(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6533411
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】バスバ組付け型電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20190610BHJP
【FI】
G01R15/20 C
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-88173(P2015-88173)
(22)【出願日】2015年4月23日
(65)【公開番号】特開2016-206015(P2016-206015A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年4月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】奥塚 元
【審査官】
小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−166528(JP,A)
【文献】
実開平3−83418(JP,U)
【文献】
特開平6−276646(JP,A)
【文献】
特開2008−82736(JP,A)
【文献】
特開2013−170984(JP,A)
【文献】
特開2015−94603(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0050219(US,A1)
【文献】
特開2011−53061(JP,A)
【文献】
特開2013−113631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
H02G 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスバ組付け型電流センサであって、
ケーシング、及び、前記ケーシングの複数の端子支持部にそれぞれ支持された複数のバスバを有するバスバモジュールと、
樹脂モールド、及び、複数の前記バスバに対応して前記樹脂モールド内に設けられた複数のセンサ部を有するセンサモジュールと、を備えており、
前記センサモジュールには、それぞれの前記センサ部の近傍に、前記バスバが挿通される挿通孔が同一方向に複数形成され、
前記センサモジュール及び前記バスバモジュールの少なくとも一方に、前記センサモジュールと前記バスバモジュールとを分離可能に仮固定する仮固定部が設けられ、
前記センサモジュール及び前記バスバモジュールに、前記センサモジュール及び前記バスバモジュールを一体的に固定する本固定部がそれぞれ設けられ、
前記センサモジュールおよび前記バスバモジュールは、互いに仮固定されるまでは別体であり、複数の前記センサ部を検査するための複数の検査用バスバをそれぞれ前記挿通孔に挿入可能に構成されていることを特徴とするバスバ組付け型電流センサ。
【請求項2】
前記本固定部が、前記樹脂モールドに形成された、外部装置への固定用のセンサ側連通ネジ孔と、前記ケーシングに形成された、前記外部装置への固定用のバスバ側連通ネジ孔と、を含み、
前記センサ側連通ネジ孔と前記バスバ側連通ネジ孔とは、前記仮固定部によって前記センサモジュールと前記バスバモジュールとが仮固定された状態で連通することを特徴とする請求項1に記載のバスバ組付け型電流センサ。
【請求項3】
前記仮固定部が、前記センサモジュール及び前記バスバモジュールの一方に形成された被係合部と、前記センサモジュール及び前記バスバモジュールの他方に形成された、前記被係合部と係合する係合部と、を含んでいることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバスバ組付け型電流センサ。
【請求項4】
前記仮固定部が、前記センサ部の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のバスバ組付け型電流センサ。
【請求項5】
前記樹脂モールドは、所定方向に延びる梁部を有すると共に、前記梁部の両端に脚部をそれぞれ有しており
複数の前記センサ部は、前記梁部において前記所定方向に配置され、
前記仮固定部は、前記梁部に形成され、
前記本固定部は、前記脚部に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のバスバ組付け型電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバ組付け型電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばハイブリッドカーや電気自動車には、バッテリ電流やモータ駆動電流を測定するためにホール素子等を用いて、各種電気機器等を接続する導電部材としてのバスバに流れる電流を測定する電流センサが搭載されている。
【0003】
このような電流センサに関する技術は種々提案されている(例えば、特許文献1等)。
【0004】
ところで、このような電流センサとセンシング対象のバスバとを樹脂でモールディングして一体化し、実装時の取扱容易性や振動などに対する耐久性等を高めたバスバ一体型の電流センサが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−238580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、電流センサの特性を検査する一般的なチェッカ(検査装置)は、各電流センサの特性検査の際に、検査用のバスバを電流センサに挿入して検査を行う必要がある。
【0007】
