(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)火山噴出物発泡体および(B)無機アルカリ性物質を、(A)と(B)との重量比([A]:[B])が1:0.01〜1:0.5となるように含有する組成物を含有してなる、飼料用添加剤。
無機アルカリ性物質が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウムおよび炭酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の飼料用添加剤。
【背景技術】
【0002】
家畜の飼育は、昭和の中頃までは放し飼いされることが多く、広々とした土地でゆったりと飼育されることが多かった。昭和40年代頃から、ブロイラーの密飼に始まり、肥育豚も生産性向上のため、密飼されることが多くなってきた。また、環境上の諸問題の観点から放牧が厳しい状況となり、ほとんど家畜舎内で飼育されるようになってきた。密飼になると、家畜舎の面積も少なくて済み、飼育の作業や清掃も少人数で済むため、生産効率が上がりコストの削減が見込める。放牧では、雨水などにより、家畜の糞尿等による汚染水が河川等に流れ込むことも度々あり、現在では、ほとんどが家畜舎内での飼育となっている。
しかしながら、ブロイラーや肥育豚等家畜の密飼は、家畜動物に高度のストレスを与え、運動不足と衛生状態の悪化を生じせしめている。
かかる条件下で生産性を向上させるべく、家畜舎内の清掃および消毒を始め、温度管理をこまめに行い、ストレスを与えないように最大限努め、環境悪化を軽減する努力がなされている。しかし、衛生、飼育、環境管理を徹底していても、各疾病との闘いからは決して逃れられないのが現状である。たとえば、大腸菌による下痢は、子豚が罹患した場合、肥育日数の増大により生産コストが大幅に上がり、経営を圧迫することになる。また、鶏インフルエンザ、豚流行性下痢(PED)、口蹄疫などは、国内だけでは無く、全世界に脅威を与えている。これらは全てウイルスが関与する疾病であり、現在のところ、有効な治療方法がないのが実情である。
【0003】
衛生状態の悪化による上記疾病の発生を防ぐため、抗生物質や抗菌性発育促進物質が添加された飼料が用いられているが、家畜の排泄物に残留する抗生物質等は堆肥化を阻害し、また耐性菌の出現を招くという問題がある(非特許文献1)。さらに、抗生物質等によっては、ウイルス性の疾病の発生を有効に抑制することはできない。
【0004】
また、家畜舎内における飼育では、コンクリートの上で飼育するために、放し飼いの場合は土壌から摂取されていたミネラルが当然不足する。特に顕著な例として、分娩して離乳を終えた母豚が歩行できなくなることがある。この母豚を7日間〜10日間、土の運動場に放すと、ほぼ全頭が立ち上がり歩行を開始するため、各農場では、ミネラルを飼料に配合して与えている。
【0005】
現在、ミネラルをはじめ、様々な無機添加剤が飼料に配合されている。無機添加剤としては、たとえばゼオライト、貝化石、ホタテ貝等の粉末などが使用されている。
しかし、これらの添加剤は、ミネラルを補充するものであり、抗菌効果等の期待されるものでないため、大腸菌等細菌やウイルスの生育を抑制することができない。
【0006】
畜産の全てに言えるが、家畜の死亡や疾病による生育の遅延を防ぎ、生産性を向上させる上で、生後の健康を如何に維持するかが重要である。たとえば、養豚においては、生まれてから60日間健康を維持できれば、その後はほとんど病気にならないと言っても過言ではない。
従って、家畜舎で飼育される家畜に不足しがちなミネラルを補充することができるとともに、特に生後間もない幼若な家畜において、細菌類およびウイルスによる疾病を有効に予防し得る飼料用添加剤が求められている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の飼料用添加剤は、(A)火山噴出物発泡体および(B)無機アルカリ性物質を、(A)と(B)の重量比([A]:[B])が1:0.01〜1:0.5となるように含有する組成物(以下、「本発明の添加剤用組成物」と称することもある)を含有してなる。
