特許第6532908号(P6532908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6532908
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】コラム切梁の架設方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/04 20060101AFI20190610BHJP
【FI】
   E02D17/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-74263(P2017-74263)
(22)【出願日】2017年4月4日
(65)【公開番号】特開2018-178389(P2018-178389A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2018年12月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000179915
【氏名又は名称】ジェコス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 伸一
(72)【発明者】
【氏名】山中 佑介
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−175226(JP,A)
【文献】 特開2000−257067(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3204833(JP,U)
【文献】 特開2000−087353(JP,A)
【文献】 特開平04−174130(JP,A)
【文献】 特開2012−162848(JP,A)
【文献】 ジェコス株式会社,Ecoラム工法(角形鋼管切梁),新技術情報提供システム,日本,国土交通省,2015年 5月14日,登録No.KT-140078-A,URL,http://www.netis.mlit.go.jp/NetisRev/NewIndex.asp
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレロード用ジャッキを備えたコラム切梁を対向する腹起し間に架設するコラム切梁の方法において、前記コラム切梁を対向する腹起し間に架設し、両端部を前記腹起しに接合した後、前記コラム切梁の長手方向の中間部分における、前記コラム切梁の重心Gに対して点対称な位置を吊りワイヤーで引き上げて水平に保持しながら、前記コラム切梁に前記プレロード用ジャッキによって軸力を導入することを特徴とするコラム切梁の架設方法。
【請求項2】
プレロード用ジャッキを備えたコラム切梁を対向する腹起し間に架設するコラム切梁の方法において、前記コラム切梁を対向する腹起し間に架設し、両端部を前記腹起しに接合し、かつ前記コラム切梁の長手方向の中間位置をジャッキアップして水平に保持した後、前記コラム切梁に前記プレロード用ジャッキによって軸力を導入することを特徴とするコラム切梁の架設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレロード用ジャッキを備えたコラム切梁の架設方法に関し、必要量の軸力をより安全にかつ確実に導入することができ、また中間支持杭(棚杭)を省略してコラム切梁の下側に広い作業空間を確保できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
基礎その他、地下工事では、根切りに先だって土砂の崩壊を防ぐために山留め壁が仮設され、その内側に山留め支保工が仮設される。
【0003】
山留め壁は、地盤内にH形鋼やシートパイル等を打ち込むことにより仮設され、山留め支保工は次段階の根切りに先だって山留め壁の内側に腹起し、切梁および火打梁などの支保工材を設置することにより仮設される。
【0004】
腹起しは、山留め壁の内側に水平に設置され、切梁は対向する腹起し間に架設され、そして、火打梁は腹起しと切梁との仕口部の両側に左右対称に架設される。また特に、切梁は長くなると座屈するおそれがあるため、切梁の中間に支持杭(棚杭)が設置されることがある。
【0005】
これらの支保工材には主としてH形鋼が用いられているが、近年、切梁にコラム(角形鋼管)切梁が使用されている。コラム切梁は、座屈に強く棚杭による支持が不要なため、切梁の下に広い作業空間を確保できる等の使用するメリットが大きい。
【0006】
ところで、軟弱地盤地帯や市街地における地下工事では、根切り工事を安全かつ合法的に行うために切梁架設後、次段階の根切りに先立って設計軸力を導入し、山留め壁を外側へ押し込んだ後、根切りに入るというプレロード工法が採用されることが多い。