そのため、電流センサとバスバが樹脂モールドで一体化されている従来の構成では、チェッカ自体が備えるバスバを電流センサに挿入することができないので、一般的なチェッカを用いた特性検査を行うことができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、実装前の電流センサの検査を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るバスバ組付け型電流センサは、樹脂モールド内に電流センサを備えるセンサ部と、ケーシングに収容されて、前記センサ部の前記電流センサの近傍に配置されるバスバを備えるバスバ部と、を備え、前記センサ部と前記バスバ部の少なくとも一方には、着脱可能な状態で互いに仮固定する仮固定部を有し、前記センサ部および前記バスバ部には、互いに一体的に固定する固定部を有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、樹脂モールド内に電流センサを備えるセンサ部と、ケーシングに収容されて、センサ部の電流センサの近傍に配置されるバスバを備えるバスバ部とを備え、仮固定部によって仮固定されるまでは、それぞれを別体として取り扱うことができる。そのため、一般的なチェッカが備えるバスバをセンサ部の電流センサに挿入して、電流センサの特性の検査を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係るバスバ組付け型電流センサの組付け後の構成例を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係るバスバ組付け型電流センサの組付け前の構成例を示す斜視図である。
【
図3】実施の形態に係るバスバ組付け型電流センサのセンサ部の構成例を示す正面図である。
【
図4】実施の形態に係るバスバ組付け型電流センサのバスバ部の構成例を示す正面図である。
【
図5】実施の形態に係るバスバ組付け型電流センサのセンサ部の位置合わせ部(a)とバスバ部の位置合わせ部(b)を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一例としての実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。ここで、添付図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略されている。なお、ここでの説明は本発明が実施される最良の形態であることから、本発明は当該形態に限定されるものではない。
【0013】
[実施の形態に係るバスバ組付け型電流センサ]
図1から
図5を参照して、実施の形態に係るバスバ組付け型電流センサ1の構成例について説明する。
【0014】
ここで、
図1は実施の形態に係るバスバ組付け型電流センサ1の組付け後の構成例を示す斜視図、
図2はバスバ組付け型電流センサ1の組付け前の構成例を示す斜視図である。
【0015】
また、
図3はバスバ組付け型電流センサ1のセンサ部10の構成例を示す正面図、
図4はバスバ組付け型電流センサ1のバスバ部20の構成例を示す正面図である。
【0016】
図1および
図2に示すように、実施の形態に係るバスバ組付け型電流センサ1は、センサ部10とバスバ部20とから構成されている。
【0017】
図2および
図3等を参照して、センサ部10の構成例について説明する。
【0018】
センサ部10は、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS:Poly Phenylene Sulfide Resin)やポリブチレンテレフタレート(PBT:polybutylene terephthalate)等で形成される樹脂モールド10A内に電流センサSN(SN1〜SN3)を備えている。
【0019】
本実施の形態において、樹脂モールド10Aは、水平方向に延びる梁部10Bの左右両端に脚部12a、12bを設けた構成となっている。
【0020】
脚部12a、12bには、センサ部10が後述する仮固定部により仮固定された状態で、センサ部10とバスバ部20とを共締めする連通ネジ孔13a、13bが穿設されている。
【0021】
本実施の形態においては、3個の電流センサSN1〜SN3が梁部10Bの水平方向に所定間隔で配置されている。
【0022】
図3に示す各電流センサSN1〜SN3は、一部に切欠きを有する筒状の磁性体150bと、切欠き部に位置するように基板100から垂下状態で保持されるホール素子150aとから構成されている。
【0023】
なお、電流センサSN1〜SN3は上記構成に限定されず、他の感磁素子等を用いた電流センサを採用するようにしてもよい。
【0024】
また、本実施の形態では、3個の電流センサSN1〜SN3を設けた構成を示したが、これには限定されず、電流センサSNを1個とする構成、或いは電流センサSNを4個以上とする構成としてもよい。
【0025】
電流センサSN1〜SN3が配置された梁部10Bには、バスバ部20が備えるバスバB1〜B3が挿通される挿通孔11a〜11bが設けられている。
【0026】
これにより、センサ部10とバスバ部20の組付け後において、各電流センサSN1〜SN3の近傍にバスバB1〜B3が配置され、バスバB1〜B3を導通する電流を各電流センサSN1〜SN3で測定することができる。
【0027】
樹脂モールド10Aの梁部10Bの外縁部には、バスバ部20に設けられる係合部25a、25b、27a、27bと係合可能な仮固定部としてのツメ部15a、15b、17a、17bが設けられている。
【0028】
これにより、センサ部10とバスバ部20との組付け時において、仮固定部としてのツメ部15a、15b、17a、17bをバスバ部20に設けられる係合部25a、25b、27a、27bに係合させて、両者を仮固定することができ、連通ネジ孔13a、13b、23a、23bを介してネジによる本固定等の作業を行い易くすることができる。
【0029】
なお、
図3および
図5(a)に示すように、センサ部10の脚部12b(12a)の側面には、後述するバスバ部20側の突起部52b(52a)と摺接して、センサ部10とバスバ部20との組付け時の位置合わせを行う溝部51b(51a)が形成されている。
【0030】
これにより、センサ部10とバスバ部20との組付け時の位置合わせを容易に行うことができ、組付けの作業性を向上させることができる。
【0031】
また、
図3等に示す配線40は、電流センサSN1〜SN3で測定されたバスバB1〜B3の電流値等を基板100を介して外部装置へ伝送するものである。
