(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴を理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0021】
1.内視鏡用クリップ装置
本発明において、内視鏡用クリップとは内視鏡下での処置の際、対象物(臓器の病変部)を封止したり、把持して反対牽引(カウンタートラクション)、止血、縫合、マーキングのために対象物を摘まむ器具である。本明細書では単に「クリップ」と記載することがある。本発明の内視鏡用クリップ装置におけるクリップは、主に病変部を把持するために用いられる。なお、クリップで病変部を把持した後、線状物を近位側に引いて病変部を牽引することも可能である。
【0022】
本発明において、内視鏡用クリップ装置とは、内視鏡の鉗子チャンネルに挿入され、クリップの開閉を制御して対象物を把持する装置である。本明細書では内視鏡用クリップ装置を単に「装置」または「クリップ装置」と記載することがある。
【0023】
本発明において、軸方向とは外筒体や内筒体の長軸方向を指し、軸方向において近位側とは装置使用者の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向を指す。また、本発明において径方向とは外筒体や内筒体の径方向を指し、径方向において内方とは外筒体や内筒体の中心側に向かう方向を指し、外方とは外筒体や内筒体の放射方向を指す。
【0024】
図1は、本発明の内視鏡用クリップ装置の平面図を表し、
図2は、本発明の内視鏡用クリップ装置の断面図を表す。本発明の内視鏡用クリップ装置1は、外筒体10と、内筒体20と、線状物40と、クリップ30と、ハンドル50と、を有する。
【0025】
外筒体10は、内腔に内筒体20を配置する筒状の部材である。外筒体10は内腔にクリップ30を配置することで内視鏡の鉗子口から鉗子チャンネル内を通ってクリップ30を対象物の近くに搬送するまでの間に、クリップ30が内視鏡内の鉗子口、鉗子チャンネル内、病変部以外の体内組織等を傷付けることを防止する。
【0026】
外筒体10は、体腔内の形状に沿って屈曲する可撓性と、処置対象組織まで確実に到達する剛性の両方をバランス良く兼ね備えていることが望ましい。このため、外筒体10は、例えば、合成樹脂から形成された筒体、コイル状の金属や合成樹脂によって形成された筒体や、短筒状の関節駒を軸方向に複数連結して回動可能にした筒体が用いられるが、中でも合成樹脂から形成された筒体が好ましく用いられる。また、外筒体10と内筒体20との位置関係を術者が目視で確認できるように、外筒体10は透明または半透明の材料から形成されていることが好ましい。
【0027】
外筒体10の肉厚は特に制限されないが、外筒体10の可撓性と剛性を両立するために、例えば、100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましく、また、400μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、250μm以下であることがさらに好ましい。
【0028】
内筒体20は、外筒体10内に配置されており、内腔内に線状物40を配置するものである。内筒体20をクリップ30に対して軸方向に移動させることにより、クリップ30の開閉度を調整することができる。外筒体10と同様に、内筒体20は、体腔内の形状に沿って屈曲する可撓性と、処置対象組織まで確実に到達する剛性の両方をバランス良く兼ね備えていることが望ましい。
【0029】
内筒体20としては、例えば、コイル状の金属や合成樹脂によって形成された筒体や、短筒状の関節駒を軸方向に複数連結して回動可能にした筒体、合成樹脂から形成された筒体が用いられる。
【0030】
内筒体20の肉厚は特に制限されないが、内筒体20の可撓性と強度を両立するために、例えば、100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましく、また、400μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、250μm以下であることがさらに好ましい。
【0031】
外筒体10の内径と内筒体20の外径との差は、50μm以上300μm以下であることが好ましい。本発明のクリップ装置1は、外筒体10の内径と内筒体20の外径との差が大きく、湾曲により内筒体20の全長が外筒体10内に収納されるような場合にも好適に用いることができる。
【0032】
外筒体10と内筒体20の長さの差は、35mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましく、25mm以下であることがさらに好ましい。本発明のクリップ装置1は、外筒体10と内筒体20の長さの差が小さく、湾曲により内筒体20の全長が外筒体10内に収納されるような場合にも好適に用いることができる。
【0033】
外筒体10や内筒体20を形成する合成樹脂としては、例えば、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、 ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素樹脂等の合成樹脂を用いることができる。滑り性の観点から、外筒体10や内筒体20を形成する合成樹脂は互いに異なる材料であることが好ましい。
【0034】
