(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6533836
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用非水電解液及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20190610BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20190610BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20190610BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20190610BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20190610BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20190610BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/052
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-555662(P2017-555662)
(86)(22)【出願日】2015年11月24日
(65)【公表番号】特表2018-513542(P2018-513542A)
(43)【公表日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】CN2015095386
(87)【国際公開番号】WO2017075851
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2017年10月24日
(31)【優先権主張番号】201510742728.6
(32)【優先日】2015年11月4日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515144998
【氏名又は名称】シェンヂェン キャプケム テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN CAPCHEM TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シー チァォ
(72)【発明者】
【氏名】フー シーグァン
(72)【発明者】
【氏名】チェン チュン
(72)【発明者】
【氏名】ファン チー
(72)【発明者】
【氏名】ヂョウ シュェ
【審査官】
赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−060819(JP,A)
【文献】
特開2013−118069(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/054843(WO,A1)
【文献】
特開2012−178339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01M 4/00− 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水性有機溶剤、リチウム塩及び添加剤を含むリチウムイオン電池用非水電解液であって、
前記添加剤は構造式1に示される化合物と構造式2に示される化合物を含み、Rは炭素数1−4のアルキル基から選ばれるものであり、
前記構造式1に示される化合物の含有量は前記リチウムイオン電池用非水電解液の全質量に対して0.1%−2%であり、構造式2に示される化合物の含有量は前記リチウムイオン電池用非水電解液の全質量に対して0.5%未満であることを特徴とするリチウムイオン電池用非水電解液。
構造式1
[式1]
構造式2
[式2]
【請求項2】
Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、二級ブチル基及び三級ブチル基からなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用非水電解液。
【請求項3】
前記非水性有機溶剤は環状カーボネートと非環状カーボネートの混合物であり、前記環状カーボネートはエチレンカーボネート、プロピレンカーボーネート及びブチレンカーボネートから選ばれる1種又は2種以上であり、前記非環状カーボネートはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート及びメチルプロピルカーボネートから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用非水電解液。
【請求項4】
