【文献】
JUN WANG, et al.,The influence of silicon on the catalytic properties of Cu/SAPO-34 for NOx reduction by ammonia-SCR,APPLIED CATALYSIS. B. ENVIRONMENTAL,2012年10月25日,V127,P137-147
【文献】
ISHIHARA T, et al.,Copper Ion-Exchanged SAPO-34 as a Thermostable Catalyst for Selective Reduction of NO with C3H6,JOURNAL OF CATALYSIS,米国,ACADEMIC PRESS,1997年 7月 1日,V169 N1,P93-102
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記SAPO材料が、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、SAS、SAT、及びSAVから成る群から選択された構造型を有する、請求項1または2に記載の前記触媒材料。
CHA構造型を有する、金属交換され、気相アンモニウムで安定化された非ゼオライト分子篩材料を備える選択的な触媒還元触媒材料であって、前記金属が、Cu、Fe、Co、Ce、及びNiから成る群から選択される、前記選択的な触媒還元触媒材料。
前記分子篩が、230±30Hzの半値全幅を備える−75から−105ppmの周波数シフト範囲において大きなシリコン−29核磁気共鳴(NMR)ピークを有するSAPO材料である、請求項6に記載の前記触媒材料。
シリコン−29核磁気共鳴(NMR)ピークが、−75〜−105ppmの周波数シフト範囲内にあり、大きなピークが−90±1ppm(230±30Hzの半値全幅)に、及び肩部が−95±1ppm(300±50Hzの半値全幅)に存在するNMRスペクトルを呈するCu−SAPO−34材料。
ディーゼルエンジンと、還元剤を前記エンジンからの排ガス流に加える還元剤注入器と、から下流に配置された請求項10または11の前記触媒商品を備える排ガス処理システム。
酸素の存在下でガス流に含有される窒素酸化物の前記還元のためのプロセスであって、排ガス流をアンモニア及び請求項1〜8のいずれか一項に記載の前記触媒材料と接触させることを含む、前記プロセス。
【背景技術】
【0002】
分子篩、例えばゼオライトなどが、精製所における多数の化学反応や石油化学反応を触媒するために、及び触媒作用、吸着作用、分離、ならびにクロマトグラフィに広く使用されている。例えば、ゼオライトに関して、メタノールからオレフィンへの転換(MTO反応)と、酸素の存在下で例えばアンモニア、尿素または炭化水素などの還元剤を用いる窒素酸化物の選択的な触媒還元(SCR)と、を含む一定の反応を促進する際における合成と自然の両方のゼオライト及びそれらの使用は、当分野において周知である。ゼオライトは、ゼオライトの種類と、約3〜10オングストロームの直径の範囲のゼオライト格子に含まれる陽イオンの種類や量と、に依存する、かなり均一な細孔サイズを有する結晶材料である。八員環細孔開口及び二重六員環二次構築単位を有するゼオライト、特に、ケージ状構造を有するものが、近年、SCR触媒としての使用における興味が見い出されている。これらの特性を有する特定の種類のゼオライトは菱沸石(CHA)であり、その菱沸石は、それの3次元孔を通して到達可能な八員環細孔開口(約3.8オングストローム)を備える小型細孔ゼオライトである。ケージ状構造は、四員環による二重六員環構築単位の接続の結果として生じる。
【0003】
SCRプロセスにおいて利用される触媒は、理想的には、熱水条件下で、使用の広範囲の温度条件、例えば200℃〜600℃またはそれ以上にわたって、良好な触媒活性を保持することができるべきである。熱水条件は、実施中に、例えば煤煙フィルタ、微粒子の除去のために使用される排ガス処理システムの構成要素の再生の間などに、直面することが多い。
【0004】
還元剤としてアンモニアまたはアンモニア前駆体を使用する選択的な触媒還元は、ディーゼル車両の排気からの窒素酸化物の除去のための最も実行可能な技法であることが信じられている。典型的な排気において、窒素酸化物は、主に(90%を超える)NOから成り、それ故、SCR触媒は、窒素と水へのNO及びNH
3の転換を好む。アンモニアSCRプロセスの自動車用途のための触媒を開発する際の2つの主な課題は、200℃及びそれ以上からの低温及び500℃を上回る温度についての触媒の熱水安定性の改良を含む、SCR活性のための広範な動作窓を提供することである。本明細書において使用される際、熱水安定性は、熱水経時化の前の材料のNO
x転換能力が少なくとも85%であるような保持のための好みを伴う、NO
xのSCRを触媒するための材料の機能の保持のことを言う。
【0005】
数ある中でも、鉄促進及び銅促進ゼオライト触媒を含む、金属促進ゼオライト触媒であって、ここで、例えば、金属が、アンモニアを用いる窒素酸化物の選択的な触媒還元のために、イオン交換によって導入される、金属促進ゼオライト触媒が知られている。鉄促進ゼオライトベータは、アンモニアを用いる窒素酸化物の選択的な還元のための効果的な触媒となっている。不運にも、厳しい熱水条件下で、例えば500℃を超える温度でのガス排気からのNO
