図である。
図7】実施形態の保管庫の概念図である。
図8】実施形態の冷蔵庫の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に複数の実施形態を例に、減酸素セル、保管庫と冷蔵庫について説明する。明細書中の上方や下方は、図面の表示に準ずる。
(実施形態1)
図1に実施形態1の減酸素セル100の断面概念図を示す。実施形態1の減酸素セル100は、陰極2と、陰極2と接続した陰極集電板3と、陽極5と、陰極2と陽極5に挟持された電解質膜1と、陰極ガスケット4と、陽極5と接続した陽極集電板6と、親水性多孔体8と、陽極集電板6と親水性多孔体8の間に気化膜7と、第1の陽極ガスケット9と、第2の陽極ガスケット10と、電解質膜1の縁部よりも内方であり、かつ、気化膜7の縁部よりも外方に電解質膜1までつながる第1の排気口11を有する。減酸素セル100の陰極2、陽極5はそれぞれ、図示しない電源(陽極5側に正電位、陰極2側に負電位)と接続して、減酸素セル100を駆動することができる。図1中には、気化膜7の縁部を符号A、A’で、電解質膜1の縁部を符号B、B’で、第1の排気口11の縁部を符号C、Dで、陽極5の符号をE、E’で、陰極2の縁部を符号a、a’で、陰極ガスケット4の内縁部を符号b、b’で、陰極ガスケット4の外縁部を符号c、c’で表している。
【0008】
ガスケットは、内側に電極または気化膜7が存在するため、内側の縁である内周辺を内縁(内縁のうち断面図に示す部分を内縁部)とし、外側の縁である外周辺を外縁(外縁のうち断面図に示す部分を内縁部)としている。その他は、電極などの構成部材の外周の縁(縁のうち断面図に示す部分を縁部)としている。電極等の2つの構成部材(第1の排気口11を除く)の縁部、内縁部と外縁部を比較して、より内方にあるか、もしくは、より外方にあるかとする大小関係に関する記載は、任意の断面において少なくとも縁部がその大小関係を満たすことが好ましい。さらに、縁部の全て(外周辺または内周辺)がその大小関係を満たすことがより好ましい。電極等の構成部材(第1の排気口11を除く)と第1の排気口11の縁部、内縁部と外縁部を比較して、より内方にあるか、もしくは、より外方にあるかとする大小関係に関する記載は、第1の排気口11が含まれる任意の断面において少なくとも縁部がその大小関係を満たすことが好ましい。さらに、第1の排気口11が含まれる全ての断面において縁部の全て(外周辺または内周辺)がその大小関係を満たすことがより好ましい。なお、縁部の大小関係の比較は、比較対象の一方の構成部材の任意の縁部から他方の構成部材の縁部までの最短距離にて比較を行う。
【0009】
電解質膜1は、陰極2と陽極5の間に存在し、陰極2と陽極5に挟持される。電解質膜1は、酸性のプロトン伝導性材料が用いられる。陽極5で生成したプロトン(H)は、電解質膜1を通り、陰極2へ移動する。プロトン伝導性材料としては、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂や無機物などが挙げられる。スルホン酸基を有するフッ素系樹脂は、例えば、パーフルオロスルホン酸重合体であるデュポン社製のナフィオン(商標)や旭硝子社製のフレミオン(商標)等が挙げられる。無機物としては、例えば、タングステン酸、リンタングステン酸、硝酸リチウム等が挙げられる。電解質膜1は、陰極2と陽極5間の気体の漏れを防ぐために、電解質膜1の縁部B(B’)は、陰極2の縁部a(a’)よりも外方であり、かつ、陽極5の縁部E(E’)よりも外方であることが好ましい。
【0010】
陰極2は、電解質膜1と陰極集電板3との間に存在し、陰極集電板3と積層していることが好ましい。陰極2は、酸素還元反応触媒を含むことが好ましい。酸素還元反応触媒としては、白金、炭素触媒や窒素を含む炭素触媒(カーボンアロイ触媒)等が好ましい。酸素還元反応触媒は、例えば、バインダーと混合されている。酸素還元反応触媒とバインダーとの混合物は、陰極触媒層となり、陰極集電板3に担持されていることが好ましい。
【0011】
カーボンアロイ触媒は、炭素原子の集合体を主体とした化合物であり、炭素原子の一部が窒素原子で置換されたものである。触媒全体としては導電性や高比表面積を有するためにアモルファスやsp3炭素が含まれるが、窒素はsp2炭素の骨格中に、ピリジン型、ピロール・ピリドン型、Nオキサイド型、3配位型のうち少なくともいずれかの形態で炭素原子が窒素原子で置換されたものが含まれる。
【0012】
陰極2で用いられるバインダーとしては、イオン伝導性バインダーを用いることが好ましい。電解質膜1が酸性の場合は、Nafion(商標)などのプロトン伝導性バインダーをイオン伝導性バインダーとして用いることが好ましい。
【0013】
