(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
患者の体内を撮像した立体動画であって呼吸と同期して変位する病巣の領域が指定された前記立体動画の少なくとも一周期分データを、設定した仮想視点から仮想平面上に再構成した再構成動画を取得する再構成動画取得部と、
前記再構成動画から前記指定された病巣に対応する第1病巣領域を識別する病巣領域識別部と、
前記再構成動画から呼吸と同期して変位する体内部位の輪郭で規定される第1特徴領域を2つ以上識別する第1特徴識別部と、
医用透視撮像機器を用いて前記患者を前記再構成動画に対応させて透視した透視動画の少なくとも一周期分データを取得する透視動画取得部と、
前記体内部位に対応する2つ以上の第2特徴領域の各々を前記透視動画から識別する第2特徴識別部と、
前記再構成動画から識別された2つ以上の前記第1特徴領域及び前記透視動画から識別された2つ以上の前記第2特徴領域を、対応する前記体内部位が一致する組み合わせで対比して変位の相関性のとれたいずれか一つの前記体内部位を選定する対比選定部と、
前記選定された前記体内部位に対応する前記第1特徴領域を、前記再構成動画において同位相で変位する前記第1病巣領域に、変換させる変換パラメータを演算する変換パラメータ演算部と、
前記選定された前記体内部位に対応する前記第2特徴領域及び前記変換パラメータに基づいて、前記透視動画において変位する第2病巣領域を検出する病巣領域検出部と、を備えることを特徴とする医用画像処理装置。
患者を固定したベッドを移動して、変位する前記病巣の軌跡上に予め指定した照射目標に、ビーム照射ポートのビーム照準が、一致するように調整するベッド移動調整部と、
前記患者を透視した透視動画を生成する医用透視撮像機器を制御して請求項2又は請求項3に記載の医用画像処理装置の前記透視動画取得部に前記透視動画を送信する撮像制御部と、
請求項2又は請求項3に記載の医用画像処理装置から出力されるトリガ信号を受信したタイミングで前記ビーム照射ポートから治療ビームを照射させる照射制御部と、を備えることを特徴とする放射線治療装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように第1実施形態にかかる医用画像処理装置10は、医用立体撮像機器(図示略)を用いて患者(図示略)の体内を撮像した立体動画であって呼吸と同期して変位する病巣の領域が指定されたこの立体動画2の少なくとも一周期分データを、設定した仮想視点9aから仮想平面上に再構成した再構成動画5を取得する再構成動画取得部1と、この再構成動画5から前記指定された病巣に対応する第1病巣領域を識別する病巣領域識別部6と、再構成動画5から呼吸と同期して変位する体内部位の輪郭で規定される第1特徴領域を2つ以上識別する第1特徴識別部7と、医用透視撮像機器40を用いて患者31を再構成動画5に対応させて透視した透視動画12(
図5参照)の少なくとも一周期分データを取得する透視動画取得部11と、体内部位に対応する2つ以上の第2特徴領域の各々を透視動画12から識別する第2特徴識別部15と、再構成動画5から識別された2つ以上の第1特徴領域及び透視動画12から識別された2つ以上の第2特徴領域を体内部位が一致する組み合わせで対比して変位の相関性のとれたいずれか一つの体内部位を選定する対比選定部16と、この選定された体内部位に対応する第1特徴領域を再構成動画5において同位相で変位する第1病巣領域に変換させる変換パラメータを演算する変換パラメータ演算部17と、この選定された体内部位に対応する第2特徴領域及び変換パラメータに基づいて透視動画12において変位する第2病巣領域を検出する病巣領域検出部18と、を備えている。
【0013】
このように医用画像処理装置10が構成されることにより、患者31の被曝を低減するため照射強度が抑制され病巣の描写が不鮮明なX線の透視動画12において、呼吸と同期して周期的な変位を繰り返す病巣を正確に追跡することが可能になる。
すなわち、予め医用立体撮像機器で撮像された立体動画2から、立体的に指定された病巣が仮想平面上に再構成されている、再構成動画5を生成し、この再構成動画5から呼吸と同期して変位する体内部位(横隔膜等)の第1特徴領域を識別する。この体内部位は、最終的に一つのみが選定されることになるがこの時点では複数を識別しておく。
【0014】
次に、再構成動画5の第1特徴領域に対応する透視動画12の第2特徴領域を対比し、第1特徴領域及び第2特徴領域の変位の軌跡が最も一致する体内部位が選定される。ここで、透視動画12において第2特徴領域は鮮明に描写されていることが前提である。