xの還元などで、例えばCu及びFeバージョンのZSM−5ならびにベータなどの多くの金属促進ゼオライトの活性が、低下し始めることが分かっている。活性におけるこの低下は、例えば、脱アルミニウムによる及びゼオライト内の金属含有触媒部位の結果として生じる損失などによる、ゼオライトの不安定化に起因するものであると信じられている。
【0006】
NO
x還元の全体活性を維持するために、鉄促進ゼオライト触媒の増加されたレベルのウォッシュコート荷重が、提供される必要がある。ゼオライト触媒のレベルが、十分なNO
x除去をもたらすように増加される際、触媒の費用が上がるにつれてNO
x除去のためのプロセスの費用効率において明らかな低下がある。
【0007】
上記の考察に起因して、既存のゼオライト材料を超えて改良される低温SCR活性及び/または改良される熱水耐久性を提供する材料、例えば、少なくとも約650℃及びそれ以上まで、例えば約700℃〜約800℃の範囲において及び約900℃までの温度において安定である触媒材料を準備する要望がある。その上、ディーゼルエンジンは一時的な条件下で動作するので、低くても200℃から約600℃までの、広い温度範囲にわたって、高性能を呈する材料を提供する要望がある。それ故、既存の技術は、高温性能をもたらす一方、熱水安定性と組み合わされる主としてNOの供給において低温性能を提供することができる材料についての必要性がある。低温性能は、低温始動や低いエンジン負荷条件に重要である。
【0008】
シリコアルミノリン酸塩(SAPO)材料は、NO
xのSCRについていくらかの関心を集めているが、これらの材料の1つの限定は、これらの材料が、100℃を下回る温度で湿ったまたは湿潤環境に露出されるときに不安定になり得ることである。それ故、現在の政府の(例えば、Euro 6)NO
x規制に合うNO
xの優れた低温SCRを提供することができる触媒材料を提供することが望ましいであろう。更に、低温における湿潤条件下で広範囲な失活の傾向がないSCR触媒を提供することが望ましいであろう。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明のいくつかの例示的な実施形態を記載する前に、発明は、以下の記載において規定される構造またはプロセスステップの詳細に限定されないことが理解されることになる。発明は、他の実施形態が可能であり、種々の手法で実施されるか実行されることが可能である。
【0025】
この開示において使用される用語に関して、以下の定義が提供される。
【0026】
本明細書において使用される際、用語「SAPO材料」は、シリコ−アルミノ−リン酸塩分子篩のことを言い、それは、多孔質結晶分子篩であり、シリコンが、アルミノリン酸塩骨格に置換される。
【0027】
本明細書において使用される際、用語「合成されたままの」は、SAPO材料、商業的供給源から受け取られる及び/または従来の合成技法に従って準備される、例えばSAPO−34材料のことを言う。合成されたままのSAPO材料は、安定化しておらず、また、焼成及び水分への露出後、骨格の一部は加水分解する。
【0028】
本明細書において使用される際、用語「分子篩」は、概ね四面体型の部位を含有する及び細孔分布を有する酸素イオンの広範囲な3次元網に基づく材料のことを言う。ゼオライトは、シリコン及びアルミニウムを含む、分子篩の特定の実施例である。本明細書において使用される際、用語「触媒」及び「触媒種」は、反応を促進する材料のことを言う。
【0029】
本明細書において使用される際、用語「基材」は、典型的には触媒的材料の微粒子を含有するウォッシュコートの形態で、触媒材料がその上に置かれる一体式の材料のことを言う。ウォッシュコートは、液体溶媒における触媒的材料の微粒子の特定の固形容量(例えば、30〜90重量%)を含有するスラリーを準備することによって形成され、それは、次いで、基材の上にコートされて、ウォッシュコート層を提供するために乾燥される。
【0030】
本明細書において使用される際、用語「ウォッシュコート」は、処理されるガス流の通過を許容するのに十分な多孔性である、例えばハニカム型のキャリア部材などの、基材キャリア材料にスラリーとして塗布される触媒材料または他の材料の薄い接着性コーティングの当分野におけるそれの通常の意味を有する。
【0031】
「触媒商品」は、要望された反応を促進するために使用される要素のことを言う。例えば、触媒商品は、基材上に触媒材料を含有するウォッシュコートを含んでもよい。「触媒材料」または「触媒的材料」は、反応を促進する組成物、例えば、還元剤の存在下で窒素酸化物の選択的な触媒還元を促進する銅などの促進剤金属と交換されるかその促進剤金属を含有するSAPO材料のことを言う。
【0032】
Si(4Al)部位から本質的に成る及び実質的にSi(0Al)部位が無い複数の置換部位を備える金属交換されたSAPO材料を備えるSCR触媒材料が、提供される。本明細書において使用される際、「実質的にSi(0Al)部位が無い」は、SCR触媒材料が、促進剤金属と交換される気相アンモニウムで安定化されたSAPO材料であることを言う。金属は、Cu、Fe、Co、Ce、及びNiから選択され得る。発明の態様は、金属交換されたSAPO材料、それの準備のための方法、金属交換されたSAPO材料を含む触媒商品、排ガスシステム、及びそのような金属交換されたSAPO材料を使用して排ガスから汚染物質を減らす方法に関する。
【0033】