クリップ30は、対象物(病変部)を把持するものであり、内筒体20の遠位側に配置されており、線状物40に接続されている。
図3は本発明に係るクリップ30の斜視図を表し、
図4は本発明に係るクリップ30の側面図を表す。
図3および
図4に示すように、クリップ30は、一の把持基材32と、一の把持基材32と対向する他の把持基材33を含むクリップ本体31と、軸方向に移動可能な筒状の締結具35と、を有している。
【0035】
クリップ30の閉操作は次のように行われる。まず、締結具35を、開状態のV字状のクリップ本体31の近位側の外側を囲むように配置する。次いで、把持基材32、33の遠位側に締結具35を移動させる。そうすると、締結具35が遠位側に移動するのに伴い、把持基材32、33に締結具35によって径方向の内方に向かう押力が負荷されて、把持基材32、33同士が接近するため、クリップ30が閉じられる。
【0036】
把持基材32、33を含むクリップ本体31や締結具35は、高弾性と生体適合性を有する材料から形成されることが好ましく、例えば、SUS304、SUS631等のステンレス鋼やNi−Ti合金等から好ましく形成される。
【0037】
個別に製造された一の把持基材32と他の把持基材33を、ねじ、カシメ等による機械的固定、溶接、接着等の方法によって接合することにより、クリップ本体31を形成することができる。
【0038】
他方、
図3および
図4に示すように1枚の金属板をV字状やU字状に折り曲げることによって、一の把持基材32と、対向する他の把持基材33を有するクリップ本体31が形成されてもよい。
【0039】
図3および
図4に示すように、2つの把持基材32、33は内筒体20の軸方向に対称な形状にすることができる。これにより、2つの把持基材32、33が径方向に拡縮するタイミングが合いやすくなるため、病変部を把持しやすくなる。
【0040】
把持基材32、33の遠位側にはクリップ30の把持基材32、33を変形させやすくするために、開口部(図示していない)が形成されていてもよい。把持基材32、33を補強するために、把持基材32、33に凸条や凹条(いずれも図示していない)が形成されていてもよい。凸条や凹条は、把持基材32、33に一体的に形成されてもよく、別部材を付加してもよい。一体的に形成された場合には、把持基材32、33の一方の表面から見た凸条が、裏面から見た場合には凹条となるように形成されてもよい。凸条や凹条は、把持基材32、33の軸方向に沿って設けられることが望ましい。
【0041】
図3に示すように、クリップ本体31の把持基材32、33の遠位側の幅が、近位側の幅よりも広く形成されていることが好ましい。クリップ30の開状態では把持基材32、33の近位側に締結具35を配置し、クリップ30の閉状態では把持基材32、33の遠位側に締結具35を好適に配置することができる。
【0042】
図示していないが、クリップ本体31の一の把持基材32の長さが、他の把持基材33の長さよりも大きく形成されていてもよい。クリップ30によって病変部を確実に把持することができるからである。
【0043】
図4に示すように、把持基材32、33の少なくとも一部が、径方向内側に凸となるように湾曲する湾曲部34を有していてもよい。把持基材32、33が撓みやすくなるのに加えて、クリップ本体31の遠位側が径方向に拡がりやすくなるため、病変部に対してクリップ30の把持位置を合わせやすくなる。
【0044】
図4に示すように、一の把持基材32の一部が他の把持基材33と接していてもよい。把持基材32、33は、一対の把持基材32、33が略並行に配置されている近位側の基端部と、病変部を把持する把持部と、基端部と把持部の間の中央部に分けることができる。一の把持基材32の一部と他の把持基材33が接する箇所は特に制限されないが、中央部に設けられることが好ましく、基端部の遠位端部に設けられることがより好ましい。ここで、把持基材32、33の基端部、把持部、中央部は、それぞれ把持基材32、33を軸方向に三等分割することによって分けられた部分でもよい。また、
図3および
図4のように把持基材32、33に湾曲部34が設けられる場合には、湾曲部34の近位端において一の把持基材32と他の把持基材33が接することが好ましい。一の把持基材32の一部が他の把持基材33と接する箇所を設けることで、クリップ30の設計に当たり、クリップ30の遠位端の把持基材32、33間の開き角度を調整でき、使用時においてもその開き角度を維持することができる。また、接する箇所を設けることで、接しない場合と比較して前記開き角度を大きくすることができるので、クリップ30によって病変部を確実に把持することができる。
【0045】
図3に示すように、クリップ本体31の遠位端に凹凸の爪部が設けられてもよい。クリップ30によって病変部を把持する際に、クリップ本体31の遠位端の爪部が病変部に食い込むため、クリップ30から病変部が脱落することが抑止される。
【0046】
締結具35は、例えば円筒体、角筒体に形成される。締結具35の外径は、内筒体20の内径よりも大きいことが好ましい。これにより、線状物40を近位側に引いた際に、締結具35の近位端と内筒体20の遠位端が当接して、クリップ本体31のみが内筒体20内に引き込まれる結果、締結具35がクリップ本体31の遠位側に移動し、クリップ30を閉状態にすることができる。
【0047】
線状物40は、対象物を把持するクリップ30を牽引する部材である。線状物40は、内筒体20内に配置されている。
【0048】
