(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
国内外の自動現金取引装置や切符やチケットの券売機等の応用自動機において、装置ごと盗むことを防止する目的や地震などで装置が転倒することを防止する目的で、装置の底面と設置する床面を固定する為にアンカーを床面に打ち込み、装置底面に設けた穴からボルトにてアンカーと固定して装置を床に固定する設置形態が多い。
【0003】
しかし、ボルトにて固定する為の装置の底面の穴は、装置が製造されてから出荷を経て設置されるまでの間、穴が開いたままの状態となり、その穴から、ねずみ等の小動物が装置内に侵入し、例えば、ケーブル等の構造物をかじるなどして破損させる恐れがある。これを回避するため、キャップ状のもので穴を塞ぐ技術が一般的である。このキャップ状の物は、小動物が簡単に外せない様に考慮することや、輸送中の振動などで簡単に外れない様に考慮する必要があり、装置底面に比較的強く固定される構造を有することが不可欠である。
【0004】
近年、装置の低価格化や顧客要望などにより、装置を床面に密着して設置する場合や、装置を移動する際にフォークリフト等を利用するなどの実態から、キャップの形状や方式が限られてきた。これらの制約を回避し、条件を満たすキャップの需要が求められている。
【0005】
アンカー用穴キャップを固定する方式として、爪状の物で装置底面に引っ掛ける方式が挙げられる。爪状の引っ掛けは、主に2種類有り、装置底面側までキャップのツメを貫通させて、穴の端面に引っ掛ける方法と、キャップに設けた爪が引っ掛かる様に装置底面を段付き穴などの複雑な形状に加工して、キャップの爪を引っ掛ける方法がある。また、穴を塞ぐキャップとして、ゴム弾性部材で構成され、筐体の穴に突入する突入部の全周に筐体の穴の内周面に圧接されるリブが形成され、リブの内側に外周が対向するように硬質部材が埋め込まれたものが提案されている(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アンカー用穴キャップを固定するに際して、従来技術では、装置底面側の穴端面に引っ掛ける場合、キャップ側の引っ掛けるための爪の一部が、装置底面と床とが接する面へ出っ張るため、装置を移動する際に、フォークリフトのフォークとキャップ側の爪とが干渉し、キャップの爪を破損する恐れがある。また、設置条件によっては、装置底面が床面に密着して設置しなければならない場合があり、その場合も装置の底から飛び出したキャップの爪が、床面に押しつぶされて破損する恐れがある。
【0008】
これらを避けるべくキャップ側の爪が、装置底面からはみ出さない様にする必要があり、爪が引っかかるための形状を装置底面の穴部の板厚範囲内に設けなければならない。
【0009】
自動現金取引装置等においては、装置下部に現金を収納するため、金庫フレームになっていることが多い。金庫フレームとなっている状態とは、外装の素材が鋼鉄製となっていたり、外装の一部にコンクリートを使用したりするなど、厚板フレーム構造となっており、アンカーボルト用の単純な丸穴は設けられても、キャップのはめ込み構造を意識した、段付き穴などの複雑な形状を設けることは、鋼鉄を削る工程が増大してしまうため、コストアップとなってしまう。
【0010】
その他の方法としてキャップに爪を設けず、摩擦だけで外れない様にする方法も考えられる。しかし、この方式では、穴の寸法と、キャップの寸法のバラツキにより、キャップを固定する際の嵌合力のバラツキが大きくなり、結果的に充分なキャップを固定する際の嵌合力が確保できず、輸送中の振動で外れてしまうことや、小動物が装置床面側よりキャップを押して装置内に侵入してしまう可能性がある。
【0011】
また、特許文献1に記載されている方式では、キャップを穴に挿入した際に、リブそのものは撓むことなく、リブの長さの分だけ突入部が撓むので、キャップの挿入性や、嵌合力を確実に確保するには、キャップの寸法や穴径を厳しく管理しなければならず、キャップと穴のラップ量を大きくすることはできない。
【0012】
また、キャップの寸法や穴径の嵌め合い公差のばらつき考慮して、キャップと穴のラップ量を極端に多くして嵌合力を強くした場合、キャップを挿入する際に、必要以上に力を要し、場合によってはキャップを挿入できない状態となってしまう。