陰極集電板3は、陰極2と電気的に接続し、陰極集電板3と積層した陰極2の酸素還元反応触媒に酸素を供給できる導電性材料が用いられる。図1の陰極集電板3に存在する空隙は、陰極2の反応に必要な酸素や、陰極2で生成した水を排出するための孔となる。陰極集電板3は、減酸素セル100を駆動する電極と電気的に低抵抗に接続し、陰極触媒層の電極支持材料となるものが好ましい。陰極集電板として、燃料電池などで用いられているガス拡散層(例えばカーボンペーパーなどの多孔質材)と同様の多孔質材、チタンメッシュ、SUSメッシュ、ニッケルメッシュ等を用いることができる。陰極集電板3には、陰極2で水が生成した場合に、その水を排出するための孔が設けられていることが好ましい。
【0014】
陰極ガスケット4は、陰極2の外周を覆う中抜きの開口部を有する。電解質膜1と陰極集電板3との間に存在し、陰極2の外周を全て囲うように設けられていることが好ましい。陰極ガスケット4によって、陰極2が気密に保持されることが好ましい。そこで、陰極ガスケット4の内縁部bは陰極2の縁部aより外方であり、かつ、陰極ガスケット4の外縁部は、電解質膜1の縁部cより外方であることが好ましい。陰極ガスケット4は、例えば、シリコンゴムが用いられる。
【0015】
陽極5(第2の電極)は、電解質膜1と陽極集電板6との間に存在する。陽極5は、水を電気分解する能力を有した陽極触媒(水電解触媒)を少なくとも有する。この触媒は陽極集電板6に担持されていることが好ましい。水電解触媒としては、たとえば、酸化ルテニウム(RuO)、酸化イリジウム(IrO)などの電気伝導性貴金属酸化物と酸化チタン(TiO)、酸化スズ(SnO)、酸化タンタル(Ta)、などのマトリックス酸化物との複合酸化物があり、触媒の活性、耐久性、コストなどを勘案して選択すればよく、これらに限定されるものではない。具体的には、RuO−TiO、RuO−IrO、RuO−IrO‐TiO、RuO−SnO、RuO−Ta、IrO−Taなどが挙げられる。陽極5には、生成した酸素を排気しやすくするための開口部を設けてもよい。陽極5の開口部は、例えば、横方向のスリット、縦方向のスリットや、横方向と縦方向のスリットを組み合わせたものである。
【0016】
陽極集電板6は、陽極5と気化膜7の間に存在する。陽極集電板6は、陽極5と電気的に接続し、陽極5の反応で消費される水を通過する。陽極集電板6は、電気伝導性、電気化学的な安定性、触媒との密着性などを考慮して選択すればよい。陽極集電板6として、例えば、電解工業の分野で利用実績のあるチタンなどのエキスパンドメタル、パンチングメタルなどを用いることができる。このようなチタン表面に前述の複合酸化物薄膜で被覆した電極は寸法安定性(DSA:Dimensionally Stable Anode)電極と呼ばれている。陽極集電板6には、陽極5の反応で用いられる水(水蒸気)を透過する開口部が図1のように設けられることが好ましい。陽極集電体6の開口部は、例えば、横方向のスリット、縦方向のスリットや、横方向と縦方向のスリットを組み合わせたものである。
【0017】
気化膜7は、陽極集電体6と親水性多孔体8の間に存在し、陽極集電体6と親水性多孔体8に挟持されている。気化膜7は、親水性多孔体8からの液体水を陽極5での水電解反応のために水蒸気にする膜である。気化膜7は、多孔質体構造又は不織布構造を有するものが用いられることが好ましい。具体的な気化膜7としては、例えば、PTFE等で撥水処理したカーボンペーパーやマイクロポーラス層(MPL)と呼ばれるPTFEなどの撥水性樹脂とカーボンブラックなどの導電性材料を主成分とするコーティング薄膜をカーボンペーパーにコートしたMPL付きカーボンペーパー、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン系樹脂やポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及びテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などのフッ素系樹脂などの材料からなる多孔質体構造又は不織布構造を有するものを用いることが好ましい。気化膜7で気化した水は、陽極集電板6の孔を通り、陽極5へ到達し、陽極5での水電解反応で消費される。
【0018】
親水性多孔体8は、陽極5での水の電解反応に必要な水を供給するための部材である。親水性多孔体8は、吸水性(多孔性)と親水性を備えた例えば不織布構造を有する高分子繊維(例えば、ポリエステル繊維やレーヨン繊維)、不織布構造を有する高分子繊維をフェノール樹脂等の強化剤で強化したもの(例えば、ユニペックス SB)、ポリオレフィン系の樹脂を焼結したものや不織布構造を有するパルプ(例えば、キムタオル)などである。実施形態1においては、陽極5へ気化した水を供給できるものを親水性多孔体8に代えて用いることができる。親水性多孔体8の代替手段としては、例えば、水を吸着し脱離するシリカゲルなどであるが、これに限定されるものではない。