前記リチウム塩はLiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiC(SO2CF3)3及びLiN(SO2F)2から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用非水電解液。
【請求項5】
前記添加剤はさらに、ビニレンカーボネート、フッ素化エチレンカーボネート及びビニルエチレンカーボネートのうちの1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用非水電解液。
【請求項6】
陽極、陰極及び陽極と陰極の間に設置されたセパレータを備えるリチウムイオン電池であって、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用非水電解液をさらに含むことを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項7】
前記陽極はLiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiCo1-yMyO2、LiNi1-yMyO2、LiMn2-yMyO4及びLiNixCoyMnzM1-x-y-zO2から選ばれる1種又は2種以上であり、ここで、MはFe、Co、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、Sr、V及びTiから選ばれる1種又は2種以上であり、且つ0≦y≦1、0≦x≦1、0≦z≦1、x+y+z≦1であることを特徴とする請求項6に記載のリチウムイオン電池。
【請求項8】
前記リチウムイオン電池の充電終止電圧は4.35V以上であることを特徴とする請求項6又は7に記載のリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン電池電解液の技術分野、特にリチウムイオン電池用非水電解液及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非水電解液リチウムイオン電池は、コンピュータ、通信製品や大衆消費電子製品に幅広く使用されており、且つ、新エネルギー自動車の発展に伴い、非水電解液リチウムイオン電池は自動車の動力電源システムとして広範に普及している。これら非水電解液電池は既に実用化されているが、使用耐久性については改善する余裕があり、特に45℃の高温での寿命が短い。特に電気自動車やエネルギー貯蔵システムでは、非水電解液リチウムイオン電池に対して、寒冷地でも正常に動作できるとともに耐高温・低温性能を備えることが求められる。
【0003】
非水電解液リチウムイオン電池において、非水電解液は電池の耐高温・低温性能に影響する重要な要因となり、特に非水電解液における添加剤は電池の耐高温・低温性能の発揮にとって極めて重要である。現在の実用化された非水電解液は、電池の優れたサイクル性能を提供するために、ビニレンカーボネート(VC)のような従来の成膜添加剤を用いている。しかしながら、VCの高電圧安定性が悪く、高電圧・高温の条件下では、45℃サイクル性能の要件を満たすのが困難である。
【0004】
特許文献US6919141B2には、リチウムイオン電池の不可逆容量を低下させて、リチウム電池のサイクル性能を向上させる不飽和結合含有リン酸エステルである非水電解液の添加剤が開示されている。同様に、特許文献201410534841.0にも、高温サイクル性能を改善できるとともに貯蔵性能を著しく改善できる三重結合含有リン酸エステル化合物である新規成膜添加剤が開示されている。しかし、当業者が研究した結果、三重結合を有するリン酸エステル添加剤が電極界面で形成するパッシベーション膜は導電性が悪いことから、界面インピーダンスを増大させて、低温性能を大幅に低下させ、非水リチウムイオン電池の低温条件での応用が制限されてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電池の耐高温・低温性能を両立できるリチウムイオン電池用非水電解液を提供し、さらに上記リチウムイオン電池用非水電解液を含むリチウムイオン電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一局面によれば、本発明は、非水性有機溶剤、リチウム塩及び添加剤を含むリチウムイオン電池用非水電解液であって、該添加剤は構造式1に示される化合物と構造式2に示される化合物を含み、
【0007】
上記構造式1に示される化合物の含有量は上記リチウムイオン電池用非水電解液の全質量に対して0.1%−2%であり、構造式2に示される化合物の含有量は上記リチウムイオン電池用非水電解液の全質量に対して0.5%未満であるリチウムイオン電池用非水電解液を提供する。
構造式1
【0008】
構造式1
[式1]
構造式2
[式2]
【0009】
ここで、Rは炭素数1−4のアルキル基から選ばれる。
【0010】
