特許第6533054号(P6533054)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6533054
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】餅様食品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20190610BHJP
   A23L 29/212 20160101ALI20190610BHJP
   A23L 29/206 20160101ALI20190610BHJP
   A23L 29/219 20160101ALI20190610BHJP
   A23L 29/20 20160101ALI20190610BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20190610BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20190610BHJP
【FI】
   A23L7/10 102
   A23L7/10 Z
   A23L29/212
   A23L29/206
   A23L29/219
   A23L29/20
   A23L29/10
   A23L29/269
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-256208(P2014-256208)
(22)【出願日】2014年12月18日
(65)【公開番号】特開2016-116450(P2016-116450A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】508274828
【氏名又は名称】株式会社ヤヨイサンフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100097102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 敬夫
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 まや
(72)【発明者】
【氏名】村田 舞羽
【審査官】 平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−087146(JP,A)
【文献】 特開平09−238630(JP,A)
【文献】 特開2000−093102(JP,A)
【文献】 特開平09−149769(JP,A)
【文献】 特開平09−224598(JP,A)
【文献】 特開2011−115114(JP,A)
【文献】 特開平09−238631(JP,A)
【文献】 特開2014−033649(JP,A)
【文献】 特開2010−124793(JP,A)
【文献】 特開平07−079689(JP,A)
【文献】 特開2011−115157(JP,A)
【文献】 特開平10−309168(JP,A)
【文献】 特開平04−112752(JP,A)
【文献】 特開2009−055893(JP,A)
【文献】 特開平11−075745(JP,A)
【文献】 特開平05−084046(JP,A)
【文献】 特開昭51−144747(JP,A)
【文献】 特開昭60−118155(JP,A)
【文献】 高分子学会予稿集, 2011, Vol.60, No.2, pp.4602-4603, 3S10
【文献】 日本食品科学工業会第58回大会講演集, 2011, Vol.58, p.107, 3Ia3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/00− 7/25
A23L 29/00−29/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
餅様食品であって、
2質量%〜23質量%の米粉と、1.0質量%〜2.5質量%のカードランと、増粘剤と、水とを含んでなり、但し、米粉としてうるち米粉のみを含むときはその量は2〜11質量%であり、
当該食品の中心温度が20±2℃および45±2℃であるときの硬さが、いずれも20,000N/m以下であり、
前記食品の中心温度が20±2℃であるときの付着性が3,500J/m以下であり、かつ、中心温度が45±2℃であるときの付着性が2,000J/m以下であり、
前記食品の中心温度が20±2℃および45±2℃であるときの凝集性が、いずれも0.20〜0.90の範囲にあることを特徴とする、餅様食品。
【請求項2】
前記米粉がもち米粉および/またはうるち米粉である、請求項に記載の餅様食品。
【請求項3】
前記増粘剤が澱粉、α化澱粉、米粉、α化米粉、穀粉、α化穀粉および増粘多糖類から選択される1種または2種以上のものである、請求項1または2に記載の餅様食品。
【請求項4】
油脂および/または乳化剤をさらに含んでなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の餅様食品。
【請求項5】
咀嚼・嚥下困難者用食品である、請求項1〜のいずれか一項に記載の餅様食品。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の餅様食品の製造方法であって、
米粉と、カードランと、増粘剤と、水とを混合して生地を得る工程と、