【0007】
プレロード工法の採用により、根切りによって発生する土圧に対して山留め支保工の安全性を予め確かめ、山留め支保工全体の変形を防止して、周辺地盤の沈下などを阻止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平04-68113号公報
【特許文献2】特開平04-68114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、コラム切梁であっても、長くなると自重により中央にたわみが発生する。コラム切梁に中央にたわみを生じたまま軸力を導入すると、腹起しの切梁との接合面における下部に軸力が集中して腹起しが局部変形をおこすおそれがあった。
【0010】
また、切梁の中間部にたわみ防止用の中間支持杭(棚杭)を設置すると、切梁の下側に広い作業空間を確保できるという、コラム切梁を使用することによるメリットが無くなるという課題があった。
【0011】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、必要量の軸力をより安全にかつ確実に導入することができ、また中間支持杭(棚杭)を省略して切梁の下側に広い作業空間を確保できるようにしたコラム切梁の架設方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、プレロード用ジャッキを備えたコラム切梁を対向する腹起し間に架設するコラム切梁の方法の発明であり、前記コラム切梁を対向する腹起し間に架設し、両端部を前記腹起しに接合し、かつ前記コラム切梁の長手方向の中間位置を引き上げて水平にした後、前記コラム切梁に前記プレロード用ジャッキによって軸力を導入することを特徴とするものである。
【0013】
コラム切梁の長手方向の中間位置を引き上げる方法としては、コラム切梁を対向する腹起し間に架設する際に用いたクレーンを利用することができる。また、コラム切梁を引き上げる代わりに、コラム切梁の下側に設置したジャッキによってジャッキアップしてコラム切梁を水平にすることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プレロード用ジャッキを備えたコラム切梁を対向する腹起し間に架設する際に、前記コラム切梁を腹起し間に架設し、両端部を前記腹起しに接合し、かつ前記コラム切梁の長手方向の中間位置を引き上げ、または下方よりジャッキアップして水平にした後、前記プレロード用ジャッキによって軸力を導入することで、必要量の軸力をより安全にかつ確実に導入することができる。
【0015】
また、中間支持杭(棚杭)を省略してコラム切梁の下側に広い作業空間を確保することができると共に、中間支持杭の施工を省略できて大幅なコスト削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】対向して仮設された山留め壁と当該山留め壁間に架設されたコラム切梁を図示したものであり、図1(a)は平面図、図1(b)は縦断面図である。
図2図1に図示するコラム切梁の架設方法の施工手順を図示したものであり、図2(a),(b),(c)は山留め壁の縦断面図である。
図3図1に図示するコラム切梁の架設方法の施工手順を図示したものであり、図3(a),(b)は山留め壁の縦断面図である。
図4】クレーンで吊られたコラム切梁本体を図示したものであり、図4(a)は正面図、図4(b)は平面図、図4(c)は図4(a)におけるイ−イ線拡大断面図である。
図5図1に図示するコラム切梁の他の架設方法の施工手順を図示したものであり、図5(a),(b),(c)は山留め壁の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を説明すると、図1(a),(b)は、根切りに先立ち対向して仮設された山留め壁1,1と、当該山留め壁1,1間に仮設された山留め支保工2を図示したものである。
【0018】
図において、山留め壁1は、地盤内にH形鋼やシートパイル等を打設して仮設されている。また、山留め支保工2は対向する山留め壁1,1の内側面にそれぞれ腹起し3を水平に設置し、当該腹起し3,3間にコラム切梁4を架設し、かつ当該コラム切梁4の両端部を対向する腹起し3,3の内側面にそれぞれ火打ちピース5を介して接合することにより仮設されている。
【0019】
腹起し3はH形鋼より形成され、山留壁1の内側面に予め溶接またはボルト止めされたブラケット6の上に架設され、かつ山留壁1の内側面にボルト止めされている。また、腹起し3の上側に転倒防止材7が腹起し3に直交して取り付けられている。
