(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
通液性向上剤として、多価金属カチオン、カチオン性ポリマー及び無機微粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種の物質を更に含む、請求項1〜5の何れか1項に記載の吸水剤。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下に例示する以外にも、本発明の趣旨を損なわない範囲内で適宜変更して、実施することが可能である。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。複数の実施形態についてそれぞれ記載された技術的手段を、適宜組み合わせて得られる他の実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0021】
〔1〕用語の定義
(1−1)「吸水性樹脂」
本明細書において、「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を指し、下記の物性を満たすものをいう。即ち、水膨潤性としてERT441.2−02で規定されるCRC(遠心分離機保持容量)が5g/g以上であり、かつ、水不溶性としてERT470.2−02で規定されるExt(水可溶分)が50重量%以下である高分子ゲル化剤を指す。
【0022】
上記吸水性樹脂は、その用途及び目的に応じた設計が可能であり、特に限定されないが、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた親水性架橋重合体であることが好ましい。また、上記吸水性樹脂は、全量が架橋重合体である形態に限定されず、上記の各物性(CRC及びExt)が上記数値範囲を満たす限り、添加剤等を含んだ組成物であってもよい。
【0023】
本発明における「吸水性樹脂」は、出荷前の最終製品に限らず、吸水性樹脂の製造工程における中間体(例えば、重合後の含水ゲル状架橋重合体、乾燥後の乾燥重合体、又は表面架橋前の吸水性樹脂粉末等)を指す場合もある。これら全て(上記組成物も含む)を包括して「吸水性樹脂」と総称する。
【0024】
なお、上記吸水性樹脂の形状として、シート状、繊維状、フィルム状、粒子状及びゲル状等が挙げられるが、本発明では粒子状の吸水性樹脂が好ましい。
【0025】
(1−2)「ポリアクリル酸(塩)」
本明細書において、「ポリアクリル酸(塩)」とは、ポリアクリル酸及び/又はその塩を指し、主成分としてアクリル酸及び/又はその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)を繰り返し単位として含み、任意成分としてグラフト成分を含む架橋重合体を意味する。
【0026】
上記「主成分」とは、アクリル酸(塩)の使用量(含有量)が、重合に用いられる単量体(内部架橋剤を除く)全体に対して、好ましくは50モル%〜100モル%、より好ましくは70モル%〜100モル%、更に好ましくは90モル%〜100モル%、特に好ましくは実質100モル%であることを意味する。
【0027】
架橋重合体としての「ポリアクリル酸塩」は、ポリアクリル酸の水溶性塩を含み、好ましくは一価の塩、より好ましくはアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、更に好ましくはアルカリ金属塩、特に好ましくはナトリウム塩を含む。
【0028】
(1−3)「EDANA」及び「ERT」
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称であり、「ERT」は、欧州標準(ほぼ世界標準)の吸水性樹脂の測定法(EDANA Recommended Test Methods)の略称である。本発明では、特に断りのない限り、ERT原本(2002年改定)に準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
【0029】
(a)「CRC」(ERT441.2−02)
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、吸水性樹脂の無加圧下吸水倍率(「吸水倍率」と称する場合もある)を意味する。具体的には、吸水性樹脂0.2gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)で3分間、水切りした後の吸水倍率(単位:g/g)のことをいう。
【0030】
(b)「AAP」(ERT442.2−02)
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、吸水性樹脂の加圧下吸水倍率を意味する。具体的には、吸水性樹脂0.9gを大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対して、1時間、21g/cm
2(2.06kPa)の荷重下で膨潤させた後の吸水倍率(単位:g/g)のことをいう。なお、荷重条件を49g/cm
2(4.81kPa)に変更して測定する場合もある。また、ERT442.2−02には、Absorption Under Pressureと表記されているが、実質的に同一内容である。
【0031】
(c)「Ext」(ERT470.2−02)
「Ext」は、Extractablesの略称であり、吸水性樹脂の水可溶分(水可溶成分量)を意味する。具体的には、吸水性樹脂1.0gを0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200mlに添加し、500rpmで16時間攪拌した後、水溶液に溶解した物質の量(単位:重量%)のことをいう。水可溶分の測定には、pH滴定が用いられる。
【0032】
(d)「PSD」(ERT420.2−02)
「PSD」は、Particle Size Distributionの略称であり、篩分級により測定される吸水性樹脂の粒度分布を意味する。なお、D50(重量平均粒子径)及びσζ(粒度分布の対数標準偏差)は、米国特許第7638570号に記載された「(3)Mass−Average Particle Diameter (D50) and Logarithmic Standard Deviation (σζ) of Particle Diameter Distribution」と同様の方法で測定される。
【0033】
(e)「Moisture Content」(ERT430.2−02)
「Moisture Content」は、吸水性樹脂の含水率を意味する。具体的には、吸水性樹脂4.0gを105℃で3時間乾燥した際の乾燥減量から算出した値(単位:重量%)のことをいう。なお、吸水性樹脂を1.0gに、乾燥温度を180℃に、それぞれ変更して測定する場合もある。
【0034】
(f)「Residual Monomers」(ERT410.2−02)
「Residual Monomers」は、吸水性樹脂中に残存する単量体(モノマー)量を意味する。以下、吸水性樹脂中に残存する単量体を「残存モノマー」と称する。具体的には、吸水性樹脂1.0gを0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200mlに添加し、500rpmで1時間攪拌した後、水溶液に溶解したモノマー量(単位:ppm)のことをいう。残存モノマー量の測定には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が用いられる。
【0035】
(1−4)「通液性」
本明細書において、「通液性」とは、吸水性樹脂の荷重下又は無荷重下での膨潤ゲルの粒子間を通過する液の流れ性のことをいい、代表的な測定方法として、SFC(Saline Flow Conductivity/生理食塩水流れ誘導性)及びGBP(Gel Bed Permeability/ゲル床透過性)がある。
【0036】
「SFC」は、0.3psi(2.07kPa)荷重下での吸水性樹脂に対する0.69重量%塩化ナトリウム水溶液の通液性をいい、米国特許第5669894号に記載されるSFC試験方法に準拠して測定される。
【0037】
「GBP」は、荷重下(0.3psi)又は自由膨潤での吸水性樹脂に対する0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の通液性をいい、国際公開第2005/016393号に記載されるGBP試験方法に準拠して測定される。
【0038】
(1−5)「吸水速度」
本明細書において、「吸水速度」とは、吸水性樹脂の吸水能力を示す指標のひとつであり、単位時間あたりの吸水倍率(単位:g/g/s)を意味する。なお、「吸水速度」の代表的な測定方法としてFSR(Free Swell Rate)が挙げられる。具体的な測定方法は実施例で説明する。
【0039】
(1−6)「加圧下隙間水倍率」
本明細書において、「加圧下隙間水倍率」とは、0.3psi(2.07kPa)荷重下における吸水剤1gあたりの隙間水を意味する。
【0040】
また、上記「隙間水」とは、吸水剤1gを0.3psi(2.07kPa)の荷重下で0.69重量%の塩化ナトリウム水溶液により膨潤させてゲル粒子の層を形成させた際、該ゲル粒子の間(隙間)に保持された液のことをいう。つまり、加圧下隙間水倍率は、吸水剤を0.69重量%の塩化ナトリウム水溶液により膨潤させた場合に2.07kPa(0.3psi)の荷重下において該吸水剤の隙間に保持された該塩化ナトリウム水溶液の、該吸水剤1gあたりに対する重量である。
【0041】
なお、類似する測定方法として、加圧下平均隙間半径指数(特許文献3)及び湿潤下粒子間間隙率(Wet Porosity)(特許文献4)がこれまでに提案されている。
【0042】
しかしながら、上記加圧下平均隙間半径指数は、膨潤ゲル粒子間の隙間半径を測定しているため、隙間水量を測定している本発明の加圧下隙間水倍率とは測定対象が異なる。また今回検討した結果、上記湿潤下粒子間間隙率(Wet Porosity)では、紙オムツの性能に影響する吸水性樹脂の物性を正確に把握できていないことが分かった。これは、湿潤下粒子間間隙率の測定方法に起因している。湿潤下粒子間間隙率の測定時に吸水性樹脂層の下面から測定液を吸収させるが、この方法では、吸水性樹脂層の吸い上げ吸収特性(ゲルブロッキング等)が、形成されるゲル層及び測定値に影響する。
【0043】
一方、本発明の加圧下隙間水倍率の測定方法では、紙オムツでの実使用及び吸収体評価と同様に、吸水性樹脂層の上面から多量の測定液を吸収させるため、不要な吸水性樹脂層の物性(ゲルブロッキング等)が測定値に影響することはない。そのため、紙オムツの重要な性能である戻り量との相関の高い物性を測定することができる。
【0044】
(1−7)「BET比表面積」
本明細書において、「BET比表面積」とは、吸水性樹脂の、粒子の比表面積の測定方法のひとつであるBET法で測定された比表面積のことをいい、「比表面積」とはある物体の単位重量あたりの表面積(単位;m
2/g)を意味する。
【0045】
上記物体が粒子の場合、一般的には、比表面積が大きいほど粒子は細かくなるが、表面の構造が複雑になるほど比表面積の値も大きくなるため、比表面積の値が粒子の大きさを反映しているとは必ずしも言えない。
【0046】
また、上記「BET法」とは、窒素、アルゴン、クリプトン又は酸化炭素等の気体分子を固体粒子に吸着させ、吸着した気体分子の量から固体粒子の比表面積を測定する方法をいう。具体的な測定方法は実施例で説明する。
【0047】
(1−8)「ゲル粉砕」
本発明における「ゲル粉砕」とは、重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体を、ゲル粉砕装置を用いて大きさを小さくし、所望の粒子径及び形状に調製する操作のことをいう。具体的には、重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕装置によりゲル粉砕し、そのD50(重量平均粒子径)を好ましくは300μm〜1700μm、より好ましくは350μm〜1000μmに、また、σζ(粒度分布の対数標準偏差)を好ましくは0.2〜1.5、より好ましくは0.2〜1.2となるように、含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕することをいう。
【0048】
(1−9)「ゲル粉砕エネルギー」
本発明における「ゲル粉砕エネルギー」とは、含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕するときに、ゲル粉砕装置が必要とする単位重量(含水ゲル状架橋重合体の単位重量)あたりの機械的エネルギーを意味し、ジャケットを加熱冷却するエネルギー又は投入する水及びスチームのエネルギーは含まない。
【0049】
なお、「ゲル粉砕エネルギー」は、英語表記の「Gel Grinding Energy」から「GGE」と略称する。上記GGEは、ゲル粉砕装置が三相交流電力で駆動する場合、以下の(式1)によって算出される。
【0051】
上記「力率」及び上記「モーター効率」は、ゲル粉砕装置の稼動条件等によって変化する装置固有の値であり、0〜1までの値をとる。また、ゲル粉砕装置が単相交流電力により駆動する場合、上記GGEは、上記(式1)中の「3」を「1」に変更して算出することができる。なお、電圧の単位は[V]、電流の単位は[A]、含水ゲル状架橋重合体の重量の単位は[g/s]である。
【0052】
また、複数のゲル粉砕装置を用いて含水ゲル状架橋重合体のゲル粉砕を行うこともできる。この場合には個々のゲル粉砕装置についてGGEを算出すればよい。
【0053】
含水ゲル状架橋重合体に対して加えられる機械的エネルギーは重要な因子の一つであるため、ゲル粉砕装置が空運転時の電流値を差し引いて、上記ゲル粉砕エネルギーを計算することが好ましい。特に複数の装置でゲル粉砕を行う場合、空運転時の電流値の合計が大きくなるため、空運転時の電流値を差し引いて計算する方法が好適である。この場合のゲル粉砕エネルギーは以下の(式2)によって算出される。尚、上記GGEと区別するため、下記の(式2)により算出されるゲル粉砕エネルギーをGGE2と表記する。
【0055】
上記(式2)における「力率」及び「モーター効率」は、ゲル粉砕時の値を採用する。尚、空運転時の力率及びモーター効率の値は、空運転時の電流値が小さいため、近似的に上記(式2)のように定義する。上記(式1)及び(式2)における「1秒間にゲル粉砕装置に投入される含水ゲル状架橋重合体の重量(g/s)」とは、例えば、含水ゲル状架橋重合体が連続的に定量フィーダーで供給される場合、その供給量が(t/hr)であれば、(g/s)に換算した値をいう。
【0056】
(1−10)その他
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上、Y以下」を意味する。また、特に注釈のない限り、重量の単位である「t(トン)」は「Metric ton(メトリック トン)」を意味し、「ppm」は「重量ppm」又は「質量ppm」を意味する。
【0057】
また、「〜酸(塩)」は「〜酸及び/又はその塩」、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」をそれぞれ意味する。
【0058】
〔2〕吸水剤の製造方法
本発明に係る吸水剤の第1の製造方法は、下記の工程(1)〜工程(6)を含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする吸水剤の製造方法である:工程(1)下記(a)〜(c)の少なくとも1つを含む、アクリル酸(塩)を単量体の主成分とする単量体水溶液の調製工程;(a)上記単量体水溶液中に、該単量体水溶液に対して0.0015ml/g以上の気体を導入する工程;(b)上記単量体水溶液中の溶存気体の溶解度を低下させて、該単量体水溶液中に、気泡を発生及び含有させる工程;(c)上記単量体水溶液中に、下記吸水性樹脂粉末の固形分に対して、5重量%以下の発泡剤を添加する工程;工程(2)上記工程(1)で得られる単量体水溶液を、発泡剤及び/又は気泡の存在下で発泡重合させて含水ゲル状架橋重合体を得る、重合工程;工程(3)重合中又は重合後に、ゲル粉砕エネルギー2(GGE2)が7J/g〜40J/gである動力によって含水ゲル状架橋重合体を細粒化する、ゲル粉砕工程;工程(4)重合後の含水ゲル状架橋重合体を乾燥して乾燥重合体を得る、乾燥工程;工程(5)乾燥後の乾燥重合体を粉砕及び分級して吸水性樹脂粉末を得る、粉砕及び分級工程;工程(6)上記吸水性樹脂粉末を表面架橋する工程。
【0059】
また、上記吸水剤を得るための第2の製造方法は、下記の工程(1)〜(7)を含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする吸水剤の製造方法である:工程(1)下記(a)〜(c)の少なくとも1つを含む、アクリル酸(塩)を単量体の主成分とする単量体水溶液の調製工程;(a)上記単量体水溶液中に、該単量体水溶液に対して0.0015ml/g以上の気体を導入する工程;(b)上記単量体水溶液中の溶存気体の溶解度を低下させて、該単量体水溶液中に、気泡を発生及び含有させる工程;(c)上記単量体水溶液中に、下記吸水性樹脂粉末の固形分に対して、5重量%以下の発泡剤を添加する工程;工程(2)上記工程(1)で得られる単量体水溶液を、発泡剤及び/又は気泡の存在下で発泡重合させて含水ゲル状架橋重合体を得る、重合工程;工程(3’)上記工程(2)の期間中又は後に、ゲル粉砕エネルギー2(GGE2)が7J/g以上18J/g未満である動力によって、含水ゲル状架橋重合体を細粒化する、ゲル粉砕工程;工程(4)上記工程(3’)で得られる細粒化された含水ゲル状架橋重合体を乾燥して乾燥重合体を得る、乾燥工程;工程(5)上記工程(4)で得られる乾燥重合体を粉砕及び分級して吸水性樹脂粉末を得る、粉砕及び分級工程;工程(6)上記工程(1)〜(5)を経て得られる、BET比表面積が0.0270m
2/g以上0.0310m
2/g未満の吸水性樹脂粉末を表面架橋して吸水性樹脂粒子を得る、表面架橋工程;工程(7)上記工程(6)で得られる吸水性樹脂粒子に、通液性向上剤を下記(I)〜(III)の添加量で添加する工程;(I)上記通液性向上剤が多価金属カチオンである場合、多価金属原子として1.40×10
−5モル/g未満;(II)上記通液性向上剤がカチオン性ポリマーである場合、2.0重量%未満;(III)上記通液性向上剤が無機微粒子であって、(IIIa)一次粒子径が20nm未満である場合、0.3重量%未満であり、(IIIb)一次粒子径が20nm以上である場合、1.0重量%未満(ただし、上記各添加量は、上記吸水性樹脂粉末の固形分に対する割合である)。
