(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る電気掃除機について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電気掃除機1の斜視図である。電気掃除機1はキャニスター型である。電気掃除機1は、例えば吸引ヘッド2、延長パイプ3、接続パイプ4、吸引ホース5及び本体6を備える。
【0013】
吸引ヘッド2に吸込み口が形成される。吸込み口は、吸引ヘッド2に形成された下向きの開口である。吸引ヘッド2は中央部に接続管を備える。延長パイプ3は、一方の端部が吸引ヘッド2の接続管に接続される。吸引ヘッド2は、延長パイプ3に着脱可能である。延長パイプ3は伸縮可能である。延長パイプ3の長さは、無段階或いは多段階で調節できる。
【0014】
接続パイプ4は、一方の端部が延長パイプ3の他方の端部に接続される。延長パイプ3は、接続パイプ4に着脱可能である。接続パイプ4は、円筒形状の部材とこの部材に設けられた操作ハンドル7とを備える。操作ハンドル7は、吸引ヘッド2を動かすために使用者が持つ部分である。操作ハンドル7に操作スイッチ8が設けられる。例えば、操作スイッチ8は電気掃除機1の運転を制御するための複数のボタンを備える。
【0015】
吸引ホース5は、一方の端部が接続パイプ4の他方の端部に接続される。吸引ホース5の他方の端部5aが本体6の接続部12に接続される。吸引ホース5は、端部5a以外の部分が蛇腹形状であり、任意の方向に曲がる。吸引ホース5は本体6に着脱可能である。吸引ホース5の端部5aは、例えば硬質の複数のプラスチック部材によって円筒状に形成される。吸引ヘッド2、延長パイプ3、接続パイプ4及び吸引ホース5は、ごみを含む空気(含塵空気)を外部から本体6に導くための風路を形成する。
【0016】
本体6には、集塵ユニット10と吸引ユニット9が設けられている。集塵ユニット10は、吸引ユニット9に着脱可能である。本体6には、使用者が本体6を持ち上げる際に持つ部分であるハンドル13が取り付けられている。本体6の両側面には車輪14が設けられている。
【0017】
図2は、電気掃除機1の本体6の斜視図である。本体6は、ごみを含む空気からごみを分離する機能を有する。また、本体6は分離したごみを捕集する機能を有する。本体6には、電力を供給する電源コード16が設けられている。
【0018】
図3は、電気掃除機1の本体の平面図である。
図4は、
図3のA−A線断面図である。以下の説明では、
図2に示す状態を基準に上下方向を特定する。前後方向に関しては、
図3の左側を前とする。
【0019】
図4には、吸引ユニット9と集塵ユニット10が示されている。吸引ユニット9は、本体ケース11、ホース接続部12及び車輪14を備える。本体ケース11は、例えば機器ケース17及び集塵ケース18を備える。機器ケース17の内部に種々の機器が設けられる。例えば、吸引ユニット9は、機器ケース17の内部に、ファンカバー52、ファンカバー52に覆われた電動送風機19、フィルタ20,21、コードリール及び制御装置を備える。電動送風機19は、ファンカバー52によって、水平面に直立した状態で支持されている。
【0020】
ファンカバー52は電動送風機19を覆う。ファンカバー52には、電動送風機19に取り込まれる空気が通る流入口52aと、電動送風機19の排気が通る排気口52bと、が形成されている。ファンカバー52の底部(下端)には緩衝材90が取り付けられている。緩衝材90は例えばゴムなどの軟質素材で形成される。
【0021】
ダクト50は、排気風路22の一部を提供する部材である。ダクト50は流入口52aにつながる風路を提供する。つまり、ダクト50は、集塵ユニット10から出された空気を電動送風機19に導く風路を提供する。
【0022】
ファンカバー52は、電動送風機ケース56によって覆われている。電動送風機ケース56は、排気口52bにつながる風路を提供する。つまり、電動送風機ケース56は、電動送風機19の排気をフィルタ21へ導く流路を提供する。電動送風機ケース56には緩衝材90を収容する凹部56aが形成されている。
【0023】
