(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0028】
(用語の定義)
本明細書において、「回路パターン」とは、所定の回路を形成するようにパターニングされた導電層をいう。
【0029】
本明細書において、接着部が「回路パターンとは独立して配置されている」とは、回路パターンとは無関係に接着部が配置されており、回路パターンに従属して配置されていないことをいう。ここでいう接着部が「回路パターンに従属して配置されている」とは、回路基板を上面から見た際、接着部から構成される領域と、回路パターンとがほぼ一致(例えば、80%以上一致)するように配置されている状態をいう。
【0030】
本明細書において、伸縮率は50%モジュラスを指標として記載する。50%モジュラスは、「50%伸長時の単位面積当たりの荷重(MPa)」として定義され、「伸縮率が高い」とは50%モジュラスが小さいことを意味し、「伸縮率が低い」とは50%モジュラスが大きいことを意味する。
【0031】
本明細書において、樹脂の「硬度」とは、JIS K 7215により測定したA硬度をいう。
【0032】
本明細書において、樹脂の「引張り強度」および「引張り伸度」は、JIS K7311に準じて測定した、引っ張られたときに耐えられる最大の力(引張強さ:MPa)とその時どれだけ伸びたか(引張伸び:%)である。
【0033】
本明細書(本発明)において、「剥離強度」は、引張試験機を用いて3回測定した値の平均値をいう。
【0034】
本明細書(本発明)において、「弾性率」は、動的粘弾性装置を用いて3回測定した値(貯蔵弾性率)の平均値をいう。
【0035】
本明細書において、「重量平均分子量」は、平均分子量が約500〜約100万の標準ポリスチレンを用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値をいう。
【0036】
本明細書において、「約」とは、後に続く数字の±10%の範囲内をいう。
【0037】
(1.伸縮性基材)
本発明は、十分な伸縮性(例えば、約1.0以下の50%モジュラス)を有する回路基板の提供を課題とし、
(1)伸縮性基材であって、
テキスタイル層と、
前記テキスタイル層を覆う樹脂層と、
前記テキスタイル層と前記樹脂層とを接着する複数の接着部を含む接着層と
を備える伸縮性基材と、
(2)前記樹脂層の上に形成された回路パターンと
を含む回路基板を提供することによって、上記課題を解決した。
【0038】
伸縮性基材の厚みは、任意であり得る。好ましくは、約0.25mm〜約1.0mmであり、さらに好ましくは、約0.5mm〜約0.75mmである。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0039】
(1.1 テキスタイル層)
本発明の伸縮性基材におけるテキスタイル層は、織布、編物、不織布、紐や縄を含む組物網等の繊維構造体と認識される任意のものを含み得る。テキスタイル層の材質は、任意の材質を用いることができるが、伸縮性を得るために伸長率の高い生地とすることが好ましい。例えば、一つの実施形態において、本発明に用いる生地の伸長率は、一方向に9.8Nの力をかけた場合、一方向に約200〜320%、一方向と直交する方向に約70〜190%であり、より具体的には一方向に約220〜280%、一方向と直交する方向に約110〜150%であり、一例としては一方向に約260%、一方向と直交する方向に約130%のものが使用され得る。例えばポリウレタンやポリエステル、好ましくは伸縮性に加えて耐熱性を有するポリエステルである。
【0040】
テキスタイル層の面積に対する回路パターンの面積の割合は任意であるが、例えば、1〜30%、約3〜30%、約5〜30%、約10〜30%、約1〜20%、約3〜20%、約5〜20%、約10〜20%、約1〜10%、約3〜10%、約5〜10%などであり得る。
【0041】
(1.2 樹脂層)
本発明の樹脂層を構成する樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、スチレン系エラストマー、フッ素樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂およびLCP(液晶ポリマー)樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明の樹脂層を構成する樹脂は熱可塑性樹脂であり、特に好ましくはポリウレタン樹脂である。
【0042】
1つの実施形態において、本発明の樹脂層の硬度は、約50〜98、約70〜90、または約80〜90であり得る。