本発明の好ましい形態として、上記構造式1に示される化合物において、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、二級ブチル基及び三級ブチル基からなる群より選ばれる。
【0011】
本発明の更なる改良形態として、上記非水性有機溶剤は環状カーボネートと非環状カーボネートの混合物であり、上記環状カーボネートはエチレンカーボネート、プロピレンカーボーネート及びブチレンカーボネートから選ばれる1種又は2種以上であり、上記非環状カーボネートはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート及びメチルプロピルカーボネートから選ばれる1種又は2種以上である。
【0012】
本発明の更な改良形態として、上記リチウム塩はLiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6、LiN(SO
2CF
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiC(SO
2CF
3)
3及びLiN(SO
2F)
2から選ばれる1種又は2種以上である。
【0013】
本発明の更なる改良形態として、上記添加剤はさらに、ビニレンカーボネート、フッ素化エチレンカーボネート及びビニルエチレンカーボネートのうちの1種又は2種以上を含む。
【0014】
本発明の第二局面によれば、本発明は、陽極、陰極及び陽極と陰極の間に設置されセパレータを備え、さらに第一局面におけるリチウムイオン電池用非水電解液を含むリチウムイオン電池を提供する。
【0015】
本発明の更なる改良形態として、上記陽極はLiCoO
2、LiNiO
2、LiMn
2O
4、LiCo
1-yM
yO
2、LiNi
1-yM
yO
2、LiMn
2-yM
yO
4及びLiNi
xCo
yMn
zM
1-x-y-zO
2から選ばれる1種又は2種以上であり、ここで、MはFe、Co、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、Sr、V及びTiから選ばれる1種又は2種以上であり、且つ0≦y≦1、0≦x≦1、0≦z≦1、x+y+z≦1である。
【0016】
本発明の更なる改良形態として、上記リチウムイオン電池の充電終止電圧は4.35V以上である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のリチウムイオン電池用非水電解液に含まれる構造式1に示される化合物は、陽極、陰極上で分解して、活物質と非水電解液との直接接触を抑制してその分解を防止し電池の性能を向上させるパッシベーション膜を形成し、同時に存在している構造式2に示される化合物も同様に陽極、陰極表面で分解してパッシベーション膜を形成し、それによって、構造式1に示される化合物と構造式2に示される化合物の分解物が複合して成るパッシベーション膜が形成されており、各添加剤が単独で存在する場合に実現できない耐高温・低温性能を両立させる特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態をもって本発明をより詳細に説明する。
【0019】
本発明の一実施形態は、非水性有機溶剤、リチウム塩及び添加剤を含み、添加剤は構造式1に示される化合物と構造式2に示される化合物を含み、構造式1に示される化合物の含有量は上記リチウムイオン電池用非水電解液の全質量に対して0.1%−2%であり、構造式2に示される化合物の含有量は上記リチウムイオン電池用非水電解液の全質量に対して0.5%未満であるリチウムイオン電池用非水電解液を提供する。
【0020】
構造式1
[式1]
構造式2
[式2]
ここで、Rは炭素数1−4のアルキル基から選ばれる。
【0021】
構造1に示される化合物として、例示的な化合物は表1に示されるが、これらに制限されない。構造式2に示される化合物はリン酸トリプロパルギルである。
【0023】
本発明の一好適実施形態では、上記構造式1に示される化合物の含有量は上記リチウムイオン電池用非水電解液の全質量に対して0.1%−2%である。0.1%未満であると、陽極と陰極の表面で十分なパッシベーション膜を形成できず、それによって、非水電解液電池の高温貯蔵性能が十分に向上せず、2%を超えると、構造式1に示される化合物が陽極と陰極の表面で形成するパッシベーション膜の厚みが大きすぎて、電池の内部抵抗を増大し、それによって、電池の低温性能を低下させる。構造式2に示される化合物の含有量はリチウムイオン電池用非水電解液に対して0.5%未満である。構造式2に示される化合物の含有量が0.5%より大きいと、電池の内部抵抗が高すぎて、電池の低温性能を低下させる。
【0024】