1以上の実施形態において、SAPO材料が、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、SAS、SAT、及びSAVから成る群から選択された構造型を有する。1以上の実施形態において、SAPO材料が、CHA構造型を有する。SAPO材料は、SAPO−5、SAPO−11、SAPO−18、SAPO−34、SAPO−37、SAPO−44、SAPO−47から選択され得る。1以上の実施形態において、SAPO材料が、SAPO−34、SAPO−44、及びSAPO−47から成る群から選択される。ある特定の実施形態において、SAPO材料が、SAPO−34を含む。
【0034】
SAPO材料、例えばSAPO−34の従来の合成では、アンモニウム交換が、水相において行われる。しかしながら、水分への露出は、SAPO材料を非活性化し得る。従って、シリコアルミノリン酸塩分子篩は、それらの焼成された形態に保たれないはずである。それ故、1以上の実施形態において、水分との接触、及びそれ故に失活が、気相におけるその場のアンモニウム交換によって回避され得る。
【0035】
例えばSAPO材料内に存在するものなどの、アルミノリン酸塩網において、シリコンはリンと置換して、単離した酸部位[Si(4Al)]を生じさせる。周囲空気下でさえも、水は、脱ケイ酸を結果としてもたらす段階的な手法で酸部位を攻撃する。初期段階は、水分子の吸着及びSiOAl結合の1つの後続の加水分解である。更なる吸着及びSiOAl結合の加水分解が起こる。SAPO材料が加水分解される際、材料の失活が起こる。
【0036】
発明の態様は、CHA構造型を有する金属交換され、気相アンモニウムで安定化された非ゼオライト分子篩材料を備える選択的な触媒還元触媒材料に関するものであり、金属が、Cu、Fe、Co、Ce、及びNiから成る群から選択される。1以上の実施形態において、分子篩が、−75〜−105ppmの周波数シフト範囲においてシリコン−29核磁気共鳴(NMR)ピークを有するSAPO材料である。典型的には、大きなピークが約−90±1ppm(230±30Hzの半値全幅)において、及び肩部が−95±1ppm(300±50Hzの半値全幅)において、シリコン−29NMRスペクトル内に存在する。
【0037】
発明の特定の実施形態は、
図1に示されるようなNMRスペクトルを呈するCu−SAPO−34材料に関する。
図1に例示されるように、シリコン−29核磁気共鳴(NMR)ピークが、−75〜−105ppmの周波数シフト範囲内にあり、典型的には、大きなピークが約−90±1ppm(230±30Hzの半値全幅)において、及び肩部が−95±1ppm(300±50Hzの半値全幅)において、存在する。
【0038】
合成されたままのSAPO−34材料において、シリコン−29核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、大部分は単離した酸部位の存在を示す、Si(4Al)種によって多数を占められる。
図2A〜2Cを参照にすると、合成されたままのSAPO−34が焼成されて水分に露出されると、水は、酸部位を攻撃して、脱ケイ酸を結果としてもたらす。Si(3Al)−OH及びSi(2Al)−OH
2の段階的な形成がある(
図2B)。シリコン−29NMRスペクトルは、材料の部分的な加水分解が起こったことを示す。NMRデータはまた、1年後でさえも、それの焼成されて水和された状態にある合成されたままのSAPO−34が、スペクトル特徴を保持することも示す(
図2Bを参照)。なお更に、水和されたサンプルが乾燥されるとき、水酸基は、追加結合を形成するように縮合して、Si(3Al)、Si(2Al)、Si(1Al)、及び、最終的に、Si(0Al)を形成する(
図2Cを参照)。理論によって束縛されることを意図せずに、100℃を超える温度でのSCRにおけるCu−SAPO−34についての文献に報告される活性の損失が、不可逆的(及び繰り返しの)加水分解ならびに後続の縮合に起因するものであり、不活性骨格を生じることが考えられる。
【0039】
安定化されたSAPO材料を生産するために、合成されたままのSAPO材料が、その場の気相アンモニウム安定化プロセスにさらされる。合成されたままのSAPO材料、例えば、SAPO−34は、まず、新しく焼成されて、サンプルが、次いで、冷却される。不活性ガス内の低濃度の乾燥アンモニアは、飽和まで新しく焼成された触媒床/触媒前駆体を通過される。気相を通して生成された、今や安定したNH
4−SAPO材料、例えば、NH
4−SAPO−34は、疎水性である。その材料は、次いで、イオン交換されて、安定化された金属促進SAPO材料、例えば、安定化されたCu−SAPO−34に転換される。
【0040】
安定化され金属交換されたSAPO材料は、Si(4Al)部位から本質的に成る及び実質的にSi(0Al)部位が無い複数の置換部位を備える。金属は、Cu、Fe、Co、Ce、及びNiから選択され得る。1以上の実施形態において、金属がCuである。
【0041】
本明細書において使用される際、用語「置換部位」は、シリコンがリンと置換する骨格における部位のことを言う。置換部位は、マジック角スピニング(MAS)シリコン−29NMRによって測定され得る。NMRは、原子レベルで固体の局所的な秩序(または無秩序)を決定する。シリコン−29NMRは、他の物理的方法によって容易に到達できない構造上の特徴のプローブとして使用され得る。例えば、ケイ酸塩及びゼオライトの情報は、シリコン−29化学シフトから取得され得る。化学シフトは、元素、例えばAl、Ti、Ga、Hなどが骨格ケイ酸塩を置換するときに5〜10ppmだけ減少して、それ故、それは、次に最も近い近隣上に情報を提供することができる。例えば、合成されたままのSAPO−34材料の場合、シリコン−29NMRは、いくつかのシリカ島状物(すなわち、Si(0Al)部位)の存在を示す−95ppm〜−110ppmの範囲におけるいくつかの小さなピークと共に、約−90±1ppmにおけるSi(4Al)の鋭いピークを生成することが知られている。シリカ−29NMRは、加水分解されたSAPO−34材料内でシリカ島状物を特定するために使用され得る。