ファンカバー52の側面と電動送風機ケース56の間には軟質部材54が設けられる。軟質部材54は例えばゴムなどの軟質材料で形成されることが好ましい。この軟質部材54は、ファンカバー52とダクト50の間にも及んでいる。軟質部材54と緩衝材90を設けることで、ダクト50及び電動送風機ケース56が、ファンカバー52に直接接触することを防止している。軟質部材54と緩衝材90により防振効果を得ることができる。
【0024】
機器ケース17に、排気風路22の要部が形成される。排気風路22は、集塵ユニット10でごみが取り除かれた空気を排気口23に導くための風路である。電動送風機19及びフィルタ20、21は排気風路22に配置される。
【0025】
集塵ケース18は機器ケース17の前側に配置される。集塵ケース18は、例えば一方の端部が塞がれた円筒形状である。集塵ケース18は、中心軸が斜めに配置され、斜め上方に開口する。集塵ケース18は、上部より下部が前側に突出する。集塵ケース18に集塵ユニット10が収容される。集塵ユニット10は、集塵ケース18に着脱可能である。
【0026】
ホース接続部12に、吸引ホース5の端部5aが接続される。ホース接続部12は、本体ケース11の上側の部分に設けられる。ホース接続部12は、本体ケース11の前側の部分に設けられる。本実施の形態で示す例では、ホース接続部12は、集塵ケース18の上部に設けられる。ホース接続部12は集塵ケース18の周壁から前側に突出する。
【0027】
ホース接続部12に、吸引ホース5の端部5aが差し込まれる中空部12aが形成される。吸引ホース5がホース接続部12に接続されると、端部5aはホース接続部12から斜め上方に突出する。
【0028】
車輪14は、本体ケース11に回転可能に設けられる。車輪14は、例えば本体ケース11の後側に設けられる。本実施の形態で示す例では、車輪14は、機器ケース17に回転可能に設けられる。車輪14は機器ケース17の両側に配置される。
【0029】
電動送風機19は、電気掃除機1に形成された風路に気流を発生させる。電気掃除機1に形成された風路には、例えば、ごみを含む空気を外部から本体6に導くための風路、集塵ユニット10に形成された風路及び排気風路22が含まれる。電動送風機19は、電源コードが電源に接続された状態で、操作スイッチ8に対する操作に応じて予め設定された吸引動作を行う。
【0030】
電動送風機19が吸引動作を行うと、電気掃除機1に形成された風路に気流が発生する。これにより、吸引ヘッド2の吸込み口から床面上のごみが空気と一緒に吸い込まれる。吸引ヘッド2に吸い込まれた塵埃を含む空気は、延長パイプ3、接続パイプ4及び吸引ホース5を通って本体6の内部に流入する。
【0031】
本体6の内部に流入したごみを含む空気は、ホース接続部12の中空部12aを通って集塵ユニット10に送られる。集塵ユニット10の内部で発生する気流については後述する。集塵ユニット10から流出した空気は、排気風路22に流入し、フィルタ20、電動送風機19及びフィルタ21を通過する。フィルタ21を通過した空気は、排気風路22を更に進み、排気口23から本体6の外部(掃除中の部屋)に放出される。
【0032】
集塵ユニット10は、ごみを含む空気からごみを分離する。集塵ユニット10は、ごみを含む空気を高速で旋回させることにより、遠心力によってごみを分離する。即ち、集塵ユニット10はサイクロン分離機能を有する。集塵ユニット10は、分離したごみを捕集し、一時的に溜めておく。排気風路22には、集塵ユニット10から比較的清浄な空気が流入する。なお、サイクロン式の集塵ユニット10に代えて紙パック式の集塵ユニットを採用してもよい。
【0033】
集塵ユニット10は、集塵ケース18に上方から挿入される。例えば、予め定められた操作を行いながら集塵ユニット10を上方に引き抜くことにより、集塵ユニット10を集塵ケース18から取り外すことができる。集塵ユニット10は、例えば複数の成型品を備える。複数の成型品が適切に配置されることにより、集塵ユニット10に、旋回室24、流入風路25、0次集塵室26、一次集塵室27及び流出風路28が形成される。
【0034】
旋回室24は、ごみを含む空気を旋回させるための空間である。旋回室24の下部は、下方に向かうに従って径が小さくなる円錐台形状である。旋回室24を形成する側壁は、旋回室24の中心軸に直交する方向の断面が円形状である。旋回室24を形成する側壁の上部に、流入口29が形成される。流入風路25は、流入口29を介して旋回室24に通じる。
