(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態である清掃用シート100の具体的な態様について、
図1から
図7に基づいて説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、図示例に限定されない。
なお、便宜的に、
図1から
図7に示したように、X方向、Y方向及びZ方向並びに前後、左右及び上下を定めて説明する。
【0014】
(実施の形態の構成)
図1は、本実施の形態の清掃用シート100の使用時の状態を示す図である。
図1に示すように、清掃用シート100は、例えば、矩形の平板状のヘッド部201と、ヘッド部201の上面に取り付けられた柄部202と、を備える清掃具200に、交換可能に装着されるドライシートである。
清掃用シート100は、清掃具200のヘッド部201の底面を覆って清掃面を形成し、清掃具のヘッド部201の長手縁部201aに沿って折り曲げられてヘッド部201の上面に係止され、装着された状態となる。
なお、長手縁部201aとは、ヘッド部201の長手方向に沿った縁部を指す。即ち、矩形のヘッド部201の4つの縁部のうちの、長い方の2つの縁部を指す。
【0015】
図2は、本実施の形態の清掃用シート100の一例を示す平面図である。
図2に示すように、清掃用シート100は、X方向に長尺な矩形状であって、例えば、X方向(長手方向)において250mmから300mm、好ましくは260mmから290mm、Y方向(短手方向)において180mmから230mm、好ましくは200mmから210mmに形成されている。
【0016】
図3は、
図2のIII-III線における断面図である。
清掃用シート100は、複数枚の原紙がプライ加工(積層)されたものであり、例えば、
図2に示すように、清掃用シート100の表面層を形成する外層11,11と、外層11,11に挟まれた内層12と、を備えた三層構造を有している。
【0017】
(外層:外側繊維層)
外層11は、清掃用シート100の表面を形成する外側繊維層である。
外層11は、主に疎水性繊維により形成されている。疎水性繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンなどを主成分とする化学繊維が適用される。
また、外層11は、ポリエチレンテレフタレート繊維の配合率は80%以上であることが好ましく、その繊維径は、3.3dtex以上であることが好ましい。繊維径を3.3dtex以上とすることで、繊維の剛性(クッション性)が向上し、軽い力でも操作できるようになる。
なお、外層11における外側の面が、清掃用シート100の表面となる。
【0018】
(内層:内側繊維層)
内層12は、外層11,11に挟まれる内側繊維層である。
内層12は、親水性繊維を主成分としている。親水性繊維としては、例えば、パルプ、綿、麻などの天然繊維又はレーヨン、アセテートなどのセルロース系化学繊維が適用されるが、保水性を維持する観点からパルプあるいはパルプエアレイドを適用することが好ましい。
また、内層12は、親水性繊維のみで構成することが好ましいが、補強層としてポリプロピレンスパンボンドなど疎水性繊維が適宜含有されていてもよい。
また、内層12の目付は、5gsmから50gsmであり、好ましくは10gsmから30gsmである。内層12の目付を5gsmから50gsmとすることで、熱エンボス加工により、風合いをくずすことなくエンボスの形状を形成することができる。また、フローリング等の清掃時において、エンボスの形状を維持しやすくすることができる。
なお、タイル等の硬質な被清掃部の清掃を想定する場合には、内層12の目付は上記範囲に限られず、その値を大きくすることができる。
【0019】
また、清掃用シート100において、外層11,11と内層12の境界領域は、互いの繊維が交絡しており、これにより、熱エンボス加工によりエンボスの形状を形成しやすく、また、清掃時において、エンボスの形状を維持しやすくすることができる。
【0020】
なお、上記した清掃用シート100のシート構造はあくまで一例であって、層の数や、各層に含有され得る繊維などは、適宜変更が可能である。
例えば、本実施の形態においては、清掃用シート100をドライシートとして説明しているが、薬液を付与したウエットシートとしても良い。この場合、内層12の親水性繊維に薬液を含浸することができる。なお、保水性を担保する観点からパルプあるいはパルプエアレイドを用いても良い。
【0021】
図2に戻って、清掃用シート100において、清掃具200のヘッド部201の長手縁部201aに沿って折り曲げられる部分を折曲部Sと称する。
