特許第6533413号(P6533413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6533413ステッピングモータを駆動するためのコントローラ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6533413
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】ステッピングモータを駆動するためのコントローラ
(51)【国際特許分類】
   H02P 8/18 20060101AFI20190610BHJP
   H02P 8/08 20060101ALI20190610BHJP
   H02K 7/10 20060101ALI20190610BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20190610BHJP
【FI】
   H02P8/18
   H02P8/08
   H02K7/10 Z
   G01D5/245 H
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-94999(P2015-94999)
(22)【出願日】2015年5月7日
(65)【公開番号】特開2015-213424(P2015-213424A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2018年3月7日
(31)【優先権主張番号】1407953.7
(32)【優先日】2014年5月6日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515009620
【氏名又は名称】ジョンソン エレクトリック ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ミハ ファーラン
(72)【発明者】
【氏名】イヴァン ボーキ
(72)【発明者】
【氏名】マキシム ブリュールハルト
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−136998(JP,A)
【文献】 特開2012−247306(JP,A)
【文献】 特開2012−055080(JP,A)
【文献】 特開2001−086724(JP,A)
【文献】 特開2007−006549(JP,A)
【文献】 特表2010−527445(JP,A)
【文献】 米国特許第06184639(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 8/18
G01D 5/245
H02K 7/10
H02P 8/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ロータと少なくとも1つのコイルとを含むステッピングモータを駆動するためのコントローラであって、
前記少なくとも1つのコイルに電流を供給するための電力段であって、該電力段は、比較器(25)を含む入力、該比較器(25)に接続されたフィルタ(21)、該フィルタ(21)に接続された電力増幅器(22)、及び該電力増幅器に接続された出力を有し、前記少なくとも1つのコイルに接続するように構成され、該電力段は、該電力段の出力における出力信号を該比較器の入力へ戻すための該電力段の出力を該比較器の入力に接続する電流フィードバックループを有する、電力段と、
少なくとも1つのアナログホールセンサであって、前記磁気ロータの近くに取り付けられ、該ホールセンサに対する磁気ロータの位置を磁気的に検知し、かつ出力における出力信号を供給するアナログホールセンサと、
その出力が前記比較器の入力に接続される乗算器に、前記ホールセンサの出力を接続して前記ホールセンサの前記出力信号を前記電力段に戻し、前記少なくとも1つのコイルに前記ホールセンサの前記信号の関数として電流を供給するように構成されたフィードバックラインと、を備え
前記比較器(25)は、前記乗算器(13)から及び前記電力段(20)の出力からの信号を受け取る、コントローラ。
【請求項2】
前記ホールセンサの出力に接続された入力と、前記乗算器の入力に接続された出力とを有する閉ループであって速度制御段を形成する閉ループを更に備え、該速度制御段は、前記乗算器によって受け取られる基準信号を生成す、該基準信号は、前記乗算器において前記ホールセンサの前記出力信号の振幅を調整する、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記速度制御段(30)の出力は、前記電力段(20)の入力において比較器(25)の入力に連結され、前記電力段(20)の出力(23)は、該電力段(20)の前記出力信号を戻すようにフィードバックライン(24)を介して前記比較器(25)の他の入力に連結される、請求項2に記載のコントローラ。
