(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6533041
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】2つのマイクロストリップ線路のための線路ブリッジおよび線路ブリッジを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
H01P 5/08 20060101AFI20190610BHJP
H01P 3/08 20060101ALI20190610BHJP
H01P 7/06 20060101ALI20190610BHJP
H01P 7/10 20060101ALI20190610BHJP
【FI】
H01P5/08 H
H01P3/08
H01P7/06
H01P7/10
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-162637(P2014-162637)
(22)【出願日】2014年8月8日
(65)【公開番号】特開2015-43568(P2015-43568A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2017年7月18日
(31)【優先権主張番号】10 2013 216 929.9
(32)【優先日】2013年8月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】カルステン・ポートラッツ
【審査官】
米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−036614(JP,A)
【文献】
特開2004−187224(JP,A)
【文献】
米国特許第06498550(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/08
H01P 3/08
H01P 7/06
H01P 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリメートル波範囲の波長を有する電磁波をそれぞれ伝送するために構成された2つのマイクロストリップ線路(2−1,2−2,3)のための線路ブリッジ(1)において、
誘電材料より成り、該誘電材料内で入力された信号によって共振モードが励起される誘電共振器(4)を有しており、
第1の前記マイクロストリップ線路(2−1,2−2)内にガイドされる、伝送ガイドされた第1の電磁波を前記誘電共振器(4)に入力するために構成された第1の結合個所(5)を有しており、
前記誘電共振器(4)に入力された前記第1の電磁波を前記誘電共振器(4)から前記第1のマイクロストリップ線路(2−1,2−2)に出力するために構成された第2の結合個所(6)を有しており、
前記第1のマイクロストリップ線路(2−1,2−2)が、前記第1の結合個所(5)と前記第2の結合個所(6)の間で中断されており、
第2の前記マイクロストリップ線路(3)が、前記第1の結合個所(5)と前記第2の結合個所(6)の間で前記誘電共振器(4)の下に延在しており、
前記誘電共振器(4)が、プラスチックより形成されていて、その下側に設けられている絶縁部(11)によって、前記第2のマイクロストリップ線路(3)から電気的に絶縁されている、
2つのマイクロストリップ線路のための線路ブリッジ。
【請求項2】
前記誘電共振器(4)が、少なくとも部分的に金属(7)で被覆されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の線路ブリッジ。
【請求項3】
前記誘電共振器(4)が、はんだパッド(8,9)を有しており、該はんだパッド(8,9)が、プリント基板(10)上にはんだ付け可能であり、前記誘電共振器(4)を該プリント基板(10)に固定するために構成されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の線路ブリッジ。
【請求項4】
前記誘電共振器(4)が、はんだパッド(8,9)を有しており、該はんだパッド(8,9)が、プリント基板(10)上にはんだ付け可能であり、前記誘電共振器(4)を該プリント基板(10)に固定するために構成されている
ことを特徴とする、請求項2に記載の線路ブリッジ。
【請求項5】
前記はんだパッド(8,9)が、前記金属(7)と電気結合されている
ことを特徴とする、請求項4に記載の線路ブリッジ。
【請求項6】
前記誘電共振器(4)が、直方体状またはサイコロ状または円柱状の形を有している
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の線路ブリッジ。
【請求項7】
前記第1のマイクロストリップ線路(2−1,2−2)の、前記第1の結合個所(5)に繋がる端部の幅が、該第1の結合個所(5)に向かって広がっている、および/または、前記第2の結合個所(6)に繋がる端部の幅が、該第2の結合個所(6)に向かって広がっている
ことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の線路ブリッジ。
【請求項8】
請求項1に記載の線路ブリッジ(1)を製造するための方法において、