そして、再構成動画5において再構成された病巣領域と第1特徴領域との動きの相関性は、透視動画12において不鮮明な病巣領域と鮮明な第2特徴領域との動きの相関性に一致し、さらに第1特徴領域と第2特徴領域との動きの相関性が一致していれば、透視動画12において不鮮明な病巣の位置を正確に特定することができる。
つまり、再構成動画5における病巣領域と第1特徴領域との位置関係から演算される変換パラメータを用い、透視動画12の第2特徴領域を演算処理すれば、この透視動画12おける不鮮明な病巣領域を正確に特定することができる。
【0015】
さらに第1実施形態に係る医用画像処理装置10は、第2病巣領域を透視動画12に描画する描画部(図示略)と、医用透視撮像機器40からリアルタイムで送られてくる透視動画12aに描画される第2病巣領域が、指定した照射目標22に変位したタイミングで第1トリガ信号を出力する第1トリガ信号出力部21と、をさらに備えている。
【0016】
このように医用画像処理装置10が構成されることにより、患者31のリアルタイムなX線の透視動画12から、呼吸と同期して周期的な変位を繰り返し描写が不鮮明な病巣を正確に検出しリアルタイムで追跡することが可能になる。これにより、治療ビーム35を病巣に照射するタイミングを正確に把握することができる。
【0017】
また
図1に示すように放射線治療装置30は、患者31を固定したベッド32を移動してビーム照射ポート36のビーム照準が、変位する病巣の軌跡上に予め指定した照射目標22に合うように調整するベッド移動調整部33と、患者31を透視した透視動画12aを生成する医用透視撮像機器40を制御して医用画像処理装置10の透視動画取得部11にこの透視動画12aを送信する撮像制御部43と、医用画像処理装置10から出力されるトリガ信号を受信したタイミングでビーム照射ポート36から治療ビーム35を照射させる照射制御部37と、を備えている。
【0018】
ここで、治療ビーム35とは、ガン等の病巣組織に照射して細胞を死滅させる放射線であり、そのような放射線として、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線、及び、重粒子線などが挙げられる。
ビーム照射ポート36を患者31の体軸周りに回転させたり、患者31の位置を変更させたりして、治療ビーム35を病巣組織に多方向から照射することにより、病巣周辺の正常組織への線量を最小限に抑えることができる。
【0019】
放射線治療装置30で患者31に治療ビーム35を照射する治療作業に先立って、別の場所で治療計画が実施される。この治療計画では、この後の治療作業でベッド32に固定され治療ビーム35の照射を受ける姿勢と同じ姿勢で、患者の体内を医用立体撮像機器で撮像した立体動画を撮像する。
本実施形態に適用される医用立体撮像機器とは、X線CT(Computed Tomography)や核磁気共鳴(MRI:magnetic resonance imaging)等といった、病巣を含む患者体内の立体像(ボクセルデータ)を得ることができるものである。さらに、この医用立体撮像機器は、呼吸周期の経時的変化をとらえた立体動画が撮像できるものとする。
治療計画では、呼吸等に同期して変位する病巣に治療ビームを照射させる患者体内の照射目標22を検討する。さらに、治療ビーム35の照準がこの照射目標22に一致するように、放射線治療装置30のベッド32の設定位置が決定される。さらに治療計画では、病巣に照射する治療ビーム35の、放射線量、照射角度、照射範囲、回数などが決定される。
【0020】
呼吸している患者の体内を少なくとも一周期分撮像した立体動画2は、医師により呼吸と同期して変位する病巣の領域が指定された状態で、データ保存部に保存される。この保存されている立体動画2は、データ形式は特に限定されず、呼吸位相の異なる静止画をキャプチャした場合、指定された病巣の領域と特徴領域とが、他の臓器等と識別できる程度に鮮明に描写されているものとする。
【0021】
設計情報8は、医用透視撮像機器40を構成するX線発生部41(41a,41b)及びX線受像部42(42a,42b)の空間座標系における機械的な位置や角度等を示す設計情報である。
再構成動画生成部3は、この設計情報8に基づき、X線発生部41を仮想視点9aに設定し、患者を撮像した立体動画2を、X線受像部42に見立てた仮想平面上に再構成した再構成動画5を生成する。
【0022】