【0013】
さらに、キャップの挿入性や、嵌合力を確実に確保する為、キャップ及び、装置底面の穴側の寸法管理を厳しくした場合、製造の歩留まりが悪くなり、その結果、コストアップとなってしまう。
【0014】
また、クリアランスに余裕を持たせないことは、温度変化等の環境的な誤差の影響を受けやすいことになる。特にキャップはプラスチック等で製造されることが多く、プラスチックは、温度変化による熱膨張や熱収縮率が大きく、寸法へ影響を与える。温度による影響が発生した場合、キャップを嵌合できなくなる場合や、十分な嵌合力を得ること出来なくなる。
【0015】
本発明の目的は、穴に対するキャップの寸法のマージンを大きくしても、安定した嵌合力を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明は、挿入対象の穴を覆う大きさに形成された頭部と、前記頭部よりも外形が小さく、前記穴に挿入可能に形成された挿入部を有し、前記挿入部は、前記頭部のうち前記穴を覆う面の中心部に固定された軸と、前記軸の外周側に形成された複数のリブとから構成され、前記各リブは、前記頭部との間に空間部を保って形成され、且つ前記軸の中心からその先端までの距離が、前記穴の半径よりも大きく構成され、前記各リブの先端側と前記穴の縁との重なり代が、前記各リブの挿入時の撓み量に相当するラップ量として設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、穴に対するキャップの寸法のマージンを大きくしても、安定した嵌合力を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0020】
(第1実施例)
図1は、本発明が適用される自動現金取引装置の斜視図である。
図1において、自動現金取引装置1の底面には、複数の穴3が形成されており、円形形状の各穴3には、穴キャップとしてのアンカーキャップ2が挿入される。即ち、自動現金取引装置1を設置する前は、全ての穴3がアンカーヤップ2によって塞がれる。自動現金取引装置1を設置する場合、各穴3からアンカーキャップ2を取り外し、各穴3内にアンカーを挿入して、自動現金取引装置1を建屋の床などに固定する。なお、切符やチケットの券売機等の応用自動機も同様の方法によって固定される。
【0021】
図2は、本発明の第1実施例を示す図であって、(A)は、アンカーキャップの側面断面図であり、(B)は、アンカーキャップの下面図である。
図2において、樹脂又は金属で形成されたアンカーキャップ2は、自動現金取引装置1の底面に形成される穴(以下、
図1に示す穴3を意味する)を挿入対象として、この穴3を覆う大きさに構成された頭部4と、頭部4よりも外形が小さく、穴3に挿入可能に形成された挿入部5から構成される。頭部4は、略円盤状に形成され、外周側には円環状の突起4Aが形成されている。挿入部5は、頭部4の底面側中心部に、頭部4と一体になって形成された軸6と、軸6の外周側に放射状に形成された4本のリブ7から構成される。軸6は、円柱状に形成されて、頭部4と直交する方向に配置され、その一端が頭部4の底面側に固定されている。即ち、軸6は、頭部4のうち穴3を覆う面(頭部底面)の中心部に固定されている。この軸6の中心部には、空間部6Aが形成されている。各リブ7は、軸6の外周側に90度間隔で配置され、軸6によって片持ちで支持されている。また、各リブ7と頭部4の底面(穴3を塞ぐ面)との間には空間部8が形成されている。即ち、各リブ7は、頭部4との間に空間部8を保った状態で軸6に固定されている。
【0022】
図3は、本発明の第1実施例を示す図であって、(A)は、自動現金取引装置底面の穴に挿入されたアンカーキャップの側面断面図であり、(B)は、自動現金取引装置底面の穴に挿入されたアンカーキャップの下面図である。
図3において、アンカーキャップ2は、頭部4の直径及び直線状に配置される一対のリブ7の先端間の距離(各リブ7が穴3に挿入される前の距離)が、自動現金取引装置底面の穴3の直径よりも大きく、且つ頭部4の半径が、軸6の中心から各リブ7の先端までの距離(各リブ7が穴3に挿入される前の距離)よりも大きく形成されている。即ち、アンカーキャップ2は、頭部4が、樹脂又は金属で形成された穴3を覆う大きさに構成されると共に、各リブ7の長さ(軸6の中心からその先端までの距離)が、穴3の半径よりも大きく、各リブ7の先端側が穴3の縁に重なり、各リブ7の先端側と穴3との間に、ラップ量(重なり量)9が形成されるように構成されている。この際、各リブ7の先端側と穴3の縁との重なり代は、各リブ7の挿入時の撓み量(軸6の径方向への撓み量)に相当するラップ量9として設定されている。
