【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、固体形態の薬物を体内の種々の場所に送達するための装置、システム、方法、および製剤を提供する。好ましい実施形態は、患者の体内の送達部位への薬物の送達のための装置を対象とする。本装置は、各薬物要素が薬剤を含む、複数の固体形態の薬物要素を貯蔵するように構成される、患者の体内に埋め込まれるように構成される薬剤貯蔵デバイスを備える。多くの好ましい実施形態では、本装置はさらに、薬液または懸濁液を形成するように、体液または体液の混合物とともに少なくとも1つの固体形態の薬物要素を溶解または懸濁させるための手段を備える。溶解および懸濁させるという用語は、以降では同義的に使用され、本願の目的で、溶液という用語はまた、懸濁液も包含する。同様に、溶液および懸濁液という用語は、道義的に使用される。多くの好ましい実施形態では、本装置はさらに、薬液を送達部位に送達するための手段も備える。多くの好ましい実施形態では、送達部位は、固体組織である。固体組織は、心臓の表面を含んでもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、体液とともに少なくとも1つの固体形態の薬物要素を溶解または懸濁させるための手段は、近位および遠位端を有する、可撓性送達部材を備え、近位端は、薬剤貯蔵デバイスに連結される。送達部材はまた、送達部材を通した薬物要素の前進のための管腔を含む。薬物要素を溶解または懸濁させるためのそのような手段はさらに、送達部材管腔を通して薬物要素を前進させるように構成される前進部材と、送達部材の遠位端に連結される捕捉部材とを備えてもよい。捕捉チャンバは、薬物要素を受容するための内部容積を有する筐体を含み、筐体はまた、組織液がチャンバに流入し、そこから流出することを可能にする、少なくとも1つの多孔質区画を含んでもよい。チャンバは、送達部材から受容される薬物要素を保持し、内部容積内で組織液に薬物要素を溶解または懸濁させて薬液を形成するように構成される。多くの好ましい実施形態はさらに、薬液または懸濁液を送達部位に送達するための手段を備える。薬液または懸濁液を送達部位に送達するための手段は、薬液を送達部位に送達するように構成される、捕捉チャンバの少なくとも1つの多孔質区画を備える。多孔質区画は、薬液が捕捉チャンバから送達部位の中へ入ることを可能にする。この送達を促進するために、多くの好ましい実施形態では、少なくとも1つの多孔質区画は、薬液を送達部位に送達するよう、組織に接触するように構成される組織接触多孔質区画を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの多孔質区画はさらに、非組織接触多孔質区画を備えてもよい。組織接触区画は、第1の多孔性を有してもよく、非組織接触区画は、第2の多孔性を有してもよい。
【0010】
多くの実施形態は、種々の形態の不整脈(例えば、心房細動)または他の心臓伝導障害等の症状の治療のために、1つ以上の薬剤を含む固体形態の薬物を心臓に送達するための埋込装置を提供する。特定の実施形態は、心房細動を治療するように、ペレットまたは他の固体形態の薬物要素等の固体形態の薬物を心臓の表面上の心筋送達部位に送達するための埋込装置を提供する。
【0011】
一実施形態では、本発明は、薬剤貯蔵デバイスに連結される薬剤送達部材を備える、心不整脈または他の心臓伝導障害の治療のための装置を提供する。薬剤貯蔵デバイスは、薬剤を貯蔵するとともに、薬剤送達部材を通して薬剤を心臓または他の場所内の標的組織部位まで前進させるように構成される。多くの実施形態では、それは、電気駆動型ローラまたは他の駆動手段によって前進させられるスタイレット等の薬剤前進手段を含む。薬剤貯蔵デバイスは、胸部領域または患者の胴体上の他の領域中で皮下に埋め込むことができる。また、それは、ペースメーカー筐体に、または電気信号を心臓に送信するために使用される別のデバイスの筐体に組み込まれてもよい。代替として、それは、ペースメイキングデバイスと同一または異なる場所に配置され得る、各自の筐体を有してもよい。
【0012】