【0060】
また、上記吸水剤を得るための第3の製造方法は、下記の工程(1)〜(7)を含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする吸水剤の製造方法である:工程(1)下記(a)〜(c)の少なくとも1つを含む、アクリル酸(塩)を単量体の主成分とする単量体水溶液の調製工程;(a)上記単量体水溶液中に、該単量体水溶液に対して0.0015ml/g以上の気体を導入する工程;(b)上記単量体水溶液中の溶存気体の溶解度を低下させて、該単量体水溶液中に、気泡を発生及び含有させる工程;(c)上記単量体水溶液中に、下記吸水性樹脂粉末の固形分に対して、5重量%以下の発泡剤を添加する工程;工程(2)上記工程(1)で得られる単量体水溶液を、発泡剤及び/又は気泡の存在下で発泡重合させて含水ゲル状架橋重合体を得る、重合工程;工程(3’’)上記工程(2)の期間中又は後に、ゲル粉砕エネルギー2(GGE2)が18J/g以上40J/g以下である動力によって、含水ゲル状架橋重合体を細粒化する、ゲル粉砕工程;工程(4)上記工程(3’’)で得られる細粒化された含水ゲル状架橋重合体を乾燥して乾燥重合体を得る、乾燥工程;工程(5)上記工程(4)で得られる乾燥重合体を粉砕及び分級して吸水性樹脂粉末を得る、粉砕及び分級工程;工程(6)上記工程(1)〜(5)を経て得られる、BET比表面積が0.0310m
2/g以上の吸水性樹脂粉末を表面架橋して吸水性樹脂粒子を得る、表面架橋工程;工程(7)上記工程(6)で得られる吸水性樹脂粒子に、通液性向上剤を下記(i)〜(iii)の添加量で添加する工程;(i)上記通液性向上剤が多価金属カチオンである場合、多価金属原子として3.60×10
−5モル/g未満;(ii)上記通液性向上剤がカチオン性ポリマーである場合、2.5重量%未満;(iii)上記通液性向上剤が無機微粒子であって、(iiia)一次粒子径が20nm未満である場合、1.2重量%未満であり、(iiib)一次粒子径が20nm以上である場合、2.0重量%未満(ただし、上記各添加量は、上記吸水性樹脂粉末の固形分に対する割合である)。
【0061】
以下に、本発明に係る吸水剤の製造方法について説明する。
【0062】
(2−1)単量体水溶液の調製工程(工程(1))
本工程は、アクリル酸(塩)を主成分として含む水溶液(以下、「単量体水溶液」と称する)を調製する工程である。なお、上記「主成分」とは、アクリル酸(塩)の使用量(含有量)が、吸水性樹脂の重合反応に供される単量体(内部架橋剤は除く)全体に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上(上限は100モル%)であることをいう。また、得られる吸水性樹脂の吸水性能が低下しない範囲で、単量体のスラリー液を使用することもできるが、本項では便宜上、単量体水溶液について説明を行う。
【0063】
(アクリル酸(塩))
本発明では、得られる吸水性樹脂の物性及び生産性の観点から、単量体としてアクリル酸及び/又はその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)が用いられる。該「アクリル酸」としては、重合禁止剤及び/又は不純物等の微量成分を含有する公知のアクリル酸を使用することができる。
【0064】
上記重合禁止剤としては特に限定されないが、好ましくはフェノール類、より好ましくはメトキシフェノール類、更に好ましくはp−メトキシフェノール類が挙げられる。重合禁止剤のアクリル酸中での濃度は、アクリル酸の重合性や吸水性樹脂の色調の観点から、好ましくは200ppm以下、より好ましくは10ppm〜160ppm、更に好ましくは20ppm〜100ppmである。
【0065】
上記不純物としては、例えば、米国特許出願公開第2008/0161512号に記載された物質が挙げられる。
【0066】
また、上記「アクリル酸塩」は、上述したアクリル酸を下記の塩基性組成物で中和したものであるが、該アクリル酸塩として、市販のアクリル酸塩(例えば、アクリル酸ナトリウム)でもよいし、吸水性樹脂の製造プラント内でアクリル酸を中和処理して得られたものでもよい。
【0067】
(塩基性組成物)
本発明において「塩基性組成物」とは、塩基性化合物を含有する組成物を指し、例えば、市販の水酸化ナトリウム水溶液等が該当する。
【0068】
上記塩基性化合物として、具体的には、アルカリ金属の炭酸塩及び炭酸水素塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、並びに有機アミン等が挙げられる。中でも、得られる吸水性樹脂の物性の観点から、上記塩基性化合物は、強塩基性であることが好ましい。即ち、上記塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物がより好ましく、水酸化ナトリウムが更に好ましい。
【0069】
(中和)
本発明では、アクリル酸塩を得るため、アクリル酸を塩基性組成物で中和することもできる。なお、該中和は、アクリル酸に対する中和(重合前の中和)又はアクリル酸を架橋重合して得られる含水ゲル状架橋重合体に対する中和(重合後の中和)(以下、「後中和」と称する)の何れか一方を選択してもよいし、又はこれらを併用することもできる。
【0070】
上記中和は、連続式でもバッチ式でもよく、何れも採用することができるが、生産効率等の観点から好ましくは連続式である。なお、中和を行う装置、中和温度及び滞留時間等の条件については、国際公開第2009/123197号及び米国特許出願公開第2008/0194863号に記載された条件が本発明にも適用される。
【0071】
本発明での中和率は、単量体の酸基に対して、好ましくは10モル%〜90モル%、より好ましくは40モル%〜85モル%、更に好ましくは50モル%〜80モル%、特に好ましくは60モル%〜75モル%である。
【0072】
上記中和率が10モル%以上の場合、吸水倍率が著しく低下することがないため、好ましい。一方、上記中和率が90モル%以下の場合、加圧下吸水倍率の高い吸水性樹脂が得られやすいため、好ましい。
【0073】
なお、上記中和率は、後中和の場合でも同様である。また、最終製品としての吸水性樹脂の中和率についても、上記の中和率が適用される。
【0074】
(他の単量体)
本発明では、「他の単量体」として米国特許出願公開第2005/0215734号に記載された化合物(但し、アクリル酸は除く)を、上記アクリル酸(塩)と併用して吸水性樹脂を製造してもよい。なお、本発明に係る製造方法で得られる吸水性樹脂には、親水性又は疎水性の不飽和単量体を共重合成分とする吸水性樹脂も含まれる。
【0075】
(内部架橋剤)
本発明で使用される内部架橋剤として、米国特許第6241928号に記載された化合物が本発明にも適用される。これらの中から反応性を考慮して1種又は2種以上の化合物が選択される。
【0076】
また、得られる吸水性樹脂の吸水性能等の観点から、好ましくは重合性不飽和基を2個以上有する化合物、より好ましくは後述の乾燥工程における乾燥温度で熱分解性を有する化合物、更に好ましくは(ポリ)アルキレングリコール構造単位を有する重合性不飽和基を2個以上する化合物が、内部架橋剤として用いられる。
【0077】
上記重合性不飽和基として、好ましくはアリル基及び(メタ)アクリレート基、より好ましくは(メタ)アクリレート基が挙げられる。また、上記(ポリ)アルキレングリコール構造単位としてポリエチレングリコールが好ましく、n数として好ましくは1〜100、より好ましくは6〜50である。
【0078】
したがって、本発明では、内部架橋剤として、好ましくは(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート又は(ポリ)アルキレングリコールトリ(メタ)アクリレート、より好ましくは(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが用いられる。
【0079】
上記内部架橋剤の使用量は、単量体全体に対して、好ましくは0.0001モル%〜10モル%、より好ましくは0.001モル%〜1モル%である。該使用量を上記範囲内とすることで所望する吸水性樹脂が得られる。なお、該使用量が少なすぎる場合、ゲル強度が低下し水可溶分が増加する傾向にあり、該使用量が多すぎる場合、吸水倍率が低下する傾向にあるため、好ましくない。
【0080】
本発明では、所定量の内部架橋剤を予め単量体水溶液に添加しておき、重合と同時に架橋反応する方法が好ましく適用される。一方、該手法以外に、重合中若しくは重合後に内部架橋剤を添加して後架橋する方法、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル架橋する方法、又は電子線若しくは紫外線等の活性エネルギー線を用いた放射線架橋する方法等を採用することもできる。また、これらの方法を併用することもできる。
【0081】
(気泡)
本発明では、単量体水溶液を気泡の存在下で発泡重合させるため、以下の方法により気泡を分散させることができる。気泡分散の手法としては、溶存気体の溶解度を低下させる手法、外部から気体を導入する手法及び単量体水溶液に発泡剤を添加する手法等の手法がある。また、目的とする吸水性樹脂の物性に応じて、これらの手法を複数併用してもよい。その際、単量体水溶液へ分散させる気泡を構成する気体としては、酸素、空気、窒素、炭酸ガス及びオゾン、並びにそれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは、窒素又は炭酸ガス等の不活性ガスが使用される。上記気体として、更に好ましくは、重合性及びコスト面から空気又は窒素が使用される。気体を導入する際、又は導入後の圧力は、常圧、加圧又は減圧で適宜決定される。
【0082】
(溶存気体の溶解度を低下させる手法)
本発明において、界面活性剤及び/又は分散剤を添加した単量体水溶液を用い、単量体水溶液中の溶存気体の溶解度を低下させることで、気泡を安定的に分散させることができる。溶存気体の溶解度を低下させる手法は、目的の物性及び製造コスト等に応じて適宜決定することができる。
【0083】
溶存気体の溶解度を低下させる手法として、具体的には、単量体水溶液の温度を上昇させる手法及び水溶性有機物を添加する手法等があるが、単量体水溶液の温度を上昇させる手法が最も好ましい。導入気泡量を制御するために、予め単量体水溶液中の溶存気体量を制御してもよい。
【0084】
また、界面活性剤及び/又は分散剤の種類及び/又は量を適宜調整することで、所望の物性を有する吸水性樹脂粉末を得ることができる。ここで、界面活性剤は非高分子界面活性剤であることが好ましく、分散剤は高分子分散剤であることが好ましい。また、界面活性剤及び/又は分散剤は、重合前又は重合時のモノマー水溶液の温度が50℃以上となるよりも前の段階で添加されていることが好ましい。
【0085】
界面活性剤及び/又は分散剤の種類は、目的の物性に応じて適宜決定することができる。具体的な界面活性剤としては国際公開公報第2011/078298号に例示されているものが好適に用いられる。その中でも、非イオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレン鎖を分子内に有する非イオン性界面活性剤がさらに好ましく、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが最も好ましい。
【0086】
これら界面活性剤の使用量は、使用する界面活性剤の種類又は目的とする物性(特に吸水速度及び/又は表面張力)にもよるが、代表的には、使用されるモノマーの量に対して、0を超え2重量%以下、好ましくは0を超え0.03重量%以下、より好ましくは0を超え0.015重量%以下、更に好ましくは0を超え0.01重量%以下、最も好ましくは0を超え0.008重量%以下である。上記界面活性剤の使用量は重合後の基礎吸水性樹脂にも適用でき、更に必要により後述の「(2−6)表面架橋工程」に記載の界面活性剤の被覆を行った後に得られる最終製品としての吸水性樹脂粉末にも適用することができる。
【0087】
(外部から気体を導入する手法)
本発明では、外部から気体を導入することにより、単量体水溶液に気泡を導入することができる。使用する気体は上述の通りである。この際、外部から導入する気体と単量体水溶液とを混合すればよく、単量体水溶液へ気体を導入する方法としては、スタティックミキサー方式、キャビテーション方式又はベンチュリー方式等の公知の方法を適宜利用することができ、それらの方法を併用してもよい。
【0088】
これら気体の導入量は、単量体水溶液1gに対して、通常0.0015ml/g以上、好ましくは0.0035ml/g以上、更に好ましくは0.005ml/g以上である。気体導入量が少なすぎると、所望の吸水性樹脂物性が得られないため、好ましくない場合がある。なお、上記気体の導入量は、20℃、1気圧での値である。
【0089】
(単量体水溶液に発泡剤を添加する手法)
本発明では、単量体水溶液に発泡剤を添加し、発泡重合することもできる。この際、使用される発泡剤としては、加熱により気体を発生する炭酸塩又はアゾ化合物等を使用することができる。これら発泡剤の添加量は、吸水性樹脂粉末の固形分に対して、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下(下限は0重量%)である。
【0090】
(その他、単量体水溶液に添加される物質)
本発明において、得られる吸水性樹脂の物性向上の観点から、下記の物質を単量体水溶液の調製時に添加することもできる。
【0091】
具体的には、上記単量体水溶液に対して、澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)及び/又はポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子を、好ましくは50重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下(下限は0重量%)で添加したり、キレート剤及び/又は連鎖移動剤等を、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下(下限は0重量%)で添加したりすることができる。
【0092】
また、上記の物質は、単量体水溶液に添加される形態のみならず、重合途中で添加される形態でもよいし、これらの形態を併用することもできる。
【0093】
なお、親水性高分子として水溶性樹脂又は吸水性樹脂を使用する場合には、グラフト重合体又は吸水性樹脂組成物(例えば、澱粉−アクリル酸重合体又はPVA−アクリル酸重合体等)が得られる。これらの重合体及び吸水性樹脂組成物も、本発明の範疇である。
【0094】
(単量体成分の濃度)
本発明において、単量体水溶液を調製する際に、上記の各物質が添加される。該単量体水溶液中の単量体成分の濃度(以下、「モノマー濃度」と称する場合がある)としては特に限定されないが、吸水性樹脂の物性及び生産性の観点から、好ましくは10重量%〜80重量%、より好ましくは20重量%〜75重量%、更に好ましくは30重量%〜70重量%である。
【0095】
また、重合形態として、水溶液重合又は逆相懸濁重合を採用する場合、水以外の溶媒を必要に応じて併用することもできる。この場合、使用される溶媒の種類は特に限定されない。
【0096】
なお、上記「単量体成分の濃度」とは、下記(式3)で求められる値であり、単量体水溶液の重量には、グラフト成分及び吸水性樹脂、並びに逆相懸濁重合における疎水性溶媒の重量は含まれない。
【0098】
(2−2)重合工程(工程(2))
本工程は、上記単量体水溶液の調製工程で得られたアクリル酸(塩)系単量体水溶液を重合させて、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)を得る工程である。即ち、本工程が、上記工程(2)の上記工程(1)で得られる単量体水溶液を、発泡剤及び/又は気泡の存在下で発泡重合させて含水ゲル状架橋重合体を得る、重合工程に該当する。
【0099】
(重合開始剤)
本発明で使用される重合開始剤は、重合形態等によって適宜選択されるため、特に限定されないが、例えば、熱分解性ラジカル重合開始剤、光分解性ラジカル重合開始剤、又はこれらの重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用したレドックス系重合開始剤等が挙げられる。具体的には、米国特許第7265190号に記載された重合開始剤のうち、1種又は2種以上の化合物が用いられる。なお、重合開始剤の取扱性や吸水性樹脂の物性の観点から、重合開始剤として、好ましくは過酸化物又はアゾ化合物、より好ましくは過酸化物、更に好ましくは過硫酸塩が用いられる。
【0100】
上記重合開始剤の使用量は、単量体に対して、好ましくは0.001モル%〜1モル%、より好ましくは0.001モル%〜0.5モル%である。また、上記還元剤の使用量は、単量体に対して、好ましくは0.0001モル%〜0.02モル%である。重合開始剤及び還元剤の使用量を上記範囲内とすることで、所望する吸水性樹脂が得られる。
【0101】
なお、上記重合開始剤に代えて、放射線、電子線又は紫外線等の活性エネルギー線を照射して重合反応を実施してもよく、これらの活性エネルギー線と重合開始剤とを併用してもよい。
【0102】
(重合形態)
本発明に適用される重合形態としては、特に限定されないが、吸水特性及び重合制御の容易性等の観点から、好ましくは噴霧重合、液滴重合、水溶液重合及び逆相懸濁重合、より好ましくは水溶液重合及び逆相懸濁重合、更に好ましくは水溶液重合が挙げられる。中でも、連続水溶液重合が特に好ましく、連続ベルト重合及び連続ニーダー重合の何れでも適用される。
【0103】
具体的な重合形態として、連続ベルト重合は米国特許第4893999号、同第6241928号及び米国特許出願公開第2005/0215734号等に、連続ニーダー重合は米国特許第6987151号及び同第6710141号等に、それぞれ開示されている。これらの連続水溶液重合を採用することで、吸水性樹脂の生産効率が向上する。
【0104】
また、上記連続水溶液重合の好ましい形態として、「高温開始重合」及び「高濃度重合」が挙げられる。「高温開始重合」とは、単量体水溶液の温度を好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上(上限は沸点)の温度で重合を開始する形態をいう。「高濃度重合」とは、単量体水溶液中の単量体濃度を好ましくは30重量%以上、より好ましくは35重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、特に好ましくは45重量%以上(上限は飽和濃度)で重合を行う形態をいう。これらの重合形態を併用することもできる。