得られた生地を加熱する工程と
を少なくとも含んでなることを特徴とする、製造方法。
【請求項7】
カードランと、水と、増粘剤としてα化澱粉および/またはα化米粉とを混合して、カードランを均一に分散させた後、米粉を添加して混合して生地を得る、請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
加熱工程が、生地の中心温度が80℃以上になるように行われる、請求項またはに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、餅に類する風味、食感を有する食品に関し、さらに詳しくは餅に類する風味、食感を有しながら、餅特有の硬さおよび粘りが低減され、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適した物性を有する食品に関する。
【背景技術】
【0002】
「食べる」ということは、生命の源であると同時に、人間にとって大きな楽しみの一つでもある。しかしながら、加齢による機能の衰えや、病気や事故などにより、噛むことや飲み込むことに困難が生じる場合がある。そのような人は、食べられる食品が制限され、食べる喜びも失われてしまう。さらには、栄養量の摂取不足による低栄養や、食品が気管から肺に入ってしまう誤嚥性肺炎などのリスクも生じる。高齢化社会の到来により、このようなリスクを抱えた人は増加しており、噛むことや飲み込むことの困難な人でも、安心して美味しく食べられる食事の価値は高い。
【0003】
一方で、餅は、日本の伝統食であり、切り餅や丸餅などは、正月や祝い事などの行事食として食される機会が多い。また、主食としての嗜好性も強く、日常的に食される食品である。また、餅には、切り餅や丸餅等のようにもち米を使用した搗き餅や、ちまきや白玉等のようにもち米を使用した練り餅、月見団子や柏餅のようにうるち米を使用したものなど様々な種類がある。
【0004】
餅は、その食感として硬さおよび粘りが強く、噛み切りにくいという特徴を有する。そのため、高齢者や乳幼児などにとっては咀嚼しにくく、飲み込みにくい食材であるといえ、また窒息の危険性を有していることから、喫食に際し注意が必要な食品といえる。特に、咀嚼・嚥下機能の低下した喫食者にとっては、喫食時の窒息の危険性が高くなるため、餅を食することを避ける傾向にある。
【0005】
したがって、咀嚼・嚥下機能の低下した喫食者でも安心して食することのできる、やわらかく、飲み込みやすい安全な物性を有する餅様食品が求められている。
【0006】
このような要請を受けて、咀嚼・嚥下困難者に向けられたあるいは適した餅に類する食品が提案されており、例えば特開2003−135011号公報(特許文献1)には、咀嚼・嚥下機能の低い人にも食べやすい適度な硬さと歯切れのよさとを有し、かつ付着性の改善された餅様食品が開示されている。また、特開2014−033649号公報(特許文献2)および特開2010−124793号公報(特許文献3)にも、咀嚼・嚥下困難者が食することができる餅が提案されている。
【0007】
特開平3−087146号公報(特許文献4)には、カードランを含有するだんご、もち類が開示されている。この文献によれば、カードランは煮くずれ防止のためにもち類に添加されており、餅特有の粘りおよび硬さを低減し、咀嚼・嚥下困難者にも適した物性の開示はなく、またそれを目指したものではない。
【0008】
特開平9−238630号公報(特許文献5)には、餅粉又はもち米にコンニャクマンナン及び加熱凝固性β−1,3−グルカンを配合してなる餅様食品が開示されており、加熱凝固性β−1,3−グルカンの例としてカードランの記載がある。この文献に記載の発明は煮くずれしない餅様食品の提供を目的としており、またコンニャクマンナンの添加を必須とし、他方、咀嚼・嚥下困難者にも適した物性を目指したものではない。
【0009】
特開2000−093102号公報(特許文献6)もまた、澱粉質原料にカードランを添加することを開示するが、レトルト保存、冷蔵保存をしても、溶け崩れや食感の低下のないもち類または団子類の提供を目的とし、他方、咀嚼・嚥下困難者にも適した物性を目指したものではない。さらに、この文献に記載の発明はカードランの添加にあたりアルカリ水溶液で溶解または膨張させることを必須とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−135011号公報
【特許文献2】特開2014−033649号公報
【特許文献3】特開2010−124793号公報
【特許文献4】特開平3−087146号公報
【特許文献5】特開平9−238630号公報
【特許文献6】特開2000−093102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、今般、米粉と、カードランと、増粘剤と、水との組み合わせにより、餅の風味、食感を有しながら、餅特有の硬さおよび粘りが低減され、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適した物性を有する食品が実現できるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0012】