【0019】
第1の陽極ガスケット9と、第2の陽極ガスケット10は、それぞれ、陽極5と気化膜7を気密に保持する。第1の陽極ガスケット9と、第2の陽極ガスケット10は、例えば、シリコンゴムなどを用いることができる。
【0020】
第1の陽極ガスケット9は、電解質膜1と陽極集電板6との間に存在している。第1の陽極ガスケット9は、陽極5で生成した酸素が陰極2側へ漏れることを防ぐために、陽極5の外周の全てを囲うものであることが好ましい。そこで、第1の陽極ガスケット9の内縁部は陽極5の縁部EおよびE’の外方であり、かつ、第1の陽極ガスケット9の外縁部は電解質膜1の縁部Bの外方であることが好ましい。
【0021】
第2の陽極ガスケット10は、陽極集電板6と親水性多孔体8との間に存在している。第2の陽極ガスケット10は、気化膜7で気化した水が陽極5以外に漏れることを防ぐために陽極5の外周の全てを囲うものであることが好ましい。そこで、第2の陽極ガスケット10の内縁部は気化膜7の縁部AおよびA’の外方であることが好ましい。
【0022】
次に実施形態の陰極2および陽極5における電極反応について説明する。
電解質膜1に酸性のプロトン伝導性材料を用いた場合について説明する。両電極に電圧を印加すると陽極5、陰極2で次の反応(反応式1−2)が生じる。
【0023】
陽極5
2HO→O+4H+4e (反応式1)
陰極2
+4H+4e→2HO (反応式2)
【0024】
また、陰極2の表面(陰極触媒層表面)が水で覆われるなどして酸素の供給が足りなくなり、印加電圧が一定値(水素発生電位)を超えてくると、陰極2では次の反応(反応式3)が並行して起こる。
【0025】
2H+2e→H (反応式3)
そこで、陰極2には、生成した水を排出するための孔などを陰極集電板3に設けることが好ましい。
【0026】
また、反応式2の反応が途中で止まり、反応式4の反応により水ではなく過酸化水素(H)が生成する場合も一部ある。
【0027】
+2H+2e→H (反応式4)
【0028】
気化膜7が親水性化するなどの劣化により、液膜を張ることがある。液膜が張られた気化膜7は酸素透過性が低下する。気化膜7に液膜が張られた際に、実施形態に記載の酸素の排気口を設けない減酸素セルでは、酸素を気化膜7から外部への排出量が減少して酸素量が増加し、陽極5側の圧が上昇する。すると、陽極5で生成した酸素が陰極2側に漏れて、陰極2側での減酸素速度が低下してしまう。そこで、実施形態の減酸素セル100では、酸素の排気経路となる排気口(貫通口)を設けることが好ましい。親水性多孔体8が無くても気化膜7が親水性化等に伴う気化膜7の背圧上昇は、陽極5側から陰極2側への酸素の漏れの原因となる。
【0029】
第1の排気口11は、陽極5で生成した酸素を減酸素セル100の外部に放出する排気経路を有する。第1の排気口11は、気化膜7の縁部Aの外方に存在すると、気化膜7に第1の排気口11が設けられず、気化膜7に開口部が設けられないため好ましい。また、第1の排気口11は、電解質膜1の縁部Bの外方に存在すると、電解質膜1の外方で空気が通り、減酸素速度が低下してしまうことが好ましくない。また、電解質膜1まで第1の開口部11がつながると電解質膜1を通り越して陽極5側から陰極2側への酸素の漏れを防ぐことができるため好ましい。そこで、第1の排気口11は、気化膜7の縁部Aの外方に存在し、かつ、電解質膜1の縁部Bの内方存在し、かつ、電解質膜1までつながることがより好ましい。第1の排気口11は、電解質膜1と接続した端部とセルの陽極5側の外部に開口した端部とを有する。
【0030】
なお、図1では、減酸素セル100の上方に第1の排気口11を設けているが、気化膜7の縁部Aは、縁部A’でもよいし、電解質膜の縁部は、B’でもよい。そこで、減酸素セル100の下方の気化膜7の縁部A’の外方であり、かつ、電解質膜1の縁部B’の内方に第1の排気口11を設けてもよい。また、複数の第1の排気口11を減酸素セル100に設けてもよい。第1の排気口11は、酸素を排気する観点から、第1の排気口11の面積Aは0.05cm以上(A≧0.05cm)であることが好ましい。第1の排気口11の面積は、顕微鏡等で画像処理して求めるか、目視でも確認できるサイズであるためノギスや定規等で開口径を測定して求めることができる。
【0031】
