特許第6533908号(P6533908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6533908
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/18 20060101AFI20190617BHJP
   A61L 31/06 20060101ALI20190617BHJP
   A61L 27/30 20060101ALI20190617BHJP
   A61L 31/08 20060101ALI20190617BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20190617BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20190617BHJP
   C08J 7/18 20060101ALI20190617BHJP
   B29C 55/00 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
   A61L27/18
   A61L31/06
   A61L27/30
   A61L27/30 100
   A61L31/08
   A61L27/50
   A61L31/14
   C08J7/18
   B29C55/00
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-202048(P2014-202048)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-144804(P2015-144804A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2017年9月25日
(31)【優先権主張番号】特願2014-573(P2014-573)
(32)【優先日】2014年1月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】公立大学法人首都大学東京
(73)【特許権者】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100150876
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 訓史
(72)【発明者】
【氏名】坂口 雅人
(72)【発明者】
【氏名】寺西 義一
【審査官】 伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−020590(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/090776(WO,A1)
【文献】 特表2009−504330(JP,A)
【文献】 特開平10−066721(JP,A)
【文献】 特開2002−315821(JP,A)
【文献】 特開2012−179072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00−33/18
B29C 55/00−55/30
C08J 7/00− 7/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料により形成されてなる成形体の製造方法であって、
前記高分子材料、その表面の少なくとも一部にイオンビーム照射によりイオンを注入する照射工程を具備し、
前記のイオンビーム照射における、イオン種が、Ar(アルゴン)、He(ヘリウム)、N(窒素)、P(燐)、C(炭素)又はCa(カルシウム)であり、
前記のイオンビーム照射における、イオン注入量が1012〜1015ion/cmであり、
前記高分子材料は、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンであり、
前記イオン注入工程は、前記高分子材料にねじり延伸を施す延伸工程の後に行う
ことを特徴とする成形体の製造方法
【請求項2】
前記ねじり延伸における、押出圧力は100〜200kNである
ことを特徴とする請求項1に記載の成形体の製造方法
【請求項3】
前記ねじり延伸における、らせん角度は15〜75度である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の成形体の製造方法
【請求項4】
成形体が締結部材であって、
前記ねじり延伸における、ねじり加工のねじり方向は、螺子のねじり方向と同じである
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の成形体の製造方法
【請求項5】
前記成形体が医療用成形体である請求項1〜のいずれかに記載の成形体の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強度に優れた成形体に関し、さらに詳細には、生体親和性、生体分解性、及び強度に優れる医療用成形体や各種締結部材に最適な強度を有する成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック材料は各種分野においてますます用途の幅を広げており、従来のような各種容器類のみではなく、金属製のボルトやナットの代替材等強度を必要とされる分野でも広く用いられるようになっている。
特にリサイクルの重要性が叫ばれている現代においてはプラスチック製の容器や自動車部品において金属製の締結部材を用いることを懸念する傾向があり、金属製の締結部材の代替材料としてプラスチック材料を用いる動きがある。
しかし、従来提案されているプラスチックザイル用では未だプラスチックのみで要求されているほどの強度を達成することができず、炭素繊維など他の材料を組み合わせているのが現状である。
また、日本では急速な高齢社会が進んでおり、高齢者の増加にともない、生体機能の衰えによって生じる骨粗鬆種などによる骨折の増加や、歯の損傷などの障害が問題になっている。
現在の医療現場では、骨折などの治療は骨折の種類や程度によって、外固定法、内固定法、創外固定法などの骨折部固定法が用いられている。
その中で内固定法は、手術によって骨の位置をもとに戻した後、骨固定デバイスなどによって骨を直接固定する方法である。内固定法において使用される骨固定デバイスの素材は、骨折固定材や骨固定材などと呼ばれており、この材料には大きく分けて金属材料、セラミック材料、プラスチック材料の三種類がある。骨固定材に使用される材料の中でも、金属材料は高強度、信頼性の観点から骨固定材において最も一般的に用いられている。
しかし、生体のような腐食環境下では疲労が促進され大気中に比べて疲労限度が著しく低下する傾向がある。この他にも、金属材料が有する高い弾性率によって応力遮へいが生じ、治療後の骨が弱化することも懸念されている。このような問題のために金属製骨固定材は長期間体内に留置せずに、骨折が治癒した後は速やかに除去する必要があるが、金属製骨固定材を除去するための再手術は患者にとって肉体的・精神的・経済的な負担となっている。特に内固定法において、現在の医療現場で、最近の傾向として、患者の生活水準の質的向上を目指して(Quality Of Life(=QOL))、治療後に除去(再手術)が必要ない生体分解性プラスチックにより金属材料を代替することが行われており、生体分解性プラスチックを材料としたものが種々提案されている。
