(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1ケーシングと第2ケーシングとをボルトで連結する場合、第1ケーシングに取付板を外嵌するようにしている。すなわち、上記した従来技術では、ボルトや取付板が必要な分、部品点数が多くなる。さらに、ボルトを螺回する作業が必要であるので煩雑であり、また、作業効率を向上させることが容易ではない。
【0006】
そこで、本出願人は、第1ケーシング及び第2ケーシングの双方を少なくとも熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物とし、第1ケーシング又は第2ケーシングのいずれか一方に、発熱可能な線材を挿入した係合溝を形成するとともに、第2ケーシング又は第1ケーシングの残余の一方に、該係合溝に進入する係合凸部を設け、係合溝の内壁と係合凸部とを互いに溶着することで、第1ケーシングと第2ケーシングとを接合する技術を提案している。
【0007】
この場合、線材は、1本の金属線の所定部位が互いに離間するように湾曲された円環部と、金属線の両端部を円環部から直径方向外方に突出させた電極当接部とから構成される。ここで、電極当接部に電極を接触させ、該電極を介して電極当接部に電流を流すと、抵抗体としての金属線が発熱し、係合溝の内壁と係合凸部とが溶融され、係合溝の内壁と係合凸部とを溶着することができる。
【0008】
しかしながら、溶融した樹脂の流動等が発生すると、電極当接部を構成する金属線の両端部が変位して該両端部が開き、電極と電極当接部との接触面積が変化してしまう。これにより、電流値が変動し、係合溝の内壁と係合凸部とを安定して溶着させることが困難になるとともに、接触面積の低下に起因して、電極と電極当接部との間でスパークが発生するおそれもある。この結果、流量制御装置の不良率が増加してしまう。
【0009】
本発明は、上記した問題を解決するためになされたもので、樹脂の溶融時における電極と電極当接部との接触面積の変化を抑制することで、電流値の時間変動及びスパークの発生を抑制し、係合溝の内壁と係合凸部とを安定して溶着することが可能となる流量制御装置
及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る流量制御装置は、動作源を収容した第1ケーシングと、前記動作源によって動作して流体の流通路の開度を制御する制御弁を収容した第2ケーシングとを有する。
【0011】
この場合、前記流量制御装置は、前記第1ケーシング又は前記第2ケーシングのいずれか一方に、発熱可能な線材を挿入した係合溝が形成されるとともに、前記第2ケーシング又は前記第1ケーシングの残余の一方に、前記係合溝に進入する係合凸部が設けられている。また、前記係合溝の内壁と前記係合凸部とが互いに溶着されることで、前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとが接合される。さらに、前記線材は、1本の金属線の所定部位が互いに離間するように湾曲された円環部と、前記金属線の両端部を前記円環部から直径方向外方に突出させた電極当接部とを有する。
【0012】
そして、本発明に係る流量制御装置では、前記の目的を達成するため、前記電極当接部が、前記金属線の一端部を前記円環部から前記直径方向外方に突出させた第1突出部と、前記金属線の他端部を前記円環部から前記直径方向外方に突出させた第2突出部とから構成されており、前記第1突出部の先端側と前記第2突出部の先端側とが、互いに対向して付勢し合うように接触していることを特徴としている。
【0013】
すなわち、本発明では、前記第1突出部の先端側を前記第2突出部の先端側に付勢させ、一方で、前記第2突出部の先端側を前記第1突出部の先端側に付勢させている。このように、前記各先端側を互いに対向させて内向きに接触させると、前記第1突出部及び前記第2突出部の各先端側に電極を接触させ、該電極を介して前記電極当接部に電流を流し、前記金属線を発熱させて、前記係合溝の内壁と前記係合凸部とを溶融させたときに、樹脂の流動等に起因した前記第1突出部及び前記第2突出部の開きの発生(変位)を抑制することができる。
【0014】
この結果、前記電極と前記電極当接部との接触面積の変化を抑制することができる。これにより、前記電極及び前記電極当接部を介して前記金属線に流れる電流値の変化が抑制され、前記係合溝の内壁と前記係合凸部とを安定して溶着することが可能となる。また、前記接触面積の低下が抑制されることで、前記電極と前記電極当接部との間でのスパークの発生も抑制することができる。従って、前記流量制御装置の不良率を低減させることができる。