前記第1の結合個所(5)を、前記第1のマイクロストリップ線路(2−1,2−2)に配置するステップ(S1)を有しており、
前記第2の結合個所(6)を、前記第1のマイクロストリップ線路(2−1,2−2)に前記第1の結合個所(5)に向き合って配置するステップ(S2)を有しており、
前記誘電共振器(4)を、前記第1の結合個所(5)および前記第2の結合個所(6)上に配置するステップ(S3)を有している、
線路ブリッジを製造するための方法。
【請求項9】
その他のステップとして、
前記第1のマイクロストリップ線路(2−1,2−2)を、前記第1の結合個所(5)と前記第2の結合個所(6)の間で中断するステップ(S4)と、
前記第2のマイクロストリップ線路(3)を、前記第1の結合個所(5)と前記第2の結合個所(6)の間に配置するステップ(S5)と、
を有している、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記誘電共振器(4)を、プラスチックより、直方体状またはサイコロ状または円柱状の形状に成形するステップ(S6)、および/または、前記誘電共振器(4)を、少なくとも部分的に金属(7)で被覆するステップ(S7)を有している、
請求項8および9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
はんだパッド(8,9)を、前記誘電共振器(4)に配置するステップ(S8)を有しており、
前記誘電共振器(4)を、前記第1の結合個所(5)および前記第2の結合個所(6)上に配置するステップ(S3)において、該誘電共振器(4)を、前記2つのマイクロストリップ線路(2−1,2−2,3)および前記第1の結合個所(5)および前記第2の結合個所(6)が配置されているプリント基板(10)上に、前記はんだパッド(8,9)を該プリント基板(10)にはんだ付けすることによって固定する、
請求項8から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のマイクロストリップ線路(2−1,2−2)が、前記第1の結合個所(5)に繋がる端部の幅が、該第1の結合個所(5)に向かって広がっている、および/または、前記第2の結合個所(6)に繋がる端部の幅が、該第2の結合個所(6)に向かって広がっている形状で成形されるステップ(S9)を有している、
請求項8から11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリメートル波範囲の波長を有する電磁波をそれぞれ伝送するために構成された2つのマイクロストリップ線路のための線路ブリッジに関する。また本発明は、本発明による線路ブリッジを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の電子的な使用において、特にデジタル回路のクロック周波数並びにアナログ信号の周波数が益々用いられている。
【0003】
この場合、処理された信号の波長は、ミリメートル範囲内およびそれ未満に達する。
【0004】
波長がミリメートル範囲内にある高周波数の信号のガイドおよび分配は、工業的な使用において一般的な形式で、従来のプリント基板技術によって行われる。従来のプリント基板技術においては、適合されたマイクロストリップ線路により約100GHzの周波数を許容する特殊な高周波基板材料が使用される。
【0005】
特許文献1には、マイクロストリップ線路の1例が記載されている。
【0006】
この特殊な高周波基板材料は、もちろん非常に高価であって、処理が困難である。従って大抵は、1つの薄膜若しくは1つの層だけが、この高周波基板材料より成るプリント基板において、高周波信号を分配するための、プリント基板スタックの一方側に配置される。
【0007】
しかしながら、プリント基板スタックの個別の層、若しくは高周波信号を分配するための個別の信号面に限定されることによって、高周波信号網の草案およびルーチングの際の設計自由度が制限される。何故ならば、個別の薄膜上に、異なる信号線路の交差部を配置することはできないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第2013/021118号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明は、請求項1の特徴を有する線路ブリッジおよび、請求項9の特徴を有する方法を開示する。
【0010】
本発明によれば、ミリメートル波範囲の波長を有する電磁波をそれぞれ伝送するために構成された2つのマイクロストリップ線路のための線路ブリッジにおいて、誘電共振器を有しており、第1の前記マイクロストリップ線路内にガイドされる、伝送ガイドされた電磁波を前記誘電共振器に入力するために構成された第1の結合個所を有しており、誘電共振器に入力された電磁波を第1のマイクロストリップ線路に出力するために構成された第2の結合個所を有している。
【0011】
さらに、ミリメートル波範囲の波長を有する電磁波をそれぞれ伝送するために構成された2つのマイクロストリップ線路のための、本発明による線路ブリッジを製造するための方法が提供されており、この方法は、第1の前記マイクロストリップ線路内にガイドされる、伝送ガイドされた電磁波を誘電共振器に入力する第1の結合個所を第1のマイクロストリップ線路内に配置するステップを有しており、第2の結合個所を前記第1のマイクロストリップ線路において前記第1の結合個所に向き合って配置するステップを有していて、この際に、前記第2の結合個所が、前記誘電共振器に入力された電磁波を前記第1のマイクロストリップ線路に出力し、誘電共振器を、第1の結合個所および第2の結合個所上に配置するステップを有している。