【0023】
ここで、アンカーキャップ2の軸6の先端側を穴3内に挿入し、各リブ7の先端側が穴3の縁に重なった状態で、頭部4の表面を力10で垂直下方に押圧すると、垂直上方に作用する力11に抗して、各リブ7が軸6と共に穴3内に挿入され、各リブ7が撓むことによって穴3に嵌合する。この際、各リブ7は、頭部4との間に空間部8を保って軸6に固定され、頭部4と直接連結されていないので、軸6が穴3内に挿入される過程で、破線で示すように、各リブ7の先端側が、穴3の縁に沿って摩擦しながら上方又は下方にフレキシブルに移動し、その後、各リブ7の先端側が穴3の側面と嵌合する。即ち、各リブ7は、全体が撓み、板ばねのように反発することで、穴3の側面に押し当てられて、穴3と嵌合し、頭部4の突起4Aが自動現金取引装置底面に略接触する状態になる。これにより、穴3にアンカーキャップ2が保持され、各リブ7と穴3との間に作用する嵌合力により、時間経過や輸送中の振動で、アンカーキャップ2が穴3から抜けるリスクを低減できる他、ネズミ等の小動物が穴3から侵入するのを防止することができる。
【0024】
また、各リブ7の先端側と穴3との間のラップ量9の寸法について、従来技術よりも幅広い範囲のマージン設定が可能となる。そのため、製造時の寸法管理が容易となり、製造コストを抑えることが出来る。ラップ量9のマージンを大きく設定できることは、温度等の環境変化にも有効である。アンカーキャップ2に選定する材料として、大量生産することを考慮し、プラスチック製を選定するケースが多い。プラスチックは、温度により、膨張または収縮する量が、一般的に金属などと比べて大きくなる。膨張または収縮により、各リブ7の外形寸法12が変われば、嵌合力に影響し、嵌合力が弱くなれば、ネズミ等の小動物の侵入に対しての耐性が低くなる。逆に嵌合力が強くなれば、アンカーキャップ2を穴3へ挿入する際に必要な押し込む力10が多く必要となり、アンカーキャップ2を挿入することが困難となる。よって、ラップ量9のマージンが大きく確保出来ることは有効である。
【0025】
なお、各リブ7が頭部4に直接繋がり、各リブ7と頭部4との間に空間部8が存在しない構造であった場合、各リブ7を軸6と共に穴3内に挿入した際の、各リブ7の可動量が減少し、各リブ7と穴3との間に作用する嵌合力が弱くなり、アンカーキャップ2が穴3から抜けやすくなる。
【0026】
本実施例によれば、穴3に対するアンカーキャップ2の寸法のマージンを大きくしても、安定した嵌合力を確保することができ、結果として、自動現金取引装置1の使用実態の制約を損なうこと無く、アンカーキャップ2を安価に製造できると共に、小動物の侵入を防ぐことができる。また、アンカーキャップ2をゴム弾性体で構成することなく、樹脂又は金属で構成しても、アンカーキャップ2を穴3に挿入する際には、リブ7そのものが撓むので、各リブ7の先端側と穴3との間のラップ量9を大きくすることができる。また、各リブ7が軸6の外周側に等間隔に配置されているので、より安定した嵌合力を得ることができる。
【0027】
図4は、本発明の第2実施例を示すアンカーキャップの下面図である。本実施例は、リブ7の代わりに、軸6の外周側に、4個のリブ13を形成したものであり、他の構成は、第1実施例と同様である。
【0028】
図4において、軸6の外周側には、4個のリブ13が放射状に形成されている。各リブ13は、軸6の中心と各リブ7の後端側の中心とを結ぶ仮想線14を基準に、軸6から離れるに従って一定方向に傾斜した形状に形成されている。即ち、各リブ13は、軸6の中心から離れるに従って順次湾曲した湾曲形状であって、軸6の中心を通る仮想線14から一定の方向に傾斜した形状に形成されている。各リブ13は、軸6の外周側に90度間隔で配置されている。
【0029】