【0035】
流入風路25は、吸引ホース5等を通ってきたごみを含む空気を旋回室24に導くための風路である。流入風路25は、集塵ユニット10の周壁で開口する。この開口が集塵ユニット10のユニット流入口30である。ユニット流入口30は、集塵ユニット10にごみを含む空気を取り込むための開口である。吸引ホース5等を通ってきたごみを含む空気は、ユニット流入口30から流入風路25に流入する。流入風路25に流入したごみを含む空気は、流入風路25を通過して流入口29から旋回室24に流入する。集塵ユニット10が集塵ケース18に取り付けられると、ユニット流入口30は、ホース接続部12の中空部12aに対向する。
【0036】
旋回室24を形成する側壁に、0次開口31が形成される。0次開口31は、流入口29より下流に形成される。0次集塵室26は、0次開口31を介して旋回室24に通じる。0次集塵室26は、全体として円筒形状である。0次集塵室26は、旋回室24の周囲を囲むように形成される。
【0037】
旋回室24を形成する側壁の下端によって一次開口32が形成される。一次開口32は0次開口31より下流に形成される。一次集塵室27は一次開口32を介して旋回室24に通じる。一次集塵室27は、旋回室24の下端部の周囲を囲むように形成される。一次集塵室27は、0次集塵室26によって周囲が囲まれる。
【0038】
旋回室24に突出する流出管に、多数の微細孔によって形成された流出口33がある。流出風路28は、流出口33を介して旋回室24に通じる。流出風路28は、旋回室24の空気を集塵ユニット10の外に流出させるための風路である。流出風路28は、集塵ユニット10の周壁で開口する。この開口が集塵ユニット10のユニット流出口34である。ユニット流出口34は、集塵ユニット10から空気を流出させるための開口である。旋回室24の空気は、流出口33から流出風路28に流入する。流出風路28に流入した空気は、流出風路28を通過してユニット流出口34から集塵ユニット10の外に流出する。集塵ユニット10が集塵ケース18に取り付けられると、ユニット流出口34は、排気風路22に対向する。
【0039】
次に、集塵ユニット10の機能について説明する。電動送風機19が吸引動作を開始すると、上述したように、吸引ヘッド2に吸い込まれたごみを含む空気は、ユニット流入口30を通過して流入風路25に流入する。流入風路25に流入したごみを含む空気は、流入風路25を通過し、流入口29から旋回室24に流入する。この時、ごみを含む空気は、旋回室24を形成する側壁の接線方向から旋回室24に流入する。
【0040】
流入口29から旋回室24に流入した空気は、旋回室24で予め設定された方向に回る。これにより、旋回室24で旋回気流が形成される。この旋回気流は、中心軸近傍の強制渦領域とその外側の自由渦領域とを形成しながら、その経路構造と重力とによって下向きに流れていく。
【0041】
上記旋回気流に含まれるごみには、遠心力が作用する。例えば繊維ごみ及び毛髪といった比較的嵩の大きなごみαは、作用する遠心力によって旋回室24を形成する側壁に押し付けられながら落下する。このため、ごみαは、0次開口31の高さに達すると0次開口31を通過する。0次開口31を通過したごみαは、0次集塵室26に送られる。これにより、ごみαが0次集塵室26に落下して捕集される。
【0042】
0次開口31から0次集塵室26に進入しなかったごみは、旋回しながら更に下方に移動する。砂ごみ及び細かい繊維ごみといった比較的嵩の小さなごみβは、一次開口32を通過する。これにより、ごみβは、一次集塵室27に落下して捕集される。
【0043】
上記旋回気流は、旋回室24の最下部に達するとその進行方向を上向きに変える。これにより、旋回室24の中心軸に沿って上昇気流が形成される。この上昇気流を形成する空気からはごみα及びごみβが除去されている。ごみα及びごみβが取り除かれた清浄空気は、流出口33を通過して旋回室24から流出する。流出口33を通過した空気は、流出風路28を通過してユニット流出口34に達する。そして、清浄空気は、ユニット流出口34を通過して排気風路22に送られる。