【0015】
ここで、前記第1突出部及び前記第2突出部の先端側から直径方向内方に向かって、前記第1突出部及び前記第2突出部が所定角度で拡開するように前記電極当接部が形成されていれば、該電極当接部は、略Λ字状の形状となる。このような形状にすることで、前記係合溝の内壁と前記係合凸部との溶融時における前記電極当接部の動きを効果的に抑制することができる。また、互いに対向して付勢されている前記各先端側に前記電極を接触させれば、前記接触面積の低下を効果的に抑制することができる。
【0016】
さらに、前記第1突出部は、前記円環部から前記直径方向外方に傾斜して延在する第1基端部と、前記第1基端部から前記直径方向外方に直線状に延在する第1先端部とから構成されている。一方、前記第2突出部は、前記円環部から前記直径方向外方に傾斜して延在する第2基端部と、前記第2基端部から前記直径方向外方に直線状に延在する第2先端部とから構成されている。この場合、前記第1先端部及び前記第2先端部は、互いに対向して付勢し合うように接触し、前記第1基端部及び前記第2基端部は、前記第1先端部及び前記第2先端部から前記直径方向内方に向かって所定角度で拡開していればよい。
【0017】
これにより、前記第1先端部と前記第2先端部とが確実に付勢されるので、前記電極から前記電極当接部を介して前記金属線に流れる電流値の変化を一層抑制することができる。
【0018】
また、本発明に係る流量制御装置の製造方法では、前記線材に通電して該線材を発熱させ、前記係合溝の内壁と前記係合凸部とを溶着させる場合、第1〜第3の時間帯の順に前記線材に流す電流値を低下させ
る。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第1突出部の先端側を第2突出部の先端側に付勢させ、一方で、前記第2突出部の先端側を前記第1突出部の先端側に付勢させている。このように、前記各先端側を互いに対向させて内向きに接触させると、前記第1突出部及び前記第2突出部の各先端側に電極を接触させ、該電極を介して電極当接部に電流を流し、金属線を発熱させて、係合溝の内壁と係合凸部とを溶融させたときに、樹脂の流動等に起因した前記第1突出部及び前記第2突出部の開きの発生(変位)を抑制することができる。
【0020】
この結果、前記電極と前記電極当接部との接触面積の変化を抑制することができる。これにより、前記電極及び前記電極当接部を介して前記金属線に流れる電流値の変化が抑制され、前記係合溝の内壁と前記係合凸部とを安定して溶着することが可能となる。また、前記接触面積の低下が抑制されることで、前記電極と前記電極当接部との間でのスパークの発生も抑制することができる。従って、流量制御装置の不良率を低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る流量制御装置
及びその製造方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態に係る流量制御装置10の概略側面断面図である。この流量制御装置10は、例えば、自動二輪車の内燃機関(図示せず)に設けられ、該内燃機関に供給される空気、すなわち、いわゆる吸気の流量を制御する。
【0024】
流量制御装置10は、スロットルボディ12を介して前記内燃機関に装着される。このスロットルボディ12につき概略説明すると、該スロットルボディ12には、内燃機関の吸気ポートに連通する吸気道14が形成されている。この吸気道14には、スロットルバルブ16が開閉可能に設置される。また、スロットルボディ12内には、バイパス往路18及びバイパス復路20が形成される。バイパス往路18はスロットルバルブ16の上流側で吸気道14に連なり、バイパス復路20はスロットルバルブ16の下流側で吸気道14に連なる。
【0025】
流量制御装置10は、動作源としてのモータ22を収容した第1ケーシング24と、該第1ケーシング24に連結(接合)され且つ制御弁26を収容した第2ケーシング28とを有する。流量制御装置10は、第2ケーシング28がスロットルボディ12に装着されることで位置決め固定されている。
【0026】
第1ケーシング24は、給電用端子30を収容したカプラ部32と、該カプラ部32に連なる略円筒形状の本体部34と、該本体部34に比して若干大径な第1フランジ部36を一体的に有する。すなわち、第1ケーシング24は単一部材からなる。