【0043】
1つの実施形態において、本発明の樹脂層の引張り強度は、約25〜65MPa、約30〜50MPa、または約35〜45MPaであり得る。
【0044】
1つの実施形態において、本発明の樹脂層の引張り伸度は、約300〜700%、約400〜約600%、または約450〜550%であり得る。
1つの実施形態において、本発明の樹脂層の弾性率(貯蔵弾性率)は、約100MPa〜1000MPa、約300〜800MPa、または約400〜700MPaであり得る。
【0045】
(1.3 接着層)
本発明の接着層は、回路パターンとは独立して配置されている複数の接着部によって構成される層である。
【0046】
本発明の接着部は、接着部を構成する樹脂とテキスタイル層との熱圧着によって形成してもよい。当該樹脂は、例えば、エラストマー系接着剤、熱硬化系接着剤、熱可塑系接着剤を用いることができる。ここで、接着部とは、樹脂層とテキスタイル層とを直接熱圧着する場合においてはテキスタイル層と樹脂層とが接着している面をいい、樹脂層とテキスタイル層との間にさらなる樹脂を介在させて接着部を構成させる場合には、このさらなる樹脂の樹脂層との接着面からこのさらなる樹脂のテキスタイル層との接着面までを含めて接着部という。
【0047】
樹脂層と接着部とは同じ種類の樹脂でもよいし、異なる種類の樹脂でもよい。また、樹脂層および接着部の弾性率は、接着部の方が低いことが好ましい。これによりテキスタイル層が伸縮した際に樹脂層が追従しやすくなる。
【0048】
1つの実施形態において、本発明の接着層の弾性率(貯蔵弾性率)は、約1MPa〜800MPa、約10MPa〜600MPa、約50MPa〜300MPaであり得る。
【0049】
また、テキスタイル層と樹脂層の弾性率は、ほぼ同じ(例えば、互いに対して±20%以内、より好ましくは±10%以内)であることが好ましい。これにより回路基板の伸縮性が向上する。理論に拘束されることを望まないが、上記の構成とすることにより接着における密着性をより効果的に得ることが可能となる。
【0050】
樹脂層とは異なる樹脂を接着部において用いる実施形態において、本発明の接着部の剥離強度は、約700〜1000g/cmであり得る。
【0051】
本発明において、接着層は樹脂層とテキスタイル層とを全面(例えば80%以上)にわたって接着するのではなく、互いに間隔を開けた複数の接着部によって構成される点に留意すべきである。接着層とテキスタイル層とを全面にわたって接着した場合、接着層によりテキスタイル層が拘束されるため、本発明のように約1.0以下の50%モジュラスを有する回路基板を提供することは困難であり得る。
【0052】
複数の接着部は、樹脂層に対して任意の位置に配置することが可能である。さらに、本発明者らは、樹脂層とテキスタイル層との全面(例えば、80%以上)にわたって樹脂層とテキスタイル層とを接着する場合のみならず、接着部の配置と回路パターンの配置とが共通すると、接着部の硬化によって回路パターンの伸縮性が低下することを見出した。したがって、好ましい実施形態において、複数の接着部は、回路パターンとは独立した位置に配置される。こうすることによって、本発明のように十分な伸縮性(例えば、約1.0以下の50%モジュラス)を有する回路基板が提供され得る。
【0053】
複数の接着部のうち隣接する接着部間の距離は、任意の距離であり得る。好ましくは、約0.7mm〜約2.0mmであり、さらに好ましくは、例えば、約1mm〜約1.5mmであり得るが、本発明はこれらに限定されない。このように、複数の接着部間の距離を適切に設けることによって、本発明のように十分な伸縮性(例えば、約1.0以下の50%モジュラス)を有する回路基板が提供され得る。
【0054】
樹脂層の面積に対する、複数の接着部の面積の合計の割合は80%未満の任意の数値であり得る。一つの実施形態において、70%以下、60%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下であるが、本発明はこれらに限定されない。この割合を高くするほど剥離強度を高めることができる一方で回路基板の伸縮性が低下することとなる。逆に、この割合を低くするほど剥離強度が低下する一方で回路基板の伸縮性を向上させることができる。本発明者らは、この割合を適切に設定することにより、回路基板の十分な伸縮性(例えば、約1.0以下の50%モジュラス)を達成することができることを見出して、本発明を完成させた。
【0055】
