(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施の形態)
以下、実施の形態の表示装置、および医用画像診断装置を、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
本実施の形態では、表示装置を医用画像診断装置に搭載した形態を一例として説明する。
【0011】
図1は、医用画像診断装置10の一例を示す模式図である。医用画像診断装置10は、医用画像診断部11と、表示装置30と、を備える。
【0012】
医用画像診断部11は、筒状部材12と、天板14と、寝台15と、駆動部16と、制御部18と、磁場アンプ20と、受信部22と、送信部24と、を備える。
【0013】
筒状部材12は、磁場空間を形成する磁場発生源を含む、筒状の部材である。筒状部材12は、ガントリと称される場合がある。天板14は、診断対象のユーザPを搭載する板状の部材である。本実施の形態では、天板14の長手方向(X軸方向)は、水平方向に一致する場合を説明する。また、天板14の厚み方向(Z軸方向)は、鉛直方向に一致する場合を説明する。また、天板14の幅方向(Y軸方向)は、水平方向および厚み方向の双方に直交する場合を説明する。なお、X軸方向、Z軸方向、およびY軸方向は、互いに直交する方向であればよく、X軸方向が水平方向に一致し、Z軸方向が鉛直方向に一致する形態に限定されない。
【0014】
筒状部材12は、静磁場磁石12Aと、傾斜磁場コイル12Bと、送信コイル12Cと、受信コイル12Dと、を含む。
【0015】
静磁場磁石12Aは、中空の円筒形状に形成され、内部の空間に一様な静磁場を発生する。静磁場磁石12Aは、例えば、永久磁石、超伝導磁石等である。傾斜磁場コイル12Bは、静磁場磁石12Aの内側に配置されている。傾斜磁場コイル12Bは、中空の円筒形状に形成され、内部の空間に傾斜磁場を発生する。送信コイル12Cは、傾斜磁場コイル12Bの内側に配置されている。送信コイル12Cは、高周波磁場を発生する。
【0016】
このため、筒状部材12の内側(空間Q参照)には、磁場空間が形成される。
【0017】
受信コイル12Dは、傾斜磁場コイル12Bの内側に配置されている。受信コイル12Dは、磁気共鳴信号(以下、適宜「MR(Magnetic Resonance)信号」と称する)を受信する。受信コイル12Dは、高周波磁場の影響によってユーザPから放射されるMR信号を受信する。そして、受信コイル12Dは、受信したMR信号を受信部22へ出力する。なお、受信コイル12Dと送信コイル12Cを一体的に構成し、送受信コイルとしてもよい。
【0018】
制御部18は、シーケンス制御部18Aと、計算部18Bと、を含む。
【0019】
計算部18Bは、医用画像診断部11の全体制御や、MR画像の生成等を行う。計算部18Bは、シーケンス制御部18Aおよび駆動部16を制御する。
【0020】
シーケンス制御部18Aは、計算部18Bから送信されるシーケンス情報に基づいて、磁場アンプ20、受信部22、および送信部24を制御する。シーケンス情報は、撮影を行うための手順を定義した情報である。シーケンス情報には、静磁場磁石12Aに供給する電流の強さや電流を供給するタイミング、送信部24が送信コイル12Cに供給するRFパルスの強さやRF(Radio Frequency)パルスを印加するタイミング、受信部22がMR信号を検出するタイミング等が定義される。
【0021】
具体的には、シーケンス制御部18Aは、計算部18Bから受信したシーケンス情報に基づく制御信号を、磁場アンプ20、受信部22、および送信部24の各々へ送信する。
【0022】
磁場アンプ20は、シーケンス制御部18Aから送信される制御信号に従って、傾斜磁場コイル12Bに電力を供給する。送信部24は、シーケンス制御部18Aから送信される制御信号に従って、ラーモア周波数に対応するRFパルスを送信コイル12Cに送信する。受信部22は、シーケンス制御部18Aから送信される制御信号に従って、受信コイル12から出力されたMR信号に基づきMR信号データを生成する。具体的には、受信部22は、受信コイル12Dから出力されたMR信号をデジタル変換することによってMR信号データを生成し、生成したMR信号データを、シーケンス制御部18Aを介して計算部18Bへ送信する。計算部18Bは、MR信号データからMR画像を生成する。
【0023】
駆動部16は、寝台15を駆動し、天板14を、天板14のX軸方向および上下方向へ移動する。すなわち、駆動部16は、天板14を、筒状部材12の内側または外側へ移動する。これにより、天板14に載置されたユーザPは、筒状部材12の内側へと挿入、または内側から外側へと搬送される。なお、駆動部16は、後述する表示装置30に設けられた構成であってもよい。