線状物40は、クリップ30の近位側に接続されていることが好ましく、クリップ30と接続される線状物40の軸方向位置は特に制限されない。
【0049】
線状物40とクリップ30の接続には、ねじ、カシメ等の接続部材による機械的な固定の他、溶接や接着を用いることができる。また、線状物40をV字状やU字状に形成されたクリップ30の近位端に結び付けることにより、線状物40とクリップ30を接続することもできる。クリップ30に線状物40を結び付ける方法は特に限定されず、例えば、8の字結びにすることができる。
【0050】
また、一方端部と、他方端部と、一方端部と他方端部の間の中途部を有する線状物40において、線状物40の中途部がクリップ30の近位側に掛けられることによって、線状物40とクリップ30が接続されていてもよい。ここで、線状物40の一方端部は、線状物40全体の長さの30%の範囲を指し、線状物40の他方端部は、線状物40全体の長さの30%の範囲を指し、中途部は、線状物40の一方端部および他方端部以外の残りの40%の長さの範囲を指すものとする。
【0051】
線状物40は、生体適合性、および強度を有する材料から形成されていることが好ましく、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の金属線材や、ナイロン等のポリアミド樹脂、PP、PE等のポリオレフィン樹脂、PET等のポリエステル樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素樹脂等の合成樹脂繊維を用いることができる。なお、線状物40は、クリップ装置の用途に応じて、適宜剛性の高い線材や、柔軟性の高い糸状材を選択することができる。
【0052】
線状物40の摺動性を向上させて線状物40とクリップ30の間の摩擦力を低減するために、線状物40はフッ素樹脂から形成されていることが好ましい。また、フッ素樹脂から形成されていない線状物40を用いる場合には、線状物40の外表面にフッ素樹脂が被覆されていることが好ましい。線状物40の表面に被覆するフッ素樹脂としては、例えば、PTFE、PFA、ETFE、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)等を用いることができる。
【0053】
線状物40へのフッ素樹脂の被覆は公知の方法を採用すればよく、例えば、浸漬法、スプレー法、流動床法、ニーダーコーター法等を用いることができる。
【0054】
線状物40と接するクリップ30の内縁が面取加工されていることが好ましい。クリップ30の内縁は、線状物40を引き抜く際に線状物40と最もよく擦れる部分であるため、クリップ30の内縁の面取加工を行うことにより、線状物40の損傷を抑止することができる。中でも、クリップ30の近位側の内縁が面取加工されていることが好ましい。クリップ30の近位側の内縁とは、例えば、クリップ30を上から見たときに、クリップ30の長手方向を三分割して最も近位側に位置する区間の内縁とすることができる。なお、クリップ30の内縁の面取加工の方法としては、例えば、面取加工機等によってR面加工を施す等の公知の方法を用いることができる。
【0055】
線状物40は、内筒体20内に配置されているため、線状物40の太さ(外径)は、内筒体20の内径よりも小さい。
【0056】
線状物40は、内筒体20内とハンドル50内に配置され、線状物40の一部がハンドル50の近位側から露出していてもよい。使用者は、ハンドル50の近位側から露出している線状物40の一部を牽引することによって、クリップ30を閉状態にするために線状物40を近位側に移動させることができる。使用者は、ハンドル50を操作することにより、クリップ30の開閉操作を行うことができる。
【0057】
線状物40の移動操作を円滑に行うために、線状物40の長さは、例えば、内筒体20の長さの1.1倍以上であることが好ましく、1.3倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることがさらに好ましい。
【0058】
また、線状物40の長さの上限については特に制限はないが、線状物40の操作を妨げないように、例えば、内筒体20の長さの3.4倍以下であることが好ましく、3.2倍以下であることがより好ましく、3.0倍以下であることがさらに好ましい。
【0059】
線状物40はフッ素樹脂から好ましく形成されるため、使用者が線状物40を把持する際に手元から線状物40が滑落して線状物40の円滑な移動を妨げる可能性がある。このため、ハンドル50の近位側から露出している線状物40の一部に、線状物40を固定する固定器具が接続されていてもよい。
【0060】
ハンドル50は、装置1を作動させる際に使用者が把持する部材であり、内筒体20の近位側に接続されている。ハンドル50内には線状物40が配置されるため、ハンドル50は筒状に形成されていることが好ましい。ハンドル50は、2以上の部材で構成されてもよい。
【0061】
ハンドル50の遠位側は、遠位端に向かって外径が小さくなる錐形状であることが好ましい。内筒体20と接続されるハンドル50の遠位側の形状を緩やかにすることにより、内筒体20とハンドル50の接続部分への応力集中を緩和し、内筒体20やハンドル50の変形や破損を抑止する。
【0062】
図1に示すように、ハンドル50の遠位側に、保護部51が設けられることが好ましい。より具体的には、保護部51は、ハンドル50の遠位端を覆う保護キャップであることが好ましい。保護部51が設けられることにより、内筒体20が屈曲する際に、内筒体20材料とハンドル50材料の弾性が急激に変化することが抑制される。保護部51もハンドル50と同様に、筒状に形成されていることが好ましい。