【請求項4】
フィードバックライン(12b)を備え、該フィードバックライン(12b)は前記ホールセンサ(11)を前記速度制御段(30)の入力に接続し、該フィードバックライン(12b)には、周波数−電圧変換器(14)が組み込まれる、請求項に記載のコントローラ。
【請求項5】
前記速度制御段は、前記ロータの回転速度の所望値を定める外部信号を受け取るための別の入力、該所望値と前記ホールセンサの前記出力信号から受け取られる実際値とを比較するための比較器(35)、PIコントローラ(31)、及び前記乗算器(13)に接続されたリミッタ(32)を備え、前記閉ループの入力は、前記周波数−電圧変換器を介して比較器に接続される、請求項に記載のコントローラ。
【請求項6】
前記少なくとも1つのアナログホールセンサは、前記ロータの回転時に実質的に正弦波信号を供給し、及び/又は、前記電力段は、前記少なくとも1つのコイルに供給される、実質的に正弦波形を有する電流を生成するように構成される、請求項1からのいずれか1項に記載のコントローラ。
【請求項7】
少なくとも2つのホールセンサを備え、該ホールセンサは、該ホールセンサに対する前記磁気ロータの前記位置の関数としての位相シフトした2つの信号を供給、前記位相シフトは90°である、請求項1からのいずれか1項に記載のコントローラ。
【請求項8】
前記2つのホールセンサは、該2つのホールセンサ間の角度が60度未満になるように前記ロータの回転軸の周囲に配置される、請求項6又は7に記載のコントローラ。
【請求項9】
前記ホールセンサは、前記電力段が配置されたプレート上に配置される、請求項6、7又は8に記載のコントローラ。
【請求項10】
前記2つのホールセンサ間の距離は3mm未満である、請求項6から9のいずれか1項に記載のコントローラ。
【請求項11】
ASICとして設計される、請求項1から10のいずれか1項に記載のコントローラ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のコントローラを備える、ステッピングモータ。
【請求項13】
ステータから外へ横方向に延びる磁石リングを有するロータを備える、請求項12に記載のステッピングモータ。
【請求項14】
磁石(10)が、該磁石の外周における半径方向磁束成分を測定するために1又は複数のホールセンサ(11)にアクセスできるように前記ステータ(52)から外へ横方向に延びる、請求項12又は13に記載のステッピングモータ。
【請求項15】
前記コントローラはプレート上に配置され、前記プレートは、前記少なくとも1つのコイルを担持するコイル本体の外側延長部に強固に取り付けられる、請求項14に記載のステッピングモータ。
【請求項16】
前記少なくとも2つのアナログホールセンサは、前記プレート上に配置される、請求項15に記載のステッピングモータ。
【請求項17】
前記ロータの前記回転軸に沿って軸方向にオフセットして配置された少なくとも2つのコイルによって取り囲まれたロータを備える、請求項12から16のいずれか1項に記載のステッピングモータ。
【請求項18】
前記ロータは、少なくとも4つの磁極を有する磁石を含む、請求項17に記載のステッピングモータ。
【請求項19】
請求項12から18のいずれか1項に記載のステッピングモータと、ギアドライブとを備える、部品のためのアクチュエータであって、該ステッピングモータは、出力シャフトを有するロータを備え、該ギアドライブは、該ロータの回転が該部品を作動させるために該ロータの該出力シャフトと該部品の間に接続される、アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータコントローラに関し、具体的には、ステッピングモータを駆動するためのコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
ステッピングモータは、不連続なステップシーケンスによって生じる振動に起因して本質的に騒々しくなり得る。開ループ動作のために設計された既知のコントローラは、単純かつ低コストである。しかしながら、ステッピングモータは、あらゆるステップ損失を防ぐために、寸法及び電力を過剰にする必要がある。この(実際のモータの動特性の知識を欠いた)制限的な制御の1つの結果として、高レベルのトルク脈動が生じ、これが騒音に変わる。さらに、高入力電力によって熱放散も高くなる。