【0105】
また、本発明においては、空気雰囲気下で重合を行うこともできるが、得られる吸水性樹脂の色調の観点から、窒素又はアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で重合を行うことが好ましい。この場合、例えば、酸素濃度を1容積%以下に制御することが好ましい。なお、単量体水溶液中の溶存酸素についても、不活性ガスで置換(例えば、溶存酸素;1mg/l未満)しておくことが好ましい。
【0106】
また、本発明においては、重合中に固形分濃度を上昇させてもよい。このような固形分濃度の上昇の指標として固形分上昇度は下記(式4)により定義される。なお、該固形分濃度の上昇度としては、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上である。
【0108】
ただし、単量体水溶液の固形分濃度とは下記(式5)で求められる値であり、重合系内の成分とは、単量体水溶液及びグラフト成分、吸水性樹脂、並びにその他固形物(例えば、無機微粒子等)であり、逆相懸濁重合における疎水性溶媒は含めない。
【0110】
(2−3)ゲル粉砕工程(工程(3))
本工程は、上記重合工程で得られた含水ゲルをニーダー若しくはミートチョッパー等のスクリュー押出し機、又はカッターミル等のゲル粉砕機でゲル粉砕し、粒子状の含水ゲル(以下、「粒子状含水ゲル」と称する)を得る工程である。即ち、本工程が、上記工程(3)の重合中又は重合後に、ゲル粉砕エネルギー2(GGE2)が7J/g〜40J/gである動力によって含水ゲル状架橋重合体を細粒化する、ゲル粉砕工程に該当する。換言すれば、本工程は、上記工程(2)の期間中又は後に、ゲル粉砕エネルギー2(GGE2)が特定の範囲内である動力によって、含水ゲル状架橋重合体を細粒化する、ゲル粉砕工程に該当する。
【0111】
なお、上記重合工程がニーダー重合の場合、重合工程とゲル粉砕工程とが同時に実施されている。また、重合工程が逆相懸濁重合等、粒子状含水ゲルが重合過程で直接得られる場合には、該ゲル粉砕工程が実施されないこともある。
【0112】
また、本工程は、含水ゲルのサイズを小さくすることで表面積を大きくし、乾燥効率を高めるだけでなく、特定のゲル粉砕エネルギーでゲル粉砕することで、所望する形状の含水ゲルを得ることができる。
【0113】
(ゲル粉砕エネルギー)
本発明では、ゲル粉砕エネルギーを一定範囲内に制御することが好ましい。特に、ゲル粉砕エネルギー2(GGE2)の場合、その上限値として、好ましくは40J/g以下、より好ましくは32J/g以下、更に好ましくは25J/g以下である。また、GGE2の下限値として、好ましくは7J/g以上、より好ましくは8J/g以上、更に好ましくは9J/g以上である。
【0114】
したがって、上記ゲル粉砕エネルギー2(GGE2)の代表的な範囲としては、上述した上限値及び下限値の範囲内で適宜選択することができるが、好ましくは7J/g〜40J/g、より好ましくは7J/g〜32J/g、更に好ましくは8J/g〜25J/gである。また、9J/g〜40J/g等の範囲も選択することもできる。
【0115】
上記GGE2を上記範囲内に制御することで、適切なせん断力及び圧縮力を含水ゲルに与えながら、ゲル粉砕することができる。
【0116】
なお、第2の製造方法においては、上記GGE2は7J/g以上18J/g未満の範囲内とする(上記工程(3’)に相当)。また、第3の製造方法においては、上記GGE2は18J/g以上40J/g以下の範囲内とする(上記工程(3’’)に相当)。当該GGE2とすることで、得られる吸水性樹脂粉末のBET比表面積を制御することができる。
【0117】
(ゲル粉砕後の含水ゲルの粒度)
上記重合工程で得られた含水ゲルは、ゲル粉砕工程を経て粉砕されて粒子状となる。なお、粒子状含水ゲルの粒子径は分級及び/又は調合等によって制御することもできるが、本発明では、発泡重合及び/又はゲル粉砕工程で制御することが好ましい。
【0118】
本発明において、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲルのD50(重量平均粒子径)(篩分級で規定)は、好ましくは300μm〜1700μmであり、より好ましくは350μm〜1000μmである。
【0119】
上記D50(重量平均粒子径)が1700μm以下である場合、粒子状含水ゲルが受けるせん断力及び圧縮力が不均一であったり、不十分であったりすることがないため、好ましい。更に、粒子状含水ゲルは、表層部から内部に向かって乾燥されていくため、D50(重量平均粒子径)が大きいと、表層部と内部とでの乾燥度が異なる状態で粉砕されてしまい、物性が不均一な粒子が生成してしまう。その結果として、得られる吸水剤全体の物性が低下するため、好ましくない。
【0120】
上記D50(重量平均粒子径)が300μm以上である場合、粒子状含水ゲルの表面積が小さくなるため、乾燥されにくくなる。その結果として、モノマーが含水ゲル中に残存しにくくなり、残存モノマーが減少する。更に、乾燥後の粉砕で多量の微粉が生成することがないため、粒度制御が容易となるだけでなく、通液性(SFC)等の物性が低下しないため、好ましい。
【0121】
また、本発明において、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲルのσζ(粒度分布の対数標準偏差)は、好ましくは0.2〜1.5、より好ましくは0.2〜1.2である。
【0122】
上記σζ(粒度分布の対数標準偏差)は、その値が小さい程、粒度分布がシャープになり、均一な乾燥が得られるため、好ましい。ただし、該σζを0.2未満とするには、粉砕後での含水ゲルの分級又はゲル粉砕前の重合時での粒度制御等、特殊な操作が必要となる。
【0123】
したがって、生産性及びコストの観点から、実質的に上記σζ(粒度分布の対数標準偏差)が0.2以上である粒子状含水ゲルとすることが好ましい。なお、上記粒度に制御する方法として、本発明における発泡重合及びゲル粉砕が挙げられる。
【0124】
(2−4)乾燥工程(工程(4))
本工程は、上記重合工程及び/又はゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲルを所定の固形分まで乾燥させて「乾燥重合体」を得る工程である。即ち、本工程が、上記工程(4)の重合後の含水ゲル状架橋重合体を乾燥して乾燥重合体を得る、乾燥工程に該当する。換言すれば、本工程は、上記工程(3)、(3’)又は(3’’)で得られる細粒化された含水ゲル状架橋重合体を乾燥して乾燥重合体を得る、乾燥工程に該当する。
【0125】
なお、乾燥後の固形分は、乾燥減量(吸水性樹脂1gを180℃で3時間加熱した際の重量変化)から求められる値であり、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85重量%〜99重量%、更に好ましくは90重量%〜98重量%、特に好ましくは92重量%〜97重量%である。
【0126】
本工程において、採用される乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、流動層乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水による乾燥、及び、高温の水蒸気を利用した高湿乾燥等が挙げられる。中でも乾燥効率の観点から、熱風乾燥が好ましく、通気ベルト上で熱風乾燥を行うバンド乾燥がより好ましい。
【0127】
本工程における乾燥温度(熱風乾燥の場合は熱風の温度で規定)としては、得られる吸水性樹脂の色調及び乾燥効率の観点から、好ましくは100℃〜300℃、より好ましくは120℃〜250℃、更に好ましくは150℃〜200℃である。また、乾燥時間としては、所望する吸水性樹脂の物性に応じて適宜決定されるが、好ましくは1分〜10時間、より好ましくは5分〜3時間、更に好ましくは10分〜1時間である。更に、熱風乾燥の場合、熱風の風速としては、好ましくは3.0m/s以下、より好ましくは0.5m/s〜2.0m/sである。なお、その他の乾燥条件については、乾燥を行う粒子状含水ゲルの含水率及び総重量、並びに目的とする固形分等に応じて、適宜設定すればよい。
【0128】
上記乾燥の諸条件を上記範囲内に制御することで、乾燥重合体の物性にムラが生じにくく、固形分を所定の範囲に制御することができ、更に得られる吸水性樹脂の色調悪化及び吸水性能の低下を抑えることができる。なお、バンド乾燥を行う場合、国際公開第2006/100300号、同第2011/025012号、同第2011/025013号及び同第2011/111657号等に記載される諸条件が適宜適用される。
【0129】
(2−5)粉砕工程及び分級工程(工程(5))
本工程は、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体を粉砕(粉砕工程)し、所定範囲の粒度に調整(分級工程)して、吸水性樹脂粉末(表面架橋を施す前の、粉末状の吸水性樹脂を便宜上「吸水性樹脂粉末」と称する)を得る工程である。即ち、本工程が、上記工程(5)の乾燥後の乾燥重合体を粉砕及び分級して吸水性樹脂粉末を得る、粉砕及び分級工程に該当する。換言すれば、本工程は、上記工程(4)で得られる乾燥重合体を粉砕及び分級して吸水性樹脂粉末を得る、粉砕及び分級工程に該当する。また、本工程は、乾燥後の乾燥重合体を粉砕及び分級して、BET比表面積が0.027m
2/g以上で、かつ、粒子径が150μm以上710μm未満である粒子の割合が90重量%以上である吸水性樹脂粉末を得る工程であってもよい。
【0130】
本発明の粉砕工程で使用される機器としては、特に限定されないが、例えば、ロールミル、ハンマーミル、スクリューミル及びピンミル等の高速回転式粉砕機、振動ミル、ナックルタイプ粉砕機、並びに円筒型ミキサー等が挙げられ、必要により併用される。
【0131】
また、本発明の分級工程での粒度調整方法としては、特に限定されないが、例えば、JIS標準篩(JIS Z8801−1(2000))を用いた篩分級及び気流分級等が挙げられる。当該JIS標準篩の目開きとして、好ましくは150μm〜710μmである。上記範囲の目開きを有するJIS標準篩を使用することによって、吸水性樹脂粉末の粒子径を150μm以上710μm未満に調整することができる。なお、吸水性樹脂の粒度調整は、上記粉砕工程及び分級工程に限定されず、重合工程(特に逆相懸濁重合及び噴霧重合、並びに液滴重合)及びその他の工程(例えば、造粒工程及び微粉回収工程等)で適宜実施することができる。
【0132】
(吸水性樹脂粉末の物性)
(固形分)
本工程で得られる吸水性樹脂粉末の固形分は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは93重量%以上、更に好ましくは95重量%以上である。該固形分の上限としては粉砕効率の観点から、好ましくは98重量%以下、より好ましくは97重量%以下である。
【0133】
(BET比表面積)
本工程で得られる吸水性樹脂粉末のBET比表面積は、好ましくは0.027m
2/g以上、より好ましくは0.029m
2/g以上、更に好ましくは0.031m
2/g以上である。
【0134】
上記BET比表面積が0.027m
2/g以上である場合、本発明の吸水剤において加圧下隙間水倍率がより好適な値となり、紙オムツにおける加圧下戻り量が減少するため、吸収性物品の吸収体として性能がより好適となる。なお、該BET比表面積は、本発明の発泡重合、ゲル粉砕及び粒度調整により制御することができる。
【0135】
(粒度)
本工程で得られる吸水性樹脂粉末は、D50(重量平均粒子径)として、好ましくは200μm〜600μm、より好ましくは200μm〜550μm、更に好ましくは250μm〜500μm、特に好ましくは300μm〜450μmである。また、粒子径が150μm以上710μm未満の粒子の割合は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、更に好ましくは97重量%以上、特に好ましくは98重量%以上である。なお、該粒子径を有する粒子の割合の上限値としては、100重量%である。一方、粒子径が150μm未満の粒子の割合は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。粒子径が710μm以上の粒子の割合は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。なお、これらの粒子の割合の下限値としては、何れの場合も少ないほど好ましく、0重量%が望まれるが、0.1重量%程度であってもよい。更に、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は、好ましくは0.20〜0.50、より好ましくは0.25〜0.45、更に好ましくは0.30〜0.40である。なお、これらの粒度は、米国特許第7638570号又はERT420.2−02に記載されている測定方法に準じて、標準篩を用いて測定される。
【0136】
上記粒度は、表面架橋後の吸水性樹脂のみならず、最終製品としての吸水性樹脂についても適用される。そのため、上記範囲の粒度を維持するように、表面架橋されることが好ましく、表面架橋工程以降に整粒工程を設けて粒度調整されることがより好ましい。なお、上記表面架橋後の吸水性樹脂を便宜上「吸水性樹脂粒子」と称する。また、当該吸水性樹脂粒子を最終製品とする場合には、「吸水剤」と称する場合がある。
【0137】
本発明において、加圧下隙間水倍率の向上、つまり、戻り量の低減には、粒度分布の制御が重要である。特に、粒子径が710μm以上の粒子が5重量%以下であれば、極端に加圧下隙間倍率が低下することがないため、好ましい。該粒度分布は、粉砕工程及び分級工程により制御することができる。
【0138】
(2−6)表面架橋工程(工程(6))
本工程は、乾燥及び分級した後の吸水性樹脂(吸水性樹脂粉末)について、通液性及び吸水速度を向上させることを目的として行われる工程であり、上述した工程を経て得られる吸水性樹脂粉末の表面層(吸水性樹脂粉末の表面から数10μmの部分)に、更に架橋密度の高い部分を設ける工程である。
【0139】
本工程は、混合工程、加熱処理工程及び冷却工程(任意)から構成される。なお、逆相懸濁重合及び気相重合、噴霧重合、並びに液滴重合のように、重合時に粒度制御がなされている場合には、表面架橋工程の前の粉砕工程及び分級工程は不要であり、下記加熱処理工程を乾燥工程と同時に行ってもよい。
【0140】
また、上記表面架橋工程において、吸水性樹脂粉末表面でのラジカル架橋及び表面重合、並びに表面架橋剤との架橋反応等により表面架橋された吸水性樹脂(吸水性樹脂粒子)が得られる。
【0141】
本工程は、上記工程(1)〜(5)を経て得られる、BET比表面積が0.0270m
2/g以上0.0310m
2/g未満の吸水性樹脂粉末を表面架橋して吸水性樹脂粒子を得る、表面架橋工程であってもよく、上記工程(1)〜(5)を経て得られる、BET比表面積が0.0310m
2/g以上の吸水性樹脂粉末を表面架橋して吸水性樹脂粒子を得る、表面架橋工程であってもよい。
【0142】
(表面架橋剤)
本発明で使用される表面架橋剤としては、特に限定されないが、有機又は無機の表面架橋剤が挙げられる。中でも、吸水性樹脂の物性及び表面架橋剤の取扱性の観点から、カルボキシル基と反応する有機表面架橋剤が好ましい。例えば、米国特許第7183456号に記載される1種又は2種以上の表面架橋剤が挙げられる。より具体的には、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、ハロエポキシ化合物、多価アミン化合物又はそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、オキサゾリジノン化合物、多価金属塩、アルキレンカーボネート化合物及び環状尿素化合物等が挙げられる。
【0143】
上記表面架橋剤の使用量(複数使用の場合は合計使用量)は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは0.01重量部〜10重量部、より好ましくは0.01重量部〜5重量部である。また、該表面架橋剤は水溶液として添加することが好ましく、この場合、水の使用量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜20重量部、より好ましくは0.5重量部〜10重量部である。更に必要に応じて、親水性有機溶媒を使用する場合、その使用量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。
【0144】
また、後述の「通液性向上剤の添加工程」で添加される各通液性向上剤をそれぞれ5重量部以下の範囲内で該表面架橋剤(水溶液)に混合して添加したり、別途、混合工程で添加したりすることもできる。
【0145】
(混合工程)
本工程は、吸水性樹脂粉末と上記表面架橋剤とを混合する工程である。該表面架橋剤の混合方法については、特に限定されないが、予め表面架橋剤溶液を作成しておき、該溶液を吸水性樹脂粉末に対して、好ましくは噴霧又は滴下して、より好ましくは噴霧して混合する方法が挙げられる。
【0146】
上記混合を行う装置としては、特に限定されないが、好ましくは高速撹拌型混合機、より好ましくは高速撹拌型連続混合機が挙げられる。
【0147】
(加熱処理工程)
本工程は、上記混合工程から排出された混合物に熱を加えて、吸水性樹脂粉末の表面上で架橋反応を起こさせる工程である。
【0148】
上記架橋反応を行う装置としては、特に限定されないが、好ましくはパドルドライヤーが挙げられる。該架橋反応での反応温度は、使用される表面架橋剤の種類に応じて適宜設定されるが、好ましくは50℃〜300℃、より好ましくは100℃〜200℃である。
【0149】
(冷却工程)
本工程は、上記加熱処理工程後に必要に応じて設置される任意の工程である。
【0150】
上記冷却を行う装置としては、特に限定されないが、好ましくは加熱処理工程で使用される装置と同一仕様の装置であり、より好ましくはパドルドライヤーである。熱媒を冷媒に変更することで、冷却装置として使用できるためである。なお、上記加熱処理工程で得られた吸水性樹脂粒子は、該冷却工程において、好ましくは40℃〜80℃、より好ましくは50℃〜70℃に、必要に応じて強制冷却される。