【0013】
本発明の添加剤用組成物において用いる(A)火山噴出物発泡体は、火山噴出物の細粒や粉末を700℃〜1,100℃程度、好ましくは850℃〜1,000℃程度に加熱して発泡させることにより得られる。
上記火山噴出物発泡体の調製に用いる火山噴出物は、火山活動の際に地表に噴出した物質であり、火山灰、火山礫等の火山砕屑物などが含まれる。本発明の目的には、火山噴出物として、シラス、軽石、ボラ土、黒曜石、真珠岩等が好ましく用いられる。なかでもシラス、黒曜石、真珠岩がより好ましい。
【0014】
本発明においては、(A)火山噴出物発泡体として、上記した火山噴出物発泡体より1種または2種以上を選択して用いることができるが、なかでもシラスを発泡させたシラス発泡体(シラスバルーン)、黒曜石の発泡体(パーライト)および真珠岩の発泡体(パーライト)が好ましく、添加剤用組成物の多孔性を保持するための強度に優れる点で、シラス発泡体がより好ましい。
【0015】
本発明の添加剤用組成物に用いる(A)火山噴出物発泡体の平均粒子径は、通常シラス発泡体で5μm〜300μm、黒曜石発泡体で50μm〜3,000μm、真珠岩発泡体で50μm〜3,000μmであり、好ましくはシラス発泡体で30μm〜200μm、黒曜石発泡体で50μm〜300μm、真珠岩発泡体で50μm〜300μmである。
なお、上記平均粒子径は、後述する篩い分け法で測定し、算出した値である。
【0016】
本発明の添加剤用組成物において用いる(B)無機アルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸のアルカリ金属塩、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム等のケイ酸のアルカリ土類金属塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸のアルカリ金属塩、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸のアルカリ土類金属塩等が挙げられ、これらより、1種を選択して単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の目的には、(B)無機アルカリ性物質として、ケイ酸のアルカリ金属塩が好ましく用いられ、ケイ酸ナトリウムおよびケイ酸カリウムがより好ましく用いられる。
なお、(B)無機アルカリ性物質は、粉末の状態で用いてもよく、水溶液として用いてもよい。
【0017】
本発明の添加剤用組成物は、(A)火山噴出物発泡体および(B)無機アルカリ性物質を、(A)と(B)の重量比([A]:[B])が1:0.01〜1:0.5となるように含有する。前記(A)と(B)の重量比([A]:[B])は、1:0.02〜1:0.4であることが好ましく、1:0.02〜1:0.3であることがより好ましい。
(A)火山噴出物発泡体に対する(B)無機アルカリ性物質の重量比([B]/[A])が0.01よりも小さいと、抗菌活性および抗ウイルス活性が低下し、好ましくない。一方、(A)火山噴出物発泡体に対する(B)無機アルカリ性物質の重量比([B]/[A])が0.5よりも大きいと、添加剤用組成物の塩基性が強くなり、家畜に給与した際に食欲不振や消化管障害を生じる恐れがある。また、コストアップになり、経済性の面で好ましくない。
【0018】
本発明の添加剤用組成物には、本発明の特徴を損なわない範囲で、さらに活性炭、木炭、竹炭等の吸着剤等を添加することができる。
また、本発明の添加剤用組成物は、容器、袋体等に投入、密封し、炭酸ガスを注入して固化させてもよい。
【0019】
本発明の添加剤用組成物は、そのまま、または他の添加物を加えて、飼料用添加剤とすることができる。