この折曲部Sは、規定の清掃具200のヘッド部201に合わせて、予めおおよその位置が設定されている。即ち、清掃用シート100のY方向の所定位置において、X方向に延在する2列の折曲部Sが設定されている。なお、折曲部Sは、使用者が認識できるように、例えば、清掃用シート100に予め折曲部Sに対応する直線を印刷しても良いし、清掃用シート100に折曲部Sに対応する折れ線を形成しても良い。
そして、清掃用シート100の折曲部Sに沿って、非エンボス部30がX方向に所定間隔ごとに複数配置され、清掃用シート100の非エンボス部30が配された領域を除く全体に亘って、エンボス部20が配置されている。
これにより、清掃用シート100において清掃具200のヘッド部201の長手縁部201aに対応する位置には、エンボス部20と、非エンボス部30が交互に配されることとなる。
【0022】
(エンボス部)
エンボス部20は、清掃用シート100において、シートが厚み方向に圧縮された部分である。
かかるエンボス部20は、例えば、温度80〜130℃、エンボス圧0.2〜1.0MPaの条件による熱エンボスにて形成することができる。
【0023】
図4は、
図2のA領域の拡大図である。また、
図5は、
図4のV-V線における断面図である。
図4及び
図5に示すように、エンボス部20には、上側(清掃用シート100の一面側)に凸型となる凸エンボス21と、下側(清掃用シート100の他面側)に凸型(即ち、上側に凹型となる)凹エンボス22と、が形成されている。
凸エンボス21と、凹エンボス22とは、X方向、Y方向のいずれにおいても交互に並ぶように互い違いに配置されている。このように、規則的に凸エンボス21と凹エンボス22が交互に配置されることにより、ごみの捕集性を向上させることができる。
【0024】
エンボス部20において、互い違いに配置された、凸エンボス21と凹エンボス22との間には、中間部23が形成されている。中間部23は、凸エンボス21及び凹エンボス22が形成されていない部分であり、このため、中間部23は、Z方向において、凸エンボス21よりも低く、凹エンボス22よりも高い位置となる。
【0025】
なお、上記のようなエンボスパターンとすることは必須ではなく、ごみの捕集性を向上するという効果は弱まるものの、凸エンボス21又は凹エンボス22が一列に並んでいるエンボスパターンや、不規則に並んでいるエンボスパターンとしてもよい。また、例えば、凸エンボス21又は凹エンボス22のいずれかのみが備えられるようにすることも可能である。
【0026】
(凸エンボス)
凸エンボス21は、
図4に示すように、平面視において、X方向に幅が狭く、Y方向中央部にくびれ部を有する、所謂ひょうたん形に形成されている。なお、ごみの捕集性の観点からは上記の形状が好ましいが、凸エンボス21の形状としてはこれに限られず、例えば、円形、楕円形、多角形等種々の形状に形成することが可能である。また、各形状を組み合わせたものとしてもよい。
凸エンボス21は、X方向において2mmから5mm、好ましくは3mmから4mmであり、Y方向5mmから10mm、好ましくは6mmから8mmであり、Z方向において(中間部23からの高さ)0.5mmから2mm、好ましくは0.7mmから1.5mmに形成される。
【0027】
また、凸エンボス21は、
図5に示すように、断面視において、上側に向かって段階的に凸となる形状に形成されている。即ち、断面視において、シートの表面(上面)から突出した第1凸部21aの頂部に、さらに上側に突出した第2凸部21bが形成されている。
より具体的に、第1凸部21aの頂部は、Y方向両端部において、0.5mmから3mm、好ましくは1mmから2mmの平面状のステージ部Hを有し、Y方向中央両端部において、第2凸部21bを有している。
かかる構成により、清掃用シート100のクッション性を向上させることができ、また、清掃時にエンボスの形状を維持しやすくすることができる。
【0028】
(凹エンボス)
凹エンボス22は、
図4に示すように、平面視において凸エンボス21と略同一の形状となる所謂ひょうたん形に形成されている。なお、凹エンボス22の形状としてはこれに限られず、種々の形状に形成することが可能であり、凸エンボス21と異なる形状としてもよい。
また、凹エンボス22は、
図5に示すように、断面視において、凸エンボス21と上下逆さまな、下側に向かって段階的に凹となる形状に形成されている。即ち、断面視において、シートの表面(下面)から突出した第1凹部22aの頂部に、さらに下側に突出した第2凹部22bが形成されている。