【0027】
本体部34には、有底の第1モータ収容孔38が陥没形成される。前記モータ22のモータ本体の略半分は、この第1モータ収容孔38に嵌合される。モータ22は、前記給電用端子30に電気的に接続されている。
【0028】
第1フランジ部36の、第2ケーシング28に臨む側の端面には、環状の係合凸部40が第2ケーシング28に指向するように突出形成されている。後述するように、この係合凸部40が、第1ケーシング24と第2ケーシング28との連結(接合)を担う。
【0029】
一方、第2ケーシング28は、第1フランジ部36に対向する第2フランジ部42と、その内部に第2モータ収容孔44及び摺動孔46が形成された弁収容部48と、該弁収容部48の端部に設けられてスロットルボディ12に装着される装着部50とを一体的に有する。すなわち、第2ケーシング28もまた、単一部材からなる。
【0030】
第2フランジ部42の、第1フランジ部36に対向する端面には、係合凸部40の位置に対応する位置に、環状の係合溝52が形成される。
図1中のIIA−IIA線矢視断面図である
図2Aに示すように、該係合溝52には、電熱線として機能する線材54が収容される。また、係合溝52には、前記係合凸部40が進入する(
図1参照)。
【0031】
係合凸部40の外壁と、係合溝52の内壁(2個の側壁又は底壁の少なくともいずれか)とは、溶着によって互いに一体化している。この溶着により、第1ケーシング24と第2ケーシング28とが接合(連結)されている。なお、線材54と係合溝52の底壁ないし2個の側壁との間は、溶着時に軟化したPBT(Poly Butylene Terephtalate)等の樹脂組成物の硬化物で充填されている。換言すれば、線材54と、係合凸部40ないし係合溝52との間に、間隙は認められない。
【0032】
係合凸部40の近傍には、段部56(
図2B及び
図2C参照)が形成される。後述するように、溶着時には、第1フランジ部36の端面が段部56に当接する。
【0033】
図2Aに示すように、線材54は、1本の金属線(例えば、銅線又はステンレス線)の所定部位が互いに離間するように湾曲された円環部58と、円環部58から直径方向外方に突出した第1電極当接部60及び第2電極当接部62とを有する。第1電極当接部60と第2電極当接部62とは、互いに略180°離間している。
【0034】
円環部58は、互いに対向する略半円状の第1湾曲部58a及び第2湾曲部58bから構成される。
【0035】
第1電極当接部60は、線材54の長手方向端部同士が集束されることで構成され、第1湾曲部58aから直径方向外方に突出する第1突出部60aと、第2湾曲部58bから直径方向外方に突出する第2突出部60bとを有する。第1突出部60a及び第2突出部60bの各先端は、第1電極当接部60の先端60cとして形成される。なお、第1電極当接部60の具体的形状については、後述する。
【0036】
第2電極当接部62は、第1湾曲部58aから直径方向外方に向かう直線形状部62aと、第2湾曲部58bから直径方向外方に向かう直線形状部62bとが集束されることで構成される。すなわち、線材54の中間部分を折り返すことにより直線形状部62a、62bが形成され、第2電極当接部62が構成される。
【0037】
図2A〜
図2Cに示すように、第1フランジ部36にはリブ64a、64bが突出形成され、且つ、第2フランジ部42にはリブ64c、64dが突出形成される。リブ64a、64cには挿入孔66aが貫通形成される一方、リブ64b、64dには挿入孔66bが貫通形成される。線材54の第1電極当接部60は挿入孔66a内に露呈し、第2電極当接部62は挿入孔66b内に露呈する。
【0038】
図1に戻り、第2モータ収容孔44は、前記第1モータ収容孔38とともにモータ本体を収容する。ここで、第2モータ収容孔44と摺動孔46との間には、ゴムからなり且つ円盤形状をなすシール部材68が介在する。このシール部材68により、第2モータ収容孔44と摺動孔46とが区分されている。
【0039】
シール部材68には、貫通孔が形成される。前記モータ22の回転軸70は、この貫通孔を通って摺動孔46に突出する。回転軸70の先端部にはネジ部が刻設されており、該ネジ部にはスライダ72が螺合される。これにより、スライダ72が回転軸70に外嵌されている。なお、回転軸70は、正回転及び逆回転のいずれかが選択的に可能である。