本発明の非水電解液電池用解液電において、構造式1に示される化合物と構造式2に示される化合物を同時に使用することによって、それぞれ単独で添加する場合に比べて、電池的の高温保存性能及び低温特性が著しく向上し、その作用メカニズムについてはまだ不明であるが、いずれかの添加剤は陽極と陰極の表面でパッシベーション膜を形成して、非水電解液電池用電解液の酸化還元分解を抑制し、それによって電池性能を向上させると推定される。さらに、2種の添加剤を同時に使用するとき、ある相互作用(たとえば相乗作用)によって、該当2種の添加剤で形成される複合パッシベーション膜はより安定的になり、低温でもリチウムイオンの伝導が容易であると推定される。
【0025】
本発明の一好適実施形態では、上記非水性有機溶剤は環状カーボネートと非環状カーボネートの混合物であり、上記環状カーボネートはエチレンカーボネート、プロピレンカーボーネート及びブチレンカーボネートから選ばれる1種又は2種以上であり、上記非環状カーボネートはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート及びメチルプロピルカーボネートから選ばれる1種又は2種以上である。
【0026】
高誘電率を有する環状カーボネートの有機溶剤と低粘度を有する非環状カーボネートである有機溶剤との混合液をリチウムイオン電池電解液の溶剤とすることによって、該有機溶剤の混合液は高イオン導電率、高誘電率及び低粘度を兼ね備えるようになる。
【0027】
本発明の一好適実施形態では、上記リチウム塩はLiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6、LiN(SO
2CF
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiC(SO
2CF
3)
3及びLiN(SO
2F)
2から選ばれる1種又は2種以上であり、前記リチウム塩は好ましくはLiPF
6又はLiPF
6とほかのリチウム塩の混合物である。
【0028】
本発明の一好適実施形態では、上記添加剤はさらに、ビニレンカーボネート(VC)、フッ素化エチレンカーボネート(FEC)及びビニルエチレンカーボネート(VEC)のうちの1種又は2種以上を含む。
【0029】
上記成膜添加剤はグラファイト陰極の表面でより安定したSEI膜を形成することによって、リチウムイオン電池のサイクル性能を著しく向上させることができる。
【0030】
本発明の一実施形態は、陽極、陰極及び陽極と陰極の間に設置されたセパレータを備え、さらに第一局面におけるリチウムイオン電池用非水電解液を含むリチウムイオン電池を提供する。
【0031】
本発明の一好適実施形態では、上記陽極はLiCoO
2、LiNiO
2、LiMn
2O
4、LiCo
1-yM
yO
2、LiNi
1-yM
yO
2、LiMn
2-yM
yO
4及びLiNi
xCo
yMn
zM
1-x-y-zO
2から選ばれる1種又は2種以上であり、ここで、MはFe、Co、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、Sr、V及びTiから選ばれる1種又は2種以上であり、且つ0≦y≦1、0≦x≦1、0≦z≦1、x+y+z≦1である。
【0032】
本発明の一好適実施形態では、上記リチウムイオン電池の充電終止電圧は4.35V以上である。
【0033】
本発明の一実施例では、陽極材料はLiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2、陰極材料は人工グラファイトであり、リチウムイオン電池の充電終止電圧は4.35Vに等しい。
【0034】
以下、実施例をもって本発明を詳細に説明する。なお、これら実施例は例示的なものに過ぎず、本発明の保護範囲を制限するものではない。
【0035】
<実施例1>
1)電解液の製造
エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)及びメチルエチルカーボネート(EMC)を、EC:DEC:EMC=1:1:1の質量比で混合し、次に六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)をモル濃度が1mol/Lになるまで加え、さらに電解液の全質量に対して0.1%の化合物1(実施例に使用される化合物1、化合物2等は表1に示される対応番号を付いた化合物であり、以下の各例も同様である。)と電解液の全質量に対して0.005%の構造式2に示されるリン酸トリプロパルギルを加えた。
【0036】
2)陽極板の製造
93:4:3の質量比で、陽極活性材料としてリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2、導電性カーボンブラックSuper−P及びバインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を混合し、次にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて、陽極スラリーを得た。スラリーをアルミ箔の両面に均一に塗布して、ベーク、圧延及び真空乾燥を経て、超音波溶接機を用いてアルミ製引出線を溶接して、厚み120−150μmの陽極板を得た。