この再構成動画5は、立体動画2を平面に再構成したDRR(Digitally Reconstructed Radiograph)であり、仮想平面を構成する各々のピクセルから仮想視点9aまでを結ぶ直線に沿って存在する立体動画2のボクセル輝度値を、直線に沿って積算した輝度値のピクセルの集合体として生成される。そして、生成した再構成動画5は、取得部1を介して医用画像処理装置10のデータ保持部に保持される。
なおデータ保持部に保持される再構成動画5は、動画のファイルフォーマットで構成される場合の他に、呼吸位相の異なる複数の静止画で構成されていてもよい。
【0023】
病巣領域識別部6は、データ保持部の再構成動画5から、立体動画2で指定された病巣に対応する第1病巣領域を、識別する。具体的には、立体動画2で立体的に指定された病巣の領域を、仮想視点9aから仮想平面上に再構成したものが、第1病巣領域として識別される。
【0024】
同様にして第1特徴識別部7も、モニタ45に表示させた再構成動画5から、呼吸と同期して変位する体内部位の輪郭で規定される第1特徴領域を2つ以上識別する。
なお第1特徴領域として適用される体内部位は、横隔膜、肺の一部、肝臓の一部、助骨などが挙げられるが、呼吸に連動して繰り返し変位するものであれば特に限定されない。
また、第1特徴領域の指定は、オペレータのマニュアル操作による場合の他に、例えば、エッジ検出、輪郭検出、テンプレート・マッチングなどのオート機能によることも可能である。
【0025】
ここで第1特徴識別部7において、再構成動画5から抽出された静止画像を対象として、体内部位の輪郭を規定する処理方法の一例を、次に示す。なおこの処理方法は、後記する第2特徴識別部15にも等しく適用される。
特徴領域は、横隔膜や肺野の境界など、画像のなかでコントラストが高い境界位置の境界線を、画像処理によって自動検出することにより指定することができる。境界線の検出方法として、ACM(Active Contour Model)やLevel Set法などを挙げることができる。画像の中から境界線を検出した後、解剖学的同位置の1点を境界線上から選択する。例えば、境界線をまたぐ画素間の差分の絶対値が最も高くなる境界線上の点を選択する。例えば、第1特徴領域は、画像内の所定の領域内で、コントラストが高い境界位置を画像処理によって自動検出する。
【0026】
ここで所定の領域とは、たとえばオペレータが画像上に入力した線分である。所定の領域は、横隔膜や肺野の境界など、画像でコントラストが高く撮影される領域の境界に位置することが望ましい。また、所定の領域は、少なくとも1つとする。
呼吸位相の異なるN枚の画像に含まれる特徴領域の位置を、X={x
1,…,x
N}と表す。ここでx
iは、i番目の画像内の特徴領域を表す2次元ベクトルである。つまり、x
1,…,x
Nは、1番目の画像からN番目画像にかけての特徴領域の軌跡を表す。この特徴領域の軌跡に関する目的関数G(x
1,…,x
N)を、
図2の(1)式のように定義する。
【0027】
ここで、l
i(x
i)は、i番目の画像内の画素位置x
iにおける特徴領域らしさを表す尤度関数である。また、d(x
i+1,x
i)は、i番目とi+1番目の特徴領域の位置に関する関数であり、動きのモデルを表す。λは、定数値であり、オペレータが設定する。
尤度関数は、たとえば横隔膜や肺野の境界などを特徴領域とする場合、画像のエッジ強度を求めるソーベルオペレータによる畳み込み値を出力する。または、ラプラシアンオペレータによる畳み込み値を出力する。その他、Cannyオペレータなど画像処理におけるエッジ検出オペレータによる畳み込み値を出力する。または、連続した2枚の画像の画素値の差分値を出力する。または、これらのいずれかの2つ以上の出力値の積を出力する。
【0028】
尤度関数は、たとえば所定の領域内の画像をテンプレート画像として用意し、x
iを中心とした、テンプレート画像との類似度を出力してもよい。類似度は、たとえば相互相関値や正規化相互相関値、相互情報量などにする。
動きのモデルは、例えば
図2の(2)式で表される。
目的関数G(x
1,…,x
N)を、最大化する特徴領域の軌跡x
1,…,x
Nを効率的に求めるためには、たとえば動的計画法などの最適化手法を用いてもよい。
所定の領域が複数の場合、それぞれの領域に対して上記と同様の方法によって特徴領域の軌跡を求める。所定の領域がL個ある場合、それぞれの第1特徴領域の軌跡を
図2の(3)式で表し、第2特徴領域の軌跡を
図2の(4)式で表す。
【0029】
医用画像処理装置10のなかで符号1〜9が付されている機能構成部は、治療計画の段階で、X線CT等により立体動画2を取得した後に処理を実行するものである。