薬剤送達部材は、典型的には、心筋への薬剤ペレットの送達のための1つ以上の管腔を有する、カテーテルを備えるであろう。カテーテルは、当技術分野で公知である任意の数の生体適合性ポリマーを含んでもよい。多くの実施形態では、カテーテルはまた、心臓の電気的活動を感知するための少なくとも第1および第2の導線も含むであろう。導線は、任意の伝導性金属を含み、望ましくは、それらの長さの大部分で絶縁される。それらは、カテーテルの周囲でコイル状であり得、および/または薬剤送達管腔から分離したカテーテルの管腔内に配置されてもよい。好ましい実施形態では、カテーテルの全体または一部分は、2つの管状部材の間に位置付けられた導線を伴って同心円状に配列される、第1(内側)および第2(外側)の管状部材(内側および外側カテーテルとも呼ばれる)を備えてもよい。望ましくは、この構成は、少なくともカテーテルの中間部分に使用されるが、カテーテルの実質的に全長に使用されてもよい。特定の好ましい実施形態では、導線は、第1の管状部材の外周でコイル状であり、次いで、第2の管状部材が導線および内側部材を覆う。コイル状導線はまた、カテーテルが屈折、捻転、または圧着位置に置かれた場合に薬剤送達管腔の開通性を維持するよう、ねじれ支持をカテーテルに提供するように配列されてもよい。開通性を維持するように薬剤送達管腔を支持するための別の実施形態では、管腔は、管腔の内面の周囲に巻装された0.005インチトリフィラ等の支持コイルを含むことができる。管状部材は、心臓壁上の種々の場所に配置される遠位区画を有し、薬剤貯蔵デバイスに接続されるよう、カテーテルが屈折および屈曲することを可能にするよう、シリコーンゴム(または当技術分野で公知である他の生体適合性弾性材料)を含むことができる。
【0013】
カテーテルは、薬剤貯蔵デバイスに連結される一方の端(近位端)と、心筋の一部に隣接して位置付けられ得る、以下で説明される薬剤捕捉チャンバに連結される他方の端(遠位端)とを有する。いくつかの実施形態では、本装置は、捕捉チャンバを含まず、したがって、カテーテルの遠位端は、心筋に隣接して位置付けられてもよい。カテーテルは、固体薬剤ペレットが薬剤貯蔵デバイスからカテーテル管腔を通して前進させられ、次いで、心臓の表面上またはその付近で直接放出されるか、または心臓の(例えば、心房の)壁(例えば、心筋壁)に近接して位置付けられる捕捉チャンバの中へ放出されることを可能にするように構成される。多くの実施形態では、カテーテルは、心臓の心外膜面に近接してペレットを配置するように構成される。しかしながら、左心房または右心房あるいは心室内の心内膜面を含む、他の場所での配置も考慮される。薬剤ペレットは、そのように配置されたときに溶解し、心房細動または他の関連症状の発作を終結させる、および/または別様に軽減するために薬剤の治療的有効量を送達するように構成される。薬剤ペレットは、電気モータまたは他の前進手段によって薬剤貯蔵デバイスから前進させられる前進可能なスタイレットまたは前進部材を用いて、カテーテルまたは他の類似構造(例えば、ハイポチューブ)の内側管腔を通して輸送される。1つ以上の実施形態によると、スタイレットは、例えば、スプールに巻装され、次いで、電気駆動型ピンチローラ等の駆動手段によって巻解される、金属ワイヤまたはリボンを備えてもよい。スタイレットは、典型的には、薬剤送達管腔を通して隔膜から薬剤ペレットを押し出すように定寸される、ボール先端を有するであろう。しかしながら、ホットドッグ形状、または薬剤ペレットの直径に係合するように定寸された凹面を有する凹状先端等の他の形状も考慮される。また、スタイレット先端は、ペレットが前進させられていること、およびペレットが放出されたことを判定することができるよう、薬剤ペレットとの接触を感知するように構成されてもよい。これは、先端が薬剤ペレットと接触し、および接触を断つときに、静電容量の変化を感知するよう、薬剤ペレットに容量的に連結されるように先端および/またはスタイレットを構成することによって達成することができる。
【0014】