【0040】
前記制御弁26は中空体であり、スライダ72は、コイルスプリング74内に挿入された状態で、該制御弁26の中空内部に収容される。制御弁26は、その長手方向端部に、U字型溝が形成された底壁26aを有する。前記コイルスプリング74の大径な一端は、この底壁26aに着座する。一方、小径な他端は、スライダ72の大径部72aに着座する。
【0041】
装着部50には、バイパス往路18及び摺動孔46を連通させる入口連通路76と、摺動孔46及びバイパス復路20を連通させる出口連通路78とが形成される。バイパス往路18、入口連通路76、摺動孔46、出口連通路78及びバイパス復路20により、スロットルバルブ16を迂回するバイパス通路が形成される。
【0042】
ここで、線材54の具体的形状について、
図3A〜
図3Cを参照しながら説明する。
図3Aは、比較例に係る線材54(以下、比較例に係る線材54Aともいう。)の平面図であり、
図3B及び
図3Cは、それぞれ、本実施の形態に係る流量制御装置10に組み込まれる線材54(以下、第1及び第2実施例に係る線材54B、54Cともいう。)の平面図である。なお、
図3A〜
図3Cにおいて、同じ構成要素については、同じ参照符号を付けて説明する。
【0043】
図3Aに示す比較例に係る線材54Aでは、円環部58から直径方向外方に向かって、第1突出部60a及び第2突出部60bが直線状に延在している。すなわち、金属線の両端部を折り曲げ、直径方向外方にストレートに伸ばして第1突出部60a及び第2突出部60bを形成する。そのため、先端60cからの第1突出部60a及び第2突出部60bの成す角度θaは、θa≒0°となる。
【0044】
図3Bに示す第1実施例に係る線材54Bでは、先端60cから直径方向内方に向かって、第1突出部60a及び第2突出部60bが所定の角度θbで拡開している。すなわち、第1突出部60aは、第1湾曲部58aから直径方向外方に第2突出部60bに向かって傾斜するように延在し、一方で、第2突出部60bは、第2湾曲部58bから直径方向外方に第1突出部60aに向かって傾斜するように延在する。従って、第1電極当接部60の先端60cでは、第1突出部60aの先端と、第2突出部60bの先端とが、互いに対向した状態で付勢し合って接触している。換言すれば、第1突出部60a及び第2突出部60bの各先端は、互いに内向きの力を及ぼしながら接触し合っている。
【0045】
なお、角度θbは、例えば、3°に設定される。また、
図3Bでは、説明の便宜上、角度θbを実際の角度よりも大きな角度で図示しており、従って、第1電極当接部60を誇張して図示している。
【0046】
図3Cに示す第2実施例に係る線材54Cでは、第1突出部60aが、先端60c側の第1先端部60dと、第1湾曲部58a側の第1基端部60eとで構成され、一方で、第2突出部60bが、先端60c側の第2先端部60fと、第2湾曲部58b側の第2基端部60gとで構成されている。
【0047】
第1基端部60eは、第1湾曲部58aから直径方向外方に第2基端部60gに向かって傾斜するように延在する。また、第1先端部60dは、第1基端部60eから直径方向外方に直線状に延在している。一方、第2基端部60gは、第2湾曲部58bから直径方向外方に第1基端部60eに向かって傾斜するように延在する。第2先端部60fは、第2基端部60gから直径方向外方に直線状に延在している。そして、第1先端部60d及び第2先端部60fの円環部58側から直径方向内方に向かって、第1基端部60e及び第2基端部60gが所定の角度θcで拡開している。
【0048】
そのため、第1先端部60d及び第2先端部60fは、互いに対向した状態で付勢し合って接触している。換言すれば、第1先端部60d及び第2先端部60fは、互いに内向きの力を及ぼしながら接触し合っている。そして、第1先端部60d及び第2先端部60fの各先端が第1電極当接部60の先端60cを形成する。
【0049】
なお、角度θcは、角度θbと同様に、例えば、3°に設定される。また、
図3Cでも、説明の便宜上、角度θcを実際の角度よりも大きな角度で図示しており、従って、第1電極当接部60を誇張して図示している。
【0050】
さらに、
図3B及び
図3Cにおいて、第1電極当接部60の円環部58側における第1突出部60aと第2突出部60bとの開き幅は、金属線の直径の大きさに応じて適宜調整されることが望ましい。
【0051】