図2は、減酸素セル100の一部にかかる斜視概念図である。図2の概念図は、陽極5、陽極集電板6、気化膜7、親水性多孔体8、第1の陽極ガスケット9と第2の陽極ガスケット10の一部をそれぞれ分離して示すものである。図2の概念図において、第1の排気口11は、電解質膜1及び陽極5と接続した端部と、親水性多孔体8を開口する端部を有する。第1の排気口11の排気経路は、電解質膜1と、陽極5と、第1の陽極ガスケット9とに囲まれた空隙を起点(端部)に、陽極集電板6を貫通し、第2の陽極ガスケット10を貫通し、さらに、親水性多孔体8を貫通して親水性多孔体8の開口部を終点(端部)とすることが好ましい。第2の陽極ガスケット10を貫通せずに、第2の陽極ガスケット10と気化膜7との間の空隙を第1の排気口11の排気経路とすることもできるが、第1の排気口11から水蒸気も排気されてしまうため、第2の陽極ガスケット10を貫通する第1の排気口11が好ましい。酸素排気の効率性の観点から、第1の排気口11は、電解質膜1の面に対して垂直から平行の間の角度の範囲内で設けられることが好ましい。また、同観点から第1の排気口11は、電解質膜1の面に対して垂直にのみ設けられることがより好ましい。
【0032】
第1の排気口11の開口部(C−D間)は、気化膜7の縁部の外方に存在し、かつ、電解質膜1の内方に存在することが好ましい。第1の排気口11の開口上端Dが電解質膜1の縁部Bより外方にあると、酸素が電解質膜1を跨いで陰極2側へ漏れてしまうことが好ましくない。また、第1の排気口11の開口下端Cが気化膜7の縁部A(A’)よりも内方に存在すると、第1の排気口11が気化膜7を貫通してしまい、気化膜7が気化した水が第1の排気口11から排出されてしまうことが好ましくない。そこで、第1の排気口11は、気化膜7の外周を囲う第2の陽極ガスケット11を貫通することが好ましい。また、陽極5上に排気口が空いているとその部分は反応物質が行きわたり難く、反応に関与しにくくなるため第1の排気口11は、陽極5の縁部E(E’)よりも外方に存在することが好ましい。なお、第1の排気口11の開口部の断面形状は、長方形などの多角形でも円形でもよく、特に限定されるものではない。
【0033】
図1および図2では、親水性多孔体8が陽極5側の最後方に設けられているため、第1の排気口11は、電解質膜1及び陽極5と接続した端部と親水性多孔体8を開口する端部を有する形態となっている。従って、第1の排気口11の端部は、親水性多孔体8に設けられない変形例が実施形態の減酸素セル100に含まれてもよい。変形例としては、例えば、陽極5側の最後方が図示しないガスケットであれば、第1の排気口11の端部は、図示しないガスケットに設けられる。
【0034】
(実施形態2)
図3に実施形態2の減酸素セル101の断面概念図を示す。実施形態2の減酸素セル101は、陰極2と、陰極2と接続した陰極集電板3と、陽極5と、陰極2と陽極5に挟持された電解質膜1と、陰極ガスケット4と、陽極5と接続した陽極集電板6と、親水性多孔体8と、陽極集電板6と親水性多孔体8の間に気化膜7と、第1の陽極ガスケット9と、第2の陽極ガスケット10と、親水性多孔体8を開口する第2の排気口12とを有する。
【0035】
減酸素セル101において、第1の排気口11が無いこと、第2の排気口12が有ること、陽極5に開口部が設けられていること以外は、実施形態1の減酸素セル100と共通する。共通する構成については、その説明を省略する。
【0036】
吸水性(多孔性)と親水性を備えた例えば不織布構造を有する親水性多孔体8は、含水状態では、親水性多孔体8に含まれる水が酸素透過を妨げる酸素透過障壁層となることで酸素排出能が低くなる。そのため、陽極5で生成した酸素の排出を阻害することがわかった。酸素の排出が阻害されると、陽極5側の減酸素セル100内の酸素分圧が上昇し、酸素が陰極2側へ漏れることがあり、減酸素速度を低下させてしまう。そこで、実施形態2では、親水性多孔体8に第2の排気口12を設け、親水性多孔体8の酸素排出能を向上させた。
【0037】
第2の排気口12は、親水性多孔体8に設けられ、親水性多孔体8の一部を開口する貫通孔である。親水性多孔体8が気化膜7を透過した酸素の酸素透過障壁にならないように酸素を減酸素セル101の外部に放出することが好ましい。第2の排気口12が気化膜7の縁部A(A’)の外方に存在すると、水を含んだ親水性多孔体8は、酸素透過障壁層となってしまう。そこで、第2の排気口12は、気化膜7の縁部A(A’)の内方に設けられることが好ましい。従って、第2の排気口12の上端Gと下端Fのどちらか一方が気化膜7の縁部A(A’)の内方に存在することが好ましい。さらに、第2の排気口12の上端Gと下端Fの両方が気化膜7の縁部A(A’)の内方に存在することがより好ましい。
【0038】
図4は、減酸素セル101の一部にかかる斜視概念図である。図4の概念図は、陽極5、陽極集電板6、気化膜7、親水性多孔体8、第1の陽極ガスケット9と第2の陽極ガスケット10の一部をそれぞれ分離して示すものである。図4の概念図において、減酸素セル101は、3つの開口部を有する第2の排気口11を備える。図4の概念図において、陽極5と陽極集電体6に設けられた開口部は共通しているため、陽極5から気化膜7間において酸素が通り易くなっているため、酸素を減酸素セル101の陽極5側から排出する観点から好ましい。陽極5に開口部を設けない変形例であっても、陽極5で生成した酸素は、陽極集電体6(開口部)と、気化膜7を通り第2の排気口12から排気されるため、酸素排出能の高い減酸素セルとなる。