【0003】
他の既知のコントローラは、逆起電力(「逆emf」)のための駆動ラインを探り、ロータ位置を導出して整流シーケンスを適宜適合させるように試みるセンサレス整流に基づく。この種の整流は、ロータの外部的位置検知が不要なため便利である。しかしながら、この種の整流は、限られた動作条件範囲内でしか安定せず、(例えば、エンドストップに向かう動きの場合に生じる)素早く変動する負荷では危機的なものになる。さらに、このようなコントローラは、正弦波電流波形を計時して生成するためのマイクロ処理を必要とする。別の問題は、モータの停止時におけるものであり、逆emfが存在せず、従ってロータの位置が分からずに、始動手順が基本的に開ループモードで行われる。
【0004】
ブラシレスDCモータでは、ロータ位置を検出するためのデジタルホールセンサを使用する。この位置情報は、離散的であり不連続である。円滑な回転磁場に近付くには、それなりの量のマイクロ処理及びロジックが必要である。しかしながら、デジタル電子機器は、コーディングエラー、不明確な症状、電磁波妨害又は高温によってデジタル障害を起こしやすい。推定器のアルゴリズムは、直ぐに変動する条件、すなわちモータの遮断又は自発的方向反転の際に、位置及び速度を確実に予測できないことが多い。低速及びゼロ速度では、位置及び速度の推定が不正確になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、特にステッピングモータの始動時に、ステッピングモータを少ない振動で正確かつロバストに駆動することができる単純化されたコントローラが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明は、その第1の態様において、磁気ロータと少なくとも1つのコイルとを含むステッピングモータを駆動するためのコントローラであって、少なくとも1つのコイルに電流を供給するための電力段と、ホールセンサに対する磁気ロータの位置の関数としての信号を供給するための少なくとも1つのアナログホールセンサと、ホールセンサを電力段に接続してホールセンサの信号を電力段に戻し、少なくとも1つのコイルにホールセンサの信号の関数として電流を供給するように構成されたフィードバックラインとを備えたコントローラを提供する。
【0007】
このコントローラは、ホールセンサに接続された入力と、電力段に接続された出力とを有する速度制御段を含む閉ループをさらに備え、制御段は、ホールセンサの信号を受け取るとともに、電力段によって受け取られる基準信号を生成するように構成され、この基準信号は、フィードバックラインを介して供給されたホールセンサの信号の振幅を調整することが好ましい。
【0008】
速度制御段は、ロータの所望の回転速度値を定める外部信号を受け取るための別の入力を有することが好ましい。
【0009】
速度制御段の入力は、周波数−電圧変換器を介してホールセンサに接続されることが好ましい。
【0010】
少なくとも1つのアナログホールセンサは、ロータの回転時に実質的に正弦波信号を供給し、及び/又は、電力段は、少なくとも1つのコイルに供給される、実質的に正弦波形を有する電流を生成するように構成されることが好ましい。
【0011】
2つのホールセンサが存在し、これらのホールセンサは、ホールセンサに対する磁気ロータの位置の関数としての位相シフトした2つの信号を供給することが好ましく、この位相シフトは90°であることが好ましい。
【0012】
この2つのホールセンサは、2つのホールセンサ間の角度が60度未満になるようにロータの回転軸の周囲に配置されることが好ましく、これらのホールセンサは、電力段が配置されたプレート上に配置されることが好ましい。
【0013】
2つのホールセンサ間の距離は、4mm未満であることが好ましく、3mm未満であることが好ましい。
【0014】
コントローラはASICとして設計されることが好ましい。
【0015】
第2の態様によれば、本発明は、上述したコントローラを組み込んだステッピングモータを提供する。
【0016】
少なくとも1つのアナログホールセンサは、半径方向磁束成分を測定するようにロータの磁石に対して半径方向に変位して配置され、又は軸方向磁束成分を測定するように磁石に対して軸方向に変位して配置されることが好ましい。
【0017】
ロータは、ステータから外へ横方向に延びる磁石リングを有することが好ましい。
【0018】
コントローラは、プレート上に、具体的にはプリント基板上に配置されることが好ましい。