より具体的に、第1凹部22aの頂部は、Y方向両端部において、0.5mmから3mm、好ましくは1mmから2mmの平面状のステージ部Hを有し、Y方向中央両端部において、第2凹部22bを有している。
かかる構成により、清掃用シート100のクッション性を向上させることができ、また、清掃時にエンボスの形状を維持しやすくすることができる。
【0029】
(非エンボス部)
非エンボス部30は、清掃用シート100の、シートが厚み方向に圧縮なされておらず、起毛を有している部分であり、清掃用シート100の列状の折曲部Sに沿って複数配置されている。
かかる非エンボス部30は、上記エンボス部20を形成するエンボスロールを、非エンボス部30の形状を除くようにデザインすることで、形成することができる。
なお、非エンボス部30は、全く圧縮がなされていない場合に限られず、起毛が残存する程度に、エンボス部20の圧縮がなされている部分と比較して軽度な圧縮がなされていてもよい。また、非エンボス部30には、起毛していない部分が含まれていても良い。
非エンボス部30の大きさとしては、X方向において40mmから70mm、好ましくは50mmから60mm、Y方向において15mmから70mm、好ましくは20mmから50mmに形成される。
このように設定することで、製造において、清掃用シート100に折曲部Sに対応する折れ線を形成する場合に、装置による折れ線の蛇行が発生した場合にも、適切な位置に折れ線を形成することができる。
【0030】
(凹部)
非エンボス部30の各々は、清掃用シート100が清掃具200に装着された状態において、ヘッド部201の長手縁部201aに対して開口した凹部31を有する形状であることが好ましい。
具体的には、例えば、
図2に示すように、非エンボス部30は、右方向又は左方向、即ち、矩形状の清掃用シート100の中央部から長辺に向かい開口した平面視V字状に形成することができる。即ち、平面視V字状の非エンボス部30であれば、V字状の凹部31を有することとなる。
これによって、清掃用シート100をY方向、即ち、清掃用シート100の短辺と平行な方向に動かして清掃を行った場合に、凹部31にごみが溜まりやすく、ごみの捕集性をより高めることができる。
【0031】
また、非エンボス部30は、
図2に示すように、列ごとにX方向の位置がずれ、互い違いとなるように配置されている。即ち、ヘッド部201の長手縁部201aの一方に対応する折曲部Sに沿った非エンボス部30と、ヘッド部201の長手縁部201aの他方に対応する折曲部Sに沿った非エンボス部30とは、折曲部Sの延在方向において、異なる位置に配されている。
これによって、清掃用シート100をY方向、即ち、清掃用シート100の短辺と平行な方向に動かして清掃を行った場合に、捕集性を互いに補完し合うこととなり、床面を隙間なく非エンボス部30が通過するので、ごみの捕集性を高めることができる。
【0032】
(清掃用シートの製造方法)
次に、清掃用シート100の製造方法について説明する。
清掃用シート100は、複数の繊維層を積層する積層工程と、積層シートを一対のエンボスロールで加圧してエンボス加工を施すエンボス工程と、を有する。
【0033】
積層工程においては、水流交絡法によって、外層11,11と内層12が、その境界領域において互いの繊維が交絡した積層シートを作製することができる。
【0034】
エンボス工程においては、例えば、温度80〜130℃、エンボス圧0.2〜1.0MPaの条件による熱エンボスにて、清掃用シート100にエンボス部20を形成することができる。
このエンボス工程により、内層12の繊維が、外層11,11の繊維内に入り込んで、外層11,11(清掃用シート100)の表面又は表面近傍まで出てくることとなる。
具体的には、第2凸部21bや第2凹部22bのエッジ部などに、内層12の繊維が出てくることとなる。
これにより、清掃用シート100をドライシートとした場合、外層11,11(清掃用シート100)の表面又は表面近傍に親水性繊維があることで、液状の汚れも拭きやすくなる。また、清掃用シート100をウエットシートとした場合、外層11,11(清掃用シート100)の表面又は表面近傍の親水性繊維から薬液が染み出て、被清掃部にもっとも接触する部分で効果的に拭き掃除ができる。
なお、非エンボス部30は、上記エンボス部20を形成するエンボスロールを、非エンボス部30の形状を除くようにデザインすることで、形成することができる。
【0035】
(清掃用シートの使用方法)
次に、清掃用シート100の使用方法について説明する。
使用に際し、清掃用シート100は、清掃具200の矩形の平板状のヘッド部201に装着される。