本発明の飼料用添加剤には、本発明の特徴を損なわない限り、通常飼料添加物として用いられる添加物を特に制限なく用いることができる。
飼料添加物としては、たとえば、飼料の品質の低下を防止するための添加物、飼料の栄養成分その他の有効成分の補給のための添加物、および飼料が含有している栄養成分の有効な利用の促進のための添加物等、飼料の安全性の確保および品質の改善に関する法律第2条第3項の規定に基き、農林水産大臣が指定する飼料添加物が挙げられる。
本発明の飼料用添加剤には、上記飼料添加物の1種または2種以上を用いることができる。
【0020】
飼料の品質の低下を防止するための添加物としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等の抗酸化剤;プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム等の防かび剤;アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等の粘結剤;グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤、ギ酸等の調整剤が挙げられる。
【0021】
飼料の栄養成分その他の有効成分の補給のための添加物としては、アミノ酢酸、DL−アラニン、L−グルタミン酸ナトリウム等のアミノ酸;L−アスコルビン酸、エルゴカルシフェロール、塩酸チアミン、コレカルシフェロール、ビタミンA粉末、ビタミンD粉末、リボフラビン等のビタミン;塩化カリウム、クエン酸鉄、グルコン酸カルシウム等のミネラル;アスタキサンチン、カンタキサンチン等の色素が挙げられる。
【0022】
飼料が含有している栄養成分の有効な利用の促進のための添加物としては、クエン酸モランテル、デコキネート等の合成抗菌剤;亜鉛アシトラシン、クロルテトラサイクリン、リン酸タイロシン等の抗生物質;着香料;サッカリンナトリウム等の呈味料;アミラーゼ、アルカリ性プロテアーゼ、セルラーゼ、リパーゼ等の酵素;エンテロコッカス フェカリス(Enterococcus faecalis)、バチルス サブティリス(Bacillus subtilis)、ビフィドバクテリウム シュードロンガム(Bifidobacterium pseudolongum)等の生菌剤等が挙げられる。
【0023】
本発明の飼料用添加剤は、粒状、粉末状、顆粒状、ゲル状等の固形状の形態、またはペースト状等の半固形状の形態とすることができるが、粒状または粉末状であることが好ましい。
粒状または粉末状である飼料用添加剤の平均粒子径は、後述する篩い分け法により測定し算出した値で通常50μm〜1,000μmであり、好ましくは100μm〜500μmであり、より好ましくは150μm〜300μmである。
【0024】
本発明の飼料用添加剤における上記添加剤用組成物の含有量は、飼料用添加剤の全量に対し、1重量%〜100重量%であることが好ましく、3重量%〜100重量%であることがより好ましい。
【0025】
また、本発明においては、上記した本発明の飼料用添加剤を、飼料用賦形物質や希釈物質と混合して、飼料とすることができる。
飼料用賦形物質および希釈物質としては、本発明の特徴を損なわない限り、通常飼料の調製に用いられる賦形物質および希釈物質を制限なく用いることができ、たとえば、飼料および飼料添加物の成分規格等に関する省令別表第2の3に記載されたものが挙げられる。
本発明の飼料には、上記賦形物質および希釈剤等より、1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0026】