【0039】
第2の排気口12の開口部は、図4の概念図のように複数の開口部を有してもよいし、単数の開口部を有していてもよい。第2の排気口12の開口面積Sは0.05cm以上(S≧0.05cm)であることが好ましい。第2の排気口12の開口面積Sは、親水性多孔体8が水を飽和状態で吸水している時の、親水性多孔体8に設けられた貫通孔の面積である。第2の排気口12の開口面積Sは開口部の数が複数の場合は開口面積の合計値である。第2の排気口12の開口面積Sを求める際には、1つの開口部の開口面積(S1、S2、S3等)が0.01cm以上(S1、S2、S3≧0.01)の開口部の面積を合計する。第2の排気口12の開口面積Sは顕微鏡等で画像処理して求めるか、目視でも確認できるサイズであるためノギスや定規等で開口径を測定して求めることができる。
【0040】
第2の排気口12の1つの開口部の開口面積(S1、S2、S3等)が0.01cmより小さすぎると、開口部に水の液膜が張られやすくなり親水性多孔体8の酸素排出能の向上が生じにくい。酸素を陽極5側から排出する観点から、第2の排気口12の開口面積Sは0.05cm以上が好ましい。そこで、第2の排気口12の開口面積Sは、親水性多孔体8の強度、吸水性や水の拡散性などを考慮して0.05cm以上の好適な大きさやその位置が選択される。第2の排気口12の開口形状は、長方形などの多角形でも円形でもよく、特に限定されるものではない。
【0041】
また、親水性多孔体8の面積に対して、第2の排気口12の面積は0.2%以上であることが好ましい。第2の排気口12の面積比率が低過ぎると、必要となる水供給量に比例して生成される酸素が増えるにも関わらず、親水性多孔体8に設けられた排気口から排出する酸素量が不足してしまう。また、親水性多孔体8の面積に対して、第2の排気口12の面積は65%以下であることが好ましい。第2の排気口12の面積比率が高過ぎると、必要となる水供給量が不足してしまいやすい。そこで、親水性多孔体8の面積に対する第2の排気口12の面積の比率R([第2の排気口12の面積]/([親水性多孔体8の面積]+[第2の排気口12の面積]))は0.2%以上65%以下(0.2%≦R≦65%)であることが好ましく、第2の排気口12の開口面積Sが0.05cm以上(S≧0.05cm)であり、かつ、親水性多孔体8の面積に対する第2の排気口12の面積の比率Rは0.2%以上65%以下(0.2%≦R≦65%)であることがより好ましい。
【0042】
第1の排気口11および第2の排気口12を設けないと、減酸素運転中に気化膜7にかかる背圧は、10hPa以上にまで上昇することがわかった。実施形態の減酸素セルの構成では、気化膜7にかかる背圧が8hPa以上になると、陽極5で生成した酸素が陰極2側に漏れやすい。そこで、開口面積が0.05cm以上になるように第2の排気口12を設けると、気化膜7の背圧が5hPa以下に下がり、陽極5で生成した酸素が陰極2側に漏れにくくなる。第1の排気口11を設けることによって、同様に気化膜7の背圧を下げることができる。気化膜7にかかる背圧は減酸素セルで直接測定するのは困難であるため、減酸素セルの陽極面積と同じサイズの開口が空いた2つの容器の開口部間に気化膜および任意の開口を設けた親水多孔体(第2の排気口12の場合)を挟み込み、片方の容器に減酸素セルで発生する酸素ガス量(5〜50CCM)を送り込む、このときもう片方の容器は大気解放されており、送られた酸素は気化膜を通って大気に抜け、そのときの両容器の圧力差を測定することで背圧とする。第1の排気口11の場合は別途、気化膜設置の開口以外の所に両方の容器が繋がるように任意のサイズの孔を開け、酸素ガスを送り込み圧力差を測定する。
【0043】
(実施形態3)
図5に実施形態3の減酸素セル102の断面概念図を示す。実施形態3の減酸素セル102は、陰極2と、陰極2と接続した陰極集電板3と、陽極5と、陰極2と陽極5に挟持された電解質膜1と、陰極ガスケット4と、陽極5と接続した陽極集電板6と、親水性多孔体8と、陽極集電板6と親水性多孔体8の間に気化膜7と、第1の陽極ガスケット9と、第2の陽極ガスケット10と、電解質膜1の縁部よりも内方であり、かつ、気化膜7の縁部よりも外方に電解質膜1までつながる第1の排気口11と、親水性多孔体8に親水性多孔体8を開口する第2の排気口12とを有する。
【0044】
実施形態3の減酸素セル102は、実施形態1の減酸素セル100と実施形態2の減酸素セル101を組み合わせたものである。
【0045】