具体的には、清掃用シート100のX方向に延在する2列の折曲部Sに、ヘッド部201の長手縁部201aを合わせるようにして、清掃用シート100上にヘッド部201が載置される。次いで、清掃用シート100はヘッド部201の長手縁部201aに沿って折り曲げられ、折り曲げられたシート両側部はヘッド部201の上面に係止される。
これにより、例えば、
図1に示すように、清掃用シート100のY方向の中央部は、清掃具200のヘッド部201の底面を覆って清掃面を形成し、清掃用シート100においてヘッド部201の長手縁部201aに対応する位置には、即ち、折曲部Sに沿って、エンボス部20と非エンボス部30が交互に配される状態となる。
【0036】
この状態において、主として清掃用シート100のY方向、すなわち短手方向にこれを動かして清掃を行うと、エンボス部20により、砂塵やハウスダストといった微細ダストを掻き取ることができ、非エンボス部30の起毛により、毛髪や繊維埃といった粗大ダストを絡め取ることができる。
より具体的には、非エンボス部30の凹部31に粗大ダストが溜まり、非エンボス部30の間のエンボス部20及び清掃面に配されたエンボス部20により、微細ダストを掻き取ることができる。
このとき、清掃用シート100においては、外層11,11と内層12の境界領域において、互いの繊維が交絡しているため、エンボス部20の形状を保ちやすく、優れた捕集性を実現することができる。
そして、清掃作業の進行に応じて、エンボス部20は、第2凸部21b、第1凸部21a(或いは、第2凹部22b、第1凹部22a)と徐々に潰れ、清掃面の面積が徐々に広がっていくため、長時間の使用が可能となる。
【0037】
(実施形態の効果)
以上のように、本実施の形態によれば、シートが厚み方向に圧縮されたエンボス部20を備える清掃用シート100において、シートの表面を形成する外層11,11と、外層11,11に挟まれる内層12と、を備え、外層11,11と内層12の境界領域は、互いの繊維が交絡している。
このため、製造時、熱エンボス加工によりエンボスの形状を形成しやすく、清掃時、エンボスの形状を維持しやすくすることができる。
よって、シートの凹凸の形状を保ちやすく、捕集性に優れた清掃用シートを実現することができる。
【0038】
また、本実施の形態によれば、エンボス部20は、シートの一面(上面)から見て、当該一面側に突出した凸エンボス21と、シートの他面(下面)側に突出した凹エンボス22と、を備える。
このため、清掃時において、エンボス部20が、凸エンボス21から凹エンボス22にかけて徐々に潰れ、清掃面の面積が徐々に広がっていくので、長時間、捕集性を維持することが可能となる。
【0039】
また、本実施の形態によれば、凸エンボス21は、一面(上面)から突出した第1凸部21aと、第1凸部21aの頂部からさらに突出した第2凸部21bを備え、凹エンボス22は、他面(下面)から突出した第1凹部22aと、第1凹部22aの頂部からさらに突出した第2凹部22bを備える。
このため、清掃時において、エンボス部20が、より段階的に潰れることとなり、より長時間、捕集性を維持することが可能となる。
【0040】
また、本実施の形態によれば、清掃用シート100は矩形状に形成され、凸エンボス21と凹エンボス22とは、清掃用シート100の長手方向及び短手方向のいずれの方向においても交互に並ぶように配置されている。
このため、規則的に凸エンボス21と凹エンボス22が交互に配置されることにより、ごみの捕集性を向上させることができる。
【0041】
また、本実施の形態によれば、エンボス部20が配されていない非エンボス部30を備える。
エンボス部20が微細ダストを捕集し、非エンボス部30が粗大ダストを捕集するので、ごみ捕集性を良好にすることができる。
【0042】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、具体的な構造について適宜変更可能であるのは勿論である。
【0043】
例えば、上記実施の形態においては、V字状の非エンボス部30を例示して説明したが、ヘッド部201に装着された状態において、ヘッド部201の縁部201aに対して開口した凹部31を有する形状であれば、非エンボス部30の形状はこれに限定されない。
例えば、
図6(a)(b)に示すように、U字状の凹部31を有する、U字状の非エンボス部30でも良い。
また、
図6(c)に示すように、略円形の非エンボス部30の一部に、V字状の凹部31を形成した形状であっても良いし、
図6(d)に示すように、芒星形の非エンボス部30の一部を凹部31として機能させても良い。