回路基板の50%モジュラスは、約1.0(MPa)以下、好ましくは約0.9(MPa)以下、さらに好ましくは約0.8(MPa)以下であるが、本発明はこれに限定されない。本発明の伸縮性基板においては、上記の数値を達成することによって、バイタルセンサーやヘルスケア機器など大きく伸縮する身体の可動部や立体物の動きに追従させることが必要な部分に対しても装着することが可能となった。
【0056】
複数の接着部の配置は、規則的な配置であってもよいし、不規則な配置であってもよい。
【0057】
一つの実施形態において、千鳥状の配置であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、格子状であってもよいし、らせん状などであってもよい。千鳥状の配置は、好ましくは、一方向に約0.7mm〜約2.0mmの間隔、一方向に直交する方向に約0.7mm〜約2.0mmの間隔であり、さらに好ましくは、約1mm〜約1.5mmであり得る。
【0058】
複数の接着部の各々の面積は、任意であり得る。好ましくは、約0.1mm
2〜約0.3mm
2であり、さらに好ましくは、約0.15mm
2〜約0.25mm
2である。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0059】
複数の接着部の形状は、任意の形状であり得る。例えば、略円形状であってもよいし、略楕円形状であってもよいし、四角形状や三角形状などであってもよい。
【0060】
(2.回路パターン)
回路パターンの厚みは、任意であり得る。好ましくは、約0.005mm〜約0.02mmであり、さらに好ましくは、約0.010mm〜約0.014mmである。しかしながら、本発明はこれに限定されない。回路パターンの厚みがあまり厚すぎると伸縮性が低下するおそれがある。また、回路パターンの厚みがあまり薄すぎると伸縮に伴う断線の恐れがある。回路基板に求められる伸縮性および強度に応じて適宜厚さを設定することが好ましい。
【0061】
回路パターンは、電気を通す任意の金属を含む導電性組成物であり得る。一つの実施形態において、銀を含む導電性組成物によって形成されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、銅や金などの銀以外の金属を含むものであってもよい。
【0062】
導電性組成物は伸縮性材料をさらに含んでいてもよい。伸縮性材料を含ませることにより、伸縮性基材や樹脂層による伸縮に伴う回路パターンの伸縮に伴う断線などをより効果的に抑制することが可能となる。伸縮性材料は任意の材料であり得る。一つの実施形態において、熱可塑性樹脂であるが、本発明はこれに限定されない。本発明の導電性組成物は、樹脂層との密着性を高めるため、樹脂層の組成と同様の組成を含んでもよい。例えば、樹脂層がウレタン層である場合には、回路パターンを形成するための導電性組成物にもウレタンの成分が含まれており、樹脂層がポリエチレン層で形成されている場合には、回路パターンを形成するための導電性組成物にはポリエチレンの成分を含ませるのが好ましい。
【0063】
樹脂層は熱可塑性樹脂材料を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂材料を含ませることにより、効果的に伸縮性を得ることが可能となる。
【0064】
本発明において使用される導電性樹脂は、国際公開第2017/026130号に開示されるものであり得る。
【0065】
(3.製品)
回路基板を含む製品は、衣服、シューズ、履物、手袋、玩具、車載シート、ヘルスケア機器などからなる群から選択される。伸縮性を有する本発明の回路基板は、継続的に伸縮により従来フレキシブル基板では回路が断線してしまい装着不能であった衣服、履物やロボットアームなどの駆動部などに使用することが可能となる。
【0066】
(具体的な実施形態)
以下の実施形態では、回路基板の一例として、テキスタイル層は編み物であり、樹脂層はウレタン層であり、接着部に用いる接着剤は熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂であり、回路パターンを構成する素材は銀であるものを挙げる。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。テキスタイル層と樹脂層とを接着する複数の接着部を有することによって十分な伸縮性(例えば、約1.0以下の50%モジュラス)を有する回路基板を提供することができる限り、テキスタイル層、樹脂層、接着部、回路パターンの形状、材質、種類、特性、さらには、接着部と回路パターンとの位置関係については特に限定されるものではないことが理解される。