【0019】
プレートは、少なくとも1つのコイルを担持するコイル本体の外側延長部に強固に取り付けられることが好ましく、この外側延長部は、少なくとも1つのコイルを担持するコイル本体の部分と一体的に形成されることが好ましい。
【0020】
少なくとも2つのアナログホールセンサは、プレート上に配置されることが好ましい。
【0021】
ステッピングモータは、ロータの回転軸に沿って軸方向にオフセットして配置された少なくとも2つのコイルによって取り囲まれたロータを有することが好ましい。
【0022】
ロータは、リング状の、及び/又は少なくとも4つの磁極を有する、好ましくは少なくとも6つの磁極を有する、最も好ましくは少なくとも8つの磁極を有する磁石を含むことが好ましい。
【0023】
第3の態様によれば、本発明は、請求項10から17のいずれか1項に記載のステッピングモータと、ギアドライブとを備えたアクチュエータを提供する。
【0024】
さらなる態様によれば、本発明は、上述したコントローラ、ステッピングモータ及び/又はアクチュエータの、動力車両の暖房、換気及び/又は空調システムにおける使用法を提供する。
【0025】
本発明のコントローラでは、ステッピングモータに通電する電力段に少なくとも1つのアナログホールセンサを接続するフィードバックラインによって閉ループ回路が設けられる。この設計は、電力段にフィードバック信号を送達できることにより、振動、従って騒音、効率及び動作安定性に関してステッピングモータの動きが改善されるという利点を有する。ステッピングモータの通電を最適化することができるので、あらゆるステップ損失を防ぐために過剰寸法が不要になり、すなわち本発明によるステッピングモータは、同じ用途に使用される当業で周知のステッピングモータに比べて電力、寸法などを減少させることができる。さらに、このコントローラは、特にロータを休止位置から始動する時、及び/又は例えばエンドストップによって定められる休止位置に向けてロータを動かす時に、ロータの確実かつ正確な動きが保証されるように設計することができる。
【0026】
ホールセンサの信号の振幅を調整する基準信号を生成するための速度制御段を含む閉ループがさらに設けられることが好ましい。これにより、モータの速度を所望の値に調整することができる。また、温度変化による磁束及びコイル抵抗の変化を補償することもできる。
【0027】
以下、添付図面の図を参照しながら、本発明の好ましい実施形態をほんの一例として説明する。図では、複数の図に出現する同一の構造、要素又は部品には、一般にこれらが出現する全ての図において同じ参照番号を付している。一般に、図に示す構成要素及び特徴部の寸法は、表現の便宜上明瞭にするために選択したものであり、必ずしも縮尺通りではない。以下、各図を列挙する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の好ましい実施形態による、コントローラの電子回路の概略ブロック図である。
図2】ロータ磁石及び第1のホールセンサと、考えられる第2のホールセンサの位置とを示す概略図である。
図3】第2のホールセンサを図2の位置42のうちの1つに配置した場合に2つのホールセンサによって生成された信号を示す図である。
図4】第2のホールセンサを図2の位置43のうちの1つに配置した場合に2つのホールセンサによって生成された信号を示す図である。
図5】従来のモータ、及び本発明によるコントローラを含む、同じ用途のために設計したモータのトルクを速度の関数として示すグラフである。
図6】本発明によるコントローラを含むステッピングモータの斜視図である。
図7図5によるステッピングモータを含むアクチュエータの斜視図である。
図8】標準的なコントローラ及び本発明によるコントローラでモータを駆動した時の測定騒音レベルの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、回転方向及び速度を予め設定できるようにステッピングモータを駆動するためのコントローラの電子回路1の概略ブロック図である。このステッピングモータは、数多くの磁極を有する磁石10を備えたロータを含む。通常は、少なくとも4つの磁極が与えられるが、10又はそれ以上の磁極が存在することが好ましい。この電子回路は、好ましくはアナログホールセンサの形をとるホールセンサ11を含む。アナログホールセンサは、検知した磁場に応じて出力信号が変動する変換器であり、アナログ要素であるため、出力信号として直接的に電圧をもたらす。ホールセンサ11は、磁石10の角度位置を(電気単位で)非接触的に測定できるようにする。