飼料用賦形物質および希釈物質としては、アラビアゴム、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、キトサン、セルロース、ローカストビーンガム等の多糖;ブドウ糖、乳糖、麦芽糖、白糖等の単糖または二糖;グリセリン、ソルビトール、D−マンニトール等の糖アルコール;アルブミン、カゼイン、グルテン、ゼラチン等のタンパク質;きな粉、小麦粉、大豆粉、トウモロコシ粉等の穀物粉;トルラ酵母、パン酵母、ビール酵母等の酵母;硬化油、植物性油脂、動物性油脂等の油脂;カオリン、ゼオライト、タルク、バーミキュライト、ベントナイト等の粘土鉱物;珪藻土、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸、軽質無水ケイ酸、無水ケイ酸等のケイ酸;軽質流動パラフィン、流動パラフィン等の炭化水素;カルナウバロウ等のロウ等が挙げられる。
【0027】
本発明の飼料における飼料用添加剤の含有量は、家畜の種類、成畜、子畜の別、性別、発育ステージ等によって異なるが、飼料の全量に対する上記添加剤用組成物の含有量として、成畜用飼料の場合は0.05重量%〜10重量%であることが好ましく、0.1重量%〜7重量%であることがより好ましく、子畜用飼料の場合は0.01重量%〜10重量%であることが好ましく、0.03重量%〜7重量%であることがより好ましい。
【0028】
本発明の飼料用添加剤は、(A)火山噴出物発泡体と(B)無機アルカリ性物質とを、上記重量比にて混合し、必要により他の飼料添加物等の添加成分を添加、混合した後、必要に応じて乾燥、粉砕、造粒、整粒等を行って調製することができる。
【0029】
(A)火山噴出物発泡体と(B)無機アルカリ性物質、あるいはさらに他の添加成分の混合は、粉粒体の混合に用いられる一般的な混合方法により行うことができ、水平円筒型混合機、V型混合機、二重円錐型混合機、揺動回転型混合機、単軸リボン型混合機、複軸パドル型混合機、回転働型混合機、円錐スクリュー型混合機等の各種混合機、混合攪拌機等を用いて行う。
【0030】
上記混合物の粉砕は、一般的な粉砕方法により行うことができ、混合時における(B)無機アルカリ性物質の状態により、乾式粉砕、湿式粉砕のいずれをも用いることができる。すなわち、(B)無機アルカリ性物質を固体状で混合する場合には、乾式粉砕が好ましく採用され、水溶液の状態で混合する場合には、湿式粉砕が好ましく採用される。
乾式粉砕としては、ジェットミル粉砕およびメカノケミカル粉砕が挙げられ、湿式粉砕としては、コロイドミル粉砕が挙げられる。
【0031】
上記混合物の造粒は、一般的な造粒方法により行うことができ、混合時における(B)無機アルカリ性物質の状態により、乾式造粒、湿式造粒のいずれをも用いることができる。すなわち、(B)無機アルカリ性物質を固体状で混合する場合には、乾式造粒が好ましく採用され、水溶液の状態で混合する場合には、湿式造粒が好ましく採用される。
乾式造粒としては、スラッグ法、ローラーコンパクター法等が挙げられ、湿式造粒としては、撹拌混合造粒法、噴霧乾燥造粒法、流動層造粒法、転動造粒法、転動流動層造粒法、押し出し造粒法等が挙げられる。
【0032】
上記混合物の整粒についても、一般的な整粒方法を採用することができる。かかる整粒方法としては、摩砕整粒、分級機能付解砕整粒、破砕整粒、湿式連続整粒、回転式遠心砕塊整粒、高速又は低速回転型整粒、球形整粒等が挙げられる。
【0033】
上記混合物の乾燥は、風乾、天日乾燥等、自然乾燥により行うことが好ましい。
【0034】
本発明の飼料用添加剤の上記調製方法において、(A)火山噴出物発泡体および(B)無機アルカリ性物質、ならびに必要に応じて他の添加成分を混合し、必要により乾燥、粉砕、造粒等を行った後、プラスチック製等の容器や袋体等に投入して密閉し、炭酸ガスを注入して反応させることにより、固化させることができる。
特に、(B)無機アルカリ性物質として、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸のアルカリ金属塩を、水溶液の状態で用いた場合には、(A)火山噴出物発泡体との混合物を炭酸ガスと反応させて固化させることにより、上記飼料添加物と均一に混合することができ、飼料中における分散性も向上するため、好ましい。
【0035】