【0042】
SAPO材料の従来の合成
SAPO材料の従来の合成として呼ばれ得るものにおいて、反応混合物が、水内で水和されたアルミナ酸化物(擬ベーマイト相)の混合物とリン酸(H
3PO
4)を組み合わせることによって形成される。この混合物にモルホリンの水溶液が加えられ、その混合物は、均質になるまで撹拌される。次いで、30重量%のSiO
2の水溶液が加えられ、その混合物は、均質になるまで撹拌される。ゲルは、8〜48時間の期間について100〜200℃の温度で熱水的に処理される。結晶化された材料は冷却され、ろ過され、次いで、乾燥されて、結晶性の合成されたままのSAPO材料を提供する。
【0043】
合成されたままのSAPO材料は、焼成されて、H型(プロトン型)の直接形成を結果としてもたらす。触媒のプロトン型は、水性の硝酸アンモニウム内で懸濁され、次いで、ろ過され、乾燥され、NH
4−SAPO材料を形成する。NH
4−SAPO材料は、次いで、水性の酢酸銅(または類似の金属塩)を使用してイオン交換されて、金属促進SAPO材料、例えば、Cu−SAPO−34を生産する。
【0044】
発明の実施形態に係るSAPO材料の合成
1以上の実施形態によれば、Si(4Al)部位から本質的に成る及び実質的にSi(0Al)部位が無い複数の置換部位を備える金属交換されたSAPO材料を備える選択的な触媒還元触媒を備える選択的な触媒還元触媒商品の合成のための方法が、提供される。
【0045】
一般に、水分との接触は回避され得、アンモニウムが、テンプレートの除去の直後に、合成されたままのSAPO−34に組み込まれ得る。典型的には、合成されたままのSAPO−34(約0.5〜1g)が、閉じられた反応器内に置かれる。温度は、1時間にわたって100℃まで上昇させて、2時間その温度に保たれる。温度は、次いで、2時間にわたって540℃に上げられ、6時間その温度に保たれて、合成されたままのSAPO−34を焼成して、テンプレートを除去する。反応器は、120℃に冷却されて、不活性ガス、典型的にはヘリウムと混合される、非常に低い濃度、例えば、約1〜約5%の範囲内の濃度の乾燥アンモニアが、飽和まで新しく焼成された触媒床/触媒前駆体を通過される。反応器は、次いで、室温に冷却される。結果として生じる安定化されたNH
4−SAPO−34は、水性の酢酸銅溶液(または類似の金属塩)を使用してイオン交換され、それは、次いで、ろ過されて、洗浄されて、安定化されたCu−SAPO−34を取得する。
【0046】
図3に示されるように、安定化されたNH
4−SAPO−34材料のシリコン−29NMRスペクトルは、局所構造の完全性が保存されることを示す。ピークの広がりは、骨格シリコン内の窒素原子の相互作用に起因する。それ故、安定化されたNH
4−SAPO−34は、加水分解の傾向がなく、高温においてでさえも、水相において、金属塩、例えば酢酸銅と容易に交換され得る。
【0047】
促進剤金属の重量%
一般に、促進剤金属は、触媒材料(SAPO及び促進剤金属)の約0.1〜20重量%の量で、より具体的には約1〜10重量%で、より具体的には2〜8重量%、更により具体的には2〜5重量%の量で、存在し得る。1以上の実施形態において、促進剤金属の量は、揮発性物質が無いことに基づいて報告される、少なくとも約2重量%、更により特定の実施形態では、少なくとも約2.5重量%である。1以上の実施形態において、促進剤金属の量は約4.3%である。特定の実施形態における促進剤金属は、Cu、Feまたはそれらの組合せである。
【0048】
金属−SAPOを形成するための促進剤金属交換
銅または別の金属が、アルカリ金属またはNH
4SAPO材料にイオン交換される。特定の実施形態において、銅が、NH
4−SAPO−34にイオン交換されて、Cu−SAPO−34を形成する。酢酸銅が使用されるとき、銅イオン交換において使用される液体銅溶液の銅濃度は、特定の実施形態において、約0.01から約0.4モルまでの範囲に、より具体的には約0.05から約0.3モルまでの範囲に、なおより具体的には約0.1から約0.25モルまでの範囲に、なおより具体的には約0.125から約0.25モルまでの範囲に、なおより具体的には約0.15から約0.225モルまでの範囲に、ならびに、なおより具体的には約0.2からの範囲にある。
【0049】
1以上の実施形態によれば、SAPO材料、例えばSAPO−34及び交換された金属を含む選択的な触媒還元触媒材料を安定化するためのプロセスが提供される。プロセスが、SAPO材料を
気相アンモニウムに暴露して、金属塩とSAPO材料をイオン交換して、安定化されたSAPO材料を提供することを含む。1以上の実施形態において、金属塩の金属が、Ni、Co、Ce、Fe、及びCuから選択される。ある特定の実施形態において、金属が、Cuを含む。1以上の実施形態において、SAPO材料が、SAPO−34を含む。
【0050】