以上のように構成される流量制御装置10は、次のようにして作製される。すなわち、はじめに、モータ22の回転軸70をシール部材68の貫通孔に通し、該貫通孔から露呈したネジ部に、スライダ72及びコイルスプリング74を介して制御弁26を組み付ける。次に、モータ22のモータ本体を第1モータ収容孔38に挿入する一方、制御弁26を、第2モータ収容孔44を通して摺動孔46に挿入する。さらに、第1フランジ部36と第2フランジ部42とを接近させ、係合凸部40を係合溝52に挿入する。なお、線材54は、
図2Aに示す形状、より具体的には、
図3Bに示す第1実施例に係る線材54B、又は、
図3Cに示す第2実施例に係る線材54Cの形状に変形した上で、係合溝52に予め挿入しておく。
【0052】
図2Bは、
図2A中のIIB−IIB線矢視断面において、係合凸部40の先端壁が線材54に当接した状態を示している。この時点では、第1フランジ部36の端面は段部56の頂面に当接しておらず、両面の間に所定のクリアランスが形成される。
【0053】
次に、挿入孔66a、66bの各々に絶縁性の受ピン80a、80bを挿入するとともに、電極チップ82a、82bを挿入する。すなわち、受ピン80aと電極チップ82aとで第1電極当接部60を上下方向から挟持する一方、受ピン80bと電極チップ82bとで第2電極当接部62を上下方向から挟持する。従って、受ピン80a及び電極チップ82aは、第1電極当接部60の先端60c側に対して略垂直に接触するとともに、受ピン80b及び電極チップ82bは、第2電極当接部62の先端側に対して略垂直に接触する。
【0054】
この状態で、第1ケーシング24を第2ケーシング28側に相対的に加圧するとともに、電流が電極チップ82aから線材54(54B、54C)を経由して電極チップ82bに到達するように通電を行う。
【0055】
この通電に伴って、線材54が発熱する。線材54において、第1電極当接部60及び第2電極当接部62以外の部位は、少なくとも、係合溝52の底壁及び係合凸部40の先端壁に当接している。従って、線材54からの熱が、係合溝52の各壁部と係合凸部40とに伝達される。すなわち、係合溝52の各壁部、及び、係合凸部40の外壁部の双方の温度が上昇し、前記壁部(樹脂組成物)が軟化して流動可能な状態となる。
【0056】
このため、第1ケーシング24を第2ケーシング28に対して相対的に押し込むと、
図2Cに示すように、係合凸部40が係合溝52に一層進入する。係合凸部40及び係合溝52の各壁部が軟化しているので、この進入は容易である。また、軟化した樹脂組成物は流動し、線材54を囲繞する。
【0057】
所定量の係合凸部40が係合溝52に進入すると、第1フランジ部36の端面が段部56の頂面に当接する。これにより第1フランジ部36が堰止され、その結果、係合凸部40の係合溝52へのそれ以上の進入が防止される。
【0058】
この状態に至ったことが確認されると、線材54への通電を停止する。これに伴って線材54の発熱が終了するので、軟化及び流動した樹脂組成物が硬化する。この硬化により第1ケーシング24と第2ケーシング28とが接合され、一体化されるに至る。その後、受ピン80a、80b及び電極チップ82a、82bが挿入孔66a、66bのそれぞれから取り出される。
【0059】
図4A〜
図4Cは、線材54として、線材54A〜54Cを用いた場合における通電中の電流値の時間変化を示すタイミングチャートである。
【0060】
線材54A〜54Cに通電する場合、時点t0で通電を開始し、時点t0〜t1(第1の時間帯)、t1〜t2(第2の時間帯)、t2〜t3(第3の時間帯)の各時間帯で、一定値の電流をそれぞれ流した後に、時点t3で通電を停止する。この場合、t0〜t1、t1〜t2、t2〜t3の各時間帯の順に、電流値が低下する。また、電流値は、通電時の樹脂組成物の流動等に起因して変動し、
図4A〜
図4Cでは、変動幅の上限及び下限を破線で図示している。従って、電流値は、破線間の斜線部分の範囲内で変動する。
【0061】
ここで、各時間帯における電流値の変動の許容範囲について、その上限及び下限を2本の実線でそれぞれ図示すると、比較例の線材54Aを用いた場合には、許容範囲を外れた電流が線材54Aを流れる。これは、比較例に係る線材54Aが第1突出部60a及び第2突出部60bを円環部58から単純にストレートに延在させた形状であることに起因する。
【0062】
