(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成分A:芳香族ビニル重合体ブロックと、イソプレンに由来する構造単位を含有し、1,2-結合単位及び3,4-結合単位の含有量の合計が45モル%以上であるイソプレン系重合体ブロックとを有するブロック共重合体の水素添加物であり、重量平均分子量が150,000〜500,000である水添ブロック共重合体、
成分B:40℃での動粘度が3,000〜20,000mm2/sのポリブテンオイル、
成分C:ポリオレフィン、及び
成分D:架橋されたイソブチレン系重合体D1、又は架橋されたイソブチレン系重合体D1及び芳香族ビニル重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとから構成されたトリブロック共重合体D2
を含有してなり、
前記成分A 100質量部に対して、成分Bの含有量が10〜200質量部、成分Cの含有量が1〜200質量部、成分Dの含有量が50〜1200質量部である、熱可塑性エラストマー組成物(ただし、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体を架橋してなるイソブチレン系架橋重合物(a):100質量部、
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと、イソプレンとブタジエンとからなる共役ジエンを主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体を水素添加して得られ、重量平均分子量が150000〜500000である水添ブロック共重合体(b):10〜100質量部、
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと、イソプレンからなる共役ジエンを主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られ、重量平均分子量が200000〜500000である水添ブロック共重合体(c):10〜100質量部、ポリブテン(d):5〜100質量部、および
プロピレン系重合体(e):1〜100質量部
を含有してなる熱可塑性重合体組成物を除く)。
成分Dのうち、イソブチレン系重合体D1が、アリル基を有するイソブチレン系重合体がヒドロシリル化架橋されたものである、請求項1又は2記載の熱可塑性エラストマー組成物。
成分Dのうち、トリブロック共重合体D2の重量平均分子量が50,000〜500,000であり、該トリブロック共重合体D2に含まれるイソブチレン系重合体ブロックの含有量が50〜90質量%である、請求項1〜3いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
架橋されたイソブチレン系重合体D1は、成分Bのポリブテンオイル及び/又は成分Cのポリオレフィンの少なくとも一部と溶融混合してなるものである、請求項1〜8いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物(以下、本発明の組成物ともいう)は、
成分A:芳香族ビニル重合体ブロックと、イソプレン、又はイソプレン及びブタジエンの混合物に由来する構造単位を含有し、1,2-結合単位及び3,4-結合単位の含有量の合計が45モル%以上であるイソプレン系重合体ブロックとを有するブロック共重合体の水素添加物であり、重量平均分子量が150,000〜500,000である水添ブロック共重合体、
成分B:40℃での動粘度が3,000〜20,000mm
2/sのポリブテンオイル、
成分C:ポリオレフィン、及び
成分D:架橋されたイソブチレン系重合体D1、及び/又は芳香族ビニル重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとから構成されたトリブロック共重合体D2
を含有するものである。
【0014】
成分Aの水添ブロック共重合体は、芳香族ビニル重合体ブロックとイソプレン系重合体ブロックとを有するブロック共重合体の水素添加物である。
【0015】
芳香族ビニル重合体ブロックは、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(以下、芳香族ビニル化合物単位ともいう)を含有する。該芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられ、これらの2種類以上が併用されてもよい。これらの中では、入手が容易なスチレンが好ましい。
【0016】
芳香族ビニル重合体ブロックは、本発明の効果を損なわない範囲で芳香族ビニル化合物以外の単量体に由来する構造単位を含有してもよい。他の単量体としては、1-ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテル等のイオン重合し得る共重合性単量体等が挙げられる。芳香族ビニル重合体ブロックを構成する全構造単位中の、芳香族ビニル化合物単位の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0017】