従って、本発明は、餅に類する風味、食感を有しながら、餅特有の硬さおよび粘りが低減され、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適した物性を有する食品およびその製造方法の提供をその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そして、本発明による食品は、餅様食品であって、
米粉と、カードランと、増粘剤と、水とを含んでなり、
当該食品の中心温度が20±2℃および45±2℃のときの硬さが、いずれも20,000N/m以下であることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明による餅様食品の製造方法は、
米粉と、カードランと、増粘剤と、水とを混合して生地を得る工程と、そして
得られた生地を加熱する工程と、
を少なくとも含んでなることを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による餅様食品の硬さの経時変化を示す図である。
図2】本発明による餅様食品の付着性の経時変化を示す図である。
図3】本発明による餅様食品の凝集性の経時変化を示す図である。
図4】本発明による餅様食品の硬さと、当該食品が含んでなるカードランの添加量との相関図である。
図5】本発明による餅様食品の硬さと、当該食品が含んでなる油脂の添加量との相関図である。
図6】本発明による餅様食品の付着性と、当該食品が含んでなる油脂の添加量との相関図である。
図7】本発明による餅様食品が含んでなる油脂の添加量と当該食品の外観(色味)との相関を示す写真である。
図8】本発明による餅様食品が米粉としてもち米粉のみを含む場合における、もち米粉の添加量と当該食品の硬さとの相関図である。
図9】本発明による餅様食品が米粉としてうるち米粉のみを含む場合における、うるち米粉の添加量と当該食品の硬さとの相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
餅様食品
本明細書において「餅様食品」とは、食品衛生法に基づくもち類に分類されるか否かに関わりなく、後述する物性を満たし、喫食時に餅に類する風味(味や香り)、食感を実現したものを意味する。具体的には、本発明による餅様食品は、中心温度が20±2℃および45±2℃であるときの硬さがいずれも20,000N/m以下であるものであり、この点は、このような条件下では硬くなってしまう通常の餅とは異なる。
【0017】
本発明による餅様食品は、このような物性を有することから、調理直後の温かい時に軟らかい食感を有するだけでなく、温度低下および経時変化によっても硬くなりにくく軟らかい食感を有するとの利点が得られる。さらには冷蔵または冷凍保存した後室温もしくはそれ以上の温度まで昇温または自然解凍されても、本発明による餅様食品は上記の物性を呈する。従って、提供から喫食までに時間を要する病院や高齢者施設等においても、食品として提供できるとの利点が得られる。さらに、本発明による餅様食品が呈する上記物性は、咀嚼・嚥下機能の低下した高齢者等が誤嚥なく喫食できるのに好ましいものであるから、安心して喫食ができるものである。
【0018】
米粉
本発明による餅様食品は、米粉を含んでなる。米粉を含むことにより、餅に類する風味、食感を有する餅様食品を得ることができる。本発明において、米粉はもち米粉および/またはうるち米粉であることが好ましい。もち米粉の具体例として、もち米を粉砕したものである、白玉粉、寒ざらし粉、観心寺粉、餅粉、求肥粉、道明寺粉、寒梅粉、落雁粉、微塵粉、および新引粉等を挙げることができる。また、うるち米粉の具体例として、うるち米を粉砕したものである、上新粉(上用粉)、並新粉、乳児粉、上南粉、およびかるかん粉等を挙げることができる。
【0019】
本発明において、米粉の添加量は2〜23質量%であることが好ましい。この範囲で米粉を含むことにより、良好な硬さ、付着性および凝集性を有する餅様食品を得ることができる。
【0020】
本発明による餅様食品は、米粉としてもち米粉を含むことができる。もち米粉を含むことにより、餅本来の風味とともに、良好な付着性(例えば、粘り)を有する餅様食品を得ることができる。もち米粉の添加量は23質量%以下であることが好ましい。また、本発明による餅様食品は、米粉としてうるち米粉を含むことができる。うるち米粉を含むことにより、良好な硬さを有する餅様食品を得ることができる。うるち米粉の添加量は11質量%以下であることが好ましい。
【0021】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による餅様食品は、米粉としてもち米粉およびうるち米粉双方を含む。もち米粉およびうるち米粉の双方を含むことにより、良好な付着性および硬さの双方を満たしかつこれら双方のバランスに優れた餅様食品を得ることができる。つまり、もち米粉およびうるち米粉を併用することにより、べたつきが少なく(口腔内や喉に貼り付かず飲み込みやすい)、硬さが適度な(舌でつぶせる程度の軟らかい)食感と餅らしい風味とを合わせもつ餅様食品を得ることができる。このような食品は、口腔内や咽頭などに食物が貼り付き誤嚥するおそれが低く、咀嚼・嚥下機能の低下した喫食者でも安心して食することのできる、やわらかく飲み込みやすい安全な食品である。本発明において、もち米粉とうるち米粉の添加量比は、上記物性が得られる限りにおいて特に制限されないが、もち米粉:うるち米粉=4:1〜1:4であることが好ましい。
【0022】
カードラン