【0044】
排気風路22に進入した空気にはわずかに塵埃が含まれ得る。その塵埃を除去するために、排気風路22に進入した空気は、電動送風機19の吸引力によりフィルタ20を通る。フィルタ20を通った空気は、ダクト50によりファンカバー52の流入口52aに導かれ、電動送風機19に至る。
【0045】
電動送風機19に進入した空気は矢印の方向に進み、電動送風機19から排出される。その空気はファンカバー52の排気口52bから前方に排気され、電動送風機ケース56によって形成される風路によって、フィルタ21へ導かれる。フィルタ21を通った空気は、電動送風機19の下方を通り、排気口23から外部へ排気される。
【0046】
図5は、軟質部材54等の断面図である。
図5には、ファンカバー52の側面上部とその近傍の構成が示されている。軟質部材54は、ファンカバー52の上面とダクト50に接する上面防振部54aを備えている。電動送風機19の非通電状態において、上面防振部54aの厚みL1は例えば5.5mmである。
【0047】
ダクト50の下面には凸部50aが設けられている。この凸部50aは、電動送風機に通電していないときあるいは通電しているときに、上面防振部54aに接触し上面防振部54aを下方に押し付ける。凸部50aが上面防振部54aに食い込むことで、凸部50aの直下における上面防振部54aの厚さL2は、電動送風機の非通電時において、例えば5.0mmとなっている。電動送風機19に通電していないとき、上面防振部54aはダクト50の下面とファンカバー52の上面の間を埋める。
【0048】
電動送風機19に通電すると、その吸引力によりファンカバー52は軸正方向(上方)に向かう力を受ける。この力は上面防振部54aに及ぼされ、上面防振部54aの厚みを小さくする。具体的には、5.5mmであった部分が例えば3mm程度になる。上面防振部54aがダクト50の下面とファンカバー52の上面の間の空間を完全に埋めることで、ダクト50の下面とファンカバー52の上面の間から排気風路22に空気が導入されてしまうことを防止できる。言い換えれば、排気風路22の気密性を維持できる。
【0049】
軟質部材54はシール部54bを備えている。シール部54bは、ダクト50と電動送風機ケース56の間に挟まれて弾性変形している。シール部54bの厚みL3は例えば2mm以下であり、シール部54bの横方向の長さW1は例えば4mm以下である。
【0050】
軟質部材54は側面防振部54cを備えている。側面防振部54cは、ファンカバー52の側面と電動送風機ケース56の内壁の間に設けられている。側面防振部54cの電動送風機ケース56に対向する部分にはリブ54c’、54c’’が設けられている。リブ54c’、54c’’は、ファンカバー52を囲む環状の部分である。リブ54c’、54c’’は、軟質部材54と電動送風機ケース56の接触面積を小さくするために設けられている。
【0051】
側面防振部54cのファンカバー52に対向する面は平坦な面となっている。そのため、側面防振部54cはファンカバー52の側面と面接触する。また、側面防振部54cのリブ54c’、54c’’が電動送風機ケース56に接触する。
図5から分かるように、側面防振部54cのリブ54c’、54c’’が電動送風機ケース56に接触する面積は、側面防振部54cがファンカバー52に接触する面積より小さい。
【0052】
リブ54c’、54c’’の外径φAは、電動送風機ケース56の内径φB以下とする。そのため、リブ54c’、54c’’の外径φAが電動送風機ケース56の内径φBより小さければ、静止状態でリブ54c’、54c’’と電動送風機ケース56が接触することはない。また、リブ54c’、54c’’の外径φAが電動送風機ケース56の内径φBと等しければ、静止状態でリブ54c’、54c’’と電動送風機ケース56が接触する。静止状態においてリブ54c’、54c’’と電動送風機ケース56が強く密着することは避ける。電動送風機19に通電するとファンカバー52に径左右方向の振動が生じる。この振動は、リブ54c’、54c’’が電動送風機ケース56にあたることで吸収される。
【0053】