イソプレン系重合体ブロックは、イソプレン、又はイソプレン及びブタジエンの混合物に由来する構造単位を含有し、1,2-結合単位及び3,4-結合単位を高含量で含むものである。イソプレンに由来する構造単位(以下、イソプレン単位ともいう)には、下記の通り、両側の構造単位と結合する炭素の違いにより、1,2-結合単位、3,4-結合単位、及び1,4-結合単位が存在する。これらのうち、1,2-結合単位及び3,4-結合単位は、側鎖の炭素鎖が二重結合を含むため、水素添加により、側鎖に1,4結合単位に比べて嵩高いアルキル基を有することになる。同様に、ブタジエンに由来する構造単位(以下、ブタジエン単位ともいう)にも、1,2-結合単位、3,4-結合単位、及び1,4-結合単位が存在するが、1,2-結合単位と3,4-結合単位は実質同一の構造単位とみなす。本発明では、水素添加により側鎖が嵩高くなる1,2-結合単位及び3,4-結合単位を多量に含むことにより、熱可塑性エラストマー組成物のガスバリア性が向上する。
【0019】
1,2-結合単位及び3,4-結合単位の含有量の合計は、イソプレン系重合体ブロックを構成する全構造単位中、ガスバリア性の観点から、45モル%以上であり、好ましくは47モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは53モル%以上であり、好ましくは95モル%以下、より好ましくは90モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下、さらに好ましくは70モル%以下である。これらの観点から、1,2-結合単位及び3,4-結合単位の含有量の合計は、イソプレン系重合体ブロックを構成する全構造単位中、45モル%以上であり、好ましくは47〜95モル%、より好ましくは50〜90モル%、さらに好ましくは50〜80モル%、さらに好ましくは50〜70モル%、さらに好ましくは53〜70モル%である。
【0020】
イソプレン系重合体ブロックが、イソプレン単位とブタジエン単位の両方を含む場合、そのモル比(イソプレン単位/ブタジエン単位)は、好ましくは50/50〜95/5、より好ましくは60/40〜90/10、さらに好ましくは70/30〜85/15である。
【0021】
イソプレン単位とブタジエン単位の結合形態は、ランダム状、ブロック状、テーパード状のいずれであってもよい。
【0022】
イソプレン系重合体ブロックは、本発明の効果を損なわない範囲でイソプレン単位及びブタジエン単位以外の単量体に由来する構造単位を含有してもよい。他の単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、ジフェニルエチレン、1-ビニルナフタレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン等の芳香族ビニル化合物等のアニオン重合可能な共重合性単量体等が挙げられる。イソプレン系重合体ブロックを構成する全構造単位中、イソプレン単位の含有量、又はイソプレン単位及びブタジエン単位の含有量の合計は、ガスバリア性の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0023】
本発明において、芳香族重合体ブロックとイソプレン系重合体ブロックを有するブロック共重合体は水素添加(「水添」と略称することもある)されたものであり、実質的には、イソプレン系重合体ブロックにおける不飽和二重結合(炭素−炭素二重結合)の一部又は全部が水素添加されたものである。イソプレン系重合体ブロックの水素添加率は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上である。なお、該水素添加率は、「水添ブロック共重合体の水素添加率」として記載することもある。
【0024】
水添ブロック共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、場合により、分子鎖中及び/又は分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基等の官能基の1種又は2種以上を有していてもよい。
【0025】
水添ブロック共重合体は、芳香族ビニル重合体ブロック及びイソプレン系重合体ブロックをそれぞれ少なくとも1個含むブロック共重合体の水素添加物であり、好ましくは、芳香族ビニル重合体ブロックを2個以上及びイソプレン系重合体ブロックを1個以上含むブロック共重合体の水素添加物である。芳香族ビニル重合体ブロックとイソプレン系重合体ブロックの結合形態は特に制限されず、直鎖状、分岐状、放射状、又はそれらの2つ以上が組み合わさった結合形態のいずれであってもよいが、直線状に結合した形態が好ましく、芳香族ビニル重合体ブロックを「A」、イソプレン系重合体ブロックを「B」で表したときに、(A−B)
l、A−(B−A)
m、B−(A−B)
n(式中、l、m及びnはそれぞれ独立して1以上の整数を表す)の結合形態であることが好ましく、ゴム弾性、力学的特性、取り扱い性等の観点から、(A−B)
l及びA−(B−A)
mで表される結合形態であることがより好ましく、A−Bで表されるジブロック構造又はA−B−Aで表されるトリブロック構造の結合形態であることがさらに好ましい。
【0026】
また、水添ブロック共重合体が芳香族ビニル重合体ブロックを2個以上又はイソプレン系重合体ブロックを2個以上有する場合には、それぞれの芳香族ビニル重合体ブロックとイソプレン系重合体ブロックは互いに同じ構成のブロックであっても異なる構成のブロックであってもよい。例えば、〔A−B−A〕で表されるトリブロック構造における2個の芳香族ビニル重合体ブロックは、それらを構成する芳香族ビニル化合物の種類が、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0027】
