【実施例】
【0049】
本発明を以下の例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下単に%とあるのは特に断りのない限り質量%をいうものとする。
【0050】
テクスチャ解析(1):調理後の20±2℃および45±2℃における物性
下記表1に示す組成を有する例1〜3の餅様食品サンプルを製造した。その後、各サンプルを後述する調理方法にて調理(蒸煮)し、後述する測定方法を用いてテクスチャ解析を行って、各サンプルの物性(硬さ、付着性、凝集性)を測定した。例1〜3のサンプルの製造工程を以下に示す。
【0051】
例1
1.5質量%のカードランと5.0質量%の粉飴とを粉体混合し、この混合物に水68.5質量%を添加し、5分間ミキサー混合した。次いで、4.0質量%のオリゴ糖を添加し、10秒間ミキサー混合した。次いで、12.0質量%のもち米粉および2.0質量%のうるち米粉を添加し、10秒間ミキサー混合した。次いで、1.0質量%の乳化油脂、4.0質量%の米油および2.0質量%のα化うるち米澱粉を添加し、ミキサー混合して、餅様食品用の生地を作製した。得られた生地を容器に充填し、95℃で10分間蒸煮した。中心温度が80℃以上となるように加熱することにより、カードランのハイセットゲルを形成した。その後、蒸煮した生地を−20℃〜−40℃で急速冷凍して餅様食品を得た。
【0052】
例2および3
例2および3の各サンプルも、組成を下記表1に示すとおりとした以外は例1のサンプルの製造方法と同様に製造した。
【0053】
【表1】
【0054】
調理
例1〜3の各サンプルをスチームコンベクションオーブンを用いて、蒸しモードにて10分調理した。調理後の各サンプルの中心温度は78℃〜80℃であった。
【0055】
テクスチャ測定方法
調理後の例1〜3の各サンプルを恒温器(20℃および45℃)に静置し、その後これらを測定機器(クリープメータ RE-33005S、株式会社山電)に充填し、直径20mm(高さ8mm樹脂製)のプランジャーで圧縮速度10mm/秒、クリアランス5mmで2回圧縮測定した。測定は20±2℃および45±2℃で行った。
【0056】
結果
テクスチャ解析により測定した各サンプルの物性(硬さ、付着性、凝集性)は下記表2および3に示されるとおりであった。UDF区分3適合性は、以下の基準に従って評価した。
○ 硬さ≦20,000 N/m
2
× 硬さ≧20,000 N/m
2
― 凝固不良や測定範囲外により測定不可
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
表2および3より、例1〜3の各サンプルのいずれも、調理後の温かい状態(中心温度45℃)および冷めた状態(中心温度20℃)の双方において、UDF区分3の基準に適合した硬さを有し、咀嚼・嚥下困難者向けの食品として適した物性を有することが確認された。また、各サンプルは温度変化による硬さへの影響が小さいことが確認された。
【0060】
テクスチャ解析(2):調理後の時間経過に伴う物性
上記例1および2の各サンプルを上記調理方法と同様に調理し、後述する測定方法を用いてテクスチャ解析を行って、各サンプルの物性(硬さ、付着性、凝集性)を測定した。
【0061】
テクスチャ測定方法
調理後の例1および2の各サンプルを室温(25℃)に静置し、15分後(中心温度:45℃〜50℃)におけるテクスチャ解析を行った。また、調理後の各サンプルを20℃の恒温槽に静置し、1時間後、2時間後、および4時間後におけるテクスチャ解析を中心温度の測定とともに行った。テクスチャ解析は、各サンプルを測定機器(クリープメータ RE-33005S、株式会社山電)に充填し、直径20mm(高さ8mm樹脂製)のプランジャーで圧縮速度10mm/秒、クリアランス5mmで2回圧縮測定した。
【0062】
結果
テクスチャ解析により測定した例1および2の各サンプルの物性(硬さ、付着性、凝集性)はそれぞれ下記表4および5に示されるとおりであった、
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
テクスチャ解析(3):調理後の時間経過に伴う物性の変化
上記表4および5に示される例1および2の各サンプルの硬さ、付着性、および凝集性の経時変化はぞれぞれ
図1〜3に示されるとおりであった。
【0066】
図1より、硬さは、調理後15分から調理後4時間後まで、UDF区分3の基準値(20,000N/m
2)内であり、舌でつぶせる硬さであることが確認された。特に、1時間後に中心温度が25℃程度まで冷めてからは、硬さに経時変化はほとんど見られなかった。また