1以上の実施形態において、触媒材料が、基材上に配置されて、触媒商品を提供する。基材は、典型的には触媒を準備するために使用される材料のいずれかであり得、ハニカム構造を有するセラミックまたは金属を一般に含むことになる。任意の適切な基材、例えば、通路がそこを通る流体流動に対して開いているように、基材の入口または出口面から通ってそこに延びる細い、平行なガス流路を有する種類の一体式の基材などが、利用されてもよい。通路であって、それらの流体入口からそれらの流体出口まで本質的に直線の経路である、通路は、壁によって定義され、その壁上に触媒的材料が、通路を通って流れるガスが触媒的材料に接触するように、ウォッシュコートとしてコートされる。一体式の基材の流路は、薄い壁のチャネルであり、それは、任意の適切な断面形状及びサイズ、例えば、台形、矩形、正方形、正弦波形、六角形、楕円形、円形などのものであり得る。そのような構造は、断面の平方インチ毎に約60から約900までまたはそれ以上のガス入口開口(すなわち、セル)を含有し得る。
【0051】
セラミック基材は、任意の適切な耐火性材料、例えば、コージライト、コージライト−α−アルミナ、シリコン窒化物、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ−シリカ−マグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、葉長石、α−アルミナ、アルミノケイ酸塩及び同様のものから作られ得る。本発明の実施形態の触媒キャリアに有用である基材はまた、実際は金属製であり得、1以上の金属または金属合金から成り得る。金属製基材は、様々な形状、例えば、ペレット、波形シートまたは一体式の形態などで、利用され得る。金属製基材の特定の例が、耐熱性、卑金属合金、特に、それにおいて鉄が相当な要素または主要な構成要素であるものを含む。
【0052】
基材はまた、壁流フィルタ基材であり得、ここで、チャネルは交互にブロックされ、ガス流が、一方向(入口方向)からチャネルに入り、チャネル壁を通って流れて、他の方向(出口方向)からチャネルから出ることを可能にする。SCR触媒材料は、流通式または壁流式フィルタ上にコートされ得る。壁流基材が利用される場合、その結果としてもたらされるシステムは、ガス汚染物質と共に粒子状物質を除去することができることになる。壁流フィルタ基材は、当分野において普通に知られる材料、例えばコージライト、チタン酸アルミニウム、または炭化ケイ素などから作られ得る。
【0053】
一般に、Si(4Al)部位から本質的に成る及び実質的にSi(0Al)部位が無い複数の置換部位を備える金属交換されたSAPO材料を備える選択的な触媒還元触媒は、良好な低温NO
x転換活性(200℃で50%より大きなNO
x転換)と良好な高温NO
x転換活性(450℃で70%より大きなNO
x転換)の両方を呈するべきである。NO
x活性は、80,000h
−1の体積をベースとする空間速度で、500ppmのNO、500ppmのNH
3、10%のO
2、5%のH
2O、バランスのN
2のガス混合物において、最大NH
3スリップ条件における定常状態条件下で、測定される。
【0054】
1以上の実施形態において、選択的な触媒還元触媒が、Si(4Al)部位から本質的に成る及び実質的にSi(0Al)部位が無い複数の置換部位を備える金属交換されたSAPO材料を備える。1以上の実施形態において、触媒は、実質的にSi(0Al)部位が無い。本明細書において使用される際、文言「実質的にSi(0Al)部位が無い」は、触媒に意図的に加えられるSi(0Al)部位が無いこと、及び触媒内に約5±1%よりも概ね少ないSi(0Al)部位があることを意味する。しかしながら、Si(0Al)部位の量は、シリコン含有量に依存する。10重量%より多いSiO
2を含有する触媒の場合、Si(0Al)部位の量は、5±1%よりも少ない。より低いシリコン含有量、例えば、10%より少ないSiO
2を有する触媒の場合、Si(0Al)部位の量は、1±1%よりも少ない。1以上の実施形態において、触媒内に1%よりも少ないSi(0Al)部位が存在する。1以上の実施形態において、触媒内にSi(0Al)部位が全く存在しない。理論によって束縛されることを意図せずに、安定化されたSAPO材料の安定性の増加が、外来のSi(0Al)部位の形成の不足に起因することが考えられる。
【0055】
SCR活性
特定の実施形態において、触媒材料及び触媒商品は、80000h
−1のガスの1時間毎の空間速度で測定される少なくとも50%の200℃における経時NO
x転換を呈する。特定の実施形態において、触媒材料及び触媒商品は、80000h
−1のガスの1時間毎の空間速度で測定される少なくとも70%の450℃における経時NO
x転換を呈する。より具体的には、経時NO
x転換は、500ppmのNO、500ppmのNH
3、10%のO
2、5%のH
2O、バランスのN
2のガス混合物において、最大NH
3スリップ条件における定常状態条件下で、80000h
−1のガスの1時間毎の体積ベースの空間速度で測定される、200℃で少なくとも55%、450℃で少なくとも75%であり、更により具体的には、経時NO
x転換は、200℃で少なくとも60%、450℃で少なくとも80%である。コアは、850℃で6時間、4,000h
−1の空間速度で、10%のH
2O、10%のO
2、バランスのN
2を含有するガス流動においてチューブ炉内で熱水的に経時化させた。SCR活性測定は、文献、例えば国際特許公開第2008/106519号において実証されている。
【0056】
NO
xを減らす方法
発明の実施形態はまた、窒素酸化物(NO
x)を選択的に減らすための方法であって、窒素酸化物(NO