【0030】
電子回路1は、閉ループ回路として形成される。具体的には、回路1は、乗算器13などを含む利得調整用の部品を介してセンサ11を電力段20の入力に接続する第1のフィードバックライン12aを有する。
【0031】
例えば、電力段20は、電流フィードバックループ24を含む電圧制御電流源として形成される。電力段20は、比例積分コントローラ(PIコントローラ)を含むフィルタ手段21と、電力増幅器22とを含み、この電力増幅器22は、モータの(単複の)コイルに接続するための出力23と、電力増幅器22の出力信号を電力段20の入力に戻すためのフィードバックライン24とを含む。入力は、乗算器13及び電力段20の出力からの信号を受け取る比較器25を含む。
【0032】
例えば、電力増幅器22は、パルス幅変調(PWM)に基づいて、負荷、すなわち(単複の)コイルに送達される電力量を制御するように動作するよう構成される。電力は、供給のオン及びオフを高頻度で切り替えることによって制御される。平均電圧、従って負荷に送達される電力は、デューティサイクル(切り替え期間当たりのオン時間)で変調される。
【0033】
回路1は、第2のフィードバックループをさらに含む。具体的には、センサ11を速度制御段30の入力に接続するフィードバックライン12bが存在する。第2のフィードバックライン12bには、周波数−電圧変換器14が組み込まれる。速度制御段30は、外部信号を受け取るための入力36と、比較器35と、PIコントローラ31と、乗算器13に接続されたリミッタ32とを含む。部品31、32は、第2のフィードバックループの動的応答を定める調整部品である。
【0034】
外部信号36は、ロータの所望の速度値を定め、例えばユーザーがトリガすることができる。この信号は、例えば一定値であり、又は用途の要件に応じて時間とともに変化することもできる。
【0035】
動作時には、アナログホールセンサ11が、磁石の分極パターン及び位置の関数としての電圧信号を生成する。横方向に磁化された多極リング磁石では、この信号が、逆起電力(「逆emf」)、すなわち回転磁石10によってコイル内に誘導される電圧に対応する形状の正弦波である。ホール電圧信号と逆emfの間の位相シフトは一定であり、アナログホールセンサ11の角度位置を適切に定めることによって最小化されることが好ましい。しかしながら、逆emfとは対照的に、センサ11によって供給される信号の振幅はロータの速度とは無関係である。従って、瞬間的なロータの角度位置は、常に、また停止時においても分かっている。
【0036】
センサ11の電圧信号は、乗算器13を介して電力段20に供給され、実質的に、モータを駆動するための電流信号の形状及び位相を定めるのに必要な信号そのものに対応する。
【0037】
実際のロータ速度に関する情報は、例えば周波数をもたらすホールセンサの信号のゼロ交差間の時間を評価することによって取得される。この周波数は、周波数−電圧変換器14によって(図1にΩ*で示す)電圧に変換される。この実際のロータの速度値に対応する電圧Ω*は、出力信号ΔΩを生成するために、所望の速度を設定する(図1にΩで示す)入力基準電圧と比較され、この出力信号ΔΩを、部品31、32によってさらに処理して速度信号I*aを生じる。
【0038】
速度制御段30は、速度を保つためだけに必要なレベルに注入電力(すなわち電流)を調整又は制限するループを形成するように構成されることが好ましい。信号ΔΩは、コイルに通電するための電流のピーク振幅を定める。
【0039】
速度信号I*aは、図1にi*aで示すホールセンサの信号の振幅を調整するために乗算器13に与えられる利得係数である。電力段20では、比較器25が、この信号i*aをフィードバックライン24内の実際の電流iaと比較して比較値Δiaを生じ、この比較値Δiaを部品21、22によって適宜にフィルタ処理し増幅して、モータに通電するための電流信号を生じる。
【0040】
大まかに言えば、フィードバックライン12aを介して送達されるホールセンサ1の信号が、出力23における電流信号の形状及び位相を定めるのに対し、この電流信号の振幅は、速度制御段30によって形成される速度フィードバックループによって定められる。
【0041】
ステッピングモータの設計によっては、ロータを駆動するために数多くの電流信号が必要である。2相ステッピングモータでは、位相シフトが90°である2つの位相、すなわちsin(a(t))及びsin(a(t)+pi/2)=cos(a(t))によって生成される回転磁場が必要である。これらの信号は、各々がアナログホールセンサ11の形をとって図1の独自の電力段20及び速度制御段30を有する2つのセンサによって送達される。