【0024】
図2は、筒状部材12と天板14との位置関係を示す模式図である。
図2に示すように、筒状部材12は、中空の円筒状に形成されている。天板14の長手方向と、筒状部材12の長手方向と、は、X軸方向に一致する。天板14は、X軸方向に移動可能に設けられており、X軸方向の一端側から筒状部材12の内側へ挿入、または他端側から筒状部材12の外側へ搬送される。
【0025】
次に、表示装置30について説明する。
【0026】
図3は、天板14が筒状部材内12に侵入した際の表示装置30と、ユーザPとの関係を示す模式図である。
図3に示したように、表示装置30は、反射部材32と、表示部34と、制御部36と、保持部38と、を備える。本実施の形態では、表示部34は、投影部34Aと、表示面34Cを有する被投影部材34Bとを備える。
【0027】
保持部38は、被投影部材34Bと反射部材32とを天板14に固定する。投影部34Aと制御部36とは、情報が送受信可能なように有線または無線によって接続されている。制御部36は、表示対象の画像データを投影部34Aに送る。投影部34Aは、受信した画像データに基づく画像情報を含む光を被投影部材34Bへ向けて投影する。投影部34Aは、例えば、プロジェクタである。なお、投影部34Aと制御部36とを一体的に構成してもよい。
【0028】
被投影部材34Bは、投影部34Aから投影された光を表示面34Cに表示(投影)可能な部材であればよい。本実施の形態では、被投影部材34Bは、背面側から投影された画像を表面(反射部材32と対向する面)側の表示面34Cに表示する、リア投影スクリーンである場合を説明する。なお、被投影部材34Bは、リア投影スクリーンに限定されない。表示面34Cは、反射部材32の焦点R(
図3では図示省略)と反射面Tとの間に、該反射面Tに向かい合うように配置されている。なお、反射面Tに向かい合うように配置、とは、表示面34Cに表示された画像が反射面Tで反射可能に配置された状態を示す。このため、反射面Tと表示面34Cとは、互いに向かい合うように平行に設置された形態に限定されず、非平行に配置されていてもよい。
【0029】
被投影部材34Bの表示面34Cは、平面状であってもよいし、曲面状であってもよい。曲面状である場合、表示面34Cは、反射部材32から離れる方向に向かって突出した曲面状であることが好ましい。具体的には、表示面34Cは、ドーム形状であってもよい。また、表示面34Cが曲面状である場合、投影部34Aに設けられた投影レンズ(図示を省略)に補正レンズを更に備えた構成としてもよい。補正レンズは、投影部34Aから投影された光を、表示面34Cの形状に合わせて焦点を結ぶように補正可能なレンズが好ましい。このような補正レンズを用いることで、表示面34C全体でピントの合った画像を提示することができる。
【0030】
被投影部材34Bの表示面34Cの外形は限定されないが、筒状部材12の内壁の形状に沿った外形であり、且つ、天板14上へのユーザPの載置および天板14のX軸方向への移動を阻害しない外形であることが好ましい。また、被投影部材34BのZ軸方向の大きさは、被投影部材34BのZ軸方向の端部と筒状部材12の内壁との間に隙間が生じる程度の大きさであることが好ましい。
【0031】
なお、投影部34Aが投影する画像の投影領域Aは、被投影部材34Bにおける、少なくとも天板14のZ軸方向の中央部より反鉛直方向側に画像を投影可能な領域であればよい。
【0032】
また、投影部34Aは、被投影部材34Bの表示面34Cより大きい投影サイズの画像を、該表示面34Cへ投影してもよい。表示面34Cより大きい投影サイズの画像が表示面34Cへ投影されることで、筒状部材12の内壁にも画像の一部が投影されることとなる。このため、ユーザPの感じる閉塞感の軽減をより効果的に図ることができる。
【0033】
反射部材32は、保持部38によって天板14に固定されており、天板14の移動によって筒状部材12内に配される。本実施形態では、天板14を覆う部材が円筒状の筒状部材12である構成について説明するが、その構成に限定されない。天板14を覆う部材は、円状ではなく例えば矩形であってもよい。また、天板14を覆う部材は、反射部材32の外周をY−Z平面で360°覆う構成でなくてもよく、例えば2つの平面からなる部材であってもよい。また、天板14を覆う部材は、天板14が部材内に侵入する際の過程の少なくとも一部の期間、反射部材32を覆う構成であればよい。
【0034】
反射部材32は、表示面34Cに表示された光を反射する。反射部材32に、仮に平行光が入射した場合に反射部材32で反射した光は焦点Rに集光される。なお、表示面34Cから入射する光は平行光でなくてもよい。
【0035】
図4は、反射部材32の模式図である。
