(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6533410
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】ウエブの皺延ばし装置
(51)【国際特許分類】
B65H 23/26 20060101AFI20190610BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20190610BHJP
B65H 23/025 20060101ALI20190610BHJP
【FI】
B65H23/26
B05C13/02
B65H23/025
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-85932(P2015-85932)
(22)【出願日】2015年4月20日
(65)【公開番号】特開2016-204093(P2016-204093A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000240341
【氏名又は名称】株式会社ヒラノテクシード
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】小山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】若林 悟
(72)【発明者】
【氏名】野須 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】藤原 康晃
【審査官】
冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−174378(JP,A)
【文献】
特開昭59−212347(JP,A)
【文献】
実開昭62−103563(JP,U)
【文献】
特開2001−72291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H23/00−23/16、23/24−23/34、27/00
B05C7/00−21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエブの走行路上に配され、前記ウエブの走行方向に沿って回転しつつ、前記ウエブの一方の片面の両耳部に接触する左右一対の粘着ローラを有し、前記一方の片面の前記粘着ローラの粘着力によってのみ前記ウエブを支持し、
前記走行路上に配され、前記走行方向に沿って回転しつつ、前記ウエブにおける前記一方の片面とは反対側の他方の片面の両耳部に接触する左右一対の粘着ローラを有し、前記他方の片面の前記粘着ローラの粘着力によってのみ前記ウエブを支持し、
前記ウエブの前記一方の片面に配された前記粘着ローラより、前記ウエブの前記他方の片面に配された前記粘着ローラが下流に配されている、
ウエブの皺延ばし装置。
【請求項2】
前記粘着ローラの回転が、前記走行方向に沿うように配されている、
請求項1に記載のウエブの皺延ばし装置。
【請求項3】
前記粘着ローラが、前記走行方向に対し前記ウエブの外側に傾斜して回転するように配されている、
請求項1に記載のウエブの皺延ばし装置。
【請求項4】
左右一対の前記粘着ローラの間に一又は複数の中粘着ローラが配され、
前記中粘着ローラが、前記走行方向に沿って回転しつつ、前記ウエブの一方の片面に接触する、
請求項1に記載のウエブの皺延ばし装置。
【請求項5】
左右一対の前記粘着ローラの間に一又は複数の中粘着ローラが配され、
前記中粘着ローラが、前記走行方向に沿って回転しつつ、前記ウエブの他方の片面に接触する、
請求項1に記載のウエブの皺延ばし装置。
【請求項6】
前記粘着ローラの粘着力が、10hpaから200hpaである、
請求項1に記載のウエブの皺延ばし装置。
【請求項7】
前記粘着ローラが、ゴムローラである、
請求項1に記載のウエブの皺延ばし装置。
【請求項8】
前記ウエブが、金属箔又はフィルムである、
請求項1に記載のウエブの皺延ばし装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブの皺延ばし装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行中のウエブに発生する皺を延ばすために、熱処理装置の入口に皺を延ばすための皺延ばし装置が配されている。