x)を含有するガス流、例えば、産業プロセスまたは動作において形成された排ガスであって、特定の実施形態においてアンモニア及び/または尿素も含有する排ガスが、発明の実施形態に係るSi(4Al)部位から本質的に成る及び実質的にSi(0Al)部位が無い複数の置換部位を備える金属交換されたSAPO材料を備える選択的な触媒還元触媒を含有する組成物あるいは選択的な触媒還元触媒商品と接触される、方法に関するものである。
【0057】
用語、窒素酸化物、NO
xは、発明の実施形態の文脈において使用される際、窒素酸化物、特に一酸化二窒素(N
2O)、一酸化窒素(NO)、三酸化二窒素(N
2O
3)、二酸化窒素(NO
2)、四酸化二窒素(N
2O
4)、五酸化二窒素(N
2O
5)、過酸化窒素(NO
3)を意味する。
【0058】
発明の実施形態に係るSi(4Al)部位から本質的に成る及び実質的にSi(0Al)部位が無い複数の置換部位を備える金属交換されたSAPO材料を備える選択的な触媒還元触媒を含有する組成物または触媒商品を使用して減らされる窒素酸化物は、任意のプロセスによって、例えば排ガス流として、取得され得る。数ある中でも、アジピン酸、硝酸、ヒドロキシルアミン誘導体、カプロラクタム、グリオキサル、メチル−グリオキサル、グリオキシル酸を生産するためのプロセスにおいて、または窒素材料を燃やすためのプロセスにおいて、取得されるような排ガス流が、言及され得る。
【0059】
特定の実施形態において、Si(4Al)部位から本質的に成る及び実質的にSi(0Al)部位が無い複数の置換部位を備える金属交換されたSAPO材料を備える選択的な触媒還元触媒を含有する組成物または触媒商品が、内燃エンジン、特にディーゼルエンジンの排ガスからの窒素酸化物(NO
x)の除去のために使用され、そのエンジンは、化学量的な燃焼に要求されるものを超える空気での燃焼条件において、すなわち、希薄条件において、動作する。
【0060】
従って、発明の実施形態はまた、化学量的な燃焼に要求されるものを超える空気での燃焼条件で、すなわち、希薄条件において、動作する、内燃エンジン、特にディーゼルエンジンの排ガスから窒素酸化物(NO
x)を除去するための方法であって、発明の実施形態に係るSi(4Al)部位から本質的に成る及び実質的にSi(0Al)部位が無い複数の置換部位を備える金属交換されたSAPO材料を備える選択的な触媒還元触媒を含有する組成物または触媒商品が、利用される、方法に関する。
【0061】
排ガス処理システム
発明の実施形態は、還元剤、例えばアンモニア、尿素及び/または炭化水素、ならびに特定の実施形態において、アンモニア及び/または尿素などを任意選択的に含有する排ガス流と、基材上に配置される、Si(4Al)部位から本質的に成る及び実質的にSi(0Al)部位が無い複数の置換部位を備える金属交換されたSAPO材料を備える選択的な触媒還元触媒を含有する選択的な触媒還元触媒商品と、第2の排ガス処理構成要素、例えば、煤煙フィルタ及びディーゼル酸化触媒と、を備える排ガス処理システムに関する。
【0062】
触媒されるか触媒されない煤煙フィルタは、該触媒商品の上流または下流にあり得る。特定の実施形態におけるディーゼル酸化触媒は、該触媒商品の上流に位置する。特定の実施形態において、該ディーゼル酸化触媒及び該触媒される煤煙フィルタは、該触媒商品から上流にある。更に特定の実施形態において、システムが、順番に、ディーゼル酸化触媒、(触媒されるか触媒されない)煤煙フィルタ及び触媒商品(SCR触媒商品)を備える。還元剤をシステムに追加するための還元剤注入器は、典型的には、SCR触媒商品のすぐ上流に位置付けられる。当分野において既知のように、ディーゼル酸化触媒が、流通式基材上のウォッシュコートとしてアルミナなどの耐熱性金属酸化物のキャリア上に、白金族金属、例えば白金、パラジウム、ロジウムまたはそれらの組合せなどを含む。煤煙フィルタは、典型的には、壁流フィルタであり、触媒された煤煙フィルタが、壁流フィルタの壁上に耐熱性金属酸化物及び白金族金属のウォッシュコートを備える。
【0063】
特定の実施形態において、排気は、ディーゼルエンジンから排気システムにおける下流の位置まで運ばれて、より特定の実施形態ではNO
xを含有して、ここで、還元剤が加えられ、加えられた還元剤を伴う排気流は、触媒商品に運ばれる。
【0064】
例えば、触媒された煤煙フィルタ、ディーゼル酸化触媒及び還元剤は、国際特許公開第2008/106519号に記載されており、それは、参照によって組み込まれる。特定の実施形態において、煤煙フィルタが、壁流フィルタ基材を含み、ここで、チャネルは、交互にブロックされて、ガス流が一方向(入口方向)からチャネルに入って、チャネル壁を通って流れ、他の方向(出口方向)からチャネルから出ることを可能にする。
【0065】
アンモニア酸化触媒(AMOX)は、システムから任意のスリップしたアンモニアを除去するために触媒商品の下流に提供されてもよい。特定の実施形態において、AMOX触媒が、白金族金属、例えば白金、パラジウム、ロジウムまたはそれらの組合せなどを含んでもよい。より特定の実施形態において、AMOX触媒が、Si(4Al)部位から本質的に成る及び実質的にSi(0Al)部位が無い複数の置換部位を備える金属交換されたSAPO材料を備える選択的な触媒還元触媒を含有するウォッシュコートを含むことができる。
【0066】
そのようなAMOX触媒は、SCR触媒を含む排ガス処理システムにおいて有用である。それの内容全体が、参照によって本明細書に組み込まれる、同一出願人に譲渡された米国特許第5,516,497号において記述されるように、酸素、窒素酸化物及びアンモニアを含有するガス流が、第1及び第2の触媒を順次に通過され得、第1の触媒が、窒素酸化物の還元を好み、第2の触媒が、超過アンモニアの酸化または他の分解を好む。米国特許第5,516,497号に記載されるように、第1の触媒が、ゼオライトを備えるSCR触媒であり得、第2の触媒が、ゼオライトを備えるAMOX触媒であり得る。