図3より、凝集性は、調理後15分から調理後4時間後まで、0.51〜0.65であり、経時変化はほとんど見られなかった。また
図2より、付着性は、もち米粉の配合が多い例1のサンプルで時間の経過とともに上がる傾向が見られたが、喫食した際の硬さは舌でつぶせる軟らかさであり、べたつきが無く飲み込みやすく、また風味および外観も問題なく、咀嚼・嚥下困難者向けの食品として適した風味、食感を有することが確認された。例2のサンプルにあっては、調理後4時間後までほとんど付着性に経時変化は見られなかった。
【0067】
これらのことから、例1および2のサンプルはいずれも調理後15分後(中心温度45℃〜50℃)から調理後4時間後(中心温度20℃)までの全体にわたって、UDF区分3の基準に適合した硬さを有し、咀嚼・嚥下困難者向けの食品として適した物性を有することが確認された。また、各サンプルは経時変化による硬さへの影響が小さいことが確認された。
【0068】
さらに、本発明による餅様食品に含まれる原料成分の添加量が当該食品の風味および食感に与える影響を以下のとおり調べた。
【0069】
(1)カードラン
例4〜13、比較例1
カードランの添加量を下記表6に示す量とした以外は同一組成を有する例4〜13および比較例1の餅様食品サンプルを製造した。各サンプルは例1のサンプルの製造方法と同様に製造した。
【0070】
【表6】
【0071】
調理
例4〜13および比較例1の各サンプルをスチームコンベクションオーブンを用いて、蒸しモードにて10分調理した。調理後の各サンプルの中心温度は78℃〜80℃であった。
【0072】
テクスチャ測定方法
調理後の例1〜3の各サンプルを恒温器(20℃)に静置し、その後これらを測定機器(クリープメータ RE-33005S、株式会社山電)に充填し、直径20mm(高さ8mm樹脂製)のプランジャーで圧縮速度10mm/秒、クリアランス5mmで2回圧縮測定した。測定は20±2℃で行った。
【0073】
結果
テクスチャ解析により測定した各サンプルの物性(硬さ、付着性、凝集性)は下記表7に示されるとおりであった。UDF区分3適合性は、上記のとおり評価した。また、本発明による餅様食品の硬さとカードランの添加量との相関は
図4に示されるとおりであった。
【0074】
また、各サンプルの官能試験を行った。結果は表7に示されるとおりであった。官能試験の評価項目および評価基準は以下のとおりとした。
【0075】
官能試験
(評価項目)
・硬さ 咀嚼・困難者向け食品として、舌でつぶせる軟らかさであるか
・べたつき 咀嚼・嚥下困難者向け食品として、口腔内や喉に貼り付かず飲み込みやすいか
・風味 餅の味・香りが感じられるか
・外観 油・水の分離がなく、餅らしい白さを維持できているか
・油っぽさ 口腔内で油が浮かず、後味に油が残らないか
(評価基準)
◎ 大変好ましい
○ 好ましい
△ やや不適
× 不適
【0076】
さらに、各サンプルの総合評価を行った。結果は表7に示されるとおりであった。総合評価の評価項目および評価基準は以下のとおりとした。
【0077】
総合評価
(評価項目)
・UDF区分3に適合していること、および
・官能評価における硬さ・べたつきが咀嚼・嚥下困難者向けの食品として適していること
(評価基準)
◎ 大変好ましい
○ 好ましい
△ やや不適
× 不適
【0078】
【表7】
【0079】
(2)油脂
例14〜20、比較例2
油脂の添加量を下記表8に示す量とした以外は同一組成を有する例14〜20および比較例2の餅様食品サンプルを製造した。各サンプルは例1のサンプルの製造方法と同様に製造した。
【0080】
【表8】
【0081】
例14〜20および比較例2の各サンプルの調理およびテクスチャ測定を、上記例4〜13および比較例1で実施した調理方法およびテクスチャ測定方法と同様に行った。また、各サンプルの官能試験を行った。官能試験の評価項目および評価基準は上記のとおりとした。さらに、各サンプルの総合評価を行った。総合評価の評価項目および評価基準は上記のとおりとした。
【0082】
結果
テクスチャ解析により測定した各サンプルの物性(硬さ、付着性、凝集性)は下記表9に示されるとおりであった。UDF区分3適合性は、上記のとおり評価した。また、本発明による餅様食品の硬さと油脂の添加量との相関、および付着性と油脂の添加量との相関はそれぞれ
図5および
図6に示されるとおりであった。さらに、各サンプルの官能試験の結果、および総合評価の結果は表9に示されるとおりであった。また、油脂の添加量が特定量のときの本発明による餅様食品の外観(色味)は