多くの実施形態では、カテーテルの遠位先端は、血液または他の溢流がチャンバに流入または浸透し、次いで、流出または浸出することを可能にしながら、薬剤ペレットを保持するように構成される、捕捉チャンバに連結される。これは、薬剤が、チャンバに流入または浸透する血液(または他の流体)によって溶解させられ、次いで、血液または他の流体が流出または浸出するにつれて、心筋に送達されることを可能にする。捕捉チャンバは、典型的には、非多孔質区画と、多孔質区画とを備えるであろう。いくつかの実施形態では、捕捉チャンバの実質的に全体が、多孔質であり得る。筐体の非多孔質区画は、当技術分野で公知である種々の生体適合性ポリマーを含むことができ、その血液接触面は、シリコーン、ポリウレタン、およびその実施例がTEFLON(登録商標)を含む発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)等の当技術分野で公知である1つ以上の非血栓形成材料を含んでもよい。また、非多孔質および多孔質区画の一方または両方は、血栓形成および血小板付着を低減させる薬剤を溶出するように構成される、薬剤溶出被覆を含むことができる。そのような被覆は、パクリタキセル、および当技術分野で公知である他の抗血栓形成被覆を含むことができる。
【0015】
典型的には、多孔質区画は、心筋壁と接触して、または近接近して位置付けられる、筐体の一部分(例えば、底部分)を備える。しかしながら、いくつかの実施形態では、捕捉チャンバの全てまたは複数の部分(例えば、底部および側面)を多孔質材料から製造することができる。多孔質区画は、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはNYLON等の種々のポリマー繊維材料等の任意の数の多孔質生体材料から製造することができる。好ましい実施形態では、チャンバは、織成または編成のいずれかであり得る、DACRONメッシュ等の多孔質DACRONから製造することができる。多孔質区画のサイズおよび多孔性は、血液(または他の組織液)が、選択された速度でチャンバに浸透するか、またはチャンバから浸出することを可能にし、ひいては、薬剤ペレットの選択された崩壊速度を達成するように、選択することができる。いくつかの実施形態では、捕捉チャンバの多孔質区画は、様々な多孔性を有する多孔質材料から製造することができる。例えば、チャンバの大部分が多孔質である実施形態については、チャンバの最上部および側面は、第1の多孔性を有する材料から製造することができる一方で、心筋壁と接触している部分(底部)は、薬剤を含有する溶液(血液または他の体液)に接触した心筋を浸すよう、心筋壁と接触している表面上に容易に吸い出すことを可能にしながら、チャンバ内で溶解した薬剤を有する血液または他の流体を保持するよう、典型的には、第1の多孔性よりも高い第2の多孔性を有する材料から製造することができる。使用中に、そのような指向的に変動する多孔性を有するチャンバの実施形態は、送達の量および速度の両方の観点から、心筋壁への薬剤の送達を向上させる働きをする。
【0016】
捕捉チャンバは、望ましくは、壁に隣接する薬剤血液溶液を保持し、次いで、例えば、心筋壁の中への拡散により、経皮的送達によって心筋の中へ薬剤を輸送するよう、心筋壁に隣接して、または心筋壁の付近に位置付けられる。多くの実施形態では、捕捉チャンバは、心臓壁の中に固着される螺旋ワイヤ(チャンバに連結される)または他の固定デバイスを用いて、心筋壁に固定される。本発明の実施形態は、様々なピッチおよび数のコイルを有する、螺旋ワイヤのいくつかの構成を考慮する。多くの実施形態では、螺旋ワイヤは、導線のうちの1本の絶縁先端区画を備える(先端区画はまた、心筋組織と電気的に接触する電極としての機能も果たす)。他の固着手段も考慮される。
【0017】
カテーテルの遠位先端は、捕捉チャンバの中へ延在し、内側管腔の中への流体侵入を防止するための弾性自己閉鎖式隔膜を含んでもよい。隔膜は、隔膜を通る薬剤ペレットの通過を可能にするよう、薬剤ペレットがスリットに対して前進させられたときに開放し、次いで、カテーテル管腔の中への血液または他の流体の流入を防止するよう、閉鎖するように構成される、スリットを含む。
【0018】
多くの実施形態では、本装置は、心筋または他の場所の中へ薬物ペレットを送達する駆動源の作動および制御を含む、薬物送達プロセスの1つ以上の側面を制御するためのコントローラに連結される。コントローラは、薬物が長期間にわたって定期的な間隔で(例えば、1日に1回または2回等)送達される、送達計画を含むようにプログラムすることができる。それはまた、薬物の送達を開始するよう、または(例えば、1日1回から1日2回に)送達計画を変更するよう、(例えば、無線または別様の)信号を受信するように構成することもできる。このようにして、患者または医療提供者は、特定の事象(例えば、不整脈の発作)、または患者の症状あるいは診断の長期的変化に応じて、薬物の送達を制御することができる。