たとえば、特許文献1には、破裂の危険性がある動脈瘤の破裂を防止するイオンビーム照射によって組織適合性を改善した高分子材料として、炭素を構成元素として含む高分子材料より構成され、表面の少なくとも一部がイオン衝撃により改質されてなる、動脈瘤治療用材料が提案されている。
また、たとえば、特許文献2には、人工血管又は人工硬膜などの生体内埋入材料と生体組織接着剤との親和性を向上させることにより、より迅速に血液又は髄液の漏出を防ぐことができる高分子材料として、生体組織接着剤と組み合わせて使用する、炭素又は珪素を構成元素として含む高分子材料より構成され、表面の少なくとも一部がイオン衝撃により改質されてなる高分子材料が提案されている。
また、たとえば、特許文献3には、人工血管又は人工硬膜などの生体内埋入材料と生体組織接着剤との親和性を向上させることにより、より迅速に血液又は髄液の漏出を防ぐことができる高分子材料として、生体組織接着剤と組み合わせて使用する、炭素又は珪素を構成元素として含む高分子材料より構成され、表面の少なくとも一部がイオン衝撃により改質されてなる高分子材料が提案されている。
また、たとえば、特許文献4には、骨、筋肉と密着させることで、時間経過過程で形態学的、組織化学的変化を伴い、細胞と接着する材料として、炭素を構成元素として含む高分子材料より構成され、表面の少なくとも一部がイオン衝撃により改質されてなる、骨及び/又は筋膜に接着性を有する材料が提案されている。
また、たとえば、特許文献5には、高分子鎖を一軸あるいは多軸に分子配向させることにより、200MPa以上の初期圧縮曲げ強度を約3〜4ヶ月間生体内で保持し、更に約6ヶ月後から分解吸収を促進させ長くとも3年以内にその成形体が完全に分解消失する生体内分解吸収性の骨固定材として、ポリ乳酸あるいはL−ラクチド/DL−ラクチド共重合体とアルカリ処理したハイドロキシアパタイトを適当な割合でブレンドし、押出し、あるいは射出成形することにより得られるロッドあるいはシートを、更にその複合体の変形可能な温度で、一軸延伸、圧縮変形あるいは固体押出し成形によって得られる、生体内分解吸収性の骨固定材が提案されている。
また、たとえば、特許文献6では、ポリ乳酸やポリグリコール酸などの生分解性フィラメントを、特殊で高精度で高レベルな装置を必要とせずに、簡便な手段によって、極細の生分解性フィラメンを製造する方法として、生分解性フィラメントを、赤外線光束で加熱し、その加熱された原フィラメントが、10MPa以下の張力により、100倍以上に延伸された極細フィラメントが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-020590号公報
【特許文献2】特開2005-034256号公報
【特許文献3】特開2004-089361号公報
【特許文献4】特開2002-315821号公報
【特許文献5】特開平11-206871号公報
【特許文献6】国際公開第2005/083165号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜4の提案にかかる医療用材料は、生体分解性を示すもののその分解速度がきわめて遅いという問題や、強度が低いという問題があった。
また、特許文献5にかかる提案の医療用材料は、高分子鎖を一軸あるいは多軸に分子配向させるものであり、骨固定材などに用いる場合、強度が未だ不十分なものであった。
また、特許文献6にかかる提案の医療用材料は、極細生分解性フィラメントであるため骨固定材用途に適したものではなかった。
さらにこれらの提案かかる材料では、生体ではない各種工業製品の金属製締結部材の代替品として十分な強度を有するものではなかった。
要するに、従来提案されているプラスチック材料からなる成形体は、骨固定材として、生体分解性と締結強度との両方を十分に満足するものではなく、生体親和性、生体分解性、及び強度に優れる医療用材料の開発が要望されていると共に、各種工業製品の締結部材として用いても十分な強度を呈する材料からなる成形体の開発が要望されているのが現状である。
【0005】
したがって、本発明の目的は、生体分解性、及び強度に優れる医療用成形体や各種締結部材に最適な強度を有する成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解消すべく鋭意検討した結果、高分子材料からなる成形体の表面をイオン注入により改質することで、強度を向上させることができることを知見し、さらに検討を進めた結果、特に生体分解性材料を用いた場合、強度を保ちつつ生体親和性及び生体分解性が向上することを知見し、さらに、イオン注入の条件や鍛造方法の検討を行い、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の各発明を提供するものである。
1.高分子材料により形成されてなる成形体であって、
前記高分子材料は、その表面の少なくとも一部にイオンビーム照射によりイオンが注入されてなることを特徴とする成形体。
2.前記のイオンビーム照射における、イオン種が、希ガス類または人体に含まれるイオン種であることを特徴とする1に記載の成形体。
3.前記希ガス類が、Ar(アルゴン)またはHe(ヘリウム)であり、前記人体に含まれるイオン種がN(窒素)、P(燐)またはC(炭素)であることを特徴とする2に記載の成形体。
4.前記のイオンビーム照射における、イオン注入量が10〜1018ion/cmであることを特徴とする1〜3のいずれかに記載の成形体。
5.前記のイオンビーム照射における、イオンの加速電圧の条件が10keV〜300keVであることを特徴とする1〜4のいずれかに記載の成形体。
6.前記高分子材料は、低分解性生体適合材料であることを特徴とする1〜5のいずれかに記載の成形体。
7.前記低分解性生体適合材料は、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンであることを特徴とする6に記載の成形体。
8.前記成形体は、高分子材料にねじり延伸を施してなることを特徴とする1〜7のいずれかに記載の成形体。
9.前記ねじり延伸における、押出圧力は100−200kNであることを特徴とする8に記載の成形体。
10.前記ねじり延伸における、らせん角度は15〜75度であることを特徴とする8または9に記載の成形体。
11.成形体が締結部材であって、前記ねじり延伸における、ねじり加工のねじり方向は、螺子のねじり方向と同じであることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の成形体。
12.前記成形体が医療用成形体である1〜11のいずれかに記載の成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の成形体は、生体分解性、及び強度に優れる医療用成形体や各種締結部材に最適な強度を有する成形体である。
特に本発明の成形体が医療用成形体である場合には、生分解性材料からなる生体親和性、生体分解性、及び強度に優れるものである。また、この場合の医療用成形体は、イオン注入法により表面改質を行い、その注入量と注入深度を変える事によって、強度を保ちつつ、その生体親和性と生体分解速度が制御されたものである。