また、本発明の飼料は、上記した飼料用添加剤に、必要に応じて飼料用賦形物質や希釈物質を添加し、上記と同様に混合、造粒等して調製することができる。
【0036】
本発明の飼料用添加剤または本発明の飼料は、家畜全般、たとえばウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ等の食肉用に飼育される哺乳動物;アヒル、ニワトリ、ガチョウ、七面鳥、ウズラ等の食肉または採卵用に飼育される鳥類;イヌ、ネコ、ハムスター、モルモット、シマリス等の愛玩動物;アルパカ、ウマ、ラバ、ラクダ、ロバ等の労働用に飼育される哺乳動物等の飼料用添加剤または飼料として用いることができるが、ウシ、ブタ、ニワトリ等の食肉用家畜の飼料用添加剤または飼料として好ましく用いられ、特に繁殖豚および肥育豚等、ブタ用の飼料用添加剤または飼料として好適である。
【0037】
また、本発明の飼料用添加剤または本発明の飼料は、成畜、分娩期および授乳期の雌畜ならびに離乳期〜肥育期の子畜のいずれにも好適に用いることができ、細菌およびウイルスによる疾病に対する予防の必要性の高い分娩期および授乳期の雌畜ならびに離乳期の子畜において、より好適に用いることができる。
【0038】
本発明はまた、本発明の飼料用添加剤を添加した飼料を家畜に給与して、家畜を飼育する方法を提供する。
本発明の飼育方法においては、飼育の対象となる家畜の種類、発育ステージ等により、飼料に添加する飼料用添加剤の形態を選択することが好ましい。たとえば、種畜等の成畜には、粒状の飼料用添加剤を用い、肥育期の子畜には、粉末状または顆粒状の飼料用添加剤を用いることが好ましい。
【0039】
本発明の飼料用添加剤の給与量は、給与する家畜の種類や性別、発育ステージ等により異なるが、たとえば分娩期または授乳期の母豚の場合は、上記本発明の添加剤用組成物の重量として1日あたり通常5g〜70g、好ましくは10g〜50g給与し、離乳期〜肥育期の子豚(肥育豚)の場合は、上記本発明の添加剤用組成物の重量として1日あたり通常1g〜30g、好ましくは5g〜20g給与する。
【0040】
本発明の添加剤用組成物は、後述するように、火山噴出物発泡体の主成分である二酸化ケイ素および酸化アルミニウム等の他、カルシウム、リン、鉄等を含み、細菌に対する抗菌活性および抗ウイルス活性を示す。
従って、本発明の添加剤用組成物を含有する本発明の飼料用添加剤は、家畜舎内で飼育される家畜に不足しがちなミネラルの供給源として機能し、また、抗菌・坑ウイルス活性により、大腸菌による下痢症、サルモネラ症等の細菌性疾患や、口蹄疫、鳥インフルエンザ、PED等のウイルス性疾患の罹患を防ぐことができる。
【実施例】
【0041】
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0042】
平均粒子径の測定方法
本明細書に記載した(A)火山噴出物発泡体、および本発明の添加剤用組成物の平均粒子径の測定は、以下の方法(篩い分け法)により行った。
電磁式ふるい振とう機(アズワン株式会社製)に標準ふるいを5段〜10段装着し、試料をふるい振とうすることで分級して、各粒度区分の重量比により測定した。すなわち、標準ふるいを目開きの大きいものを上にして順次重ね、上段に試料20gを入れ15分間ふるい振とうさせ、各ふるい上に残存する試料の重量を測定し、粒度分布を求めた。
次いで、各ふるい毎に篩い分けられた試料について、試料全量に対する割合(重量%)を算出し、各ふるい毎の前記割合(重量%)を上段から順に足していき、試料重量の割合の合計が50重量%を超える前の前記合計値(重量%)を[d]、50重量%を超えた後の前記合計値(重量%)を[e]とし、試料重量の割合の合計が50重量%を超えない粒子径区分のアンダー値(μmまたはmm)を[a]とする。そして、試料重量の割合の合計が50重量%を超える粒子径を含む区分を特定し、その粒子径区分のオーバー値(μmまたはmm)を[b]、アンダー値(μmまたはmm)を[c]として、下記式(I)より重量平均粒子径を求めた。