【0063】
ハンドル50と内筒体20の接続は、圧入、圧接、嵌合、ねじ、カシメ等による機械的な固定、ポリウレタン系、エポキシ系、シアノ系、シリコーン系等の接着剤を用いた接着、溶着等を用いることができる。また、ハンドル50の外側に軸方向に沿って内筒体20の外径よりも幅狭の溝が形成されている場合には、当該溝に内筒体20を押し込んで固定することによりハンドル50と内筒体20を接続してもよい。
【0064】
保護部51は、弾性部材から形成されていることが好ましい。保護部51は、例えばポリアミドエラストマーから形成することができる。これにより、内筒体20材料とハンドル50材料の弾性が急激に変化することを抑制できる。
【0065】
図1および
図2に示すように外筒体10の外表面に、外筒体10の移動操作をしやすくする補助ハンドル52が設けられてもよい。
【0066】
補助ハンドル52と外筒体10の接続は、嵌合、ねじ、カシメ等による機械的な固定、ポリウレタン系、エポキシ系、シアノ系、シリコーン系等の接着剤を用いた接着、溶着等を用いることができる。また、補助ハンドル52の外側に軸方向に沿って溝が形成されている場合には、補助ハンドル52の溝内、または溝を介して補助ハンドル52の内腔内に外筒体10を収容することにより、補助ハンドル52と外筒体10を接続してもよい。補助ハンドル52と外筒体10は、取り外し可能であってもよい。
【0067】
ハンドル50や補助ハンドル52の材料としては、例えば、シリコーンゴム等の合成樹脂、ポリウレタン発泡体等の発泡プラスチックを用いることができる。
【0068】
外筒体10は、内筒体20とともに遠位側から内視鏡の鉗子チャンネルを経て体内に挿入される。したがって、内筒体20の近位側に接続され、外筒体10の近位側に位置するハンドル50の外径は、ハンドル50が鉗子チャンネル内に入ることを防ぐために、内視鏡の鉗子チャンネルの内径よりも大きいことが好ましい。同様に、補助ハンドル52の外径も内視鏡の鉗子チャンネルの内径よりも大きいことが好ましい。
【0069】
内視鏡の鉗子チャンネルにクリップ装置1を挿入する際に、外筒体10の外面と鉗子チャンネルの内壁が接触することにより、外筒体10の位置が軸方向にずれて、鉗子チャンネル内で外筒体10からクリップ30が露出することがある。また、クリップ輸送時に、振動などにより、外筒体10の位置が軸方向にずれて、パッケージ内で外筒体10からクリップ30が露出することがある。このため、
図2に示すように、クリップ装置1には、内筒体20の外側で、外筒体10よりも近位側かつハンドル50よりも遠位側にスペーサー60が設けられることが好ましい。スペーサー60の近位端とハンドル50の遠位端、スペーサー60の遠位端と外筒体10の近位端が当接するため、使用時や輸送時などに軸方向における外筒体10の位置がずれて、外筒体10からクリップ30が露出することを抑制できる。
【0070】
スペーサー60としては、例えば、内腔を有している円筒形状や角筒形状の筒状部材等を用いることができる。
【0071】
スペーサー60が外筒体10内に収められることを抑制するために、スペーサー60の遠位端の外径は外筒体10の近位端の内径よりも大きいことが好ましい。なお、スペーサー60の遠位端と外筒体10の近位端が当接するため、スペーサー60の遠位端の内径は外筒体10の近位端の外径より小さい。また、スペーサー60の内側にハンドル50が収納されて、外筒体10の軸方向の位置がずれることを抑制するために、スペーサー60の近位端の内径は、ハンドル50の遠位端の外径よりも小さい。
【0072】
また、スペーサー60の内筒体20の外側への取り付けおよび取り外しが容易に行なえるように、スペーサー60は、例えば軸方向に沿って内腔に連通している開口、スリットや、面ファスナー、スナップファスナー等の係合部材が設けられていてもよい。スペーサー60の材料としては、例えば、ポリプロピレン等の合成樹脂や、ポリウレタン発泡体等の発泡プラスチックを用いることができる。
【0073】
本発明のクリップ装置1は、外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入可能である。クリップ装置1の外筒体10の内径と内筒体20の外径には差があるため、内視鏡の鉗子チャンネルの湾曲に沿ってクリップ装置1が湾曲する結果、外筒体10内で内筒体20が蛇行して内筒体20の道のりが大きくなり、相対的に内筒体20の遠位端が外筒体10の遠位端よりも近位側に移動し、外筒体10内に内筒体20の遠位端とクリップ30が収容されてしまうという状態が発生しうる。この場合、外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入しない状態では、クリップ30の開閉操作を行うことができない。このため、外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入することにより、外筒体10がより近位側に移動してクリップ30と内筒体20の遠位端を外筒体10の遠位端よりも遠位側に配置することができる。この状態で線状物40を近位側に移動させれば、外筒体10内に内筒体20の遠位端とクリップ30が引き込まれることなく、クリップ30と内筒体20の遠位端が当接してクリップ30を閉じることができるため、病変部を効率的に把持することが可能となる。