成分Aの水添ブロック共重合体における芳香族ビニル重合体ブロックの含有量は、柔軟性及び圧縮永久歪の観点から、好ましくは5〜70質量%以上、より好ましくは15〜50質量%以上、さらに好ましくは15〜35質量%以上である。
【0028】
成分Aの水添ブロック共重合体において、芳香族ビニル重合体ブロックとイソプレン系重合体ブロックの質量比(芳香族ビニル重合体ブロック/イソプレン系重合体ブロック)は、柔軟性及びガスバリア性の観点から、好ましくは5/95〜70/30、より好ましくは15/85〜50/50、さらに好ましくは15/85〜35/65である。
【0029】
成分Aの水添ブロック共重合体の重量平均分子量は、耐圧縮永久歪性の向上及びオイルブリード抑制の観点から、150,000以上であり、流動性及び成形性の観点から、500,000以下である。これらの観点から、成分Aの水添ブロック共重合体の重量平均分子量は、150,000〜500,000であり、好ましくは160,000〜400,000、より好ましくは170,000〜350,000である。
【0030】
成分Aの含有量は、本発明の組成物中、オイルブリードの観点から、好ましくは5質量%以上であり、水蒸気バリア性の観点から、好ましくは80質量%以下である。これらの観点から、成分Aの含有量は、本発明の組成物中、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは5〜70質量%、さらに好ましくは7〜65質量%、さらに好ましくは10〜50質量%である。
【0032】
ポリブテンオイルの40℃での動粘度は、長期耐熱性の向上及びブリード抑制の観点から、3,000mm
2/s以上であり、成形性及びガスバリア性の観点から、20,000mm
2/s以下である。これらの観点から、ポリブテンオイルの40℃での動粘度は、3,000〜20,000mm
2/sであり、好ましくは4,000〜17,500mm
2/s、より好ましくは5,000〜15,000mm
2/sである。
【0033】
成分Bの含有量は、成分A 100質量部に対して、柔軟性及び溶融混練時の分散性の観点から、10質量部以上であり、成形性の向上及びブリード抑制の観点から、200質量部以下である。これらの観点から、成分Bの含有量は、成分A 100質量部に対して、10〜200質量部であり、好ましくは15〜100質量部、より好ましくは20〜75質量部である。
【0034】
成分Bの含有量は、本発明の組成物中、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%である。
【0036】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられ、これらの中では、耐熱性及び相溶性の観点から、ポリプロピレンが好ましい。
【0037】
ポリオレフィンの融点は、長期耐熱性の観点から、140℃以上が好ましく、成形性の観点から、200℃以下が好ましい。これらの観点から、ポリオレフィンの融点は、好ましくは140〜190℃、より好ましくは145〜185℃、さらに好ましくは150〜180℃である
【0038】
ポリオレフィンの230℃、21Nでのメルトマスフローレイトは、成形性の観点から、0.1g/10min以上が好ましく、耐熱性の観点から、100g/10min以下が好ましい。これらの観点から、ポリオレフィンの230℃、21Nでのメルトマスフローレイトは、好ましくは0.1〜100g/10min、より好ましくは0.5〜80g/10min、さらに好ましくは1.0〜50g/10minである。
【0039】
ポリオレフィンの曲げ弾性率は、ガスバリア性の観点から、30MPa以上が好ましく、柔軟性の観点から、2500MPa以下が好ましい。これらの観点から、ポリオレフィンの曲げ弾性率は、好ましくは50〜2000MPa、より好ましくは100〜1850MPa、さらに好ましくは200〜1700MPaである。
【0040】
成分Cの含有量は、成分A 100質量部に対して、溶融混練時の分散性の観点から、1質量部以上であり、柔軟性及び耐圧縮永久歪性の観点から、200質量部以下である。これらの観点から、成分Cの含有量は、成分A 100質量部に対して、1〜200質量部であり、好ましくは5〜175質量部、より好ましくは10〜150質量部、さらに好ましくは15〜100質量部、さらに好ましくは20〜80質量部である。
【0041】
成分Cの含有量は、本発明の組成物中、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%である。
【0042】
成分Dは、架橋されたイソブチレン系重合体D1、及び/又は芳香族ビニル重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとから構成されたトリブロック共重合体D2である。
【0043】
イソブチレン系重合体は、イソブチレンに由来する構造単位(以下、イソブチレン単位ともいう)を含有する。
【0044】
イソブチレン系重合体は、本発明の効果を損なわない範囲でイソブチレン以外の単量体に由来する構造単位を含有してもよい。他の単量体としては、脂肪族オレフィン類、脂環式オレフィン類、芳香族ビニル類、ジエン類、ビニルエーテル類、シラン類、ビニルカルバゾール、β−ピネン、アセナフチレン等が挙げられる。イソブチレン系重合体を構成する全構造単位中、イソブチレン単位の含有量は、高温下での水蒸気バリア性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0045】