【0067】
本明細書において記述される材料や方法を記載する文脈における(特に、以下の特許請求の範囲における文脈における)用語「a」及び「an」ならびに「the」と類似の指示物の使用は、本明細書において別段指示されない限りまたは文脈によって明確に否定されない限り、単数と複数の両方を包含することが意図されることになる。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段指示されない限り、その範囲内にある各別個の値を個別に参照にする省略方法として役立つことが単に意図され、各別個の値は、それが本明細書に個別に列挙されるかのように明細書に組み込まれる。本明細書に記載された全ての方法は、本明細書において別段指示されない限りまたは文脈によって別段明確に否定されない限り、任意の適切な順序で実行され得る。任意の及び全ての例の使用、または本明細書において提供される例示的な言い回し(例えば、「例えば〜など」)は、単に、材料や方法をより良く明らかにすることが意図されるものであり、別段主張されない限り、範囲上の限定をもたらすものではない。明細書における言い回しは、開示された材料や方法の実施に必須であるとして、任意の特許請求されない要素を示すように解釈されるべきではない。
【0068】
発明は、ここで、下記の実施例を参照にして記載される。発明のいくつかの例示的な実施形態を記載する前に、発明は、以下の記載において規定される構造またはプロセスステップの詳細に限定されないことが理解されることになる。発明は、他の実施形態が可能であり、種々の手法で実施されるか実行されることが可能である。
【0069】
実施例
実施例1−合成されたままのSAPO−34の準備
SAPO−34を1.0 Al
2O
3:0.85 P
2O
5:0.60 SiO
2:3.0 R:32 H
2Oのゲル組成物から準備した。反応混合物を45kgの脱イオン水と18.76kgのリン酸を混合することによって準備した。これに、45分にわたって酸性溶液に10.80kgのCatapal Bアルミナを加えることを続けた。アルミナの温浸は、集中的な撹拌で2時間続けた。次いで、22.74kgのモルホリンを60分間にわたって加えた。追加の0.3kgの水をこの段階で使用した。モルホリンを加えた後、温度は約46℃まで上がった。スラリーは、次の追加の前に約28℃まで冷却させた。次いで、7.76kgのLudox AS 40コロイダルシリカ、ならびに追加の0.50kgの脱イオン水を加えた。結果として生じたゲルを、30ガロンの反応器に移動して、追加の2.20kgの脱イオン水を加えた。反応器温度は、8時間以内に170℃まで上昇させて、48時間この温度に保った。結晶生成物を、ろ過によって回復して、200f.LScm
−1より低い伝導率まで洗浄した。この生成物は、合成されたままのSAPO−34と呼ばれる。6時間の540℃での焼成後の結晶生成物は、それがSAP0−34、菱沸石トポロジーを有する非ゼオライト分子篩であったことを示すX線粉末回折パターンを有した。
【0070】
焼成した生成物の元素分析は、15.5%のSiO
2、40.3の%Al
2O
3、及び44.2%のP
2O
5を示した。BET表面積は、583m
2/gであった。
【0071】
実施例2−安定化されたNH
4−SAPO−34の準備
安定化されたNH
4−SAPO−34は、実施例1に従って準備したSAPO−34へのアンモニウムのその場の導入によって準備する。実施例1において取得したSAPO−34ろ過ケークを破砕して、次いで、6時間540℃で焼成した。次いで、サンプルを120℃に冷却した。不活性ガス(ヘリウム)と混合した低濃度の乾燥アンモニア(約1〜5%)を飽和までSAPO−34床を通過させて、安定化されたNH
4−SAPO−34を提供した。
【0072】
実施例3−安定化されたCu−SAPO−34の準備
銅を、pH4で2時間80℃でCu−イオン交換によって実施例2において取得した安定化されたNH
4−SAPO−34に組み込んだ。次いで、混合物を脱イオン水で洗浄して、ろ過して、真空/空気乾燥して、安定化されたCu−SAPO−34を提供した。
【0073】
実施例4−Cu−SAPO−34を含有するウォッシュコートの準備
実施例3において取得した安定化されたCu−SAPO−34スラリーは、次いで、pHを15%水酸化アンモニウム溶液を用いて4.5に調整した。次いで、混合物を3g/インチ
3のウォッシュコート荷重に対して基材の上にコートした。ウォッシュコートを5分間130℃で空気下で乾燥させた。次いで、第2のコートを塗布した。焼成は、コート間で要求されなかった。最終コーティング後、基材を1時間450℃で焼成して、基材上にウォッシュコートさせた安定化されたCu−SAPO−34を備える触媒商品を提供した。
【0074】
実施例5−シリコン−29NMRの研究
NMRは、原子レベルで局所的な秩序(もしくは無秩序)または固体を決定するので、9.4Tの超伝導磁石を使用する核磁気共鳴(NMR)分光法を、提案された加水分解機構を研究する方法として使用した。合成されたままのSAPO−34において、シリコン−29NMRスペクトルは、大部分が単離した酸部位の存在を示すSi(4Al)種によって多数を占められる(
図2Aを参照)。