【0151】
(2−7)通液性向上剤の添加工程(工程(7))
本工程は、上記表面架橋工程で得られた吸水性樹脂粒子に、下記の多価金属カチオン、カチオン性ポリマー及び無機微粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種の通液性向上剤を添加する工程である。なお、本工程(7)を経て得られる吸水性樹脂が通常、最終製品となる。本明細書では、当該最終製品である吸水性樹脂を「吸水剤」と称する。したがって、上述したように通液性向上剤を添加せずに最終製品とする場合、具体的には、表面架橋工程で得られた吸水性樹脂粒子を最終製品とする場合も「吸水剤」と称する。
【0152】
上記吸水性樹脂粒子に上記通液性向上剤を添加することで、得られる吸水剤の通液性が向上する。一方、加圧下隙間水倍率は低下する。また、当該通液性及び加圧下隙間水倍率は、吸水性樹脂粉末のBET比表面積の影響を受ける。したがって、得られる吸水剤の通液性及び加圧下隙間水倍率は、当該通液性向上剤の添加量やBET比表面積で調整することができる。
【0153】
上記通液性向上剤は、水溶液又はスラリー液で添加されるため、吸水性樹脂粒子は再度、水膨潤する。このため、本工程を「再加湿工程」と称する場合もある。また、上述したように、該通液性向上剤は上記表面架橋剤(水溶液)と同時に、吸水性樹脂粉末に混合することもできる。
【0154】
上記通液性向上剤は、得られる吸水剤の所望する吸水性能に応じて、2種以上を併用することもできる。この場合、通液性向上剤の添加量としては、特に限定されないが、それぞれの通液性向上剤において、下記の指定される範囲を超えないことが好ましく、指定された範囲の80%を超えないことがより好ましい。
【0155】
なお、上記「通液性向上剤」とは、本工程(通液性向上剤の添加工程)の前後で吸水性樹脂のSFC(生理食塩水流れ誘導性)を上昇(向上)させることができる化合物を指す。以下、化合物ごとに説明する。
【0156】
(多価金属カチオン)
本発明において使用される多価金属カチオンは、好ましくは2価以上、より好ましくは2価〜4価、更に好ましくは3価又は4価である。使用される多価金属としては、具体的にはアルミニウム及びジルコニウム等が挙げられる。また、使用される多価金属カチオンの原料として用いられる化合物(例えば、多価金属塩)としては、乳酸アルミニウム、硫酸アルミニウム及び硫酸ジルコニウム等が挙げられ、中でも、取扱性等の観点から、好ましくは硫酸アルミニウムである。
【0157】
上記多価金属カチオンの使用量(添加量)は、上記吸水性樹脂粉末のBET比表面積が0.027m
2/g以上0.031m
2/g未満である場合、多価金属原子として、好ましくは1.40×10
−5モル/g未満、より好ましくは1.00×10
−5モル/g未満である。また、上記吸水性樹脂粉末のBET比表面積が0.031m
2/g以上である場合、多価金属原子として、好ましくは3.60×10
−5モル/g未満、より好ましくは1.40×10
−5モル/g未満、更に好ましくは1.00×10
−5モル/g未満である。
【0158】
なお、上記使用量は、吸水性樹脂粉末1gに対する量である。また、例えば、上記多価金属カチオンの原料として用いられる化合物が硫酸アルミニウム等のアルミニウム塩の場合、上記多価金属原子はアルミニウム原子を指す。
【0159】
(カチオン性ポリマー)
本発明において使用されるカチオン性ポリマーとしては、特に限定されないが、米国特許第5382610号、同第7098284号、国際公開第2009/110645、同第2009/041731号及び同第2009/041727号等に記載されているカチオン性ポリマーが挙げられる。中でも、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、又はジメチルアミン/アンモニア/エピクロロヒドリンの縮合物(ジメチルアミン・アンモニア・エピクロルヒドリン樹脂)が好ましい。
【0160】
上記カチオン性ポリマーの重量平均分子量として、好ましくは1000〜500万、より好ましくは2000〜100万、更に好ましくは1万〜50万である。また、上記カチオン性ポリマーは、水溶性であることが好ましい。なお、該「水溶性」とは、25℃の水100gに対して1g以上溶解することをいう。
【0161】
上記カチオン性ポリマーの使用量(添加量)は、上記吸水性樹脂粉末のBET比表面積が0.027m
2/g以上0.031m
2/g未満である場合、吸水性樹脂粉末の固形分に対して、好ましくは2.0重量%未満、より好ましくは1.0重量%未満である。また、吸水性樹脂粉末のBET比表面積が0.031m
2/g以上である場合、吸水性樹脂粉末の固形分に対して、好ましくは2.5重量%未満、より好ましくは2.0重量%未満、更に好ましくは1.0重量%未満である。
【0162】
上記カチオン性ポリマーを吸水性樹脂粒子に添加することで、得られる吸水剤の通液性が向上する。なお、該カチオン性ポリマーは、直接吸水性樹脂粒子と混合してもよいし、溶液、特に水溶液として混合してもよく、表面架橋剤又はその溶液に溶解させて混合してもよい。
【0163】
(無機微粒子)
本発明において使用される無機微粒子は、好ましくは二酸化ケイ素等である。具体的には、米国特許第7638570号等に記載されている無機微粒子が挙げられる。該無機微粒子としては、例えば、実施例に記載の乾式シリカ及び親水性ヒュームドシリカ等が挙げられる。
【0164】
上記無機微粒子の使用量(添加量)は、上記吸水性樹脂粉末のBET比表面積が0.027m
2/g以上0.031m
2/g未満であって、該無機微粒子の一次粒子径が20nm未満である場合は、吸水性樹脂粉末の固形分に対して、好ましくは0.3重量%未満、より好ましくは0.2重量%未満である。また、上記無機微粒子の使用量(添加量)は、上記吸水性樹脂粉末のBET比表面積が上記範囲内であって、該無機微粒子の一次粒子径が20nm以上である場合は、吸水性樹脂粉末の固形分に対して、好ましくは1.0重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満である。
【0165】
また、上記無機微粒子の使用量(添加量)は、上記吸水性樹脂粉末のBET比表面積が0.031m
2/g以上であって、該無機微粒子の一次粒子径が20nm未満である場合は、吸水性樹脂粉末の固形分に対して、好ましくは1.2重量%未満、より好ましくは1.0重量%未満、更に好ましくは0.5重量%未満である。また、上記無機微粒子の使用量(添加量)は、上記吸水性樹脂粉末のBET比表面積が上記範囲内であって、該無機微粒子の一次粒子径が20nm以上のときは、吸水性樹脂粉末の固形分に対して、好ましくは2.0重量%未満、より好ましくは1.5重量%未満、更に好ましくは1.0重量%未満である。
【0166】
上記無機微粒子を吸水性樹脂粒子に添加することで、得られる吸水剤の通液性が向上する。
【0167】
(2−8)その他の添加剤添加工程
本発明において、得られる吸水剤に種々の機能を付加させるため、上記以外の添加剤(以下、「その他の添加剤」と称する)を添加することもできる。
【0168】
上記その他の添加剤として、具体的には、キレート剤、無機還元剤、α−ヒドロキシカルボン酸化合物、界面活性剤、リン原子を有する化合物、酸化剤、有機還元剤、金属石鹸等の有機粉末、消臭剤、抗菌剤、パルプ及び熱可塑性繊維等が挙げられる。また、該その他の添加剤は、上記表面架橋剤又は通液性向上剤と同時に、吸水性樹脂粉末又は吸水性樹脂粒子に混合してもよいし、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の何れかの製造工程で添加してもよい。
【0169】
(キレート剤)
本発明において、得られる吸水剤の色調(着色防止)及び劣化防止等の観点から、キレート剤を添加することが好ましい。具体的には、国際公開第2011/040530号の「〔2〕キレート剤」に記載された化合物及びその使用量が、本発明に適用される。
【0170】
(無機還元剤)
本発明において、得られる吸水剤の色調(着色防止)、劣化防止及び残存モノマー低減等の観点から、無機還元剤を添加することが好ましい。具体的には、国際公開第2011/040530号の「〔3〕無機還元剤」に記載された化合物及びその使用量が、本発明に適用される。
【0171】
(α−ヒドロキシカルボン酸化合物)
本発明において、得られる吸水剤の色調(着色防止)等の観点から、α−ヒドロキシカルボン酸を添加することが好ましい。なお、「α−ヒドロキシカルボン酸化合物」とは、分子内にヒドロキシル基を有するカルボン酸又はその塩のことで、α位にヒドロキシル基を有するヒドロキシカルボン酸である。具体的には、国際公開第2011/040530号の「〔6〕α−ヒドロキシカルボン酸化合物」に記載された化合物及びその使用量が、本発明に適用される。
【0172】
(界面活性剤)
本発明において、製造工程中のプロセスダメージ低減等の観点から、界面活性剤を添加することが好ましい。具体的には、国際公開第2005/075070号に記載された化合物及びその使用量が本発明に適用される。更に詳細には、上記「(2−1)単量体水溶液の調製工程」に記載した通りである。
【0173】
(リン原子を有する化合物他)
本発明において、リン原子を有する化合物、酸化剤、有機還元剤、金属石鹸等の有機粉末、消臭剤、抗菌剤、パルプ及び熱可塑性繊維等の添加剤は、得られる吸水剤の性能に応じて適宜添加すればよい。したがって、その使用量(添加量)としては、得られる吸水剤の用途に応じて適宜決定されるため、特に限定されないが、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは3重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。
【0174】
(2−9)その他の工程
本発明においては、上述した工程以外に、造粒工程、整粒工程、微粉除去工程及び微粉の再利用工程等を必要に応じて設けることができる。また、輸送工程、貯蔵工程、梱包工程及び保管工程等の1種又は2種以上の工程を更に含んでもよい。なお、「整粒工程」は、表面架橋工程以降の微粉除去工程、並びに吸水性樹脂が凝集し、所望の大きさを超えた場合に分級及び粉砕を行う工程を含む。また、「微粉の再利用工程」は、微粉をそのまま添加する形態又は大きな含水ゲルとして吸水性樹脂の製造工程の何れかの工程に添加する工程を含む。
【0175】
〔3〕吸水剤の物性
(新規な吸水剤)
本発明に係る吸水剤は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする吸水剤であって、下記の(A)〜(C)を満たす吸水剤である:(A)SFC(生理食塩水流れ誘導性)が20×10
−7・cm
3・s・g
−1以上;(B)加圧下隙間水倍率が9g/g以上;
(C)粒子径が150μm以上710μm未満である粒子の割合が90重量%以上。ただし、(B)加圧下隙間水倍率は、荷重0.3psi(2.07kPa)における吸水剤1gあたりの0.69重量%の塩化ナトリウム水溶液での膨潤ゲル中の隙間水重量である。換言すれば、加圧下隙間水倍率は、吸水剤を0.69重量%の塩化ナトリウム水溶液により膨潤させた場合に2.07kPa(0.3psi)の荷重下において該吸水剤の隙間に保持された該塩化ナトリウム水溶液の、該吸水剤1gあたりに対する重量である。
【0176】
上記(A)〜(C)に掲げた各物性をすべて満たすことによって、本発明に係る吸水剤を紙オムツ等の吸収性物品の吸収体に使用した際に、吸収性物品での戻り量が低減することが見出された。
【0177】
一般的に、隙間水が多い場合、圧力を加えることによって隙間水が排出されるため、戻り量は増加すると考えられるが、この状態は無荷重下で隙間水が多い場合での現象である。一方、本発明に係る吸水剤の場合は、加圧下での隙間水が多い状態、即ち、荷重下であっても、吸水剤を膨潤させたゲル粒子間の隙間に液を保持させることができるため、吸水剤自身の吸収量に加えて、ゲル粒子間の隙間にも液を保持するため、戻り量を低減することができる。なお、本発明に係る吸水剤の戻り量として、加圧下戻り量の好ましい値は下記「(I)加圧下戻り量」に記載した。
【0178】
また、本発明に係る吸水剤は、上記(2−7)に記載した通液性向上剤が含まれることが好ましい。該通液性向上剤の含有量は、通液性向上剤が多価金属カチオンである場合は吸水剤1gあたりの多価金属原子の含有量として3.60×10
−5モル/g未満、通液性向上剤がカチオン性ポリマーである場合は2.5重量%未満、通液性向上剤が無機微粒子であって、一次粒子径が20nm未満である場合は1.2重量%未満であり、一次粒子径が20nm以上である場合は2.0重量%未満であることが好ましい。ただし、上記各含有量は、吸水性樹脂粉末の固形分に対する割合である。
【0179】
また、本発明に係る吸水剤は、上記(2−1)に記載した界面活性剤及び/又は分散剤を更に含んでいてもよい。
【0180】
(更に好ましい物性)
本発明に係る吸水剤は、下記の(D)〜(H)を更に満たすことが好ましい:(D)遠心分離機保持容量(CRC)が25g/g以上;(E)加圧下吸水倍率(AAP)が20g/g以上;(F)吸水速度(FSR)が0.25g/g/s以上;(G)重量平均粒子径(D50)が300μm〜450μm;(H)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45。
【0181】
なお、本発明に係る吸水剤は、上記(A)〜(C)のすべてを満たせばよいが、該吸水剤を紙オムツ等の吸収性物品の吸収体に使用する場合には、上記(A)〜(C)に加えて、上記(D)〜(H)に掲げた物性のうち、少なくとも1つ以上、好ましくはAAPを含めた2つ以上、より好ましくはAAPを含めた3つ以上、更に好ましくはAAPを含めた4つ以上、特に好ましくは5つすべての物性を、所望する範囲内に制御することが望まれる。つまり、上記(A)〜(H)の各物性について、下記の好ましい範囲内に制御することが好ましい。
【0182】
本発明に係る吸水剤は、上記物性が下記の範囲を満たすことで、本発明の効果が発揮され、高濃度紙オムツ(紙オムツ1枚あたりの吸水剤の使用量が多い紙オムツ)において十分な性能を発揮する。以下、各物性の好ましい範囲等を説明する。
【0183】
(A)生理食塩水流れ誘導性(SFC)
本発明に係る吸水剤の生理食塩水流れ誘導性(SFC)は、20以上であり、好ましくは50以上、より好ましくは70以上、更に好ましくは80以上である。上限値については特に限定されないが、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下である。したがって、上記生理食塩水流れ誘導性(SFC)の代表的な範囲としては、上述した上限値及び下限値の範囲内で適宜選択することができる。例えば、20〜3000、50〜3000、80〜2000等、任意の範囲を選択することができる。なお、生理食塩水流れ誘導性(SFC)の単位は、×10−7・cm3・s・g−1である。
【0184】
上記生理食塩水流れ誘導性(SFC)が20×10
−7・cm
3・s・g
−1未満の場合、尿及び血液等の体液等の液透過性が低いため、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体として適さない。また、上記生理食塩水流れ誘導性(SFC)が3000×10
−7・cm
3・s・g
−1以下である場合、尿及び血液等の体液等が十分に吸収されずに液漏れが発生するおそれがないため、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体として好適である。なお、上記生理食塩水流れ誘導性(SFC)は、一般に、粒度、表面架橋及び通液性向上剤等により制御することができる。
【0185】
(B)加圧下隙間水倍率
本発明に係る吸水剤の加圧下隙間水倍率は、9g/g以上であり、好ましくは10g/g以上である。上限値については特に限定されないが、好ましくは19g/g以下である。したがって、上記加圧下隙間水の代表的な範囲としては、上述した上限値及び下限値の範囲内で適宜選択することができる。例えば、9g/g〜19g/g、10g/g〜19g/g等、任意の範囲を選択することができる。
【0186】
上記加圧下隙間水倍率が9g/g未満の場合、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体とした際、加圧下において、尿及び血液等の体液等が十分に吸収されずに液漏れが発生するおそれがあるため、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体として適さない。
【0187】
(C)粒子径が150μm以上710μm未満である粒子の割合
本発明に係る吸水剤の粒子径が150μm以上710μm未満である粒子の割合は、90重量%以上であり、好ましくは95重量%以上、より好ましくは97重量%以上、更に好ましくは98重量%以上である。
【0188】
上記粒子の割合が90重量%未満の場合、微細な粒子及び粗大な粒子が極端に増加することによって、吸水剤自身の吸収量の減少に加え、ゲル粒子間の隙間に保持できる液量も低下するため、戻り量が多くなり、結果として紙オムツ等の吸収性物品の吸収体として適さない。
【0189】
また、上記加圧下隙間水倍率を向上させるには粒度分布の制御が重要である。特に粒子径が710μm以上である粒子の割合が5重量%以下であれば、加圧下隙間水倍率が極端に低下することがない。粒度分布は、粉砕工程及び分級工程で制御することができる。
【0190】
(D)遠心分離機保持容量(CRC)
本発明に係る吸水剤の遠心分離機保持容量(CRC)は、通常5g/g以上であり、好ましくは15g/g以上、より好ましくは25g/g以上である。上限値については特に限定されず高値ほど好ましいが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは70g/g以下、より好ましくは50g/g以下、更に好ましくは40g/g以下である。したがって、上記遠心分離機保持容量(CRC)の代表的な範囲としては、上述した上限値及び下限値の範囲内で適宜選択することができる。例えば、5g/g〜70g/g、15g/g〜50g/g、25g/g〜40g/g等、任意の範囲を選択することができる。
【0191】