【0019】
コントローラは、ペースメーカーまたはセンサに連結するか、あるいは別様にそこから入力を受信することができる。コントローラは、不整脈の発作等の症状を示すセンサから入力を受信するとき、病状を治療するよう、心臓または他の標的組織部位への1つ以上の薬物ペレットの送達を開始する。センサからの初期および後続の入力の両方は、症状が消散させられるか、または別様に治療されるまで、長期間にわたって薬物ペレットの送達を漸増するために使用することができる。コントローラはまた、送達された薬剤の組織濃度を測定するように構成される他のセンサから入力を受信することもできる。これらの入力はまた、(例えば、血漿、組織等の中の)薬剤の選択された濃度を達成するように、薬物の送達を漸増するために使用することもできる。薬剤センサは、体内の複数の部位での薬剤の分布の薬物動態モデルを作成するために、カテーテルの上または多孔質チャンバの外側等の薬剤送達デバイスの遠位部分上、ならびに体内の他の部位(例えば、静脈または動脈)に位置付けることができる。本装置はまた、薬物ペレットが使い果たされたとき、および/または正確にいくつ残っているかを示す、コントローラに連結されたセンサを含むこともできる。コントローラは、ひいては、携帯電話、携帯用モニタ、または(例えば、医師の診療室における)遠隔モニタ等の外部通信デバイスにこのデータを信号伝達することができる。このようにして、患者および/または医療提供者は、本装置が薬物不足になる前に、適切な措置を講じることができる。
【0020】
薬物のペレットまたは他の固体形態は、心臓の心内膜または心外膜面等の送達部位に送達され、そこで、心筋壁等の標的組織部位で薬剤の所望の濃度を生じるよう、分解され、崩壊し、身体組織液によって吸収されるように構成される。いくつかの用途では、送達部位は、標的部位と同一、例えば、心臓であり得る。他の用途では、標的部位は、送達部位とは異なり得、例えば、送達部位は、胸部内の筋肉組織であり得、標的部位は、心臓または肝臓であり得る。送達部位は、下層の筋肉組織に送達するように、標的部位に隣接し、例えば、脂肪組織であり得るか、または反対ではない部位に配置することができ、例えば、心臓の部位に到達するための筋肉内送達であり得る。それぞれの場合において、薬物ペレットは、薬剤の選択された用量を含むことができ、心臓の心内膜または心外膜面等の標的組織部位で薬剤の治療的有効濃度をもたらすよう、崩壊して身体組織液によって溶解させられるように構成することができる。多くの用途では、これは、送達部位で身体組織液によって溶解させられているペレット(例えば、心外膜を浸す間質液または心内膜を浸す血液)を伴い、次いで、薬剤が心筋壁の中へ拡散する。したがって、これらおよび他の用途では、ペレット中の薬剤の用量は、ペレットの溶解中および後の選択された期間にわたって、薬剤の選択された濃度(または濃度範囲)を達成するように漸増することができる。
【0021】
多くの実施形態では、ペレット(薬剤用量を含む)は、崩壊し、多孔質チャンバに浸透するか、または別様に流入する、血液または組織液によって溶解させられるように構成される。不整脈等の種々の心調律障害を治療するための特定の実施形態では、ペレットは、急速に崩壊し、多孔質チャンバ内で血液または他の流体に溶解させられるように構成される。これは、ペレットの中または上の1つ以上の超崩壊剤ならびに崩壊増進特徴(例えば、細孔、亀裂、または他の貫入)の使用を通して達成することができる。崩壊剤の特定の選択は、捕捉チャンバ内の流体および流動条件に合致させることができる。チャンバの中への流速がより遅い、および/または流体の粘度がより高い(例えば、血液対間質液)場合に、より高速の崩壊剤をチャンバ内で使用することができる。それはまた、ペレット構造を弱め、流体の流入のための亀裂および他の構造欠陥を作成し、またはより小さい断片へのペレットの分解を開始するように、機械、電磁、音響、または他のエネルギーを用いて、捕捉チャンバの中への送達前または後にペレットを治療することによって達成することもできる。
【0022】
種々の用途では、本発明の実施形態は、例えば、冠動脈不整脈(心房および心室の両方)、冠動脈虚血(例えば、心臓発作をもたらすものを含む、狭窄または閉塞動脈による)、脳虚血、脳卒中、貧血、または他の類似症状を含む、いくつかの病状の治療を提供するように固体形態の薬剤を送達するために使用することができる。本装置は、標的組織部位(例えば、心臓)、またはその付近に、あるいは遠隔送達部位に(例えば、胸部または大腿で筋肉内に)埋め込むことができる。