【0075】
NMRデータはまた、(最初の加水分解によってある程度それの構造上の完全性を失うとは言え)1年後でさえも、それの焼成されて水和された状態にある合成されたままのSAPO−34が、スペクトル特徴を保持することを示す。(
図2Bを参照)。構造の部分的な加水分解が生じた。なお更に、水和されたサンプルが100
oCでオーブン内で乾燥されるとき、水酸基は、追加の結合(
図2Cを参照)を形成するように縮合して、Si(3Al)、Si(2Al)、Si(1Al)、及び最終的にSi(0Al)、すなわち、いわゆるシリコン島状物を形成する。
【0076】
100℃を下回るSCRにおけるCu−SAPO−34について報告された活性の損失は、不可逆的(及び繰り返しの)加水分解と不活性骨格を生じる後続の縮合に起因して、水相における陽イオン交換の前でさえも開始されるプロセスであることが提案される。
【0077】
気相におけるその場のアンモニウム交換(実施例2)を用いて、安定化されたNH
4−SAPO−34のシリコン−29NMRスペクトルは、局所構造の完全性が保存されることを示す。(
図3を参照)。ピークの明らかな広がりは、骨格シリコンと窒素原子の相互作用に起因する。それ故、安定化されたNH
4−SAPO−34は、加水分解の傾向がなく、70℃の高温でさえも、水相において捕えた酢酸塩によって容易に交換され得る。
【0078】
比較例6−(Cu−SSZ−13)
Na−SSZ−13のサンプルは、アルカリ水性条件下で混合される、シリカの供給源、アルミナの供給源、及び作用物質を導く構造を使用する伝統的な熱水方法によって準備した。反応混合物を撹拌することで圧力容器内で加熱して、結晶SSZ−13生成物を産出した。反応の終わりにおいて、pHを6〜10に調整して、生成物をろ過して水で洗浄した。固体生成物は、400℃〜850℃の範囲内の温度において空気または窒素中で熱処理した。
【0079】
取得したNa−SSZ−13をNH
4交換してNH
4−SSZ−13を形成した。次いで、銅をNH
4−SSZ−13にイオン交換して、酢酸銅の使用を通してCu−SSZ−13を形成した。
【0080】
実施例7−NO
x転換
実施例3及び実施例6をSCR性能についてテストした。サンプルを空気中で10%H
2Oを用いて5時間750℃で経時化させた。
図4を参照にすると、新しい安定化された実施例3の触媒は、全体温度範囲にわたる80%より大きなNO
x転換を示す。安定化された実施例3の触媒は、比較例6に対して200℃における及び600℃におけるかなり高いNO
x転換を与える。それ故、新しい及び経時状態において、比較例6(200℃で60%、及び600℃で77%)と1以上の実施形態に従って準備される実施例3との間のSCR活性の差は、かなりのものである。安定化されたCu−SAPO−34材料(実施例3)の増加したSCR活性は、それを改良されたSCR技術のための魅力的なターゲット材料にさせる。
【0081】
実施例8−水への露出後のNO
x転換
実施例3のNO
x転換活性を水への露出前にテストした(LO♯1)。実施例3は、反応器内で保って、ここで、それを24時間70℃で水分に露出した。換言すれば、触媒的テスト(LO♯1)の完了後、サンプルを2時間以内に70℃まで冷却することを許容して、24時間70℃に保って、一方、窒素内の10%酸素における5%H
2Oの総流動を維持した(NO及びNH
3を止めた)。水分に露出した後、SCRテストを3回繰り返した(LO♯2〜4)。3つのサンプルテスト間において、サンプルを200℃まで冷却することを許容した。SCRテストは、バランスがN
2である、500ppmのNO、500ppmのNH
3、5%のH
2O、10%の(空気として)O
2を使用して、及び80,000/時の空間速度で、実行した。
図5を参照にすると、実施例3の触媒が湿潤条件において低温(70℃)下で処理されるとき、活性においていくらかの損失がある。200℃で約80%から約70%までのNO
x転換の減少を観測した。しかしながら、NO
x転換値は、比較例6について観測されるものよりもかなり著しく大きい。従って、70℃の熱水条件で安定化されたCu−SAPO−34(実施例3)材料によって呈される高い安定性を考慮して、シリコアルミノリン酸塩の構造が、安定したままであり、非活性化しないことが明白である。
【0082】
「一実施形態」、「一定の実施形態」、「1以上の実施形態」もしくは「ある実施形態」に対するこの明細書全体にわたる参照は、実施形態に関して記載される特定の特徴、構造、材料、または特性が、発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。それ故、この明細書全体にわたる様々な場所における、「1以上の実施形態において」、「一定の実施形態において」、「一実施形態において」または「ある実施形態において」などの文言の出現は、必ずしも発明の同じ実施形態を参照にするものではない。なお更に、特定の特徴、構造、材料、または特性が、1以上の実施形態において任意の適切な手法で組み合わされてもよい。
【0083】
本明細書において発明が、特定の実施形態を参照にして記載されているが、これらの実施形態は、本発明の原理や適用の単なる例示的なものであることが理解されることになる。修正や変形が、発明の趣旨や範囲から逸脱すること無く、本発明の方法及び装置になされ得ることは、当業者に明らかであろう。それ故、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内にある修正や変形を含むことが意図される。