このため、骨折治療の内固定などに用いた場合、生体内で分解されるため再手術が不要で、機械的強度が段階的に減少するため骨の成長を阻害せず、金属材を使用した際のような腐食による組織反応などの悪影響や過度の剛性による応力遮へいが生じないため骨多孔化の危険性が少なく、X線やMRIにも影響がないものである。
また、本発明の成形体は、ねじり延伸法により分子配向とその角度を最適化させることで、よりせん断とねじり強度を向上させることができるfffものである。
また、ポリ乳酸を高分子材料として用いた場合、従来の自己強化ポリ乳酸とは異なり、ポリ乳酸材料のせん断とねじり強度を向上させることができるため、安価で製造することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の医療用成形体の一実施形態を示す図である。
図2図2は、ねじり延伸の説明図であり、(a)は押出延伸、(b)はねじり加工の説明図である。
図3図3は、実施例1〜5における、イオンビーム照射方法(a)及びイオンビーム照射物(b)の説明図である。
図4図4は、実施例1〜3、並びに対象実験における、面粗さの結果を示すグラフである。
図5図5は、実施例1〜3、並びに対象実験における、接触角の結果を示すグラフである。
図6図6は、実施例2、4及び5、並びに対象実験における、接触角の結果を示すグラフである。
図7図7は、実施例1〜5の自然分解試験の説明図であり、(a)は試験で使用する本発明の医療用成形体、(b)は浸漬実験及び段差の説明図である。
図8図8は、実施例1〜3の自然分解試験の結果を示すグラフである。
図9図9は、実施例2、4及び5の自然分解試験の結果を示すグラフである
図10図10は、実施例6〜9並びに比較例1における引張強度の結果を示すグラフである。
図11図11は、実験例1における押出延伸の説明図である。
図12図12は、実験例1における測定試料作製の説明図である。
図13図13は、実験例1における、配向関数と押出比の結果を示すグラフである。
図14図14は、実験例1におけるねじり加工の説明図である。
図15図15は、実験例2におけるせん断強度試験の説明図である。
図16図16は、実験例2におけるせん断強度の結果を示すグラフである。
図17図17は、実験例3におけるねじり強度試験の説明図である。
図18図18は、実験例3におけるねじり強度の結果を示すグラフである。
図19図19は、ねじり強度と最大らせん角との関係を示すグラフである。
図20図20は、最大らせん角とせん断強度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0009】
1:医療用成形体、10:軸、11:ネジ山、20:頭
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の成形体の実施形態の一例としての医療用成形体を、図1を参照し説明する。
<全体構成>
本発明の成形体としての医療用成形体は、高分子材料としての生分解性材料により形成されてなる医療用成形体であって、前記生分解性材料は、その表面の少なくとも一部にイオンビーム照射によりイオンを注入してなる、ものである。
本実施形態の医療用成形体1は、骨折などに際して骨の内固定用に使用される骨固定用具としてのスクリューであり、全体にネジ山11が設けられた軸10と座面の存在する頭20とからなる。
【0011】
(高分子材料)
本発明の成形体は、高分子材料により形成されている。
ここで用いることができる高分子材料としては、通常のプラスチック成形体に用いられるものであれば特に制限なく用いることができるが、後述する生分解性材料の他、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート、ポリエステル等を挙げることができる。
そして、各種工業製品の締結部材用としては、特にポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が好ましく、医療用成形体としては生分解性材料が好ましい。
なお、以下の説明においては医療用成形体の例を示して説明する。その他の成形体については別に説明する。
(生分解性材料)
本明細書において生分解性材料とは、生体内で分解される材料をいう。これにより、最終的には生体内で分解や吸収されるので回収する必要のないものである。
本発明の医療用成形体で用いられる前記生分解性材料は、特に制限されないが、例えば、以下の成分からなる樹脂等を用いることができ、それらは、単独または混合したものを用いることもできる。
ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、変性ポリビニルアルコール、カゼイン、変性澱粉など。
すなわち、本発明における低分解性生体適合材料とは、生体内で徐々に分解される材料を意味し、具体的に好ましくは、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、変性ポリビニルアルコール、カゼイン、及び変性澱粉、並びにこれらの混合物からなる群より選択される材料である物質である。中でも、分解性の観点からは、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等が好ましくあげられる。
このような生体内での分解性が低い材料に対して後述するイオンビーム照射を行うことで、強度を保ったまま生体分解速度を向上させることができ、より生体適合材料として適するものに改質することができる。
前記ポリ乳酸においては、L体のみからなるポリL乳酸(PLLA)とD体のみからなるポリD乳酸(PDLA)、両者からなるPLAが存在するが、いずれも、特に制限なく用いることができる。
なお、本実施形態の医療用成形体1においては、PLLAとPDLAとからなる樹脂を用いている。
【0012】
(他の成分)
本発明の医療用成形体には、イオン、低分子化合物、タンパク質、核酸などの人体含有物質、サイトカイン、成長因子、骨の成長に関わるビタミンD、プロスタグランジンなどの生理活性物質や薬理活性物質などの他の成分を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で配合してもよい。
【0013】
(医療用成形体)
本明細書において、医療用成形体とは、人または動物の生体の少なくとも一部を修復する用途に用いる成形体を意味する。
【0014】
(イオンビーム照射)
本発明の医療用成形体は、上述したように、前記生分解性材料の表面の少なくとも一部にイオンビーム照射によりイオンを注入してなるものである。
本明細書において、前記イオンビーム照射とは、前記生分解性材料の表面にイオンビームを照射してイオン又はイオン粒子を表面に注入することを言う。
前記イオンビーム照射を行うことで、前記生分解性材料の表面に単なる付着や吸着よりもより強固にイオンを導入することができ、表面の改質を従来よりも、より効果的に行うことができる。これにより、強度を保ったまま生体親和性(親水性)や生体分解性を向上させることができる。
前記イオンビーム照射は、前記生分解性材料の表面にイオンビームを照射してイオン微粒子を表面に注入可能な装置であれば、特に制限なく公知のイオンビーム照射装置を用いることができる。中でも、本発明の医療用成形体の表面の改質状態の制御を行う観点から、照射するイオン種・イオン・加速電圧等の条件を制御することが可能な装置を用いるのが好ましい。