【0032】
次に、
図2および
図4等を参照して、バスバ部20の構成例について説明する。
【0033】
バスバ部20は、樹脂等で形成されるケーシング20AにバスバB(B1〜B3)を収容して構成されている。
【0034】
図4等に示すように、各バスバB1〜B3の先端部は、前述したセンサ部10の挿通孔11a〜11bから挿通されるように、取付孔40a〜40cが設けられている。
【0035】
また、各バスバB1〜B3に接続される端子部30a〜30cは、端子支持部21a〜21cに支持されて、ケーシング20Aの下方側に延設されている。
【0036】
ケーシング20Aの左右両端には、脚部22a、22bを設けられており、各脚部22a、22bには、バスバ部20が後述する仮固定部により仮固定された状態で、センサ部10とバスバ部20とを共締めする連通ネジ孔23a、23bが穿設されている。
【0037】
ケーシング20Aの外縁部には、前述のようにセンサ部10側に設けられているツメ部15a、15b、17a、17bと係合可能な仮固定部として係合部25a、25b、27a、27bが設けられている。
【0038】
これにより、センサ部10とバスバ部20との組付け時において、センサ部10側の仮固定部としてのツメ部15a、15b、17a、17bと、バスバ部20側の仮固定部としての係合部25a、25b、27a、27bとを係合させて、両者を仮固定することができ、連通ネジ孔13a、13b、23a、23bを介してネジによる本固定等の作業を行い易くすることができる。
【0039】
なお、
図4および
図5(b)に示すように、バスバ部20の脚部22b(22a)の内側面には、前述したセンサ部10側の溝部51b(51a)と係合して、センサ部10とバスバ部20との組付け時の位置合わせを行う突起部52b(52a)が形成されている。
【0040】
これにより、センサ部10とバスバ部20との組付け時の位置合わせを容易に行うことができ、組付けの作業性を向上させることができる。
【0041】
即ち、センサ部10側の溝部51b(51a)に、突起部52b(52a)バスバ部20側の突起部52b(52a)を係合させ、溝部51b(51a)に沿って突起部52b(52a)が摺動するように、例えばバスバ部20をセンサ部10側に手動で押圧してスライドさせる。そして、押し込みが終了した時点で、センサ部10側の仮固定部としてのツメ部15a、15b、17a、17bと、バスバ部20側の仮固定部としての係合部25a、25b、27a、27bとの係合も完了される。
【0042】
なお、仮固定部(ツメ部15a、15b、17a、17bおよび係合部25a、25b、27a、27b)は、電流センサSN1〜SN3にバスバB1〜B3が配置される部位の近傍に設けられるようにするとよい。
【0043】
これにより、センサ部10とバスバ部20との仮係合状態で、互いの位置がずれにくくなり、連通ネジ孔13a、13b、23a、23bを介してネジによる本固定等の作業をより行い易くすることができる。
【0044】
そして、上述のような構成を備える本実施の形態に係るバスバ組付け型電流センサ1によれば、仮固定部(ツメ部15a、15b、17a、17bおよび係合部25a、25b、27a、27b)によってセンサ部10とバスバ部20とが仮固定されるまでは、それぞれを別体として取り扱うことができる。
【0045】
そのため、仮固定前の単体のセンサ部10について、挿通孔11a〜11bに、一般的なチェッカが備える検査用のバスバ(図示せず)を挿入して、各電流センサSN1〜SN3の特性の検査を容易に行うことができる。
【0046】
また、センサ部10とバスバ部20は、互いを仮固定する仮固定部(ツメ部15a、15b、17a、17bおよび係合部25a、25b、27a、27b)を備えているので、連通ネジ孔13a、13b、23a、23bを介してネジによる本固定等の作業を行い易くすることができる。
【0047】
特に、両者を共締めして固定した後は、センサ部10とバスバ部20とは一体化されるので、各種装置への実装時の取扱容易性や振動などに対する耐久性等を向上させることができる。
【0048】
なお、センサ部10とバスバ部20とを共締めするネジにより、バスバ組付け型電流センサ1自体を外部装置に固定するようにしてもよい。
【0049】
また、上述の構成例では、センサ部10とバスバ部20の双方に仮固定部を設ける場合を示したが、これには限定されず、センサ部10とバスバ部20の少なくとも一方に、着脱可能な状態で互いに仮固定する仮固定部を設けるようにしてもよい。
【0050】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって開示された技術に限定されるものではないと考えるべきである。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載にしたがって解釈すべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0051】
例えば、センサ部10およびバスバ部20に設けられる連通ネジ孔13a、13b、23a、23bは、両端側に位置するバスバB1、B3の端子部21a、21cに近い側に配置するとよい。この場合には、バスバB1、B3が外部と接続される位置と、連通ネジ孔13a、13b、23a、23bとの距離を近くすることができ、バスバBに応力が加わった際にも壊れ難くすることができる。
【符号の説明】
【0052】
1…バスバ組付け型電流センサ
10…センサ部
10A…樹脂モールド
10B…梁部
11a〜11b…挿通孔
12a、12b…脚部
13a、13b…連通ネジ孔
15a、15b、17a、17b…ツメ部(仮固定部)
20…バスバ部
20A…ケーシング
21a…端子部
21a〜21c…端子支持部
22a、22b…脚部
23a、23b…連通ネジ孔
25a、25b、27a、27b…係合部(仮固定部)
30a〜30c…端子部
40…配線
40a〜40c…取付孔
51a、51b…溝部
52a、52b…突起部
100…基板
150a…ホール素子
150b…磁性体
B(B1〜B3)…バスバ
SN(SN1〜SN3)…電流センサ