架橋されたイソブチレン系重合体D1は、衛生性及び耐圧縮永久歪性の観点から、アリル基を有するイソブチレン系重合体がヒドロシリル化架橋されたものであることが好ましい。
【0046】
アリル基を有するイソブチレン系重合体は、イソブチレン系重合体に対して以下の方法等によってアリル基を導入することで得られる。水酸基等の官能基を有する重合体に不飽和基を導入する方法としては、水酸基等の官能基を有する重合体に不飽和基を有する化合物を反応させて重合体に不飽和基を導入する方法等が挙げられる。また、ハロゲン原子を有する重合体に不飽和基を導入する方法としては、アルケニルフェニルエーテルとのフリーデルクラフツ反応を行う方法、ルイス酸の存在下アリルトリメチルシラン等との置換反応を行う方法、種々のフェノール類とのフリーデルクラフツ反応を行い水酸基を導入した上でさらに前記のアルケニル基導入反応を行う方法等が挙げられる。
【0047】
イソブチレン系重合体におけるアリル基の量は、必要とする特性によって任意に選ぶことができるが、架橋後の特性の観点から、アリル基を有するイソブチレン系重合体は、1分子当たり少なくとも0.2個のアリル基を末端に有する重合体であることが好ましく、1分子当たり1.0個以上のアリル基を末端に有する重合体であることがより好ましく、1分子当たり1.5個以上のアリル基を末端に有する重合体であることがさらに好ましい。イソブチレン系重合体におけるアリル基の量は、
1H-NMRスペクトル解析法により測定することができる。
【0048】
イソブチレン系重合体のヒドロシリル化架橋は、例えば、分子内に複数のヒドロシリル基を有する架橋剤と、白金系触媒とを用いて押出機による溶融混練により、行うことができる。
【0049】
架橋反応によって、重合体の耐圧縮永久歪性や耐熱性が向上するが、同時に硬度や溶融粘度も上がってしまうので、成分Dをエラストマー組成物の構成として用いる場合には、架橋後の分子量を選択の指標として用いることが組成物全体の物性バランスを崩さないで配合する観点から、好ましい。
【0050】
架橋されたイソブチレン系重合体D1の重量平均分子量は、圧縮永久歪の抑制の観点から、50,000以上が好ましく、成形性の観点から、500,000以下が好ましい。これらの観点から、架橋されたイソブチレン系重合体D1の重量平均分子量は、好ましくは50,000〜500,000、より好ましくは55,000〜450,000、さらに好ましくは75,000〜425,000、さらに好ましくは100,000〜400,000である。
【0051】
芳香族ビニル重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとを有するトリブロック共重合体D2は、2個の芳香族ビニル重合体ブロックと1個のイソブチレン系重合体ブロックとから構成されたものが好ましく、イソブチレン系重合体ブロックの両側に芳香族ビニル重合体ブロックを備えたものがより好ましい。
【0052】
芳香族ビニル重合体ブロックは、芳香族ビニル化合物単位を含有する。該芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられ、これらの2種類以上が併用されてもよい。これらの中では、入手が容易なスチレンが好ましい。
【0053】
芳香族ビニル重合体ブロックは、本発明の効果を損なわない範囲で芳香族ビニル化合物以外の単量体に由来する構造単位を含有してもよい。他の単量体としては、1-ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテル等のイオン重合し得る共重合性単量体等が挙げられる。芳香族ビニル重合体ブロックを構成する全構造単位中の、芳香族ビニル化合物単位の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0054】
イソブチレン系重合体ブロックは、イソブチレン単位を含有する。
【0055】
イソブチレン系重合体ブロックは、本発明の効果を損なわない範囲でイソブチレン以外の単量体に由来する構造単位を含有してもよい。他の単量体としては、脂肪族オレフィン類、脂環式オレフィン類、芳香族ビニル類、ジエン類、ビニルエーテル類、シラン類、ビニルカルバゾール、β−ピネン、アセナフチレン等が挙げられる。イソブチレン系重合体ブロックを構成する全構造単位中、イソブチレン単位の含有量は、高温下での水蒸気バリア性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0056】
トリブロック共重合体D2に含まれるイソブチレン系重合体ブロックの含有量は、高温下での水蒸気バリア性の観点から、50質量%以上が好ましく、オイルブリードの観点から、90質量%以下が好ましい。これらの観点から、トリブロック共重合体D2に含まれるイソブチレン系重合体ブロックの含有量は、好ましくは50〜90質量%、より好ましくは55〜85質量%、さらに好ましくは60〜80質量%である。
【0057】
トリブロック共重合体D2における、イソブチレン系重合体ブロックと芳香族ビニル重合体ブロックの質量比(イソブチレン系重合体ブロック/芳香族ビニル重合体ブロック)は、高温下での水蒸気バリア性の観点から、好ましくは50/50〜90/10、より好ましくは55/45〜85/15、さらに好ましくは60/40〜80/20である。
【0058】