本実施形態においては、前記イオンビーム照射は、目的とする元素のイオンを発生させるイオン源、必要なイオンだけを取り出す質量分析器、イオンを電気的に必要なエネルギーに加速する加速器、対象物であるターゲットを装着する高真空チャンバー等から成り、照射するイオン種・イオン注入量・イオンの加速電圧等の条件を制御することが可能な装置を使用している。
これにより、以下に詳述するように、前記イオンビーム照射におけるイオン種・イオン注入量・イオンの加速電圧等の条件を変えることで、本発明の医療用成形体の表面の改質状態を制御し、生体分解性、生体親和性、注入イオンによる特性等を制御している。
前記イオンビーム照射は、本発明の医療用成形体の製造工程中において行われるものであるが、前記イオンビーム照射を行うタイミングは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で特に制限なく行うことができ、例えば、仮成形した後の前記生分解性材料などに行うことができる。本実施形態においては、後述するねじり延伸を行った延伸処理物を鍛造によりねじ山を形成した後に行っている。
前記イオンビーム照射を行う部位は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特に制限されず、例えば、表面全体に対しての照射、表面の一部に対しての照射などを行うことができ、照射を行う部位毎に、後述するイオン種、イオン注入量、イオンの加速電圧などの条件を変えてもよい。
【0015】
(イオン種)
本発明の医療用成形体は、前記イオンビーム照射で使用するイオン種により、前記表面に形成される細孔径を制御して、表面の改質状態を変えることができる。これにより、生体分解速度の生体分解性、生体親和性などの特性がなされている。
具体的には、同じ数(イオン数)、同じ深度にイオンを注入した場合、注入するイオンにおけるイオン半径が大きいものの方が、例えば、形成される細孔径などが大きくなり、より、生体分解速度が高いものになる。
前記イオンビーム照射において、用いることができるイオンは、本発明の趣旨を逸脱しない限り、特に限定されず、例えば、希ガス類(Ar(アルゴン)、He(ヘリウム)など)や、人体に含まれるイオン種、例えば、N(窒素)、P(燐)、C(炭素)、または2族類(Caなど)をイオン源として用いて発生させることができるイオンを用いることができ、使用に際しては単独または複数種混合して用いることができる。中でも、生体に対しての安全性の観点から、ArやHeなどの8族の希ガス類、N(窒素)、P(燐)、C(炭素)などの人体に含まれるイオン種であるのが好ましい。
また、注入するイオンの種類によっては、本発明の医療用成形体に新たな機能を付与することができる。例えば、2族類(Caなど)のイオンを注入した場合、骨結合性などの機能を付与することができる。
なお、本実施形態においては、Arをイオン源として用いている。
【0016】
(イオン注入量)
本発明の医療用成形体は、前記イオンビーム照射におけるイオン注入量により、前記表面に形成される細孔数等を変えることができる。これにより、生体分解性材料の生体分解性、生体親和性、注入イオンによる特性等の制御がなされている。
具体的には、同じイオン種を注入した場合において、注入するイオン量が多いほど形成される細孔数が多くなり、生体分解速度が高いものになる。
前記イオンビーム照射における、イオン注入量は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、特に制限されないが、10〜1018ion/cmであるのが好ましく、1010〜1016ion/cmであるのがさらに好ましく、1012〜1015ion/cmが特に好ましい。
この範囲であると、イオン注入により材料を焦がしてしまうなど損壊させることなく、強度を保ったまま生体親和性(親水性)や生体分解性をより向上させることができる。
なお、本実施形態においては、実施例10に示す条件で成形されている。
【0017】
(イオンの加速電圧)
本発明の医療用成形体は、前記イオンビーム照射におけるイオンの加速電圧を制御することにより、注入されるイオンの加速量を変化させ、前記表面に形成される細孔の深さを変えることができる。これにより、生体分解速度の生体分解性、生体親和性、注入イオンによる特性等の制御がなされている。
前記のイオンの加速電圧の条件は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、特に制限されないが、10keV〜300keVの範囲であるのが好ましく、10keV〜300keVのの範囲とするのがさらに好ましい。
この範囲であると、強度を保ったまま生体親和性(親水性)や生体分解性をより向上させることができる。また、この加速電圧条件とイオン注入量とを同時に制御することが材料を損壊させることなく、且つ十分に所望の効果を発揮させる程度のイオン注入深さを得る(後述する好ましい範囲内になるようにする)ために、加圧電圧条件とイオン注入量とを最適のバランスとするのが好ましい。具体的には加圧電圧を10keV〜300keVの範囲とした場合、加圧電圧を高くするに従いイオン注入量が小さくなるように制御するのが好ましくい。
なお、本実施形態では、実施例10に示す条件で成形されている。
【0018】
(イオンの注入深さ、細孔)
上述のようにしてイオンビーム照射を施して形成される本発明の医療用成形体は、前記イオンビーム照射により表面にイオンが注入されるとともに微細な細孔が形成されていると考えられる。
このイオンが注入される深さや形成される細孔の深さは、上述のイオンビーム照射の条件を種々変更することで調整することができ、これにより、生体分解速度の生体分解性、生体親和性等を制御することができる。
本発明において前記のイオンの注入深さは、30nm〜1000nmであるのが好ましく、50nm〜600nmであるのが特に好ましい。この範囲であると、より、強度を保ったまま生体親和性(親水性)や生体分解性を向上させることや、イオンの持つ特性を付与することができる。
また、前記細孔については、現状ではその径等を正確に測定することはできないが、後述するシュミレーション結果、並びに透過型顕微鏡などによる断面観察等の測定結果から表面からイオン注入深さまで改質された層が形成されていることは明らかである。これは前記イオンビーム照射により、イオンがある程度の深さまで到達して、イオン径と同等又はイオン径よりも若干径の大きい孔が形成されているものの、イオン径よりも若干大きい程度の非常に微細な孔であるため各径の測定が困難なためと推測される。
【0019】
(ねじり延伸)
本発明の医療用成形体は、生分解性材料にねじり延伸を施してなるもの、であるのが好ましい。これにより、強度を高くすることができる。
前記ねじり延伸の一例を、図2を参照して、説明する。
前記ねじり延伸は、まず、図2(a)に示すように、溶融させた原料を圧縮成形等により成形した圧縮成形物などの仮成形体に対し、押出延伸を行い、分子配向させた押出処理物を得る。次に、図2(b)に示すように、押出処理物をその一端を固定し、押出処理物を加熱し、その他端を、図中の矢印のねじり方向に、ねじり角度(図中のγ)で回転させることによりなされる、ねじり加工を施して行う。
【0020】
(押出延伸)
前記押出延伸は、特に制限されず、公知の方法や装置により行うことができる。例えば、樹脂をガラス転移温度以上、融点以下の温度に加熱し、金型と圧子を用いて材料を絞り出すように変形させて延伸する、いわゆる押出法などにより行うことができる。
これにより、本発明の医療用成形体における前記生分解性材料の分子を配向させることができ、より強度を高くすることができる。