本発明による餅様食品は、カードランを含んでなる。カードランを含むことにより、餅特有の粘りが低減された、歯切れの良い食感を有する餅様食品を得ることができる。本発明において、カードランの添加量は1.0質量%より多く2.6質量%より少ない範囲であることが好ましい。カードランを1.0質量%より多く添加することにより、生地粘度が低くなるのを抑制し、カードランの沈殿に起因して生地上部に離水が生ずるのを防止することができる。つまり、餅らしい外観を実現することができる。また、カードランを2.6質量%より少なく添加することにより、餅らしい食感及び風味を得ることができる。カードランの添加量は1.3〜2.5質量%であることがより好ましい。この範囲でカードランを含むことにより、良好な付着性を有する餅様食品を得ることができる。さらにより好ましい添加量は1.4〜2.2質量%である。
【0023】
本発明においてカードランは、β−1,3−グルコシド結合を主体とする加熱凝固性多糖類であり、例えば微生物の代謝作用によってブドウ糖から生成されるものを意味する。
【0024】
増粘剤
本発明による食品は、増粘剤を含有する。増粘剤は、生地を増粘させ、餅特有の粘りが低減された適度な食感を食品に与える。生地に増粘剤を添加し、生地粘度を調整することにより、カードランを生地に均一に分散させることが可能となり、その結果、餅特有の粘りが低減された餅様食品を得ることができる。カードランを生地に均一に分散させることが可能な好ましい生地粘度は900mPa・s以上である。また、製造工程上生地の適切な充填を行うために生地粘度は8,000mPa・s以下であることが好ましい。
【0025】
本発明において、「粘度」とは、B型回転粘度計を用いて12rpmでローターを回転させ、2分後の示度を読み、その値に対応する係数を乗じて得た値をmPa・sで表した値を意味する。本発明において測定は20±2℃および/または45±2℃で行う。
【0026】
本発明において、増粘剤の添加量は生地粘度を上記範囲に調整可能な程度を勘案しながら適宜決定されてよいが、好ましくは0.5〜25質量%程度であり、より好ましくは1.0〜10質量%程度である。
【0027】
本発明の好ましい態様において、増粘剤は、澱粉、α化澱粉、米粉、α化米粉、穀粉、α化穀粉および増粘多糖類から選択される1種または2種以上のものである。本発明において、α化澱粉とは澱粉または加工澱粉をα化(糊化)し粉末にしたものを意味し、α化米粉とは米粉を加水加熱によりα化(糊化)し粉末にしたものを意味し、α化穀粉とは穀粉をα化(糊化)し粉末にしたものを意味する。また、増粘多糖類とは食品の粘度調整や食感改良等に用いられる多糖類の総称である。
【0028】
澱粉及びα化澱粉の由来原料の具体例としては、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉、豆澱粉、甘藷澱粉、くず粉、ワラビ粉、サゴ澱粉等が挙げられる。また、加工されたα化澱粉の具体例としては、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン、デンプングルコール酸ナトリウム等が挙げられる。
【0029】
米粉及びα化米粉の具体例としては、うるち米粉、α化うるち米粉、もち米粉およびα化もち米粉等が挙げられる。
【0030】
穀粉及びα化穀粉の由来原料の具体例としては、小麦、大麦、ライ麦、トウモロコシ、大豆、蕎麦等が挙げられる。
【0031】
増粘多糖類の具体例としては、ガラクトマンナン、タマリンド種子ガム、ペクチンのような植物性食品多糖類;アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ガッティガム、アラビノガラクタンのような植物性樹脂由来食品多糖類;カラギーナン、寒天、アルギン酸類、グルコマンナンのような海藻由来食品多糖類;ジェランガム、カードラン、プルラン、キサンタンガムのような微生物産生食品多糖類;セルロースとその誘導体、大豆水溶性多糖類、サイリウムシードガム、キチン、キトサンのような食品多糖類が挙げられる。本発明の好ましい態様によれば、増粘多糖類は、キサンタンガム、グルコマンナン、ペクチンおよびガッティガムからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0032】
他の成分
油脂
本発明による餅様食品は、好ましくは油脂を含んでなる。油脂を含むことにより、餅特有の粘りが低減された、なめらかで喉越しの良い食感を有する餅様食品を得ることができる。本発明において、油脂は脂肪酸とグリセリンとのエステルを意味し、植物性油脂および動物性油脂を包含する。植物性油脂の具体例としては、ココナッツオイル、コーン油、綿実油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、菜種油、サフラワー油(紅花油)、ごま油、大豆油、ヒマワリ油、米油、エゴマ油、アマニ油、アーモンド油、カシュー油、ヘーゼルナッツ油、マカダミアナッツ油、松の実油、椿油、アボカド油、およびケシ油などが挙げられる。また、動物性油脂の具体例としては、バター、ラード(豚脂)、ヘッド(牛脂)、スウェット、シュマルツ、魚油などが挙げられる。
【0033】