【0044】
また、非エンボス部30の形状としては、上述したような、ヘッド部201の縁部201aに対して開口した凹部31を有する形状であることが捕集性の観点から最も好ましいが、
図7に示すように、ヘッド部201の縁部201aに対して斜めの方向に延在した形状であれば良い。
かかる形状であれば、ヘッド部201の縁部201aに対して、非エンボス部30が斜めに配されることとなるため、ごみを捕集することが可能である。
【0045】
また、上記実施の形態においては、清掃用シート100に非エンボス部30を配する構成を例示して説明したが、非エンボス部30を配さなくても良い。即ち、清掃用シート100の全面にエンボス部20が配されていても良い。
【0046】
また、上記実施の形態においては、清掃用シート100のY方向にこれを動かして清掃を行う場合を例示して説明したが、清掃用シート100の長辺と平行な方向に動かして清掃を行うことを念頭に、非エンボス部30を、矩形状の清掃用シート100の中央部から短辺に向かって開口した形状となるように形成してもよい。
この場合、清掃用シート100はヘッド部201の短手方向の縁部に沿って折り曲げられ、折り曲げられたシート両端部がヘッド部201の上面に係止される。
【0047】
また、上記実施の形態においては、清掃具200に清掃用シート100を装着した場合を例示して説明したが、清掃具200に装着することなく清掃用シート100を用いることも可能である。
【実施例】
【0048】
次に、本発明の実施例及び比較例について説明する。以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
外層として、ポリエチレンテレフタレート繊維が80%含有され、バインダー繊維としてポリプロピレンとポリエチレンの芯鞘繊維が20%含有されている、疎水性繊維100%で構成された不織布を準備した。なお、ポリエチレンテレフタレート繊維は、繊度が3.3dtex、バインダー繊維は、繊度1.7dtexのものを用いた。外層の目付は25gsmであった。
また、内層として、ポリプロピレン100%のスパンボンド不織布を準備した。内層の目付は15gsmであった。
上記した外層と内層とを水流交絡法により交絡させ、三層構造のスパンレース不織布である積層シートを作製した。
この積層シートに、温度105℃、エンボス圧0.6MPaにてエンボス加工を行い、
図2に示したような、エンボス部及び非エンボス部を備えた矩形状のドライシートを作製し、実施例1の清掃用シートとした。
【0050】
この清掃用シートの目付は100gsmであり、長辺が300mm、短辺が200mmの寸法であった。
また、エンボス部は、ひょうたん形の凸エンボスと凹エンボスが、長辺方向及び短辺方向に交互に配されたものを用い、凸エンボス及び凹エンボスのサイズはいずれも、長辺が8mm、短辺が3mm、突出方向の高さが0.8mmであった。
また、凸エンボスと凹エンボスはいずれもステージ部を備え、そのサイズは、1.5mmであった。
非エンボス部は、清掃用シートの中央部から長辺に向かい開口した平面視V字状であり、非エンボス部の長辺方向の全長は45mmで、短辺方向の全長は35mmであった。また、非エンボス部の凹部の、長辺方向の最も長い部分の長さは、20mmであった。
また、長辺方向に隣接する非エンボス部の間の距離は、10mmであった。
【0051】
(比較例1)
実施例1と同様の外層及び内層を水流交絡法ではなく貼りあわせて積層シートを作製した以外、実施例1と同様にしてドライシートを作製し、比較例1の清掃用シートとした。
【0052】
(比較例2)
エンボス部の形状を以下のように変更した以外、実施例1と同様にしてドライシートを作製し、比較例2の清掃用シートとした。
エンボス部は、ひょうたん形の凸エンボスと凹エンボスが、長辺方向及び短辺方向に交互に配されたものを用い、凸エンボス及び凹エンボスのサイズはいずれも、長辺が8mm、短辺が3mm、突出方向の高さが0.8mmであった。また、凸エンボスと凹エンボスは、いずれもステージ部を備えないものであった。
【0053】
(比較例3)
実施例1と同様の外層及び内層を水流交絡法ではなく貼りあわせて積層シートを作製し、エンボス部の形状を比較例2と同様にした以外、実施例1と同様にしてドライシートを作製し、比較例3の清掃用シートとした。
【0054】
(比較例4)
実施例1と同様に水流交絡法にて製造した積層シートに、エンボス加工を施さないドライシートを作製し、比較例4の清掃用シートとした。
【0055】
(比較例5)