図4(A)に示すように、反射部材32の反射面Tに、仮に平行光L1が入射したとする。この場合、平行光L1は、反射面Tで反射し、その反射光L2は焦点Rに集光する。反射面Tは、このような光学特性を有する。なお、反射面Tは、反射部材32における、入射する平行光L1に対して交差する、向かい合う2面の内、平行光L1の入射側の一方の面(表面)であってもよいし、他方の面(裏面)であってもよい。
【0036】
反射部材32と表示部34とは、天板14上に横たわったユーザPの両眼の各々に対応する仮想的な2つの視点位置に対して、以下の位置関係を満たすように保持部38によって固定されている。保持部38は、以下の位置関係を満たすように、反射部材32と、表示部34(本実施の形態では被投影部材34B)と、を保持する。
【0037】
なお、仮想的な2つの視点位置とは、天板14上に横たわったユーザPの両眼の各々が位置すると想定される位置である。この2つの視点位置として、天板14上の三次元空間におけるユーザPの両眼(右眼と左眼)が位置すると想定される位置を、予め推定する。なお、ユーザPの両眼が位置すると想定される三次元空間における位置は、これらの両眼の各々に対応する2つの視点位置を一対として、1つの位置を予め推定してもよいし、互いに異なる複数の位置(すなわち、複数の位置座標からなる領域)を予め推定してもよい。
【0038】
反射部材32と表示部34とは、仮想的な2つの視点位置の各々が、第1領域B1に位置するように配置される。第1領域B1は、焦点Rと反射面Tとの間の領域である。詳細には、第1領域B1は、仮想二次元平面M1と、反射面Tと、の間の3次元空間である。仮想二次元平面M1は、焦点Rを通り且つ天板14のX軸方向に直交する、仮想的な二次元平面である。以下では、ユーザPの仮想的な2つの視点位置を、単に、2つの視点位置と称して説明する場合がある。
【0039】
なお、本実施の形態では、天板14のX軸方向と、反射部材32の光軸L3の光軸方向と、は一致するものとして説明する。
【0040】
なお、反射部材32と表示部34とは、2つの視点位置の各々が、第1領域B1内における第2領域B2内に位置するように配置されることが好ましい。第2領域B2は、第1領域B1内の領域であって、且つ、反射面Tの、天板14のY軸方向の一端から他端までの領域である。言い換えると、第2領域B2は、仮想二次元平面M1と、仮想二次元平面M2と、仮想二次元平面M3と、反射面Tと、の内側の三次元空間である。
【0041】
仮想二次元平面M2は、反射面TのY軸方向の一端をX軸方向に通る仮想的な二次元平面である。仮想二次元平面M3は、反射面TのY軸方向の他端をX軸方向に通る仮想的な二次元平面である。
【0042】
このため、この場合、反射面Tを、ZY平面(Z軸方向とY軸方向に沿った平面)に射影した領域内に、二つの視点位置をZY平面に射影したポイントが位置することとなる。
【0043】
また、反射部材32と表示部34とは、2つの視点位置の各々が、第1領域B1を、仮想二次元平面M6で分割した一方の領域と他方の領域とに分かれて位置するように配置されることが好ましい。仮想二次元平面M6は、天板14のY軸方向に対して直交し、且つ、反射面Tの光軸L3に沿った仮想の二次元平面である。言い換えると、反射部材32は、ユーザPの右眼の視点位置と左眼の視点位置とが、仮想二次元平面M6を境界として分割された2つの領域に分かれて位置するように、配置されることが好ましい。
【0044】
また、反射部材32と表示部34とは、2つの視点位置の各々が、第3領域B3内に位置するように配置されることが好ましい。第3領域B3は、第1領域B1内の領域である。第3領域B3は、仮想二次元平面M4と、仮想二次元平面M5と、反射面Tと、によって形成される領域である。仮想二次元平面M4および仮想二次元平面M5は、反射面Tにおける、天板14のY軸方向の両端部の各々と焦点Rとを結ぶ仮想的な二次元平面である。すなわち、反射部材32は、これらの二次元平面(仮想二次元平面M4および仮想二次元平面M5)と、反射面Tと、の内側の三次元空間である第3領域B3内に2つの視点位置が位置するように、配置されていることが好ましい。
【0045】
さらに、反射部材32と表示部34とは、天板14上に載置されたユーザPの正中面と、反射面Tの光軸L3と、が一致するように配置されることが好ましい。ユーザPの正中面は、具体的には、上記仮想的な2つの視点位置の中央を通る、天板14のX軸方向およびZ軸方向によるXZ平面である。
【0046】
このように、反射部材32と表示部34とは、天板14上に横たわったユーザPの両眼の各々に対応する仮想的な2つの視点位置に対して、上記位置関係を示すように配置され、天板14に固定されていることが好ましい。すなわち、保持部38は、上記位置関係を満たすように、反射部材32と表示部34とを保持することが好ましい。