図1、
図4及び
図6における医用画像処理装置10のなかで符号11〜27が付されている機能構成部は、治療作業の段階で、放射線治療装置30のビーム照準に患者31をセットした後に処理を実行するものである。
ここで、治療作業の段階で処理を実行する医用画像処理装置10の機能構成部(符号11〜27)の説明に入る前に、放射線治療装置30の説明を行う。
【0030】
放射線治療装置30は、治療ビーム35を照射するビーム照射ポート36と、トリガ信号を受信してこの治療ビーム35の照射タイミングを制御する照射制御部37と、患者31を固定するベッド32と、患者31の病巣の位置に治療ビーム35の照準を合わせるベッド移動調整部33と、照準を合わせた後で患者31の透視動画12を撮像する医用透視撮像機器40と、この医用透視撮像機器40を制御し撮像した患者31の透視動画12を医用画像処理装置10の取得部11に送信する撮像制御部43と、から構成される。
【0031】
この医用透視撮像機器40は、二対のX線発生部41(41a,41b)及びX線受像部42(42a,42b)から構成されている。X線受像部42は、X線の検出素子が2次元アレイ状に配置され、X線発生部41から照射され患者31を透過してそれぞれの検出素子に到達したX線のエネルギーの減衰量に応じ、透視動画12を形成する。
【0032】
ベッド移動調整部33は、患者31を固定したベッド32を移動してビーム照射ポート36のビーム照準が、変位する病巣の軌跡上に予め指定した照射目標22に合うように調整する。なおこの照射目標22は、上述した治療計画の段階においてすでに決定されている。
【0033】
撮像制御部43は、X線発生部41に照射開始を指示し、このX線が照射されている期間、患者31を透過したX線をX線受像部42で検出し、形成された透視動画12aを透視動画取得部11に送信する。
ここで、医用画像処理装置10に患者31をセッティングした後の治療作業の工程は、オフライン期間と、オンライン期間に分けられることを説明する。オフライン期間は、透視動画12から病巣領域を特定するのに最も適したな体内部位を、複数の中から選定する期間である。そしてオンライン期間は、オフライン期間で選定された体内部位を用いて、リアルタイムで送信される透視動画12から病巣領域を検出し、治療ビーム35の照射を行う期間である。
【0034】
透視動画取得部11は、オフライン期間において、医用透視撮像機器40から送信された透視動画12を受信してデータ保持部に保持させる。このデータ保持部に保持される透視動画12は、少なくとも呼吸の一周期分が必要である。
透視動画取得部11は、オンライン期間において、医用透視撮像機器40から送信された透視動画12aを病巣領域検出部18に送り、リアルタイムに病巣領域を検出させる。
【0035】
第2特徴識別部15は、オフライン期間において、データ保持部に保持されている透視動画12から2つ以上の体内部位を第2特徴領域の各々として識別する。
オフライン期間においては、透視動画12から位相の異なる第2特徴領域が描画されている複数の静止画を抽出し、この静止画をモニタ45に表示させたうえで入力手段46から第2特徴領域を識別する。具体的には、第1特徴識別部7で既に説明した同様の方法で第2特徴領域を識別することができるが(
図2の(4)式)、その識別方法に特に限定はない。
【0036】
第2特徴識別部15は、オンライン期間において、医用透視撮像機器40からリアルタイムに送信される透視動画12aから2つ以上の体内部位を第2特徴領域の各々として識別する。オンライン期間においては、マニュアル操作を適用することはできず、オート機能により第2特徴領域を識別する。
【0037】
対比選定部16は、データ保持部にある再構成動画5から識別された2つ以上の第1特徴領域及びデータ保持部にある透視動画12から識別された2つ以上の第2特徴領域を体内部位が一致する組み合わせで対比して変位の相関性のとれたいずれか一つの体内部位を選定する。
【0038】
ここで対比選定部16において、第1特徴領域及び第2特徴領域の相関性の判断方法の一例を、次に示す。
図2の式(1)〜(4)において、x
i=(m
i,n
i)、y
i=(u
i,v
i)とすれば、x座標に関する相関係数rは、
図2の式(5)によって求める。また、同様にして、軌跡が示すy座標に関する相関係数を求めてもよい。または、それらの積を相関としてもよい。
なお、再構成動画5から静止画をサンプリングする時間間隔と透視動画12から静止画をサンプリングする時間間隔とが同じである前提で説明を行ったが、この時間間隔が両者で異なる場合は、適切な外挿処理によりこの時間間隔及び位相を揃える必要がある。