【0067】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0068】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1による回路基板1を説明するための図であり、
図1(a)および
図1(b)はそれぞれ、回路基板1の外観を示す斜視図および平面図であり、
図1(c)は、
図1(b)のIc−Ic線断面図である。
【0069】
この回路基板1は、伸縮性基材100と回路パターン10とを有する。伸縮性基材100は、テキスタイル層110と、テキスタイル層を覆う樹脂層120と、テキスタイル層110と樹脂層120とを接着する接着層130とを有する。この接着層130は、テキスタイル層110と樹脂層120とを接着する接着部を複数個所に分散させた構造となっている。回路パターン10は、樹脂層120の表面に形成されている。なお、回路パターンは、所定の回路を形成するように、例えば、スクリーン印刷などでパターニングされた導電層のことをいう。回路パターンを樹脂層の上に形成する手段は、フレキソ印刷、グラビアオフセット印刷、ディスペンサー式など任意の手段であり得る。
【0070】
ここで、テキスタイル層110は、伸縮性に富んだニットなどの編み物であり、素材には、ポリエステルなどが用いられ得る。樹脂層120はウレタン層であり、接着層130を構成する接着剤は熱可塑性樹脂である。ただし、テキスタイル層110、樹脂層120、および接着層130はこれらの材料に限定されるものではない。例えば、テキスタイル層110は織物あるいは不織布でもよく、樹脂層120は、伸縮性を有する任意の素材あってもよい。接着層130を構成する接着剤は熱硬化性樹脂でもよい。
【0071】
図2および
図3は、
図1に示す回路基板1の詳細な構造を模式的に示す図であり、
図2(a)は、
図1(b)のIIa部分の拡大図、
図2(b)は、
図2(a)のIIb線断面図である。
図3は、
図1(a)のIII部分の拡大透視図であり、
図3では、
図1(a)に示す回路基板1の上方から樹脂層120の下側の接着部130aおよびテキスタイル層110を透視している。
【0072】
〔伸縮性基材100〕
ここで、編み物であるテキスタイル層110は、
図2(a)、(b)に示すように、複数の直線状の繊維塊部110aが一定方向に配列された構造となっている。なお、編み物であるテキスタイル層110は、実際には
図7(b)に示されるように、繊維塊部110aから樹脂層とは反対側に延びる繊維などが存在しているが、
図2および
図3では省略している。
【0073】
樹脂層120は、伸縮性を有することが特徴である。一つの実施形態において、樹脂層には熱可塑性エラストマーが用いられ、特に、伸縮性という観点からウレタン樹脂が用いるのが好ましい。また、樹脂層120の上に形成される回路パターン10の印刷に用いる印刷ペースト(インク)には溶剤(ブチカルビトールアセテート、ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、カルビトールアセテートなど)を用いるのが好ましい。なお、樹脂層120には、ウレタン樹脂以外にゴム系の素材を用いることができ、また、熱可塑性エラストマーに限らず、熱硬化性エラストマーをなど用いてもよい。
【0074】
一つの実施形態において、接着層130は、ホットメルト樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられる。接着層130は、テキスタイル層110と樹脂層120との間に全面に渡って形成されたものではなく、
図2(a)に示すように、テキスタイル層110と樹脂層120との間に千鳥状に配列された複数の接着部130aにより構成されている。接着部130aの具体的な材料は、ウレタン樹脂である樹脂層120との密着性の観点から同じウレタン系の材料が用いられている。ただし、接着層130には、ホットメルト樹脂などに限定されず、紫外線硬化型樹脂などを用いることもできる。また、樹脂層を直接テキスタイル層に熱圧着することによって、接着部を形成してもよい。
【0075】
ここで、隣接する接着部130aの間の距離は、約1.25mmであり、隣接する接着部130aの間は接着剤が含まれない領域となっている。従って、樹脂層120は、繊維塊部110aと接着部130aにより接着されている。
【0076】