上面防振部54aと、シール部54bと、リブ54c’、54c’’を含む側面防振部54cとは、一体的に形成された軟質部材54を構成している。軟質部材54の材料は弾性を有する材料であれば特に限定されないが例えばゴムである。ゴムは、例えば軟質ソリッドゴム又は独立発泡したゴムである。
【0054】
リブの無い軟質部材と電動送風機ケース56が接触する場合に比べると、リブ54c’、54c’’を設けることで軟質部材54と電動送風機ケース56の接触面積を小さくすることができる。これにより、ファンカバー52の径左右方向の振動が電動送風機ケース56に伝播しづらくなる。
【0055】
しかしながら、この接触面積の低下に伴い、又はリブ外径φAをケース内径φB以下としたことに伴い、電動送風機の排気が、ダクト50と電動送風機ケース56の間から抜けるおそれがある。そこで、本発明の実施の形態1では、シール部54b(ダクト50と電動送風機ケース56でつぶされた部分)を設けることで、ダクト50と電動送風機ケース56の間に隙間が生じることを防止できる。シール部54bを設けることで、リブ54c’、54c’’と電動送風機ケース56を密着させる必要が無くなる。そのため、リブ54c’、54c’’と電動送風機ケース56の間に空隙を設けて、ファンカバー52が大きく径左右方向に振動したときだけリブ54c’、54c’’が電動送風機ケース56に接触するようにしてもよい。
【0056】
図6は、電動送風機ケース等の斜視図である。電動送風機ケース56の上にダクト50が設けられている。ダクト50の上方に排気風路22が表れている。
図7は、
図6の構成の分解図である。軟質部材のシール部54bは、リブ54c’、54c’’よりも外側に長く伸びる。ダクト50に設けられた孔h1にねじを通し、そのねじを電動送風機ケース56のねじ孔h2に挿入することで、ファンカバー52が軟質部材54と緩衝材90を介して電動送風機ケース56に支持される。
【0057】
図8は、本体内部の平面図である。
図9は、
図8のB−B線断面図である。
図9には、電動送風機に通電している場合の、ファンカバー52と電動送風機ケース56の位置が示されている。前述のとおり、電動送風機19に通電するとその吸引力(負圧)によりファンカバー52が上方向(軸正方向)に移動する。その結果、電動送風機ケース56の凹部56aに接触していた緩衝材90の底面が、凹部56aから離れる。緩衝材90が凹部56aから離れて浮いている状態において、緩衝材90の少なくとも一部は凹部56aに囲まれた領域の中にある。つまり、緩衝材90が上昇し過ぎて凹部56aに囲まれた領域の外に出ないようにする。これにより、電動送風機の通電の有無に関わらず、緩衝材90の側面が、凹部56aの内壁に対向する。
【0058】
図10は、
図9のC−C線断面図である。凹部56aの内壁には凸部56bが設けられている。凸部56bは凹部56aの内壁から凹部56aの中央に向かって突出した部分である。凸部56bは、凹部56aの4つの内壁に2つずつ設けられている。電動送風機の通電時には、軸正負方向と径左右方向だけでなく、ファンカバー52を軸周りに回転させようとする回転方向の力が作用する。ファンカバー52及びそれに取り付けられた緩衝材90に回転方向の力が作用すると、緩衝材90が凸部56bに接触する。つまり、凸部56bは緩衝材90とファンカバー52の回転止めとして機能する。緩衝材90の回転(ファンカバー52の回転)を凸部56bで止めるためには、電動送風機の通電時において緩衝材90が凹部56aに囲まれた領域から外に出ないようにする必要がある。緩衝材90の上昇量を調整するためには、例えば上面防振部54aの厚み又は面積を調整する。
【0059】
凸部56bがなく、緩衝材90が凹部56aに大面積で接触すると、緩衝材90から凹部56aに軸正負方向と径左右方向の振動が伝播されてしまう。しかし、緩衝材90と電動送風機ケース56の接触を凸部56bだけに限定することで、当該振動の伝播を抑制できる。
【0060】