【0039】
複数(L個)の体内部位が選ばれている場合、それぞれの第1特徴領域および第2特徴領域の組における相関を上記方法によって求める。そして最も優れた値を示すものが、この後の変換パラメータを生成する処理に利用する体内部位に選定される。または、相関値に対し閾値を設定し、選定の基準にしてもよい。
【0040】
変換パラメータ演算部17は、対比選定部16で選定された体内部位に対応する第1特徴領域を、再構成動画5において同位相で変位する第1病巣領域に変換させる変換パラメータを演算する。
次に変換パラメータ演算部17において、変換パラメータを演算する方法の一例を示す。この変換パラメータは、第1特徴領域の軌跡X={x
1,…,x
N}と、病巣領域の軌跡S={S
1,…,S
N}を演算処理することによって求められる。
【0041】
第1特徴領域と病巣領域との位置関係は、
図2の式(6)の回帰式によって表される。ここで、Aは、2×3の行列、bは、3次元の縦ベクトルである。この場合、求めるべき変換パラメータは、Aとbになる。これら変換パラメータは、最小二乗法によって求める。
【0042】
次に
図1の医用透視撮像機器40に示すように2方向から透視動画12を撮影している場合を検討する。この場合、方向1に対応する仮想視点から生成した再構成動画5から得た第1特徴領域の軌跡を軌跡X
1={x
1,1,…,x
1,N}とし、方向2に対応する仮想視点から生成した再構成動画5から得た第1特徴領域の軌跡を軌跡X
2={x
2,1,…,x
2,N}とする。すると第1特徴領域と病巣領域との位置関係は、
図2の式(7)の回帰式によって表される。ここでA
1,A
2は、2×3の行列、bは、3次元の縦ベクトルである。この場合、求めるべき変換パラメータは、A
1,A
2とbになる。これら変換パラメータは、最小二乗法によって求める。
【0043】
次に、K個の第1特徴領域がある場合、第1特徴領域と病巣領域との位置関係は、
図2の式(8)の回帰式によって表される。ここで、A
kは、2×3の行列、bは、3次元の縦ベクトルである。この場合、求めるべき変換パラメータは、A
kとbになる。これら変換パラメータは、最小二乗法によって求める。
【0044】
病巣領域検出部18は、この選定された体内部位に対応する第2特徴領域及び変換パラメータに基づいて透視動画12において変位する第2病巣領域を検出する。
次に病巣領域検出部18において、第2特徴領域の軌跡を第2病巣領域の軌跡にデータ変換する方法の一例を示す。
【0045】
第2特徴領域Bの軌跡Y={y
1,…,y
N}と、変換パラメータ演算部17で求めた変換パラメータA,bと、を用いた
図2の式(9)から、透視動画12a内の第2病巣領域の軌跡T={T
1,…,T
N}を求めることができる。
また第2特徴領域Bの軌跡Y={y
1,…,y
N}と、変換パラメータ演算部17で求めた変換パラメータA
1,A
2,bとを用いた
図2の式(10)から、透視動画12a内の第2病巣領域の軌跡T={T
1,…,T
N}を求めることができる。
また第2特徴領域Bの軌跡Y={y
1,…,y
N}と、変換パラメータ演算部17で求めた変換パラメータA
1,…A
K,bとを用いた
図2の式(11)から、透視動画12a内の第2病巣領域の軌跡T={T
1,…,T
N}を求めることができる。
そして、オフライン期間で撮影された透視動画12に基づいて、モニタ45に第2病巣領域の軌跡を表示し、この軌跡上に照射目標22が存在することを確認する。
【0046】
第1トリガ信号出力部21は、オンライン期間でリアルタイムに送られてくる透視画像12aに基づき病巣領域検出部18で検出した第2病巣領域が、オフライン期間で設定した軌跡をトレースすることを確認するとともに、照射目標22に一致したタイミングで第1トリガ信号を出力する。
そして放射線治療装置30の照射制御部37は、医用画像処理装置10から出力されるトリガ信号を受信したタイミングで、ビーム照射ポート36から治療ビーム35を患者31の病巣に照射させる。
【0047】
図3のフローチャートに基づいて、各実施形態に係る医用画像処理方法、医用画像処理プログラム及び放射線治療装置の動作について説明する(適宜、
図1参照)。
まず、治療計画の段階において、X線CT装置等といった医用立体撮像機器を用いて患者の体内の病巣を包含した立体動画を撮像する(S11)。そして、この撮像した立体動画を呼吸周期の少なくとも一周期分データを取得し、病巣の領域を立体的に指定した上でデータ保持する(S12)