本発明の一つの好ましい態様によれば、油脂は乳化油脂である。乳化油脂を含むことにより、白濁した見た目(餅らしい白さ)、すなわち餅らしい外観を有する餅様食品を得ることができる。さらに、まろやかさがあり、滑りが良く、のどごしが良い餅様食品を得ることができる。本発明において、乳化油脂とは油脂に乳化剤を添加したものを意味する。また、乳化剤とは、油と水のように互いに混合しない2種の液体を安定したエマルジョン(乳濁液)にする物質を意味する。乳化剤としては、1つの分子中に親水性原子団と親油性原子団の両方をもったものを用いることができ、具体的には、合成添加物として、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、およびショ糖脂肪酸エステル等を、天然または既存添加物として、大豆レシチン、卵黄レシチン、サポニン、およびカゼインナトリウム等を用いることができる。
【0034】
本発明の別の好ましい態様によれば、油脂は油脂と乳化油脂との組合せである。すなわち、本発明による餅様食品は油脂および乳化油脂双方を含んでなることが好ましい。
【0035】
本発明において、乳化剤は油脂または乳化油脂と別個に生地に添加されていてもよい。従って、本発明における油脂の添加の態様として、(1)油脂のみ、(2)乳化油脂のみ、(3)油脂および乳化剤、(4)油脂および乳化油脂、ならびに(5)油脂、乳化油脂および乳化剤の5つの態様が挙げられる。
【0036】
本発明において、油脂の添加量は、本発明による食品に餅特有の粘りが低減された、なめらかで喉越しの良い食感を与える量とされればよいが、好ましくは0.2質量%〜20質量%であり、より好ましくは0.5質量%〜15質量%である。油脂の添加量が0%の場合、食品の味が薄く水っぽく感じられ、食感がやや重く感じられる。また、色調に関し、乳化による白濁が生じ得ないため、見た目に透明感があり、餅らしさに欠ける。油脂の添加量が15質量%以下であることにより、油脂種に由来する色(例えば、米油に由来する黄色)により餅らしい白濁色が損なわれるという問題を抑えることができる。油脂が過剰であると、油っぽさが残り(腔内で油が浮き、後味に油が残る)、良好な風味が得難い。
【0037】
本発明において、油脂および/または乳化油脂とともに添加される乳化剤の好ましい上限量は2.1質量%である。乳化剤の上限量をこの値とすることにより、餅様食品に乳化剤の味が出てくることを抑え、うるち米粉およびもち米粉の風味を与えることができる。また、別の好ましい態様によれば、乳化剤の添加量は0.1質量%〜1.1質量%であり、より好ましくは0.2質量%〜0.8質量%である。この範囲の添加量で乳化剤を添加することにより、付着性に優れた餅様食品を得ることができる。
【0038】
本発明による餅様食品は、水分をベースとするものである。餅様食品の水分含有量は、上記米粉、カードラン、油脂および場合によって添加される乳化剤、並びに増粘剤によって、後述する物性を実現する範囲で適宜決定されてよいが、通常は、本発明による餅様食品は、30〜95質量%程度の水分含有量であり、好ましくは55〜85質量%程度の水分含有量の食品である。
【0039】
本発明による食品は、上記成分に加えて、その風味、食感などの改善のために、さらには栄養価を高めるため、他の任意成分を含有することができる。その具体例としては、風味(甘味)として、粉飴、オリゴ糖、黒砂糖、和三盆、液糖、グラニュー糖、上白糖、三温糖等、風味(フレーバー)として、よもぎ、さくら、きなこ、ごま、馬鈴薯、カボチャ、サツマイモ、紫いも、ゆず、みかん等、および栄養価として、カルシウム、鉄、亜鉛、マグネシウム、食物繊維、ビタミン類、タンパク質等が挙げられる。
【0040】
物性
本発明による餅様食品は、餅に類する風味、食感を有しながら、餅特有の硬さおよび粘りが低減され、具体的には中心温度が20±2℃および45±2℃となった時における硬さ(応力)がいずれも20,000N/m以下であるものである。この硬さは舌でつぶせる程度の軟らかさである。また、本発明による餅様食品は、食品の中心温度(品温)が25℃〜室温にあるとき硬さに経時変化がほとんど見られず、やわらかい状態を維持することができる。つまり本発明による餅様食品は、喫食前の加熱後の温かい状態(例えば品温45〜50℃)および室温まで冷めた状態(例えば品温20〜25℃)のいずれの状態であっても、さらには冷蔵または冷凍保存した後室温もしくはそれ以上の温度まで昇温または自然解凍されたものであっても、上記中心温度のときに上記物性を有し、すなわち舌でつぶせる軟らかさを有する。本発明の好ましい態様として、製造直後または喫食前に加熱された直後のものがその風味、食感において良好であり、その後あまり時間をおかずに提供され、食されることが好ましいが、その後暫く時間をおいて食する場合であっても、本発明による餅様食品は舌でつぶせる軟らかさとともに良好な風味、食感を4時間程度維持することができる。本発明の好ましい態様によれば、本発明による餅様食品の上記の硬さは5,000N/m〜20,000N/mである。
【0041】
上記の20,000N/m以下の硬さは、日本介護食品協議会によるユニバーサルデザインフード(UDF)基準における区分表の区分3に適合する値である。従って、その測定はこの基準に準じておこなわれてよく、従って、上記「硬さ」とは、直線運動により物質の圧縮応力を測定することが可能な装置により得られる値であり、具体的には、試料を直径40mmの容器に高さ15mmまで充填し、直径20mmのプランジャーで圧縮速度10mm/秒、クリアランス5mmで圧縮測定する。本発明において測定は20±2℃および45±2℃で行う。