【発明の効果】
【0012】
本発明の根底を成す認識は、高周波信号を分配するためのプリント基板スタックに個別の層を使用することは、開発の設計自由度を著しく制限する、という点にある。
【0013】
本発明の根底を成す考え方は、以上のような認識を考慮して、プリント基板スタックの上記の層上において高周波信号線路の交差を可能にするような可能性を提供する、という点にある。
【0014】
このために本発明によれば、第1のマイクロストリップ線路のために第2のマイクロストリップ線路のブリッジを可能にする、マイクロストリップ線路のための線路ブリッジが提供される。
【0015】
このために、第1のマイクロストリップ線路が2つの結合個所を有しており、これら2つの結合個所上に、誘電共振器が配置されている。
【0016】
この場合、第1の結合個所は、第1のマイクロストリップ線路内でガイドされる電磁波を誘電共振器に入力するために用いられる。
【0017】
第2の結合個所は、誘電共振器内に入力された電磁波を誘電共振器から第1のマイクロストリップ線路に出力するために用いられる。
【0018】
この場合、第1および第2の結合個所の機能は、2つの結合個所のうちの一方の信号方向に応じて構成されている。
【0019】
本発明は、マイクロメートル波範囲内の波長を有する信号をガイドする信号線路と交差させることができ、このためにプリント基板上に追加的な高周波層若しくは追加的な高周波薄膜を設ける必要はない。
【0020】
特に本発明によれば、2つのマイクロストリップ線路が交差される際に、2つのマイクロストリップ線路上の信号は非常に僅かな妨害を受けるだけである。
【0021】
好適な実施形態および実施態様は、従属請求項、並びに図面に関する説明に記載されている。
【0022】
1実施形態によれば、第1のマイクロストリップ線路が結合個所の間で中断されている。さらに、第2のマイクロストリップ線路が、2つの結合個所の間で誘電共振器の下に延在している。
【0023】
1実施形態によれば、誘電共振器がプラスチックより形成されている。これによって、誘電共振器の非常に簡単かつ安価な製造が可能である。
【0024】
1実施形態によれば、誘電共振器の寸法は、使用された電気共振器モード、並びに誘電共振器のために使用された材料の誘電率に基づいて算出されるか若しくは決定される。これによって、誘電共振器を様々な周波数範囲に適合させることができ、様々な使用に用いることができる。
【0025】
1実施形態によれば、誘電共振器は、少なくとも部分的に金属で被覆されている。これによって、必要な共振器体積を制限することができ、誘電共振器に入力された信号の、自由空間への放射を制限することができる。
【0026】
1実施形態によれば、誘電共振器ははんだパッドを有しており、これらのはんだパッドは、プリント基板上にはんだ付け可能であり、誘電共振器をプリント基板上に固定するために構成されている。
【0027】
1実施形態によれば、はんだパッドは金属と電気結合されている。これによって、誘電共振器を被覆する金属を、プリント基板の高周波アースに結合することができる。
【0028】
1実施形態によれば、誘電共振器が、直方体状またはサイコロ状または円柱状の形を有している。これによって、誘電共振器を様々な使用および環境条件に適合させることができる。
【0029】
1実施形態によれば、第1の結合個所および/または第2の結合個所が、共振器に向かって、第1のマイクロストリップ線路の幅から所定の幅、特に誘電共振器の幅まで広がっている。マイクロストリップ線路を誘電共振器に向かって拡開させることによって、突然のインピーダンスジャンプが避けられ、誘電共振器との結合が改善され、ひいては著しく僅かな挿入減衰が得られ、線路ブリッジの帯域幅が改善される。
【0030】
上記構成および実施態様は、有意義であれば、互いに任意に組み合わせることができる。本発明のその他の可能な構成、実施態様および実現は、前もって明確に挙げられていない組合せ、または実施例に関連して以下に記載された本発明の特徴を有している。特にこの場合、当業者は、個別の態様を、本発明のそれぞれの基本構造に改良または補足として付け加えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による線路ブリッジの実施形態を示す斜視図である。
【
図2】本発明による線路ブリッジの実施形態を示す別の斜視図である。
【
図3】本発明による線路ブリッジの実施形態を示す別の斜視図である。
【
図4】本発明による線路ブリッジの実施形態の2つのマイクロストリップ線路間の混線若しくは信号減衰を示す線図である。
【
図5】本発明による方法の実施形態のフローチャートである。
【
図6】本発明による方法の別の実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明を以下に、図面の概略図に示した実施例を用いて詳しく説明する。
【0033】
全ての図面において、同じ若しくは機能的に同じ要素および装置は、何も記載がなければ、同じ符号で示されている。