さらに、樹脂層の面積に対する、複数の接着部の面積の合計の割合は、一つの実施形態において50%程度である。ただし、この割合に限定されるものではなく、回路基板の十分な伸縮性(例えば、約1.0以下の50%モジュラス)を達成する伸縮性と剥離強度があればよい。例えば、テキスタイル層110が薄い場合は、接着部130aが盛り上がる傾向があるので、接着部130aの面積を小さくするのが望ましい。また、テキスタイル層110が厚い場合は、接着部130aの面積を大きくして接着部130aと樹脂層120との剥離強度を高めることが好ましい。接着部130aの面積を大きくして樹脂層120とテキスタイル層110との密着性を高める理由の一つは、テキスタイル層110の洗濯の際に樹脂層120とテキスタイルとの間で剥離しないようにするためである。樹脂層の面積に対する複数の接着部の面積の合計の割合を50%程度にすることで、洗濯時の樹脂層120とテキスタイル層110との剥離抑制効果と、接着部130aの盛り上がり抑制効果とをバランスよく得ることができる。
【0077】
図示する実施形態において、複数の接着部130aの配置は千鳥状の配置である。一つの実施形態において、この千鳥状の配置では、一方向に約0.7〜約2.0mmの間隔、一方向に直交する方向に約0.7〜約2.0mmの間隔で接着部130aが配置されている。また、複数の接着部130aの配置は千鳥状の配置に限定されるものではなく、その他の規則的な配置(格子状の配置)であってもよいし、さらには、不規則な配置であってもよい。
【0078】
一つの実施形態において、複数の接着部の各々の面積は約0.2mm
2である。ただし、これに限定されるものではなく、回路基板1の求められる十分な伸縮性(例えば、約1.0以下の50%モジュラス)、密着強度などの条件に応じて、好ましくは約0.1mm
2〜約0.3mm
2の面積のものが用いられる。さらにこの好ましくは、複数の接着部の各々の面積は、約0.15mm
2〜約0.25mm
2である。一つの実施形態において、複数の接着部の形状は略円形状であるが、これに限定されるものではなく略楕円形状、略四角形状や略三角形状などであってもよい。
【0079】
一つの実施形態において、伸縮性基材の厚みは、0.618mmである。ただし、これに限定されるものではなく、好ましくは約0.25mm〜約1.0mmであり、さらに好ましくは、約0.5mm〜約0.75mmである。
【0080】
〔回路パターン10〕
さらに、一つの実施形態において、樹脂層120の表面には、Agを含む導電性組成物からなる回路パターン10が形成されている。この回路パターンの厚みは、約0.012mmである。ただし、この厚みに限定されるものではなく、好ましくは約0.010〜約0.02mmであり、さらに好ましくは、約0.010mm〜約0.014mmである。
【0081】
また、回路パターン10は、樹脂層120との密着性を高めるため、樹脂層120の組成と同様な組成を含ませることが好ましい。一つの実施形態において、樹脂層120はウレタン層であるので、回路パターンを形成するための導電性組成物にはウレタンの成分が含まれている。従って、樹脂層120がポリエチレン層で形成されている場合は、回路パターンを形成するための導電性組成物にはポリエチレンの成分を含ませるのが好ましい。
【0082】
また、導電性組成物に伸縮性材料を含ませることにより回路パターン10に伸縮性を持たせてもよい。回路パターン自体に伸縮性を持たせることにより、テキスタイル層および樹脂層の伸縮に伴う回路パターンの断線などがより効果的に防止することが可能となる。また、導電性組成物に伸縮性材料を含ませる代わりに、回路パターン10を蛇行したミアンダパターンを採用するようにしてもよい。また、導電性組成物に伸縮性材料を含ませるとともに回路パターンにミアンダパターンを採用することにより、より伸縮性を保ちつつ断線を防止することが可能となる。
【0083】
図4は、
図1に示す回路パターン10の具体例を説明するための図であり、
図4(a)〜
図4(d)はそれぞれ、蛇行した配線パターン(ミアンダパターン)の具体例を示す。
【0084】
図4(a)に示す回路パターン10aは、第1のミアンダパターンを採用した配線13aを含み、配線13aの両端は直線状の接続部11aおよび12aを介して電極パッド11、12に接続されている。第1のミアンダパターンを採用した配線13aは、細かく蛇行したジグザグ経路に沿って形成されている。
図4(b)に示す回路パターン10bは、回路パターン10の配線13aに代わる、第2のミアンダパターンを採用した配線13bを含む。この配線13bは、第1のミアンダパターンより細かく蛇行したジグザグ経路に沿って形成されており、ジグザグ経路の折り返し部分が円弧状となっている。
【0085】
図4(c)に示す回路パターン10cは、回路パターン10aの配線13aに代わる、第3のミアンダパターンを採用した配線13cを含む。この配線13cは、対向する一対の電極パッド11および12を結ぶ直線を中心としてその両側に垂直方向に延びる一定長さの複数の直線部分13c1と、隣接する直線部分13c1の先端同士を繋ぐ半円状部分13c2とから構成されている。