【0074】
外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入可能とする態様1乃至4について説明する。
【0075】
(実施形態1)
図5および
図6は、クリップ装置1の外筒体10にスリット11が設けられている構成例を示す側面図を表す。
図5は、外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入する前の状態を表し、
図6は、外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入した後の状態を表している。
【0076】
図5に示すように、外筒体10の近位端部にスリット11が設けられていることが好ましい。外筒体10のスリット11が設けられた部分が径方向外方に拡がるため、
図6に示すように、スリット11が設けられた部分にハンドル50の遠位側を挿入することが可能となる。ここで、スリット11は、外筒体10の内外に貫通または非貫通の切れ目であり、ミシン目や溝も含まれる。
【0077】
スリット11は、外筒体10の近位端まで延びていることが好ましい。これにより、外筒体10の近位端で外筒体10を径方向外方に拡げることができるため、ハンドル50の遠位側を挿入しやすくなる。また、外筒体10を径方向外方に拡げやすくするために、スリット11は外筒体10の内外に貫通していることが好ましい。
【0078】
スリット11は、外筒体10の軸方向に沿って設けられることが好ましい。これにより、スリット11が設けられた部分を径方向外方に拡げやすくなる。
【0079】
スリット11を設ける方法は特に制限されず、例えば、回転刃、チューブカッター、レーザーによる切断を用いることができる。
【0080】
スリット11の数は1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。他方、スリット11の数は5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。スリット11の数が多すぎると、外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入する必要がないときでも、スリット11が設けられた部分が径方向に自然に広がってしまうからである。製造上の効率化の観点からは、スリット11の数は偶数であることが好ましい。
【0081】
スリット11の軸方向における長さは、閉状態のクリップ30の軸方向の長さよりも長いことが好ましい。この場合、外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入したときに、外筒体10の遠位側では内筒体20の遠位側およびクリップ30が外筒体10から露出するため、クリップ30の閉操作を行いやすくなる。
【0082】
スリット11の長さは、閉状態のクリップ30の軸方向の長さの0.9倍以上とすることができ、閉状態のクリップ30の軸方向の長さより長いことが好ましい。例えば閉状態のクリップ30の軸方向の長さが、約5.7mmである場合、スリット11の軸方向の長さは、例えば、6mm以上であることが好ましい。
【0083】
(実施形態2)
図7および
図8は、クリップ装置1の外筒体10に拡径部12が設けられている構成例を示す側面図を表す。
図7は、外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入する前の状態を表し、
図8は、外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入した後の状態を表している。
【0084】
図7に示すように、外筒体10の近位端部に、遠位側よりも内径が大きい拡径部12が設けられていることが好ましい。
図8に示すように拡径部12における外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入することが可能となるからである。
【0085】
拡径部12の内径は、外筒体10の遠位側の内径よりも大きく形成されていればよく、拡径部12の内径は、外筒体10の遠位側の内径の1.5倍以上であることが好ましい。
【0086】
拡径部12の形状は、ハンドル50の遠位側の形状にあわせて形成されていることが好ましい。よって、拡径部12は、近位側に向かって内径が大きくなる錐形状であることが好ましい。
【0087】
実施形態1で示したスリット11と同様に、拡径部12の軸方向における長さは、閉状態のクリップ30の軸方向の長さよりも長いことが好ましく、具体的には、6mm以上であることが好ましい。
【0088】
(実施形態3)
図9乃至
図11は、クリップ装置1の内筒体20に膨張部21が設けられている構成例を示す側面図を表す。
図9は、外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入する前の状態を表し、
図10は、膨張部21を収縮させて、内筒体20の外径を小さくした状態を表し、
図11は、外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入した後の状態を表している。
【0089】