【0042】
一般に、2つのホールセンサ11を使用すれば、磁石10の絶対位置についての即時情報が利用可能になる。この結果、電子回路1は、負荷トルクの動的変化に適切に反応することができる。ロータの状態及び位置が常に分かる。ほぼ完全な正弦波整流電流を提供することが可能になり、これによって非常にスムーズなトルク伝達が保証される。フィードバックライン12aによって形成される閉ループ回路では、モータに注入される電力を、所与の負荷トルクにおいて速度を維持するためだけに必要な最小値に調整することが可能になる。従って、トルク脈動及び騒音が最小限に抑制される。
【0043】
所望の位相シフトを生じるには、アナログホールセンサ11を正しく位置付けるべきである。図2に、多極磁石10と、第1のホールセンサ11の位置を示す。このセンサ11は、半径方向磁束を測定して、x座標を回転角αとし、y座標を電圧レベルVとする図3及び図4に曲線11aで示す出力信号を生成する。図2の×印42及び点43は、図3及び図4に示すような、位相が90°シフトした2つの正弦信号を得るために考えられる第2のホールセンサの位置を定めるものである。図3の曲線42aは、×印42に位置するホールセンサの対応する信号であり、図4の曲線43aは、点43に位置するホールセンサの対応する信号である。2つの隣接する位置42及び43間の角度は、磁極数をNPとする360°/NPによって与えられる(図2の例では、NPが10に等しく、36°の角度が得られる)。基本的に、これらの2つのホールセンサは、極間隔をsとし、n=1、3、5、・・・とする距離s*(n−1/2)だけ離れて配置される。或いは、n=0、2、4、・・・である配置も90°の位相差の要件を満たすが、一方の信号の極性が反転する。これらの2つのホールセンサは、これらを同じプレートに取り付け、又はこれらを同じチップに統合するために、互いに隣接して配置されることが好ましい。この場合、ホールセンサ間の角度は、60度未満になるように、さらに好ましくは45度未満になるように選択される。ホールセンサ間の距離は、1mm〜4mmとすることができる。
【0044】
2つのホールセンサを使用する代わりに、1つのセンサのみを使用することもできる。この実施形態では、ホールセンサによって供給される第1の信号から微分法などによって第2の信号が導出される。この場合、ロータの磁石10は、ホールセンサ11の信号を微分するために移動する必要がある。単一のホールセンサに基づくドライバ回路の解決策は、回路部品の数が減少するので有利である。低速又はゼロ速度における角度位置の曖昧さを解消するために、推定法を適用することもできる。
【0045】
本発明によるコントローラは、とりわけ、ステッピングモータの電流励起及び電力効率を最適化できる一方で、ロータの確実かつ正確な動きが保証され、特にステップ損失のリスクが低減又は排除されるという利点を有する。従って、例えば自動車の部品の枢動などの特定の所与の用途のための信頼できる動作を、出力の低いステッピングモータを用いて保証することができる。このことを、x座標がロータの速度でありy座標がトルクである図5の図に示す。従来のステッピングモータを使用する場合には、通常、モータが、特定環境における信頼できる動作を実現するために電力が過剰な設計を有する(例えば、自動車では、バッテリ電圧及び周囲温度が、それぞれ8V〜16V、及び−40℃〜+155℃の範囲で変動し得る)。図5の曲線46は、開ループモードで駆動する従来のステッピングモータのプルアウトトルクを速度の関数として概略的に示すものである。しかしながら、点47aによって示すように、公称速度におけるステッピングモータの実際の動作点は、共時性を保証するために曲線46よりも常に十分に低い。矢印46aで示すように、モータの出力トルクを、特定の速度で負荷を動かすのに必要な最低レベルまで低減することにより、(単複の)コイルに通電するための電流、システム内の電力、並びにトルクに関連する振動及び騒音が、従来のステッピングモータの動作に比べて実際に減少する。線47は、参考として典型的なDCモータの負荷ラインを示すものである。
【0046】
図6に、リング状の多極磁石10と、ギアドライブに結合するためのウォームギア51を含む出力シャフトとを有するロータを含むステッピングモータを示す。ステッピングモータのステータは、ロータを取り囲む極歯を有するステータ部分52と、極歯を磁化するための少なくとも1つのコイル(図6では見えない)と、コイル本体53とを含む。このステッピングモータは、例えば空き缶(又はクローポール)モータとして設計され、例えば回転方向に沿って同軸上に配置された2つのコイルを有する。