【0042】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による餅様食品は、中心温度が20±2℃のときの付着性が3,500J/m以下であり、かつ、中心温度が45±2℃のときの付着性が2,000J/m以下である。
【0043】
上記の「付着性」は、消費者庁の嚥下困難者用食品の規格のひとつであって、その測定はこの規格の基準に準じておこなわれてよく、従って、上記の「付着性」とは、試料を直径40mm、高さ20mm(試料が零れる可能性がない場合は、高さ15mmでも可)の容器に高さ15mmに充填し、直線運動により物質の圧縮応力を測定することが可能な装置を用いて、直径20mm、高さ8mm樹脂製のプランジャーを用い、圧縮速度10mm/秒、クリアランス5mmで2回圧縮測定する。本発明において測定は20±2℃および45±2℃で行う。
【0044】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による餅様食品は、中心温度が20±2℃および45±2℃となった時における凝集性がいずれも0.49〜0.70の範囲にある。従って、本発明による餅様食品は、温度変化または経時変化に伴い凝集性がほとんど変化せず、まとまりやすさを有する。その結果、舌で押しつぶされた当該食品は結着し合って飲み込みやすい食塊を形成し、誤嚥なく喫食される。ここで、「凝集性」は、上記「付着性」と同様にして測定される。
【0045】
上記の通り、本発明による餅様食品は、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適した物性を有し、従って、本発明によれば、咀嚼・嚥下機能の低下した高齢者等が誤嚥なく喫食できる、咀嚼・嚥下困難者に適した食品、すなわち咀嚼・嚥下困難者用食品が提供される。
【0046】
製造方法
本発明による餅様食品の製造方法は、上述した各原料が食品中に均質に存在することが実現されれば特に限定されないが、例えば、まず、米粉と、カードランと、増粘剤と、水と、さらに任意の成分を加えて混合して生地を得て、得られた生地を加熱して本発明による餅様食品を得ることが出来る。
【0047】
本発明において加熱は中心温度が80℃以上となるように行うことが好ましい。例えば、95℃で10分加熱を行う。
【0048】
得られた餅様食品は、そのまま食することも可能であるが、冷蔵または冷凍して保存した後室温もしくはそれ以上の温度まで昇温または自然解凍して食することもできる。本発明による餅様食品は、解凍すれば上記した物性を示すものである。
【実施例】
【0049】
本発明を以下の例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下単に%とあるのは特に断りのない限り質量%をいうものとする。
【0050】
テクスチャ解析(1):調理後の20±2℃および45±2℃における物性
下記表1に示す組成を有する例1〜3の餅様食品サンプルを製造した。その後、各サンプルを後述する調理方法にて調理(蒸煮)し、後述する測定方法を用いてテクスチャ解析を行って、各サンプルの物性(硬さ、付着性、凝集性)を測定した。例1〜3のサンプルの製造工程を以下に示す。
【0051】
例1
1.5質量%のカードランと5.0質量%の粉飴とを粉体混合し、この混合物に水68.5質量%を添加し、5分間ミキサー混合した。次いで、4.0質量%のオリゴ糖を添加し、10秒間ミキサー混合した。次いで、12.0質量%のもち米粉および2.0質量%のうるち米粉を添加し、10秒間ミキサー混合した。次いで、1.0質量%の乳化油脂、4.0質量%の米油および2.0質量%のα化うるち米澱粉を添加し、ミキサー混合して、餅様食品用の生地を作製した。得られた生地を容器に充填し、95℃で10分間蒸煮した。中心温度が80℃以上となるように加熱することにより、カードランのハイセットゲルを形成した。その後、蒸煮した生地を−20℃〜−40℃で急速冷凍して餅様食品を得た。
【0052】
例2および3
例2および3の各サンプルも、組成を下記表1に示すとおりとした以外は例1のサンプルの製造方法と同様に製造した。
【0053】
【表1】
【0054】
調理
例1〜3の各サンプルをスチームコンベクションオーブンを用いて、蒸しモードにて10分調理した。調理後の各サンプルの中心温度は78℃〜80℃であった。
【0055】
テクスチャ測定方法
調理後の例1〜3の各サンプルを恒温器(20℃および45℃)に静置し、その後これらを測定機器(クリープメータ RE-33005S、株式会社山電)に充填し、直径20mm(高さ8mm樹脂製)のプランジャーで圧縮速度10mm/秒、クリアランス5mmで2回圧縮測定した。測定は20±2℃および45±2℃で行った。
【0056】
結果
テクスチャ解析により測定した各サンプルの物性(硬さ、付着性、凝集性)は下記表2および3に示されるとおりであった。UDF区分3適合性は、以下の基準に従って評価した。
○ 硬さ≦20,000 N/m
× 硬さ≧20,000 N/m
― 凝固不良や測定範囲外により測定不可
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
表2および3より、例1〜3の各サンプルのいずれも、調理後の温かい状態(中心温度45℃)および冷めた状態(中心温度20℃)の双方において、UDF区分3の基準に適合した硬さを有し、咀嚼・嚥下困難者向けの食品として適した物性を有することが確認された。また、各サンプルは温度変化による硬さへの影響が小さいことが確認された。