【0037】
3)陰極板の製造
94:1:2.5:2.5の質量比で、陰極活性材料として人工グラファイト、導電性カーボンブラックSuper−P、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)を混合し、次に脱イオン水に分散させて、陰極スラリーを得た。スラリーを銅箔の両面に塗布して、ベーク、圧延及び真空乾燥を経て、超音波溶接機を用いてアルミ製引出線を溶接して、厚み120−150μmの陰極板を得た。
【0038】
4)電池コアの製造
陽極板と陰極板の間に厚み20μmのポリエチレン微多孔膜をセパレータとして設置し、次に陽極板、陰極板及びセパレータからなるサンドイッチ構造を捲回して、捲回体をプレスして四角形アルミケースに入れ、陽極と陰極の引出線をそれぞれカバープレートの対応位置に溶接して、レーザー溶接機を用いてカバープレートと金属ケースを一体に溶接して、注液対象となる電池コアを得た。
【0039】
5)電池コアへの注液及び化成
露点が−40℃以下に制御されたグローブボックスにおいて、電池コアにおける隙間を十分に充填するほどの量で、製造された上記電解液を注液孔から電池コアに注入した。次に、0.05Cで3min定電流充電して、0.2Cで5min定電流充電し、0.5Cで25min定電流充電した後、1hr放置して整形して封口し、次に0.2Cの電流で4.35Vになるまで定電流充電して、常温で24hr放置した後、0.2Cの電流で3.0Vになるまで定電流放電するステップによって、化成を実施した。
【0040】
6)高温サイクル性能のテスト
電池を45℃のオーブンに入れて、1Cの電流で4.35Vに定電流充電した後、電流が0.1Cに低下するまで定電圧充電し、次に1Cの電流で3.0Vになるまで定電流放電し、このように300回サイクルして、第1サイクルの放電用量と第300サイクルの放電用量を記録し、下記式により高温サイクルでの容量維持率を計算した。
【0041】
容量維持率=第300サイクルの放電容量/第1サイクルの放電容量*100%
【0042】
7)高温貯蔵性能のテスト
常温下で、化成した電池を1Cで4.35Vになるまで定電流定電圧充電して、電池の初期放電容量を測定し、次に60℃で30日間貯蔵した後、1Cで3Vにあるまで放電して、電池の保持容量と回復容量を測定した。計算式は以下のとおりである。
【0043】
電池容量維持率(%)=保持容量/初期容量×100%;
電池容量回復率(%)=回復容量/初期容量×100%。
【0044】
8)低温性能のテスト
25℃で、化成した電池を1Cで4.35Vになるまで定電流定電圧充電し、次に1Cで3.0Vになるまで定電流放電して、放電容量を記録した。次に1Cで4.35Vになるまで定電流定電圧充電して、−20℃の環境で12h放置した後、0.3Cで3.0Vになるまで定電流放電して、放電容量を記録した。
【0045】
−20℃の低温放電効率=0.3C放電容量(−20℃)/1C放電容量(25℃)×100%。
【0046】
<実施例2>
表2に示すように、電解液の製造には、0.1%の化合物1を2%の化合物2、0.005%のリン酸トリプロパルギルを0.4%のリン酸トリプロパルギルに変更する以外、実施例1と同様に操作し、テストした高温サイクル性能、高温貯蔵性能及び低温性能のデータは表3に示される。
【0047】
<実施例3>
表2に示すように、電解液の製造には、0.1%の化合物1を1%の化合物3、0.005%のリン酸トリプロパルギルを0.1%のリン酸トリプロパルギルに変更する以外、実施例1と同様に操作し、テストした高温サイクル性能、高温貯蔵性能及び低温性能のデータは表3に示される。
【0048】
<実施例4>
表2に示すように、電解液の製造には、0.1%の化合物1を1.5%の化合物4、0.005%のリン酸トリプロパルギルを0.2%のリン酸トリプロパルギルに変更する以外、実施例1と同様に操作し、テストした高温サイクル性能、高温貯蔵性能及び低温性能のデータは表3に示される。
【0049】
<実施例5>
表2に示すように、電解液の製造には、0.1%の化合物1を0.5%の化合物5、0.005%のリン酸トリプロパルギルを0.05%のリン酸トリプロパルギルに変更する以外、実施例1と同様に操作し、テストした高温サイクル性能、高温貯蔵性能及び低温性能のデータは表3に示される。
【0050】
<実施例6>
表2に示すように、電解液の製造には、0.1%の化合物1を0.8%の化合物2、0.005%のリン酸トリプロパルギルを0.05%のリン酸トリプロパルギルに変更する以外、実施例1と同様に操作し、テストした高温サイクル性能、高温貯蔵性能及び低温性能のデータは表3に示される。
【0051】
<実施例7>
表2に示すように、電解液の製造には、0.1%の化合物1を0.7%の化合物2、0.005%のリン酸トリプロパルギルを0.045%のリン酸トリプロパルギルに変更する以外、実施例1と同様に操作し、テストした高温サイクル性能、高温貯蔵性能及び低温性能のデータは表3に示される。