本発明の実施の形態1に係る電気掃除機には主に2つの特徴がある。第1の特徴は電動送風機19の振動が電動送風機ケース56に伝播しづらい構成としたことである。具体的には、軟質部材54にリブ54c’、54c’’を設けることで、ファンカバーが径左右方向に自由に、又はほぼ自由に振動できるようにした。リブ外径φAを電動送風機ケース56の内径φB以下としたので、ファンカバー52が径左右方向に振動しても、リブ54c’、54c’’が電動送風機ケース56に強く当たることはない。また、リブ54c’、54c’’を設けることで、軟質部材の電動送風機ケース56に対向する部分を平面で形成した場合と比べて、軟質部材と電動送風機ケースの接触面積を小さくできる。よって、電動送風機19(ファンカバー52)の径左右方向と回転方向の振動が電動送風機ケース56に伝播することを抑制できる。
【0061】
リブ54c’、54c’’はファンカバー52の振動を完全に抑制するものではないので、ファンカバー52は径左右方向に動きやすい状態となっている。そのため、ファンカバー52が回転方向の力を受けて回転するおそれがある。そこで、ファンカバー52の回転止めとして電動送風機ケース56に緩衝材90を収容する凹部56aを設けた。回転しようとする緩衝材90を、凹部56aの内壁に設けた凸部56bで止める。緩衝材90と凹部56aの接触を凸部56bだけに限定することで、ファンカバー52の振動を電動送風機ケース56に伝播しづらくすることができる。
【0062】
ファンカバー52の回転方向の力は軟質部材54にも及ぼされる。しかし、リブ54c’、54c’’を設けることで、軟質部材54と電動送風機ケース56の接触面積が小さくなっているので、軟質部材54から電動送風機ケース56に回転方向の大きな力が伝播されることはない。
【0063】
図11は、本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の運転音の測定結果を示すグラフである。矢印で示す周波数が、電動送風機19の振動により生じる音の周波数である。電動送風機19の振動により音が生じる理由は、主として、電動送風機19から電動送風機ケース56に振動が伝播するためである。
【0064】
図12は、第1比較例に係る電気掃除機の運転音の測定結果を示すグラフである。第1比較例の電気掃除機は、軟質部材にリブが無く、軟質部材の側面全体が電動送風機ケースの内壁に接触する点と、緩衝材を収容する電動送風機ケースの凹部に凸部(回転止め)が設けられていない点において、本発明の実施の形態1に係る電気掃除機と異なる。そのため、矢印で示す電動送風機の振動により生じる音が非常に大きくなっている。
図11、12を比較すると分かるように、本発明の実施の形態1に係る電気掃除機は、第1比較例と比べると、電動送風機ケースの振動を抑制できている。
【0065】
第2の特徴はダクト50と電動送風機ケース56の間に隙間ができることを防止できる構成としたことである。具体的には、ダクト50と電動送風機ケース56に挟まれて弾性変形したシール部54bを設けることで、ダクト50と電動送風機ケース56の間に隙間ができることを防止した。この意義を説明する前に第2比較例について説明する。
図13は、第2比較例に係る電気掃除機の本体の断面図である。シール部94は、軟質部材95と電動送風機ケース96の間に設けられている。電動送風機の通電時には、シール部94に、軟質部材95を介して軸正負方向及び径左右方向の力が及ぼされる。したがって、シール部94がダメージを受ける経時劣化が進み、シール部94が破れたり変形したりすることで、ダクト50と電動送風機ケース96の間に隙間ができるおそれがある。ダクト50と電動送風機ケース96の間に隙間ができて電動送風機の排気が当該隙間から排出されると、その排気はフィルタ21を経由せずに機外に排出されるので、掃除中の部屋の空気を汚染する。
【0066】
これに対し、本発明の実施の形態に係るシール部54bはダクト50と電動送風機ケース56に挟まれる。ダクト50と電動送風機ケース56には、ファンカバー52の振動が直接及ばないので、これらの振動は小さい。したがって、第2比較例のシール部94に及ぼされる力に比べると、本発明の実施の形態1に係るシール部54bに及ぼされる力は非常に小さい。よって、シール部54bは経時劣化しづらいものとなっているので、ダクト50と電動送風機ケースの間に隙間ができることを防止できる。
【0067】
第1第2の特徴を有することで、十分な防振効果が得られ、しかもダクトとケースの間に隙間ができることを防止できる。