前記押出延伸に用いられる材料は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特に制限されず、例えば、樹脂原料から圧縮成形などにより成形された材料を用いることができる。
前記押出延伸における押出圧力は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特に制限はされないが、分子配向、強度等の観点から、100〜200kNであるのが好ましい。
前記押出延伸における延伸比は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で特に制限はされないが、前記生分解性材料がポリ乳酸である場合には、分子配向、強度等の観点から、1.2〜10であるのが好ましい。
前記押出延伸における配向関数は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で特に制限はされないが、前記生分解性材料がポリ乳酸である場合には、分子配向、強度等の観点から、0.5〜0.8であるのが好ましい。
なお、前記ポリ乳酸の配向関数は、実施例に記載する方法により求めたものである。
なお、本実施形態の医療用成形体は、実施例10の条件で延伸処理したものである。
【0021】
(ねじり加工)
本発明で用いられる前記ねじり加工は、上述の押出延伸で分子配向された押出処理物に行うものである。これにより、本発明の医療用成形体のせん断強度を維持し、ねじり強度を高くすることができる。
前記ねじり加工における材料の回転は、材料の長軸方向に対しての1つの末端を接着などの方法で固定し、材料を加熱し他の末端を回転させる方法などにより行うことができ、通常この種の加工を行う際に用いられる延伸装置を特に制限なく用いて行うことができる。
本実施形態においては、図2(b)や図14等に示すように一端を固定し、材料をヒーターで加熱しながら多の末端をトルク負荷機で回転させたものである。
前記のねじり加工における加熱温度は、特に制限はないが、加工のしやすさ、などの観点から、50〜200℃であるのが好ましい。
本実施形態において、ねじり加工は、成形温度約100℃、回転数0.2rpm、回転方向は右回りにトルクを加えることで行った。
また、前記のねじり加工は、らせん角が、15〜75度であるのが好ましく、理論上45度付近となるように行うのが特に好ましい。らせん角が、この程度であると、よりねじり強度が高くなる。
なお、本明細書において、らせん角とは、図2(b)に示すように材料の一端を矢印方向に角度γに回転させたときに生じる角度θを意味し、例えば、円柱の場合には、下記方法により測定することができる。
らせん角は以下の様にして測定できる。まず、ねじり延伸を行う前の円柱の軸方向の直線を引く。ねじり延伸後に固定端を起点にして軸方向の直線を引く。トレーシングペーパーを円柱に巻きつけ、ねじり延伸前後に引いた線をなぞり、円柱から切り離す。そして、分度器を用いてねじり延伸前後に引いた線(ねじり延伸前後の線)の角度を測定することにより、らせん角を測定することができる。
また、らせん角の平均値を平均らせん角といい、上述のようにして円柱の長さ方向に複数個所らせん角を測定し、それらの平均を算出したものをいう。なお、本実施形態においては、平均らせん角は23度であった。
また、本発明の医療用成形体が本実施形態におけるネジのような締結部材である場合において、前記のねじり加工におけるねじり方向は、強度等の観点から、ねじのらせんと同じ方向であることが好ましい。これにより、ねじり方向(ネジの螺旋方向)のねじり強度を高くすることができる。
なお、本明細書において締結部材とは、締結に用いられる部材をいい、具体的にはボルト、ナット、ネジなどが挙げられる。
【0022】
(結果物の説明)
上述のようにして得られる本発明の医療用成形体1は、親水性が高く、しかも強度が向上したものである。本実施形態においては、イオンビーム照射により接触角が約75度近辺から約60度近辺まで変化し親水性が向上したものである。また、ねじり延伸によりねじり強度(トルク)が約1.0N・mから約1.2N・mまで上昇し、強度が向上したものである。
【0023】
(形状・大きさ)
本発明の医療用成形体の形状・大きさは、特に制限なく、用途に応じて任意のものを用いることができる。なお、本実施形態においては、長さ約20mm、直径6mmのネジである。
【0024】
<他の成形体>
また、本発明の成形体が医療用成形体以外の成形体である場合について以下に説明する。
本発明の成形体として上述の医療用成形体ではない工業用成形体等とする場合(たとえばボルトやナット等の締結部材)でも、材料として上述の生分解性材料の他、上述の高分子材料を用いることができる。また、イオンビーム照射、イオン注入量、イオンの加速電圧、イオンの注入深さや細孔、ねじり延伸、押出延伸、ねじり加工については上述の医療用成形体と同様の条件とすることができる。
また、この際用いることができるイオン種も上述の医療用成形体と同様にすることができるが、特に、希ガス類(Ar(アルゴン)、He(ヘリウム)など)が好ましい。
得られる成形体の強度は用いる高分子材料により種々変更可能であり、本発明の成形体においては所望の強度に調整することが可能である。
【0025】
製造方法及び用途については成形体の区別なく以下に説明する。
(製造方法)
本発明の成形体は、前記生分解性材料にねじり延伸処理を施して仮成形体を得る延伸工程と、
得られた仮成形体にイオンビーム照射を行う照射工程と、を行うことにより得ることができる。
前記延伸工程は、上述の押出延伸とねじり加工とを行うことにより実施できる。
前記照射工程は、上述のイオンビーム照射を行うことにより実施できる。
なお、前記仮成形体は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、鍛造や切削などの加工を追加することができる。
本実施形態においては、鍛造によりネジ山の形成を行った後に、イオンビーム照射を行っている。
また、前記医療用成形体が、例えば平板など、ねじり延伸処理を必要としない場合は、ねじり延伸処理省略することができる。
【0026】
(用途など)
本発明の成形体は、上述の特性を有するため、スクリュー、ボルト、ナットなどの締結部材として有用である。また、高分子材料として生分解性材料を用いた場合には、生体内で使用する医療用成形体として好適に用いることができる。中でも、上述の骨折の内固定などに用いる医療用固定具や部品などの固定プレート、スクリュー、ボルト、ナット、ピン、ケージ、などにさらに好適に用いることができ、さらに前記ねじり延伸を行って得られた本発明の医療用成形体は、所定の回転方向に対するねじり強度が付与される観点から、スクリュー、ボルト、ナットなどの締結部材や、ネジ孔を具備する成形体などに特に好適に用いることができる。
【0027】
本発明は上述した実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
たとえば、本体全体にネジ山が設けられた例をもって説明したが、先端部分のみにネジ山が形成された形状とする等、ネジ山の形成箇所は任意である。
【実施例】
【0028】
以下、本発明について実施例及び比較例を示してさらに具体的に説明するが本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【0029】
