特許第6534170号(P6534170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6534170
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】ニッパ装置
(51)【国際特許分類】
   B26B 15/00 20060101AFI20190617BHJP
【FI】
   B26B15/00
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-215042(P2014-215042)
(22)【出願日】2014年10月22日
(65)【公開番号】特開2016-77773(P2016-77773A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000132231
【氏名又は名称】株式会社スター精機
(74)【代理人】
【識別番号】100081466
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 研一
(72)【発明者】
【氏名】石橋 章司
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−171668(JP,U)
【文献】 米国特許第03888003(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0089120(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 15/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に対し、一方に刃体を有すると共に他方に適宜長さの柄部を有し、刃体が本体の外部へ突出した状態で中央部が回動可能に軸支され,刃体相互が開閉可能な一対のニッパ本体と、
上記一対のニッパ本体を刃体相互が開放する方向へ付勢する弾性部材と、
各柄部より長い長さで対応する柄部の外側面に沿って延出し,かつ各基端部が各ニッパ本体の回動支点に応じた個所の本体に回動可能に軸支される一対のカムレバーと、
本体に対し、上記カムレバーの長手方向へ移動可能に支持される移動体と、
上記移動体を上記長手方向へ移動する移動手段と、
移動体に対し,各カムレバー基端部側の外側面に当接可能な間隔をおいて設けられ,該移動体の移動に伴って各カムレバーの外側面を基端部側から自由端部側に亘って当接することにより各カムレバーを回動させる一対のカムフォロアと、
を備え、
移動手段による移動体の移動により各カムフォロアを対応するカムレバー外側面の基端部側から自由端部側に亘って摺接させることにより各ニッパ本体の柄部を弾性部材の弾性力に抗して互いに近付く方向へ回動して刃体相互を閉動作してワークを切断可能にする際に,柄部に対するカムレバーの長さに応じて刃体相互による切断力を増力可能にする一方,移動手段の復動による移動体の移動により各カムフォロアを対応するカムレバー外側面の自由端部側から基端部側に亘って摺接させることにより各ニッパ本体の柄部を弾性部材の弾性力により互いに離間する方向へ回動して刃体相互を開動作させるニッパ装置。
【請求項2】
請求項1において、
移動手段は、トルク及び回転速度を数値制御可能なサーボモータとし、該サーボモータの駆動に伴って移動体を移動するニッパ装置。
【請求項3】
請求項2において、
サーボモータは、ロータの中心部内周面に雌ねじが形成された中空ロータ型とすると共にロータの雌ねじに噛合う雄ねじが穿設された送りねじの端部を移動体に取り付け、サーボモータの駆動に伴って回転するロータにより移動する送りねじにより移動体を移動可能にしたニッパ装置。
【請求項4】
請求項2において、
サーボモータは、移動体の移動方向に軸線を有して本体に回転可能に軸支され、一部が移動体に設けられたナットに噛合う送りねじに駆動連結され、サーボモータの駆動に伴って回転する送りねじにより移動体を往復移動可能にしたニッパ装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかにおいて、
ワークの切断開始から切断完了までの間に複数の切断ポイントを設定し、切断ポイント毎にサーボモータをトルク制御してワークの切断トルクを可変可能にしたニッパ装置。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれかにおいて、
ワークの切断開始から切断完了までの間に複数の切断ポイントを設定し、切断ポイント毎にサーボモータを速度制御してワークの切断速度を可変可能にしたニッパ装置。
【請求項7】
請求項1において、