【0047】
反射部材32は、上記の光学特性を有する部材であればよく、その具体的な構成は限定されない。例えば、反射部材32は、
図4(A)に示すように、反射面Tを表示面34Cからの光の入射方向凹面とする凹面鏡32Aである。また、反射部材32は、
図4(B)に示すように、フレネルミラー32Bであってもよい。また、反射部材32は、
図4(C)に示すように、フレネルレンズ32Cと、反射鏡32Dと、を含む構成であってもよい。なお、フレネルレンズ32Cと反射鏡32Dとの位置関係は、上記の光学的機能を実現可能な位置関係であればよく、
図4(C)に示す位置関係に限定されない。
【0048】
なお、反射部材32をより薄く且つ軽量の構成とする観点から、反射部材32には、フレネルミラー32Bを用いることが好ましい。
【0049】
ここでいうフレネルミラーとはフレネルレンズ上に反射膜を形成した反射鏡で、凹面鏡と同様の光学的を有する部材である。
【0050】
フレネルミラー32Bは、フレネルレンズの凹凸面側に、金属膜や誘電体多層膜を形成して作製する。例えば、アクリルやポリカーボネートなどの光学的に透明な樹脂材料をフレネルレンズとして用いることで軽量化が可能である。なお、フレネルレンズの構成材料は、透明材料に限定されない。フレネルミラー32Bが透明である場合、フレネル面を投影部34Cの反対側に向けてもよい。この場合には、フレネルミラー32Bの基材となるフレネルレンズは凸レンズとして作製すればよい。
【0051】
フレネルミラー32Bの厚みは、撓みを抑制しつつ且つ軽量化を図る観点から、2mm〜5mm程度が好ましい。フレネルミラー32Bの反射率は、例えば、70%以上であることが好ましい。
【0052】
また、フレネルミラー32Bは、金属材料面に、直接フレネル形状を加工することで作製してもよい。
【0053】
フレネルミラー32Bにおける、フレネルレンズ表面に形成する反射膜の材料は限定されない。但し、フレネルミラー32Bを備えた表示装置30を医用画像診断部11に搭載する場合には、磁場影響を抑制する観点から、反射膜には、100nm以下の厚みのアルミの蒸着膜を用いることが好ましい。また、反射膜には、誘電体多層膜(SiO
2やTiO
2、その他酸化物の積層膜)を用いることが好ましい。
【0054】
反射部材32の形状は限定しないが、筒状部材12の内壁の形状に沿った外形であり、且つ、天板14上へのユーザPの搭載および天板14のX軸方向への移動を阻害しない外形であることが好ましい。
【0055】
また、反射部材32のZ軸方向の大きさは、反射部材32と筒状部材12の内壁との間に隙間が生じる程度の大きさであることが好ましい。
【0056】
また、反射部材32のY軸方向の大きさは、筒状部材12の内径が例えば60cm〜70cmである場合、天板14上に仰向けに横たわったユーザPの視野角60°以上に相当する大きさであることが好ましい。反射部材32のY軸方向の大きさを、視野角60°以上に相当する大きさとすることで、筒状部材12内におけるユーザPの閉塞感を低減することができる。反射面TのX軸方向の大きさは、天板14上に横たわったユーザPの頭頂部から、目と鼻の間の位置までを少なくとも覆う程度の大きさであればよい。このサイズであれば、ユーザPの下方視野に、筒状部材12の内壁が入ることを抑制することができる。
【0057】
保持部38は、焦点Rと反射面Tとの間に、該反射面Tに表示面34Cが向かい合うように、被投影部材34Bと反射部材32とを固定して保持する。また、保持部38は、天板14に仰向けに横たわったユーザPが反射面Tを視認可能な位置および角度で、反射部材32と表示面34Cとを保持する。また、保持部38は、天板14上に横たわったユーザPの両眼の各々に対応する仮想的な2つの視点位置に対して、上記位置関係を示すように、反射部材32と表示部34とを保持する。
【0058】
本実施の形態では、保持部38は、天板14のX軸方向の両端部の内、先に筒状部材12へ挿入される側の端部(以下、ユーザPの頭部側端部と称する)に配置されている。すなわち、保持部38は、天板14におけるユーザPの頭部側端部に、反射部材32と表示面34Cとを保持する。なお、保持部38は、反射部材32の角度(Z軸方向に対する傾き)を調整する調整機構を更に備えた構成であってもよい。この場合、天板14に横たわったユーザPの目の位置に合わせて、反射部材32の角度を調整することができる。
【0059】
なお、医用画像診断部11が頭部診断時にユーザPの頭部に装着される頭部コイルを備えた構成の場合、頭部コイルが、反射部材32および表示面34Cを、後述する位置関係を満たすように保持してもよい。また、後述する位置関係を満たすように、保持部38が頭部コイルと反射部材32とを固定し、且つ、天板14が表示面34Cを保持してもよい。