【0086】
図4(d)に示す回路パターン10dは、回路パターン10aの配線13aに代わる、第4のミアンダパターンを採用した配線13dを含む。この配線13dは、概ね3/4円の円弧を繋いで形成される蛇行した経路に沿って形成されている。
【0087】
このようなミアンダパターンを有する配線13a〜13dでは、第1〜第4のミアンダパターンの順で伸縮に対する断線や電気抵抗増大に対する耐性が増大したものとなっている。しかし、本発明の回路パターンは、
図4に示すものに限定されず任意の形状であり得る。
【0088】
なお、上述した回路パターン10a〜10dは、ミアンダパターンを採用した配線の両端がそれぞれ直線状の接続部を介して電極パッドに接続したものであるが、これらの回路パターンは、ミアンダパターンを採用した配線の両端を直接電極パッドに接続したものでもよい。
【0089】
(作製方法)
次に、回路基板1の作製方法の一例を説明する。
【0090】
まず、回路基板1を構成する伸縮性基材100の作製方法の一例を説明する。
【0091】
図5は、テキスタイル層110を樹脂層120に接着する方法を作業工程順に説明するための図であり、
図5(a)〜
図5(f)は、各作業工程を示す。
図6は、
図1に示す樹脂層120の表面に選択的に接着剤を塗布するのに用いるマスク部材Maを示す図である。
【0092】
樹脂層120を支持台K上に載せ、さらに、樹脂層120の表面に選択的に接着剤を印刷するための印刷マスクMaを配置する(
図5(a))。ここで、印刷マスクMaは複数のマスク開口Ma0を有し、複数のマスク開口Ma0は、樹脂層120上に複数の接着部130aが所定の配列パターン(千鳥状パターン)で並ぶように、複数の接着部130aの配列パターンと同じ配列パターンで配列されている。また、マスク開口Ma0の形状も、接着部130aの形状と同じ形状となっている。
【0093】
次に、印刷マスクMaを用いて樹脂層120に選択的に接着剤(印刷ペースト)を印刷する(
図5(b))。
【0094】
接着剤の乾燥(溶剤の蒸発)後に印刷マスクMaを除去し(
図5(c))、さらに、テキスタイル層110を樹脂層120の表面を覆うように樹脂層120の上に被せ(
図5(d))、この状態で、ローラR又は熱プレスでテキスタイル層110を樹脂層120に熱圧着する(
図5(e))。
【0095】
これにより、接着剤130aが溶融してテキスタイル層110に浸み込み、浸み込んだ接着剤130aが樹脂層120と接触した状態で固化する(
図5(f))。
【0096】
これによりテキスタイル層110に樹脂層120が接着された伸縮性基材100が得られる。その後、支持台Kから伸縮性基材100を取り外す。
【0097】
図7および
図8には、テキスタイル層110に樹脂層120を接着して得られた伸縮性基材100が写真で示されており、伸縮性基材100の樹脂層120の表面は、
図7(a)の写真で示され、伸縮性基材100の側面は
図7(b)の写真で示されている。
図7(b)の写真には、テキスタイル層110に浸み込んだ接着部130a(点線の四角の枠内)が繊維塊部110aおよび樹脂層120とともに示されている。さらに、伸縮性基材100のうちの
図7(b)に示す側面に直交する側面が、
図8(a)の写真で示され、
図8(a)に示す側面の詳細が
図8(b)の拡大写真で示されている。
【0098】
次に、伸縮性基材100の樹脂層120に回路パターン10を形成する方法の一例を説明する。ここでは、回路パターン10の形成には、導電性組成物の印刷、例えばスクリーン印刷を用いる。回路パターン10の形成には、スクリーン印刷に限らず、フレキソ印刷、グラビアオフセット印刷でもよいし、さらには、印刷による形成に限らず、針先から導電性組成物を押し出すディスペンス方法でもよい。さらに、導電性組成物は特に限定されるものではないが、例えば、導電性組成物には、国際公開2017/026130などに開示されている材料を用いることができる。また、印刷の下地となる樹脂層120の成分(ウレタン)あるいはこれに近い成分を含むものが密着性などの観点から好ましい。
【0099】
図9は、
図7に示す伸縮性基材100の樹脂層120に回路パターン10を形成する方法の一例を作業工程順に説明するための図であり、
図9(a)〜
図9(c)は、各作業工程を示す。
図10は、回路パターン10の形成に用いるスクリーン印刷機Pを説明するための図であり、
図10(a)は平面図、
図10(a)のXb−Xb線断面図である。
【0100】
まず、
図9(a)に示すように、テキスタイル層110に樹脂層120を接着して得られた伸縮性基材100をスクリーン印刷機Pに取り付ける。