図6は、減酸素セル102の一部にかかる斜視概念図である。図6の概念図は、陽極5、陽極集電板6、気化膜7、親水性多孔体8、第1の陽極ガスケット9と第2の陽極ガスケット10の一部をそれぞれ分離して示すものである。図6の概念図において、減酸素セル102は、第1の排気口11及び3つの開口部を有する第2の排気口12を備える。実施形態3の減酸素セル102では、陽極5で生成した酸素を排出するための排気口を2種備えている。従って、本形態であれば、上記の形態よりもより多くの酸素を減酸素セル102の陽極5側から排出することができ、陰極2側への酸素の漏れをより確実に減らすことができる。
【0046】
(実施形態4)
図7に実施形態4の保管庫200の概念図を示す。保管庫200は、実施形態の減酸素セルを備える。保管庫200は、蓋14を備えた容器と、減酸素セル102と、減酸素セル102と接続した電源16とを備える。図7の概念図では、実施形態1−3において、省略した電源が減酸素セル102と接続している。保管庫200の減酸素セルは、実施形態3の減酸素セル102に限定されるものではなく、他の実施形態の減酸素セルでもよいし、また、これらの変形例の減酸素セルでもよい。容器13には、減酸素反応に伴う減圧を緩和乃至解消するために、圧力調整部を設けることが好ましい。圧力調整部としては、開口部や圧力調整弁などが好ましい。
【0047】
容器13は、保管庫200の容器である。容器13の空間15には、図示しない被保管物が保管される。容器13には、被保管物を出し入れ可能な蓋14が設けられる。容器13は、被保管物を低酸素状態で保管することが可能である。蓋14を閉めることで、容器13内の空間は気密性を有することが好ましい。容器13及び蓋14は、高分子化合物や金属などの、空気(酸素)透過性の低い材料を用いて構成されることが好ましい。
【0048】
電源16は、陰極2と陽極5に電気的に接続され、両極に電圧を印加する。電源16に印加される電圧によって、陰極2および陽極5で電極反応が行われる。電源16は、図示しない制御部によって、電圧を印加する条件(電圧、電流、時間、時機)が制御される。制御部は、図示しない酸素濃度センサや蓋14の開閉情報をマイコンやPLD(プログラマブルロジックデバイス)などの集積回路を用いて解析して電源16の動作条件を定めてもよいし、手動の動作スイッチを用いてもよいし、ICとスイッチの両方を用いてもよい。
【0049】
減酸素セル102が電源16によって動作すると、陰極2で減酸素反応が生じ、陽極5で水電解反応が生じる。陰極2側には、被保管物を配置する空間15がある。減酸素セル102の動作によって、空間15内の酸素濃度が低下する。保管庫200は、実施形態の減酸素セル102を備えているため、陽極5側で生成した酸素が陰極2側へ漏れにくいため、効率よく陰極2側の空間15の酸素濃度を低下させることができる。
【0050】
(実施形態5)
図8に実施形態5の冷蔵庫300の概念図を示す。冷蔵庫300は、冷蔵庫の野菜室を想定した冷蔵空間に減酸素セル100を備えた保管庫200を設けた応用例である。実施形態5の保管庫は、引き出し式の蓋14を備えた容器13と、減酸素セル100と、電源16を備える。容器13内には、減酸素セルの運転によって酸素濃度が低下する空間16を有する。減酸素セル100および保管庫については、上記実施形態において、説明したものと共通するため、その説明を省略する。保管庫の減酸素セルは、実施形態1の減酸素セル100に限定されるものではなく、他の実施形態の減酸素セルでもよいし、また、これらの変形例の減酸素セルでもよい。
【0051】
図8の概念図に示す冷蔵庫300は、筐体17と、第1の冷蔵空間18と、第2の冷蔵空間19と、第1の冷凍空間20と、第2の冷凍空間21と、観音開き式の第1の扉22と、スライド式の第2の扉23と、スライド式の第3の扉24と、スライド式の第4の扉25と、冷蔵サイクル用Rエバ26と、冷凍サイクル用Rエバ27と、棚板28と、引き出し式のチルド容器29と、ドアポケット30と、引き出し31と、保管庫200とを有する。
図8の概念図には、冷蔵庫300の一部の構成を示している。冷蔵庫300は、図示しない圧縮機、断熱材、製氷室や電子回路などをさらに有する。
【0052】
第1の冷蔵空間18と第2の冷蔵空間19は、冷蔵サイクル用Rエバ26で冷却された空気によって冷却される。また、第1の冷凍空間20と第2の冷凍空間21は、冷凍サイクル用Rエバ27で冷却された空気によって冷却される。
【0053】
保管庫200は、設置位置を限定するものではないが、冷蔵庫の野菜室を想定した第2の冷蔵空間19に設けられることが好ましい。野菜の一部は、呼吸によって、酸化が進むため、保管庫200へ野菜を保管することによって、野菜の酸化による劣化を防ぐことができる。保管庫200の陽極で生成した酸素や陰極で生成した液体水は、図示しない経路によって冷蔵庫外に排出させてもよい。
【0054】
以下、減酸素セルを有する保管庫の実施例を示す。
(実施例1)
実施例1は、実施形態1の減酸素セル100を備えた保管庫200を用いて、陰極2側での減酸素速度を測定する。
【0055】