【0060】
テクスチャ解析(2):調理後の時間経過に伴う物性
上記例1および2の各サンプルを上記調理方法と同様に調理し、後述する測定方法を用いてテクスチャ解析を行って、各サンプルの物性(硬さ、付着性、凝集性)を測定した。
【0061】
テクスチャ測定方法
調理後の例1および2の各サンプルを室温(25℃)に静置し、15分後(中心温度:45℃〜50℃)におけるテクスチャ解析を行った。また、調理後の各サンプルを20℃の恒温槽に静置し、1時間後、2時間後、および4時間後におけるテクスチャ解析を中心温度の測定とともに行った。テクスチャ解析は、各サンプルを測定機器(クリープメータ RE-33005S、株式会社山電)に充填し、直径20mm(高さ8mm樹脂製)のプランジャーで圧縮速度10mm/秒、クリアランス5mmで2回圧縮測定した。
【0062】
結果
テクスチャ解析により測定した例1および2の各サンプルの物性(硬さ、付着性、凝集性)はそれぞれ下記表4および5に示されるとおりであった、
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
テクスチャ解析(3):調理後の時間経過に伴う物性の変化
上記表4および5に示される例1および2の各サンプルの硬さ、付着性、および凝集性の経時変化はぞれぞれ図1〜3に示されるとおりであった。
【0066】
図1より、硬さは、調理後15分から調理後4時間後まで、UDF区分3の基準値(20,000N/m)内であり、舌でつぶせる硬さであることが確認された。特に、1時間後に中心温度が25℃程度まで冷めてからは、硬さに経時変化はほとんど見られなかった。また図3より、凝集性は、調理後15分から調理後4時間後まで、0.51〜0.65であり、経時変化はほとんど見られなかった。また図2より、付着性は、もち米粉の配合が多い例1のサンプルで時間の経過とともに上がる傾向が見られたが、喫食した際の硬さは舌でつぶせる軟らかさであり、べたつきが無く飲み込みやすく、また風味および外観も問題なく、咀嚼・嚥下困難者向けの食品として適した風味、食感を有することが確認された。例2のサンプルにあっては、調理後4時間後までほとんど付着性に経時変化は見られなかった。
【0067】
これらのことから、例1および2のサンプルはいずれも調理後15分後(中心温度45℃〜50℃)から調理後4時間後(中心温度20℃)までの全体にわたって、UDF区分3の基準に適合した硬さを有し、咀嚼・嚥下困難者向けの食品として適した物性を有することが確認された。また、各サンプルは経時変化による硬さへの影響が小さいことが確認された。
【0068】
さらに、本発明による餅様食品に含まれる原料成分の添加量が当該食品の風味および食感に与える影響を以下のとおり調べた。
【0069】
(1)カードラン
例4〜13、比較例1
カードランの添加量を下記表6に示す量とした以外は同一組成を有する例4〜13および比較例1の餅様食品サンプルを製造した。各サンプルは例1のサンプルの製造方法と同様に製造した。
【0070】
【表6】
【0071】
調理
例4〜13および比較例1の各サンプルをスチームコンベクションオーブンを用いて、蒸しモードにて10分調理した。調理後の各サンプルの中心温度は78℃〜80℃であった。
【0072】
テクスチャ測定方法
調理後の例1〜3の各サンプルを恒温器(20℃)に静置し、その後これらを測定機器(クリープメータ RE-33005S、株式会社山電)に充填し、直径20mm(高さ8mm樹脂製)のプランジャーで圧縮速度10mm/秒、クリアランス5mmで2回圧縮測定した。測定は20±2℃で行った。
【0073】
結果
テクスチャ解析により測定した各サンプルの物性(硬さ、付着性、凝集性)は下記表7に示されるとおりであった。UDF区分3適合性は、上記のとおり評価した。また、本発明による餅様食品の硬さとカードランの添加量との相関は図4に示されるとおりであった。
【0074】
また、各サンプルの官能試験を行った。結果は表7に示されるとおりであった。官能試験の評価項目および評価基準は以下のとおりとした。
【0075】
官能試験
(評価項目)
・硬さ 咀嚼・困難者向け食品として、舌でつぶせる軟らかさであるか
・べたつき 咀嚼・嚥下困難者向け食品として、口腔内や喉に貼り付かず飲み込みやすいか
・風味 餅の味・香りが感じられるか
・外観 油・水の分離がなく、餅らしい白さを維持できているか
・油っぽさ 口腔内で油が浮かず、後味に油が残らないか
(評価基準)
◎ 大変好ましい
○ 好ましい
△ やや不適
× 不適
【0076】
さらに、各サンプルの総合評価を行った。結果は表7に示されるとおりであった。総合評価の評価項目および評価基準は以下のとおりとした。
【0077】
総合評価
(評価項目)
・UDF区分3に適合していること、および
・官能評価における硬さ・べたつきが咀嚼・嚥下困難者向けの食品として適していること
(評価基準)
◎ 大変好ましい
○ 好ましい
△ やや不適
× 不適
【0078】
【表7】
【0079】
(2)油脂
例14〜20、比較例2
油脂の添加量を下記表8に示す量とした以外は同一組成を有する例14〜20および比較例2の餅様食品サンプルを製造した。各サンプルは例1のサンプルの製造方法と同様に製造した。
【0080】
【表8】
【0081】