この皺延ばし装置は、例えば、ウエブの下面にバックアップロールが配され、ウエブの上面の両耳部に皺を延ばすための左右一対のローラが配され、このローラとバックアップロールとによってウエブを挟むことによって、ウエブの皺を延ばしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−91560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のウエブの皺延ばし装置においては、ウエブをローラとバックアップロールとによって挟む必要があるため、ウエブの両面に塗工液が塗工されている場合には、用いることができないという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、バックアップロールを用いることなくウエブの皺を延ばすことができるウエブの皺延ばし装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ウエブの走行路上に配され、前記ウエブの走行方向に沿って回転しつつ、前記ウエブの一方の片面の両耳部に接触する左右一対の粘着ローラを有し、前記一方の片面の前記粘着ローラの粘着力によってのみ前記ウエブを支持し、前記走行路上に配され、前記走行方向に沿って回転しつつ、前記ウエブにおける前記一方の片面とは反対側の他方の片面の両耳部に接触する左右一対の粘着ローラを有し、前記他方の片面の前記粘着ローラの粘着力によってのみ前記ウエブを支持し、
前記ウエブの前記一方の片面に配された前記粘着ローラより、前記ウエブの前記他方の片面に配された前記粘着ローラが下流に配されている、ウエブの皺延ばし装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ウエブの片面の両耳部に接触する左右一対の粘着ローラによって皺を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態における塗工システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態のウエブWの皺延ばし装置10について
図1〜
図3に基づいて説明する。本実施形態の皺延ばし装置10は、
図1に示す塗工システム1に用いられるものである。なお、長尺状のウエブWは、金属箔である。
【0010】
(1)塗工システム1の構成
図1に示す塗工システム1について説明する。塗工システム1は、ウエブWの両面に塗工液を塗工し、その後に熱処理を行うものであって、ウエブWの走行路の上流側から第1塗工装置2、案内ローラ3、第2塗工装置4、熱処理装置5、案内ローラ6が配され、本実施形態の皺延ばし装置10は、第2塗工装置4と熱処理装置5との間に設けられている。
【0011】
第1塗工装置2は、ウエブWを一定の走行速度で走行させるバックアップロール201、バックアップロール201の側面に設けられたダイ202、塗工タンク203、ポンプ204とを有する。ポンプ204は、塗工タンク203に貯留された塗工液をダイ202内部の液溜め部205に送り、ダイ202は、液溜め部205からスリット状の吐出口206を通してバックアップロール201の外周面を走行するウエブWの上面に塗工液を塗工する。
【0012】
案内ローラ3は、上面が塗工されたウエブWを水平な走行路に沿って走行させる。なお、案内ローラ3は、塗工液が塗工されていないウエブWの下面に接触しつつ回転する。
【0013】
第2塗工装置4は、ウエブWの走行路の下面に配されたものであって、第1塗工装置2と同じ構造である。ポンプ403が、塗工タンク402に貯留された塗工液をダイ401内部の液溜め部404に送り、ダイ401は、液溜め部404からスリット状の吐出口405を通して塗工液をウエブWの下面に塗工する。
【0014】
皺延ばし装置10は、ウエブWの上面と下面にそれぞれ塗工された塗工液に接触しないようにしつつウエブWの皺を延ばしながらウエブWを走行させ、ウエブWを熱処理装置5に案内する。皺延ばし装置10については後から詳しく説明する。
【0015】
熱処理装置5は、熱処理室501の前面にウエブWの搬入口504が開口し、後面にウエブWの搬出口505が開口している。熱処理室501内の走行路の上方には所定間隔毎に上ノズル502が配され、走行路の下方には下ノズル503が、上ノズル502と千鳥状になるように配されている。熱処理室501に搬入されたウエブWは、上ノズル502からの熱風と下ノズル503からの熱風によって上下面が熱処理され搬出される。熱処理装置5から搬出された熱処理後のウエブWは、案内ローラ6を経て次の工程に送られる。
【0016】
(2)皺延ばし装置10の構成
次に、皺延ばし装置10の構成について
図2と
図3に基づいて説明する。皺延ばし装置10は、左右一対の上粘着ローラ12と、左右一対の下粘着ローラ14とを有している。
【0017】
左右一対の上粘着ローラ12,12は、上回転軸16によって同軸に取り付けられ、上モータ18によってウエブWの走行速度に合わせて、かつ、走行方向に沿って回転する。左右一対の上粘着ローラ12,12が取り付けられている位置は、ウエブWの両耳部であって、塗工液が塗工された塗工部20の両側の非塗工部に位置している。左右一対の上粘着ローラ12,12は、ゴムローラであって、その表面に10〜200hpaの粘着力を有している。なお、粘着力は、JIS−K−6256に準じた値である。
【0018】
左右一対の下粘着ローラ14,14は、上粘着ローラ12,12よりも下流に配され、下回転軸22によって同軸に回転し、かつ、下モータ24によってウエブWの走行速度に合わせて回転する。左右一対の下粘着ローラ14,14の取り付け位置は、ウエブWの下面における両耳部であって、下面の塗工部の両側の非塗工部に位置している。また、下粘着ローラ14も、ゴムローラよりなり、表面に10〜200hpaの粘着力を有している。