平均粒子径(μmまたはmm)=a−〔(b−c)×{(50−d)/e}〕・・・(I)
【0043】
[実施例1]飼料用添加剤
混合撹拌機(「モルタルミキサー」株式会社東海機械製作所製)に、シラス発泡体(「シラスバルーン」:平均粒子径=40μm、豊和直株式会社製)1,000gを投入し、次いで水ガラス(「ケイ酸ソーダ3号」、日本化学工業株式会社製)100gを噴霧器で散布しながら混合攪拌し、ポリ袋に入れ密封してから、炭酸ガス30gを注入して反応させて、添加剤用組成物(平均粒子径=100μm)を得、飼料用添加剤とした。
【0044】
[実施例2]飼料用添加剤
混合撹拌機(「モルタルミキサー」、株式会社東海機械製作所製)にシラス発泡体(「シラスバルーン」:平均粒子径=150μm、豊和直株式会社製)1,000gを投入し、次いでケイ酸カリウム水溶液(二酸化ケイ素(SiO
2)濃度=27重量%〜29重量%、酸化カリウム(K
2O)濃度=21重量%〜23重量%、日本化学工業株式会社製)100gを噴霧器で散布しながら混合攪拌し、ポリ袋に入れ密封してから、炭酸ガス30gを注入して反応させて添加剤用組成物(平均粒子径=300μm)を得、飼料用添加剤とした。
【0045】
実施例2で得られた添加剤用組成物について、成分分析を行った結果を表1に示す。
成分分析は、鹿児島県工業技術センターに委託し、蛍光X線分析法(使用機器:「蛍光X線分析装置 RIX3000」、株式会社リガク製、検量線法)により行った。なお、表1中に示した強熱減量は、重量分析法(電気マッフル炉(株式会社伊藤製作所製)にて試料を1,000℃で1時間強熱した際の重量の減少率から算出)により測定した。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示されるように、実施例2で得られた添加剤用組成物は、不足すると豚の脚弱の原因となることが知られているカルシウムおよびリンをはじめ、多種類のミネラル分を含有する。
従って、実施例2の飼料用添加剤は、ミネラル分の供給源として機能すると期待される。
【0048】
[試験例1]抗菌活性の評価
実施例2の飼料用添加剤について、以下の通り大腸菌に対する抗菌活性を評価した。
(1)抗菌活性の評価方法
(i)試験菌として、大腸菌(Escherichia coli NBRC 12734)を用いた。
(ii)試験菌をレシチン・ポリソルベート80加ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト(SCDLP)ブイヨン培地(栄研化学株式会社製)に接種して35±1℃で培養し、培養液を約10
7個/mLとなるように滅菌生理食塩水で希釈調製し、菌原液とした。
(iii)1,000mLのガラスビーカーに、滅菌生理食塩水600mLを入れ、上記菌原液1mLを添加して、1mLあたりの菌数が10
4個台となるようにした溶液に、実施例2の飼料用添加剤50gを浸漬し、試験液とした。
一方、1,000mLの共栓メジウム瓶に滅菌生理食塩水600mLを入れ、上記菌原液1mLを添加して、1mLあたりの菌数が10
4個台となるようにした溶液を対照液とした。
(iv)上記試験液および対照液について、混釈培養法により、調製時ならびに、室温で15分、30分および60分間静置した後の生菌数を測定した。なお、培養は、標準寒天培地(栄研化学株式会社製)を用い、35±1℃で24時間行った。
(2)評価結果
評価結果を下記表2に示した。
【0049】
【表2】
【0050】
表2において、対照液中の大腸菌は60分経過後にも全く減少していないのに対し、本発明の実施例2の飼料用添加剤を浸漬した試験液では、経時的に大腸菌は減少し、60分経過後には、調製時の約1/1,000にまで減少しており、実施例2の飼料用添加剤が大腸菌に対して抗菌活性を有することが認められた。
【0051】
[試験例2]豚の飼育試験
実施例2で得られた飼料用添加剤を用いて、豚の飼育試験を行った。