図9に示すように、内筒体20の近位端部に、内筒体20の外径を変更できる膨張部21が設けられていてもよい。本実施の形態では、外筒体10の近位側の内径が、ハンドル50の遠位側の外径よりも大きいことが好ましい。内筒体20に設けられる膨張部21は、上述したスペーサー60と同じ役割を担う。すなわち、内視鏡の鉗子チャンネル内にクリップ装置1を挿入する際に膨張部21を膨張させることにより、外筒体10の位置が軸方向にずれて鉗子チャンネル内で外筒体10からクリップ30が露出することを抑止する。
【0090】
内筒体20の膨張部21は多重管構造をしている。膨張部21の内管と外管の間に気体を封入することにより膨張部21を膨張させることができ、気体を内筒体外に排出することにより膨張部21を収縮させることができる。
【0091】
膨張部21の膨張状態において、内筒体20の膨張部21の最外径が、外筒体10の内径よりも大きいことが好ましい。内筒体20の膨張部21は外筒体10内に挿入されないため、外筒体10から内筒体20の遠位端やクリップ30を露出しにくくすることができる。
【0092】
膨張部21の収縮状態において、内筒体20の膨張部21の最外径が、外筒体10の内径よりも小さいことが好ましい。内筒体20の膨張部21が外筒体10内に挿入されるため、クリップ30と内筒体20の遠位端を外筒体10の遠位端よりも遠位側に配置することができる。この状態で線状物40を近位側に移動させれば、外筒体10内に内筒体20の遠位端とクリップ30が引き込まれることなく、クリップ30と内筒体20の遠位端が当接してクリップ30を閉じることができるため、病変部を効率的に把持することが可能となる。
【0093】
(実施形態4)
実施形態1乃至2では外筒体10の近位側の内径を大きくすることにより、外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入可能とする例を示したが、以下に示すようにハンドル50の遠位側の内径を変えることもできる。すなわち、本発明の内視鏡用クリップ装置1は、ハンドル50の遠位端部の外径が縮小可能であってもよい。ハンドル50の外径を変えることによっても、外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入可能にすることができる。
【0094】
ハンドル50の遠位端部の外径を縮小可能とする方法としては、例えば、ハンドル50の遠位端部に実施形態3で説明したような膨張部を設ける態様や、ハンドル50の遠位端部に、ハンドル50内に収容可能な突起を設ける態様がある。
【0095】
(他の実施形態)
本発明の別の内視鏡用クリップ装置1は、外筒体10と、外筒体10内に配置されている内筒体20と、内筒体20内に配置されている線状物40と、内筒体20の遠位側に配置されており、線状物40に接続されているクリップ30と、内筒体20の近位側に接続されているハンドル50と、を有しており、外筒体10の近位側の一部が取り外し可能であることを特徴とする。本発明の別の内視鏡用クリップ装置1は、外筒体10の近位側の一部が取り外し可能であるため、外筒体10の近位側の一部を取り外さない状態では、内筒体20の遠位端とクリップ30は外筒体10の遠位側から露出しにくく、外筒体10の近位側の一部を取り外した状態では外筒体10の遠位側から内筒体20の遠位端とクリップ30が露出しやすいものである。このため、内筒体20に対して近位側に線状物40を移動させてクリップ30を閉じる際に、外筒体10の近位側の一部を取り外してクリップ30と内筒体20の遠位端を外筒体10の遠位端よりも遠位側に配置することができる。この状態で線状物40を近位側に移動させれば、外筒体10内に内筒体20の遠位端とクリップ30が引き込まれることなく、クリップ30と内筒体20の遠位端が当接してクリップ30を閉じることができるため、病変部を効率的に把持することが可能となる。
【0096】
本発明において外筒体10の近位側の一部を取り外すとは、近位側の一部が外筒体10から分離されていること、または近位側の一部が完全に外筒体10とは分離せずに未だ外筒体10と接続されていることを意味する。
【0097】
外筒体10、内筒体20、クリップ30、線状物40、ハンドル50の構成については、既に説明したとおりである。
【0098】
図12に示すように、外筒体10の近位側の一部を取り外し可能とするために、例えば、外筒体10に切り取り線15を形成することができる。切り取り線15は、取り外し位置を案内する外筒体10の内外に貫通または非貫通の線であり、例えばミシン目や溝である。
【0099】
図12に示すように、切り取り線15は、外筒体10の近位端から遠位側に向かってらせん状に形成されていることが好ましい。このような切り取り線15に従えば、外筒体10の近位側の一部を容易に取り外すことができる。
【0100】
図には示していないが、切り取り線15は、外筒体10の周方向に沿って形成されていることが好ましい。この場合、切り取り線15に沿って周方向に外筒体10を取り外すことができる。
【0101】
また、
図13に示すように、外筒体10の軸方向に沿ってスリット11が設けられて、外筒体10の周方向に沿って切り取り線15が形成されていることが好ましい。すなわち、スリット11と切り取り線15が直交していることが好ましい。この場合、スリット11を引き金として切り取り線15に沿って周方向に外筒体10を取り外すことができる。
【0102】
2.内視鏡用クリップ装置の作動方法
(第1の作動方法)