本実施例では、アンカーキャップ2を穴3へ挿入する際に、穴3とリブ13との間に作用する嵌合力に比例して、両者の間に作用する摩擦する力が大きくなり、挿入が困難な状態となるのを防止するために、各リブ13が、一定の方向に傾斜した形状に形成されている。
【0030】
アンカーキャップ2を穴3へ挿入する際には、各リブ13の先端側から軸6の中心の方向に向かう押す力15が発生する。この際、リブ13が撓むことにより、穴3の側面とリブ13の先端側端面とが摩擦し、摩擦による押す力15が嵌合力となる。ここで、第1実施例のリブ7の様に、各リブ7が軸6を中心に直線状に形成されている場合、穴3の側面から摩擦力を受けるリブ7の先端側端点と、軸6の中心を介して反対側に配置されるリブ7の先端側端点とが同一直線上に配置されるため、穴3の側面から摩擦力を受けてもリブ7が撓み難く、ラップ量9のマージンが少なくなってしまう。これに対して、本実施例におけるリブ13は、穴3の側面から摩擦力を受けた場合、支点となる軸6とリブ13との接合点(リブ13の後端側端点)と、作用点であるリブ13の先端側端点とを結ぶ直線が軸6の中心からずれた方向に位置し、各リブ13の先端側端点が、軸6の中心を介して反対側のリブ13の先端側端点と同一直線上に形成されていない。このため、各リブ13は、穴3の側面から、軸6の中心方向に作用する摩擦力15を受けた場合、各リブ13が、バネの様に撓み、第1実施例よりもラップ量9のマージンを広く確保することが出来る。
【0031】
図5は、第2実施例におけるアンカーキャップの要部斜視図である。
図5において、各リブ13の先端側のうち頭部4から離れた領域には、各リブ13の先端側端面から軸6の中心に向かって漸次傾斜した傾斜面16が形成されている。即ち、各リブ13の先端側下部には、各リブ13の先端側を穴3に挿入する際に接触する点の軌跡に合わせて、傾斜面(テーパ面)16が形成されている。
【0032】
各リブ13の先端側を穴3に挿入する際には、各リブ13の先端17が穴3との摩擦により撓みながら挿入される。この際、各リブ13は、各リブ13の先端側下部に形成された傾斜面16が、穴3の側面に接触しながら滑らかに徐々に移動することになる。即ち、傾斜面16は、各リブ13の先端側を穴3に挿入する際に、各リブ13の先端17と穴3との間に作用する摩擦力を軽減するように作用する。このため、第1実施例よりも、アンカーキャップ2を穴3に容易に挿入することができる。
【0033】
本実施例によれば、第1実施例と同様の効果を奏することができると共に、第1実施例よりも、ラップ量9のマージンを広く確保することができると共に、アンカーキャップ2を穴3に容易に挿入することができる。
【0034】
図6は、本発明の第3実施例を示す図であって、(A)は、アンカーキャップの側面断面図であり、(B)は、アンカーキャップの下面図である。
図6において、樹脂又は金属で形成されたアンカーキャップ2は、自動現金取引装置1の底面に形成される穴3を覆う頭部18と、頭部18よりも外形が小さく、穴3に挿入可能に形成された挿入部19から構成される。頭部18は、略円盤状に形成され、外周側には複数の切欠き20が形成されている。各切欠き20は、90度間隔で配置されている。挿入部19は、頭部18の底面側中心部に、頭部18と一体となって略円筒状(リング状)に形成された軸21と、軸21の外周側に、軸21から放射状に形成された4個のリブ22から構成される。各リブ22は、軸21の外周側に90度間隔であって、頭部18の切欠き20を臨む領域に配置されている。即ち、各リブ22が可動できるように、各リブ22と頭部18とが繋がらないように、頭部18には、切欠き20が空間部として形成されている。
【0035】
頭部18の直径及び直線状に配置される一対のリブ22の先端間の距離(各リブ22が穴3に挿入される前の距離)が、自動現金取引装置底面の穴3の直径よりも大きく、且つ頭部18の半径が、軸21の中心から各リブ22の先端までの距離(各リブ22が穴3に挿入される前の距離)よりも大きく形成されている。即ち、アンカーキャップ2は、頭部18が、樹脂又は金属で形成された穴3を覆う大きさに構成されると共に、各リブ22の長さ(軸21の中心からその先端までの距離)が、穴3の半径よりも大きく、各リブ22の先端側が穴3の縁に重なり、各リブ22の先端側と穴3との間に、ラップ量(重なり量)が形成されるように構成されている。この際、各リブ22の先端側と穴3の縁との重なり代は、各リブ22の挿入時の撓み量(軸21の径方向への撓み量)に相当するラップ量として設定されている。