すなわち、線材54Aの発熱により、溶融した樹脂組成物の流動が発生すれば、該流動に起因して第1突出部60a及び第2突出部60bが変位し、第1突出部60aと第2突出部60bとの間に開きが発生する。これにより、電極チップ82aに対する第1電極当接部60の先端60c側の位置ずれ(変位)が発生する。この結果、電極チップ82aと第1電極当接部60との平面視での接触面積が変化し、電流値が時間経過に伴って変動する。
【0063】
このような電流値の変動が発生すると、係合溝52の内壁と係合凸部40とを安定して溶着させることが困難になり、第1ケーシング24と第2ケーシング28とを安定に接合することが難しくなる。また、接触面積が小さくなると、電極チップ82aと第1電極当接部60との間でスパークが発生するおそれもある。この結果、流量制御装置10の不良率が増加してしまう。
【0064】
これに対して、第1実施例に係る線材54Bを用いた場合には、
図4Bに示すように、
図4Aの場合と比較して、t0〜t1、t1〜t2の各時間帯の電流値の変動が抑制され、特にt1〜t2の時間帯では電流値が許容範囲に収まる。これは、
図3Bに示すように、該線材54Bでは、第1突出部60a及び第2突出部60bの各先端が互いに対向した状態で付勢し合って接触しているので、樹脂組成物の流動等が発生しても、第1突出部60aと第2突出部60bとの開きの発生が抑制され、電極チップ82aに対する第1電極当接部60の位置ずれが抑制されるためである。
【0065】
また、線材54Bへの通電停止によって、樹脂組成物が硬化すると、軟化及び流動した樹脂組成物による熱応力が残留応力として線材54Bに作用する。前述のように、第1突出部60a及び第2突出部60bの各先端が互いに対向した状態で付勢し合っているため、これらの応力による影響を抑制することができる。
【0066】
さらに、第2実施例に係る線材54Cを用いた場合には、
図4Cに示すように、
図4A及び
図4Bの場合と比較して、t0〜t1、t1〜t2、t2〜t3の各時間帯の電流値の変動がさらに抑制され、全ての時間帯において電流値が許容範囲に収まっている。すなわち、
図3Cに示すように、第1先端部60dと第2先端部60fとが互いに対向した状態で付勢し合って接触し、第1先端部60d及び第2先端部60fが互いに内向きの力を及ぼしながら強固に接触し合っているためである。これにより、樹脂組成物の流動等が発生しても、第1突出部60aと第2突出部60bとの開きの発生が確実に抑制され、電極チップ82aに対する第1電極当接部60の位置ずれが一層抑制される。
【0067】
また、線材54Cについても、通電停止による樹脂組成物の硬化によって、軟化及び流動した樹脂組成物による熱応力が残留応力として線材54Cに作用するが、第1先端部60dと第2先端部60fとが互いに対向した状態で付勢し合っているため、これらの応力による影響を確実に抑制することができる。
【0068】
さらに、
図3B及び
図3Cに示すように、線材54Cでは、線材54Bと比較して、第1電極当接部60の円環部58側で拡開している空間の面積が小さい。これにより、線材54Cに対する通電の際に、第1電極当接部60の円環部58側における、溶融しない樹脂組成物の量を減らすことができる。この結果、硬化後の第1電極当接部60の周囲における気密性を高めることができる。
【0069】
以上のように、本実施の形態によれば、第1突出部60aの先端側を第2突出部60bの先端側に付勢させ、一方で、第2突出部60bの先端側を第1突出部60aの先端側に付勢させている。このように、各先端側を互いに対向させて内向きに接触させた場合、第1突出部60a及び第2突出部60bの各先端側に電極チップ82aを接触させ、該電極チップ82aを介して第1電極当接部60に通電し、線材54(54B、54C)を発熱させて、係合溝52の内壁と係合凸部40とを溶融させると、樹脂組成物の流動等に起因した、第1突出部60aと第2突出部60bとの開き(変位)の発生を抑制することができる。
【0070】
この結果、電極チップ82aに対する第1電極当接部60の位置ずれが抑制され、電極チップ82aと第1電極当接部60との接触面積の変化を抑制することができる。これにより、電極チップ82a及び第1電極当接部60を介して線材54に流れる電流値の変動が抑制され、係合溝52の内壁と係合凸部40とを安定に溶着し、第1ケーシング24と第2ケーシング28とを安定に接合することが可能となる。また、接触面積の低下が抑制されることで、電極チップ82aと第1電極当接部60との間でのスパークの発生も抑制することができる。従って、流量制御装置10の不良率を低減させることができる。