〔実施例1〜5〕
以下に示す射出成形物を用いてイオンビーム照射を行い、本発明の成形体としての医療用成形体を得た。
得られた医療用成形体におけるイオンビーム照射により改質した部分における表面状態の変化を、イオンビーム照射後におけるイオンビーム照射部分の表面の面粗さ、接触角の測定を行うことにより調べた。
(射出成形物の製造方法)
重量平均分子量95000のPLAペレットを使用した。このペレット単体を下記に示す条件で日精樹脂工業製の超精密小型成形機(NP7 Real Mini)を用いて評価部長さ約30mm、幅約5mm、厚さ約2mmのダンベル型に射出成形し、射出成形物(ボルトとナットとの締結物の疑似成形体または固定プレートの疑似成形体)を得た。
条件:
Injection Pressure[MPa]:82
Fusion Temperature[℃]:200
Clamping Temperature[℃]:50
Cooling Time[s]:30
【0030】
(イオンビーム照射)
得られた前記生分解性材料の射出成形物の表面の一部にイオンビーム照射を行った。
前記イオンビーム照射は、イオンビーム照射装置を用いて行った。用いたイオンビーム照射装置は、目的とする元素のイオンを発生させるイオン源、必要なイオンだけを取り出す質量分析器、イオンを電気的に必要なエネルギーに加速する加速器、対象物であるターゲットを装着する高真空チャンバー等から成り、照射するイオン種・イオン注入量・イオンの加速電圧等の条件を制御することが可能な装置である。
また、イオンビーム照射を行った部分は、図3(a)に示すように、前記射出成形物の表面の一部をマスク(材料(アルミニウム箔や板など)、大きさ約100×100×1mm)により被覆してマスクした部分にはイオンビーム照射がされないようにして行い、図3(b)に示す本発明の成形体としての医療用成形体としてのイオンビーム照射物を得た。(図中の点線の部分は、イオンビーム照射した部分を示している。)
なお、イオンビーム照射は表1に示す条件にて行った。
【表1】
【0031】
〔試験例1〕
(表面の面粗さ・接触角の測定)
医療用成形体におけるイオンビーム照射により改質した部分における表面状態の変化を、イオンビーム照射部分の表面の面粗さ、接触角の測定を行うことにより調べた。
また、試験は、イオンビーム照射条件におけるイオン注入量及びイオンの加速電圧の違いによる効果の差を調べるため、
イオン注入量:1013イオン/cmで、イオンの加速電圧:50、100、150keVの各条件におけるイオンビーム照射部分の表面の面粗さ(実施例1〜3)、
イオン注入量:1013イオン/cmで、イオンの加速電圧:50、100、150keVの各条件における表面のイオンビーム照射部分の表面の接触角(実施例1〜3)、
イオンの加速電圧:100keVで、イオン注入量:1013イオン、1014イオン、1015イオン/cmの各条件における表面のイオンビーム照射部分の表面の接触角(実施例2、4及び5)、
において試験を行った。また、対照試験として、イオンビーム照射を行っていない部分における表面の面粗さ及び接触角の測定を行った。
なお、表面の面粗さ及び、接触角は、下記方法により測定した。
面粗さ測定:
面粗さ測定は、原子間力顕微鏡(AFM)(装置名:ICON、ビーコ社製)を用いて、タッピング法により行った。
接触角測定:
接触角測定は、蒸留水を20μL滴下し、接触角計(装置名:DM−301、協和界面科学株式会社製)を用いて、滴下法により行った。
得られた表面の面粗さの結果を、図4(実施例1〜3:イオンの加速電圧の比較)に、接触角の結果を図5(実施例1〜3:イオンの加速電圧の比較)及び図6(実施例2,4及び5:注入イオン量の比較)に示す。
なお、図中の、0keVにおける実験結果は、対照実験としてのイオンビーム照射を行っていない部分(図3(a)のマスクの下の部分)における実験結果を意味する。
なお、すべての試験は、試行回数5回で行った。
【0032】
〔試験例2〕
医療用成形体の生体分解性を調べるため自然分解試験を行った。
(自然分解試験)
生体内におけるポリ乳酸の分解速度と、リン酸緩衝液中での分解速度は同等であることが知られており、リン酸緩衝液中における本発明の医療用成形体の分解速度は生体内での分解速度と同等であると考えられる。そこで、自然分解実験は、図7に示すように本発明の医療用成形体を濃度0.067Mのリン酸緩衝液(pH7.4)、200mLに浸漬させることにより行った。
医療用成形体は、リン酸緩衝液浸漬後、1、2、4、6週間後に緩衝液から取り出し、イオンビーム照射した部分と、イオンビーム照射していない部分との厚みの差(図7の図中の「段差」)を測定することにより行った。なお、前記リン酸緩衝液は1週間ごとに交換を行った。
前記厚みの測定は、原子間力顕微鏡(AFM)装置(商品名:ICON、ビーコ社製)を用いて行った。
試験は、イオンビーム照射条件の違いによる効果の差を調べるため、
イオン注入量:1013イオン/cmで、イオンの加速電圧:50、100、150keVの各条件で製造した医療用成形体(実施例1〜3)、イオンの加速電圧:100keVで、イオン注入量:1013イオン、1014イオン、1015イオン/cmの各条件で製造した医療用成形体(実施例2、4及び5)、において行った。
その結果を図8(実施例1〜3:イオンの加速電圧の比較)、及び図9(実施例2、4及び5:注入イオン量の比較)に示す。
【0033】
〔実施例6〜9〕
(本発明の成形体としての医療用成形体の製造)
実施例1と同様にしてPLAペレットから射出成形物を製造し、該射出成形物にイオンビーム照射を、下記表2の条件で、成形物の一面全体に行い、本発明の医療用成形体(実施例6〜9)を得た。
各実施例(実施例6〜9)おけるイオンビーム照射条件を表2に示す。
【表2】
(シミュレーションによるイオン注入深さ)
また、前記イオンビーム照射によるイオン注入深さを、SRIM2006(J.F. Zieglerら、http://www.srim.org/)でシミュレーションしたところ、以下の通りであった。
実施例6:約80(±20nm)nm、実施例7:約160(±30nm)nm、
実施例8:約80(±20nm)nm、実施例9:約160(±30nm)nm。
【0034】
〔比較例1〕
イオンビーム照射を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてPLAペレットから射出成形物を製造し、得られた射出成形物を比較例1とした。
【0035】
〔試験例3〕
医療用成形体の強度を、引張強度を測定することにより調べた。
引張強度の測定は、実施例6〜9で得られた医療用成形体、並びに比較例1で得られた圧縮成形体において行った。
(引張強度測定)
引張強度の測定は、下記方法により行った。
方法:JIS K7162(プラスチック−引張特性の試験方法、第2部:型成形、押出成形及び注型プラスチックの試験条件)に従い行った。
試験装置:装置名:万能試験機、型名:AGS1000−A、島津製作所社製
引張強度は、引張試験中に加わった最大引張応力とした。
得られた結果を図10に示す。
なお、試験は試行回数3回で行った。
【0036】
〔実験例1〕ねじり延伸における種々押出延伸比における分子配向状態の解析
ねじり延伸における分子配向の最適化を行うため、ねじり延伸における押出延伸時の押出比による分子配向状態を調べた。
(圧縮成形物の製造)