上記遠心分離機保持容量(CRC)が5g/g以上である場合、吸水剤の吸収量が十分であり、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体として好適である。また、上記遠心分離機保持容量(CRC)が70g/g以下である場合、尿及び血液等の体液等を吸収する速度が低下しないため、高吸水速度タイプの紙オムツ等への使用に適する。なお、遠心分離機保持容量(CRC)は、内部架橋剤及び表面架橋剤等で制御することができる。
【0192】
(E)加圧下吸水倍率(AAP)
本発明に係る吸水剤の加圧下吸水倍率(AAP)は、好ましくは20g/g以上、より好ましくは22g/g以上、更に好ましくは23g/g以上、特に好ましくは24g/g以上、最も好ましくは25g/g以上である。上限値については特に限定されないが、好ましくは30g/g以下である。したがって、上記加圧下吸水倍率(AAP)の代表的な範囲としては、上述した上限値及び下限値の範囲内で適宜選択することができる。例えば、20g/g〜30g/g、22g/g〜30g/g、25g/g〜30g/g等、任意の範囲を選択することができる。
【0193】
上記加圧下吸水倍率(AAP)が20g/g以上である場合、紙オムツ等で実際に使用される際、吸収体に圧力が加わった状態での吸収量が低下しないため、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体として好適である。なお、加圧下吸水倍率(AAP)は、粒度及び表面架橋剤等で制御することができる。
【0194】
(F)吸水速度(FSR)
本発明に係る吸水剤の吸水速度(FSR)は、好ましくは0.10g/g/s以上、より好ましくは0.15g/g/s以上、更に好ましくは0.20g/g/s以上、特に好ましくは0.25g/g/s以上である。上限値については特に限定されないが、好ましくは5.0g/g/s以下、より好ましくは3.0g/g/s以下である。したがって、上記吸水速度(FSR)の代表的な範囲としては、上述した上限値及び下限値の範囲内で適宜選択することができる。例えば、0.10g/g/s〜5.0g/g/s、0.15g/g/s〜5.0g/g/s、0.20g/g/s〜3.0g/g/s等、任意の範囲を選択することができる。
【0195】
上記吸水速度(FSR)が0.10g/g/s以上である場合、尿及び血液等の体液等が十分に吸収されずに液漏れが発生するおそれがないため、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体として好適である。なお、吸水速度(FSR)は、発泡重合及び粒度等により制御することができる。
【0196】
(G)重量平均粒子径(D50)
本発明に係る吸水剤の重量平均粒子径(D50)は、好ましくは200μm〜600μm、より好ましくは200μm〜550μm、更に好ましくは250μm〜500μm、特に好ましくは300μm〜450μmである。
【0197】
なお、上述したように、上記加圧下隙間水倍率を向上させるには粒度分布の制御が重要である。重量平均粒子径(D50)については、200μm〜600μmの範囲内とすることで加圧下隙間水倍率を所望する範囲内とすることができる。重量平均粒子径(D50)は、粉砕工程及び分級工程で制御することができる。
【0198】
(H)粒度分布の対数標準偏差(σζ)
本発明に係る吸水剤の粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.20〜0.50、より好ましくは0.25〜0.45、更に好ましくは0.27〜0.35である。
【0199】
なお、上述したように、上記加圧下隙間水倍率を向上させるには粒度分布の制御が重要である。粒度分布の対数標準偏差(σζ)については、0.20〜0.50の範囲内とすることで加圧下隙間水倍率を所望する範囲内とすることができる。粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、粉砕工程及び分級工程で制御することができる。
【0200】
(I)加圧下戻り量
本発明に係る吸水剤の加圧下戻り量は、その値が小さいほど好ましく、3g以下であれば、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体用途として十分である。
【0201】
上記加圧下戻り量が3g以下である場合、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体とした際、加圧下において一度吸収した尿及び血液等の体液等が再度排出されることがなく、液漏れが発生するおそれが少ないため、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体として好適である。
【0202】
なお、従来の測定においては、吸収液の吸収時と戻り量の測定時とで荷重条件(測定時の荷重の方がより大きい)を変更していた。かような荷重条件とすることで、吸水剤に吸収されずに吸収体に留まっている吸収液の量も測定できると考えられていたためである。しかしながら、上記の荷重条件では、一旦吸水剤に吸収されていた吸収液が再度浸み出して戻り量が多くなったり、吸水剤のゲル強度が低い場合ではゲルブロッキングを起こして戻り量が少なくなったりする等の問題が発生し、正しく評価できないことが判明した。そこで、本発明においては、吸収液の吸収時と戻り量の測定時とで同じ荷重条件とすることで、上記問題点が解消し、実使用時に近い状態で測定することが可能となった。更に、吸収体を作成することなく、吸水剤のみで簡便に加圧下戻り量を測定することができた。
【0203】
(J)水可溶分(Ext)
本発明に係る吸水剤の水可溶分(Ext)は、通常50重量%以下であり、好ましくは35重量%以下、より好ましくは25重量%以下、更に好ましくは15重量%以下である。下限値については特に限定されないが、好ましくは0重量%、より好ましくは0.1重量%程度である。したがって、上記水可溶分(Ext)の代表的な範囲としては、上述した上限値及び下限値の範囲内で適宜選択することができる。例えば、0重量%〜50重量%、0.1重量%〜50重量%、0.1重量%〜35重量%等、任意の範囲を選択することができる。
【0204】
上記水可溶分(Ext)が50重量%以下である場合、ゲル強度が強く、液透過性に優れた吸水剤となりやすい。更に、戻り量が少なくなるため、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体として好適である。なお、水可溶分(Ext)は、内部架橋剤等で制御することができる。
【0205】
(K)含水率
本発明に係る吸水剤の含水率は、好ましくは0重量%を超えて15重量%以下、より好ましくは1重量%〜13重量%、更に好ましくは2重量%〜10重量%、特に好ましくは2重量%〜9重量%である。
【0206】
上記含水率を上記範囲内に制御することで、粉体特性(例えば、流動性、搬送性及び耐ダメージ性等)に優れた吸水剤が得られる。
【0207】
(L)残存モノマー
本発明に係る吸水剤に含有される残存モノマーは、安全性の観点から、好ましくは500ppm以下、より好ましくは400ppm以下、更に好ましくは300ppm以下である。下限値については特に限定されないが、好ましくは0ppm、より好ましくは10ppm程度である。したがって、上記残存モノマーの代表的な範囲としては、上述した上限値及び下限値の範囲内で適宜選択することができる。例えば、0ppm〜500ppm、0ppm〜300ppm、10ppm〜400ppm等、任意の範囲を選択することができる。
【0208】
上記残存モノマーを上記範囲内に制御することで、人体の皮膚等への刺激が軽減される吸水剤が得られる。
【0209】
(M)モデル吸収体の戻り量
本発明に係る吸水剤を用いたモデル吸収体の戻り量は、その値が小さいほど好ましく、当該戻り量が1.5g以下であれば紙オムツ等の吸収性物品の吸収体用途として十分な性能を有していることになる。
【0210】
上記モデル吸収体の戻り量が1.5gを超える場合、加圧下戻り量が3gを超える場合と同様、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体とした際、一旦吸収された尿及び血液等の体液等が再度排出され、液漏れが発生するおそれがあるため、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体として適さない傾向にある。モデル吸収体の戻り量は、例えば、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0211】
〔4〕吸水剤の用途
本発明の吸水剤は、特に限定されないが、好ましくは紙オムツ、生理用ナプキン及び失禁パッド等の吸収性物品に備えられた吸収体に用いられる。特に、本発明の吸水剤は、原料由来の臭気及び着色等が問題となっていた高濃度紙オムツ(紙オムツ1枚あたりの吸水性樹脂の使用量が多いもの)の吸収体として使用することができる。更に、本発明の吸水剤は、上記吸収体の上層部に使用される場合に、顕著な効果が期待できる。
【0212】
また、上記吸収体として、吸水性樹脂以外にパルプ繊維等の吸収性材料を使用することもできる。この場合、吸収体中の吸水性樹脂の含有量(コア濃度)としては、好ましくは30重量%〜100重量%、より好ましくは40重量%〜100重量%、更に好ましくは50重量%〜100重量%、更により好ましくは60重量%〜100重量%、特に好ましくは70重量%〜100重量%、最も好ましくは75重量%〜95重量%である。
【0213】
上記コア濃度を上記範囲とすることで、該吸収体を吸収性物品の上層部に使用した場合、吸収性物品が清浄感のある白色状態を保つことができる。更に、尿及び血液等の体液等の拡散性に優れるため、効率的な液分配によって吸収量の向上が見込める。
【0214】
〔5〕吸水剤の評価方法
本発明に係る吸水剤の評価方法は、吸水剤を膨潤して得られるゲル粒子について、当該膨潤したゲル粒子から構成されるゲル層内において、該ゲル粒子間に発生する空隙を測定する工程を含む、吸水剤からの液戻り性能の評価方法である。本明細書において、「液戻り性能」とは、吸水した吸水剤に荷重がかかった場合の液の戻りに関する性能を意味し、上述の戻り量等が含まれる。
【0215】
また、上記評価方法で用いられる、ゲル粒子間の空隙を測定する、測定方法として、本発明では、上記測定に供される吸水剤の飽和吸収量に対して過剰量の水性媒体を荷重下で流通させることで、該吸水剤を膨潤させてゲル粒子を得る工程と、上記ゲル粒子間の空隙に含まれる上記水性媒体の重量を測定し、当該吸水剤の単位重量当たりの空隙を算出する工程と、を含む。
【0216】
以下、上記測定方法について説明する。
【0217】
上記測定方法で測定される吸水剤の物性は加圧下隙間水倍率である。即ち、上記「吸水剤の単位重量当たりの空隙を算出する」とは、加圧下隙間水倍率を算出することを意味する。当該加圧下隙間水倍率の測定条件として、上記測定に供される吸水剤の量が、好ましくは0.035g/cm
2〜0.071g/cm
2であり、より好ましくは0.040g/cm
2〜0.065g/cm
2であり、更に好ましくは0.045g/cm
2〜0.060g/cm
2である。当該吸水剤の量が0.071g/cm
2以下であれば、ゲル層高さが5cmを超えることがなく測定できるため、好ましい。当該吸水剤の量が0.035g/cm
2以上であれば、測定時のふれが小さく、正確に測定できるため、好ましい。
【0218】
また、上記水性媒体を流通させる際の荷重が、好ましくは1.5kPa〜4.9kPaであり、より好ましくは1.8kPa〜4.0kPaであり、更に好ましくは2.0kPa〜3.0kPaである。当該荷重が4.9kPa以下であれば、水性媒体の吸収量が十分となり加圧下隙間水倍率の差を認識しやすくなるため、好ましい。また、当該荷重が1.5kPa以上であれば、ゲル層高さが5cmを超えることがなく測定できるため、好ましい。
【0219】
更に上記水性媒体は、一価の金属イオンを含む水溶液であることが好ましい。該一価の金属イオンは、好ましくはナトリウムイオン又はカリウムイオンであり、より好ましくはナトリウムイオンである。また、上記水性媒体に含まれる一価の金属イオン濃度が、好ましくは0.085モル/l〜0.256モル/lであり、より好ましくは0.093モル/l〜0.175モル/lであり、更に好ましくは0.100モル/l〜0.150モル/lである。当該金属イオン濃度が0.256モル/l以下であれば、水性媒体の吸収量が十分となり加圧下隙間水倍率の差を認識しやすくなるため、好ましい。また、当該金属イオン濃度が0.085モル/l以上であれば、ゲル層高さが5cmを超えることがなく測定できるため、好ましい。
【0220】
(測定装置及び手順)
本測定方法には、例えば、メッシュを底面に備えたシリンダーと、シリンダーの底面にかかる荷重が2.07kPaとなる重量を有し、且つ、シリンダーの運動方向と平行な方向へ水性媒体を流通させる穿孔を備えた荷重体と、水性媒体を上記シリンダーに供給する水性媒体供給部とを備えた測定装置を用いることができる。
【0221】
上記メッシュの材質としては、金属、樹脂及び繊維等が挙げられる。上記メッシュは、好ましくは、ステンレスワイヤーメッシュである。上記メッシュの目開きは、吸水剤が通過せず、水性媒体が通過する大きさであれば限定されないが、好ましくは0.01mm〜0.1mm、より好ましくは0.030mm〜0.050mm、更に好ましくは0.038mmである。
【0222】
上記シリンダーは、金属製であってもよく、樹脂製であってもよいが、好ましくはアクリル製である。上記シリンダーの内径は、特に限定されないが、例えば、好ましくは5.0cm〜10.0cm、より好ましくは6.0cmである。
【0223】
上記荷重体は、例えば、穿孔を有するピストンヘッドを備えたピストンと錘とから構成される。上記穿孔の内径は、例えば、好ましくは1.0mm〜10.0mm、より好ましくは5.0mm〜10.0mm、更に好ましくは9.0mmである。上記穿孔の数は、例えば、好ましくは5個〜30個、より好ましくは10個〜25個、更に好ましくは21個である。
【0224】
また、上記水性媒体は、0.69重量%の塩化ナトリウム水溶液が最も好ましいが、0.90重量%の塩化ナトリウム水溶液を使用することもできる。一方、0.50重量%以下の濃度では、測定時のゲル層の厚みが増し、安定的に測定ができないため、好ましくない場合がある。
【0225】
より具体的には、本発明における加圧下隙間水倍率は、以下の測定装置を用いて、以下の手順にて測定され得る。
【0226】
即ち、目開き0.038mmのステンレスワイヤーメッシュを底面に備えた、内径6.0cmのシリンダー(A)と、上記シリンダー(A)の底面にかかる荷重が2.07kPaとなる重量を有し、かつ、内径9.0mmの穿孔21個を通じて水性媒体(C)が上部から下部に流通できる構造を備えた荷重体(B)と、水性媒体(C)として、0.69重量%の塩化ナトリウム水溶液を上記シリンダー(A)に供給する水性媒体供給部と、を備えた、測定装置を用意する。換言すれば、上記荷重体(B)は、水性媒体(C)を重力方向に流通させる内径9.0mmの穿孔21個を備えた荷重体である。
【0227】
上記測定装置を用いて、下記工程(8)〜(13)の操作を行って、得られた重量W1、W2及びW3について下記(式6)にしたがって、加圧下隙間水倍率を算出する。
【0229】
工程(8)重量が1.500±0.005gの範囲である吸水剤(重量:W1(単位:g))を上記シリンダー(A)の内側の上記ステンレスワイヤーメッシュ上に均一に分散させる工程;工程(9)上記分散させた吸水剤の上に上記荷重体(B)を載置する工程;工程(10)上記荷重体(B)を載置した上記シリンダー(A)内へ上記水性媒体供給部から上記水性媒体(C)として0.69重量%の塩化ナトリウム水溶液を配送し、上記ステンレスワイヤーメッシュの上からの静水高さが5cmに達した時点より該静水高さを維持したまま10分間通液させる工程;工程(11)上記10分間の通液後に、上記水性媒体(C)の配送を止めてそのまま放置する工程;工程(12)上記放置を開始した後、上記シリンダー(A)の底面から上記水性媒体(C)の落下が30秒以上発生しなくなった後、上記荷重体(B)及び上記ゲル粒子を取り出さずに該シリンダー(A)の重量W2(単位:g)を測定する工程;工程(13)上記荷重体(B)及び上記ゲル粒子を取り出さずに該シリンダー(A)をフィルターペーパーの上に16時間±1時間放置することで上記ゲル粒子の隙間の水性媒体(C)を吸収させた後、該シリンダー(A)の重量W3(単位:g)を測定する工程。
【0230】
なお、後述する実施例における加圧下隙間水倍率の測定では、吸水剤に対する荷重が2.07kPa、水性媒体の金属イオン濃度が0.118モル/l、吸水剤の量が0.053g/cm
2の条件下で測定した。
【0231】
上記水性媒体供給部は、例えば、水性媒体を貯蔵する貯蔵タンク及び当該貯蔵タンクと上記シリンダー(A)とを接続するチューブ(ガラス管及び/又はフレキシブルチューブ)を備えている構成であってもよい。
【0232】
なお、加圧下隙間水倍率の測定には、SFC測定装置及び器具を転用することも可能である。
【0233】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【実施例】
【0234】
以下、製造例、実施例及び比較例にしたがって、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの説明に限定解釈されるものではなく、各実施例に記載された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施例についても、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0235】
なお、実施例等で使用する電気機器(吸水剤の物性測定も含む)は、特に注釈のない限り、200V又は100Vの電源を使用した。また、吸水剤の物性は、特に注釈のない限り、室温(20℃〜25℃)、相対湿度50%RHの条件下で実施した。また、容量を表す「リットル」を「l」又は「L」と、「重量%」を「wt%」と便宜上、表記する場合がある。
【0236】
[吸水剤の物性測定]
以下、本発明に係る吸水剤の物性測定について説明するが、測定対象が、例えば、「吸水性樹脂粉末」である場合、特に注釈のない限り、各項目の「吸水剤」を「吸水性樹脂粉末」に読み替えて適用する。
【0237】
(A)生理食塩水流れ誘導性(SFC)
本発明に係る吸水剤の生理食塩水流れ誘導性(SFC)は、米国特許第5669894号に記載された測定方法に準拠して測定した。
【0238】
(B)加圧下隙間水倍率
本発明に係る吸水剤の加圧下隙間水倍率は、下記の測定装置を用いて、2.07kPa(0.3psi)荷重下で、生理食塩水で膨潤させたゲル粒子間に発生する空隙を測定することで求めた。