【0060】
このため、反射部材32および被投影部材34Bは、天板14のX軸方向への移動に伴って移動して、筒状部材12の内側へと挿入、または、筒状部材12の外側へと搬送される。このため、駆動部16は、天板14を移動させることによって、投影部34Aと、被投影部材34Bおよび反射部材32と、の距離を変更する。
【0061】
なお、表示部34を、筒状部材12などの磁場空間の内部に配置すると、磁場の影響によって表示面34Cに表示される画像に乱れが生じる場合がある。このため、表示される画像の磁場空間の影響を抑制する観点から、表示部34を、投影部34Aと被投影部材34Bで構成し、投影部34Aを筒状部材12の外部に配置することが好ましい。
【0062】
なお、表示部34は、表示面34Cに画像を表示可能な部材であればよく、投影部34Aを含む構成に限定されない。表示部34は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)などであってもよい。
【0063】
図5は、本実施の形態における、表示部34の表示面34Cと反射面Tとの位置関係を示す模式図である。
図5に示すように、表示面34Cは、反射部材32の焦点Rと、反射面Tと、の間に配置されている。なお、反射部材32の反射面Tを凹面とする場合、表示面34Cは、焦点Rより、反射面T側に配置されている。
【0064】
このため、ユーザPが反射面Tを視認することで、ユーザPは、表示面34Cに表示された画像の正立虚像Dを視認することとなる。なお、正立虚像Dは、表示面34Cに表示された画像を拡大した正立虚像であることが好ましい。
【0065】
図6は、ユーザPを搭載した天板14が、筒状部材12の内側の奥まで挿入された状態を示す模式図である。
【0066】
図6に示すように、天板14のX軸方向のユーザPの頭部側端部には、保持部38(
図6では図示省略)によって、反射部材32および被投影部材34Bが上記位置関係を満たすように配置されている。天板14上に載ったユーザPの頭部の位置は、反射部材32を視認可能な位置となるように、調整されている。
【0067】
投影部34Aは、制御部36の制御によって、被投影部材34Bの表示面34Cに画像を投影する。本実施の形態では、投影部34Aは、被投影部材34Bの、反射部材32に対して反対側の面(投影部34A側の面)を表示面34Cとして、画像を投影する場合を説明する。なお、上述したように、反射部材32側の面を表示面34Cとしてもよい。
【0068】
このため、天板14上に載ったユーザPは、反射部材32の反射面Tを視認することによって、被投影部材34Bの表示面34Cに投影された画像の正立虚像Dを視認することとなる。
【0069】
そして、天板14が筒状部材12の内側に挿入されると、天板14の移動に伴って、反射部材32および被投影部材34Bもまた内側へ挿入される。投影部34Aは、制御部36の制御によって、被投影部材34Bの表示面34Cに画像を継続して投影する。
【0070】
このため、天板14が筒状部材12の外側に位置する状態、天板14の移動中、および天板14が筒状部材12の外側から内側へ挿入された後、の何れの状態においても、ユーザPは、反射部材32の反射面Tを視認することによって、被投影部材34Bの表示面34Cに投影された画像の正立虚像Dを視認することができる。すなわち、ユーザは、筒状部材12の内側においても、正立虚像Dを視認することができる。そして、正立虚像Dは、筒状部材12の内壁より遠方に結像されることから、ユーザPに対して圧迫感を与えることが軽減される。
【0071】
このため、表示装置30は、筒状部材12内においても、ユーザの負担軽減を図ることができる。
【0072】
ここで、正立虚像DがユーザP側に突出した凸状の画像であると、ユーザPに圧迫感を与える場合がある。正立虚像Dが凸状の画像として視認されるのは、両眼視差が発生するためである。
【0073】
このため、反射部材32の反射面Tの中央部の、ユーザPの両眼の各々に対応する仮想的な2つの視点位置から反射面Tを介して視認される正立虚像Dの輻輳角は、反射面Tの端部に比べて小さいことが好ましい。反射面Tの中央部の輻輳角が端部に比べて小さいと、正立虚像Dは、ユーザPから離れる方向に向かって突出した凹状の画像として視認される。
【0074】
反射部材32の反射面Tの中央部の輻輳角を端部に比べて小さくするためには、反射面Tを二次式で近似される非球面とする等の方法を用いればよい。
【0075】
また、反射部材32の反射面Tの光軸方向L3と、反射面Tに入射する光の入射方向と、は不一致であることが好ましい。
図7は、反射部材32の光軸方向L3と入射光L1との関係を示す模式図である。