移動手段は、ロッドが移動体に取り付けられた流体圧シリンダとしたニッパ装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
カムフォロアは、各カムレバーの外側面に当接して転動するローラカムフォロアとしたニッパ装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
カムフォロアは、各カムレバーの外側面に摺接するカムフォロアとしたニッパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば樹脂成形品、ダイキャスト等の成形品や電線等の各種ワークを切断するニッパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば樹脂成形された成形品をゲート部にて製品とランナ・スプルに切断するゲート切断用ニッパとしては、エアーシリンダによりニッパ刃を閉動作して切断する空圧型ニッパや電動モータによりニッパ刃を閉動作して切断する電動モータ型ニッパが使用されている。
【0003】
しかし、上記した空圧型ニッパにあっては、供給される圧縮空気圧に応じた一定のトルクでしかニッパ刃を閉動作させることができず、大型のワークや硬いワークを切断するには、高圧の圧縮空気や高圧に対応した空圧機器を使用する必要があり、装置自体が大型化及び重量化する問題を有している。
【0004】
また、電動モータ型ニッパにあっては、例えば特許文献1に示すように先端に刃を有し中間部のハウジングに固定した支軸を中心として互いに回動する一対の回動体間に張架されたスプリングを有したニッパ本体を、回動体の基端部聞に介装されて電動モータにより回転されるカムにより開閉して切断可能にする構造からなる。
【0005】
この電動モータ型ニッパにおいても、電動モータに印加される電流または電圧に応じた一定のトルクでニッパ刃を閉動作してワークを切断するため、大型のワークや硬いワークを切断するには、高トルクの電動モータを使用する必要があり、装置自体が大型化及び重量化する問題を有している。
【0006】
特に、特許文献1に示す電動モータ型ニッパにあっては、電動モータにより偏心カムを回転してニッパ刃を閉動作させる際に、偏心カムを高トルクで回転駆動しなければならず、高トルクの電動モータを使用する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平4-14050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、空圧型ニッパや電動モータ型ニッパにあっては、一定のトルクでしかニッパ刃を閉動作させることができず、大型ワークや硬いワークを切断する場合には、高い圧力の圧縮空気や空圧機器、高トルクの電動モータを使用しなければならず、装置自体が大型化及び重量化する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、本体に対し、一方に刃体を有すると共に他方に適宜長さの柄部を有し、刃体が本体の外部へ突出した状態で中央部が回動可能に軸支され,刃体相互が開閉可能な一対のニッパ本体と、上記一対のニッパ本体を刃体相互が開放する方向へ付勢する弾性部材と、各柄部より長い長さで対応する柄部の外側面に沿って延出し,かつ各基端部が各ニッパ本体の回動支点に応じた個所の本体に回動可能に軸支される一対のカムレバーと、本体に対し、上記カムレバーの長手方向へ移動可能に支持される移動体と、上記移動体を上記長手方向へ移動する移動手段と、移動体に対し,各カムレバー基端部側の外側面に当接可能な間隔をおいて設けられ,該移動体の移動に伴って各カムレバーの外側面を基端部側から自由端部側に亘って当接することにより各カムレバーを回動させる一対のカムフォロアと、を備え、移動手段による移動体の移動により各カムフォロアを対応するカムレバー外側面の基端部側から自由端部側に亘って摺接させることにより各ニッパ本体の柄部を弾性部材の弾性力に抗して互いに近付く方向へ回動して刃体相互を閉動作してワークを切断可能にする際に,柄部に対するカムレバーの長さに応じて刃体相互による切断力を増力可能にする一方,移動手段の復動による移動体の移動により各カムフォロアを対応するカムレバー外側面の自由端部側から基端部側に亘って摺接させることにより各ニッパ本体の柄部を弾性部材の弾性力により互いに離間する方向へ回動して刃体相互を開動作させることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、設定されたトルク以上の力でワークを切断することができ、装置自体を小型化及び軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ニッパ装置の内部を示す斜視図である。