【0020】
なお、腹起し3は、山留め壁1に作用する土圧の大きさに応じて二重に重ねて設置されることもある。また、ブラケット6は、溝形鋼や山形鋼などの形鋼より形成され、かつ山留め壁1の横方向に間隔をあけて複数取り付けられている。
【0021】
転倒防止材7は、腹起し3,3間にコラム切梁4が架設される際に、腹起し3が当該腹起し3の側面に取り付けられた火打ピース5の重みで、山留め壁1の内側に転倒したり山留め壁1の側面から浮き上がらないように腹起し3を上から押え付ける部材であり、溝形鋼などの形鋼より形成され、かつ山留め壁1の側面に溶接またはボルト止めすることにより取り付けられている。
【0022】
コラム切梁4は、コラム切梁本体8と当該コラム切梁本体8の両端部に接合された複数の調整材9とプレロード用ジャッキ10とを備え、これらの部材は同一軸線上で互いに接合ボルトによって接合されている。
【0023】
コラム切梁本体8は角形鋼管より形成され、特に対向する腹起し3,3間のスパンが大きい場合は、2本以上の角形鋼管を互いに接合してコラム切梁本体とされることもある。また、コラム切梁本体8の材軸方向の両側部に複数の吊りピース11が取り付けられている(図4参照)。
【0024】
吊りピース11は、コラム切梁本体8の中央部分においては、コラム切梁本体8の材軸方向に対してその両側部に対称に複数対取り付けられ、コラム切梁本体8の材軸方向の両端部分においては、コラム切梁本体8の重心Gを通る鉛直線を軸に点対称な位置に取り付けられ、また、いずれにおいもコラム切梁8の長手方向に等間隔に複数取り付けられている(図4(a),(b))。
【0025】
なお、吊りピース11は、クレーン等の吊りワイヤー12の先端に取り付けられたシャックル等の吊り具13の吊りボルト13aが貫通する吊り孔11aを有する金物であって、厚でのプレート等から形成され、かつコラム切梁本体8の側面部に溶接することにより取り付けられている(図4(c)参照)。
【0026】
そして、コラム切梁本体8の両側部に取り付けられた複数の吊りピース11から、少なくとも2つの吊りピース11,11を任意に選び、これに吊りワイヤー12を結束して吊り上げることにより水平に、あるいは必要な角度に傾けて吊り上げることができる(図4(a)参照)。
【0027】
また特に、コラム切梁本体8の重心Gを通る鉛直線に対して点対称な位置の吊りピース11,11に吊りワイヤー12を結束して吊り上げることにより、コラム切梁3の材軸軸回りおよび鉛直軸回りの回転を防止することができる。
【0028】
調整材9は、コラム切梁4の長さを調整する部材であり、H形断面または十字形断面形に形成され、かつ対向する腹起し3,3間のスパンに応じて同一長さのもの、或は長さの異なるものが一または複数接続されている。
【0029】
プレロード用ジャッキ10は、対向する腹起し3,3間に架設されたコラム切梁4に、根切りに先立って軸力を導入して山留め壁3,3を外側に強く押し付けるためのジャッキであり、特に油圧ジャッキが用いられている。
【0030】
ジャッキ10によるコラム切梁4への軸力の導入(プレロード)は、コラム切梁4の長手方向の中間位置の、一または複数箇所を吊りワイヤー12で引き上げて、コラム切梁4を水平に保持した状態で行う。
【0031】
吊りワイヤー12で引き上げる中間位置は、コラム切梁本体8の長さ、調整材9の長さや数量によって異なるため、最適な位置を選ぶ。
【0032】
その際、コラム切梁本体8の両側部に吊りピース11が取り付けられ、しかもコラム切梁本体8の中央部分と両端部分にコラム切梁本体8の長手方向に等間隔に複数取り付けられているため、最適な位置を引き上げることができる。
【0033】
なお、コラム切梁4の長手方向の中間位置の一または複数箇所を下からジャッキアップすることによっても、コラム切梁4を水平に保持することができる。
【0034】
こうすることで、対向する腹起し3,3のコラム切梁4との接合面における接合面下部にコラム切梁4の導入軸圧縮力が集中するのを防止することができる。
【0035】
また、コラム切梁4の自重によるたわみを防止することができるため、たわみ防止用の中間杭を無くすることができ、コラム切梁4の下側に広い作業空間を確保することができる。
【0036】
なお、ジャッキ10によるコラム切梁4への軸力の導入(プレロード)に際しては、腹起し3の火打ピース5との接合部をスティフナー、補強金物、或いは補強ジャッキ等の補剛材14によって補強することで、コラム切梁4の自重や軸力の偏りによる腹起し3の変形を防止することができる。
【0037】
火打ピース5は、腹起し3側を底辺とする平面視二等辺三角形状に形成され、当該火打ピース5を介して腹起し3とコラム切梁4間の荷重の伝達がなされている。