【0101】
このスクリーン印刷機Pは、
図10(a)および(b)に示すように、伸縮性基材100を載置する印刷台Mと、印刷台M上に配置され、スクリーン部材Psを支持するフレームPfと、スクリーン部材Ps上に保持される印刷ペーストPeをスクリーン開口Ps0から押し出すためのスクイーズSqとを有している。
【0102】
次に、
図9(b)および
図9(c)に示すように、スクイーズSqでスクリーン部材Psを伸縮性基材100の樹脂層120の表面に押し当てながらスクリーン部材Ps上でスクイーズSqを移動させると、スクイーズSqによりスクリーン開口Ps0から押し出された印刷ペーストPeが、スクリーン開口Ps0の形状と同じ形状で樹脂層120の表面に印刷される。
【0103】
その後、印刷ペーストPeの溶剤が蒸発して印刷ペーストPeが乾燥すると、印刷ペーストPeに含まれている銀からなる回路パターン10が樹脂層120の表面に形成される。
【0104】
このような回路基板1は、ジーンズなどの衣類、ベッドなどの寝具、さらには車の座席などに取り付けて、生体信号の検出やヒータによる暖房及び圧力の検出などを行うのに利用することができる。
(実施例)
本実施例においては、本発明の回路基板1の伸縮性を従来の回路基板およびテキスタイル層のみの二つの比較例と対比して示している。
【0105】
ここで、本発明の回路基板1は、テキスタイル層110と、接着部130aと、樹脂層(ウレタン層)120と、回路パターン10とを有し、テキスタイル層110と樹脂層120は、略千鳥状に配置された複数の接着部130aで接着されている。回路基板1の厚みは約0.658mm、テキスタイル層の厚みは約0.618mm、樹脂層の厚みは約0.028mm、回路パターンの厚みは約0.012mmである。また、千鳥状に配置された隣接する接着部間の距離は、一方向において平均約1.25mmの間隔、一方向と直交する方向において平均約1.25mmの間隔である。
【0106】
(比較例1:テキスタイル層のみ)
比較例1は、テキスタイル層のみからなる構成である。テキスタイル層は、実施例で用いたものと同一のものを用いた。
【0107】
(比較例2:従来の回路基板)
比較例2(従来の回路基板)は、テキスタイル層を覆うウレタン層全面にホットメルト接着を施した点を除いて、本発明の回路基板1と同様であった。
【0108】
<50%モジュラスの評価>
実施例及び比較例1、2を幅10mm、長さ40mmに切断し、チャック間距離が30mmとなるように設置して、引張試験機により温度23℃、湿度60%RH、引張速度:300mm/minで150%の長さまで伸長させた。このとき荷重と、単位面積当たりの荷重(50%モジュラス:MPa)を求めた。
【0109】
50%モジュラスの値が小さいほど小さい力で伸ばすことが可能であり伸縮性が高いことを表している。結果を以下の表に示す。
【0110】
【表1】
表1から分かるように、本発明の回路基板1では、50%伸張時の荷重が1.56(N)であり、50%モジュラスが0.21である。従って、本発明の回路基板1の伸縮性は、比較例1(テキスタイル層のみ)の伸縮性とほぼ同等であり、比較例2(従来の回路基板)の伸縮性(50%伸張時の荷重(7.73N)および50%モジュラス(1.29))に比べると、大きく向上していることが分かる。
【0111】
このように、本実施形態1では、テキスタイル層110に樹脂層120を接着層130で接着した構造の伸縮性基材100に回路パターン10を形成した回路基板1において、テキスタイル層110と樹脂層120との接着部130aを複数個所に分散させて配置したので、隣接する接着部130aが分離されることとなり、接着部130aが硬化しても、隣接する接着部130aがテキスタイル層110の変形の範囲内で相対的に変位することが可能となる。その結果、接着部130aの硬化による伸縮性の低下を抑制することができる伸縮性の回路基板1を得ることができる。
【0112】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【課題】本発明の課題は、テキスタイル層と樹脂層とを接着する接着剤層の硬化による伸縮性の低下を抑制し、十分な伸縮性(例えば、約1.0以下の50%モジュラス)を有する伸縮性の回路基板を得ることである。
【解決手段】本発明の回路基板1は、伸縮性基材100であって、テキスタイル層110と、テキスタイル層110を覆う樹脂層120と、テキスタイル層110と樹脂層120とを接着する複数の接着部130aを含む接着層130とを備える伸縮性基材100を含み、さらに、樹脂層の上に形成された回路パターン10を含む。