永徳養豚場(鹿児島県)にて、平成25年5月から平成25年10月まで、実施例2の飼料用添加剤を、母豚5頭に1頭当たり1日10g飼料に添加して、分娩前7日から離乳まで摂食させた。母豚は、授乳を終えた後は分娩舎から母豚舎に移した。本飼育試験の対象となった母豚は延べ25頭である。また、子豚30頭に1頭当たり1日5g飼料に添加して、離乳から出荷まで摂食させて飼育試験を行い、飼育状況を観察した。この試験時の敷料にはおが屑を用いた。
試験結果を表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
表3に示されるように、母豚(延べ25頭)において、分娩舎から母豚舎に移す際に、脚麻痺による歩行困難の発生は見られなかった。母豚(延べ25頭)が出産した子豚(総子豚数=271頭)のうち、出荷までに10頭が死亡した(圧死:6頭、衰弱死:4頭)が、飼育試験を実施した子豚30頭については、死亡した子豚は0であった。出荷までの平均肥育日数は、通常通りほぼ6か月であった。
また、飼育試験を実施した母豚および子豚において、PEDの発生は見られなかった。
【0054】
[実施例3]飼料用添加剤
混合撹拌機(「モルタルミキサー」、株式会社東海機械製作所製)にシラス発泡体(「シラスバルーン」:平均粒子径=70μm、豊和直株式会社製)100Kgを投入し、次いで、21重量%〜23重量%ケイ酸カリウム水溶液(日本化学工業株式会社製)30Kgを添加して混合攪拌し、ポリ袋に入れ密封してから、炭酸ガス300gを注入して反応させ、添加剤用組成物(平均粒子径=150μm)を得、飼料用添加剤とした。
【0055】
実施例3で得られた添加剤用組成物10gを、蒸留水50mLに入れ、30℃で攪拌し、1時間後にペンタイプpH計(株式会社佐藤計量器製作所製)でpHを測定したところ、pHは12.2であり、前記添加剤用組成物は強塩基性を示した。
【0056】
[試験例3]豚の飼育試験
実施例3で得られた飼料用添加剤を用いて、豚の飼育試験を行った。
千葉県成田市のA養豚場にて、平成25年7月から平成25年11月まで、実施例3の飼料用添加剤を、母豚10頭に1頭当たり1日10g飼料に添加して、分娩前7日から離乳まで摂食させた。母豚は、授乳を終えた後は分娩舎から母豚舎に移した。本飼育試験の対象となった母豚は延べ50頭である。また、子豚50頭に1頭当たり1日5g飼料に添加して、離乳から出荷まで摂食させて飼育試験を行い、飼育状況を観察した。この試験時の敷料にはおが屑を用いた。
試験結果を表4に示す。
【0057】
【表4】
【0058】
表4に示されるように、母豚(延べ50頭)中2頭において、分娩舎から母豚舎に移す際に、脚麻痺による歩行困難の発生が見られた。子豚については、肥育期間中(生後21日〜90日)に3頭が死亡したが、出荷までの平均肥育日数は通常通りほぼ6か月であった。
また、飼育試験を実施した母豚および子豚において、PEDの発生は見られなかった。
【0059】
[試験例4]豚の飼育試験
実施例3で得られた飼料用添加剤を用いて、豚の飼育試験を行った。
鹿児島県志布志市のB養豚場にて、平成25年6月から平成25年11月まで、実施例3の飼料用添加剤を、母豚5頭に1頭当たり1日10g飼料に添加して、分娩前7日から離乳まで摂食させた。母豚は、授乳を終えた後は分娩舎から母豚舎に移した。本飼育試験の対象となった母豚は延べ25頭である。また、子豚30頭に1頭当たり1日5g飼料に添加して、離乳から出荷まで摂食させて飼育試験を行い、飼育状況を観察した。この試験時の敷料にはおが屑を用いた。
試験結果を表5に示す。
【0060】
【表5】
【0061】
表5に示されるように、母豚(延べ25頭)中1頭において、分娩舎から母豚舎に移す際に、脚麻痺による歩行困難の発生が見られた。子豚については、出荷までに1頭が死亡したが、出荷までの平均肥育日数は通常通りほぼ6か月であった。
また、飼育試験を実施した母豚および子豚において、PEDの発生は見られなかった。