次の方法で陰極2を作製する。窒素を含有するベンズグアナミン樹脂8gと塩化第2鉄1gと担体であるKetjenBlack(商標)EC300J 5gをTHF(テトラヒドロフラン)150mlと混合する。混合後、スターラー300rpmで攪拌しながら80℃で2時間還流を行う。還流した溶液を45℃の湯浴を用いたエバポレータによって乾燥させて、乾固した材料を800℃のアルゴン雰囲気下で1時間焼成する。焼成後、2M塩酸で焼成物を洗ってカーボンアロイ触媒を製造する。作製した試料をステンレスパン(直径1mm、深さ30μm)に詰め、XPS(PHI社製 Quantum−200 X線源/出力/分析領域:単結晶分光AlKα線/40W/φ200μm)により触媒表面の元素分析の結果を行い4点測定の結果、窒素置換量は1.3〜1.8%含まれていることを確認する。水とカーボンアロイ触媒36mgを加える。カーボンアロイ触媒を加えた分散媒を、超音波によって30分間分散させて、触媒インクを製造する。これをカーボンペーパー上に滴下、乾燥した陰極2と陰極集電板3として6cm×6cmの厚さ1.5mmのチタンメッシュとを積層体する。
【0056】
次の方法で陽極5を作製する。表面を粗面化、活性化させるため80度の10%シュウ酸水溶液に厚さ0.2mmのチタンのエキスパンドメタル(開孔率30%)を1時間浸漬した後、洗浄し、モル比でTa:Ir=0.3:0.7の塩化イリジウムと塩化タンタルを溶解したブタノール溶液に、この基材を浸漬する工程、空気中で60度で10分間、乾燥する工程、空気中で450℃で10分間、焼成する工程の各工程を複数回、繰り返し、チタンメッシュ表面に酸化イリジウム−酸化タンタルの複合酸化物が1mg/cmとなるようにする。
【0057】
そして、ナフィオン(商標)を電解質膜1として用い、陰極−電解質膜−陽極を接合する。このとき陰極2および陽極5の面積は3cm×4cm、電解質膜1の面積は4cm×5cmとした。そして、陽極5および陰極2の周囲へシリコーンゴムのガスケット4および9を設置し、さらに金がコートされた厚み1.5mmのチタン製集電板を陰極集電板3および陽極集電板6として設置し、さらに気化膜7として3cm×4cmのSigracet製 25BCを配置し、その周囲にガスケット10を設置、日本製紙クレシア株式会社製のキムタオルを親水多孔体8として設置する。そして、第1の開口部11として、図7に示す位置と同様の位置に、円形で口径が3mmの開口部を親水性多孔体から電解質膜1を貫通しないように形成する。10Lの容積を有する2mm厚のアクリル製容器に減酸素セル100を接続する。容器1の蓋を開けた室温が25℃の大気開放条件で、膜電極接合体2に2.4Aの電流を1時間印加して試運転を行う。
【0058】
試運転後、蓋14を閉じて、室温25℃で膜電極接合体2に2.4Aの電流を2時間印加して、減酸素運転を行う。尚、このとき容器13内の空間15が減圧にならないように、容器13の壁にΦ2mmの穴を設けて、酸素が減少した分は空気が流入するようにしている。酸素濃度計で減酸素運転開始前後の酸素濃度を測定すると、運転開始前は、20.9%であった酸素濃度が、運転終了後に17.5%まで低下している。これは電流から計算できる理論的に酸素が減る速度と一致しており、実施例1の構成では理論通りに容器13内の酸素濃度が減っていることが確認できる。
【0059】
(実施例2)
実施例2は、実施形態2の減酸素セル101を備えた保管庫200を用いて、陰極2側での減酸素速度を測定する。実施例2では、第1の排気口11を設けずに第2の排気口12を親水性多孔体8に設けた実験例である。第2の排気口12として、図3、4と同様の位置に、円形で口径が3mmの開口部を一つ設ける。実施例1と同様の試運転の後に減酸素運転を行う。尚、実施例1と同様に、容器13内の空間15が減圧にならないように、容器13の壁にΦ2mmの穴を設けて、酸素が減少した分は空気が流入するようにしている。室温25℃で膜電極接合体2に2.4Aの電流を2時間印加して、減酸素運転を行う。
【0060】
酸素濃度計で減酸素運転開始前後の酸素濃度を測定すると、運転開始前は、20.9%であった酸素濃度が、運転終了後に17.5%まで低下している。これは電流から計算できる理論的に酸素が減る速度と一致しており、実施例2の構成でも理論通りに容器13内の酸素濃度が減っていることが確認できる。
【0061】
(実施例3)
実施例3は、実施形態3の減酸素セル102を備えた保管庫200を用いて、陰極2側での減酸素速度を測定する。実施例3では、実施例1の減酸素セル100に実施例2の第2の排気口12を設けた実験例である。第1の開口部11として、図5に示す位置と同様の位置に、円形で口径が3mmの開口部を親水性多孔体8から電解質膜1を貫通しないように形成する。第2の排気口12も、図5と同様の位置に、円形で口径が3mmの開口部を一つ設ける。実施例1と同様の試運転の後に減酸素運転を行う。尚、実施例1と同様に、容器13内の空間15が減圧にならないように、容器13の壁にΦ2mmの穴を設けて、酸素が減少した分は空気が流入するようにしている。