【0036】
ここで、アンカーキャップ2の軸21の先端側を自動現金取引装置底面の穴3内に挿入し、各リブ22の先端側が穴3の縁に重なった状態で、頭部18の表面を垂直下方に押圧すると、各リブ22が軸21と共に穴3内に挿入され、各リブ22が軸21の中心に向かって撓むと共に、各リブ22が固定された部位(軸21のうち頭部18の切欠き20を臨む部位)の軸21が、軸21の中心に向かって撓むことによって、各リブ22と軸21の一部にばね力が発生し、各リブ22が穴3に嵌合する。
【0037】
本実施例によれば、第1実施例と同様の効果を奏することができると共に、各リブ22は、軸21の中心からの長さが各リブ7、13よりも短く、軸21の長さ方向の両端(撓ませる部分の両端)が軸21に固定されているので、第1実施例〜第3実施例よりも大きな嵌合力が必要な場合に適している。
【0038】
図7は、本発明の第4実施例を示す図であって、(A)は、アンカーキャップの側面断面図であり、(B)は、アンカーキャップの下面図である。
図7において、樹脂又は金属で形成されたアンカーキャップ2は、自動現金取引装置1の底面に形成される穴3を覆う頭部4と、頭部4よりも外形が小さく、穴3に挿入可能に形成された挿入部23から構成される。挿入部23は、頭部4の底面側中心部に、頭部4と一体となって略円柱状に形成された軸24と、軸24の外周側に、軸24から放射状に形成された4個のリブ25から構成される。各リブ25は、波形状、即ちバネ形状に形成され、軸24の外周側に90度間隔で配置されている。即ち、各リブ25は、その長さ方向(軸24の径方向)に可動できるように、伸縮自在に形成されている。
【0039】
頭部4の直径及び直線状に配置される一対のリブ25の先端間の距離(各リブ25が穴3に挿入される前の距離)が、自動現金取引装置底面の穴3の直径よりも大きく、且つ頭部4の半径が、軸24の中心から各リブ25の先端までの距離(各リブ25が穴3に挿入される前の距離)よりも大きく形成されている。即ち、アンカーキャップ2は、頭部4が、樹脂又は金属で形成された穴3を覆う大きさに構成されると共に、各リブ25の長さ(軸24の中心からその先端までの距離)が、穴3の半径よりも大きく、各リブ25の先端側が穴3の縁に重なり、各リブ25の先端側と穴3との間に、ラップ量(重なり量)が形成されるように構成されている。この際、各リブ25の先端側と穴3の縁との重なり代は、各リブ25の挿入時の撓み量(軸24の径方向への撓み量)に相当するラップ量として設定されている。
【0040】
ここで、アンカーキャップ2の軸24の先端側を自動現金取引装置底面の穴3内に挿入し、各リブ25の先端側が穴3の縁に重なった状態で、頭部4の表面を垂直下方に押圧すると、各リブ22が軸24と共に穴3内に挿入され、各リブ25が軸24の中心に向かって撓む(収縮する)ことによって、各リブ25にばね力が発生し、各リブ25が穴3に嵌合する。この際、各リブ25は、ばね形状に形成されているので、各リブ25が撓み始めるときの力と、各リブ25が撓みきったときの力の差を、一定に近づけることができる。
【0041】
また、リブの撓みだけで、嵌合力を得る場合、リブの材質の展延性によって変形量が決まるが、各リブ25を、ばね形状に形成することで、展延性を分散することができ、より多くの変形量を得ることができる。このため、本実施例は、リブの材質を変更せず、アンカーキャップ2と穴3とのクリアランスをさらに広く確保したい場合に有効である。例えば、穴3の穴径寸法(直径)が、近似寸法ではあるが、意図的に何種類も存在する場合、リブ25の変形量を幅広く確保することで、実現可能である。
【0042】
本実施例によれば、第1実施例と同様の効果を奏することができると共に、第1実施例〜第3実施例よりも、リブの材質を変更せず、アンカーキャップ2と穴3とのクリアランスをさらに広く確保したい場合に有効である。
【0043】
図8は、本発明の第5実施例を示す図であって、(A)は、アンカーキャップの側面断面図であり、(B)は、アンカーキャップの下面図である。