トリブロック共重合体D2の重量平均分子量は、圧縮永久歪の抑制の観点から、50,000以上が好ましく、成形性の観点から、500,000以下が好ましい。これらの観点から、トリブロック共重合体D2の重量平均分子量は、好ましくは50,000〜500,000、より好ましくは60,000〜400.000、さらに好ましくは70,000〜300,000である。
【0059】
成分Dの含有量は、成分A 100質量部に対して、50〜1200質量部であり、両者が併用される場合は、それらの合計量が前記範囲であるものとする。
架橋されたイソブチレン系重合体D1が単独で含まれている場合、その含有量は、成分A 100質量部に対して、高温下での水蒸気バリア性の観点から、50質量部以上であり、成形体の表面を滑らかにし、外観を向上する観点から、1200質量部以下である。これらの観点から、架橋されたイソブチレン系重合体D1の含有量は、成分A 100質量部に対して、50〜1200質量部であり、好ましくは100〜1100質量部、より好ましくは200〜1000質量部である。
トリブロック共重合体D2が単独で含まれている場合、その含有量は、成分A 100質量部に対して、高温下での水蒸気バリア性の観点から、50質量部以上であり、耐圧縮永久歪性の観点から、1200質量部以下である。これらの観点から、トリブロック共重合体D2の含有量は、成分A100質量部に対して、50〜1200質量部であり、好ましくは100〜1100質量部、より好ましくは200〜1000質量部である。
【0060】
成分Dの含有量は、本発明の組成物中、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜85質量%である。
【0061】
本発明の組成物は、成形体の表面平滑性の観点から、成分E:ポリフェニレンエーテルを含有することが好ましい。
【0062】
ポリフェニレンエーテルの還元粘度は、JIS K 7367に準拠した方法により、クロロホルム中に0.5g/dLの濃度で溶解した溶液の30℃での粘度とする。相溶性の観点から、0.1以上が好ましく、分散性及び成形体の表面性の観点から、0.45未満が好ましい。これらの観点から、ポリフェニレンエーテルの還元粘度は、好ましくは0.1〜0.45、より好ましくは0.15〜0.45、さらに好ましくは0.2〜0.45である。
【0063】
ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度は、耐熱性の観点から、170℃以上が好ましく、成形性の観点から、260℃以下が好ましい。これらの観点から、ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度は、好ましくは170〜260℃、より好ましくは180〜250℃、さらに好ましくは190〜240℃である。
【0064】
ポリフェニレンエーテルの体積中位粒径は、分散性の観点から、0.1μm以上が好ましく、生産性(分級)の観点から、1000μmが好ましい。これらの観点から、ポリフェニレンエーテルの体積中位粒径は、好ましくは0.1〜1000μm、より好ましくは10〜800μm、さらに好ましくは50〜500μmである。
【0065】
成分Eの含有量は、成分A 100質量部に対して、成形体表面平滑性の観点から、1質量部以上が好ましく、圧縮永久歪の観点から、100質量部以下が好ましい。これらの観点から、成分Eの含有量は、成分A 100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは5〜80質量部、さらに好ましくは10〜70質量部である。
【0066】
成分Eの含有量は、本発明の組成物中、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは1.0〜15質量%である。
【0067】
本発明の組成物は、水蒸気バリア性の観点から、成分F:無機フィラーを含有することが好ましい。
【0068】
無機フィラーとしては、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、クレー、酸化チタン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、珪藻土、ドロマイト、石膏、焼成クレー、アスベスト、ケイ酸カルシウム、ベントナイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、鉄粉、アルミニウム粉、石粉、高炉スラグ、フライアッシュ、セメント、ジルコニア粉等が挙げられ、これらの中では、水蒸気バリア性及び分散性の観点から、タルクが好ましい。
【0069】
無機フィラーは、粒状、板状、棒状、繊維状、ウィスカー状等、様々な形状のものが知られているが、本発明では、水蒸気バリア性及びガスバリア性の観点から、板状のものが好ましい。板状とは、長径と厚みの比(長径/厚み)が5以上、好ましくは10〜500である形状をいう。
【0070】
板状の無機フィラーの体積中位粒径は、分散性の観点から、1.5μm以上が好ましく、柔軟性の観点から、150μm以下が好ましくい。これらの観点から、板状の無機フィラーの体積中位粒径は、好ましくは1.5〜150μm、より好ましくは1.75〜120μm、さらに好ましくは2.0〜15μmである。
【0071】