本発明の内視鏡用クリップ装置1の作動方法は、外筒体10と、外筒体10内に配置されている内筒体20と、内筒体20内に配置されている線状物40と、内筒体20の遠位側に配置されており、線状物40に接続されているクリップ30と、内筒体20の近位側に接続されているハンドル50と、を有する内視鏡用クリップ装置1において、外筒体10を内筒体20に対して近位側に移動させて、外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入するステップと、線状物40を内筒体20に対して近位側に移動させて、クリップ30を閉じるステップと、を含むことを特徴とする。
【0103】
本発明の内視鏡用クリップ装置1の作動方法について、
図14乃至
図18を用いて詳細に説明する。
図14乃至
図17は、本発明の実施形態に係る内視鏡用クリップ装置1の作動方法を示す側面図(一部断面図)を表し、
図18は本発明の実施形態に係るクリップ装置1の作動方法を示す側面図を表す。なお、内視鏡用クリップ装置1を構成する各部材については、本明細書の「1.内視鏡用クリップ装置」に記載したとおりである。以下では、外筒体10の近位端部にスリット11が設けられ、外筒体10の近位側の外側に補助ハンドル52が設けられる例を用いて説明する。
【0104】
病変部の位置を特定しやすくするために、病変部に色素を散布したり、病変部の周辺にマーキングを施す。マーキングは、例えば、高周波器具を用いて病変部の周辺を焼灼することにより行われる。
【0105】
また、病変部を切除しやすくするために、病変部の筋層と粘膜下層との間に生理食塩水またはヒアルロン酸を注入して、病変部を隆起させる。
【0106】
鉗子チャンネル内にクリップ装置1を挿入する際に外筒体10の軸方向の位置がずれないように、
図2に示すように、内筒体20の外側で、外筒体10よりも近位側かつハンドル50よりも遠位側にスペーサー60を取り付けてもよい。
【0107】
内視鏡の鉗子チャンネル内にクリップ装置1を挿入する際に鉗子チャンネル等を傷つけないよう、外筒体10内に内筒体20およびクリップ30を収納する(ステップS21)。詳細には、外筒体10に接続された補助ハンドル52を、内筒体20およびハンドル50に対して遠位側に少しずつ動かし、
図14に示すようにクリップ30が外筒体10から露出しない位置まで移動する。このとき、クリップ30は外筒体10内に徐々に収納されていくため、クリップ本体31の把持基材32、33の開度は低下する。
【0108】
クリップ装置1の遠位側を内視鏡の鉗子口から鉗子チャンネル内に挿入し、クリップ装置1の遠位側を対象物である患者の病変部まで到達させる(ステップS22)。術者は内視鏡から取得した映像を用いて、病変部の位置や病変部の状況等を観察しながらクリップ装置1の移動を行う。スペーサー60が設けられている場合は、内筒体20の外側に取り付けていたスペーサー60を外筒体10から取り外す。
【0109】
内筒体20に対して外筒体10を近位側に移動させる(ステップS23)。具体的には、外筒体10に接続された補助ハンドル52を、内筒体20およびハンドル50に対して近位側に少しずつ動かし、
図15に示すように外筒体10からクリップ30を露出させる。外筒体10の内腔形状によって拘束されていたクリップ本体31の把持基材32、33が外筒体10から露出されるのに伴い、クリップ30の開度は次第に大きくなる。しかし、この場合に、外筒体10の内径と内筒体20の外径には差があるため、内視鏡の鉗子チャンネルの湾曲に沿ってクリップ装置1が湾曲する結果、外筒体10を近位側に移動させても、外筒体10内で内筒体20が蛇行して内筒体20の道のりが大きくなり、相対的に内筒体20の遠位端が外筒体10の遠位端よりも近位側に移動し、クリップ30が外筒体10から露出しない場合がある。
【0110】
このような場合に、外筒体10の近位端部のスリット11が設けられた部分を径方向外方に拡げる(ステップS24)。これにより、外筒体10の近位端部の内径が拡がるため、外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入しやすくなる。
【0111】
図6に示すように、外筒体10を内筒体20に対して近位側に移動させて、外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入する(ステップS25)。詳細には、外筒体10の近位端部に設けられたスリット11によって内径が拡げられた外筒体10の近位側にハンドル50の遠位側を挿入する。このため、本発明では、クリップ30と内筒体20の遠位端を外筒体10の遠位端から露出させることができる。この状態で線状物40を近位側に移動させれば、外筒体10内に内筒体20の遠位端とクリップ30が引き込まれることなく、クリップ30と内筒体20の遠位端が当接してクリップ30を閉じることができるため、病変部を効率的に把持することが可能となる。
【0112】
外筒体10の遠位側から露出したクリップ30と病変部との位置合わせを行う(ステップS26)。
【0113】
ハンドル50の近位側から露出している線状物40を把持して、線状物40を内筒体20に対して近位側に移動させて、クリップ30を閉じる(ステップS27)。線状物40を内筒体20に対して近位側に移動させていくと、クリップ30は近位側から内筒体20内に収納されることによって、クリップ30の開度は徐々に小さくなり、やがてクリップ30は閉状態になる。クリップ本体31に設けられた締結具35の外径は内筒体20の内径よりも大きいため、締結具35の近位端と内筒体20の遠位端が当接し、締結具35は内筒体20内に引き込まれない。その結果、