【0034】
マイクロストリップ線路とは、本特許出願の枠内において、ミリメートル波範囲の波長を有する信号を導くために適したプリント基板のことである。特にマイクロストリップ線路は、減衰ができるだけ小さい信号を伝送するために構成されている。
【0035】
本特許出願の枠内において、誘電共振器とは、誘電材料より成り、この誘電材料内で入力された信号によって共振モードが励起され得る構成部分のことである。
【0036】
本特許出願の結合個所とは、誘電共振器に接してまたは誘電共振器の下に配置され、誘電共振器に信号を入力することができる第1のマイクロストリップ線路の領域のことである。このために、結合個所は、特に第1のマイクロストリップ線路と同じ材料より構成されている。
【0037】
金属による部分的な被覆とは、本特許出願の枠内において、誘電共振器の少なくとも1つの側または面が被覆されている、ということである。特に誘電共振器は、電磁波を放射することがないように被覆されている。
【0038】
結合個所の拡開とは、例えば結合個所が漏斗状に広げられる、という意味である。拡開のその他の幾何学的変化例も同様に可能である。
【0039】
本特許出願の枠内において、プリント基板の概念は、個別層若しくは個別薄膜を有するプリント基板のことだけではない。むしろ、本特許出願の枠内において、プリント基板とは、多層のプリント基板であってもよい。図面には、1つのプリント基板が示されているか、または図面には1つのプリント基板が挙げられているが、このプリント基板は、様々な実施形態において、単にプリント基板スタックの1つの層若しくは薄膜として構成されていてもよい。
【0040】
図1は、本発明による線路ブリッジ1の1実施形態を示す。
線路ブリッジ1は、第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2を有しており、これらの第1のマイクロストリップ線路は、プリント基板10を横断して延在している。線路ブリッジ1はさらに、第2のマイクロストリップ線路3を有しており、この第2のマイクロストリップ線路3は、第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2に対して90°の角度を成して、やはりプリン後基板10を横断して延在している。プリント基板上で、第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2および第2のマイクロストリップ線路3の交点上に誘電共振器4が配置されている。
図1では、2つのマイクロストリップ線路2−1,2−2および3の交差個所は見えていない。何故ならば交差個所は誘電共振器4によって隠されているからである。もちろん、第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2は、この誘電共振器4の下で中断されているので、第2のマイクロストリップ線路3は、この第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2を通過して誘電共振器4の下に延在していてよい。従って、第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2は、第1の区分2−1と第2の区分2−2とを有しており、これら第1の区分2−1および第2の区分2−2は、誘電共振器4によって互いに結合される。第1の結合個所5および第2の結合個所6は、
図1では別個に示されていない。何故ならば、これら第1の結合個所5および第2の結合個所6は、誘電共振器4の端部の下に位置していて、この誘電共振器4によって隠されているからである。
【0041】
第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2の中断部の可能な構成は、
図3で詳しく説明される。
【0042】
図1の誘電共振器4は、直方体状の誘電共振器4として構成されている。別の実施形態では、誘電共振器4のための別の形状も可能である。例えば誘電共振器4は円柱形状またはサイコロ形状に構成されていてもよい。
【0043】
誘電共振器の寸法は、使用された電気共振器モード、および誘電共振器のために用いられた材料の誘電率に基づいていて、伝送しようとする信号の周波数に基づいて算出される。
【0044】
例えば
図1の誘電共振器4は、77GHzの周波数を有する信号を伝送するために構成されていてよい。さらに、誘電共振器4の材料は相対的な誘電率3を有していてよい。この場合、共振器は、1mmの高さ、2mmの幅および3mmの長さを有していてよい。
【0045】
第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2の第1の区分2−1に、例えば77GHzの周波数を有する高周波信号が伝送されると、信号が誘電共振器4の一端部において結合個所5から誘電共振器4に入力され、第2の結合個所6を介して誘電共振器4から第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2の第2の区分2−2へ出力され、第2の区分2−2においてさらに伝送される。また、第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2における信号が、第2のマイクロストリップ線路3に伝送される第2の信号と、プリント基板10の同じ薄膜または同じ層上で交差することも可能である。