成分Fの含有量は、成分A 100質量部に対して、水蒸気バリア性の観点から、1質量部以上が好ましく、成形体の表面性の観点から、500質量部以下が好ましい。これらの観点から、成分Fの含有量は、成分A 100質量部に対して、好ましくは1〜500質量部、より好ましくは20〜400質量部、さらに好ましくは50〜350質量部である。また、無機フィラーが板状の場合は、水蒸気バリア性及びチューブ平滑性の観点から、250質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましい。
【0072】
成分Fの含有量は、本発明の組成物中、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜35質量%である。
【0073】
本発明の組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、カーボンブラック、シリカ、炭素繊維、ガラス繊維等の補強剤;絶縁性熱伝導性フィラー、顔料、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、粘着付与剤、架橋剤、架橋助剤、発泡剤、香料等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0074】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーを含有していてもよい。
【0075】
また、本発明の組成物には、極性樹脂の改質を目的として、極性エラストマーが含有されていてもよい。極性エラストマーとしては、特に制限されないが、例えばNBR(ニトリルゴム)、ポリウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0076】
本発明の組成物は、成分A〜成分D、必要に応じて、成分E、成分F等を含む原料混合物を、押出機又はニーダーにより加熱混練する方法により得ることが好ましい。
【0077】
本発明でいう「混合」とは、各種成分が良好に混合される方法であれば特に限定されず、各種成分を溶解可能な有機溶媒中に溶解させて混合してもよいし、原料を加熱し、溶融混練によって混合してもよい。
【0078】
本発明では、成分Dが架橋されたイソブチレン系重合体D1を含む場合、架橋されたイソブチレン系重合体D1は、成分Bのポリブテンオイル及び/又は成分Cのポリオレフィンの少なくとも一部と溶融混合したものであることが好ましい。架橋されたイソブチレン系重合体D1を予め成分Bと溶融混合しておくことにより、柔軟性が向上する。また、架橋されたイソブチレン系重合体D1を成分Cと溶融混合しておくことにより、長期耐熱性が向上する。
【0079】
架橋されたイソブチレン系重合体D1と予め溶融混合される成分Bの量は、架橋されたイソブチレン系重合体D1 100質量部に対して、好ましくは10〜50質量部、より好ましくは15〜45質量部である。また、架橋されたイソブチレン系重合体D1と予め溶融混合される成分Cの量は、架橋されたイソブチレン系重合体D1 100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは3〜15質量部である。
【0080】
このようなイソブチレン系重合体D1が予め成分B及び成分Cと溶融混合されたものの市販品として、「SIBSTAR P1140B」(カネカ株式会社製)等を利用することもできる。
【0081】
押出機としては、例えば、単軸押出機、平行スクリュー二軸押出機、コニカルスクリュー二軸押出機等が挙げられる。本発明では、混合能力が優れる(得られる混合物が分散性の良好なものとなる)観点から、二軸押出機が好ましく、同方向転二軸押出機がより好ましい。
【0082】
押出機の吐出部分に装着されるダイは、任意のものを選択できるが、例えば、ペレットの生産に適するストランドダイ、シートやフィルムの生産に適するTダイ等のほか、パイプダイ、異形押出ダイ等が挙げられる。
【0083】
また、押出機は、空気開放部分や減圧装置につながるガス抜き用のベントを備えていてもよいし、複数の原料投入口を供えていてもよい。
【0084】
ニーダーとは、温度制御が可能なバッチ式ミキサーを意味し、バンバリーミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ラボプラストミル等が挙げられる。
【0085】
各成分は、押出機又はニーダーに、一括で投入しても、別々に投入しても、また、分割して投入してもよい。
【0086】
本発明の組成物は、用途に応じて、ペレット、粉体、シート等の形状とすることができる。例えば、押出機によって溶融混練してストランドに押出し、冷水中で冷却しつつカッターによって円柱状や米粒状などのペレットに切断される。得られたペレットは、通常、射出成形、押出成形によって所定のシート状成形品や金型成形品とする。また、溶融混練物をルーダー等でペレットにし成形加工原料とすることもできる。シート状の熱可塑性エラストマー組成物に、台紙等を貼付した中間製品としてもよい。
【0087】
本発明の組成物は、特に限定されることなく、一般的なスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマーやポリエステル系エラストマー等が用いられる分野に用いることができる。
【0088】
本発明の組成物のA硬度は、柔軟性の観点から、好ましくは10〜95、より好ましくは20〜90、さらに好ましくは40〜90である。
【0089】
本発明の組成物を、常法に従って、適宜加熱成形することにより、成形体が得られる。
【0090】