【0048】
次に、医用透視撮像機器40の設計情報8から設定される仮想視点から立体動画を仮想平面上に再構成した再構成動画(DDR)を生成する(S13)。そして、この再構成動画から、立体的に指定された病巣から平面上に再構成された第1病巣領域を識別する(S14)。さらにこの再構成動画から、呼吸と同期して変位する体内部位の輪郭で規定される複数の第1特徴領域を識別する(S15)(S16)。
なお、この治療計画の段階において、治療ビーム35の照射目標22となる病巣の変位位置が決定される。
【0049】
次に、治療作業のオフライン工程に入る。
このベッド32に患者31を固定した後、決定された位置に移動調整し、患者31の体内の照射目標22を治療ビーム35の照準に合わせる(S17)。なおこのベッド32の移動調整は、医用透視撮像機器40でX線透視画像を1枚撮影し、この透視画像とDRR像とを比較し、両者が一致するように実施される。
そして、医用透視撮像機器40を動作させて透視動画の少なくとも一周期分データを取得し、データ保持させる(S18)。そして、この透視動画から呼吸と同期して変位する体内部位に対応する2つ以上の第2特徴領域の各々を識別する(S19)(S20)。
【0050】
再構成動画5から識別された2つ以上の第1特徴領域と透視動画12から識別された2つ以上の第2特徴領域とを体内部位が一致する組み合わせで対比する(S21)(S22)。そして、複数の体内部位のうち再構成動画5と透視動画12とにおいて変位軌道の相関性のとれたいずれか一つを選定する(S23)。
次に、選定された体内部位に対応する再構成動画5の特徴領域と病巣領域との関係から、この特徴領域からこの病巣領域に変換する変換パラメータを演算する(S24)。
【0051】
次に、治療作業のオンライン工程に入る。
医用透視撮像機器40からリアルタイムで送られてくる透視動画12aから、選定した体内部位の特徴領域を識別し、変換パラメータに基づくデータ変換により、病巣領域を検出する(S25)。
この透視動画12aで検出された病巣領域が、指定した照射目標22に変位したタイミングで(S26)、トリガ信号が、出力され治療ビーム35が患者31の病巣に、照射される(S27)(END)。
【0052】
(第2実施形態)
次に
図4及び
図5を参照して本発明における第2実施形態について説明する。なお
図4において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
第2実施形態に係る医用画像処理装置10は、透視動画12において検出された第2病巣領域51(
図5)が呼吸と同期して変位する範囲の少なくとも一部を包含する参照領域52を設定する参照領域設定部23と、呼吸に同期して周期的に変化する参照領域52を異なる位相毎に複数のテンプレートとして抽出するテンプレート抽出部24と、複数の中から指定されたいずれか一つのテンプレート25に医用透視撮像機器40からリアルタイムで送られてくる透視動画12aにおいて呼吸に同期して周期的に変化する参照領域52が一致したタイミングで第2トリガ信号を出力する第2トリガ信号出力部26と、をさらに備えている。
【0053】
このように医用画像処理装置10が構成されることにより、患者31のリアルタイムなX線の透視動画12aから、呼吸と同期して周期的な変位を繰り返し描写が不鮮明な病巣を、正確にリアルタイムで追跡することが可能になる。
さらに、リアルタイムに透視動画12aの第2特徴領域53を識別する必要がなく、さらに変換パラメータにより第2病巣領域51を検出する必要もないので、その分の演算遅延がなくなる。これにより、治療ビーム35を病巣に照射するタイミングをより正確に把握することができる。
【0054】
参照領域設定部23は、治療作業のオフライン工程で取得した(データ保持部に保持されている)透視動画12に基づき、病巣領域検出部18で検出した第2病巣領域51の情報を利用する。そして、呼吸と同期して変位する第2病巣領域51の少なくとも一部を包含する領域を参照領域52に設定する。この参照領域52の画像は、呼吸の変位に同期して変化するものである。
【0055】
テンプレート抽出部24は、透視動画12に設定された参照領域52において、呼吸の位相毎に変化する複数の異なる画像をそれぞれテンプレートとして抽出する。このようにして抽出されたテンプレートは、透視動画12で呼吸位相毎に位置が異なる病巣変位に対応している。そしてテンプレート抽出部24は、このように抽出された異なる複数のテンプレートから、治療計画で決定した患者体内の照射目標に対応するテンプレート25を一つ指定する。