【0052】
<実施例8>
表2に示すように、電解液の製造には、0.1%の化合物1を0.5%の化合物2、0.005%のリン酸トリプロパルギルを0.03%のリン酸トリプロパルギルに変更し、且つ電解液の全質量に対して1%のビニレンカーボネートを添加する以外、実施例1と同様に操作し、テストした高温サイクル性能、高温貯蔵性能及び低温性能のデータは表3に示される。
【0053】
<実施例9>
表2に示すように、電解液の製造には、0.1%の化合物1を0.6%の化合物2、0.005%のリン酸トリプロパルギルを0.04%のリン酸トリプロパルギルに変更し、且つ電解液の全質量に対して2%のフッ素化エチレンカーボネートを添加する以外、実施例1と同様に操作し、テストした高温サイクル性能、高温貯蔵性能及び低温性能のデータは表3に示される。
【0054】
<実施例10>
表2に示すように、電解液の製造には、0.1%の化合物1を0.7%の化合物2、0.005%のリン酸トリプロパルギルを0.045%のリン酸トリプロパルギルに変更し、且つ電解液の全質量に対して1%のビニルエチレンカーボネートを添加する以外、実施例1と同様に操作し、テストした高温サイクル性能、高温貯蔵性能及び低温性能のデータは表3に示される。
【0055】
<比較例1>
表2に示すように、電解液の製造には、0.1%の化合物1を1%の化合物2、0.005%のリン酸トリプロパルギルを0.8%のリン酸トリプロパルギルに変更する以外、実施例1と同様に操作し、テストした高温サイクル性能、高温貯蔵性能及び低温性能のデータは表3に示される。
【0056】
<比較例2>
表2に示すように、電解液の製造には、0.1%の化合物1を1%の化合物2、0.005%のリン酸トリプロパルギルを0.55%のリン酸トリプロパルギルに変更する以外、実施例1と同様に操作し、テストした高温サイクル性能、高温貯蔵性能及び低温性能のデータは表3に示される。
【0059】
表3のデータから明らかなように、0.1%−2%の構造式1に示される化合物と0.5%未満のリン酸トリプロパルギルを含有する電解液は、各性能に優れ、電解液におけるリン酸トリプロパルギルの含有量が0.5%を超えると、電池の各性能は、特に低温放電性能が悪くなった。
【0060】
<実施例11>
表4に示すように、陽極材料LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2をLiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2、電解液を製造するときに0.1%の化合物1を1%の化合物2及び0.005%のリン酸トリプロパルギルを0.01%のリン酸トリプロパルギルに変更する以外、実施例1と同様に操作し、テストした高温サイクル性能、高温貯蔵性能及び低温性能のデータは表5に示される。
【0061】
<実施例12>
表4に示すように、陽極材料LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2をLiCoO
2、電解液を製造するときに0.1%の化合物1を1%の化合物2及び0.005%のリン酸トリプロパルギルを0.01%のリン酸トリプロパルギルに変更する以外、実施例1と同様に操作し、テストした高温サイクル性能、高温貯蔵性能及び低温性能のデータは表5に示される。
【0062】
<比較例3>
表4に示すように、陽極材料LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2をLiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2に変更する以外、比較例2と同様に操作し、テストした高温サイクル性能、高温貯蔵性能及び低温性能のデータは表5に示される。
【0063】
<比較例4>
表4に示すように、陽極材料LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2をLiCoO
2に変更する以外、比較例2と同様に操作し、テストした高温サイクル性能、高温貯蔵性能及び低温性能のデータは表5に示される。
【0066】
表5のデータから明らかなように、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2又はLiCoO
2を陽極材料としたリチウムイオン電池は、0.1%−2%の構造式1に示される化合物と0.5%未満のリン酸トリプロパルギルの電解液を含むことによって、各性能に優れ、電解液におけるリン酸トリプロパルギルの含有量が0.5%を超えると、電池の各性能は、特に低温放電性能が悪くなった。
【0067】
以上は実施形態をもって本発明をより詳細に説明したが、本発明の具体的な実施がこれら説明に制限されるとは理解できない。当業者であれば、本発明の構想を脱逸せずに想到し得るいくつかの簡単な変形や置換は、本発明の保護範囲に属すべきである。