【0047】
磁石10は、1又はそれ以上のホールセンサ11が磁石の外周における半径方向磁束成分を測定するためにアクセスできるように、ステータ52から外へ横方向に延びる。
【0048】
このステッピングモータは、図1の電子回路を含むASIC(「特定用途向け集積回路」)が配置されたプレート55をさらに含む。このASICは、(単複の)ホールセンサ11が統合されるように設計されることが好ましい。プレート55からは、ケーブルに接続するためのピン56が延びる。図6の実施形態では、コイル本体53が、(単複の)コイルを担持するコイル本体53の部分と一体に形成された、ステータ52から外へ横方向に延びるアーム部分53aを有する。ピン56を含むプレート55は、アーム部分53aに固定されることにより、磁石の位置の正確な測定が可能になるように(単複の)ホールセンサ11を磁石10に対して強固に配置する。
【0049】
図7に、図6のステッピングモータを有するアクチュエータを示しており、ハウジングのカバーは図示していない。ウォーム歯車51がギアドライブ58に結合され、ギアドライブの出力シャフトは、アクチュエータによって動かされる部品に結合することができる。
【0050】
このアクチュエータは、例えば動力車両において、特に暖房、換気及び/又は空調システムにおいて使用することができる。このようなシステムは、アクチュエータによって調整すべき1又はそれ以上のフラップを含む。このようなシステムのハウジングは、共鳴箱又は共鳴装置と同様に挙動することができる。従って、伝わったあらゆる振動をハウジングが騒音に変換して増幅し得るという理由で、とりわけ励起レベルの低いアクチュエータが好ましい。
【0051】
図8に、異なる形で駆動するステッピングモータを有するアクチュエータの騒音測定の結果を示す。x座標は、ロータの速度をここではfsps(毎秒フルステップ)単位で示し、y座標は、ここではdbA(A特性デシベル)単位の騒音レベルである。曲線61は、標準的な1/16マイクロステッピングドライバを用いて異なる電流レベルでステッピングモータを駆動した時に発生した騒音を示す。曲線62は、本発明によるアナログホールセンサフィードバックによってステッピングモータを駆動した時に発生した騒音に対応する。図示のように、曲線62が示す騒音レベルは、測定した各ロータ速度の場合に、従来の駆動様式に対して劇的に減少している。
【0052】
本出願の明細書及び特許請求の範囲では、記述する項目又は特徴の存在を明示する一方でさらなる項目又は特徴の存在を排除しないように、「備える、含む、有する(comprise、include、contain及びhave)」という動詞、並びにその派生形の各々を包括的な意味で使用している。
【0053】
明確化のために別個の実施形態の文脈で説明した本発明のいくつかの特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供することもできると理解されたい。これとは逆に、簡潔さを期すために単一の実施形態の文脈で説明した本発明の様々な特徴を別個に、又はいずれかの好適な下位の組み合わせで提供することもできる。
【0054】
上述した実施形態はほんの一例にすぎず、当業者には、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から逸脱することなく、他の様々な修正が明らかである。
【0055】
例えば、コントローラの回路を、少なくとも1つのホールセンサによって供給される信号の一部又は全部がデジタル化されるように設計することもできる。例えば、図1のフィードバックライン12aは、少なくとも1つのホールセンサがアナログ形式、すなわち連続的な形で提供した信号を非連続的なデジタル信号に変換するためのアナログ−デジタル変換器を備えることができる。このデジタル信号が電力段20及び速度制御段30に供給され、この場合ループ20及び/又は30内の一部又は全部のブロックの動作がデジタル処理で行われる。
【符号の説明】
【0056】
1 電子回路
10 磁石
11 ホールセンサ
12a フィードバックライン
12b フィードバックライン
13 乗算器
14 周波数−電圧変換器
20 電力段
21 フィルタ手段
22 電力増幅器
23 出力
24 フィードバックライン
25 比較器
30 速度制御段
31 PIコントローラ
32 リミッタ
35 比較器
36 外部信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8