圧縮成形物は、実施例1のPLAペレットを用い、円筒状の成形物用の金型(直径:6mm、長さ40mm)で圧縮成形を行い、円筒状の圧縮成形物(直径:6mm、長さ40mm)を得た。
【0037】
(押出処理物の製造)
得られた圧縮成形物を押出法により、種々延伸比(延伸比:1.0、1.3、2.0、4.0、8.0)で押出延伸した。なお、押出延伸は全ての延伸比において直径6mmになるように行った。
押出延伸の概要を図11に示す。押出成形は、本体、バルク体のガイド、圧子、テーパー部の四つのパーツから構成される金型を用い、金型は自作したホットプレスを用いて105℃に加熱し、金型に前記圧縮成形物をセットした状態で10分間加熱し、加熱後にホットプレスの油圧ジャッキを手で操作して負荷を加え、圧子を押込むことにより行った。
押出延伸後、金型ごとホットプレスから取出し、金型を吸熱用の金属板を用いて50℃になるまで冷却した後に金型から取出し、押出処理物(直径6mm、長さ40mm)を得た。なお、延伸比1.0のものは、熱処理のみを行い、押出延伸を行わなかったものである。
【0038】
(分子配向の解析)
得られた前記押出処理物の分子配向は、フーリエ変換赤外線分光法(FTIR)の全反射法(ATR法)により解析した。
以下、解析の詳細を示す。
FTIRでは赤外光源部より出た光が干渉計に入り、干渉波(インターフェログラム)となり、試料を通過する。その際、試料を構成する分子中の原子または原子団の振動エネルギーに対応した固有の振動数の光が吸収される。検出器で得られた信号は、コンピュータ部にてフーリエ変換され、試料固有の赤外スペクトルが得られる。それによって試料物質の同定を行うことができ、さらに偏光赤外線を用いることによって分子配向の解析を行うことができる。ATR法はFTIRの測定方法の一つで、赤外線を試料表面で全反射させることによって試料表面1〜2μm程度の情報を得る方法である。
PLAのα結晶からなる配向したフィルムでは分子鎖軸に垂直な遷移モーメントを示すCH振動モードに割り当てられる923cm−1の吸収バンドが観察されること(S.Kangら、Macromolecues、34、4542(2001))、非常に配向したβ結晶からなるフィルムではβ結晶のCH振動モードに割りあてられた912cm−1の吸収バンドが観察されること(Daisuke Sawaiら、Macromolecules、36、3601−3605(2003))が報告されている。従って、α結晶とβ結晶それぞれの配向関数は赤外線二色比を用いることによって決定することができる。
二色比Rは下式(数1)の様に定義される。
【数1】

式中、AとAは試料表面に対して垂直方向と平行方向に偏光した赤外線を用いて決定された吸光度である。
下式(数2)を用いて二色比Rから配向関数fを求めることができる。
【数2】

式中、θは分子鎖軸と延伸方向との間の角度、R=2cotαであり、αは赤外線吸収バンドの遷移モーメントが分子鎖となす角度で、α=90°である。
【0039】
(測定・解析)
測定を行うために測定試料を作製した。測定試料は、得られた前記押出処理物を、エピコート(登録商標)828(三菱化学社製)とトリエチレンテトラミンとを重量比100:11で混合した樹脂に図12(a)に示すように包埋した後、長手方向の断面を出すために図12(b)に示すようにラボカッターを用いて一部を切り出し、さらに図12(c)に示すように前記押出処理物が長手方向に対しほぼ半分になるように切出しを行い、切り出しにより露出した前記押出処理物の一部の表面を、耐水研磨紙を用いて#800、#1000、#2000の順に研磨を行い、最終的にバフ研磨を行うことによって平滑にしたものである。
赤外スペクトルの測定は、前記測定試料を、フーリエ変換赤外線分光法(FTIR)の全反射法(ATR法)により行った。具体的には、水平型全反射測定装置(ATR−8200HA、島津製作所社製)及び赤外偏光子(GPR−8000、島津製作所社製)を装着したフーリエ変換赤外分光光度計(商品名:IR Prestige−21、島津製作所社製)を用いて下記条件で前記測定試料の測定を行った。
条件:
Measurement Mode:Transmittance
Cumulated Number:20
Resolution:4.0cm−1
Measuring Range:700〜4000cm−1
得られた赤外スペクトルから上述の二色比を用いて配向関数を算出した。その結果を図13に示す。
【0040】
〔実施例10〕ねじり延伸による本発明の成形体としての医療用成形体の製造
ねじり延伸処理物における、ねじり延伸方向による強度を調べた。
(ねじり延伸処理物の製造)
(原料〜押出延伸)
押出成形における延伸比を8にした以外は、実験例1と同様にして、PLAペレットから圧縮成形物を得、該圧縮成形物の押出成形を行い押出処理物を得た。
(ねじり加工)
得られた押出処理物にねじり加工を行った。
ねじり加工は、まず、得られた押出処理物の両端に図14に示すように六角柱状の金属性タブを加工部が25mmとなるように接着した。なお、加工部とは、得られた押出処理物のタブがついていない部分を言う。
タブを接着した押出処理物を、図14に示す自作のトルク負荷機の試料装着部に装着し、ヒーターで20分間加熱し、モーターでトルクを加えることによってねじり加工を行い、ねじり延伸処理物(仮成形体)を得た。
なお、ねじり加工は、成形温度100℃、回転数0.2rpm、回転方向は右回りとし、上述のねじり角が192度となるようにトルクを加えることで行った。なお、ねじり加工における平均らせん角は23度であった。
【0041】
(鍛造)
鍛造により、ねじり延伸処理物にネジ山の形成を行った。
鍛造によるネジ山の形成は、まず、M6の並目ネジのネジ山が刻んであり2つに分割された金型に、一方のタブを切り取ったねじり延伸処理物を上下から挟んで装着し10分間加熱を行った。その後、島津製作所製のUH−1000kNIRを用いて200kNの押切荷重、室温下でコールドプレスすることにより金型に彫られたネジ山をねじり延伸処理物に転写することで、ねじり延伸処理物の表面にネジ山を形成した。その後、金型温度が40℃以下になったところで荷重をはずして金型から取り出し、ネジ山が形成された鍛造物を得た。
【0042】
(イオンビーム照射)
得られた前記成形物にイオンビーム照射を行い図1に示す本発明の医療用成形体を得た。なお、イオンビーム照射は実施例1のイオンビーム照射装置に前記成形物をセットしイオン注入量:1013イオン/cmで、イオンの加速電圧:50keVの条件で行った後、さらに、1度目のイオンビーム照射がなされなかった部位にイオンビームの照射を行うために、前記成形物を180度回転させて装置にセットし、同条件で再度イオンビームの照射を行った。
【0043】
〔実験例2〕ねじり延伸処理物における直径方向による強度
ねじり延伸処理物の直径方向のせん断強度を測定するために、実施例10で得られたねじり延伸処理物におけるせん断試験を行った。その概要を図15に示す。
せん断試験は、まず、図15に示すように専用の治具を使用してねじり延伸処理物を試験機の試料装着部に装着した。装着したねじり延伸処理物に、圧縮負荷用にチャックを外し、上部に圧子をセットした状態の試験機を使用して圧縮負荷を加えることで、ねじり延伸処理物にせん断荷重を加えた。試験機には島津製作所製AGS−1000Aを使用し、クロスヘッド速度は0.5mm/minで行った。荷重の測定には10kNのLoad Cellを使用し、100msの測定間隔で測定を行った。得られた最大荷重から以下の式(数3)によってせん断強度Sを算出した。