【0239】
(加圧下隙間水倍率測定装置)
この測定に好適な装置を
図1に示す。
図1は、加圧下隙間水倍率の測定に用いる測定装置の概略を示す断面図である。ラボジャッキ103の上に約10Lの容量を有する貯蔵タンク102を設置した。貯蔵タンク102には、静水高さを一定に保つための機能を得るため、末端の開いたガラス管100とゴム栓部101とを設けた。ゴム栓部101を取り外すことにより貯蔵タンク102に測定液の追加を行うことができる。貯蔵タンク102は、液出口を有する。該液出口は、貯蔵タンク102中に測定液を加えた場合に、測定液の液面より下になる。該液出口には、バルブ105を備えたガラス管104を接続した。測定液の配送は、バルブ105を開閉することにより制御した。ガラス管104に、フレキシブルチューブ109を接続し、フレキシブルチューブ109のもう一端を、
図2に詳細を示した加圧下隙間水倍率測定器具106に接続した。加圧下隙間水倍率測定器具106を、測定液を配送できるように設置した。測定時、加圧下隙間水倍率測定器具106を、目開き1mmのステンレス製ワイヤーメッシュを有する支持体108の上に設置した。支持体108の下部には、測定液を捕集するための捕集タンク107を配置した。
【0240】
貯蔵タンク102は、ガラス管100の末端が支持体108上のステンレス製ワイヤーメッシュ表面から5cmの高さになるように、ラボジャッキ103で高さを調節した。なお、加圧下隙間水倍率測定器具106を設置する前に、測定液の静水高さを調節するために以下の操作を行った。支持体108の上に、支持体108との接地点から5cmの高さに印を付けた容量120mLのポリプロピレン製容器を設置し、フレキシブルチューブ109を該ポリプロピレン製容器内に入れた。バルブ105を開き、測定液をポリプロピレン製容器に注ぎ、測定液が5cmの高さで送液が停止するように、ラボジャッキ103を微調節した。なお、高さ調節はラボジャッキ103ではなく、ガラス管100で行ってもよい。
【0241】
フレキシブルチューブ109は、支持体108上に測定液を12g/sの流速で送液できる内径とした。
【0242】
なお、
図1においては、図面の理解を容易にするために、右側の装置(加圧下隙間水倍率測定器具106、捕集タンク107及び支持体108等)は、左側の装置(貯蔵タンク102及びラボジャッキ103等)の縮尺に比べて拡大して示した。
【0243】
図2は、加圧下隙間水倍率の測定に用いる測定装置の一部(加圧下隙間水倍率測定器具106)の概略を示す断面図である。加圧下隙間水測定器具106は、基本的に、下部にステンレス製ワイヤーメッシュを備えたアクリル製シリンダー113、アクリル製ピストン111、液配送用チューブ(フレキシブルチューブ109)の挿入口を備えたアクリル製カバー112、及び錘110を備えている。アクリル製ピストン111は、
図2に示したように穴の開いたピストンヘッド114を備えている。
図3は、加圧下隙間水倍率の測定に用いる測定装置のピストンヘッド114の概略を示す断面図である。なお、
図3は、
図2に示される断面と垂直な方向における断面を示している。ピストンヘッド114の穿孔は、
図2及び3に示すようにピストンヘッド114の上下方向(ピストン111の運動方向に平行な方向)に貫通した円筒状の構造となっている。ピストンヘッド114の下面には、400メッシュ(目開き38μm)のワイヤーメッシュ(Weisse & Eschrich社製、材質:SUS304、メッシュ幅:0.038mm、ワイヤー径:0.025mm)115が接着されている。ピストンヘッド114は、アクリル製シリンダー113の内径より僅かに小さい直径を有し、ピストンヘッド114の上下の動きが妨げられること無くアクリル製シリンダー113の内側を滑り移動できる大きさを有する。アクリル製ピストン111のシャフトの上部は錘110を設置できるように加工されている。アクリル製シリンダー113は、内径6.00cm(底面積:28.27cm
2)、壁面の厚み0.5cm、及び高さ6.0cmを有する。アクリル製シリンダー113の底面には、400メッシュ(目開き38μm)のワイヤーメッシュ(Weisse & Eschrich社製、材質:SUS304、メッシュ幅:0.038mm、ワイヤー径:0.025mm)115が接着されている。測定時には、シリンダー113内に膨潤した吸水剤116が保持される。アクリル製カバー112は、アクリル製ピストン111のシャフトの外径より僅かに大きい穴を有し、アクリル製ピストン111のシャフトの上下の動きが妨げられること無く滑り移動できる大きさを有する。また、アクリル製カバー112は、液配送用チューブの挿入口を備えている。錘110とアクリル製ピストン111との重さを合計した重量は、アクリル製シリンダー113の底面に対して2.07kPa(0.3psi)となるよう調整されている。
【0244】
(加圧下隙間水倍率測定方法)
本発明に係る吸水剤の加圧下隙間水倍率の測定にあたって、測定に用いられる水性媒体として0.69重量%の塩化ナトリウム水溶液を用意した。なお、測定ごとに、容量約10Lの貯蔵タンク102を該水溶液で満たすようにした。
【0245】
先ず、1.500±0.005gの吸水剤を秤量した。該吸水剤の重量をW1(単位:g、有効数字:4桁)とした。秤量した吸水剤をアクリル製シリンダー113の下面全体に、丁寧に均一に分散させて撒き入れた。吸水剤を入れた後、アクリル製ピストン111、アクリル製カバー112及び錘110を設置した。
【0246】
その後、加圧下隙間水測定器具106を測定装置の支持体108の上へ設置し、フレキシブルチューブ109を挿入口に設置した。次に、バルブ105を開くことにより、測定液の配送を開始した。
【0247】
図4は、加圧下隙間水倍率の測定手順を示す概略図である。
図4の(a)に示すように、アクリル製シリンダー113内の静水高さ(測定液117の高さ)が5cmに到達した時点で、通液時間の計測を開始した。
【0248】
10分間通液後、速やかにバルブ105を閉じ、
図4の(b)に示す状態とした。バルブ105を閉じた後、加圧下隙間水測定器具106のアクリル製シリンダー113から測定液が流れ落ちる。
図4の(c)に示すように、アクリル製シリンダー113から30秒間に1滴の液も流れ落ちなくなった時点(アクリル製シリンダー113内の静水高さが、膨潤した吸水剤116によって形成されたゲル層の高さと一致する時点)で、加圧下隙間水測定器具106の重量を測定した。これをW2(単位:g、有効数字:4桁)とする。ここで、膨潤した吸水剤116の隙間に測定液117が残っている。該隙間に残った測定液が隙間水である。
【0249】
その後、水平な実験台上にフィルターペーパー(Grade:989、大きさ:10cm×10cm/Ahlstrom社)を5枚重ね、その上に、加圧下隙間水測定器具106を置いた。
【0250】
10分経過後、別途用意した上記と同様の新しい5枚重ねたフィルターペーパー上に、加圧下隙間水測定器具106を移動し、16±1時間後に該加圧下隙間水測定器具106の重量を測定した。これをW3(単位:g、有効数字:4桁)とする。W3は、
図4の(d)に示すように、加圧下隙間水測定器具に隙間水が残っていない状態の重量である。なお、上記フィルターペーパーは、EDANA strikethrough testに記載されている仕様のものを用いた。また、加圧下隙間水倍率は、下記(式6)に基づいて算出した。
【0251】
【数7】
【0252】
(C)粒子径が150μm以上710μm未満である粒子の割合
本発明に係る吸水剤の粒子径が150μm以上710μm未満である粒子の割合は、EDANA法(ERT420.2−02)に準拠して測定した。得られた粒度分布の結果に基づいて、粒子径が150μm以上710μm未満である粒子の割合を求めた。
【0253】
(D)遠心分離機保持容量(CRC)
本発明に係る吸水剤の遠心分離機保持容量(CRC)は、EDANA法(ERT441.2−02)に準拠して測定した。
【0254】
(E)加圧下吸水倍率(AAP)
本発明に係る吸水剤の加圧下吸水倍率(AAP)は、EDANA法(ERT442.2−02)に準拠して測定した。なお、荷重条件を49g/cm
2(4.81kPa)に変更した。
【0255】
(F)吸水速度(FSR)
本発明に係る吸水剤の吸水速度(FSR)は、国際公開第2009/016055号に記載された測定方法に準拠して測定した。
【0256】
(G)重量平均粒子径(D50)
本発明に係る吸水剤の重量平均粒子径(D50)は、米国特許第7638570号に記載された測定方法に準拠して測定した。
【0257】
一方、粒子状含水ゲル状架橋重合体の重量平均粒子径(D50)については、以下の手法で測定した。
【0258】
即ち、容量1Lのポリプロピレン製円筒型容器(直径8cm×高さ21cm)に、0.08重量%のエマール20C(界面活性剤/花王株式会社)を含む20重量%の塩化ナトリウム水溶液(以下、「エマール水溶液」と称する)500gを投入し、そこに固形分α重量%の粒子状含水ゲル(温度20℃〜25℃)20gを添加した。
【0259】
続いて、スターラーチップ(直径7mm×長さ50mm)を用いて、300rpmで60分間、上記エマール水溶液を攪拌し、分散液とした。
【0260】
上記攪拌終了後、回転盤上に設置したJIS標準篩(直径21cm、篩の目開き;8mm/4mm/2mm/1mm/0.60mm/0.30mm/0.15mm/0.075mm)の中央部に上記分散液を注ぎ込み、更にエマール水溶液100gを用いて、上記円筒型容器内に残存した全粒子状含水ゲルを該篩上に洗い出した。
【0261】
その後、上記篩を手で回転(20rpm)させながら、エマール水溶液6000gを30cmの高さからシャワーノズル(孔数:72、液量:6.0L/min)を用いて篩全体が注水範囲(50cm
2)となるように、満遍なく注ぎ、粒子状含水ゲルを分級した。
【0262】
上記操作後、篩ごとに、篩上に残留した粒子状含水ゲルを約2分間水切りした後に秤量した。その後、各篩上に残留した粒子状含水ゲルの重量から下記(式7)及び(式8)に基づいて、重量%を算出した。
【0263】
【数8】
【0264】
【数9】
【0265】
ここで、
X:分級及び水切り後の各篩上に残留した粒子状含水ゲルの重量%(単位:重量%)
w:分級及び水切り後の各篩上に残留した粒子状含水ゲルのそれぞれの重量(単位:g)
W:分級及び水切り後の各篩上に残留した粒子状含水ゲルの総重量(単位:g)
R(α):固形分α重量%の粒子状含水ゲルに換算したときの篩の目開き(単位:mm)
r:20重量%の塩化ナトリウム水溶液中で膨潤した粒子状含水ゲルが分級された篩の目開き(単位:mm)
である。
【0266】
(H)σζ(粒度分布の対数標準偏差)
本発明に係る吸水剤のσζは、米国特許第7638570号に記載された測定方法に準拠して測定した。
【0267】
一方、粒子状含水ゲル状架橋重合体のσζについては、上記(G)D50(重量平均粒子径)と同様の手法で測定し、粒子状含水ゲルの粒度分布を対数確率紙にプロットした。
【0268】
上記プロットから、積算篩上%R=84.1重量%(これをX1とする)と、積算篩上%R=15.9重量%(これをX2とする)の粒径を求め、下記(式9)により、対数標準偏差(σζ)を求めた。σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
【0269】
【数10】
【0270】
ここで、X1は、R=84.1重量%のときの粒子径であり、X2は、R=15.9重量%のときの粒子径である。
【0271】
(I)加圧下戻り量
加圧下隙間水倍率を特定したことによる効果を確認するため、加圧下戻り量を測定した。該測定は、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対する2.07kPa加圧下での戻り量を示す。
【0272】
内径60mmのプラスチックの支持円筒の底に、厚さ0.3mmのポリエチレンテレフタレートシートを融着させ、該シート上に1.50g±0.005gの吸水剤を均一に散布した。
【0273】
その上に、直径60mmの金網(製品コード:SV−34/30tw、目開き:0.034mm、メッシュ数:400本、線径:0.030mmを切り抜いたもの/アサダメッシュ株式会社)を乗せ、SFC器具のピストン及び錘を設置した。
【0274】
ピストン上部から、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液35.0gを注ぎ、5分間静置して膨潤させた。その後、ピストンと金網との間に重量(W4:単位g)を予め測定した直径60mmのろ紙(φ300mmを切り抜いたもの/ADVANTECグループ 東洋濾紙株式会社)10枚を挟み、再度ピストン及び錘を設置した後、5分間静置して戻り液をろ紙に吸収させた。
【0275】
5分経過後、ろ紙を取り出し、付着したゲルをピンセットで取り除いて重量(W5:単位g)を測定した。下記(式10)によって、加圧下戻り量を算出した。
【0276】
【数11】
【0277】
(J)水可溶分(Ext)
本発明に係る吸水剤の水可溶分(Ext)は、EDANA法(ERT470.2−02)に準拠して測定した。
【0278】
(K)含水率
本発明に係る吸水剤の含水率は、EDANA法(ERT430.2−02)に準拠して測定した。なお、本発明においては、試料量を1.0g、乾燥温度を180℃にそれぞれ変更して測定した。また、固形分(単位;重量%)は、(100−含水率)で規定した。
【0279】
(L)残存モノマー
本発明に係る吸水剤の残存モノマーは、EDANA法(ERT410.2−02)に準拠して測定した。
【0280】
(M)BET比表面積
乾燥重合体を粉砕及び分級した後に得られる吸水性樹脂粉末のBET比表面積は、JIS Z 8830に基づいて測定した。なお、該BET比表面積の測定には、高精度ガス/蒸気吸着量測定装置(BELSORP−max/日本ベル株式会社)を、また、前処理には吸着測定用前処理装置(BELSORP−vacII/日本ベル株式会社)を用いた。吸着質にクリプトンガスを使用して液体窒素温度にて測定を行い、BET多点法によって比表面積を求めた。
【0281】
(N)湿潤下粒子間間隙率(Wet Porosity)
本発明に係る吸水剤の湿潤下粒子間間隙率(Wet Porosity)は、国際公開第2005/097313号に記載された測定方法に準拠して測定した。
【0282】
(O)モデル吸収体の戻り量
本発明に係る吸水剤を紙オムツ等の吸収性物品に用いた場合の効果を確認するため、モデル吸収体の戻り量を測定した。該測定は、加圧下戻り量と同様に、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対する2.07kPa加圧下での戻り量を示す。
【0283】
図5は、モデル吸収体の戻り量の測定に用いる測定装置500の構造を示す概略図である。
【0284】
まず、内寸が横401mm、縦151mm、高さ30mm、外寸が横411mm、縦161mm、高さ35mmのアクリル樹脂製トレー501の中央部に、両端からそれぞれ50mmあけて、幅10mm、長さ300mmの両面テープ(ニチバン株式会社製、両面テープ ナイスタックNW−10)502を横方向のそれぞれの内壁に沿って貼り付けた。これらの両面テープ502上に、厚み0.1mm、密度0.14g/cm
3、横300mm、縦150mmの吸水紙503を皺のないように貼り付けた。アクリル樹脂製トレー501の横方向のそれぞれの内壁から15mm内側の部分に吸水剤504を13.5g、均一に散布した(坪量375g/m
2)。なお、散布前には静電気が発生しないように、静電防止剤をアクリル樹脂製トレー501の壁面に塗布する又は息を吹きかけるなどの処置を行った。
【0285】
散布した吸水剤504の上にトップシート505を載置した。トップシート505の位置は、アクリル樹脂製トレー501の内壁からの距離が横方向で左右同等、縦方向で上下同等になるように配置した。
【0286】
トップシート505には、ユニチャーム株式会社製、商品名マミーポコテープタイプ、Lサイズ(2014年6月に日本にて購入、パッケージ底面の番号:404088043)から取り出したシートを使用した。取り出したシートのサイズは縦14cm、横39cm、重さは3.3g〜3.6gであった。接着剤によって、オムツ中のパルプなどが付着しているため、十分に除去してから使用した。
【0287】
トップシート505の上に、横390mm、縦90mm、厚み0.63mmのサイズの金網506(JIS金網、ステンレス製、20メッシュ)を載置した。この金網506の上にさらに、中央部に内径30mmの円筒形の投入孔507を有するアクリル樹脂製の上蓋508(横400mm、縦150mm、厚み20mm、円筒部の高さ100mm)を載置した。
【0288】
図6はモデル吸収体の戻り量の測定に用いる測定装置の上蓋及びトレーの外観を示す図であり、(a)は上蓋の上面図であり、(b)は上蓋の側面図であり、(c)はトレーの上面図であり、(d)はトレーの側面図である。
【0289】
図6の(a)において、aは投入孔507の内径、b及びcはそれぞれ上蓋508の横及び縦の寸法を表す。
図6の(b)において、dは投入孔507の円筒部の高さ、eは上蓋508の厚みに対応する。
【0290】
図6の(c)は、アクリル樹脂製トレー501における吸水紙503の位置関係を示している。
図6の(c)において、f及びgは吸水紙503が縦方向のそれぞれの内壁から50.5mm内側の部分に位置することを示し、hは吸水紙503の横の寸法(300mm)を示している。iはアクリル樹脂製トレー501の横の内寸(401mm)、jはアクリル樹脂製トレー501の縦の内寸及び吸水紙503の縦の寸法(151mm)を示している。kはアクリル樹脂製トレー501の横方向における内寸と外寸との差(5mm)を示している。lはアクリル樹脂製トレー501の縦方向における内寸と外寸との差(5mm)を示している。
【0291】
また、
図6の(d)において、mはアクリル樹脂製トレー501の横の外寸(411mm)を示し、nはアクリル樹脂製トレー501の高さ(35mm)を示す。
【0292】
この上蓋508の上にさらに、吸水剤504に均等に荷重がかかるように錘509(材質:ステンレス)を載置した。この際、上記金網506、アクリル樹脂製の上蓋508及び錘509の総重量が7578gになるように錘509の重さなどを調整した(荷重の圧力は吸水性樹脂粉末の散布面積に対しては2.07kPaとなる)。
【0293】