図2】ニッパ装置の平面図である。
図3】ニッパ装置の動作状態を示す説明図である。
図4】ニッパ装置の変更実施例を示す説明図である。
図5】ニッパ装置の変更実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
移動手段による移動体の移動により各カムフォロアを対応するカムレバー外側面の基端部側から自由端部側に亘って摺接させることにより各ニッパ本体の柄部を弾性部材の弾性力に抗して互いに近付く方向へ回動して刃体相互を閉動作してワークを切断可能にする際に,柄部に対するカムレバーの長さに応じて刃体相互による切断力を増力可能にする一方,移動手段の復動による移動体の移動により各カムフォロアを対応するカムレバー外側面の自由端部側から基端部側に亘って摺接させることにより各ニッパ本体の柄部を弾性部材の弾性力により互いに離間する方向へ回動して刃体相互を開動作させることを最適の実施形態とする。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明のニッパ装置をサーボモータ駆動型の電動モータ型ニッパ装置として実施した実施例に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように電動モータ型ニッパ装置1における本体3の一側側(図示左側)には、開口5が形成され、該開口5に応じた本体3には、一対のニッパ本体7が中央部にて交差して軸9を中心に回動するように軸支される。
【0014】
各ニッパ本体7は、図2に示す下端側に刃体7aが対向して設けられると共に図2に示す上端側に柄部7bが一体に設けられ、柄部7bの開閉により各刃体7aが互いに近接する位置と離間した位置の間で回動される。
【0015】
各ニッパ本体7の柄部7b間には、圧縮ばね等の弾性部材11が設けられ、各ニッパ本体7は、弾性部材11の弾性力により柄部7b相互離間する方向へ付勢されて平面ハ字形になることにより各刃体7a相互を開放させるように回動される。
【0016】
上記各ニッパ本体7を軸支する軸9の両側に応じた本体3には、柄部7bの外面に沿って伸び、該柄部7bより長い(例えば柄部7bの長さに対して1.5〜2倍の長さ)カムレバー13の基端部が軸15を中心に搖動するように軸支される。
【0017】
上記本体3内には、移動体17が図2に示す上下方向へ往復移動するように取付けられる。該移動体17の図2に示す左右側には、本体3の図2に示す左右側板の内面に沿って転動して移動体17を支承するローラ19がそれぞれ軸支される。
【0018】
上記移動体17の図2に示す下部左右端側には、図2に示す左右一対のローラカムフオロア21が軸部9寄りの箇所にてカムレバー13の外側面に当接して転動するように軸支される。
【0019】
上記本体3の図2に示す上中央部には、移動手段を構成する数値制御可能なサーボモータ23が設けられる。該サーボモータ23は、ロータ(図示せず)の中心部に軸線方向へ延出する中空部(図示せず)が形成されると共に該中空部の内周面に雌ねじ(図示せず)が形成された中空ロータ構造からなる。
【0020】
また、サーボモータ23には、ロータ理エンコーダ等の検知器23aが設けられ、コントローラ(制御手段、図示せず)は、該検知器23aからの信号に基づいてロータの回転位置により送りねじ25の移動量、サーボモータ23に印加される電流値により送りねじ23の移動トルク等を検知する。
【0021】
上記サーボモータ23におけるロータの中空部には、外周面に雄ねじが旋設され、上記移動体17の移動距離に対応する軸線長さの送りねじ25が雌ねじに噛合わされ、本体3内に突出する送りねじ25の軸端部は、上記移動体17の図示する右側面に固定される。
【0022】
次に、上記のように構成された電動モータ型ニッパ装置1によるワークの切断作用を説明する。
先ず、非切断時の状態について説明すると、ワークの非切断時においては、サーボモータ23の駆動により図2に示す実線矢印方向へ移動する送りねじ25により移動体17が図2に示す下側へ移動されている。
なお、ワークとしては、樹脂成形された直後の樹脂成形品、ダイキャスト、電線等の金属線等のいずれであってもよい。
【0023】
この状態にて各ローラカムフオロア21は、相互間隔が短くなった柄部7bの軸9寄りに応じたカムレバー13の外面に当接するように位置し、柄部7b及びカムレバー13相互を弾性部材11の弾性力により自由端側の相互間隔が広くなる平面ハ字形に開放させる。
【0024】
これにより各ニッパ本体7の刃体7aは、互いに離間し、ワークの切断個所を差し込むための空間が形成される。
【0025】
次に、上記状態にて刃体7a相互の空間内にワークの切断個所を位置させた後にサーボモータ23を駆動制御して送りねじ25が図3に示す実線矢印方向へ移動されると、これに伴って移動体17が図3に示す上側へ移動される。