加熱成形時の温度は、成形体外観性の観点から、好ましくは150〜250℃、より好ましくは170〜230℃である。
【0091】
本発明の組成物を用いた成形体の製造に用いられる装置は、成形材料を溶融できる任意の成形機を用いることができる。例えば、ニーダー、押出成形機、射出成形機、プレス成形機、ブロー成形機、ミキシングロール等が挙げられる。
【0092】
本発明の組成物を用いた成形体の形状の具体例としては、筒状成形体、封止用成形体、シート状成形体等が挙げられる。筒状成形体は、インクジェット記録装置用チューブ、カテーテル、輸液用チューブ、腹膜透析用チューブ、輸血用チューブ、人工心肺や血液透析等に用いる血液回路チューブ等の医療用チューブ、気体、液体、半固体及びこれらの混合物の移送用等に用いられる各種工業用チュ−ブ等として用いることができる。また、封止用成形体は、各種パッキン、シール、ガスケット、太陽電池用封止材、食品用ライナー材等として用いることができる。
【実施例】
【0093】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。実施例及び比較例で使用した原料の各種物性は、以下の方法により測定した。
【0094】
<成分A>
〔芳香族ビニル重合体ブロックにおける芳香族ビニル化合物単位の含有量〕
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)を用いて測定する。
〔イソプレン系重合体ブロックにおける1,2-結合単位及び3,4-結合単位の合計含有量〕
水素添加前のブロック共重合体をCDCl
3に溶解して
1H-NMRスペクトルを測定[装置:JNM-Lambda 500(日本電子株式会社製)、測定温度:50℃]し、イソプレン、ブタジエン、又はイソプレンとブタジエンの混合物由来の構造単位の全ピーク面積と、イソプレン単位における1,2-結合単位及び3,4-結合単位、ブタジエン単位における1,2-結合単位、またイソプレンとブタジエンの混合物の場合にはそれぞれの前記結合単位に対応するピーク面積の比から、3,4-結合単位と1,2-結合単位の含有量の合計を算出する。
〔水添ブロック共重合体の水素添加率〕
水素添加前後におけるブロック共重合体のヨウ素価を測定し、下記式より水添ブロック共重合体の水素添加率(%)を算出する。
【0095】
【数1】
【0096】
〔イソプレン系重合体ブロックにおけるイソプレン単位及び/又はブタジエン単位の含有量〕
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)を用いて測定する。
〔ブロック共重体における芳香族ビニル重合体ブロック及びイソプレン系重合体ブロックの含有量〕
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)を用いて測定する。
〔ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)〕
以下の測定条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算で分子量を測定し、重量平均分子量を求める。
測定装置
・ポンプ:JASCO(日本分光株式会社)製、PU-980
・カラムオーブン:昭和電工株式会社製、AO-50
・検出器:日立製、RI(示差屈折計)検出器 L-3300
・カラム種類:昭和電工株式会社製「K-805L(8.0×300mm)」及び「K-804L(8.0×300mm)」各1本を直列使用
・カラム温度:40℃
・ガードカラム:K-G(4.6×10mm)
・溶離液:クロロホルム
・溶離液流量:1.0ml/min
・試料濃度:約1mg/ml
・試料溶液ろ過:ポリテトラフルオロエチレン製0.45μm孔径ディスポーザブルフィルタ
・検量線用標準試料:昭和電工株式会社製ポリスチレン
【0097】
<成分B>
〔動粘度〕
JIS Z 8803に従って、40℃の温度で測定する。
【0098】
<成分C>
〔融点〕
示差走査熱量測定(DSC)装置を用い、JIS K 7121で規定される方法に準拠して10℃/minで昇温して得られる融解ピークの温度を融点とする。融解ピークが複数表れる場合は、より低い温度で表れる融解ピークを融点とする。
〔メルトマスフローレイト(MFR)〕
ASTM D 1238に準拠した方法により、230℃で測定する。
〔曲げ弾性率〕
JIS K7171に準拠した方法により測定する。
【0099】
<成分D>
〔架橋されたイソブチレン系重合体D1におけるイソブチレン単位の含有量〕
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)を用いて測定する。
〔架橋されたイソブチレン系重合体D1の重量平均分子量(Mw)〕
クロロホルムを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定により、ポリスチレン換算で測定する。
〔トリブロック共重合体D2の芳香族ビニル重合体ブロックにおける芳香族ビニル化合物単位の含有量〕
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)を用いて測定する。
〔トリブロック共重合体D2のイソブチレン系重合体ブロックにおけるイソブチレン単位の含有量〕
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)を用いて測定する。
〔トリブロック共重合体D2に含まれる芳香族ビニル重合体ブロック及びイソブチレン系重合体ブロックの含有量〕