【0076】
図7に示すように、反射部材32の反射面Tの光軸方向L3と、反射面Tに入射する入射光L1の入射方向と、は不一致であることが好ましい。
【0077】
反射面Tの光軸方向L3と入射光L1の入射方向とを不一致とするためには、保持部38が、該関係を満たすように被投影部材34Bおよび反射部材32を保持すればよい。また、反射部材32をフレネルミラー32Bまたはフレネルレンズ32Cを含む構成とする場合、フレネルミラー32Bまたはフレネルレンズ32Cの光学中心と、反射部材32における視点位置と、をずらした(偏心した)構成としてもよい。
【0078】
反射部材32における視点位置は、天板14上における推奨位置を通る垂線と、反射部材32と、の交点を、示す。推奨位置とは、天板14に仰向けで横たわったユーザPの目が位置すべき推奨の位置であり、予め設定すればよい。
【0079】
反射面Tの光軸方向L3と入射光L1の入射方向とが不一致であると、ユーザPに視認される正立虚像Dの画質向上を図ることができる。
【0080】
なおユーザPの閉塞感の軽減をより効果的に図るためには、正立虚像Dは、ユーザPの視点から1m以上離れた位置に視認されることが好ましい。ユーザPの視点から1m以上離れた位置に正立虚像Dを視認させるためには、反射面Tを観察するユーザPによる輻輳角を4°以下とすることが好ましい。
【0081】
輻輳角を4°以下とするためには、反射部材32の焦点距離を、300mm以上とすることが好ましい。
【0082】
なお、反射部材32の焦点距離とは、反射部材32を凹面鏡32A(
図4(A)参照)で構成する場合には、凹面鏡32Aの焦点距離を示し、反射部材32をフレネルミラー32B(
図4(B)参照)で構成する場合には、フレネルミラー32Bの焦点距離を示す。また、反射部材32をフレネルレンズ32Cと反射鏡32Dで構成する場合には(
図4(C)参照)、反射部材32の焦点距離とは、フレネルレンズ32Cの焦点距離を示す。
【0083】
なお、反射部材32の反射面Tは、例えば、二次式で近似される放物面である。
【0084】
具体的には、反射部材32の反射面Tは、式(1)で近似される放物面である。
【0086】
式(1)中、Rは、反射部材32の主たる凹面形状を決定する2次項の係数を示し、α1は、反射部材32の形状を補正する4次項の係数を示し、α2は、さらに反射部材32の形状を補正する6次項の係数を示す。
【0087】
なお、反射部材32としてフレネルミラー32Bを用いる場合には、必要な性能を持たせるために、六次式まで近似することが好ましい。また、反射部材32の結像性能を上げるために、より高次の式まで近似することも可能である。
【0088】
本実施の形態の表示装置30において、輻輳角を4°以下とし、正立虚像DがユーザPの視点から1m以上離れた位置に視認されるように調整する場合、例えば、正立虚像Dの曲面の曲率を497.534mmとし、正立虚像DとユーザPの視点との距離を1169mmとし、反射部材32の反射面Tと水平方向との成す角度を29.8°とし、偏心量を2.6mmとする。この構成とすることで、ユーザPによる輻輳角を3.4°とすることができる。この時、上記式(1)中のRの値は1268.487であり、α1の値は1.33×10
−9であり、α2の値は−2.44×10
−15である。
【0089】
以上説明したように、本実施の形態の表示装置30は、反射部材32と、表示部34と、を備える。反射部材32は、ユーザPが搭載される天板14に固定されている。反射部材32は、平行光が入射した際に反射光が焦点Rを有するような光学特性を有する、反射する反射面Tを有する。表示部34は、画像を表示する表示面34Cを有する。表示面34Cは、焦点Rと反射面Tとの間に該反射面Tに向かい合うように、天板14に固定されている。
【0090】
このため、反射面Tを視認することで、ユーザPは、表示面34Cに表示された画像の正立虚像Dを視認することができる。
【0091】
従って、本実施の形態の表示装置30は、ユーザPの閉塞感の軽減を図ることができる。
【0092】
また、反射部材32は、平行光が入射した際に反射光が焦点を有するような光学特性を有する。また、表示部34の表示面34Cは、反射部材32の焦点Rと、反射面Tと、の間に、該反射面Tに向かい合うように配置されている。このため、ユーザPが反射面Tを視認することで、ユーザPは、表示面34Cに表示された画像を拡大した正立虚像Dを視認することが出来る場合がある。
【0093】
この場合、本実施の形態の表示装置30は、表示部34に表示された画像より広視野の正立虚像Dを、ユーザPに対して提供することができる。
【0094】