【0071】
また、第2実施例に係る線材54Bの場合、第1電極当接部60は、略Λ字状の形状となるので、係合溝52の内壁と係合凸部40との溶融時における第1電極当接部60の動きを効果的に抑制することができる。また、互いに対向して付勢されている第1突出部60a及び第2突出部60bの各先端側に電極チップ82aを接触させれば、接触面積の低下を効果的に抑制することができる。
【0072】
また、第2実施例に係る線材54Cの場合、第1先端部60d及び第2先端部60fが互いに対向して付勢し合うように接触し、第1基端部60e及び第2基端部60gは、第1先端部60d及び第2先端部60fから直径方向内方に向かって角度θcで拡開している。これにより、第1先端部60dと第2先端部60fとが確実に付勢され、電極チップ82aから第1電極当接部60を介して線材54Cに流れる電流値の変動を一層抑制することができる。
【0073】
なお、第1電極当接部60の円環部58側における第1突出部60aと第2突出部60bとの開き幅を、線材54B、54C(金属線)の直径の大きさに応じて変化すれば、どのような金属線であっても流量制御装置10に組み込むことが可能となる。また、係合溝52に挿入された線材54に通電して該線材54を発熱させ、係合溝52の内壁と係合凸部40とを溶着させる場合、第1〜第3の時間帯の順に線材54に流す電流値を低下させればよい。
【0074】
また、本実施の形態によれば、下記の効果も得られる。すなわち、本実施の形態では、ボルトや取付板を用いることなく第1ケーシング24と第2ケーシング28とを一体化することができる。従って、流量制御装置10を構成する部品の点数を低減することが可能となる。また、ボルトを螺回する煩雑な作業が不要となる。しかも、線材54の発熱開始から接合終了までに要する時間は、ボルトの螺回に要する時間よりも短い。このため、作業効率が向上するという利点もある。
【0075】
このように構成された流量制御装置10は、
図1中の前記給電用端子30に対して電気的に接続された図示しないエンジンコントロールユニット(ECU)の制御作用下に制御弁26が移動することで、出口連通路78の開度を調節する。すなわち、ECUは、スロットルバルブ16が全閉であるときに、内燃機関の運転状況に関する情報に基づき、出口連通路78が適切な開度となるように制御弁26を移動させる。
【0076】
具体的には、ECUは、給電用端子30を介してのモータ22への通電量を制御することで、その回転軸70を、例えば、正回転方向に所定量回転させる。この際の回転駆動力は、スライダ72を介して、制御弁26の直線運動の駆動力に変換される。従って、摺動孔46内の制御弁26が、例えば、
図1に示す位置から出口連通路78側に変位する。この際、制御弁26は、摺動孔46の内壁に摺接する。
【0077】
変位した制御弁26によって、出口連通路78の開口が所定の程度で閉塞される。これにより、出口連通路78の開度調整がなされる。すなわち、制御弁26は、流体である空気(吸気)の流通路であるバイパス通路の開度を制御する。
【0078】
吸気道14に導入された空気(吸気)は、バイパス往路18から入口連通路76を介して摺動孔46内に進入し、出口連通路78からバイパス復路20を経て吸気道14に戻る。以上のように、スロットルバルブ16が全閉状態であっても、吸気は、流量制御装置10の内部、すなわち、バイパス通路を介して吸気道14に戻される。勿論、バイパス通路を流通する吸気は、出口連通路78の開度に対応する流量に制御される。
【0079】
吸気の流量の増加が必要なときには、ECUは、モータ22の回転軸70を、例えば、逆回転方向に所定量回転させる。これに追従し、制御弁26が、摺動孔46の内壁に摺接しながら
図1に示す位置に戻る。その結果、出口連通路78の開口が全開状態となる。
【0080】
以上の動作の際、第1ケーシング24と第2ケーシング28の間に十分な気密性が保たれる。上記したように、係合溝52と係合凸部40の間で溶着不良が発生することが回避されているからである。
【0081】
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0082】
例えば、上記とは逆に、第1ケーシング24の第1フランジ部36に係合溝52を形成するとともに、第2ケーシング28の第2フランジ部42に係合凸部40を設けるようにしてもよい。