【0023】
本発明を使用するための方法の例示的実施形態では、本装置は、心臓等の選択された送達部位に、またはその付近に埋め込むことができる。本デバイスが薬剤を心筋壁に送達するために使用される実施形態については、コルクスクリュー固定要素または他の固定デバイスを使用して、導線および多孔質チャンバを心内膜または心外膜壁に固定することができる。埋込は、例えば、血管系を通した経皮アクセスを介して、切開または低侵襲手技を使用して行うことができる。埋込前に、薬剤貯留部は、長期間、例えば、数年にわたって、送達部位へのペレットの送達を提供するように、選択された数のペレットを搭載することができる。いったん埋め込まれると、ペレットは、劣化またはペレットへの悪影響(例えば、薬剤効力または治療的有効性の損失)を伴わずに長期間(例えば、1、2、5年以上)にわたって本装置の中に貯蔵することができる。本装置は、定期的な間隔で(例えば、1日、1週間、1ヶ月に1回等)、またはセンサからの入力に応答して、固体形態の薬物を送達部位に送達することができる。後者の場合、入力は、不整脈の発作等の特定の病状または事象を示すことができる。本明細書で説明されるコントローラの実施形態は、センサ入力、および/または定期的間隔で送達を採用する本発明の実施形態については送達の時間間隔に基づいて、送達を開始するときを判定するために使用することができる。いずれにしても、コントローラは、信号を薬剤貯蔵デバイスに送信することができる。そこで、薬剤は、崩壊/分解し、局所標的組織部位を治療するように局所組織液に溶解させられる(例えば、脳を治療するようにCSFに溶解する)か、または後に血流に吸収され、遠隔標的組織部位(例えば、肝臓、心臓等)に運搬されるか、あるいは両方である。病状を予測する生理学的データ(例えば、血糖)を提供するセンサ、または薬剤の局所および/または血漿中濃度を感知するように構成される別のセンサからの入力に基づいて、さらなるペレットを送達することができる。いくつかの実施形態では、ペレット送達は、以前に送達されたペレットの崩壊状態を感知することによって制御することができる。例えば、以前のペレットが特定の崩壊状態にある(例えば、完全または実質的に崩壊させられている)と判定されたときに、別のペレットを送達することができる。これは、ペレットから光学、超音波、または電気信号等の信号を送受信することによって達成することができる。例えば、光学信号反射率の使用について、崩壊状態を判定するために測定値を使用することができる。反射率信号が特定の閾値を下回るときに、特定の崩壊状態を判定することができる。反射した超音波またはインピーダンスの使用のために、類似アプローチを使用することができる。ペレットは、反射した超音波、光学、または他の信号を増進するように、種々の音波発生、または光学的不透明、または他の薬剤さえも含むことができる。ペレットはまた、ペレットの崩壊状態の指示を提供するように構成されるパターン、サイズ、または形状のうちの1つ以上を有する、種々の光学指標を含んでもよい。
【0024】
本発明のこれらおよび他の実施形態および側面のさらなる詳細が、添付図面を参照して、以下でさらに十分に説明される。
例えば、本発明は以下を提供する。
(項目1)
患者の体内の送達部位への薬物の送達のための装置であって、前記装置は、
前記患者の体内に埋め込まれるように構成された薬剤貯蔵デバイスであって、前記貯蔵デバイスは、複数の固体形態の薬物要素を貯蔵するように構成され、各薬物要素が薬剤を含む、薬剤貯蔵デバイスと、
薬液を形成するように、体液とともに少なくとも1つの固体形態の薬物要素を溶解または懸濁させるための手段と、
前記薬液を前記送達部位に送達するための手段と
を備える、装置。
(項目2)
薬液を形成するように、前記少なくとも1つの固体形態の薬物要素を溶解または懸濁させるための前記手段は、
近位および遠位端を有する可撓性送達部材であって、前記近位端は、前記薬剤貯蔵デバイスに連結され、前記送達部材は、前記送達部材を通した前記薬物要素の前進のための管腔を含む、可撓性送達部材と、
前記送達部材管腔を通して前記薬物要素を前進させるように構成された前進部材と、