ここで、ユーザPに筒状部材12の内壁を意識させないように画像を表示するための方法として、筒状部材12の内壁がユーザPによって視認されないように、被投影部材34Bと反射部材32との距離をより近づけることも考えられる。しかし、被投影部材34Bと反射部材32との距離を近づけるほど、ユーザPの頭部と被投影部材34Bとの距離も狭まることとなり、被投影部材34BによってユーザPに圧迫感を与える場合がある。
【0095】
一方、本実施の形態の表示装置30では、正立虚像DをユーザPに提供することができる。このため、表示装置30は、被投影部材34Bなどによる圧迫感を与えることなく、ユーザPの閉塞感の軽減を図ることができる。
【0096】
なお、本実施の形態では、表示装置30を、医用画像診断装置10に搭載した形態を一例として説明した。しかし、表示装置30は、医用画像診断部11に搭載する形態に限定されない。例えば、表示装置30を、各種の空間内に配置してもよい。この場合、表示装置30の反射部材32を、上述した条件を満たし、且つ該空間内に位置するユーザPによって視認可能な位置に配置すればよい。
【0097】
(第2の実施の形態)
図8は、本実施の形態の医用画像診断装置10Aの一例を示す模式図である。医用画像診断装置10Aは、医用画像診断部11と、表示装置31と、を備える。医用画像診断部11は、第1の実施の形態と同様である。
【0098】
図9は、天板14が筒状部材内12に侵入した際の表示装置31と、ユーザPとの関係を示す模式図である。表示装置31は、反射部材32と、表示部33と、を備える。表示部33は、投影部34Aと、被投影部材34Bと、調整部35と、制御部37と、を備える。
【0099】
投影部34Aおよび被投影部材34Bは、第1の実施の形態と同様である。また、投影部34Aおよび被投影部材34Bは、第1の実施の形態と同様に、天板14におけるユーザPの頭部側端部に、保持部38によって保持されている。なお、投影部34Aおよび被投影部材34Bの位置関係は、第1の実施の形態と同様である。
【0100】
調整部35は、投影部34Aから被投影部材34Bの投影される、画像の焦点および画像の投影サイズを変更する機構である。調整部35は、例えば、ズームレンズである。
【0101】
制御部37は、投影部34A、調整部35、および駆動部16に接続されている。制御部37は、表示対象の画像の画像データを投影部34Aへ送信する。また、制御部37は、調整部35へ、調整情報を送信する。投影部34Aは、受信した画像データの画像を表示面34Cへ投影する。調整部35は、制御部37から受信した調整情報に応じて、画像の焦点および投影サイズを調整する。
【0102】
制御部37は、取得部37A、および調整部37Bを含む。取得部37Aおよび調整部37Bの一部または全ては、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)などのハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。
【0103】
取得部37Aは、投影部34Aと、被投影部材34Bおよび反射部材32と、の距離Sを取得する。距離Sとは、投影部34Aの画像の光出射面と、被投影部材34Bの表示面34Cと、のX軸方向に沿った最短距離を示す。このX軸方向とは、投影部34Aから表示面34Cへ到る光のX軸方向を示す。
【0104】
第1の実施の形態で説明したように、駆動部16は、天板14を移動させることによって、投影部34Aと、被投影部材34Bおよび反射部材32と、の距離Sを変更する。取得部37Aは、例えば、駆動部16から、該距離Sを取得する。
【0105】
なお、取得部37Aは、図示を省略する操作部から距離Sを取得してもよい。この場合、操作部は、ユーザによる操作指示によって距離Sが入力されると、入力された距離Sを取得部37Aへ出力すればよい。
【0106】
なお、表示装置30に、距離Sを計測するセンサを別途設けた構成としてもよい。この場合、取得部37Aは、該センサから、距離Sを取得すればよい。
【0107】
調整部37Bは、取得部37Aが取得した距離Sに応じて、被投影部材34Bの表示面34Cに投影される画像の投影サイズ、画像の輝度、および画像の焦点、の少なくとも1つを、予め定めた投影条件を満たすように調整する。投影条件は、例えば、基準の投影サイズ、基準の輝度、および基準の画像焦点の少なくとも1つを含む。
【0108】
例えば、調整部37Bは、基準の輝度の画像が表示面34Cに投影されるように、投影部34Aへ送信する画像データの各画素の輝度を補正する。そして、制御部37は、補正後の画像データを投影部34Aへ送信する。
【0109】
具体的には、調整部37Bは、基準の輝度の画像が表示面34Cに投影されるように、例えば、距離Sが遠いほど輝度が高く、距離Sが近いほど輝度が低くなるように、画像データの各画素の輝度を補正する。そして、制御部37は、補正後の画像データを投影部34Aへ送信する。