【0068】
本発明の実施の形態1に係る電気掃除機は様々な変形が可能である。本発明の実施の形態1では、電動送風機19の通電中に、緩衝材90が電動送風機ケース56の凹部56aから浮く構成とした。しかし、電動送風機に通電していないときには、緩衝材が凹部に接触し、電動送風機に通電しているときには、電動送風機に通電していないときに比べて、緩衝材が凹部に及ぼす力が小さくなるように構成してもよい。つまり、電動送風機の通電時に緩衝材と凹部が接触していてもよい。この場合、ファンカバー52が軸正方向の弱い力を受けることで、「電動送風機に通電していないときに比べて、緩衝材が凹部に及ぼす力が小さくなる」。これにより、緩衝材と電動送風機ケースの接触圧が弱まるので、緩衝材から電動送風機ケースに伝播する振動を低減することができる。
【0069】
ファンカバー52は1つの部品ではなく、複数の部品を組み立てて構成されてもよい。本発明の実施の形態1ではモータとファンの両方を覆うものをファンカバー52と定義した。例えばファンをファンカバーで覆い、モータをモータカバーで覆うことが考えられるが、そのような場合、当然ながら、ファンカバーとモータカバーが、本発明の実施の形態1に係るファンカバー52に相当する。
【0070】
リブの数又は形状を変更したり、電動送風機ケース56の凸部bの数又は形状を変更したりして、防振効果を高めてもよい。リブ54c’、54c’’の形状を、付け根部分から先端部分に向かって細くなるテーパとしてもよい。テーパ形状とすることで、リブと電動送風機ケースの接触面積を小さくすることができる。あるいは、リブの先端を尖らせて、リブと電動送風機ケースの接触面積を更に小さくしてもよい。
【0071】
軟質部材54のリブ54c’、54c’’と、電動送風機ケース56の凸部56bを両方設けることで、電動送風機ケースの振動を抑制する効果を高めることができる。しかしながら、いずれか一方を備えるだけで十分に振動を抑制できる場合には、リブ54c’、54c’’ と凸部56bの一方を省略してもよい。
【0072】
電動送風機ケースの振動を抑制することが求められ、ダクトと電動送風機ケースの間に隙間ができることを防止することは求められていない場合、シール部54bは省略しても良い。他方、ダクトと電動送風機ケースの間に隙間ができることを防止することが求められ、電動送風機ケースの振動抑制が求められていない場合、リブ54c’、54c’’と凸部56bを省略しても良い。
【0073】
これらの変形は以下の実施の形態に係る電気掃除機にも適宜応用できる。なお、以下の実施の形態に係る電気掃除機は、実施の形態1との共通点が多いので、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0074】
実施の形態2.
図14は、実施の形態2に係る軟質部材54等を示す断面図である。シール部70を軟質部材54とは別部品として設けた。シール部70と軟質部材54は離れている。したがって、シール部70が軟質部材54から振動を受けることがないので、シール部70の劣化を抑制できる。なお、当初はシール部を軟質部材54の一部として設けた場合でも、長期間の使用で軟質部材54の一部が切断して、
図14に示す軟質部材54とシール部70が分離した状態となることも考えられる。
【0075】
実施の形態3.
図15は、実施の形態3に係る軟質部材54等を示す断面図である。電動送風機ケース56の内壁にリブ56cを設けた。電動送風機ケース56の側面防振部54cに対向する部分にリブ56cが設けられている。電動送風機ケース56とリブ56cは一体的に形成することが好ましい。電動送風機ケース56とリブ56cの材料は例えばプラスチックである。ファンカバー52が径左右方向に振動するときに、このリブ56cが側面防振部54cにあたることで、振動が吸収される。
【0076】
電動送風機ケース56にリブ56cを設けた場合、リブ56cの内径を、側面防振部54cの外形以上とすることが好ましい。
【0077】
実施の形態4.
図16は、実施の形態4に係る緩衝材90等を示す断面図である。この図は、
図10に対応する図である。緩衝材90の側面に凸部90aを設けた。緩衝材90が回転方向の力を受けると、凸部90aと凹部56aの内壁が接触する。