【0056】
第2トリガ信号出力部26は、医用透視撮像機器40からリアルタイムで送られてくる透視動画12aの参照領域52の画像と、指定されたテンプレート25の画像とが一致したタイミングで第2トリガ信号を出力する。
そして放射線治療装置30の照射制御部37は、医用画像処理装置10から出力されるトリガ信号を受信したタイミングでビーム照射ポート36から治療ビーム35を患者31の病巣に照射させる。
【0057】
(第3実施形態)
次に
図6を参照して本発明における第3実施形態について説明する。なお
図6において
図1及び
図4と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
第3実施形態の医用画像処理装置10は、第1実施形態と第2実施形態を合わせた構成を有している。そして、リアルタイムに検出部18に送られてくる透視動画12aに基づいて検出された病巣領域と、指定されたテンプレート25に記録された病巣の位置と、が所定の範囲内にあり、かつ、検出された病巣領域が照射目標22に変位したタイミングで第3トリガ信号を出力する第3トリガ信号出力部27が設けられている。
【0058】
第1実施形態では、医用透視撮像機器40からリアルタイムで送信される透視動画12aから、識別された体内部位に基づいて病巣の位置を検出し、この位置がビーム照準に一致するタイミングをはかっていた。
一方で第2実施形態では、医用透視撮像機器40からリアルタイムで送信される透視動画12aの参照領域52と、指定したテンプレートとが画像的に一致するタイミングをはかっていた。
【0059】
このようなプロセスの相違により、第1実施形態で求められたタイミングと第2実施形態で求められたタイミングとが厳密に一致している保証はない。
そこで、第3実施形態では、双方のタイミングの一致性を瞬時に評価して、一致していると判断されれば照射制御部37にトリガ信号を出力し、不一致と判断されればトリガ信号を出力しない。
【0060】
このような、双方のタイミングの一致・不一致の判断は、指定したテンプレート25に病巣領域の位置を記録しておき、テンプレート25に記録された病巣領域の位置と、病巣領域検出部18で検出された病巣領域の位置との一致度を閾値判断する。この場合の他に、第1実施形態において出力された第1トリガ信号と、第2実施形態において出力された第2トリガ信号との、出力タイミングの時間差を閾値判断してもよい。
これにより、治療ビーム35を病巣に正確に照射するためのタイミングの精度を向上させることができる。
【0061】
ここで第3トリガ信号出力部27において、治療ビーム35を照射するタイミングの精度向上を目的とした処理方法の一例を、次に示す。
まず、テンプレート25に記録された病巣領域の軌跡をY
d={y
1,d,…,y
M,d}とし、病巣領域検出部18で検出された病巣領域の軌跡をY
s={y
1,s,…,y
M,s}とし、オフライン期間において、このY
d及びY
sを求める。
両者の一致度eを、
図7の(12)式のように定義し、この一致度が所定の範囲内にあれば、オンライン期間に移行し、検出された病巣領域が照射目標22に変位したタイミングで第3トリガ信号が出力される。
ここで、||x||は、ベクトルxのユークリッドノルムを表す。一致度eの値が所定の閾値以内であればトリガ信号を出力する。それ以外は、トリガ信号を出力せずにリアルタイムに透視動画12aの取得を継続し、照射タイミングを決定するためのアルゴリズムを継続する。
【0062】
(第1特徴識別部7、第2特徴識別部15及び対比選定部16の他の実施例)
以下、再構成動画5及び透視動画12,12aに含まれる体内部位を特徴領域として、さらに高精度に識別するための方法について説明する。
各実施形態において、第1特徴識別部7および第2特徴識別部15は、画像の局所的な部分に関しての画素値の空間的微分値によって画像の境界を検出する。コントラストが高く撮影される場合には十分ではあるが、透視動画12の画質を高めるためには、医用透視撮像機器40において患者31に照射するX線線量を高くする必要があり、人体への影響が懸念される。
そこで、医用透視撮像機器40の線量を下げた場合においても、透視動画12から第2特徴領域を高精度に検出するために、この第2特徴領域周辺の広範囲な画像情報を利用して、よりロバストに特徴領域を検出することを検討する。
【0063】
第1特徴識別部7は、再構成動画(DDR)内の第1動きベクトルを求める。第2特徴識別部15は、透視動画12内の第2動きベクトルを求める。