図7に示す写真のとおりであった。
【0083】
【表9】
【0084】
(3)乳化剤
例21〜30
乳化剤の添加量を下記表10に示す量とした以外は同一組成を有する例21〜30の餅様食品サンプルを製造した。各サンプルは例1のサンプルの製造方法と同様に製造した。なお、表10中の乳化剤は、グリセリン脂肪酸エステルを用いた。
【0085】
【表10】
【0086】
例21〜30の各サンプルの調理およびテクスチャ測定を、上記例4〜13および比較例1で実施した調理方法およびテクスチャ測定方法と同様に行った。また、各サンプルの官能試験および総合評価を行った。官能試験および総合評価各々の評価項目および評価基準は上記のとおりとした。
【0087】
結果
テクスチャ解析により測定した各サンプルの物性(硬さ、付着性、凝集性)、官能試験の結果、そして総合評価の結果は下記表11に示されるとおりであった。
【0088】
【表11】
【0089】
(4)米粉
(4−1)もち米粉とうるち米粉との合計添加量を一定にした場合
例31〜37
餅様食品に配合するもち米粉とうるち米粉との添加比率を下記表12に示すとおりとし、かつもち米粉とうるち米粉との合計添加量を10%とした以外は同一組成を有する例31〜37の餅様食品サンプルを製造した。また、各サンプルの硬さが0.8〜1.6×10
4N/m
2程度になるよう、米粉の総量を100gとした。各サンプルは例1のサンプルの製造方法と同様に製造した。
【0090】
【表12】
【0091】
例31〜37の各サンプルの調理およびテクスチャ測定を、上記例4〜13および比較例1で実施した調理方法およびテクスチャ測定方法と同様に行った。また、各サンプルの官能試験および総合評価を行った。官能試験および総合評価各々の評価項目および評価基準は上記のとおりとした。
【0092】
結果
テクスチャ解析により測定した各サンプルの物性(硬さ、付着性、凝集性)、官能試験の結果、そして総合評価の結果は下記表13に示されるとおりであった。
【0093】
【表13】
【0094】
(4−2)もち米粉とうるち米粉との合計添加量を一定にしなかった場合
例1、2、3、38および39
餅様食品に配合するもち米粉とうるち米粉との合計添加量を下記表14に示すとおりとした以外は同一組成を有する例1、2、3、38および39の餅様食品サンプルを製造した。また、各サンプルの硬さが1.1〜1.6×10
4N/m
2程度になるよう、米粉の総量と水の配合量を調整した。各サンプルは例1のサンプルの製造方法と同様に製造した。
【0095】
【表14】
【0096】
例1、2、3、38および39の各サンプルの調理およびテクスチャ測定を、上記例4〜13および比較例1で実施した調理方法およびテクスチャ測定方法と同様に行った。また、各サンプルの官能試験および総合評価を行った。官能試験および総合評価各々の評価項目および評価基準は上記のとおりとした。
【0097】
結果
テクスチャ解析により測定した各サンプルの物性(硬さ、付着性、凝集性)、官能試験の結果、そして総合評価の結果は下記表15に示されるとおりであった。
【0098】
【表15】
【0099】
(4−3)もち米粉またはうるち米粉のいずれか一方のみを使用した場合
例2、40〜46、比較例3
米粉としてもち米粉のみを表16に記載の量添加した以外は同一組成を有する例40〜44の餅様食品サンプル、並びに米粉としてうるち米粉のみを表16に記載の量添加した以外は同一組成を有する例2、45および46の餅様食品サンプルを製造した。各サンプルは例1のサンプルの製造方法と同様に製造した。
【0100】
【表16】
【0101】
例2、40〜46、比較例3の各サンプルの調理およびテクスチャ測定を、上記例4〜13および比較例1で実施した調理方法およびテクスチャ測定方法と同様に行った。また、各サンプルの官能試験および総合評価を行った。官能試験および総合評価各々の評価項目および評価基準は上記のとおりとした。
【0102】
結果
テクスチャ解析により測定した各サンプルの物性(硬さ、付着性、凝集性)、官能試験の結果、そして総合評価の結果は下記表17に示されるとおりであった。
【0103】
【表17】
【0104】
また、本発明による餅様食品が米粉としてもち米粉のみを含む場合における、もち米粉の添加量と当該食品の硬さとの相関は
図8に示されるとおりであった。同様に、米粉としてうるち米粉のみを含む場合における、うるち米粉の添加量と当該食品の硬さとの相関は
図8に示されるとおりであった。