【0038】
なお、これらの各部材間は、各部材の端部に取り付けられたエンドプレート(図省略)どうしを複数の高力ボルトによって
ボルト締結することにより接合されている。
【0039】
このような構成において、本発明のコラム切梁の架設方法について、順をおって説明する(図2,3参照)。
【0040】
(1)根切りに先だって山留め壁1,1を対向して仮設した後、山留め壁1の内側面に腹起し3を設置する高さに合せてブラケット6を取り付ける(図2(a))。ブラケット6は腹起し3の長さに応じて山留め壁1の横方向に間隔をあけ、ボルト止めまたは溶接によって取り付ける。
【0041】
(2)次に、各山留め壁1の内側面に腹起し3を取り付ける(図2(b)参照)。腹起し3は、先付けしたブラケット6,6間に架け渡すと共に山留め壁1の内側面に添え付け、かつ山留め壁1の側面に複数の取付けボルトによってボルト止めする。
また、腹起し3の上に転倒防止材7を取り付けて火打ピース5の重みで転倒しないようにする(図2(b)参照)。転倒防止材7は腹起し3の長さに応じて腹起し3の長手方向に適切な間隔をあけて複数取り付ける。
【0042】
(3)次に、対向する各腹起し3の内側面に火打ピース5を、コラム切梁4の設置位置に合せて設置し、ボルト止めして取り付ける(図2(c)参照)。
【0043】
(4)次に、対向する火打ピース5,5間にコラム切梁4をクレーン等の吊りワイヤー12で吊り込んで架設し、その両端を火打ピース5にボルト止めして接合する(図3(a),(b)参照)。
【0044】
なお、コラム切梁4のコラム切梁本体8、調整材9およびプレロード用ジャッキ10を作業ヤード等で予め地組し、一体物として吊り込んでもよく、また、調整材9とジャッキ10を地組し、これとコラム切梁本体8の2部材に分けて吊り込んでもよい。
【0045】
(5)次に、コラム切梁4の長手方向の中間部分を吊りワイヤー12で強く引き上げて、コラム切梁4を水平に保持する。そして、プレロード用ジャッキ10を作動させてコラム切梁4に必要量の軸力を導入する。
【0046】
このようにしてプレロードすることにより、腹起し3のコラム切梁4との接合面における接合面下部に、コラム切梁4の導入軸力が集中するのを防止することができて、腹起しの3の過大軸力による変形等を防止することができる。
【0047】
また、コラム切梁4の長手方向の中間部分を吊りワイヤー12で引き上げる際に、コラム切梁本体8の重心Gを通る鉛直線に対して点対称な位置の吊りピース11,11にも吊りワイヤー12を結束して引き上げることにより、コラム切梁4を均等な力で引き上げることができ、特にコラム切梁4の材軸軸回りおよび鉛直軸回りの回転を防止することができる。
【0048】
図5(a)〜(c)は、コラム切梁を架設する他の架設方法を図示したものである。説明すると、
(1)最初に、対向する腹起し3,3間にコラム切梁4を吊りワイヤー12で吊り込んで架設し、架台15で支持する。そして、両端部を腹起し3,3の内側面に先付けされた火打ピース5にそれぞれ接合ボルトによって接合する。
【0049】
この場合においても、コラム切梁4のコラム切梁本体8、調整材9およびプレロード用ジャッキ10を作業ヤード等で予め地組し、一体物として吊り込んでもよく、また、図示するように一部を地組し、複数部分に分けて吊り込み、架台15の上で互いを接合してもよい。
【0050】
(2)次に、架台15に搭載されたジャッキ16,16によってコラム切梁4の長手方向の中間部をジャッキアップすることにより、コラム切梁4を水平に保持する。
なお、この場合も、ジャッキ16でジャッキアップする位置は、コラム切梁本体8の長さ、調整材9の長さや数量によって異なるため、最適な位置を選ぶ。
【0051】
(3)そして、コラム切梁4にプレロード用ジャッキ10を作動させて必要量の軸力を導入する。なお、架台15は作業完了後に撤去する。この方法によれば、コラム切梁4をより確実にかつ安全に水平に保持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、より安全にかつ確実に必要量の軸力を導入することができ、また中間支持杭を省略してコラム切梁の下側に広い作業空間を確保することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 山留め壁
2 山留め支保工
3 腹起し
4 コラム切梁
5 火打ちピース
6 ブラケット
7 転倒防止材
8 コラム切梁本体
9 調整材
10 プレロード用のジャッキ
11 吊りピース
12 吊りワイヤー
13 吊り具
14 補剛材
15 架台
16 ジャッキ
図1
図2
図3
図4
図5