【0026】
上記移動体17の移動時においては、ローラカムフオロア21の相互間隔が一定に設定されているため、カムレバー13の外面に対して図3に示す下方から上方に向かって転動しながらカムレバー13を図3に示す上部の相互間隔が徐々に縮小するように押圧することにより各ニッパ本体7を柄部7b相互が近接する方向へ回動させることにより刃体7a相互を徐々に閉作動してワークの切断個所を切断する。
【0027】
上記ワークの切断時においては、柄部7bに対してカムレバー13が長く、その自由端側を押圧して刃体7aを閉作動するため、柄部7bの自由端部を押圧して刃体7aを閉作動する場合に比べて小さな力で大きな切断力を得る。
【0028】
これにより移動体17を移動する駆動源として小トルクのサーボモータ23を使用することができ、装置自体を小型化及び軽量化することができる。
【0029】
また、カムレバー17を閉作動する駆動源をサーボモータ23とすることによりワークの切断する際には、切断開始から切断完了までの間に複数の切断ポイントを設定し、例えば切断開始から次の切断ポイントに至るまでは、切断トルクを大きくすると共に切断速度を速くし、次の切断ポイントに徐々に切断トルクを小さくすると共に即断速度が遅くなるようにトルク制御、速度制御及び位置制御することができ、平滑性に優れた切断面になるようにワークを高品質で切断することができる。
【0030】
本実施例は、ニッパ本体7を閉動作する駆動源をサーボモータ23とすることにより刃体7aを切断トルク制御、速度制御及び切断位置制御してワークにおける切断個所を切断面が平滑になるように高品質に切断することができる。
【0031】
また、柄部7bが短いニッパ本体7であっても、該柄部7bより長いカムレバー13により閉作動することにより小トルクのサーボモータ23により大トルクでワークを切断することができ、装置自体を小型化及び軽量化することができる。
【0032】
上記説明のニッパ本体7にあっては、例えば合成樹脂ワークを切断する場合にあっては、刃体7aに電気ヒータに設けて合成樹脂が軟化する温度まで加熱する加熱ニッパとすることにより切断面が平滑になるように高品質に切断することができる。
【0033】
上記説明は、ロータの内周面に雌ねじが形成された中空軸サーボモータとし、ロータの中空部に、一方端部が移動体17に固定された送りねじ25を噛合わせ、ロータの回転に伴って送りねじ25を移動することにより移動体17を移動する構成としたが、図4に示すように本体3内に移動体17の移動方向と一致する方向に軸線を有し、移動体17に設けられたナット17a(図5に破線で示す)に噛合わされる送りねじ51を軸受55により回転可能に軸支すると共に該送りねじ51にサーボモータ53の出力軸53aを駆動連結し、サーボモータ53の回転駆動に伴って回転する送りねじ51により移動体17をトルク制御、速度制御及び位置制御しながら移動する構成としてもよい。
【0034】
上記説明は、移動体17にローラ19を設け、本体3内にて移動体17の移動を案内する構成としたが、本体3内に移動体17の移動方向へ延出する直線ガイドを設け、該直線ガイドに移動体を長手方向へ移動するように支持する構成としても実施することができる。
【0035】
上記説明は、移動手段としてサーボモータ23を用いてニッパ装置を構成したが、図5に示すように移動手段を油圧または空圧のシリンダ61により構成しても実施可能である。
【0036】
移動手段をシリンダ61とする場合には、シリンダ61のロッド61aを移動体17に取り付け、シリンダ61の作動に伴うロッド61aの伸縮に伴って移動体17を移動させることによりニッパ本体7の刃体7aを柄部7bに対するカムレバー13の長さ比に応じたトルクで閉作動してワークを切断することができる。
【0037】
なお、移動手段をシリンダ61とする場合には、サーボモータ23により構成する場合と相違し、切断の進展に伴って切断トルクを可変することができないが、低圧の圧縮流体を使用して高い切断トルクを得ることができ、装置自体を小型化及び軽量化することができる。
また、実施例1と同一の部材に付いては、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0038】
1 電動モータ型ニッパ装置
3 本体
5 開口
7 ニッパ本体
7a 刃体
7b 柄部
9 軸
11 弾性部材
13 カムレバー
15 軸
17 移動体
17a ナット
19 ローラ
21 ローラカムフオロア
23 移動手段としてのサーボモータ
23a 検知器
25 送りねじ
51 送りねじ
53 サーボモータ
53a 出力軸
55 軸受
61 移動手段としてのシリンダ
61a ロッド
図1
図2
図3
図4
図5