【0046】
別の実施態様によれば、誘電共振器4は、伝送しようとする信号の波長に略相当するエッジ長さを有している。
【0047】
誘電共振器4の体積若しくは寸法を算出するための別の可能な形式は次の通りである。
【0048】
矩形の共振器4のために、以下の式をベースにして寸法が算出される。
【0050】
この式中、kx,kyおよびkzは、x,yおよびz方向における波数であり、選択されたモードおよび各方向の大きさに基づいている。c0は空間光速度であり、ε_rは材料の相対的な誘電率、fは共振周波数である。
【0051】
寸法は、数値法によっても決定または最適化される。
【0052】
円柱形/楕円形の共振器4のために、もちろん著しく複雑なパターンを有する分析的な解決策も得られる。任意の形状を有する共振器のためには、設計は数値的に行う必要がある。
【0053】
図1において誘電共振器4はプラスチックより形成されている。誘電共振器4のための可能な材料は、小さい誘電率を有する基本的に低損失の誘電体である。例えばテフロン
(登録商標)およびLCP(液晶ポリマー)が可能である。
【0054】
誘電共振器4によってそれぞれの信号を伝送するために必要な物理的特性を有していれば、その他の材料も同様に可能である。
【0055】
図2は、本発明による線路ブリッジ1の実施形態の別の図を示す。
【0056】
図2の線路ブリッジ1は、
図1の線路ブリッジ1に略相当するが、
図1の実施形態に対して、誘電共振器4が側面および上面に金属7より成る被覆部を有している点で相違している。さらに、誘電共振器4は、各端部にそれぞれ1つのはんだパッド8,9を有している。さらに、誘電共振器4はその下側に、第2のマイクロストリップ線路3上の絶縁部11を有しており、この絶縁部11は、誘電共振器4を、第2のマイクロストリップ線路3から電気的に絶縁するために用いられる。
【0057】
この場合、絶縁部11は、絶縁材料として構成されていてよい。別の実施形態では、絶縁部11は、誘電共振器4内の切欠として構成されていてもよい。
【0058】
はんだパッドは、
図2では、誘電共振器の各下角隅に配置されたはんだパッド8,9として示されており、従って第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2も、第2のマイクロストリップ線路3も、はんだパッド8,9の一方に電気的に接触することはない。
【0059】
1実施形態では、はんだパッド8,9は、金属7より成る被覆部と電気的に結合されている。特に、はんだパッド8,9は、金属7より成る被覆部の一部として構成されていてもよい。
【0060】
はんだパッド8,9は、プリント基板10上で例えば高周波アースと結合されてもよい。
【0061】
はんだパッド8,9を誘電共振器4の下角隅に取り付けることは1例に過ぎない。別の実施形態では、はんだパッド8,9は、誘電共振器の別の個所に取り付けられる。
【0062】
図3は、本発明による線路ブリッジ1の実施形態の別の図を示す。
【0063】
図3では、
図1の2つのマイクロストリップ線路2−1,2−2,3を備えたプリント基板10が示されている。
図1の線路ブリッジとは異なり、
図3では誘電共振器4は図示されていない。
図3は、特に第1の結合個所5および第2の結合個所6を見やすくするために役立つ。
【0064】
図3によれば、誘電共振器4の下側において第1のマイクロストリップ線路が所定の幅だけ中断されており、この中断部を通って第2のマイクロストリップ線路3をガイドできるようになっていることが分かる。この中断部に向かって、第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2の端部が、誘電共振器の幅に達するまで漏斗状に広げられていて、この中断部によって、第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2は、第2のマイクロストリップ線路3に対して所定の間隔を保って延在している。この場合、第2のマイクロストリップ線路3に対する間隔は、第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2と第2のマイクロストリップ線路3との間の混線が避けられるか、または所定の閾値を下回るように、選定されている。
【0065】
図3では、第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2の端部は、結合個所5および6に向かってアーチ状に広がっている。別の実施形態では、別の拡開形状、例えば直線的な拡開形状も可能である。
【0066】
図4は、本発明による線路ブリッジ1の実施形態の2つのマイクロストリップ線路2−1,2−2,3間の混線若しくは信号減衰を示す線図である。
【0067】
図4には、3つの曲線が示されている。この場合、線図の横座標軸には、GHz単位で72.936GHz〜80.507GHzの周波数が示されている。縦座標軸は、散乱パラメータの単位をdBで示していて、−0.3403dBから−29.118dBまで示されている。
【0068】