モデル吸収体の戻り量測定装置500の投入孔507から37±0.5℃に温度を調整した0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液(好ましくは、1000gに対して0.04gの青色1号で着色しても良い)75gを5秒間で投入した。投入された塩化ナトリウム水溶液は金網506を透過しながら金網506上を拡散し、吸水剤504によって吸収された。
【0294】
続いて、1回目の上記水溶液の投入開始から10分後に、2回目の上記水溶液の投入を行い、金網506上のメッシュの目開きの間に保持された水溶液が全て吸収された。同様に、10分間隔で上記水溶液を投入し、3回目に投入した水溶液も全て吸収された。
図7は、モデル吸収体の戻り量の測定に用いる測定装置の構造を示す概略図である。
図7のように、3回目の上記水溶液の投入開始から3分後に、錘509、上蓋508及び金網506を外して、キッチンタオル510(王子ネピア株式会社、228mm×220mm、2枚重ね)の短辺220mm側を半分に折って5枚重ねたものを1組として、3組重ねたものを小数点以下2桁まで秤量して重量(W6:単位g)を記録し、モデル吸収体の中心に乗せ、金網506は乗せずに、錘509及び上蓋508をキッチンタオル510の上に乗せた。1分間静置した後、モデル吸収体から錘509、上蓋508及びキッチンタオル510を外し、キッチンタオル510の重量(W7:単位g)を小数点以下2桁まで記録し、以下の式(11)に従ってキッチンタオル510の重量変化からキッチンタオル510が吸収した液量を算出し、これをモデル吸収体の戻り量(単位g)とした。
【0295】
【数12】
【0296】
[製造例1]
容量2リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸421.7g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)2.4g、1.0重量%のジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液11.3g、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液140.4g、及び脱イオン水(イオン交換水)394.7gを投入し混合させて、単量体水溶液(a’)を作製した。該単量体水溶液(a’)の温度は、作製直後の1段目の中和熱によって62.5℃まで上昇した。
【0297】
次に、上記単量体水溶液(a’)を攪拌しながら冷却した。液温が38℃となった時点で、40℃に調温した48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液211.9gを上記単量体水溶液(a’)に加え、混合することで単量体水溶液(a)を作製した。このとき、該単量体水溶液(a)の温度は、作製直後の2段目の中和熱によって81.0℃まで上昇した。48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液を混合し始めた直後は、析出物が観察されたが、次第に溶解し透明な均一溶液となった。
【0298】
次に、攪拌状態の上記単量体水溶液(a)に4.0重量%の過硫酸ナトリウム水溶液17.6gを加えた後、直ちにステンレス製バット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面;テフロン(登録商標)コーティング)に大気開放系で注いだ。なお、2段目の中和開始からバット型容器に単量体水溶液(a)を注ぎ込むまでの時間は55秒間とし、該バット型容器はホットプレート(NEO HOTPLATE HI−1000/株式会社井内盛栄堂社)を用いて、表面温度が40℃となるまで加熱した。
【0299】
上記単量体水溶液(a)がバット型容器に注がれてから60秒経過後に重合反応が開始した。該重合反応は、水蒸気を発生しながら四方八方に膨脹発泡して進行した後、バット型容器よりも若干大きなサイズまで収縮した。重合反応の開始から3分経過後に、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)(1)を取り出した。なお、これら一連の操作は、大気開放系で行った。また、重合時のピーク温度は109℃であった。
【0300】
上記重合反応で得られた含水ゲル(1)は、ミートチョッパー(HL−3225N、プレート孔径:10.0mm/レマコム株式会社)を用いてゲル粉砕され、粒子状の含水ゲル(1)とした。
【0301】
上記含水ゲル(1)の投入量は230g/minであり、該含水ゲル(1)の投入と並行して90℃に調温した脱イオン水を50g/minで添加しながらゲル粉砕を行った。なお、製造例1におけるゲル粉砕エネルギー2(GGE2)は3J/g、粒子状の含水ゲル(1)のD50(重量平均粒子径)は1950μm、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は2.43であった。
【0302】
上記操作で得られた粒子状の含水ゲル(1)は、目開き850μmのステンレス製の金網上に広げて載せ、180℃で30分間、熱風を通気させることで乾燥した。続いて、該乾燥操作で得られた乾燥重合体(1)をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社)を用いて粉砕した後、目開き710μm及び45μmのJIS標準篩を用いて分級した。
【0303】
上記一連の操作により、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(1)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(1)の諸物性を表1に示した。
【0304】
[製造例2]
製造例1において、攪拌状態の単量体水溶液(a)に4.0重量%の過硫酸ナトリウム水溶液17.6gを加える前に、木下式ガラスボールフィルター(フィルター粒子No.4/木下理化工業株式会社)を用いて、該単量体水溶液(a)中に窒素ガスを0.1L/minで5秒間導入したこと、及び、ゲル粉砕時に使用するミートチョッパーのプレート孔径を10.0mmから8.0mmに変更したこと以外は、製造例1と同様の操作を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(2)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(2)の諸物性を表1に示した。
【0305】
なお、製造例2では、上記単量体水溶液をバット型容器に注いでから57秒後に重合反応が開始し、重合時のピーク温度は110℃であった。また、ゲル粉砕エネルギー2(GGE2)は9J/g、粒子状の含水ゲル(2)のD50(重量平均粒子径)は900μm、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は1.10であった。
【0306】
[製造例3]
製造例2において、脱イオン水(イオン交換水)を394.7gから390.3に変更し、1.0重量%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)水溶液4.4gを2段目の中和前に加えた以外は、製造例2と同様の操作を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(3)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(3)の諸物性を表1に示した。
【0307】
なお、製造例3では、単量体水溶液の温度は、1段目の中和熱によって62.9℃、2段目の中和熱によって81.7℃まで上昇した。また、上記単量体水溶液をバット型容器に注いでから60秒後に重合反応が開始し、重合時のピーク温度は108℃であった。更に、ゲル粉砕エネルギー2(GGE2)は15J/g、粒子状の含水ゲル(3)のD50(重量平均粒子径)は780μm、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は1.02であった。
【0308】
[製造例4]
製造例3において、ゲル粉砕時に使用するミートチョッパーのプレート孔径を8.0mmから6.0mmに変更した以外は、製造例3と同様の操作を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(4)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(4)の諸物性を表1に示した。
【0309】
なお、製造例4では、ゲル粉砕エネルギー2(GGE2)は17J/g、粒子状の含水ゲル(4)のD50(重量平均粒子径)は600μm、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は0.73であった。
【0310】
[製造例5]
製造例4において、窒素ガスの導入時間を5秒間から10秒間に変更した以外は、製造例4と同様の操作を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(5)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(5)の諸物性を表1に示した。
【0311】
なお、製造例5では、上記単量体水溶液をバット型容器に注いでから59秒後に重合反応が開始し、重合時のピーク温度は112℃であった。また、ゲル粉砕エネルギー2(GGE2)は23J/g、粒子状の含水ゲル(5)のD50(重量平均粒子径)は350μm、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は0.93であった。
【0312】
[製造例5−1]
製造例1において、10.0重量%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)水溶液5.2gを2段目の中和の前に追加添加したこと、4.0重量%の過硫酸ナトリウム水溶液17.6gを5.6重量%の過硫酸ナトリウム水溶液12.5gに変更したこと、及び、ゲル粉砕時に使用するミートチョッパーのプレート孔径を10.0mmから8.0mmに変更したこと以外は、製造例1と同様の操作を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(5−1)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(5−1)の諸物性を表1に示した。
【0313】
なお、製造例5−1では、上記単量体水溶液をバット型容器に注いでから68秒後に重合反応が開始し、重合時のピーク温度は110℃であった。また、ゲル粉砕エネルギー2(GGE2)は25J/g、粒子状の含水ゲル(5−1)のD50(重量平均粒子径)は380μm、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は0.86であった。
【0314】
[製造例5−2]
製造例1において、攪拌状態の単量体水溶液(a)に4.0重量%の過硫酸ナトリウム水溶液17.6gを加える前に、発泡剤として炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)5.2gを追加添加したこと、及び、ゲル粉砕時に使用するミートチョッパーのプレート孔径を10.0mmから6.0mmに変更したこと以外は、製造例1と同様の操作を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(5−2)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(5−2)の諸物性を表1に示した。
【0315】
なお、製造例5−2では、上記単量体水溶液をバット型容器に注いでから61秒後に重合反応が開始し、重合時のピーク温度は107℃であった。また、ゲル粉砕エネルギー2(GGE2)は15J/g、粒子状の含水ゲル(5−2)のD50(重量平均粒子径)は830μm、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は1.07であった。
【0316】
[製造例6]
製造例1において、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)を2.4gから1.8gに、脱イオン水(イオン交換水)を394.7gから395.3gに、それぞれ変更した以外は、製造例1と同様の操作を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(6)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(6)の諸物性を表1に示した。
【0317】
なお、製造例6では、単量体水溶液の温度は、1段目の中和熱によって61.3℃、2段目の中和熱によって81.0℃まで上昇した。また、上記単量体水溶液をバット型容器に注いでから56秒後に重合反応が開始し、重合時のピーク温度は110℃であった。更に、ゲル粉砕エネルギー2(GGE2)は14J/g、粒子状の含水ゲル(6)のD50(重量平均粒子径)は1800μm、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は2.05であった。
【0318】
[製造例7]
製造例6において、ゲル粉砕時に使用するミートチョッパーのプレート孔径を10.0mmから8.0mmに変更した以外は、製造例6と同様の操作を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(7)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(7)の諸物性を表1に示した。
【0319】
なお、製造例7では、ゲル粉砕エネルギー2(GGE2)は18J/g、粒子状の含水ゲル(7)のD50(重量平均粒子径)は1300μm、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は1.17であった。
【0320】
[製造例8]
製造例2において、目開き710μm及び45μmのJIS標準篩に代えて、目開き850μm及び45μmのJIS標準篩を用いて分級した以外は、製造例2と同様の操作を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(8)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(8)の諸物性を表1に示した。
【0321】
【表1】
【0322】
[比較例1]
上記製造例1で得られた吸水性樹脂粉末(1)100重量部に対して、炭酸エチレン0.3重量部、プロピレングリコール0.6重量部、脱イオン水(イオン交換水)3.0重量部、及びポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社)0.001重量部(吸水性樹脂粉末(1)に対して10ppm)からなる表面架橋剤溶液(1)を添加して均一に混合した。その後、当該混合物を208℃で40分間、加熱処理することで表面架橋を行った。
【0323】
上記加熱処理後、得られた比較吸水性樹脂粒子(1)を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、比較吸水剤(1)を得た。得られた比較吸水剤(1)の諸物性を表2に示した。
【0324】
[実施例1]
上記比較例1において、吸水性樹脂粉末(1)を製造例2で得られた吸水性樹脂粉末(2)に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行って、吸水剤(1)を得た。得られた吸水剤(1)の諸物性を表2に示した。
【0325】
[実施例2]
上記比較例1において、吸水性樹脂粉末(1)を製造例3で得られた吸水性樹脂粉末(3)に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行って、吸水剤(2)を得た。得られた吸水剤(2)の諸物性を表2に示した。
【0326】
[実施例3]
上記比較例1において、吸水性樹脂粉末(1)を製造例4で得られた吸水性樹脂粉末(4)に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行って、吸水剤(3)を得た。得られた吸水剤(3)の諸物性を表2に示した。
【0327】
[実施例4]
上記比較例1において、吸水性樹脂粉末(1)を製造例5で得られた吸水性樹脂粉末(5)に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行って、吸水剤(4)を得た。得られた吸水剤(4)の諸物性を表2に示した。
【0328】
[実施例4−1]
上記比較例1において、吸水性樹脂粉末(1)を製造例5−1で得られた吸水性樹脂粉末(5−1)に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行って、吸水剤(4−1)を得た。得られた吸水剤(4−1)の諸物性を表2に示した。
【0329】
[実施例4−2]
上記比較例1において、吸水性樹脂粉末(1)を製造例5−2で得られた吸水性樹脂粉末(5−2)に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行って、吸水剤(4−2)を得た。得られた吸水剤(4−2)の諸物性を表2に示した。
【0330】
[比較例2]
上記製造例6で得られた吸水性樹脂粉末(6)100重量部に対して、炭酸エチレン0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部、及び脱イオン水(イオン交換水)2.5重量部からなる表面架橋剤溶液(2)を添加して均一に混合した。その後、当該混合物を205℃で40分間、加熱処理することで表面架橋を行った。
【0331】
上記加熱処理後、得られた比較吸水性樹脂粒子(2)を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、比較吸水剤(2)を得た。得られた比較吸水剤(2)の諸物性を表2に示した。
【0332】
[比較例3]
上記比較例2において、吸水性樹脂粉末(6)を製造例7で得られた吸水性樹脂粉末(7)に変更した以外は、比較例2と同様の操作を行って、比較吸水剤(3)を得た。得られた比較吸水剤(3)の諸物性を表2に示した。
【0333】
[比較例4]
上記比較例1において、吸水性樹脂粉末(1)を製造例8で得られた吸水性樹脂粉末(8)に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行って、比較吸水剤(4)を得た。得られた比較吸水剤(4)の諸物性を表2に示した。