【0019】
(3)皺延ばし装置10の役割
次に、皺延ばし装置10の役割について説明する。第1塗工装置2、第2塗工装置4によって両面が塗工されたウエブWが、熱処理装置5に搬入される前に皺を延ばして均等に熱処理させる必要がある。そのため、先ず、ウエブWの上面に関して、左右一対の上粘着ローラ12,12が、塗工されていないウエブWの両耳部に粘着し、その粘着力によりウエブWを引っ張って塗工部20を含めて皺を延ばす。そのため、バックアップロールが不要となる。
【0020】
次に、ウエブWが走行しウエブWの下面にある左右一対の下粘着ローラ14,14が、ウエブWの下面で塗工されていない両耳部に粘着し、塗工部20を含めて皺を再び延ばす。
【0021】
これによって、熱処理装置5に搬入される前にウエブWの皺が延ばされ、均等に塗工部20を乾燥させることができる。
【0022】
(4)効果
本実施形態によれば、皺延ばし装置10の上粘着ローラ12,12と下粘着ローラ14,14が、ウエブWにおける塗工液が塗工されていない両耳部に粘着して皺を延ばし、熱処理装置5で熱処理する場合に皺がなく均等にウエブWの塗工部20を加熱できる。
【0023】
また、上粘着ローラ12と下粘着ローラ14は、粘着力があるためその粘着力によって皺を延ばすことができ、従来のようにバックアップロールで挟み込んで皺を延ばす必要がない。そのため、ウエブWの上下面に塗工液が塗工されていても皺を延ばすことができる。
【0024】
(5)変更例1
次に、上記実施形態の皺延ばし装置10の変更例1について
図4に基づいて説明する。ウエブWの上下面に左右の塗工部20,20と非塗工部28を有するストライプ塗工を行う場合には、この左右の塗工部20,20の間にある非塗工部28と接触するように中粘着ローラ26を設ける。この中粘着ローラ26は、上粘着ローラ12や下粘着ローラ14と同様に粘着力を有し、非塗工部28に接触して粘着し、中央部分の皺を延ばす。
【0025】
なお、下粘着ローラ14,14の間にも中粘着ローラ26を設けてもよい。
【0026】
また、この変更例1では非塗工部28は1箇所であったが、非塗工部28が複数あるストライプ塗工の場合には、各非塗工部28に対応して中粘着ローラ26を上粘着ローラ12や下粘着ローラ14にそれぞれ設けてもよい。
【0027】
(6)変更例2
次に、変更例2について
図5に基づいて説明する。上記実施形態では、上粘着ローラ12と下粘着ローラ14の回転は、走行方向に沿って回転していた。これに代えて、変更例2では、左右一対の上粘着ローラ12,12が走行方向に対しウエブWの外側にθ°傾斜し、ウエブWを拡布するように配する。但し、0°<=θ°<=45°である。なお、「走行方向に対しウエブWの外側に傾斜する」とは、走行方向の下流ほど上粘着ローラ12と下粘着ローラ14が外側に広がる状態を意味している。また、下粘着ローラ14,14も同様に走行方向に対しウエブWの外側にθ°傾斜している。なお、左右一対の上粘着ローラ12,12と左右一対の下粘着ローラ14,14の角度を変えるために、粘着ローラ毎にモータ30を設け、個々に走行方向に対し傾斜させつつ回転させる。
【0028】
これにより、ウエブWが上粘着ローラ12と下粘着ローラ14とによって拡布され、皺をより延ばすことができる。
【0029】
(7)その他の変更例
上記実施形態では、ウエブWとして金属箔を用いたが、これに代えてフィルムなどの長尺状のウエブを加工するときも皺延ばし装置10を用いることができる。
【0030】
また、上記実施形態では、塗工システム1に皺延ばし装置10を用いたが、これに限らず他のシステムに本実施形態の皺延ばし装置10を用いてもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、ウエブWの上下面に上粘着ローラ12と下粘着ローラ14を設けたが、これに代えて上粘着ローラ12のみを設けてもよく、また、下粘着ローラ14のみを設けてもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、ウエブWの上下面に上粘着ローラ12と下粘着ローラ14をずらせて設けたが、これに代えて、上下に同じ位置に設け、上粘着ローラ12と下粘着ローラ14でウエブWを挟んでもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、ウエブWが水平に走行する場合で説明したが、これに代えてウエブWの走行方向が上下方向に傾斜していたり、ウエブWを垂直方向に走行させ上粘着ローラ12と下粘着ローラ14とをそれぞれウエブWの一方の片面と他方の片面に配してもよい。
【0034】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
10・・・走行装置、12・・・上粘着ローラ、14・・・下粘着ローラ、16・・・上回転軸、18・・・上モータ、22・・・下回転軸、24・・・下モータ、26・・・中粘着ローラ