実施例1と同様の外層及び内層を貼りあわせて積層シートを作製し、エンボス加工を施さないドライシートを作製し、比較例5の清掃用シートとした。
【0056】
上記実施例1、比較例1〜比較例5のシートの捕集性、エンボス状態、吸収性について、以下の基準により評価した。その結果を、表Iに示す。
【0057】
<捕集性の評価>
次に、上記実施例1、比較例1〜比較例5の清掃用シートを、
図1に示したような、治具に装着した状態として、清掃用シートの短手方向にこれを動かして清掃を行い、ごみの捕集性を評価した。
【0058】
ここで使用した掃除具は、
図1に示したような、清掃用シートが取り付けられるヘッド部と、柄部と、を備えたものであった。
ヘッド部は、天面部と底面部とが貼付されて構成されており、天面部は、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)製の、長辺240mm、短辺95mmの長方形状であって、底面部は、硬度70°のTPE(熱可塑性エラストマー)製の、長辺248mm、短辺98mmの長方形状であった。
また、柄部の長さは、ヘッド部との連結部からハンドルキャップ先端までの長さで、215mmであった。
【0059】
評価の基準は、以下のとおりである。その結果は、表Iに示した。
◎:満足感が得られた
○:多少の塵など残るものの、ほぼ満足感が得られた
△:ごみが残ってしまい、不満がのこった
×:ごみをうまく捕集できず、全く満足感を得られなかった
【0060】
<エンボス状態の評価>
次に、上記実施例1、比較例1〜比較例5の清掃用シートを、
図1に示したような、治具に装着した状態として、清掃用シートの短手方向にこれを動かして清掃を行い、清掃後のエンボスの状態を、以下の基準により評価した。その結果は、表Iに示した。
◎:エンボスの形状が残っていた
○:エンボスの形状がほぼ残っていた
△:エンボスの形状が半分程度つぶれていた
×:エンボスの形状が半分以上つぶれていた
【0061】
<吸収性の評価>
次に、上記実施例1、比較例1〜比較例5の清掃用シートを、
図1に示したような、治具に装着した状態として、清掃用シートの短手方向にこれを動かして清掃を行い、液状の汚れの吸収性を、以下の基準により評価した。その結果は、表Iに示した。
◎:よく吸収できた
○:吸収できた
△:あまり吸収できなかった
×:全く吸収できなかった
【0062】
<総合評価>
上記3点の評価に基づき、以下の基準により総合評価を行った。その結果は、表Iに示した。
○:◎のみ、又は、◎と○である
△:1つでも△がある
×:1つでも×がある
【0063】
【表1】
【0064】
表Iの結果から、実施例1のシートにおいては、清掃後のエンボスの状態が良好で、ごみの捕集性、液体の吸収性も良好であった。
また、比較例1のシートから、積層シートを貼りあわせて製造すると、実施例1と比べて、清掃後のエンボスの状態が多少くずれ、ごみの捕集性が劣ることがわかった。
また、比較例2から、エンボス部にステージ部を備えない形状とすると、実施例1と比べて、清掃後のエンボスの状態がくずれ、ごみの捕集性が劣ることがわかった。
また、比較例2、3から、積層シートの製造方法が水流交絡法であると、貼りあわせた場合よりも、エンボスの形状を維持しやすいことがわかった。
また、比較例4、5から、エンボス部がない清掃用シートでは、積層シートの製造方法に関わらず、エンボスがくずれやすく、ごみの捕集性に満足感を得られなかった。
【0065】
また、上記実施例1、比較例1〜比較例5の清掃用シートに、含浸率270%となるように薬液を付与してウエットシートとし、捕集性、エンボス状態、徐放性について、評価した。その結果を、表IIに示す。
ここで、捕集性、エンボス状態の結果は、表Iのドライシートと同一であった。
【0066】
<徐放性の評価>
徐放性の評価は、実施例1、比較例1〜比較例5の清掃用シートを、
図1に示したような、治具に装着した状態として、清掃用シートの短手方向にこれを動かして清掃を行い、このときの薬液の徐放性を、以下の基準により評価した。
◎:薬液の放出が持続し、満足感が得られた
○:問題ない程度に薬液が放出された
△:薬液の放出量に物足りなさを感じた
×:薬液の放出が持続されず、満足感を得られなかった
【0067】
<総合評価>
上記3点の評価に基づき、以下の基準により総合評価を行った。その結果は、表IIに示した。
○:◎のみ、又は、◎と○である
△:1つでも△がある
×:1つでも×がある
【0068】
【表2】
【0069】
表IIの結果から、実施例1のシートにおいては、ごみの捕集性及び薬液の徐放性ともに良好で、満足感を得られることがわかった。