図8において、樹脂又は金属で形成されたアンカーキャップ2は、自動現金取引装置1の底面に形成される穴3を覆う頭部4と、頭部4よりも外形が小さく、穴3に挿入可能に形成された挿入部28から構成される。挿入部28は、頭部4の底面側中心部に、頭部4と一体となって略円柱状に形成された軸29と、軸29の外周側に、軸29から放射状に形成された8個のリブ30、31から構成される。軸29は、円柱状に形成されて、頭部4と直交する方向に配置され、その一端が頭部4の底面側に固定されている。各リブ30、31は、軸29の外周側に90度間隔で交互に配置され、軸29によって片持ちで支持されている。各リブ30は、軸29の長さ方向(軸方向)に沿った長さが、各リブ31の長さよりも長く形成されている。また、各リブ30、31と頭部4の底面との間に空間部32が形成されている。
【0044】
頭部4の直径及び直線状に配置される一対のリブ30又は31の先端間の距離(各リブリブ30又は31が穴3に挿入される前の距離)が、自動現金取引装置底面の穴3の直径よりも大きく、且つ頭部4の半径が、軸29の中心から各リブ30、31の先端までの距離(各リブリブ30又は31が穴3に挿入される前の距離)よりも大きく形成されている。即ち、アンカーキャップ2は、頭部4が、樹脂又は金属で形成された穴3を覆う大きさに構成されると共に、各リブ30、31の長さ(軸29の中心からその先端までの距離)が、穴3の半径よりも大きく、各リブ30、31の先端側が穴3の縁に重なり、各リブ30、31の先端側と穴3との間に、ラップ量(重なり量)が形成されるように構成されている。この際、各リブ30、31の先端側と穴3の縁との重なり代は、各リブ30、31の挿入時の撓み量(軸29の径方向への撓み量)に相当するラップ量として設定されている。
【0045】
ここで、アンカーキャップ2の軸29の先端側を自動現金取引装置底面の穴3内に挿入し、各リブ30の先端側が穴3の縁に重なった状態で、頭部4の表面を垂直下方に押圧すると、各リブ30が軸29と共に穴3内に挿入され、各リブ30が、穴3の側面との摩擦により軸29の中心に向かって撓み、その後、さらに、各リブ30が穴3内に挿入されると、各リブ31が、穴3の側面との摩擦により軸29の中心に向かって撓むことによって、各リブ30、31に段階的にばね力が発生し、各リブ30、31が穴3に嵌合する。即ち、アンカーキャップ2の挿入量が増加するに従って、穴3に挿入されるリブ30、31の本数が多くなることによって、穴3と各リブ30、31との間に作用する嵌合力が段階的に大きくなる。
【0046】
本実施例では、リブとして、長さが異なる2種類のリブ30、31を軸29に固定しているが、長さが異なる3種類以上のリブを軸29に放射状に固定することもできる。この場合、アンカーキャップ2の嵌合力を段階的に変化させたい場合に有効である。例えば、装置生産中に、埃やねずみ等の小動物の侵入は防ぎたいが、アンカーキャップ2を外す可能性がある場合を想定する。装置生産初期には、アンカーキャップ2の挿入量を、リブ30の位置までとすれば、装置生産中にアンカーキャップ2を取り外す場合に、少ない力で簡単に取り外しができる。そして、装置生産完了時に、リブ31の位置まで完全に嵌め込めば、本来求めていた嵌合力を得ることができる。
【0047】
本実施例によれば、第1実施例と同様の効果を奏することができる共に、アンカーキャップ2の嵌合力を段階的に変化させることができる。この際、アンカーキャップ2の挿入量を、リブ30の位置までとすれば、装置生産中にアンカーキャップ2を取り外す場合に、少ない力で簡単に取り外しができる。
【0048】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、リブ7、13、22、25、30、31としては、2個以上のものでも、本発明を適用することができる。また、本発明は、切符やチケットの券売機等の応用自動機にも適用することができる。さらに、アンカーキャップ2の頭部4、18の表面に、ドライバー等の取り外し工具の先端側が挿入可能な穴又は溝を形成し、穴3に嵌合されたアンカーキャップ2を取り外す際に、アンカーキャップ2の頭部4、18の表面に形成された穴又は溝に、取り外し工具の先端側を挿入することで、アンカーキャップ2を穴3から容易に取り外すことができる。上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。