【0062】
室温25℃で膜電極接合体2に2.4Aの電流を2時間印加して、減酸素運転を行う。酸素濃度計で減酸素運転開始前後の酸素濃度を測定すると、運転開始前は、20.9%であった酸素濃度が、運転終了後に17.5%まで低下している。これは電流から計算できる理論的に酸素が減る速度と一致しており、実施例3の構成でも理論通りに容器内の酸素濃度が減っていることが確認できる。
【0063】
(比較例1)
比較例1は、第1の排気口11及び第2の排気口を設けない減酸素セルを備えた保管庫200を用いて、陰極2側での減酸素速度を測定する。実施例1と同様の試運転の後に減酸素運転を行う。尚、実施例1と同様に、容器13内の空間15が減圧にならないように、容器13の壁にΦ2mmの穴を設けて、酸素が減少した分は空気が流入するようにしている。酸素濃度計で減酸素運転開始前後の酸素濃度を測定すると、運転開始前は、20.9%であった酸素濃度が、運転終了後には20.3%となっている。これは電流から計算できる理論的に酸素が減る速度と一致しておらず、第1の排気口11を設けない場合は酸素の排出がうまくいかず、酸素がリークして、容器15に戻ってきてしまっていることを表わしている。このことから、第1の排気口11の面積が重要であると言える。
【0064】
(実施例4)
実施例4は、実施例1の変形例であって、第1の排気口11の開口面積を変えた実験例である。実施例4において、実施例1の形態で、第1の排気口11として円形で開口面積が0.01、0.02、0.03、0.04cmとなるように開口部を一つ設けた減酸素セルをそれぞれ作製する。実施例1と同様の試運転の後に減酸素運転を行う。尚、実施例1と同様に、容器13内の空間15が減圧にならないように、容器13の壁にΦ2mmの穴を設けて、酸素が減少した分は空気が流入するようにしている。
【0065】
酸素濃度計で減酸素運転開始前後の酸素濃度を測定すると、運転開始前は、すべての減酸素セルで20.9%であった酸素濃度が、運転終了後には0.01cmの開口面積で20.2%、0.02cmの開口面積で19.8%、0.03cmの開口面積で19.5%、0.04cmの開口面積で19.0%まで低下している。これは電流から計算できる理論的に酸素が減る速度と一致しておらず、第1の排気口11の開口面積が0.05cm未満の場合、酸素濃度は低下しているものの一部の酸素の排出がうまくいかず、酸素がリークして、容器13内の空間15に戻ってきてしまっていることを表わしている。このことから、第1の排気口11の開口面積が重要であると言える。
【0066】
(実施例5)
実施例5は、実施例2の変形例であって、第1の排気口11の開口面積を変えた実験例である。実施例2の形態で、第2の排気口12に円形で開口面積が0.01、0.02、0.03、0.04cmとなるように開口部を一つ設けた減酸素セルをそれぞれ作製する。実施例1と同様の試運転の後に減酸素運転を行う。尚、実施例2と同様に、容器13内の空間15が減圧にならないように、容器13の壁にΦ2mmの穴を設けて、酸素が減少した分は空気が流入するようにしている。
【0067】
酸素濃度計で減酸素運転開始前後の酸素濃度を測定すると、運転開始前は、すべての減酸素セルで20.9%であった酸素濃度が、運転終了後には0.01cmの開口面積で20.3%、0.02cmの開口面積で19.9%、0.03cmの開口面積で19.7%、0.04cmの開口面積で19.3%まで低下している。これは電流から計算できる理論的に酸素が減る速度と一致しておらず、第2の排気口12の開口面積が0.05cm未満の場合、一部の酸素の排出がうまくいかず、酸素がリークして、容器13内の空間15に戻ってきてしまっていることを表わしている。このことから、第2の排気口12も開口面積が重要であると言える。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1…電解質膜、2…陰極、3…陰極集電板、4…陰極ガスケット、5…陽極、6…陽極集電板、7…気化膜、8…親水性多孔体、9…第1の陽極ガスケット、10…第2の陽極ガスケット、11…第1の排気口、12…第2の排気口、13…容器、14…蓋、15…空間、16…電源、17…筐体、18…、第1の冷蔵空間、19…第2の冷蔵空間、20…第1の冷凍空間、21…第2の冷凍空間、22…第1の扉、23…第2の扉、24…第3の扉、25…第4の扉、26…冷蔵サイクル用Rエバ、27…冷凍サイクル用Rエバ、28…棚板、29…引き出し式チルド容器、30…ドアポケット、31…引き出し式冷凍スペース、100〜102…減酸素セル、200…保管庫、300…冷蔵庫

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8