ここで動きベクトルとは、所定の領域内の任意の位置、望ましくは所定の領域の重心位置の動きベクトルを意味する。ここで、第1動きベクトルの軌跡を、
図7の(13)式のように定義し、第2動きベクトルの軌跡を、
図7の(14)式のように定義する。
なお、画像の動きベクトルを求める手法は様々あり、画像上のある点の動きベクトルを表したオプティカルフローを求める手法として、勾配法やLucas−Kanade法がある。または、所定の領域内の画像をテンプレートとしてテンプレート追跡などによって所定の領域の動きベクトルを求めてもよい。
【0064】
第1動きベクトルの軌跡を用いて、時刻i+1における第1特徴領域を予測する。予測した時刻i+1における第1特徴領域の位置を、
図7の(15)式のように定義する。
この(15)式を用いて、第1特徴領域の軌跡に関する目的関数G(x
1,…,x
N)を、
図7の(16)式のように定義する。また第2特徴領域の軌跡に関する目的関数G(y
1,…,y
N)も同様に定義する。
【0065】
対比選定部16は、再構成動画5のデータ保存部から第1特徴領域及び第1動きベクトルを取得し、透視動画12のデータ保存部から第2特徴領域及び第2動きベクトルを取得する。
そして対比選定部16は、第1特徴領域及び第2特徴領域の組み合わせだけでなく、第1動きベクトル及び第2動きベクトルの組み合わせを対比して変位の相関性のとれたいずれか一つの体内部位を選定する。
【0066】
対比選定部16は、第1動きベクトルと第1特徴領域との相関を、
図2の式(5)によって求める。1番目の第1特徴領域と第1動きベクトルとの相関を、
図7の(17)式の右辺の第1項のように定義する。
さらに対比選定部16は、第2動きベクトルと第2特徴領域との相関を、
図2の式(5)によって求める。l番目の第2特徴領域と第2動きベクトルとの相関を、
図7の(17)式の右辺の第2項のように定義する。さらに両者の積をとり
図7の(17)式を相関値として定義する。
【0067】
そして対比選定部16では、
図7の(17)式の左辺で表される相関値が最も優れた値を示すものが、この後の変換パラメータを生成する処理に利用する体内部位に選定される。または、相関値に対し閾値を設定し、選定の基準にしてもよい。
【0068】
(第1特徴識別部7、第2特徴識別部15及び病巣領域識別部6の他の実施例)
特徴領域及び病巣領域をオートで正確に識別する方法について説明する。
P個の点に対して動きベクトルを求めて得られた軌跡を、
図7の式(18)のように定義する。また、異なる呼吸位相における腫瘍領域の重心の軌跡を、S={S
1,…,S
N}と定義する。
ある点pの軌跡と腫瘍の重心の軌跡との相関r
pを
図2の式(5)から導く。そして
図7の式(19)に基づいて、最も腫瘍の重心の軌跡との相関の高い点pを求め、この点pを含めた周辺の一定の領域を、識別領域として出力する。
【0069】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の医用画像処理装置によれば、立体動画を平面上に再構成した動画と透視動画とにおいて、変位の軌跡が最も一致する体内部位を選定し、この選定された体内部位の変位との相関性に基づいて、写し出される画像が不鮮明な病巣を、透視動画において正確に検出し追跡することが可能となる。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0071】
以上説明した医用画像処理装置10は、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスやキーボードなどの入力装置と、通信I/Fとを、備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。
【0072】
また医用画像処理装置10で実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、CD−R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供するようにしてもよい。
【0073】
また、本実施形態に係る医用画像処理装置10で実行されるプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしてもよい。
また、装置10は、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワーク又は専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。