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)を用いて測定する。
〔トリブロック共重合体D2の重量平均分子量(Mw)〕
クロロホルムを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定により、ポリスチレン換算で測定する。
【0100】
<成分E>
〔還元粘度〕
JIS K 7367に準拠した方法により、クロロホルム中に0.5g/dLの濃度で溶解した溶液の30℃での粘度を測定する。
〔ガラス転移温度(Tg)〕
JIS K 7121に準拠した方法により、DSC法によって測定する。
〔体積中位粒径〕
JIS Z 8825に準拠した方法により、レーザー回折法による体積基準の累積50%粒径D
50を測定する。
【0101】
<成分F>
〔体積中位粒径〕
JIS Z 8825に準拠した方法により、レーザー回折法による体積基準の累積50%粒径D
50を測定する。
【0102】
実施例1〜20及び比較例1〜12
(実施例12は参考例である)
(1) 熱可塑性エラストマー組成物(ペレット)の作製
表7〜11に示す組成比(質量比)で原料成分を、ミキサーに投入し、プレミキシングした。その後、得られた混合物を下記の条件で押出機(連続式混練機)により溶融混練して、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを製造した。
・押出機:KZW32TW-60MG-NH((株)テクノベル製)
・シリンダー温度:180〜240℃
・スクリュー回転数:300r/min
【0103】
実施例及び比較例で使用した原料成分の詳細を表1〜6に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
【表5】
【0109】
【表6】
【0110】
(2) 成形体の作製
(2-1) 射出成形体
ペレットを、下記の条件で射出成形し、幅125mm×長さ125mm×厚さ2mmのプレートを作製した。
〔射出成形条件〕
射出成形機:100MSIII-10E(商品名、三菱重工業(株)製)
射出成形温度:200℃
射出圧力:30%
射出時間:10sec
金型温度:40℃
【0111】
(2-2) プレス成形体
ペレットを、下記の条件でプレス成形し、幅20cm×長さ20cm×厚さ0.5mmのシートを作製した。
〔プレス成形条件〕
プレス機:40ton電動油圧成型機
加熱温度:上型200℃、下型200℃
加熱時間:5min
プレス圧:5MPa
冷却時間:2min
【0112】
(2-3) チューブ成形体
ペレットを、下記の条件でチューブ成形し、外径φ6.0mm、内径φ2.5mmのチューブを作製した。
〔チューブ成形条件〕
チューブ成形機:単軸押出機
シリンダー温度:220℃
【0113】
得られた成形体を用い、実施例及び比較例で得られた組成物について、下記の評価を行った。なお、結果を表7〜11に示す。
【0114】
(1) 柔軟性
射出成形体を用いた。
厚さ2mmの成形体試料を3枚重ね(合計6mm)としたものについて、JIS K 6253に準拠した測定時間1秒のA硬度(試験開始から1秒後の値)を測定した。測定は温度23℃、湿度50%の室内で1日状態調節の後、実施した。
【0115】
(2) ガスバリア性
プレス成形体を用いた。
JIS K 7126に準拠した方法により、酸素透過係数を測定した。
【0116】
(3) 水蒸気バリア性
プレス成形体を用いた。
40℃環境下と70℃環境下で透湿度を測定した。
40℃環境下:JIS K 0208(カップ法)、条件:40℃×90%RH、シート厚さ:0.5mm
70℃環境下:差圧法にて測定
測定機:GTR-20XAGS(GTRテック社)
試験条件:70±0.1℃×90±2%RH
測定面積:15.2cm
2
試料形状:90mm×90mm×t=0.5±0.1mm
【0117】
(4) 耐圧縮永久歪性
射出成形体を用いた。
JIS K 6262に準拠した方法により、70℃、24時間環境下と100℃、24時間環境下での圧縮永久歪率(CS)を測定した。
【0118】
(5) 成形性
チューブ成形体を用いた。
(5-1) 表面性
チューブの表面を目視及び触感により観察し、下記の評価基準に従って評価した。
1:凹凸が酷くざらざらで平滑性が著しく低い。
2:ざらつきが目立つ平滑性が低い。
3:若干ざらついているが平滑性は問題ないレベル。
4:十分な平滑性を有している。
5:平滑性が極めて高い。
【0119】
(5-2) ベタツキ
チューブの先端10mm長を、チューブ内壁が完全に密着するまで押しつぶして5秒間保持した後、圧力を開放してチューブ内壁同士が離れるまでの時間(sec)を測定した。
【0120】
(5-3) キンク性
チューブを長さ300mmにカットし、チューブの両端を合わせて、クリップ等で挟んだ。挟んだチューブ両端から、2本が接触、並行となるようにチューブ中央部に向かってゆっくりと指で押さえてなぞり、なぞっていく途中でチューブ中央部が座屈した場所で指を止め、チューブ中央部からの距離を測定した。
【0121】
【表7】
【0122】
【表8】
【0123】
【表9】
【0124】
【表10】
【0125】
【表11】
【0126】
以上の結果より、実施例1〜20の熱可塑性エラストマー組成物は、比較例1〜12と対比して、柔軟性、高温下での耐湿性及び耐圧縮永久歪性、及び成形性のいずれも良好であることが分かる。