前記送達部材の前記遠位端に連結された捕捉チャンバであって、前記捕捉チャンバは、前記薬物要素を受容するための内部容積を有する筐体を含み、前記筐体は、組織液が前記チャンバに流入し、前記チャンバから流出することを可能にする少なくとも1つの多孔質区画を含む、捕捉チャンバと
を備え、
前記チャンバは、i)前記送達部材から受容された薬物要素を保持し、ii)前記内部容積内で組織液に前記薬物要素を溶解または懸濁させて薬液を形成するように構成され、
前記薬液を送達するための前記手段は、前記薬液を前記送達部位に送達するように構成される、前記捕捉チャンバの少なくとも1つの多孔質区画を備え、
前記送達部位は、固体組織を含む、項目1に記載の装置。
(項目3)
前記少なくとも1つの多孔質区画は、前記薬液を前記送達部位に送達するよう、組織に接触するように構成された組織接触多孔質区画を含み、前記送達部位は、心臓の表面を含む、項目2に記載の装置。
(項目4)
前記少なくとも1つの多孔質区画はさらに、非組織接触多孔質区画を備え、前記組織接触多孔質区画は、第1の多孔性を有し、前記非組織接触多孔質区画は、第2の多孔性を有する、項目3に記載の装置。
(項目5)
前記組織液は、血液または間質液を含む、項目2に記載の装置。
(項目6)
前記心臓表面は、心臓の心房表面である、項目3に記載の装置。
(項目7)
前記組織接触表面は、鼓動を打っている心臓の壁運動を妨げないよう、屈折および屈曲するように構成されている、項目3に記載の装置。
(項目8)
前記捕捉チャンバは、鼓動を打っている心臓の壁運動を妨げないように構成されている、項目2に記載の装置。
(項目9)
前記捕捉チャンバは、鼓動を打っている心臓の壁運動を妨げないように構成される輪郭、可撓性、または質量のうちの少なくとも1つを有する、項目8に記載の装置。
(項目10)
前記捕捉チャンバは、前記捕捉チャンバが配置される、心腔を通る血流を妨げないように構成された輪郭を有する、項目2に記載の装置。
(項目11)
前記前進部材は、金属ワイヤを備える、項目2に記載の装置。
(項目12)
前記前進部材は、前記薬物要素に係合するように構成された球状先端を有する、項目2に記載の装置。
(項目13)
前記前進部材は、前記薬物要素との接触を感知するように構成された先端を有する、項目2に記載の装置。
(項目14)
前記前進部材を前進させるための前記前進部材に連結された駆動手段をさらに備える、項目2に記載の装置。
(項目15)
前記捕捉チャンバは、前記捕捉チャンバを組織表面に固定するための固定デバイスを含む、項目2に記載の装置。
(項目16)
前記固定デバイスは、成形コイル、螺旋形コイル、または金属螺旋形コイルを備える、項目15に記載の装置。
(項目17)
前記固定デバイスはさらに、前記心臓の電気的活動を感知するか、または電気信号を前記心臓に送達する電極として機能するように構成されている、項目15に記載の装置。
(項目18)
前記固定デバイスは、少なくとも1本の導線に電気的に連結され、
前記少なくとも1本の導線は、電気刺激装置またはペースメイキングデバイスのうちの少なくとも1つに電気的に連結されている、項目15に記載の装置。
(項目19)
前記送達部材は、カテーテルを備える、項目2に記載の装置。
(項目20)
薬液を形成するように少なくとも1つの固体形態の薬物要素を溶解させ、前記薬液を前記送達部位に送達するための前記手段はさらに、前記送達部材の前記遠位端に連結された再密閉可能な隔膜であって、前記隔膜は、開放し、前記捕捉チャンバの中への前記薬物要素の通過を可能にし、次いで、閉鎖し、前記送達部材の中への流体の流入を防止するように構成されている、隔膜を備え、
前記隔膜は、前記薬物要素の通過のための再密閉可能なスリットを含む、項目2に記載の装置。
【0025】
(参照による組み込み)
本明細書で記述される全ての出版物、特許、および特許出願は、各個別出版物、特許、または特許出願が、参照することにより組み込まれるように具体的かつ個別に示された場合と同一の程度に、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0026】
本発明の新規の特徴は、添付の請求項で詳細に記載される。本発明の特徴および利点のより良好な理解は、本発明の原理が利用される、例証的実施形態を記載する以下の発明を実施するための形態、および添付図面を参照することによって得られるであろう。