【0110】
このため、表示面34Cには、距離Sに拘らず、一定の輝度(基準の輝度)の画像が投影されることとなる。
【0111】
また、例えば、調整部37Bは、距離Sに応じて、基準の投影サイズおよび基準の画像焦点の画像が表示面34Cに投影されるように、調整部35を調整する。このため、表示面34Cには、距離Sに拘らず、一定の投影サイズ(基準の投影サイズ)で、且つ、焦点の合った画像が投影される。
【0112】
図10は、本実施の形態の制御部37が実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0113】
まず、取得部37Aが、距離Sを取得する(ステップS100)。次に、調整部37Bが、ステップS100で取得した距離Sに応じて、予め定めた投影条件を満たすように調整するための調整量を算出する(ステップS102)。例えば、調整部37Bは、各画素の輝度の補正値、調整部35の調整量、などを算出する。
【0114】
次に、調整部37Bは、ステップS100で取得部37Aが取得した距離Sに応じて、被投影部材34Bの表示面34Cに投影される画像の投影サイズ、画像の輝度、および画像の焦点、の少なくとも1つを、予め定めた投影条件を満たすように調整する(ステップS104)。例えば、調整部37Bは、ステップS102で算出した調整量に応じて、画像データの各画素の輝度の補正や、調整部35へ送信する調整量の調整を行う。
【0115】
次に、制御部37は、補正後の画像データを表示部33へ出力すると共に、画像の投影を表示部33へ指示する(ステップS106)。ステップS106の処理によって、予め定めた投影条件を満たす画像が表示面34Cに投影される。そして、本ルーチンを終了する。
【0116】
以上説明したように、本実施の形態の表示装置31は、取得部37Aと、調整部37Bと、を備える。取得部37Aは、投影部34Aと、被投影部材34Bおよび反射部材32と、の距離Sを取得する。調整部37Bは、距離Sに応じて、被投影部材34Bの表示面34Cに投影される画像の投影サイズ、画像の輝度、および画像の焦点、の少なくとも1つを、予め定めた投影条件を満たすように調整する。
【0117】
従って、本実施の形態の表示装置31は、第1の実施の形態の効果に加えて更に、距離Sが変化した場合であっても、ユーザPに対して違和感無く正立虚像Dを提供することができる。
【0118】
次に、上記実施の形態の医用画像診断部11、表示装置30、および表示装置31のハードウェア構成を説明する。
図11は、上記実施の形態の医用画像診断部11、表示装置30、および表示装置31のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0119】
上記実施の形態の医用画像診断部11、表示装置30、および表示装置31は、CPU200、ROM(Read Only Memory)202、RAM(Random Access Memory)204、通信I/F(Interface)206、およびHDD(Hard Disk Drive)208を有する。CPU200、ROM202、RAM204、通信I/F206、およびHDD208は、バス210により相互に接続されており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0120】
上記実施の形態の医用画像診断部11、表示装置30、および表示装置31で実行される処理を実行するためのプログラムは、ROM202などに予め組み込んで提供される。
【0121】
なお、上記実施の形態の医用画像診断部11、表示装置30、および表示装置31で実行される処理を実行するためのプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フロッピー(登録商標)ディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供するように構成してもよい。
【0122】
また、上記実施の形態の医用画像診断部11、表示装置30、および表示装置31で実行される処理を実行するためのプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、上記実施の形態の医用画像診断部11、表示装置30、および表示装置31で実行される処理を実行するためのプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0123】
以上、本実施の形態を説明したが、上記実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。