点線で示された曲線は、第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2の端部間の散乱パラメータを示す。破線で示された曲線は、第2のマイクロストリップ線路3の端部間の散乱パラメータを示し、実線で示した曲線は、2つのマイクロストリップ線路2−1,2−2および3間の相互結合を示す。
【0069】
点線で示された曲線は、72.936GHzで約−7dBから始まり、77GHzまでアーチ状に延在して−0.482dBの最小減衰に達し、さらに80.507GHzまでアーチ状に延在し、−10dBの減衰まで達する。
【0070】
破線で示された曲線は、72.936GHzで約−10.5dBから始まり、77GHzまでアーチ状に延在し、ここからさらに、略一様な減衰度で80.507GHzまで延在する。
【0071】
2つのマイクロストリップ線路2−1,2−2および3間の相互結合のための曲線は、72.936GHzで約−20.5dBから始まり、約75.5GHzにおける−29.118dBの最小値まで延在し、次いで80.507GHzまで再び約−22.5dBに上昇している。
【0072】
図4によれば、第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2および第2のマイクロストリップ線路3における信号は、0.5dBよりも低い非常に小さい減衰を伴ってのみ2つのマイクロストリップ線路2−1,2−2および3においてガイドされることが、分かる。また、2つのマイクロストリップ線路2−1,2−2および3間の不都合な混線は、約−25dBの値を有する非常に小さい範囲内でのみ発生することが、分かる。この値は、高周波信号を伝送するために十分に僅かな混線であることを保証する。
【0073】
図5は、本発明による方法の実施形態のフローチャートを示す。
【0074】
この方法によれば、第1のステップS1において、第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2が第1の結合個所5に配置され、この第1の結合個所5が、第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2内でガイドされる、伝送ガイドされた電磁波を誘電共振器4に入力する。
【0075】
第2のステップS2において、第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2の第2の結合個所6が、第1の結合個所5に向き合って配置され、この際に、第2の結合個所6が、誘電共振器4に入力された電磁波を、誘電共振器4から第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2に出力する。
【0076】
最後に、第3のステップS3において、第1の結合個所5および第2の結合個所6上への誘電共振器4の配置が行われる。
【0077】
図6は、本発明による方法の別の実施形態のフローチャートを示す。
【0078】
図6の方法は、
図5の方法に基づいていて、追加的にステップS4−S9を有している。この場合、これらのステップS4,S5,S9,S6,S7およびS8は、ステップS2とステップS3との間に配置されている。この場合、ステップS1〜S9の与えられた順番は、ヒントとして示されているだけである。これらのステップの別の順番も同様に可能である。
【0079】
ステップS4において、第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2は結合個所の間で中断される。この場合、中断部は、例えばエッチングプロセスまたは機械的な処理によって行われる。しかしながら中断部は、プリント基板10上に導電材料を設けないことによっても得ることができる。
【0080】
第5のステップS5において、第2のマイクロストリップ線路3が、2つの結合個所5および6間で誘電共振器4の下に配置される。
【0081】
第6のステップS6において、プラスチックより成る誘電共振器4は、直方体形状、サイコロ形状状、円柱形状等の形に成形される。
【0082】
第7のステップS7において、誘電共振器4は、少なくとも部分的に金属7により被覆される。
【0083】
ステップS8において、はんだパッド8,9が誘電共振器4に取り付けられ、この際に、配置ステップS3において誘電共振器4は、はんだパッド8,9をプリント基板10上にはんだ付けすることによって、プリント基板10上に固定される。
【0084】
第9のステップS9において、第1の結合個所5および/または第2の結合個所6は、第1のマイクロストリップ線路2−1,2−2の幅から、共振器4に向かって所定の幅になるまで成形され、この際に、所定の幅は、特に誘電共振器4の幅に相当する。
【0085】
本発明は、好適な実施例を用いて記載されているが、これらの好適な実施例に限定されるものではなく、多様な形式で変更可能である。特に本発明は、本発明の核心から逸脱することなしに、多種多様な形式で変更または修正することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 線路ブリッジ
2−1,2−2 第1のマイクロストリップ線路
3 第2のマイクロストリップ線路
4 誘電共振器
5 第1の結合個所
6 第2の結合個所
7 金属
8,9 はんだパッド
10 プリント基板
11 絶縁部
S1 第1のステップ
S2 第2のステップ
S3 第3のステップ
S4〜S9 ステップ