図16に示すように病変部100がクリップ30の把持基材32、33によって把持される。なお、ハンドル50の近位側から露出する線状物40を固定する固定器具が設けられる場合には、線状物40の代わりに固定器具を近位側に移動させることによりクリップ30を閉じて、病変部100を把持してもよい。
【0114】
線状物40を近位側に移動させることにより、クリップ30によって病変部100を把持した状態で、病変部100と粘膜下層101との間に電気メス等を入れて病変部100を切除する(ステップS28)。この際、線状物40を近位端側に引いて、クリップ30により病変部100を牽引すると病変部100を切除しやすい。病変部100の切除にあたっては、病変部100の筋層と粘膜下層101との間に生理食塩水またはヒアルロン酸を注入して、病変部100を隆起させてもよい。
【0115】
図17に示すように病変部100を切除できたら、ハンドル50および補助ハンドル52を近位側に移動させて、外筒体10および内筒体20を体外に引き抜く(ステップS29)。線状物40に固定器具が取り付けられたクリップ装置1を用いる際に、固定器具の最外径が内筒体20の内径よりも大きい場合には、外筒体10および内筒体20を体外に引き抜く前にあらかじめ線状物40から固定器具を外しておく。
【0116】
図18に示すように、線状物40の近位側を把持して、線状物40を近位側に移動させる(ステップS30)。これにより、線状物40とともに病変部100を掴んだクリップ30を体外に取り出す操作を容易に行うことができる。
【0117】
病変部100が外筒体10内に収められる大きさの場合には、ステップS29およびステップS30の代わりに、外筒体10、内筒体20、線状物40を近位側に移動させてもよい(ステップS40)。詳細には、ハンドル50、補助ハンドル52、線状物40を把持して、ハンドル50、補助ハンドル52、線状物40を近位側に移動させる。これにより、外筒体10および内筒体20とともに、クリップ30および線状物40が体外に引き抜かれる。
【0118】
なお、外筒体10の近位端部にスリットではなく、
図7に示すような拡径部12が設けられる場合には、ステップS24およびS25に代えて、以下のステップS50を実施する。
【0119】
図8に示すように、外筒体10を内筒体20に対して近位側に移動させて、外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入する(ステップS50)。詳細には、外筒体10の近位端部に設けられた拡径部12内にハンドル50の遠位側を挿入する。
【0120】
また、外筒体10の近位端部にスリットではなく、
図9に示すように内筒体20の近位端部に膨張部21が設けられる場合には、ステップS21の前にステップS51を実施し、ステップS22とステップS23の間にステップS52を実施し、ステップS24およびS25に代えてステップS53を実施する。
【0121】
鉗子チャンネル内にクリップ装置1を挿入する際に、外筒体10の軸方向の位置がずれることを抑制するために、
図9に示すように、内筒体20の近位端部に設けられた膨張部21を膨張させる(ステップS51)。具体的には、膨張部21の内管と外管の間に気体を封入することにより膨張部21を膨張させる。
【0122】
図10に示すように、内筒体20の膨張部21を収縮させる(ステップS52)。具体的には、膨張部21の内管と外管の間に封入していた気体を内筒体外に排出することにより膨張部21を収縮させる。
【0123】
図11に示すように、外筒体10を内筒体20に対して近位側に移動させて、外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入する(ステップS53)。内筒体20の膨張部21が収縮しているため、外筒体10内にハンドル50の遠位側を挿入することができる。
【0124】
(第2の作動方法)
本発明の内視鏡用クリップ装置1の別の作動方法(第2の作動方法)は、外筒体10と、外筒体10内に配置されている内筒体20と、内筒体20内に配置されている線状物40と、内筒体20の遠位側に配置されており、線状物40に接続されているクリップ30と、内筒体20の近位側に接続されているハンドル50と、を有する内視鏡用クリップ装置1において、外筒体10の近位側の一部を取り外すステップと、外筒体10を内筒体20に対して近位側に移動させるステップと、線状物40を内筒体20に対して近位側に移動させて、クリップ30を閉じるステップと、を含むことを特徴とする。
【0125】
本発明の内視鏡用クリップ装置1の別の作動方法は、上述した作動方法のステップS24およびS25の代わりに以下のステップS60およびS61を実施する。なお、ここでは外筒体10の近位端部に、
図12に示すような切り取り線15が設けられている例を用いて説明する。切り取り線15は、外筒体10の近位端から遠位側に向かってらせん状に形成されている。
【0126】
外筒体10の近位側の一部を取り外す(ステップS60)。詳細には、外筒体10の近位端部に設けられている切り取り線15に従って、外筒体10の近位側の一部を取り外す。このため、本発明では、クリップ30と内筒体20の遠位端を外筒体10の遠位端から露出させることができる。
【0127】
次いで、外筒体10を内筒体20に対して近位側に移動させる(ステップS61)。外筒体10内に内筒体20の遠位端とクリップ30が引き込まれることなく、クリップ30と内筒体20の遠位端が当接してクリップ30を閉じることができるため、病変部を効率的に把持することが可能となる。