【0334】
なお、以下の表2〜表6において、「150−710μm粒子割合」とは、粒子径が150μm以上710μm未満である粒子の割合を意味する。
【0335】
【表2】
【0336】
[比較例5]
多価金属カチオンの原料として用いられる化合物として27重量%の硫酸アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム換算で8重量%)0.91重量部、60重量%の乳酸ナトリウム水溶液0.27重量部、及びプロピレングリコール0.02重量部からなる混合溶液(5)を作製した。
【0337】
比較例1で得られた比較吸水剤(1)100重量部に対して、上記混合溶液(5)1.2重量部を攪拌しながら添加して1分間均一に混合した。その後、無風条件下、60℃で30分間乾燥し、続いて、目開き850μmのJIS標準篩に通過させて、比較吸水剤(5)を得た。得られた比較吸水剤(5)の諸物性を表3に示す。
【0338】
[比較例6]
上記比較例5において、比較吸水剤(1)を実施例1で得られた吸水剤(1)に変更した以外は、比較例5と同様の操作を行って、比較吸水剤(6)を得た。得られた比較吸水剤(6)の諸物性を表3に示した。
【0339】
[比較例7]
上記比較例5において、比較吸水剤(1)を実施例2で得られた吸水剤(2)に変更した以外は、比較例5と同様の操作を行って、比較吸水剤(7)を得た。得られた比較吸水剤(7)の諸物性を表3に示した。
【0340】
[比較例8]
上記比較例5において、比較吸水剤(1)を実施例3で得られた吸水剤(3)に変更した以外は、比較例5と同様の操作を行って、比較吸水剤(8)を得た。得られた比較吸水剤(8)の諸物性を表3に示した。
【0341】
[実施例5]
上記比較例5において、比較吸水剤(1)を実施例4で得られた吸水剤(4)に変更した以外は、比較例5と同様の操作を行って、吸水剤(5)を得た。得られた吸水剤(5)の諸物性を表3に示した。
【0342】
[実施例5−1]
上記比較例5において、比較吸水剤(1)を実施例4−1で得られた吸水剤(4−1)に変更した以外は、比較例5と同様の操作を行って、吸水剤(5−1)を得た。得られた吸水剤(5−1)の諸物性を表3に示した。
【0343】
[比較例8−1]
上記比較例5において、比較吸水剤(1)を実施例4−2で得られた吸水剤(4−2)に変更した以外は、比較例5と同様の操作を行って、比較吸水剤(8−1)を得た。得られた比較吸水剤(8−1)の諸物性を表3に示した。
【0344】
[比較例9]
上記比較例5において、比較吸水剤(1)を比較例2で得られた比較吸水剤(2)に変更した以外は、比較例5と同様の操作を行って、比較吸水剤(9)を得た。得られた比較吸水剤(9)の諸物性を表3に示した。
【0345】
[比較例10]
上記比較例5において、比較吸水剤(1)を比較例3で得られた比較吸水剤(3)に変更した以外は、比較例5と同様の操作を行って、比較吸水剤(10)を得た。得られた比較吸水剤(10)の諸物性を表3に示した。
【0346】
[実施例6]
上記比較例6において、混合溶液(5)の添加量を1.2重量部から0.3重量部に変更した以外は、比較例6と同様の操作を行って、吸水剤(6)を得た。得られた吸水剤(6)の諸物性を表3に示した。
【0347】
[実施例7]
上記比較例6において、混合溶液(5)の添加量を1.2重量部から0.8重量部に変更した以外は、比較例6と同様の操作を行って、吸水剤(7)を得た。得られた吸水剤(7)の諸物性を表3に示した。
【0348】
[比較例11]
上記比較例6において、混合溶液(5)の添加量を1.2重量部から2.0重量部に変更した以外は、比較例6と同様の操作を行って、比較吸水剤(11)を得た。得られた比較吸水剤(11)の諸物性を表3に示した。
【0349】
[比較例12]
上記実施例5において、混合溶液(5)の添加量を1.2重量部から3.0重量部に変更した以外は、実施例5と同様の操作を行って、比較吸水剤(12)を得た。得られた比較吸水剤(12)の諸物性を表3に示した。
【0350】
なお、表3において、通液性向上剤の添加量として、単位[×10
−5・mol/g]で表される値は、吸水性樹脂粉末1gあたりの多価金属原子の添加量を意味する。
【0351】
【表3】
【0352】
[実施例8]
ユニセンスKHE102L(ジメチルアミン・アンモニア・エピクロルヒドリン樹脂;平均分子量約7万(参考値);50重量%水溶液/センカ株式会社)とメタノールとを混合して、50重量%のメタノール溶液(8)(固形分25重量%)を作製した。
【0353】
上記比較例6において、混合溶液(5)1.2重量部を上記メタノール溶液(8)1.0重量部に変更した以外は、比較例6と同様の操作を行って、吸水剤(8)を得た。得られた吸水剤(8)の諸物性を表4に示した。
【0354】
[実施例9]
上記実施例8において、メタノール溶液(8)の添加量を1.0重量部から4.0重量部に変更した以外は、実施例8と同様の操作を行って、吸水剤(9)を得た。得られた吸水剤(9)の諸物性を表4に示した。
【0355】
[比較例13]
上記実施例8において、メタノール溶液(8)の添加量を1.0重量部から8.0重量部に変更した以外は、実施例8と同様の操作を行って、比較吸水剤(13)を得た。得られた比較吸水剤(13)の諸物性を表4に示した。
【0356】
[実施例10]
上記実施例5において、混合溶液(5)1.2重量部を上記メタノール溶液(8)4.0重量部に変更した以外は、実施例5と同様の操作を行って、吸水剤(10)を得た。得られた吸水剤(10)の諸物性を表4に示した。
【0357】
[実施例11]
上記実施例10において、メタノール溶液(8)の添加量を4.0重量部から8.0重量部に変更した以外は、実施例10と同様の操作を行って、吸水剤(11)を得た。得られた吸水剤(11)の諸物性を表4に示した。
【0358】
[比較例14]
上記実施例10において、メタノール溶液(8)の添加量を4.0重量部から10.0重量部に変更した以外は、実施例10と同様の操作を行って、比較吸水剤(14)を得た。得られた比較吸水剤(14)の諸物性を表4に示した。
【0359】
[実施例12]
上記実施例1で得られた吸水剤(1)100重量部に対して、レオロシールQS−20(乾式シリカ;一次粒子径:12nm/株式会社トクヤマ)0.1重量部を混合した。該混合は、容量225mlのマヨネーズ瓶に上記試料を入れ、ペイントシェーカー(東洋精機)を利用して、室温下で3分間、振動させることで行った。上記一連の操作により、吸水剤(12)を得た。得られた吸水剤(12)の諸物性を表4に示した。
【0360】
[比較例15]
上記実施例12において、レオロシールQS−20の添加量を0.1重量部から0.3重量部に変更した以外は、実施例12と同様の操作を行って、比較吸水剤(15)を得た。得られた比較吸水剤(15)の諸物性を表4に示した。
【0361】
[実施例13]
上記実施例4で得られた吸水剤(4)100重量部に対して、上記レオロシールQS−20(乾式シリカ;一次粒子径:12nm/株式会社トクヤマ)0.8重量部を混合した。該混合は、容量225mlのマヨネーズ瓶に上記試料を入れ、ペイントシェーカー(東洋精機)を利用して、室温下で3分間、振動させることで行った。上記一連の操作により、吸水剤(13)を得た。得られた吸水剤(13)の諸物性を表4に示した。
【0362】
[比較例16]
上記実施例13において、レオロシールQS−20の添加量を0.8重量部から1.2重量部に変更した以外は、実施例13と同様の操作を行って、比較吸水剤(16)を得た。得られた比較吸水剤(16)の諸物性を表4に示した。
【0363】
[実施例14]
上記実施例1で得られた吸水剤(1)100重量部に対して、AEROSIL OX 50(親水性ヒュームドシリカ;一次粒子径:40nm/日本アエロジル株式会社)0.3重量部を混合した。該混合は、容量225mlのマヨネーズ瓶に上記試料を入れ、ペイントシェーカー(東洋精機)を利用して、室温下で3分間、振動させることで行った。上記一連の操作により、吸水剤(14)を得た。得られた吸水剤(14)の諸物性を表4に示した。
【0364】
[比較例17]
上記実施例14において、AEROSIL OX 50の添加量を0.3重量部から1.0重量部に変更した以外は、実施例14と同様の操作を行って、比較吸水剤(17)を得た。得られた比較吸水剤(17)の諸物性を表4に示した。
【0365】
[実施例15]
上記実施例4で得られた吸水剤(4)100重量部に対して、AEROSIL OX 50(親水性ヒュームドシリカ;一次粒子径:40nm/日本アエロジル株式会社)1.0重量部を混合した。該混合は、ペイントシェーカー(東洋精機)を利用し、室温下で3分間、振動させることで行った。上記一連の操作により、吸水剤(15)を得た。得られた吸水剤(15)の諸物性を表4に示した。
【0366】
[比較例18]
上記実施例15において、AEROSIL OX 50の添加量を1.0重量部から2.0重量部に変更した以外は、実施例15と同様の操作を行って、比較吸水剤(18)を得た。得られた比較吸水剤(18)の諸物性を表4に示した。
【0367】
なお、表4において、「固形分添加量」とは、吸水性樹脂粉末の固形分に対する添加量を意味する。
【0368】
【表4】
【0369】
[比較例19]
上記特許文献11(国際公開第2011/126079号)の実施例2に準じて、比較吸水剤(19)を得た。得られた比較吸水剤(19)の諸物性を表5に示した。
【0370】
なお、比較例19では、ゲル粉砕エネルギー2(GGE2)は14J/g、粒子状の比較含水ゲル(19)のD50(重量平均粒子径)は820μm、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は0.83であった。また、比較例19で得られる吸水性樹脂粉末は、固形分96重量%、D50(重量平均粒子径)352μm、σζ(粒度分布の対数標準偏差)0.39、BET比表面積0.0300m
2/gであった。
【0371】
[比較例20〜23]
本願の出願時点で市販されている吸水性樹脂について、その加圧下隙間水倍率を調査するため、世界各国で市販されている紙オムツを購入し、使用されている吸水剤を取り出して分析を行った。
【0372】
即ち、2013年6月にアメリカで購入した紙オムツ(商品名「Luvs SUPER ABSORBENT LEAKGUARDS」/Procter & Gamble社)、2013年6月にベルギーで購入した紙オムツ(商品名「Pampers Simply Dry」/Procter & Gamble社)、2013年5月にメキシコで購入した紙オムツ(商品名「KleenBebeAbsorSec」/Kimberly−Clark社)、及び2013年11月にタイで購入した紙オムツ(商品名「GOO.Nはじめての肌着」/大王製紙株式会社)のそれぞれから吸水剤を取り出し、比較吸水剤(20)〜(23)とした。
【0373】
上記比較吸水剤(20)〜(23)について、「CRC」「AAP」「SFC」「FSR」「粒度分布」「加圧下隙間水倍率」「加圧下戻り量」を測定した。結果を表5に示した。
【0374】
比較吸水剤(22)及び(23)については、「加圧下隙間水倍率」の測定が不可能であった。加圧下隙間水倍率の測定においては、通常、SFC器具のシリンダーから液が流れ落ち、その後、シリンダーから30秒間に1滴の液も流れ落ちなくなった時点(シリンダー内の静水高さがゲル層の高さと一致する時点)でSFC器具の重量を測定する。一方、比較吸水剤(22)及び(23)の場合、通液性が極端に低く、30分経過後であってもシリンダー内の静水の高さがほとんど変化していなかったため、測定不能と判断した。
【0375】
【表5】
【0376】
[製造例9]
製造例2において、ゲル粉砕時に使用するミートチョッパーのプレート孔径を8.0mmから4.5mmに変更した以外は、製造例2と同様の操作を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(9)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(9)は、固形分96.3wt%、D50(重量平均粒子径)388μm、σζ(粒度分布の対数標準偏差)0.37、BET比表面積は0.0386m
2/gであった。
【0377】
なお、製造例9では、ゲル粉砕エネルギー2(GGE2)は47J/g、粒子状の含水ゲル(9)のD50(重量平均粒子径)は230μm、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は1.05であった。
【0378】
[実施例16]
上記比較例1において、吸水性樹脂粉末(1)を製造例9で得られた吸水性樹脂粉末(9)に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行って、吸水剤(16)を得た。得られた吸水剤(16)の諸物性を表6に示した。
【0379】
[実施例17]
上記実施例7において、吸水剤(1)を実施例16で得られた吸水剤(16)に変更した以外は、実施例7と同様の操作を行って、吸水剤(17)を得た。得られた吸水剤(17)の諸物性を表6に示した。
【0380】
【表6】
【0381】
(まとめ)
表2〜6に示したように、本発明に係る吸水剤の製造方法は、高い通液性(SFC)を有し、加圧下隙間水倍率が向上した、従来にないバランスの取れた吸水剤を提供することができる。
【0382】
比較例1及び実施例1〜4、16に示したように、吸水性樹脂粉末のBET比表面積を0.027m
2/g以上とすることで、加圧下隙間水倍率の向上した吸水剤を得ることができる。一方、比較例2〜3に示したように、ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))を高くしても、吸水性樹脂粉末のBET比表面積が0.027m
2/g未満であれば、加圧下隙間水倍率は低くなる。
【0383】
実施例5、17及び比較例5〜10に示したように、通液性向上剤の添加によって加圧下隙間水倍率は低下するが、吸水性樹脂粉末のBET比表面積を0.031m
2/g以上とすることで、加圧下隙間水倍率を高く維持することができる。
【0384】
実施例1及び比較例4との対比により、粒子径が150μm以上710μm未満である粒子の割合が90重量%未満となると、加圧下隙間水倍率が低下することが分かる。
【0385】
実施例6〜15及び比較例11〜18に示したように、吸水性樹脂粉末のBET比表面積と、通液性向上剤の種類及び添加量とを制御することによって、加圧下隙間水倍率を高く維持することができる。
【0386】
吸水性樹脂粉末のBET比表面積が低い場合は、通液性向上剤の添加量を少なく、吸水性樹脂粉末のBET比表面積が高い場合は、通液性向上剤の添加量を多くすることで、吸水剤の加圧下隙間水倍率は高くなる。この通液性向上剤の添加量の制御は、吸水性樹脂粉末の比表面積が低い場合は吸水剤の比表面積を低く維持し、吸水性樹脂粉末の比表面積が高い場合は吸水剤の比表面積を更に高くするものであり、吸水剤の比表面積は大きく異なるものの、どちらの手法でも加圧下隙間水倍率を向上させることができる。該手法は、従来にはない通液性向上剤の添加量の調整方法である。
【0387】
比較例19に示したように、従来技術ではSFCは高いものの、加圧下隙間水倍率は低いことが分かる。
【0388】
比較例20〜23に示したように、本願の出願時点で市販されている吸水剤(市販されている紙オムツから取り出した吸水性樹脂)は、加圧下隙間水倍率が測定不能であるか、6.0g/g以下である。つまり、市販の吸水剤からは、本発明の加圧下隙間水倍率を有する吸水性樹脂の存在は示唆されていない。
【0389】
以下に、湿潤下粒子間間隙率より加圧下隙間水倍率の方が、加圧下戻り量と相関が高いことを説明する。
【0390】
表2〜6に記載した加圧下隙間水倍率と加圧下戻り量とから、加圧下隙間水倍率が高くなると加圧下戻り量が低下するという関係にあることが分かる。つまり、本発明の吸水剤は、加圧下においても粒子間隙間に多くの液を保持することができるため、加圧下戻り量が低下した。
【0391】
また、表2及び3に記載した湿潤下粒子間間隙率と加圧下戻り量とから、これらの物性には関係がないことが分かる。つまり、加圧下戻り量と加圧下隙間水倍率とは関係があるものの、湿潤下粒子間間隙率は関係がなかった。測定方法を比較した場合においても、加圧下隙間水倍率の測定における吸水剤の膨潤方法は加圧下戻り量の測定における吸水方法に近い。加圧下隙間水倍率は、吸水剤層に対して上部から多量の吸収液を投入するが、湿潤下粒子間間隙率は、吸水剤層の下部から吸収液を吸い上げさせて吸収させる。吸収液の吸収方法によってゲルブロッキングが起こるなどして形成されるゲル層が異なるため、加圧下隙間水倍率及び湿潤下粒子間間隙率はそれぞれ、加圧下戻り量との関係が異なったと考えられる。また、実際に紙オムツ等で使用される場合を想定しても、吸収液は上部から多量に投入されるため、加圧下隙間水倍率の測定方法の方が実使用に近いと考えられる。
【0392】
[測定例1]
上記実施例及び比較例で得られた、吸水剤(4)、吸水剤(6)、吸水剤(16)、比較吸水剤(5)、比較吸水剤(13)及び比較吸水剤(15)の6種類の吸水剤について、加圧下隙間水倍率の測定時に使用する測定溶液の塩濃度を変更して、加圧下隙間水倍率を測定した。その結果を表7に示す。
【0393】
[測定例2]
上記実施例及び比較例で得られた、吸水剤(2)及び比較吸水剤(6)の2種類の吸水剤について、モデル吸収体を作成し、その戻り量を測定した。その結果を表8に示す。
【0394】
【表7】
【0395】
【表8】
【0396】
(まとめ)
表7に示したように、加圧下隙間水倍率の測定に0.45重量%の塩化ナトリウム水溶液を用いると、加圧下隙間水倍率が高くなった。測定時には、ゲル層の厚みが非常に厚く測定に必要な静水高さ5cmに近い吸水剤もあり、安定して測定できなかった。加圧下隙間水倍率の測定に0.45重量%塩化ナトリウム水溶液は適さなかった。
【0397】
一方、加圧下隙間水倍率の測定に0.90重量%の塩化ナトリウム水溶液を用いると、0.69重量%の塩化ナトリウム水溶液で測定した加圧下隙間水倍率とほぼ同じ値になった。このため、加圧下隙間水倍率は0.90重量%の塩化ナトリウム水溶液を用いて測定してもよいが、経済性の観点から0.69重量%の塩化ナトリウム水溶液で測定することが好ましい。
【0398】
表8に記載したように、加圧下隙間水倍率が高いほどモデル吸収体においても戻り量が少ないことが分かった。