例14〜20および比較例2の各サンプルの調理およびテクスチャ測定を、上記例4〜13および比較例1で実施した調理方法およびテクスチャ測定方法と同様に行った。また、各サンプルの官能試験を行った。官能試験の評価項目および評価基準は上記のとおりとした。さらに、各サンプルの総合評価を行った。総合評価の評価項目および評価基準は上記のとおりとした。
【0082】
結果
テクスチャ解析により測定した各サンプルの物性(硬さ、付着性、凝集性)は下記表9に示されるとおりであった。UDF区分3適合性は、上記のとおり評価した。また、本発明による餅様食品の硬さと油脂の添加量との相関、および付着性と油脂の添加量との相関はそれぞれ図5および図6に示されるとおりであった。さらに、各サンプルの官能試験の結果、および総合評価の結果は表9に示されるとおりであった。また、油脂の添加量が特定量のときの本発明による餅様食品の外観(色味)は図7に示す写真のとおりであった。
【0083】
【表9】
【0084】
(3)乳化剤
例21〜30
乳化剤の添加量を下記表10に示す量とした以外は同一組成を有する例21〜30の餅様食品サンプルを製造した。各サンプルは例1のサンプルの製造方法と同様に製造した。なお、表10中の乳化剤は、グリセリン脂肪酸エステルを用いた。
【0085】
【表10】
【0086】
例21〜30の各サンプルの調理およびテクスチャ測定を、上記例4〜13および比較例1で実施した調理方法およびテクスチャ測定方法と同様に行った。また、各サンプルの官能試験および総合評価を行った。官能試験および総合評価各々の評価項目および評価基準は上記のとおりとした。
【0087】
結果
テクスチャ解析により測定した各サンプルの物性(硬さ、付着性、凝集性)、官能試験の結果、そして総合評価の結果は下記表11に示されるとおりであった。
【0088】
【表11】
【0089】
(4)米粉
(4−1)もち米粉とうるち米粉との合計添加量を一定にした場合
例31〜37
餅様食品に配合するもち米粉とうるち米粉との添加比率を下記表12に示すとおりとし、かつもち米粉とうるち米粉との合計添加量を10%とした以外は同一組成を有する例31〜37の餅様食品サンプルを製造した。また、各サンプルの硬さが0.8〜1.6×10N/m程度になるよう、米粉の総量を100gとした。各サンプルは例1のサンプルの製造方法と同様に製造した。
【0090】
【表12】
【0091】
例31〜37の各サンプルの調理およびテクスチャ測定を、上記例4〜13および比較例1で実施した調理方法およびテクスチャ測定方法と同様に行った。また、各サンプルの官能試験および総合評価を行った。官能試験および総合評価各々の評価項目および評価基準は上記のとおりとした。
【0092】
結果
テクスチャ解析により測定した各サンプルの物性(硬さ、付着性、凝集性)、官能試験の結果、そして総合評価の結果は下記表13に示されるとおりであった。
【0093】
【表13】
【0094】
(4−2)もち米粉とうるち米粉との合計添加量を一定にしなかった場合
例1、2、3、38および39
餅様食品に配合するもち米粉とうるち米粉との合計添加量を下記表14に示すとおりとした以外は同一組成を有する例1、2、3、38および39の餅様食品サンプルを製造した。また、各サンプルの硬さが1.1〜1.6×10N/m程度になるよう、米粉の総量と水の配合量を調整した。各サンプルは例1のサンプルの製造方法と同様に製造した。
【0095】
【表14】
【0096】
例1、2、3、38および39の各サンプルの調理およびテクスチャ測定を、上記例4〜13および比較例1で実施した調理方法およびテクスチャ測定方法と同様に行った。また、各サンプルの官能試験および総合評価を行った。官能試験および総合評価各々の評価項目および評価基準は上記のとおりとした。
【0097】
結果
テクスチャ解析により測定した各サンプルの物性(硬さ、付着性、凝集性)、官能試験の結果、そして総合評価の結果は下記表15に示されるとおりであった。
【0098】
【表15】
【0099】
(4−3)もち米粉またはうるち米粉のいずれか一方のみを使用した場合
例2、40〜46、比較例3
米粉としてもち米粉のみを表16に記載の量添加した以外は同一組成を有する例40〜44の餅様食品サンプル、並びに米粉としてうるち米粉のみを表16に記載の量添加した以外は同一組成を有する例2、45および46の餅様食品サンプルを製造した。各サンプルは例1のサンプルの製造方法と同様に製造した。
【0100】
【表16】
【0101】
例2、40〜46、比較例3の各サンプルの調理およびテクスチャ測定を、上記例4〜13および比較例1で実施した調理方法およびテクスチャ測定方法と同様に行った。また、各サンプルの官能試験および総合評価を行った。官能試験および総合評価各々の評価項目および評価基準は上記のとおりとした。
【0102】
結果
テクスチャ解析により測定した各サンプルの物性(硬さ、付着性、凝集性)、官能試験の結果、そして総合評価の結果は下記表17に示されるとおりであった。
【0103】
【表17】
【0104】
また、本発明による餅様食品が米粉としてもち米粉のみを含む場合における、もち米粉の添加量と当該食品の硬さとの相関は図8に示されるとおりであった。同様に、米粉としてうるち米粉のみを含む場合における、うるち米粉の添加量と当該食品の硬さとの相関は図8に示されるとおりであった。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9