なお、対照試験は、実施例10で得られたねじり延伸を行わなかった押出成形物を同様に試験することで行った。得られた結果を図16に示す。
【数3】
式中、Fは最大荷重を意味し、Aはねじり延伸処理物の有効断面積(22.5mm)である。
【0044】
〔実験例3〕ねじり延伸処理物におけるねじり延伸方向による強度
ねじり延伸処理の効果を調べるために、実施例10で得られたねじり延伸処理物のねじり試験を行った。その概要を図17に示す。
ねじり試験は、タブとしての六角ナットを接着剤(商品名:アラルダイト(登録商標)、ハンツマン・ジャパン社製)で評価部の長さが15mmとなるように両端に接着し、専用の治具を用いて試験機にセットした。次に、試験機で、ねじり延伸処理物に接着した片側のタブは固定し、他方のタブにモーターでトルクを負荷した。負荷用モーターにはオリエンタルモーター社製M206−401、ギアヘッド2GN180Sを使用し、トルクの測定にはトルク変換機(型番:TP20kCE、共和電業社製)を使用し、0.2rpmの回転数、100msの測定間隔で試験を行い、最大トルクを測定した。得られた最大トルクから下記式(数4)で軸方向のせん断強度Sτを算出した。
【数4】
式中、Tは最大トルク(N・m)を意味し、Zはねじり延伸処理物の有効径に対する極断面係数(30.07mm)である。
なお、ねじり延伸を行ったねじり延伸処理物における、ねじり方向別の強度を調べるために、延伸方向と反延伸方向の両方向においてねじり試験を行った。また、ねじり加工を行わなかった押出処理物における延伸方向のねじり試験を比較試験とした。
その結果を図18に示す。
【0045】
以下、結果及び考察を詳述する。
(イオンビーム照射による表面状態の変化)
イオンビーム照射により改質した部分における表面状態の変化を、イオンビーム照射直後におけるイオン注入部分の表面の面粗さ、接触角の測定することにより調べた。
その結果、表面の面粗さについては、図4に示すように、イオンビーム照射におけるイオンの加速電圧の条件による、すなわち注入加速量による、おおきな変化はみられなかった。
表面の接触角については、図5及び6に示す、すべてのイオンビーム照射条件において、イオンビーム照射した部分における接触角は、イオンビーム照射していない部分に比して、低下していた。さらに、表面の接触角は、図5に示すようにイオンの加速電圧(注入加速量)依存的に低下し、図6に示すように注入イオン量にも依存して低下していた。
これらの結果における接触角の低下は、表面の親水性が高く改質されたことを示しており、生体親和性が高くなったことを意味している。
また、表面の親水性が高いということは、水分が表面に浸透しやすくなることを意味しており、ポリ乳酸が水分により分解することとあわせて考えると、水分が浸透しやすくなるということは生体分解性が向上していることを示している。
そして、その接触角は、イオンビーム照射時における、イオンの加速電圧(注入加速量)や注入イオン量に依存した低下がみられることから、イオン注入時のそれらの条件を変えることで接触角、すなわち、生体親和性及び生体分解性の制御が可能であることがわかる。
【0046】
(本発明の医療用成形体の生体分解性)
本発明の医療用成形体の生体分解性を調べた。
その結果、図8(実施例1〜3)及び図9(実施例2、4及び5)から、試験したすべてのイオンビーム照射条件において、イオン注入した部分はイオン注入していない部分と比較して分解速度が速い(段差が生じている)ことがわかる。また、分解速度は、イオンの加速電圧(注入加速量)や注入イオン量に依存して大きくなることがわかる。特に実験開始から1〜3週間における分解速度が向上していることがわかる。
前記イオンビーム照射におけるすべての条件において、イオン注入した部分はイオン注入していない部分と比較して分解速度が速いという結果から、本発明の医療用成形体は分解速度が速く生体分解性に優れることがわかる。また、分解速度は、イオンの加速電圧(注入加速量)や注入イオン量に依存して大きくなることから、分解速度はイオン注入におけるイオンの加速電圧条件や注入イオン量により制御可能なことがわかる。
【0047】
(本発明の成形体としての医療用成形体の強度)
本発明の成形体としての医療用成形体の引張強度を調べた。
図10に種々条件で、イオンビーム照射した場合と、イオンビーム照射していない場合における本発明の医療用成形体の引張強度を示す。この結果から、本発明の医療用成形体は、イオンビーム照射しても強度が低下していないことが判る。
【0048】
(押出延伸における分子配向)
本発明で用いられる押出延伸における分子配向の状態を調べた。
図13に示すように、押出延伸における押出比が1.3以上というわずかな延伸比においても、配向関数が高いことがわかる。この結果から、本発明で用いられる押出延伸により押出処理物の分子が配向されていることがわかる。
【0049】
(ねじり延伸処理物におけるせん断強度)
ねじり延伸処理物における、せん断強度を調べた。
図16に示すように、ねじり延伸処理物は、ねじり延伸しないものと比較して、せん断強度にはほとんど差がないことが確認された。このことからねじり延伸処理物は、押出延伸によって向上したせん断強度を維持していることが判る。
【0050】
(ねじり延伸処理物におけるねじり強度)
ねじり延伸処理物における、ねじり延伸方向による強度を調べた。
図18に示すように、ねじり延伸処理物は、ねじり延伸しないものより、ねじり回転方向による強度が2割ほど向上することが認められる。また、ねじり延伸処理物の逆方向回転に対してのねじり強度は、通常方向のものより減少することが判る。このことは、ねじり回転方向の制御により、強度の制御も可能であることを意味する。
【0051】
以上により、本発明の成形体としての医療用成形体は、生分解性材料からなる生体親和性、生体分解性、及び強度に優れるものであることが判る。
また、本発明の成形体としての医療用成形体は、イオンビーム照射により表面改質を行い、そのイオンビーム照射の条件(イオン種、注入イオン量、イオン加速量(注入深度)など)を変える事によって、強度を保ちつつその生体親和性と生体分解速度等に優れるものであることが判る。また、前記生体親和性と生体分解速度は、イオンビーム照射の条件により制御可能であることが判る。
また、本発明の成形体としての医療用成形体は、ねじり延伸により、せん断強度及びねじり強度が高いものであることが判り、特にねじり方向に対して強度が高いものであることが判る。
【0052】
〔実施例11〕(ねじりのらせん角と強度との関係)
また、ねじりのらせん角の角度を図19に示すように0°、15°、30°、45°、50°とした以外は実施例10と同様にしてそれぞれ成形体を得た。
得られた成形体について、ねじり強度と最大らせん角の関係及び最大らせん角とせん断強度との関係を測定した。その結果を図19及び20に示す。
なお、ねじり強度と最大らせん角の関係は実験例3におけるねじり試験と同様のねじり試験を行うことにより、また最大らせん角とせん断強度との関係は実験例2におけるせん断試験と同様のせん断試験を行うことにより測定を行った。
各図に示す結果から明らかなようにねじり強度は最大らせん角40〜50°で最も高い値を示し、せん断強度は最大らせん角15〜45°で最も高い値を示すことが判る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図18
図19
図20